(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137115
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】レーザ素子及び電子機器
(51)【国際特許分類】
H01S 5/065 20060101AFI20240927BHJP
H01S 5/14 20060101ALI20240927BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20240927BHJP
H01S 5/0225 20210101ALI20240927BHJP
H01S 5/04 20060101ALI20240927BHJP
H01S 3/1118 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
H01S5/065
H01S5/14
H01S5/183
H01S5/0225
H01S5/04
H01S3/1118
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048504
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 将尚
(72)【発明者】
【氏名】米澤 元
【テーマコード(参考)】
5F172
5F173
【Fターム(参考)】
5F172AL08
5F172DD02
5F172EE13
5F172NN17
5F172NQ34
5F172NQ53
5F172ZZ03
5F173AB33
5F173AB47
5F173AB50
5F173AB83
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC53
5F173AR99
5F173MA10
5F173MC30
5F173MF02
5F173MF10
5F173MF28
5F173MF29
5F173MF40
5F173SA08
5F173SA24
5F173SC10
5F173SE02
5F173SG05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】超短パルスで高ピークパワーのレーザ光を生成でき、かつ小型化が可能で、光―パルス光変換効率を向上可能にする。
【解決手段】レーザ素子1は、第1波長に対する第1反射層R1と、第1波長の面発光を行う活性層23とを有する積層半導体層2と、積層半導体層の光軸の後方側に配置され、積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層R2および第1面と反対側の第2面に第1波長に対する第3反射層R3を有するレーザ媒質3と、第2面より光軸の後方側に配置される第2波長に対する第4反射層R4と、第1反射層および第3反射層の間で第1波長の光を共振させる第1共振器11と、第2反射層および第4反射層の間で第2波長の光を共振させる第2共振器12と、第3反射層と第4反射層との間に配置され、モード同期にて第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体4とを備え、積層半導体層の光軸及びレーザ媒質の光軸は一軸上に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
レーザ素子。
【請求項2】
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体は、各光軸が一軸上に配置される一体化された構造体である、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項3】
前記半導体可飽和吸収体は、所定の変調深さ及びリカバリータイムを有する量子井戸構造を含む、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項4】
前記半導体可飽和吸収体は、透過型で変調深さΔRが0.5~2%であるとともに、リカバリータイムτfastが500fs(フェムト秒)未満である、
請求項3に記載のレーザ素子。
【請求項5】
前記レーザ媒質は、固体レーザ媒質である、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項6】
前記レーザ媒質は、イオンドープ型の固体レーザ媒質である、
請求項4に記載のレーザ素子。
【請求項7】
前記第2共振器は、チャープミラーを有する、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項8】
前記第2反射層及び前記第4反射層の少なくとも一方は、前記チャープミラーである、
請求項7に記載のレーザ素子。
【請求項9】
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavity、前記レーザ媒質の群遅延分散GDDgain medium、及び前記半導体可飽和吸収体の群遅延分散GDDSAが、以下の式(1)の関係を満たすときに、
GDDcavity=2GDDgain medium+2GDDDBR+GDDSA…(1)
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavityは、以下の式(2)を満たすように設定される、
-2000fs2<GDDcavity<2000fs2 …(2)
請求項7に記載のレーザ素子。
【請求項10】
前記第2反射層は、短波波長透過フィルタである、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項11】
前記第2反射層は、
光軸の後方側に配置される第1領域と、
前記第1領域に積層されて、光軸の前方側に配置される第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも光耐久性の高い材料で構成され、
前記第2領域は、前記第1領域よりも光遮断性能の高い材料で構成される、
請求項10に記載のレーザ素子。
【請求項12】
前記第1領域は、屈折率が互いに異なる第1材料層及び第2材料層を交互に積層して構成され、
前記第2領域は、屈折率が互いに異なる第3材料層及び第4材料層を交互に積層して構成される、
請求項11に記載のレーザ素子。
【請求項13】
前記第3材料層及び前記第4材料層の屈折率差は、前記第1材料層及び前記第2材料層の屈折率差よりも大きい、
請求項12に記載のレーザ素子。
【請求項14】
前記第3材料層及び前記第4材料層のバンドギャップ差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のバンドギャップ差よりも大きい、
請求項12に記載のレーザ素子。
【請求項15】
前記第3材料層及び前記第4材料層のレーザ誘起損傷閾値の差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のレーザ誘起損傷閾値の差よりも大きい、
請求項12に記載のレーザ素子。
【請求項16】
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体のそれぞれの線膨張係数の相違度は20%以内である、
請求項1に記載のレーザ素子。
【請求項17】
レーザ素子と、
前記レーザ素子の照射光又は前記照射光の反射光に基づき画像データを生成する撮像部と、を備え、
前記レーザ素子は、
第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ素子及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ技術は、微細加工、医療及び測距など種々の分野で幅広く利用されている。モードロックレーザは、従来のQスイッチレーザよりも、はるかに短いパルス幅で、かつ非常に高いピークパワーのレーザ光を生成でき、しかも、熱が発生する前にレーザ光の全エネルギを伝搬できるため、非熱的なレーザ加工及びセンシング用途などへの応用が期待されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Femtosecond pulses from a modelocked integrated external-cavity surface emitting laser (MIXSEL) https://opg.optica.org/oe/fulltext.cfm?uri=oe-21-21-24904&id=268839
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非特許文献1のレーザ装置は、励起光を外部から入射させる必要があり、構造が複雑化して小型化が困難である。より具体的には、非特許文献1のレーザ装置では、光軸の斜め方向から励起光を入射させている。このため、レーザ装置の内部に設けられる利得媒質は、励起光と発振光のモードマッチのために、極端に薄くせざるを得ない。しかも、利得媒質は、励起光を最大で2パスで吸収させなければならず、吸収係数を高くする必要がある。このため、非特許文献1では、半導体量子井戸構造の利得媒質を用いている。
【0005】
ところが、半導体量子井戸構造の利得媒質は、キャリア寿命が短くて十分にエネルギを蓄積できないため、超短パルスのレーザ光を生成する際の光-パルス光変換効率が1%未満になる。固体レーザ媒質を用いると、キャリア寿命を長くできて、光-パルス光変換効率も向上できるが、吸収係数は半導体材料程大きくないため厚みを増す必要があり、この結果、励起光と発振光のモードマッチが確保できなくなる。
【0006】
本開示は、上記の課題を解決するために、超短パルスで高ピークパワーのレーザ光を生成でき、かつ小型化が可能で、光―パルス光変換効率を向上可能なレーザ素子及び電子機器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本開示によれば、第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
レーザ素子が提供される。
【0008】
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体は、各光軸が一軸上に配置される一体化された構造体であってもよい。
【0009】
前記半導体可飽和吸収体は、所定の変調深さ及びリカバリータイムを有する量子井戸構造を含んでもよい。
【0010】
前記半導体可飽和吸収体は、透過型で変調深さΔRが0.5~2%であるとともに、リカバリータイムτfastが500fs(フェムト秒)未満であってもよい。
【0011】
前記レーザ媒質は、固体レーザ媒質であってもよい。
【0012】
前記レーザ媒質は、イオンドープ型の固体レーザ媒質であってもよい。
【0013】
前記第2共振器は、チャープミラーを有してもよい。
【0014】
前記第2反射層及び前記第4反射層の少なくとも一方は、前記チャープミラーであってもよい。
【0015】
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavity、前記レーザ媒質の群遅延分散GDDgain medium、及び前記半導体可飽和吸収体の群遅延分散GDDSAが、以下の式(1)の関係を満たすときに、
GDDcavity=2GDDgain medium+2GDDDBR+GDDSA…(1)
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavityは、以下の式(2)を満たすように設定されてもよい。
-2000fs2<GDDcavity<2000fs2 …(2)
【0016】
前記第2反射層は、短波波長透過フィルタであってもよい。
【0017】
前記第2反射層は、
光軸の後方側に配置される第1領域と、
前記第1領域に積層されて、光軸の前方側に配置される第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも光耐久性の高い材料で構成され、
前記第2領域は、前記第1領域よりも光遮断性能の高い材料で構成されてもよい。
【0018】
前記第1領域は、屈折率が互いに異なる第1材料層及び第2材料層を交互に積層して構成され、
前記第2領域は、屈折率が互いに異なる第3材料層及び第4材料層を交互に積層して構成されてもよい。
【0019】
前記第3材料層及び前記第4材料層の屈折率差は、前記第1材料層及び前記第2材料層の屈折率差よりも大きくてもよい。
【0020】
前記第3材料層及び前記第4材料層のバンドギャップ差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のバンドギャップ差よりも大きくてもよい。
【0021】
前記第3材料層及び前記第4材料層のレーザ誘起損傷閾値の差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のレーザ誘起損傷閾値の差よりも大きくてもよい。
【0022】
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体のそれぞれの線膨張係数の相違度は20%以内であってもよい。
【0023】
また、本開示によれば、レーザ素子と、
前記レーザ素子の照射光又は前記照射光の反射光に基づき画像データを生成する撮像部と、を備え、
前記レーザ素子は、
第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
電子機器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】第1の実施形態によるレーザ素子の概略構成を示す断面図である。
【
図2】第1の実施形態による励起光源の電極構造を示す断面図である。
【
図3】第1の実施形態によるレーザ素子の電極配置を示す平面図である。
【
図4】一比較例によるレーザ装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】一比較例によるレーザ素子及び出力カプラの断面図である。
【
図6】第1の実施形態の一変形例によるレーザ素子の概略構成を示す断面図である。
【
図7】第2の実施形態における第2反射層の特性を示すグラフである。
【
図8】第2反射層に用いることができる材料の特性を示すグラフである。
【
図9】内視鏡システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示すカメラ及びCCUの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図11】顕微鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して、レーザ素子及び電子機器の実施形態について説明する。以下では、レーザ素子及び電子機器の主要な構成部分を中心に説明するが、レーザ素子及び電子機器には、図示又は説明されていない構成部分や機能が存在しうる。以下の説明は、図示又は説明されていない構成部分や機能を除外するものではない。
【0026】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態によるレーザ素子1の概略構成を示す断面図である。レーザ素子1は、励起光源(積層半導体層)2と、レーザ媒質3と、可飽和吸収体(半導体可飽和吸収体)4を備える。レーザ素子1は、励起光源2、レーザ媒質3、及び可飽和吸収体4が一体化された構造である。励起光源2、レーザ媒質3、及び可飽和吸収体4の光軸は一軸上に配置される。
【0027】
励起光源2は、レーザ媒質3を励起させるための励起光L1を生成する。励起光源2は、基板21、第5反射層R5、クラッド層22、活性層23、クラッド層24、及び第1反射層R1を順に積層した、積層構造の半導体層(以下、積層半導体層)で構成されている。
【0028】
図1は、基板21側から連続波(CW:Continuous Wave)の励起光(第1波長の光)L1を出射するボトムエミッション型の構成の励起光源2を示しているが、励起光源2は、第1反射層R1側からCW励起光を出射するトップエミッション型の構成も取り得る。また、第1波長の光は必ずしも連続波である必要はなく、パルス波であってもよい。
【0029】
基板21は、例えばn-GaAs基板である。n-GaAs基板は、励起光源2の励起波長である励起光L1を一定の割合で吸収するため、励起光L1の吸収を抑制するために極力薄くするのが望ましい。その一方で、基板21は、例えば他の部材と接合する際の機械的強度を維持できる程度の厚みを持たせるのが望ましい。
【0030】
活性層23は、励起光L1の面発光を行う。活性層23の両側に配置されるクラッド層22、24は、例えばAlGaAsクラッド層である。第1反射層R1は、励起光L1を透過させずに反射させる必要がある。第5反射層R5は、励起光L1に対して一定の透過率を有する。第1反射層R1と第5反射層R5には、例えば、電気伝導が可能な半導体分布反射層(DBR:Distributed Bragg Reflector)が用いられる。
図1では不図示の電極から第1反射層R1と第5反射層R5を介して外部から電流が注入され、活性層23内の量子井戸で再結合と発光が生じて、励起光L1が生成される。
【0031】
第5反射層R5は、例えば基板21上に配置される。例えば、第5反射層R5は、n型ドーパント(例えばシリコン)を添加したAlz1Ga1-z1As/Alz2Ga1-z2As(0≦z1≦z2≦1)からなる多層反射膜を有する。第5反射層R5は、n-DBRとも呼ばれる。
【0032】
活性層23は、例えば、Alx1Iny1Ga1-x1-y1As層とAlx3Iny3Ga1-x3-y3As層を積層した多重量子井戸層を有する。
【0033】
第1反射層R1は、例えば、p型ドーパント(例えば炭素)を添加したAlz3Ga1-z3As/AlZ4Ga1-z4As(0≦z3≦z4≦1)からなる多重反射膜を有する。第1反射層R1は、p-DBRとも呼ばれる。
【0034】
励起光共振器として機能する励起光源2内の各半導体層(第5反射層R5、クラッド層22、活性層23、クラッド層24、及び第1反射層R1)は、例えばMOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition:有機金属気相成長)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy:分子線エピタキシ法)等の結晶成長法を用いて形成される。そして上記の各半導体層は、結晶成長後に、素子分離のためのメサエッチング、絶縁膜の形成、及び電極膜の蒸着等のプロセスを経て、電流注入による駆動が可能となる。
【0035】
励起光源2は、レーザ媒質3を励起可能な励起光を生成可能な部材であればよく、具体的な材料は問わない。例えば、励起光源2に用いられる材料は、結晶質材料でもよいしセラミック等の非晶質材料でもよい。励起光源2は、励起光L1をレーザ媒質3に入射できればよく、集光部材などの光制御部材を必ずしも設ける必要はない。
【0036】
図1では、励起光源2の電極構造などの詳細な層構成を省略している。励起光源2の詳細な構成については後述する。
【0037】
励起光源2の基板21の第5反射層R5とは反対側、即ち光軸の後方側には、レーザ媒質3が配置されている。レーザ媒質3は、第2反射層R2及び第3反射層R3を有する。なお、本明細書では、レーザ素子1の光軸に沿って出射されるレーザ光の出射方向を光軸の後方と呼び、出射方向とは反対の方向を光軸の前方と呼ぶ。
【0038】
第2反射層R2は、励起光源2の光出射面に対向する第1面S1に配置されている。第3反射層R3は、第1面S1よりも光軸の後方側の第2面S2に配置されている。レーザ媒質3は、第2反射層R2及び第3反射層R3の間に配置されている。
【0039】
レーザ媒質3は、励起光L1により励起され、発振光(第2波長の光)L2を出射する。レーザ媒質3は、励起光源2と可飽和吸収体4との間に配置される。
【0040】
レーザ媒質3には、例えばイオンドープ型の固体レーザ媒質が用いられる。レーザ媒質3の材料としては、例えばYb(イットリビウム)をドープしたYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)結晶Yb:YAGが用いられる。なお、レーザ媒質3は、固体レーザ媒質が望ましいが、半導体レーザ媒質を用いることも可能である。
【0041】
固体レーザ媒質は、半導体レーザ媒質と比べて、励起光L1の吸収係数が低い一方、キャリア寿命が長く励起光L1のエネルギを蓄積しやすい。したがって、励起光L1の吸収係数に制約がない場合は、レーザ媒質3は固体レーザ媒質であることが望ましい。固体レーザ媒質を用いることで、光―パルス光変換効率を向上できる。
【0042】
レーザ媒質3には、Yb:YAGに限らず、例えば、Nd:YAG、Nd:YVO4、Nd:YLF、Nd:glass、Yb:YAG、Yb:YLF、Yb:FAP、Yb:SFAP、Yb:YVO、Yb:glass、Yb:KYW、Yb:BCBF、Yb:YCOB、Yb:GdCOB、Yb:YABのいずれかの材料が用いられてもよい。
【0043】
また、レーザ媒質3は、4準位系の固体レーザ媒質であってもよいし、3準位系の固体レーザ媒質であってもよい。ただし、それぞれの結晶によって、適切な励起波長は異なるので、レーザ媒質3の材料に応じて、励起光源2内の半導体材料が選択される必要がある。例えばGaN(ガリウムナイトライド)の励起光源2に対しては、Ti:S(チタン・サファイア)のレーザ媒質3が用いられる。
【0044】
一対の第2反射層R2及び第3反射層R3のうち、励起光源2側に設けられる第2反射層R2は、例えば、励起光源2から出射された励起光L1を透過させ、かつ、レーザ媒質3から出射された発振光L2を所定の反射率で反射させる必要がある。
【0045】
一方、励起光源2とは反対側に設けられる第3反射層R3は、例えば励起光源2から出射された励起光L1を所定の反射率で反射させ、かつ、レーザ媒質3から出射された発振光L2を透過させる必要がある。
【0046】
第2反射層R2及び第3反射層R3には、例えば、誘電体多層膜が用いられる。誘電体多層膜の厚さは、例えばレーザ発振波長の4分の1であり、総数は数層から数百層であり、材料にはSiO2又はSiNなどが用いられ得る。
【0047】
励起光源2及びレーザ媒質3は、第1共振器11を構成する。第1共振器11の内部には、3つの反射層(第1反射層R1、第5反射層R5、及び第3反射層R3)が設けられる。このため、第1共振器11は、結合共振器(Coupled Cavity)構造である。
【0048】
図1のレーザ素子1は、レーザ媒質3の第3反射層R3に対向するように配置される可飽和吸収体4を備えている。可飽和吸収体4は、第4反射層R4を有する。
【0049】
可飽和吸収体4は、光吸収の飽和により光吸収率が小さくなる性質を有する部材である。例えば可飽和吸収体4は、レーザ媒質3から出射された発振光L2を吸収し、その吸収に伴い、可飽和吸収体4の透過率が増加する。可飽和吸収体4は、励起準位の電子密度が増大して励起準位が満たされた場合に透明化する。これにより、第2反射層R2と第4反射層R4の間に配置される光共振器(第2共振器12)のQ値が高まり、レーザ発振が生じる。
【0050】
また、可飽和吸収体4では、第2共振器12の内部を伝搬する複数の波長の光のピークが揃ったわずかな期間に光の強度が極端に高くなるモード同期(モードロック)が生じる。モード同期により、可飽和吸収体4からフェムト秒オーダの超短パルス幅の発振光L2が出射される。超短パルス幅の発振光L2を生成するには、透過型SESAM(Semiconductor Saturable Absorber Mirrors、以下、半導体可飽和吸収体と呼ぶ)が用いられる。半導体可飽和吸収体4は、例えば、GaAs/AlAsのDBR上に量子井戸の吸収層(InGaAs)が形成された半導体量子井戸構造(量子井戸25)を有する。半導体可飽和吸収体4は、発振光L2のモード同期を行うために、所定の変調深さ及びリカバリータイムを有する。具体的には半導体可飽和吸収体4は、リカバリータイムτfast典型値が500fs以下であり、変調深さΔR典型値が0.5~2%であることが望ましい。
【0051】
第4反射層R4は、アウトプットカプラの機能を持つ部分反射層である。第4反射層R4は、第2面S2よりも光軸の後方側に配置されている。具体的には第4反射層R4は、可飽和吸収体4の、レーザ媒質3とは反対側の端面、またはその後方に配置される。
【0052】
第2反射層R2と第4反射層R4の間に配置される第2共振器12は、第2反射層R2と第4反射層R4との間で発振光L2を共振させる。第2共振器12は、チャープミラーを有する。より具体的には、第2反射層R2と第4反射層R4の少なくとも一方がチャープミラーである。チャープミラーは、高屈折率層と低屈折率層を交互に配置し、これらの層の厚さを徐々に変化させることで、発振光L2の波長の分散制御を行う。チャープミラーを設けることで、発振光L2の波長分散が補償される。
【0053】
上述したチャープミラーは、群遅延分散(GDD:Group Delay Dispersion)に着目する必要がある。チャープミラーの発振光L2の群遅延分散GDDcavityは、レーザ媒質3における群遅延分散GDDgain mediumと、可飽和吸収体4における群遅延分散GDDSAと、各反射層における群遅延分散GDDDBRとにより、以下の式(1)で表される。
GDDcavity=2GDDgain medium+2GDDDBR+GDDSA・・・(1)
【0054】
ここで、チャープミラーの発振光L2の群遅延分散GDDcavityは、以下の式(2)の範囲内に収まることが望ましい。
-2000fs2<GDDcavity<2000fs2・・・(2)
【0055】
本実施形態によるレーザ素子1は、第1共振器11及び第2共振器12を有する一体構造である。また、第1共振器11及び第2共振器12は、レーザ媒質3を共有する。レーザ素子1は、第1共振器11で励起光L1を生成し、励起光L1のエネルギをレーザ媒質3に蓄積させてレーザ媒質3を励起させ、第2共振器12で発振光L2を生成する。以下、レーザ素子1の動作を説明する。
【0056】
励起光源2の不図示の電極を介して電流が活性層23に注入されることで、活性層23は励起光L1を面発光する。第1共振器11は、励起光源2の第1反射層R1と、レーザ媒質3の第3反射層R3との間で、励起光L1を共振させる。これにより、第1共振器11内に励起光L1のパワーが閉じ込められて、レーザ媒質3が励起される。
【0057】
ここで、励起光L1は、第1反射層R1と第3反射層R3との間を何度も往復する。このため、レーザ媒質3は、吸収係数が低くても、励起光L1を吸収することができる。したがって、レーザ素子1のレーザ媒質3には、より光―パルス光変換効率の高い固体レーザ媒質を用いることができる。励起光L1がレーザ媒質3を何度も往復する構造は、マルチパス構造とも呼ばれる。
【0058】
レーザ媒質3は、励起光L1で励起されることにより、第2波長の発振光L2を生成する。第2共振器12でレーザ発振が起こった最初の段階では、発振光L2は可飽和吸収体4に吸収されてしまい、可飽和吸収体4の出射面側の第4反射層R4からは発振光L2は出射されない。
【0059】
その後、レーザ媒質3に励起光L1が吸収されて十分な励起状態となると、発振光L2のパワーが上昇する。発振光L2のパワーが所定の閾値を超えると、可飽和吸収体4での光吸収率が急激に低下し、レーザ媒質3で発生した発振光L2は可飽和吸収体4を透過できるようになる。これにより、第2共振器12は、レーザ媒質3の第2反射層R2と可飽和吸収体4の第4反射層R4との間で、発振光L2を共振させる。第2反射層R2と第4反射層R4との間では、発振光L2の波長を含む複数の波長の光が共振動作を行い、これらの波長の光のピークが一致するわずかなタイミングでモード同期(モードロック)が生じ、超短パルス幅で、かつ高いパワーの発振光L2が生成される。
【0060】
レーザ素子1の熱耐久性のため、励起光源2、レーザ媒質3、及び可飽和吸収体4の線膨張係数の相違度は、20%以内であることが望ましい。
【0061】
レーザ素子1は、
図1の層構成に加えて、偏光制御素子、集光素子、及びスペーサ等の付加部材を有してもよい。
【0062】
図2は、第1の実施形態による励起光源2の電極構造を示す断面図である。励起光源2は、
図1の層構成に加えて、コンタクト層31、32、n電極41、絶縁層42、PAD43、めっき層44、絶縁層45、p電極46、酸化層47を備える。コンタクト層31は第5反射層R5に接合され、コンタクト層32は第1反射層R1に接合される。
【0063】
n電極41は、コンタクト層31と導通される。コンタクト層31は第5反射層R5に接合され、第5反射層R5はクラッド層22に接合されている。また、p電極46はPAD43に接合され、PAD43はコンタクト層32に接合され、コンタクト層32は第1反射層R1に接合され、第1反射層R1はクラッド層24に接合されている。これにより、活性層23には、p電極46とn電極41の電圧差に応じた電流が流れて、励起光L1が発生される。
【0064】
図3は、第1の実施形態によるレーザ素子1の電極配置を示す平面図である。
図2は、
図3のA-A線方向の断面図である。
図3に示すように、p電極46の周囲に複数のn電極41が配置される。なお、
図3はn電極41、p電極46以外の図示は省略している。
【0065】
図2及び
図3の電極41、46の配置は一例であり、種々の変形例が考えられる。
【0066】
図4は、一比較例によるレーザ装置100の構成を示す斜視図である。レーザ装置100は、レーザ素子50、ヒートシンク51、及び出力カプラ52を備える。
【0067】
レーザ素子50は、光励起モードロック集積外部共振器面発光レーザ(MIXSEL)チップである。レーザ素子50には、外部光源から励起光L11が入射される。レーザ素子50は、出力カプラ52との間でモードロックレーザである発振光L12を生成する。
【0068】
ヒートシンク51は、例えばダイヤモンド放熱板であり、レーザ素子50から発生される熱を吸収する。
【0069】
図5は、
図4に示した一比較例によるレーザ素子50及び出力カプラ52の断面図である。レーザ素子50は、発振光ミラーR11、可飽和吸収体53、励起光ミラーR12、利得媒質54、反射防止(AR)部材55が、ヒートシンク51側から順に積層される半導体積層構造を有する。また、出力カプラ52は発振光ミラーR13を備える。
【0070】
励起光ミラーR12は、外部から入射される励起光L11を所定の反射率で反射する。利得媒質54は、
図1のレーザ媒質3と同様に、励起光L11により励起され発振光L12を生成する。
【0071】
レーザ装置100の可飽和吸収体53には、
図1の可飽和吸収体4と同様に、発振光L12をモード同期する透過型SESAM半導体可飽和吸収体が用いられる。AR部材55は、発振光L12の反射損失を抑制する。
【0072】
レーザ素子50の反射光ミラーR11及び出力カプラ52の反射光ミラーR13は、発振光L12を所定の反射率で反射する。レーザ装置100は、発振光L12を反射光ミラーR11と反射光ミラーR13との間で共振させ、モードロックされた反射光L12を生成する。
【0073】
レーザ装置100は、励起光L11を発光する不図示の外部光源を有するディスクレーザ型の構造である。励起光L11は、可飽和吸収体53及び利得媒質54等の光軸に対して斜めから入射される。励起光L11の光軸と発振光L12の光軸はずれているため、励起光L11と発振光L12をモードマッチさせるのは容易ではなく、レーザ装置100を小型化することが困難になるとともに、利得媒質54を非常に薄くする必要がある。
【0074】
レーザ装置100は、励起光L11が利得媒質54を多数回通過する構造を持たない。利得媒質54には、外部から励起光L11が入射されるとともに、利得媒質54を透過して励起光ミラーR12で反射された励起光L11が再度入射される。このように、利得媒質54に入射される励起光L11は、最大2回のパスしか持たない。
【0075】
このためレーザ装置100は、非常に薄い利得媒質54に、最大2回のパスで励起光L11の全エネルギを吸収させる必要がある。このため、利得媒質54には半導体利得媒質を使用せざるを得ない。半導体利得媒質は、キャリア寿命が短くて十分なエネルギの蓄積ができないため、超短パルス発生時の光-パルス光変換効率が非常に低くなる。
【0076】
上述したように、レーザ装置100は、種々の課題を抱えている。これに対し、本実施形態のレーザ素子1は、励起光源2、レーザ媒質3、及び可飽和吸収体4の各光軸を一軸上に配置し、励起光L1を共振させる第1共振器11と発振光L2を共振させる第2共振器L2とをレーザ媒質3にてオーバーラップさせる。これにより、一体構造化を容易に実現できるとともに、レーザ媒質3の吸収係数の制約がなくなり、より光-パルス光変換効率の高い固体レーザ媒質を適用できる。また、レーザ素子1の内部で励起光L1を生成できるため、外部から励起光を入射させる必要がなくなり、励起光L1と発振光L2を容易にモードマッチさせることができ、半導体プロセスによるシングルチップ構造にすることができる。
【0077】
(第1の実施形態の変形例)
図6は、第1の実施形態の一変形例によるレーザ素子1aの概略構成を示す断面図である。レーザ素子1aは、レーザ素子1と比較して、第3反射層R3が励起光源2に配置されるという点で異なる。第3反射層R3は、励起光源2のレーザ媒質3に対する対向面に配置される。
【0078】
第1共振器11aは、第1反射層R1及び第3反射層R3の間で励起光L1を共振させる。第2共振器12aは、第2反射層R2及び第4反射層R4の間で発振光L2を共振させる。
図6のレーザ素子1aでは、第1共振器11aと第2共振器12aはオーバーラップされない。よって、レーザ媒質3は、励起光L1によるエネルギを蓄積することができず、励起光L1で励起させることはできない。ただし、可飽和吸収体4は
図1と同様に半導体可飽和吸収体で構成されており、モード同期による超短パルス幅の発振光L2を生成できる。
【0079】
図6のレーザ素子1aは、レーザ媒質3の構造を
図1のレーザ素子1よりも簡略化できるものの、可飽和吸収体4から出射される発振光L2のピークパワーは
図1のレーザ素子1よりも低くなる。
【0080】
このように、第1の実施形態によるレーザ素子1は、励起光源2とレーザ媒質3を含む第1共振器11にて励起光L1を共振させ、レーザ媒質3にて励起光L1のエネルギを蓄積させてレーザ媒質3を励起させ、レーザ媒質3と可飽和吸収体4を含む第2共振器12にて発振光L2を共振させる。可飽和吸収体4として半導体可飽和吸収体を用いることで、発振光L2をモードロックさせることができ、超短パルス幅で高ピークパワーの発振光L2を生成できる。レーザ素子1の励起光源2、レーザ媒質3、及び可飽和吸収体4の各光軸は一軸上に配置され、半導体プロセスにより形成可能であるため、シングルチップ化を容易に実現できる。また、本実施形態によるレーザ素子1は、外部から励起光を入射する必要がなく、励起光L1と発振光L2を容易にモードマッチさせることができるとともに、マルチパス構造によりレーザ媒質3の吸収係数の制約がないため、レーザ媒質3として固体レーザ媒質を用いることができ、光-パルス光変換効率を向上できる。
【0081】
(第2の実施形態)
第1の実施形態のレーザ素子から出射される発振光L2は、強い尖塔出力を有するため、第2反射層R2が光損傷を起こすおそれがあり、第2反射層R2の材料には配慮が必要である。また、第2反射層R2は短波波長透過フィルタとして機能しなければならず、短波長の励起光L1を透過するとともに、長波長の発振光L2を遮断することが要求される。このように、第2反射層R2には、光損傷を防止する耐光性と発振光L2を遮断する遮光性の2つが要求される。
【0082】
図7は、第2の実施形態における第2反射層R2の特性を示すグラフである。
図7のグラフの横軸はレーザ媒質3からの光学距離を示し、縦軸は電界強度を示す。第2反射層R2は、レーザ媒質3からの光学距離が小さく電界強度の高いZone1の第1領域と、レーザ媒質3からの光学距離が大きく電界強度の低いZone2の第2領域とを有する。Zone1は、第2反射層R2における光軸の後方側に配置され、Zone2は光軸の前方に配置される。
【0083】
図8は、第2反射層R2に用いることができる材料の特性を示すグラフである。
図8のグラフの横軸はバンドギャップを示し、縦軸はレーザ誘起損傷閾値(LIDT:Laser Induced Damaged Threshold)を示す。
【0084】
Zone1は、屈折率が互いに異なる第1材料層及び第2材料層を交互に積層して構成される。またZone2も、屈折率が互いに異なる第3材料層及び第4材料層を交互に積層して構成される。Zone1における第1材料層及び第2材料層の少なくとも一方の材料は、Zone2における第3材料層及び第4材料層の少なくとも一方の材料とは異なる。
【0085】
Zone1は、Zone2よりも光耐久性の高い材料で構成される。具体的に、Zone1の第1材料層及び第2材料層には、レーザ誘起損傷閾値がより高くて、バンドギャップがより大きい2つの材料(例えば、SiO2及びAl2O3)が用いられる。これにより、第2反射層R2におけるZone1の発振光L2に対する耐光性を向上することができる。
【0086】
Zone2は、Zone1よりも光遮断性能の高い材料で構成される。具体的に、Zone2の第3材料層及び第4材料層には、互いにバンドギャップ差がより大きく、すなわち屈折率差がより大きい2つの材料(例えば、SiO2及びTiO2)が用いられる。これにより、第2反射層R2におけるZone2の発振光L2に対する遮断特性を向上することができる。
【0087】
例えば、
図8に示すように、第1材料層のレーザ誘起損傷閾値及び第2材料層のレーザ誘起損傷閾値のうち、より低い方(すなわち、Al
2O
3)のレーザ誘起損傷閾値は、第3材料層のレーザ誘起損傷閾値及び第4材料層のレーザ誘起損傷閾値のうち、より低い方(すなわち、TiO
2)のレーザ誘起損傷閾値よりも大きくする。Zone3及びZone4のレーザ誘起損傷閾値の差は、Zone1及びZone2のレーザ誘起損傷閾値よりも大きくなる。同様に、第1材料層のバンドギャップ及び第2材料層のバンドギャップのうち、より低い方のバンドギャップは、第3材料層のバンドギャップ及び第4材料層のバンドギャップのうち、より低い方のバンドギャップよりも大きくする。
【0088】
Zone1とZone2は、複数の材料を適用できる。例えばZone1には、MgF2、CaF2、BaF2、LiF、SiO2、MgO、Al2O3、HfO2、ZrO2のうち、いずれか2つ以上が用いられ得る。またZone2には、MgF2、CaF2、LiF、SiO2、MgO、Al2O3、HfO2、ZrO2、TiO2、Nb2O5、Ce2O3、WO3、Yb2O3、Y2O3、Ta2O5、ZnSのうち、いずれか2つ以上が用いられ得る。
【0089】
このように、第2の実施形態における第2反射層R2はZone1とZone2に分けられており、電界強度の高いZone1にレーザ誘起損傷閾値がより高い2つ以上の材料が用いられ、電界強度の低いZone2に互いの屈折率差がより大きい2つ以上の材料が用いられる。これにより第2反射層R2は、電界強度の高いZone1では耐光性を向上させることができるとともに、電界強度の低いZone2では遮断特性を向上させることができる。よって、超短パルス幅で、高ピークパワーの発振光L2が第2反射層R2に繰り返し入射されても、第2反射層R2の光損傷を防止でき、かつ発振光L2を光損失なく反射させることができる。
【0090】
(応用例)
本開示に係る技術は、医療イメージングシステムに適用することができる。医療イメージングシステムは、イメージング技術を用いた医療システムであり、例えば、内視鏡システムや顕微鏡システムである。
【0091】
[内視鏡システム]
内視鏡システムの例を
図9、
図10を用いて説明する。
図9は、本開示に係る技術が適用可能な内視鏡システム5000の概略的な構成の一例を示す図である。
図10は、内視鏡5001およびCCU(Camera Control Unit)5039の構成の一例を示す図である。
図9では、手術参加者である術者(例えば、医師)5067が、内視鏡システム5000を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に手術を行っている様子が図示されている。
図9に示すように、内視鏡システム5000は、医療イメージング装置である内視鏡5001と、CCU5039と、光源装置5043と、記録装置5053と、出力装置5055と、内視鏡5001を支持する支持装置5027と、から構成される。
【0092】
内視鏡手術では、トロッカ5025と呼ばれる挿入補助具が患者5071に穿刺される。そして、トロッカ5025を介して、内視鏡5001に接続されたスコープ5003や術具5021が患者5071の体内に挿入される。術具5021は例えば、電気メス等のエネルギーデバイスや、鉗子などである。
【0093】
内視鏡5001によって撮影された患者5071の体内を映した医療画像である手術画像が、表示装置5041に表示される。術者5067は、表示装置5041に表示された手術画像を見ながら術具5021を用いて手術対象に処置を行う。なお、医療画像は手術画像に限らず、診断中に撮像された診断画像であってもよい。
【0094】
[内視鏡]
内視鏡5001は、患者5071の体内を撮像する撮像部であり、例えば、
図10に示すように、入射した光を集光する集光光学系50051と、撮像部の焦点距離を変更して光学ズームを可能とするズーム光学系50052と、撮像部の焦点距離を変更してフォーカス調整を可能とするフォーカス光学系50053と、受光素子50054と、を含むカメラ5005である。内視鏡5001は、接続されたスコープ5003を介して光を受光素子50054に集光することで画素信号を生成し、CCU5039に伝送系を通じて画素信号を出力する。なお、スコープ5003は、対物レンズを先端に有し、接続された光源装置5043からの光を患者5071の体内に導光する挿入部である。スコープ5003は、例えば硬性鏡では硬性スコープ、軟性鏡では軟性スコープである。スコープ5003は直視鏡や斜視鏡であってもよい。また、画素信号は画素から出力された信号に基づいた信号であればよく、例えば、RAW信号や画像信号である。また、内視鏡5001とCCU5039とを接続する伝送系にメモリを搭載し、メモリに内視鏡5001やCCU5039に関するパラメータを記憶する構成にしてもよい。メモリは、例えば、伝送系の接続部分やケーブル上に配置されてもよい。例えば、内視鏡5001の出荷時のパラメータや通電時に変化したパラメータを伝送系のメモリに記憶し、メモリから読みだしたパラメータに基づいて内視鏡の動作を変更してもよい。また、内視鏡と伝送系をセットにして内視鏡と称してもよい。受光素子50054は、受光した光を画素信号に変換するセンサであり、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)タイプの撮像素子である。受光素子50054は、Bayer配列を有するカラー撮影可能な撮像素子であることが好ましい。また、受光素子50054は、例えば4K(水平画素数3840×垂直画素数2160)、8K(水平画素数7680×垂直画素数4320)または正方形4K(水平画素数3840以上×垂直画素数3840以上)の解像度に対応した画素数を有する撮像素子であることが好ましい。受光素子50054は、1枚のセンサチップであってもよいし、複数のセンサチップでもよい。例えば、入射光を所定の波長帯域ごとに分離するプリズムを設けて、各波長帯域を異なる受光素子で撮像する構成であってもよい。また、立体視のために受光素子を複数設けてもよい。また、受光素子50054は、チップ構造の中に画像処理用の演算処理回路を含んでいるセンサであってもよいし、ToF(Time of Flight)用センサであってもよい。なお、伝送系は例えば光ファイバケーブルや無線伝送である。無線伝送は、内視鏡5001で生成された画素信号が伝送可能であればよく、例えば、内視鏡5001とCCU5039が無線接続されてもよいし、手術室内の基地局を経由して内視鏡5001とCCU5039が接続されてもよい。このとき、内視鏡5001は画素信号だけでなく、画素信号に関連する情報(例えば、画素信号の処理優先度や同期信号等)を同時に送信してもよい。なお、内視鏡はスコープとカメラを一体化してもよく、スコープの先端部に受光素子を設ける構成としてもよい。
【0095】
[CCU(Camera Control Unit)]
CCU5039は、接続された内視鏡5001や光源装置5043を統括的に制御する制御装置であり、例えば、
図10に示すように、FPGA50391、CPU50392、RAM50393、ROM50394、GPU50395、I/F50396を有する情報処理装置である。また、CCU5039は、接続された表示装置5041や記録装置5053、出力装置5055を統括的に制御してもよい。例えば、CCU5039は、光源装置5043の照射タイミングや照射強度、照射光源の種類を制御する。また、CCU5039は、内視鏡5001から出力された画素信号に対して現像処理(例えばデモザイク処理)や補正処理といった画像処理を行い、表示装置5041等の外部装置に処理後の画素信号(例えば画像)を出力する。また、CCU5039は、内視鏡5001に対して制御信号を送信し、内視鏡5001の駆動を制御する。制御信号は、例えば、撮像部の倍率や焦点距離などの撮像条件に関する情報である。なお、CCU5039は画像のダウンコンバート機能を有し、表示装置5041に高解像度(例えば4K)の画像を、記録装置5053に低解像度(例えばHD)の画像を同時に出力可能な構成としてもよい。
【0096】
また、CCU5039は、信号を所定の通信プロトコル(例えば、IP(Internet Protocol))に変換するIPコンバータを経由して外部機器(例えば、記録装置や表示装置、出力装置、支持装置)と接続されてもよい。IPコンバータと外部機器との接続は、有線ネットワークで構成されてもよいし、一部または全てのネットワークが無線ネットワークで構築されてもよい。例えば、CCU5039側のIPコンバータは無線通信機能を有し、受信した映像を第5世代移動通信システム(5G)、第6世代移動通信システム(6G)等の無線通信ネットワークを介してIPスイッチャーや出力側IPコンバータに送信してもよい。
【0097】
[光源装置]
光源装置5043は、所定の波長帯域の光を照射可能な装置であり、例えば、複数の光源と、複数の光源の光を導光する光源光学系と、を備える。光源は、例えばキセノンランプ、LED光源やLD光源である。光源装置5043は、例えば三原色R、G、Bのそれぞれに対応するLED光源を有し、各光源の出力強度や出力タイミングを制御することで白色光を出射する。また、光源装置5043は、通常光観察に用いられる通常光を照射する光源とは別に、特殊光観察に用いられる特殊光を照射可能な光源を有していてもよい。特殊光は、通常光観察用の光である通常光とは異なる所定の波長帯域の光であり、例えば、近赤外光(波長が760nm以上の光)や赤外光、青色光、紫外光である。通常光は、例えば白色光や緑色光である。特殊光観察の一種である狭帯域光観察では、青色光と緑色光を交互に照射することにより、体組織における光の吸収の波長依存性を利用して、粘膜表層の血管等の所定の組織を高コントラストで撮影することができる。また、特殊光観察の一種である蛍光観察では、体組織に注入された薬剤を励起する励起光を照射し、体組織または標識である薬剤が発する蛍光を受光して蛍光画像を得ることで、通常光では術者が視認しづらい体組織等を、術者が視認しやすくすることができる。例えば、赤外光を用いる蛍光観察では、体組織に注入されたインドシアニングリーン(ICG)等の薬剤に励起波長帯域を有する赤外光を照射し、薬剤の蛍光を受光することで、体組織の構造や患部を視認しやすくすることができる。また、蛍光観察では、青色波長帯域の特殊光で励起され、赤色波長帯域の蛍光を発する薬剤(例えば5-ALA)を用いてもよい。なお、光源装置5043は、CCU5039の制御により照射光の種類を設定される。CCU5039は、光源装置5043と内視鏡5001を制御することにより、通常光観察と特殊光観察が交互に行われるモードを有してもよい。このとき、通常光観察で得られた画素信号に特殊光観察で得られた画素信号に基づく情報を重畳されることが好ましい。また、特殊光観察は、赤外光を照射して臓器表面より奥を見る赤外光観察や、ハイパースペクトル分光を活用したマルチスペクトル観察であってもよい。さらに、光線力学療法を組み合わせてもよい。
【0098】
[記録装置]
記録装置5053は、CCU5039から取得した画素信号(例えば画像)を記録する装置であり、例えばレコーダーである。記録装置5053は、CCU5039から取得した画像をHDDやSDD、光ディスクに記録する。記録装置5053は、病院内のネットワークに接続され、手術室外の機器からアクセス可能にしてもよい。また、記録装置5053は画像のダウンコンバート機能またはアップコンバート機能を有していてもよい。
【0099】
[表示装置]
表示装置5041は、画像を表示可能な装置であり、例えば表示モニタである。表示装置5041は、CCU5039から取得した画素信号に基づく表示画像を表示する。なお、表示装置5041はカメラやマイクを備えることで、視線認識や音声認識、ジェスチャによる指示入力を可能にする入力デバイスとしても機能してよい。
【0100】
[出力装置]
出力装置5055は、CCU5039から取得した情報を出力する装置であり、例えばプリンタである。出力装置5055は、例えば、CCU5039から取得した画素信号に基づく印刷画像を紙に印刷する。
【0101】
[支持装置]
支持装置5027は、アーム制御装置5045を有するベース部5029と、ベース部5029から延伸するアーム部5031と、アーム部5031の先端に取り付けられた保持部5032とを備える多関節アームである。アーム制御装置5045は、CPU等のプロセッサによって構成され、所定のプログラムに従って動作することにより、アーム部5031の駆動を制御する。支持装置5027は、アーム制御装置5045によってアーム部5031を構成する各リンク5035の長さや各関節5033の回転角やトルク等のパラメータを制御することで、例えば保持部5032が保持する内視鏡5001の位置や姿勢を制御する。これにより、内視鏡5001を所望の位置または姿勢に変更し、スコープ5003を患者5071に挿入でき、また、体内での観察領域を変更できる。支持装置5027は、術中に内視鏡5001を支持する内視鏡支持アームとして機能する。これにより、支持装置5027は、内視鏡5001を持つ助手であるスコピストの代わりを担うことができる。また、支持装置5027は、後述する顕微鏡装置5301を支持する装置であってもよく、医療用支持アームと呼ぶこともできる。なお、支持装置5027の制御は、アーム制御装置5045による自律制御方式であってもよいし、ユーザの入力に基づいてアーム制御装置5045が制御する制御方式であってもよい。例えば、制御方式は、ユーザの手元の術者コンソールであるマスター装置(プライマリ装置)の動きに基づいて、患者カートであるスレイブ装置(レプリカ装置)としての支持装置5027が制御されるマスタ・スレイブ方式でもよい。また、支持装置5027の制御は、手術室の外から遠隔制御が可能であってもよい。
【0102】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡システム5000の一例について説明した。例えば、本開示に係る技術は、顕微鏡システムに適用されてもよい。
【0103】
[顕微鏡システム]
図11は、本開示に係る技術が適用され得る顕微鏡手術システムの概略的な構成の一例を示す図である。なお、以下の説明において、内視鏡システム5000と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複する説明を省略する。
【0104】
図11では、術者5067が、顕微鏡手術システム5300を用いて、患者ベッド5069上の患者5071に対して手術を行っている様子を概略的に示している。なお、
図11では、簡単のため、顕微鏡手術システム5300の構成のうちカート5037の図示を省略するとともに、内視鏡5001に代わる顕微鏡装置5301を簡略化して図示している。ただし、本説明における顕微鏡装置5301は、リンク5035の先端に設けられた顕微鏡部5303を指していてもよいし、顕微鏡部5303及び支持装置5027を含む構成全体を指していてもよい。
【0105】
図11に示すように、手術時には、顕微鏡手術システム5300を用いて、顕微鏡装置5301によって撮影された術部の画像が、手術室に設置される表示装置5041に拡大表示される。表示装置5041は、術者5067と対向する位置に設置されており、術者5067は、表示装置5041に映し出された映像によって術部の様子を観察しながら、例えば患部の切除等、当該術部に対して各種の処置を行う。顕微鏡手術システムは、例えば眼科手術や脳外科手術に使用される。
【0106】
以上、本開示に係る技術が適用され得る内視鏡システム5000及び顕微鏡手術システム5300の例についてそれぞれ説明した。なお、本開示に係る技術が適用され得るシステムはかかる例に限定されない。例えば、支持装置5027は、その先端に内視鏡5001又は顕微鏡部5303に代えて他の観察装置や他の術具を支持し得る。当該他の観察装置としては、例えば、鉗子、攝子、気腹のための気腹チューブ、又は焼灼によって組織の切開や血管の封止を行うエネルギ処置具等が適用され得る。これらの観察装置や術具を支持装置によって支持することにより、医療スタッフが人手で支持する場合に比べて、より安定的に位置を固定することが可能となるとともに、医療スタッフの負担を軽減することが可能となる。本開示に係る技術は、このような顕微鏡部以外の構成を支持する支持装置に適用されてもよい。
【0107】
本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば光源装置5043又は顕微鏡装置5301に好適に適用され得る。本開示に係る技術を顕微鏡装置5301に適用する場合、例えばモードロックレーザの非常に大きなパルスエネルギーによって誘起される非線形効果を利用した2光子顕微鏡等として適用できる。顕微鏡装置5301に本開示に係る技術を適用することにより、顕微鏡装置5301をより小型化・高精度化でき、手術をより安全にかつより確実に行うことが可能になる。
【0108】
なお、本技術は以下のような構成を取ることができる。
(1)
第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
レーザ素子。
(2)
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体は、各光軸が一軸上に配置される一体化された構造体である、
(1)に記載のレーザ素子。
(3)
前記半導体可飽和吸収体は、所定の変調深さ及びリカバリータイムを有する量子井戸構造を含む、
(1)又は(2)に記載のレーザ素子。
(4)
前記半導体可飽和吸収体は、透過型で変調深さΔRが0.5~2%であるとともに、リカバリータイムτfastが500fs(フェムト秒)未満である、
(3)に記載のレーザ素子。
(5)
前記レーザ媒質は、固体レーザ媒質である、
(1)乃至(4)のいずれか一項に記載のレーザ素子。
(6)
前記レーザ媒質は、イオンドープ型の固体レーザ媒質である、
(4)に記載のレーザ素子。
(7)
前記第2共振器は、チャープミラーを有する、
(1)乃至(6)のいずれか一項に記載のレーザ素子。
(8)
前記第2反射層及び前記第4反射層の少なくとも一方は、前記チャープミラーである、
(7)に記載のレーザ素子。
(9)
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavity、前記レーザ媒質の群遅延分散GDDgain medium、及び前記半導体可飽和吸収体の群遅延分散GDDSAが、以下の(式1)の関係を満たすときに、
GDDcavity=2GDDgain medium+2GDDDBR+GDDSA…(式1)
前記チャープミラーの群遅延分散GDDcavityは、以下の(式2)を満たすように設定される、
-2000fs2<GDDcavity<2000fs2 …(式2)
(7)又は(8)に記載のレーザ素子。
(10)
前記第2反射層は、短波波長透過フィルタである、
(1)乃至(9)のいずれか一項に記載のレーザ素子。
(11)
前記第2反射層は、
光軸の後方側に配置される第1領域と、
前記第1領域に積層されて、光軸の前方側に配置される第2領域と、を有し、
前記第1領域は、前記第2領域よりも光耐久性の高い材料で構成され、
前記第2領域は、前記第1領域よりも光遮断性能の高い材料で構成される、
(10)に記載のレーザ素子。
(12)
前記第1領域は、屈折率が互いに異なる第1材料層及び第2材料層を交互に積層して構成され、
前記第2領域は、屈折率が互いに異なる第3材料層及び第4材料層を交互に積層して構成される、
(11)に記載のレーザ素子。
(13)
前記第3材料層及び前記第4材料層の屈折率差は、前記第1材料層及び前記第2材料層の屈折率差よりも大きい、
(12)に記載のレーザ素子。
(14)
前記第3材料層及び前記第4材料層のバンドギャップ差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のバンドギャップ差よりも大きい、
(12)又は(13)に記載のレーザ素子。
(15)
前記第3材料層及び前記第4材料層のレーザ誘起損傷閾値の差は、前記第1材料層及び前記第2材料層のレーザ誘起損傷閾値の差よりも大きい、
(12)乃至(14)のいずれか一項に記載のレーザ素子。
(16)
前記積層半導体層、前記レーザ媒質、及び前記半導体可飽和吸収体のそれぞれの線膨張係数の相違度は20%以内である、
(1)乃至(15)のいずれか一項に記載のレーザ素子。
(17)
レーザ素子と、
前記レーザ素子の照射光又は前記照射光の反射光に基づき画像データを生成する撮像部と、を備え、
前記レーザ素子は、
第1波長に対する第1反射層と、前記第1波長の面発光を行う活性層と、を有する積層半導体層と、
前記積層半導体層の光軸の後方側に配置され、前記積層半導体層と対向する第1面に第2波長に対する第2反射層および前記第1面と反対側の第2面に前記第1波長に対する第3反射層を有するレーザ媒質と、
前記第2面より光軸の後方側に配置される、前記第2波長に対する第4反射層と、
前記第1反射層および前記第3反射層の間で前記第1波長の光を共振させる第1共振器と、
前記第2反射層および前記第4反射層の間で前記第2波長の光を共振させる第2共振器と、
前記第3反射層と前記第4反射層との間に配置され、モード同期にて前記第2波長の光を生成する半導体可飽和吸収体と、を備え、
前記積層半導体層の光軸及び前記レーザ媒質の光軸は、一軸上に配置される、
電子機器。
【0109】
本開示の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本開示の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本開示の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【符号の説明】
【0110】
1、1a、50 レーザ素子、2 励起光源、3、54 レーザ媒質、4、53 可飽和吸収体、11、11a 第1共振器、12、12a 第2共振器、21 基板、22、24 クラッド層、23 活性層、25 量子井戸、31、32 コンタクト層、41 n電極、42、45 絶縁層、43 PAD、44 めっき層、46 p電極、47 酸化層、51 ヒートシンク、52 出力カプラ、54 利得媒質、55 AR部材、100 レーザ装置