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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137119
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】乗物用外装部品
(51)【国際特許分類】
   F21S 43/20 20180101AFI20240927BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240927BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20240927BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20240927BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
F21S43/20
F21S43/14
F21V3/00 320
F21W104:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048511
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青山 俊介
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭悟
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(57)【要約】
【課題】電磁波の透過性低下を抑制しつつ、低コストでカバーの装飾部を発光させることができる体格の小さい乗物用外装部品を提供する。
【解決手段】乗物用外装部品としての発光エンブレム12は、乗物に搭載されたレーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方に位置するカバー13及びハウジング14を備えている。ハウジング14は、カバー13におけるレーダ装置11側の面を覆うものである。発光エンブレム12は、ハウジング14の内部に配置された発光部24からの光がカバー13の装飾部15に照射されることにより、装飾部15を発光させる。ハウジング14の内部には、発光部24が設けられた平板状の基板25が配置される。基板25は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲を囲むように環状に延びている。ハウジング14の内部には発光部24からの光が装飾部15に向かうよう上記光を反射させるレンズ26が配置されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載されたレーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備え、前記ハウジングは前記カバーにおける前記レーダ装置側の面を覆うものであって、前記ハウジングの内部に配置された発光部からの光が前記カバーの装飾部に照射されることにより、前記装飾部を発光させる乗物用外装部品において、
前記ハウジングの内部には前記発光部が設けられた平板状の基板が配置され、
前記基板は、前記電磁波の送信範囲の外側に配置されており、
前記ハウジングの内部には前記発光部からの光が前記装飾部に向かうよう前記光を反射させるレンズが配置されている乗物用外装部品。
【請求項2】
前記ハウジングは、前記カバーの外縁に対応する位置で前記カバーに向けて突出するフランジと、そのフランジよりも前記カバーの中央寄りの位置で前記カバーに向けて突出するよう屈曲された突出部と、を備え、
前記基板及び前記レンズは、前記突出部と前記フランジとの間に配置されており、
前記レンズには、前記発光部からの光を前記カバーの装飾部に向かうよう反射させる反射面と、その反射面によって反射した光が通過することによって前記光を前記突出部における前記フランジ寄りの角を避けるように屈折させる屈折面と、が形成されている請求項1に記載の乗物用外装部品。
【請求項3】
前記カバーの装飾部には、入射した光を透過及び拡散させる光拡散層が形成されている請求項1又は2に記載の乗物用外装部品。
【請求項4】
前記ハウジングは、前記カバーの外縁に対応する位置で前記カバーに向けて突出するフランジと、そのフランジよりも前記カバーの中央寄りの位置で前記カバーに向けて突出するよう屈曲された突出部と、を備え、
前記基板及び前記レンズは、前記突出部と前記フランジとの間に配置されており、
前記ハウジングの突出部であって前記カバーとの対向する箇所には、前記カバーの装飾部で反射した光を入射したとき、その入射した光を反射及び拡散させる白色層が形成されている請求項1に記載の乗物用外装部品。
【請求項5】
前記カバーの装飾部には、入射した光を透過及び拡散させる光拡散層が形成されている請求項4に記載の乗物用外装部品。
【請求項6】
前記カバー及び前記ハウジングは、エンブレムを形成するカバー及びハウジングである請求項1又は2に記載の乗物用外装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物には、車外の物体を検出するためのミリ波等の電磁波を送受信するレーダ装置が搭載されている。レーダ装置は、上記電磁波を車外に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記電磁波(反射波)を受信する。レーダ装置は、上記電磁波の送受信を通じて車外の物体を検出する。乗物におけるレーダ装置の電磁波の送信方向の前方には、レーダ装置を車外から見えにくくするために、エンブレム等の乗物用外装部品を取り付けることが考えられる。
【0003】
上記乗物用外装部品は、レーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備えている。カバー及びハウジングは、上記電磁波を透過させることが可能な材料によって形成されている。ハウジングは、カバーにおけるレーダ装置側の面を覆うものである。上記カバーは、乗物用外装部品に意匠性を持たせるための装飾部を備えている。こうした乗物用外装部品としては、装飾部の意匠性を高めるためにカバーの装飾部に光を照射して同装飾部を光輝表示させる発光エンブレムが知られている。
【0004】
特許文献1の実施例1には、乗物用外装部品(発光エンブレム)におけるカバーの後ろ側、すなわちレーダ装置側に、板状の導光体を配置するとともに、その導光体に向けて光を照射するための発光部を有する基板を上記導光体の外縁部に配置することが記載されている。この場合、発光部から導光体に入射された光が導光体内で拡散することにより、導光体全体が明るく光る。その結果、カバーの装飾部が導光体からの光を受けて均一に光輝表示される。
【0005】
また、特許文献1の実施例2には、乗物用外装部品(発光エンブレム)におけるカバーの後ろ側であって、レーダ装置から送信される電磁波の送信範囲の外側に発光部を有する基板を配置し、且つ、その発光部からの光をカバーの装飾部に向けて直接的に照射することが記載されている。発光部を有する基板を上述したように配置するのは、そうした基板はレーダ装置から送信された電磁波を透過させにくいためである。この場合、特許文献1の実施例1のような導光体を省略することができるため、乗物用外装部品の構成が簡略化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-93378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の実施例1のように乗物用外装部品の後ろ側に導光体を配置すると、レーダ装置から送信された電磁波が導光体を通過する。導光体が電磁波を通過させることが可能な材料で形成されているとしても、レーダ装置から送信された電磁波が上記導光体を通過する際に減衰する分、乗物用外装部品における電磁波の透過性が低下する。
【0008】
また、特許文献1の実施例2のように、上記導光体を省略すれば乗物用外装部品における電磁波の透過性低下を抑制できる。この場合、レーダ装置から送信される電磁波の送信範囲の外側に発光部を配置するとともに、その発光部からの光がカバーの装飾部に向かうように発光部を指向させなければならない。上記発光部からカバーの装飾部に向けて光を照射する場合、その装飾部に対する発光部からの光の照射方向に偏りが生じるため、カバーの装飾部を均一に光輝表示させることは難しい。また、発光部からの光がカバーの装飾部に向かうように上記発光部を指向させるためには、発光部を有する基板を可撓性を有するものとし、発光部からの光を上述したように指向させるべく上記基板を曲げることが考えられる。しかし、可撓性を有する基板は高価であるため、乗物用外装部品の製造コストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
次に、上記課題を解決する乗物用外装部品の各態様について記載する。
(態様1)
乗物に搭載されたレーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備え、前記ハウジングは前記カバーにおける前記レーダ装置側の面を覆うものであって、前記ハウジングの内部に配置された発光部からの光が前記カバーの装飾部に照射されることにより、前記装飾部を発光させる乗物用外装部品において、前記ハウジングの内部には前記発光部が設けられた平板状の基板が配置され、前記基板は、前記電磁波の送信範囲の外側に配置されており、前記ハウジングの内部には前記発光部からの光が前記装飾部に向かうよう前記光を反射させるレンズが配置されている乗物用外装部品。
【0010】
上記構成によれば、発光部が設けられた平板状の基板は、前記ハウジングの内部で電磁波の送信範囲の外側に配置されている。発光部はカバーの装飾部に向けて指向していないとしても、発光部からの光はレンズで反射することによってカバーの装飾部に向けて照射される。これにより、カバーの装飾部が発光させられる。従って、装飾部に発光部の光を照射するため、発光部を装飾部に向けて指向させるべく、高価な可撓性を有する基板を採用する必要がない。その結果、乗物用外装部品の製造コストを低く抑えることができる。言い換えれば、乗物用外装部品におけるカバーの装飾部を低コストで発光させることができる。また、カバーの装飾部とレーダ装置との間に導光体を配置しなくても、カバーの装飾部に発光部からの光を照射して装飾部を発光させることができる。この場合、レーダ装置から送信される電磁波が上記導光体を通過しない分、その通過に伴って乗物用外装部品における電磁波の透過性が低下することを抑制できる。更に、上記導光体を配置しなくてもよい分、乗物用外装部品の体格を小さくすることができる。
【0011】
(態様2)
前記ハウジングは、前記カバーの外縁に対応する位置で前記カバーに向けて突出するフランジと、そのフランジよりも前記カバーの中央寄りの位置で前記カバーに向けて突出するよう屈曲された突出部と、を備え、前記基板及び前記レンズは、前記突出部と前記フランジとの間に配置されており、前記レンズには、前記発光部からの光を前記カバーの装飾部に向かうよう反射させる反射面と、その反射面によって反射した光が通過することによって前記光を前記突出部における前記フランジ寄りの角を避けるように屈折させる屈折面と、が形成されている(態様1)に記載の乗物用外装部品。
【0012】
上記構成によれば、発光部が設けられた基板は、ハウジングにおけるフランジと突出部との間に配置される。発光部からの光は、ハウジングにおけるフランジと突出部との間に配置されるレンズの反射面により、カバーの装飾部に向かうよう反射される。このように反射された光がハウジングにおける突出部の角によって遮られることは、その光がレンズの屈折面を通過して上記突出部の角を避けるように屈折することによって抑制される。従って、カバーの装飾部に到達する発光部からの光が少なくなることを抑制できる。
【0013】
(態様3)
前記カバーの装飾部には、入射した光を透過及び拡散させる光拡散層が形成されている(態様1)又は(態様2)に記載の乗物用外装部品。
【0014】
上記構成によれば、発光部からの光がカバーの装飾部に照射されると、その装飾部における光拡散層に上記光が入射される。光拡散層は、入射した上記光を透過及び拡散させることにより、光って見えるようになる。その結果、装飾部の意匠性をより一層向上させることができる。また、光拡散層に入射した上記光は、その光拡散層である程度反射してハウジング側に向かう。そして、光拡散層とハウジングとの間で上記光が複数回反射することにより、カバーの装飾部を均一に発光させることができるようになる。
【0015】
(態様4)
前記ハウジングは、前記カバーの外縁に対応する位置で前記カバーに向けて突出するフランジと、そのフランジよりも前記カバーの中央寄りの位置で前記カバーに向けて突出するよう屈曲された突出部と、を備え、前記基板及び前記レンズは、前記突出部と前記フランジとの間に配置されており、前記ハウジングの突出部であって前記カバーとの対向する箇所には、カバーの装飾部で反射した光を入射したとき、その入射した光を反射及び拡散させる白色層が形成されている(態様1)に記載の乗物用外装部品。
【0016】
上記構成によれば、発光部からの光がカバーの装飾部に照射されるとき、その光は装飾部である程度反射して同装飾部に近い位置にあるハウジングの突出部における白色層にも到達する。白色層は、上記光が入射されると、その光を反射及び拡散させる。白色層で上記光がある程度反射してカバーの装飾部に向かうと、装飾部と白色層との間で上記光が複数回反射する。これにより、カバーの装飾部を均一に発光させることができるようになる。
【0017】
(態様5)
前記カバーの装飾部には、入射した光を透過及び拡散させる光拡散層が形成されている(態様4)に記載の乗物用外装部品。
【0018】
上記構成によれば、発光部からの光がカバーの装飾部に照射されると、その装飾部における光拡散層に上記光が入射される。光拡散層は、入射した上記光を透過及び拡散させることにより、光って見えるようになる。その結果、装飾部の意匠性をより一層向上させることができる。また、光拡散層に入射した上記光は、その光拡散層である程度反射してハウジングの突出部側に向かい、突出部における白色層に到達する。白色層は、上記光が入射されると、その光を反射及び拡散させる。白色層で上記光がある程度反射してカバーの装飾部における光拡散層に向かうと、光拡散層と白色層との間で上記光が複数回反射する。これにより、カバーの装飾部を均一に発光させることができるようになる。
【0019】
(態様6)
前記カバー及び前記ハウジングは、エンブレムを形成するカバー及びハウジングである(態様1)~(態様5)のいずれか一つに記載の乗物用外装部品。
【0020】
上記構成によれば、乗物用外装部品であるエンブレムを、電磁波の透過性低下を抑制しつつ、低コストでカバーの装飾部を発光させることができる体格の小さい発光エンブレムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】乗物用外装部品としての発光エンブレムを示す正面図である。
図2】発光エンブレム及びレーダ装置を図1の矢印2-2方向から見た状態を示す断面図である。
図3図1の発光エンブレムのカバーにおける装飾部及びその周辺を拡大して示す断面図である。
図4図1の発光エンブレムのハウジングの突出部におけるカバーと対向する箇所を拡大して示す断面図である。
図5】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの突出部を透過する際の減衰量と、突出部におけるカバーと対向する箇所の傾斜角度との関係を示すグラフである。
図6】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの突出部及びカバーを透過する際の減衰量と、カバーの中央とハウジングの突出部の中央との間の距離との関係を示すグラフである。
図7】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの突出部及びカバーを透過した後の減衰量と、ハウジングにおけるフランジの角度との関係を示すグラフである。
図8】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの突出部及びカバーを透過する際の減衰量と、レーダ装置におけるミリ波の送信範囲と基板との間の距離との関係を示すグラフである。
図9図2の発光エンブレムにおけるレンズ及びその周辺を拡大して示す断面図である。
図10】発光エンブレムに設けられるレンズの比較例を示す断面図である。
図11】発光エンブレムのカバーにおける装飾部の白色層の他の例を示す断面図である。
図12】乗物用外装部品の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、乗物用外装部品の一実施形態について、図1図10を参照して説明する。
図1は乗物用外装部品としての発光エンブレム12を示しており、図2図1の発光エンブレム12を矢印2-2方向から見た状態を示している。発光エンブレム12としては、自動車等の乗物の外装パネルに形成された開口部に嵌め込まれるものとすることが考えられる。こうした外装パネルとしては、バンパー等の通風口のないパネル、グリル等の通風口を有するパネル、及び、ガーニッシュ等の装飾を目的としたパネルなどがあげられる。
【0023】
図2に示すように、乗物にはレーダ装置11が搭載されている。レーダ装置11は、電磁波としてミリ波を車外に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記ミリ波、すなわち反射波を受信する。レーダ装置11は、そうしたミリ波の送受信を通じて車外の物体を検出する。レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲は、例えば図2に二点鎖線L1で示す範囲となる。上記発光エンブレム12は、乗物におけるレーダ装置11よりも上記ミリ波の送信方向の前方、すなわち図2の左方に配置されている。その結果、レーダ装置11が発光エンブレム12によって車外から見えにくくなる。
【0024】
<発光エンブレム12の概略>
発光エンブレム12は、レーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方に位置するカバー13及びハウジング14を備えている。カバー13及びハウジング14は、ミリ波等の電磁波を透過させることが可能な材料によって形成されている。ハウジング14は、カバー13におけるレーダ装置11側、すなわち図2の右側の面を覆うものである。
【0025】
カバー13は、装飾部15と枠部16とを備えている。装飾部15は、発光エンブレム12の意匠性を高めるためのものであり、基材17、光拡散層18、及び加飾層19によって形成されている。基材17は、樹脂により板状に形成されている。基材17は、ミリ波を透過させることが可能であり、且つ、可視光を透過させることが可能となっている。基材17の外縁には、樹脂製の上記枠部16が溶着されている。枠部16は、ハウジング14を取り付けるためのものであり、基材17の外縁に沿って環状に延びている。
【0026】
図3は、カバー13における装飾部15及びその周辺の断面を拡大して示している。装飾部15における基材17の後面、すなわち図3の右面には光拡散層18が形成されている。光拡散層18は、ミリ波を透過させることが可能となっている。また、光拡散層18は、入射した光を透過及び拡散させるものとなっている。基材17の前面、すなわち図3の左面には、ミリ波を透過させることが可能な加飾層19が形成されている。基材17の前面及び加飾層19は、透明な樹脂等からなる透明層27によって覆われている。この透明層27の前面には、保護等のためのハードコート層28が形成されている。透明層27及びハードコート層28は、ミリ波を透過させることが可能であり、且つ、可視光を透過させることが可能となっている。従って、カバー13の装飾部15は、透明層27及びハードコート層28を介して車外から見えるようになる。
【0027】
図2に示すハウジング14は、ミリ波を透過させることが可能な樹脂等の材料によって形成されている。ハウジング14は、フランジ21と突出部22とを備えている。フランジ21は、カバー13の外縁、すなわち枠部16に対応する位置で、カバー13の枠部16に向けて突出するものである。フランジ21は、カバー13の枠部16と同様、カバー13の外縁に沿って環状に延びている。そして、フランジ21が枠部16に取り付けられることにより、ハウジング14がカバー13におけるレーダ装置11側の面を覆うように位置する。突出部22は、ハウジング14におけるフランジ21よりもカバー13の中央寄りの箇所に位置している。突出部22は、ハウジング14の上記箇所をカバー13に向けて突出するよう屈曲することによって形成されている。この突出部22をハウジング14に形成することにより、発光エンブレム12におけるカバー13とハウジング14との距離を短くすることができるため、発光エンブレム12の体格を小さく抑えることができる。
【0028】
図4は、ハウジング14の突出部22におけるカバー13と対向する箇所の断面を拡大して示している。図4から分かるように、突出部22におけるカバー13と対向する箇所には、白色層23が形成されている。この白色層23は、入射した光を反射及び拡散させるものとなっている。白色層23に入射した光の白色層23での反射は、全反射であることが好ましい。なお、白色層23は、必ずしも光の入射によって白く見えるものである必要はなく、入射した光を拡散する拡散層としてのみ機能するものであってもよい。突出部22及び白色層23は、ミリ波を透過させることが可能となっている。
【0029】
図2に示す発光エンブレム12は、カバー13の装飾部15に光を照射することにより、装飾部15を発光させるものである。ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22との間には、発光部24が設けられた平板状の基板25が配置されている。発光部24は、カバー13の装飾部15に光を照射するためのものであり、例えばLEDを採用することが考えられる。この発光部24からの光をカバー13の装飾部15に照射することによって装飾部15が発光される。発光部24が設けられた上記基板25は、ミリ波を透過しにくいため、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲の外側で、その送信範囲を囲むように環状に延びている。発光部24は、環状の基板25に沿って所定間隔をおいて配置されている。
【0030】
平板状の上記基板25は、カバー13の内部におけるフランジ21と突出部22との間に配置され、その位置で環状に延びている。これにより、基板25の指向する方向、言い換えれば発光部24からの光の照射方向が、レーダ装置11におけるミリ波の送信方向とほぼ同じになる。その結果、基板25における発光部24からの光を、フランジ21と突出部22との間からカバー13の装飾部15に照射することが難しくなる。このことに対処するため、ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22との間であって、発光部24よりもレーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方に、レンズ26が配置されている。レンズ26は、発光部24からの光が装飾部15に向かうよう上記光を反射させるためのものである。
【0031】
<発光エンブレム12の各所の角度及び寸法>
図5のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の突出部22を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、突出部22におけるカバー13と対向する箇所の角度、詳しくはレーダ装置11におけるミリ波の送信方向である図2の一点鎖線と直交する面に対する傾斜角度である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記傾斜角度の増加に対し、図5に実線で示すように小さくなっていく。そして、発光エンブレム12の上記傾斜角度は、例えば1°以上とすることが考えられ、3°以上とすることが好ましい。また、上記傾斜角度の上限値は、発光エンブレム12の大きさ等の設計要因によって決まる。上記傾斜角度は、上記上限値よりも小さくされる。
【0032】
図6のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の突出部22及びカバー13を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、カバー13の中央とハウジング14の突出部22の中央との間の距離である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記距離の変化に対し、図6に実線で示すように変化する。図6から分かるように、上記距離にはミリ波の減衰量を最小とし得る値が存在し、その値よりも上記距離が短くなるほどミリ波の減衰量が大きくなるとともに、上記値よりも上記距離が長くなるほどミリ波の減衰量が大きくなる。ミリ波の減衰量が最小となるときの上記距離は、ミリ波における半波長の整数倍の距離である。そして、発光エンブレム12における上記距離は、ミリ波の減衰量を最小とし得る値を含む所定範囲内の値とされている。
【0033】
図7のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の突出部22及びカバー13を透過した後の減衰量を示している。こうしたミリ波の減衰が生じるのは、レーダ装置11から送信されたミリ波がフランジ21に当たってある程度反射することが原因である。すなわちフランジ21に当たって反射したミリ波は互いに接近するため、発光エンブレム12におけるレーダ装置11からのミリ波の送信方向の前方でミリ波同士の干渉が生じる。こうしたミリ波同士の干渉により、ハウジング14の突出部22及びカバー13を透過した後のミリ波には減衰が生じる。
【0034】
図7のグラフの横軸は、ハウジング14におけるフランジ21の角度、詳しくは図2に示す一点鎖線に対する傾斜角度である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、フランジ21の角度の増加に対し、図7に実線で示すように小さくなっていく。これは、フランジ21の角度が小さいと、フランジ21で反射したミリ波が互いに接近するように進みやすくなることから、ミリ波同士の干渉が生じやすくなるためである。一方、フランジ21の角度が大きいと、フランジ21で反射したミリ波が互いに接近するように進むことが抑制されることから、ミリ波同士の干渉が生じにくくなる。
【0035】
発光エンブレム12におけるフランジ21の角度は、例えば1°以上とすることが考えられ、3°以上とすることが好ましい。また、フランジ21の角度の上限値は、発光エンブレム12の大きさ等の設計要因によって決まる。フランジ21の角度は、上記上限値よりも小さくされる。なお、図7において、フランジ21の角度が0~5°のとき、ミリ波の減衰量が変化していないのは、その減衰量には発光エンブレム12における前述した図5に示す傾斜角度及び図6に示す距離、並びに、後述する図8に示す距離の影響が含まれているためである。これらの影響を排除した条件のもとでは、フランジ21の角度が0~5°のとき、その角度が大きくなるほど上記減衰量が徐々に小さくなる。
【0036】
図8のグラフも、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の突出部22及びカバー13を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲、すなわち図2に二点鎖線L1で示す範囲と、その範囲を囲むように配置された基板25との距離である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記距離の減少に対し、図8に実線で示すように小さくなっていく。そして、発光エンブレム12の上記距離は、図8に実線で示すミリ波の減衰量が予め定められたレベルとなる値よりも大きくされている。
【0037】
<レンズ26>
図9に示すように、レンズ26は、発光部24に対しレーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方、すなわち図9の左方に位置している。発光部24からの光は、レーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方、すなわちカバー13に向けて照射される。レンズ26には反射面29と屈折面30とが形成されている。反射面29は、発光部24からの光をカバー13の装飾部15に向かうよう反射させるためのものである。屈折面30は、反射面29で反射した光が通過することによって上記光を突出部22におけるフランジ21寄りの角を避けるように屈折させるためのものである。なお、図9における破線の矢印は、発光部24からの光が進む経路を示している。
【0038】
図10には、レンズ26に図9のような屈折面30を形成していない場合に発光部24からの光が進む経路を破線の矢印で示している。発光エンブレム12の体格を小さくするためにハウジング14に突出部22を形成すると、発光部24からの光がレンズ26の反射面29によって反射した後に突出部22におけるフランジ21寄りの角によって遮られる。その結果、カバー13の装飾部15に到達する光が少なくなる。しかし、レンズ26に図9のような屈折面30を形成すれば、反射面29で反射した光が、屈折面30を通過して屈折するため、突出部22の上記角によって遮られることは抑制される。
【0039】
次に、本実施形態における発光エンブレム12の作用効果について説明する。
(1)発光部24が設けられた平板状の基板25は、ハウジング14の内部で、レーダ装置11によるミリ波の送信範囲の外側で、その送信範囲を囲むように環状に延びている。発光部24はカバー13の装飾部15に向けて指向していないとしても、発光部24からの光はレンズ26の反射面29で反射することによってカバー13の装飾部15に向けて照射される。これにより、カバー13の装飾部15が発光する。従って、装飾部15に発光部24の光を照射するため、発光部24を装飾部15に向けて指向させるべく、高価な可撓性を有する基板25を採用する必要がない。その結果、発光エンブレム12の製造コストを低く抑えることができる。言い換えれば、発光エンブレム12におけるカバー13の装飾部15を低コストで発光させることができる。
【0040】
(2)カバー13の装飾部15とレーダ装置11との間に従来のような導光体を配置しなくても、カバー13の装飾部15に発光部24からの光を照射して装飾部15を発光させることができる。この場合、レーダ装置11から送信されるミリ波が上記導光体を通過しない分、その通過に伴って発光エンブレム12におけるミリ波の透過性が低下することを抑制できる。更に、上記導光体を配置しなくてもよい分、発光エンブレム12の体格を小さくすることができる。
【0041】
(3)発光部24が設けられた基板25は、ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22との間に配置される。発光部24からの光は、ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22との間に配置されるレンズ26の反射面29により、カバー13の装飾部15に向かうよう反射される。このように反射された光がハウジング14における突出部22の角によって遮られることは、その光がレンズ26の屈折面30を通過して上記突出部22の角を避けるように屈折することによって抑制される。従って、カバー13の装飾部15に到達する発光部24からの光が少なくなることを抑制できる。
【0042】
(4)発光部24からの光がカバー13の装飾部15に照射されると、その装飾部15における光拡散層18に上記光が入射される。光拡散層18は、入射した上記光を通過及び拡散させることにより、光って見えるようになる。その結果、装飾部15の意匠性をより一層向上させることができる。
【0043】
(5)カバー13における装飾部15の光拡散層18に入射した発光部24からの光は、その光拡散層18である程度反射してハウジング14の突出部22側に向かうことにより、ハウジング14の突出部22における白色層23に到達する。白色層23に入射した光は、その白色層23である程度反射してカバー13の装飾部15における光拡散層18に向かう。そして、光拡散層18と白色層23との間で上記光が複数回反射することにより、カバー13の装飾部15を均一に発光させることができるようになる。
【0044】
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
図11に示すように、光拡散層18は、基材17の前面、すなわち図11の左面に形成されていてもよい。この場合、光拡散層18の前面に加飾層19が形成されるとともに、光拡散層18の前面及び加飾層19が透明層27によって覆われる。
【0045】
・白色層23に入射した光の白色層23での反射は、必ずしも全反射である必要はない。
・光拡散層18と白色層23との一方を省略したり、両方を省略したりしてもよい。
【0046】
・ハウジング14における突出部22の形状等に応じてレンズ26の屈折面30を省略してもよい。
・レーダ装置11は、ミリ波以外の電磁波、例えば赤外線やレーザーを送受信するものであってもよい。
【0047】
・乗物用外装部品として、外装パネルの開口部に嵌め込まれる発光エンブレム12を例示したが、例えば図12に示すように発光エンブレム12のカバー13を外装パネル31と一体化することにより、その外装パネル31を乗物用外装部品としてもよい。この場合の外装パネル31、すなわち乗物用外装部品としては、バンパー等の通風口のないパネル、グリル等の通風口を有するパネル、及び、ガーニッシュ等の装飾を目的としたパネルなどがあげられる。
【0048】
・乗物に対する乗物用外装品の取り付け位置は、乗物の前部、側部、及び後部のうちのいずれの位置であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
11…レーダ装置
12…発光エンブレム
13…カバー
14…ハウジング
15…装飾部
16…枠部
17…基材
18…光拡散層
19…加飾層
21…フランジ
22…突出部
23…白色層
24…発光部
25…基板
26…レンズ
27…透明層
28…ハードコート層
29…反射面
30…屈折面
31…外装パネル
図1
図2
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図5
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図10
図11
図12