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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137121
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】乗物用外装部品
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/00 20180101AFI20240927BHJP
   F21S 43/14 20180101ALI20240927BHJP
   F21W 104/00 20180101ALN20240927BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20240927BHJP
【FI】
F21S45/00
F21S43/14
F21W104:00
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048513
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】青山 俊介
(72)【発明者】
【氏名】奥村 晃司
(72)【発明者】
【氏名】近藤 圭悟
(57)【要約】
【課題】レーダ装置から送信された電磁波同士の干渉によるレーダ装置の性能低下を抑制できる車両外装部品を提供する。
【解決手段】車両外装部品としてのエンブレム12は、乗物に搭載されたレーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方に位置するカバー13及びハウジング14を備える。ハウジング14は、カバー13におけるレーダ装置11側の面を覆うものである。ハウジング14は、カバー13の外縁に対応して位置するフランジ21を備える。フランジ21は、カバー13の外縁まで突出することにより、カバー13の外縁と繋がっている。フランジ21は、カバー13の外縁に近づくほどカバー13の中央から離れるよう傾斜している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物に搭載されたレーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備え、
前記ハウジングは、前記カバーにおける前記レーダ装置側の面を覆うものであり、
前記ハウジングは、前記カバーまで突出するフランジを備え、
前記フランジは、前記カバーまで突出することにより、前記カバーと繋がっている乗物用外装部品において、
前記フランジは、その突出方向における前記カバーに近い箇所が前記カバーから遠い箇所よりも前記カバーの中央から離れている乗物用外装部品。
【請求項2】
前記フランジは、前記レーダ装置における電磁波の送信方向に延びる直線に対し、定められた傾斜角度をもって傾斜するものであり、
前記フランジの前記傾斜角度は、1°以上とされている請求項1に記載の乗物用外装部品。
【請求項3】
前記カバー及び前記ハウジングは、エンブレムを形成するカバー及びハウジングである請求項1又は2に記載の乗物用外装部品。
【請求項4】
前記カバーと前記ハウジングとの間には、入射した光を透過及び拡散させる板状の導光体が配置されており、
前記導光体と前記カバーとの間には、前記導光体に向けて光を発する発光部が設けられた透明基板が配置されている請求項3に記載の乗物用外装部品。
【請求項5】
前記透明基板の中央には孔が形成されている請求項4に記載の乗物用外装部品。
【請求項6】
前記導光体と前記ハウジングとの間には、前記導光体を透過した前記発光部からの光を反射させる光学反射材が配置されている請求項4に記載の乗物用外装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用外装部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の乗物には、車外の物体を検出するためのミリ波等の電磁波を送受信するレーダ装置が搭載されている。レーダ装置は、上記電磁波を車外に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記電磁波(反射波)を受信する。レーダ装置は、上記電磁波の送受信を通じて車外の物体を検出する。乗物におけるレーダ装置の電磁波の送信方向の前方には、レーダ装置を車外から見えにくくするため、特許文献1に示されるように乗物用外装部品を取り付けることが考えられる。
【0003】
上記乗物用外装部品は、レーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備えている。カバー及びハウジングは、上記電磁波を透過させることが可能な材料によって形成されている。ハウジングは、カバーにおけるレーダ装置側の面を覆うものである。ハウジングは、カバーの外縁に対応して位置するフランジを備えている。フランジは、カバーの外縁まで突出することにより、カバーの外縁と繋がっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-93378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
レーダ装置から車外に向けて送信された電磁波は、上記乗物用外装部品のハウジング及びカバーを通過する際、ハウジングのフランジに当たる。フランジは、電磁波を透過する材料によって形成されているとしても、上述したように電磁波が当たることによってある程度は上記電磁波を反射する。このようにフランジで反射した電磁波は、互いに接近するように進むため、車両外装部品におけるレーダ装置からの電磁波の送信方向の前方で電磁波同士の干渉が生じる。その結果、レーダ装置から車外に向けて送信された電磁波の減衰が大きくなるため、レーダ装置の性能が低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
次に、上記課題を解決する乗物用外装部品の各態様について記載する。
(態様1)
乗物に搭載されたレーダ装置における電磁波の送信方向の前方に位置するカバー及びハウジングを備え、前記ハウジングは、前記カバーにおける前記レーダ装置側の面を覆うものであり、前記ハウジングは、前記カバーまで突出するフランジを備え、前記フランジは、前記カバーまで突出することにより、前記カバーと繋がっている乗物用外装部品において、前記フランジは、その突出方向における前記カバーに近い箇所が前記カバーから遠い箇所よりも前記カバーの中央から離れている乗物用外装部品。
【0007】
上記構成によれば、レーダ装置から送信された電磁波は、ハウジング及びカバーを通過する際、ハウジングのフランジに当たることによってある程度反射する。このように反射した電磁波が互いに接近することは、フランジの突出方向におけるカバーに近い箇所がカバーから遠い箇所よりもカバーの中央から離れていることによって抑制される。その結果、乗物用外装部品におけるレーダ装置からの電磁波の送信方向の前方で、電磁波同士の干渉が生じることを抑制できる。更に、そうした電磁波同士の干渉によってレーダ装置から送信された電磁波の減衰が大きくなることを抑制できるため、レーダ装置の性能が低下することを抑制できる。
【0008】
(態様2)
前記フランジは、前記レーダ装置における電磁波の送信方向に延びる直線に対し、定められた傾斜角度をもって傾斜するものであり、前記フランジの前記傾斜角度は、1°以上とされている(態様1)に記載の乗物用外装部品。
【0009】
上記構成によれば、フランジの傾斜角度を1°以上とすることにより、乗物用外装部品におけるレーダ装置からの電磁波の送信方向の前方で、電磁波同士の干渉が生じることを効果的に抑制できる。
【0010】
(態様3)
前記カバー及び前記ハウジングは、エンブレムを形成するカバー及びハウジングである(態様1)又は(態様2)に記載の乗物用外装部品。
【0011】
上記構成によれば、乗物用外装部品であるエンブレムは、比較的小さい形状となるため、ハウジングにおけるフランジ間の距離も短くなりやすい。このようにフランジ間の距離が短いと、フランジに当たって反射した電磁波同士がレーダ装置からの電磁波の送信方向の前方におけるエンブレムに近い位置で干渉するため、レーダ装置から送信される電磁波の減衰が大きくなりやすい。しかし、フランジがカバーの外縁に近づくほどカバーの中央から離れるよう傾斜しているため、上述したことが生じることは抑制される。
【0012】
(態様4)
前記カバーと前記ハウジングとの間には、入射した光を透過及び拡散させる板状の導光体が配置されており、前記導光体と前記カバーとの間には、前記導光体に向けて光を発する発光部が設けられた透明基板が配置されている(態様1)~(態様3)のいずれか一つに記載の乗物用外装部品。
【0013】
上記構成によれば、乗物用外装部品におけるカバーとハウジングとの間には導光体及び透明基板が配置されている。導光体には透明基板に設けられた発光部からの光が入射される。導光体は、発光部からの光を透過及び拡散させることによって明るく光る。これにより、乗物用外装部品の意匠性を向上させることができる。
【0014】
(態様5)
前記透明基板の中央には孔が形成されている(態様4)に記載の乗物用外装部品。
上記構成によれば、透明基板を電磁波を透過させることが可能な材料で形成したとしても、透明基板を電磁波が透過する際に電磁波が減衰することは避けられないため、そうした電磁波の減衰を抑制することを目的に透明基板の中央に孔が形成されている。従って、レーダ装置から送信された電磁波が透明基板の孔を通過することにより、その電磁波の減衰が効果的に抑制される。
【0015】
(態様6)
前記導光体と前記ハウジングとの間には、前記導光体を透過した前記発光部からの光を反射させる光学反射材が配置されている(態様4)又は(態様5)に記載の乗物用外装部品。
【0016】
上記構成によれば、発光体からの光が導光体を透過した場合、導光体を透過した光が光学反射材で反射することによって再び導光体に入射される。従って、導光体により多くの光を入射させることができるため、導光体をより明るく光らせることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態における乗物用外装部品としてのエンブレムを示す正面図である。
図2】エンブレム及びレーダ装置を図1の矢印2-2方向から見た状態を示す断面図である。
図3】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの平板部を透過する際の減衰量と、その平板部の角度との関係を示すグラフである。
図4】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの平板部及びカバーを透過する際の減衰量と、カバーの中央とハウジングの平板部の中央との間の距離との関係を示すグラフである。
図5】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの平板部及びカバーを透過した後の減衰量と、ハウジングにおけるフランジの角度との関係を示すグラフである。
図6】レーダ装置によって送受信されるミリ波がハウジングの平板部及びカバーを透過する際の減衰量と、レーダ装置におけるミリ波の送信範囲と基板との間の距離との関係を示すグラフである。
図7】フランジの角度が小さい場合のミリ波の進み方を示す説明図である。
図8】フランジの角度が大きい場合のミリ波の進み方を示す説明図である。
図9】第2実施形態における乗り物用外装部品としてのエンブレムを示す断面図である。
図10】第1実施形態のエンブレムの他の例を示す断面図である。
図11】第1実施形態のエンブレムの他の例を示す断面図である。
図12】乗物用外装部品としてのエンブレムの他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施形態]
以下、乗物用外装部品の第1実施形態について、図1図8を参照して説明する。
図1は乗物用外装部品としてのエンブレム12を示しており、図2図1のエンブレム12を矢印2-2方向から見た状態を示している。エンブレム12としては、自動車等の乗物の外装パネルに形成された開口部に嵌め込まれるものとすることが考えられる。こうした外装パネルとしては、バンパー等の通風口のないパネル、グリル等の通風口を有するパネル、及び、ガーニッシュ等の装飾を目的としたパネルなどがあげられる。
【0019】
図2に示すように、乗物にはレーダ装置11が搭載されている。レーダ装置11は、電磁波としてミリ波を車外に向けて送信し、車外の物体に当たって反射した上記ミリ波、すなわち反射波を受信する。レーダ装置11は、そうしたミリ波の送受信を通じて車外の物体を検出する。レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲は、例えば図2に二点鎖線L1で示す範囲となる。上記エンブレム12は、乗物におけるレーダ装置11よりも上記ミリ波の送信方向の前方、すなわち図2の左方に配置されている。その結果、レーダ装置11がエンブレム12によって車外から見えにくくなる。
【0020】
<エンブレム12の概略>
エンブレム12は、レーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方に位置するカバー13及びハウジング14を備えている。カバー13及びハウジング14は、ミリ波等の電磁波を透過させることが可能な材料によって形成されている。
【0021】
カバー13は、エンブレム12の意匠性を高めるためのものである。カバー13は、基材17、透明層18、及び加飾フィルム19によって形成されている。基材17は、樹脂により板状に形成されている。基材17は、ミリ波を透過させることが可能であり、且つ、可視光を透過させることが可能となっている。基材17の前面、すなわち図2の左面は、透明な樹脂等からなる上記透明層18によって覆われている。透明層18は、ミリ波を透過させることが可能であり、且つ、可視光を透過させることが可能となっている。透明層18の前面には、入射した光の拡散及び反射を通じて加飾を行う加飾フィルム19が貼り付けられている。加飾フィルム19は、ミリ波を透過させることが可能であり、且つ、可視光を透過させることが可能となっている。
【0022】
ハウジング14は、カバー13におけるレーダ装置11側、すなわち図2の右側の面を覆っている。ハウジング14は、フランジ21と平板部22とを備えている。フランジ21は、カバー13の外縁に対応する位置で、平板部22からカバー13の外縁まで突出している。フランジ21は、カバー13の外縁に沿って環状に延びている。そして、フランジ21がカバー13の外縁に取り付けられることにより、ハウジング14がカバー13におけるレーダ装置11側の面を覆うように位置する。フランジ21は、カバー13の外縁に近づくほどカバー13の中央から離れるよう傾斜している。これにより、フランジ21の突出方向におけるカバー13に近い箇所が、カバー13から遠い箇所よりもカバー13の中央から離れている。
【0023】
カバー13とハウジング14との間には板状の導光体24が配置されている。導光体24は、入射した光を透過及び拡散させるものである。導光体24とカバー13との間には透明基板25が配置されている。透明基板25における「透明」とは半透明も含む。透明基板25には、発光部としてのLED26が設けられている。LED26は、透明基板25における導光体24の外縁に対応する箇所に位置している。透明基板25の中央には孔29が形成されている。その結果、透明基板25は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲の外側で、その送信範囲を囲むようになる。すなわち、透明基板25は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲に対し、ある程度の距離が空けられるようになる。LED26は、導光体24の外縁に沿って所定間隔をおいて配置されている。導光体24は、LED26から入射した光を透過及び拡散させることによって明るく光る。これにより、エンブレム12が発光エンブレムとして機能する。
【0024】
<エンブレム12の各所の角度及び寸法>
図3のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の平板部22を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、ハウジング14における平板部22の角度、詳しくはレーダ装置11におけるミリ波の送信方向である図2の一点鎖線と直交する面に対する傾斜角度である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記傾斜角度の増加に対し、図3に実線で示すように小さくなっていく。そして、エンブレム12の上記傾斜角度は、例えば1°以上とすることが考えられ、3°以上とすることが好ましい。また、上記傾斜角度の上限値は、エンブレム12の大きさ等の設計要因によって決まる。上記傾斜角度は、上記上限値よりも小さくされる。
【0025】
図4のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の平板部22及びカバー13を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、カバー13の中央とハウジング14の平板部22の中央との間の距離である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記距離の変化に対し、図4に実線で示すように変化する。図4から分かるように、上記距離にはミリ波の減衰量を最小とし得る値が存在し、その値よりも上記距離が短くなるほどミリ波の減衰量が大きくなるとともに、上記値よりも上記距離が長くなるほどミリ波の減衰量が大きくなる。ミリ波の減衰量が最小となるときの上記距離は、ミリ波における半波長の整数倍の距離である。そして、エンブレム12における上記距離は、ミリ波の減衰量を最小とし得る値を含む所定範囲内の値とされている。
【0026】
図5のグラフは、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の平板部22及びカバー13を透過した後の減衰量を示している。こうしたミリ波の減衰が生じるのは、レーダ装置11から送信されたミリ波がフランジ21に当たってある程度反射することが原因である。すなわちフランジ21に当たって反射したミリ波は互いに接近するため、エンブレム12におけるレーダ装置11からのミリ波の送信方向の前方でミリ波同士の干渉が生じる。こうしたミリ波同士の干渉により、ハウジング14の平板部22及びカバー13を透過した後のミリ波には減衰が生じる。
【0027】
図5のグラフの横軸は、ハウジング14におけるフランジ21の角度、詳しくは図2に示す一点鎖線の直線に対する傾斜角度である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、フランジ21の角度の増加に対し、図5に実線で示すように小さくなっていく。これは、図7に示すようにフランジ21の角度が小さいと、フランジ21で反射したミリ波が互いに接近するように進みやすくなることから、ミリ波同士の干渉が生じやすくなるためである。一方、図8に示すようにフランジ21の角度が大きいと、フランジ21で反射したミリ波が互いに接近するように進むことが抑制されることから、ミリ波同士の干渉が生じにくくなる。
【0028】
エンブレム12におけるフランジ21の角度は、例えば1°以上とすることが考えられ、3°以上とすることが好ましい。また、フランジ21の角度の上限値は、エンブレム12の大きさ等の設計要因によって決まる。フランジ21の角度は、上記上限値よりも小さくされる。なお、図5において、フランジ21の角度が0~5°のとき、ミリ波の減衰量が変化していないのは、その減衰量にはエンブレム12における前述した図3に示す傾斜角度及び図4に示す距離、並びに、後述する図6に示す距離の影響が含まれているためである。これらの影響を排除した条件のもとでは、フランジ21の角度が0~5°のとき、その角度が大きくなるほど上記減衰量が徐々に小さくなる。
【0029】
図6のグラフも、レーダ装置11によって送受信されるミリ波がハウジング14の平板部22及びカバー13を透過する際の減衰量を示している。このグラフの横軸は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲、すなわち図2に二点鎖線L1で示す範囲と、その範囲を囲むように配置された透明基板25との距離である。上記グラフの縦軸で示されるミリ波の減衰量は、上記距離の減少に対し、図6に実線で示すように小さくなっていく。そして、エンブレム12の上記距離は、図6に実線で示すミリ波の減衰量が予め定められたレベルとなる値よりも大きくされている。
【0030】
次に、本実施形態の乗物用外装部品の作用効果について説明する。
(1-1)レーダ装置11から送信されたミリ波は、乗物用外装部品であるエンブレム12のハウジング14及びカバー13を通過する際、ハウジング14のフランジ21に当たることによってある程度反射する。このように反射したミリ波が互いに接近することは、フランジ21の突出方向におけるカバー13に近い箇所が、カバー13から遠い箇所よりも、カバー13の中央から離れていることによって抑制される。その結果、エンブレム12におけるレーダ装置11からのミリ波の送信方向の前方で、ミリ波同士の干渉が生じることを抑制できる。更に、そうしたミリ波同士の干渉によってレーダ装置11から送信されたミリ波の減衰が大きくなることを抑制できるため、レーダ装置11の性能が低下することを抑制できる。
【0031】
(1-2)
上述したフランジ21の形状は、フランジ21がカバー13の外縁に近づくほどカバー13の中央から離れるよう傾斜していることによって実現される。そして、そのフランジ21の傾斜角度を1°以上、より好ましくは3°以上とすることにより、エンブレム12におけるレーダ装置11からのミリ波の送信方向の前方で、ミリ波同士の干渉が生じることを効果的に抑制できる。
【0032】
(1-3)エンブレム12は、比較的小さい形状となるため、ハウジング14におけるフランジ21間の距離も短くなりやすい。このようにフランジ21間の距離が短いと、フランジ21に当たって反射したミリ波同士がレーダ装置11からのミリ波の送信方向の前方におけるエンブレム12に近い位置で干渉するため、レーダ装置11から送信されるミリ波の減衰が大きくなりやすい。しかし、フランジ21がカバー13の外縁に近づくほどカバー13の中央から離れるよう傾斜しているため、上述したことが生じることは抑制される。
【0033】
(1-4)エンブレム12におけるカバー13とハウジング14との間には導光体24及び透明基板25が配置されている。導光体24には透明基板25に設けられたLED26からの光が入射される。導光体24は、LED26からの光を透過及び拡散させることによって明るく光る。これにより、エンブレム12が発光エンブレムとして機能するため、上記エンブレム12の意匠性を向上させることができる。
【0034】
(1-5)
透明基板25をミリ波を透過させることが可能な材料で形成したとしても、ミリ波が透明基板25を透過する際にミリ波が減衰することは避けられない。そうしたミリ波の減衰を抑制することを目的に透明基板25の中央には孔29が形成されている。その結果、透明基板25は、レーダ装置11におけるミリ波の送信範囲の外側で、その送信範囲を囲むようになる。これにより、レーダ装置11から送信されたミリ波が透明基板25の孔29を通過するため、透明基板25がレーダ装置11からのミリ波の送信の妨げになることを抑制でき、ミリ波の減衰が効果的に抑制される。
【0035】
(1-6)エンブレム12におけるカバー13の加飾は、透明層18の前面に貼り付けられる加飾フィルム19によって行われる。こうした加飾フィルム19によるカバー13の加飾を行うことにより、エンブレム12のカバー13に樹脂製の加飾層を形成して加飾を行う場合よりも、エンブレム12の製造コストを低く抑えることができる。
【0036】
[第2実施形態]
次に、乗物用外装部品の第2実施形態を図9に基づき説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同じ箇所については、第1実施形態と同じ符号を付して詳しい説明を省略する。
【0037】
図9は、この実施形態における乗物用外装部品としてのエンブレム12を示している。このエンブレム12のハウジング14における平板部22には突出部22aが形成されている。突出部22aは、ハウジング14におけるフランジ21よりもカバー13の中央寄りの箇所に位置している。突出部22aは、ハウジング14の上記箇所、すなわち平板部22をカバー13に向けて突出するよう屈曲することによって形成されている。
【0038】
図9のエンブレム12は、カバー13に光を照射することにより、発光エンブレムとして機能するものである。エンブレム12において、ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22aとの間には、LED26が設けられた平板状の基板27が配置されている。基板27は、レーダ装置11によるミリ波の送信範囲の外側で、その送信範囲を囲むように延びている。
【0039】
ハウジング14の内部におけるフランジ21と突出部22aとの間であって、LED26よりもレーダ装置11におけるミリ波の送信方向の前方には、レンズ30が配置されている。レンズ30は、LED26からの光がカバー13における突出部22aと対向する箇所に向かうよう上記光を反射させるためのものである。
【0040】
この実施形態によれば、第1実施形態における(1-1)、(1-2)、(1-3)、及び(1-6)の効果に加え、以下に示す効果が得られるようになる。
(2-1)突出部22aをハウジング14に形成することにより、エンブレム12におけるカバー13とハウジング14との距離を短くすることができるため、エンブレム12の体格を小さく抑えることができる。
【0041】
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0042】
・フランジ21において、その突出方向におけるカバー13に近い箇所がカバー13から遠い箇所よりもカバー13の中央から離れている形状は、それらの箇所の間に段差もしくは凹凸を形成することによって実現してもよい。
【0043】
・第1実施形態において、加飾フィルム19を基材17の後面、すなわち図2の右面に貼り付けるようにしてもよい。基材17及び透明層18は可視光を透過させることが可能であることから、この場合でも車外側から加飾フィルム19が見えるようになるため、加飾フィルム19によるエンブレム12の加飾が可能である。なお、第2実施形態についても同様である。
【0044】
・第1実施形態及び第2実施形態において、エンブレム12の加飾については必ずしも加飾フィルム19によって行う必要はなく、エンブレム12のカバー13に樹脂製の加飾層を形成して加飾を行うことも可能である。
【0045】
・第1実施形態において、図10に示すように、エンブレム12の導光体24とハウジング14との間に、導光体24を透過したLED26からの光を反射させる光学反射材28を配置してもよい。この構成によれば、LED26からの光が導光体24を透過した場合、導光体24を透過した光が光学反射材28で反射することによって再び導光体24に入射される。従って、導光体24により多くの光を入射させることができるため、導光体24をより明るく光らせることができる。
【0046】
・エンブレム12における透明基板25の中央には、第1実施形態のような孔29が形成されていなくてもよい。この場合の例を図11に示す。
・第1実施形態において、導光体24、透明基板25、及びLED26を省略してもよい。
【0047】
・第1実施形態及び第2実施形態において、乗物用外装部品として、外装パネルの開口部に嵌め込まれるエンブレム12を例示したが、例えば図12に示すようにエンブレム12のカバー13を外装パネル31と一体化することにより、その外装パネル31を乗物用外装部品としてもよい。この場合の外装パネル31、すなわち乗物用外装部品としては、バンパー等の通風口のないパネル、グリル等の通風口を有するパネル、及び、ガーニッシュ等の装飾を目的としたパネルなどがあげられる。
【0048】
・乗物に対する乗物用外装品の取り付け位置は、乗物の前部、側部、及び後部のうちのいずれの位置であってもよい。
・第1実施形態及び第2実施形態において、レーダ装置11は、ミリ波以外の電磁波、例えば赤外線やレーザーを送受信するものであってもよい。
【符号の説明】
【0049】
11…レーダ装置
12…エンブレム
13…カバー
14…ハウジング
17…基材
18…透明層
19…加飾フィルム
21…フランジ
22…平板部
22a…突出部
24…導光体
25…透明基板
26…LED
27…基板
28…光学反射材
29…孔
31…外装パネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12