(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137134
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】振動発生装置
(51)【国際特許分類】
B06B 1/06 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B06B1/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048533
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】石井 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】福島 岳行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 由香里
(72)【発明者】
【氏名】清水 寛之
(72)【発明者】
【氏名】濤川 雄一
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA02
5D107CC01
5D107CC10
5D107FF05
(57)【要約】
【課題】小型化かつ高出力化することができる振動発生装置を提供する。
【解決手段】振動発生装置は、圧電体層と、第1方向において前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1方向に直交する第2方向に伸縮する圧電素子10と、前記圧電素子を固定する振動板12と、前記第1方向から見て前記振動板および前記圧電素子を囲む枠体を有し、前記振動板を前記第2方向における前記振動板の両端において固定し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向における前記振動板の両端を自由端とする筐体20と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電体層と、第1方向において前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1方向に直交する第2方向に伸縮する圧電素子と、
前記圧電素子を固定する振動板と、
前記第1方向から見て前記振動板および前記圧電素子を囲む枠体を有し、前記振動板を前記第2方向における前記振動板の両端において固定し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向における前記振動板の両端を自由端とする筐体と、
を備える振動発生装置。
【請求項2】
前記第1方向において前記振動板および前記圧電素子を覆い、前記筐体に固定された第1板部材を備える請求項1に記載の振動発生装置。
【請求項3】
前記振動板と前記第1板部材との間に設けられ、前記振動板に固定され、前記第1板部材に固定されていない錘を備える請求項2に記載の振動発生装置。
【請求項4】
前記第1板部材と前記錘との距離は、前記振動板が振動する振幅の1/2以下である請求項3に記載の振動発生装置。
【請求項5】
前記第1方向において、前記第1板部材とで前記振動板および前記圧電素子を挟み、前記筐体に固定された第2板部材を備える請求項2から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項6】
前記第2板部材は、前記筐体の内部と外部とを接続する貫通孔を有する請求項5に記載の振動発生装置。
【請求項7】
前記振動板を固定し、前記枠体に取り付けられている固定部材を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項8】
前記固定部材のヤング率は前記枠体のヤング率より大きい請求項7に記載の振動発生装置。
【請求項9】
前記第2方向における前記圧電素子の幅は、前記第3方向における前記圧電素子の幅より大きく、
前記第2方向における前記振動板の幅は、前記第3方向における前記振動板の幅より大きい請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項10】
前記圧電素子に、前記電圧として、150Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項11】
前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を50Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項12】
前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する第1搬送波を、150Hz以上かつ1000Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【請求項13】
前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ60Hz以下の周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度が50%以上かつ100%より小さい変調波を供給する駆動装置を備える請求項1から4のいずれか一項に記載の振動発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発生装置に関し、圧電素子を有する振動発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気信号を音波に変換するトランスデューサのように振動発生装置に圧電素子を用いることが知られている。振動発生装置に振動板を有するランジュバン型振動子を用いることが知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
振動板を有する振動発生装置では、振動板を小さくすると出力が低下する。振動板を大きくすると出力は高くなるが大型化してしまう。特に、振動発生装置を薄くする場合に、振動発生装置の小型化と高出力化とを両立することが難しい。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、小型化かつ高出力化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、圧電体層と、第1方向において前記圧電体層を挟む第1電極および第2電極と、を備え、前記第1電極と前記第2電極との間に電圧を印加することで前記第1方向に直交する第2方向に伸縮する圧電素子と、前記圧電素子を固定する振動板と、前記第1方向から見て前記振動板および前記圧電素子を囲む枠体を有し、前記振動板を前記第2方向における前記振動板の両端において固定し、前記第1方向および前記第2方向に直交する第3方向における前記振動板の両端を自由端とする筐体と、を備える振動発生装置である。
【0007】
上記構成において、前記第1方向において前記振動板および前記圧電素子を覆い、前記筐体に固定された第1板部材を備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記振動板と前記第1板部材との間に設けられ、前記振動板に固定され、前記第1板部材に固定されていない錘を備える構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1板部材と前記錘との距離は、前記振動板が振動する振幅の1/2以下である構成とすることができる。
【0010】
前記第1方向において、前記第1板部材とで前記振動板および前記圧電素子を挟み、前記筐体に固定された第2板部材を備える構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第2板部材は、前記筐体の内部と外部とを接続する貫通孔を有する構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記振動板を固定し、前記枠体に取り付けられている固定部材を備える構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記固定部材のヤング率は前記枠体のヤング率より大きい構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記第2方向における前記圧電素子の幅は、前記第3方向における前記圧電素子の幅より大きく、前記第2方向における前記振動板の幅は、前記第3方向における前記振動板の幅より大きい構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、150Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を50Hz以上かつ1000Hz以下の周波数を有する信号波により振幅変調させた変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する第1搬送波を、150Hz以上かつ1000Hz以下である周波数を有する第2搬送波を1Hz以上かつ100Hz以下である周波数を有する信号波で振幅変調された第1変調波で、振幅変調された第2変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【0018】
上記構成において、前記圧電素子に、前記電圧として、10kHz以上かつ100kHz以下の周波数を有する搬送波を1Hz以上かつ60Hz以下の周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度が50%以上かつ100%より小さい変調波を供給する駆動装置を備える構成とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、小型化かつ高出力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、実施例1に係る振動発生装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、実施例1に係る振動発生装置の平面図である。
【
図3】
図3は、実施例1に係る振動発生装置の平面図である。
【
図4】
図4は、実施例1に係る振動発生装置の平面図である。
【
図6】
図6は、実施例1における圧電素子の断面図である。
【
図7】
図7は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の例を示す図である。
【
図8】
図8は、実験1における電圧に対する振幅量を示す図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、実験2におけるサンプルCおよびDの周波数に対するインピーダンスおよび位相を示す図である。
【
図10】
図10は、実験2における電圧に対する振幅量を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例1の変形例1に係る振動発生装置の断面図である。
【
図12】
図12は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の別の例を示す図である。
【
図13】
図13は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号のさらに別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0022】
振動板を有さない振動発生装置として、縦変位型モードの圧電素子を振動方向から押圧することで、小型化かつ高出力化することができる。しかし、薄い筐体を有する振動発生装置に縦変位型モードの圧電素子を用いることは難しい。また、縦変位型モードの圧電素子は、誘電体層を多層積層するため、静電容量が大きくなる。静電容量が大きい場合、高い周波数で駆動しようとすると、消費電力が大きくなる。実施例1では、横変位型モード(d31モードともいう)の圧電素子を用い、筐体を薄くでき、かつ高周波動作における消費電力を抑制可能な振動発生装置について説明する。
【0023】
図1は、実施例1に係る振動発生装置の斜視図である。
図2から
図4は、実施例1に係る振動発生装置の平面図である。
図5(a)および
図5(b)は、
図2から
図4のそれぞれA-A断面図およびB-B断面図である。
図1は、板部材36を外した斜視図である。
図2は、板部材36を設けて、上方から見た平面図である。
図3は、
図2から板部材36を外して、上方から見た平面図である。
図4は、
図3から振動板および圧電素子を外し上方から見た図であり、錘は図示されている。圧電素子10の長辺が延伸する方向をX方向(第2方向)、圧電素子10の短辺が延伸する方向をY方向(第3方向)、X方向およびY方向に直交する方向をZ方向(第1方向)とする。ここで、第1方向、第2方向および第3方向が直交(略直交)するとは、幾何学的な直交に限らず、各方向のなす角度が70°~110°でもよく、80°~100°でもよい。
【0024】
図1から
図5(b)に示すように、実施例1の振動発生装置100では、筐体20の平面形状は、長辺および短辺がそれぞれX方向およびY方向に延伸する長方形である。なお、ここで、長方形(または略長方形)とは、幾何学的な長方形でなくてもよく、例えば角丸長方形または角が直線的にカットされた長方形も含まれる。筐体20の下面および上面にそれぞれ板部材34および36が設けられている。
【0025】
筐体20は、枠体22、段差部24および下壁部25を備えている。段差部24は枠体22の内部に設けられている。下壁部25は段差部24の内部に設けられている。下壁部25の中央部には開口26が設けられている。枠体22、段差部24、下壁部25および開口26の平面形状は、長辺および短辺がそれぞれX方向およびY方向に延伸する長方形である。筐体20のX方向における両辺部には、固定部材30が取り付けられている。固定部材30は、断面形状がL字状であり、本体部31および段差部32を備えている。本体部31の上面(+Z側の面)と枠体22の上面(+Z側の面)との高さはほぼ一致している。段差部32の上面と段差部24の上面との高さはほぼ一致している。枠体22の-Y側の側壁の+X側には筐体20の内部と外部とをつなげる孔23が設けられている。
【0026】
振動板12の上面(+Z側の面)の中央部に圧電素子10が固定されている。圧電素子10の振動板12への固定は、例えばエポキシ樹脂接着剤等の樹脂接着剤または金属接合材を用いる。圧電素子10と振動板12との接合にはエポキシ樹脂等の硬い接着剤を用いることが好ましい。振動板12および圧電素子10の平面形状は、長辺および短辺がそれぞれX方向およびY方向に延伸する長方形である。振動板12のY方向における幅は、圧電素子10のY方向における幅とほぼ同じである。振動板12の下面(-Z側の面)の中央部に錘14が固定されている。錘14の振動板12への固定は、例えばエポキシ樹脂接着剤等の樹脂接着剤または金属接合材を用いる。錘14と振動板12との接合にはエポキシ樹脂等の硬い接着剤を用いることが好ましい。錘14は、下壁部25の開口26内に収まり、錘14の下面は、下壁部25の下面より下に位置する。錘14は、筐体20には接合されていない。錘14の平面形状は長方形である。
【0027】
振動板12のX方向における両端部は固定部材30の段差部32の上面に固定されている。振動板12の段差部32への固定は、例えばエポキシ樹脂接着剤等の樹脂接着剤または金属接合材を用いる。振動板12と固定部材30との接合にはエポキシ樹脂等の硬い接着剤を用いることが好ましい。振動板12のX方向における外側には本体部31が位置している。本体部31により、振動板12がX方向に動くことを制限できる。平面視において、圧電素子10は段差部32には重なっていない。圧電素子10の外部電極45および43にそれぞれ電気的に接続されたケーブル16aおよび16bは、孔23を介し筐体20の外部に引き出されて、駆動装置62に電気的に接続されている。
【0028】
筐体20の下面に板部材34が固定されている。板部材34の上面の4つの角部に凹部が設けられている。筐体20の下面の4つの角部に凸部29が設けられている。凸部29は凹部にはめ込まれている。接合材35は、筐体20と板部材34とを接合する。接合材35は、例えばエポキシ樹脂接着剤等の樹脂接着剤または金属接合材である。Q値を向上させるため、筐体20と板部材34との接合にはエポキシ樹脂等の硬い接着剤を用いることが好ましい。錘14の下面と板部材34との上面とは接合および固定されていない。錘14の下面と板部材34の上面との間は離れていてもよい。錘14の下面と板部材34の下面との距離は、振動板12が振動したときに、錘14の下面は板部材34の上面に当たる程度の距離であることが好ましい。
【0029】
筐体20の上面に板部材36が固定されている。板部材36の下面の4つの角部に凹部が設けられている。筐体20の下面の4つの角部に凸部21が設けられている。凸部21は凹部にはめ込まれている。筐体20と板部材36とは、例えばエポキシ樹脂接着剤等の樹脂接着剤または金属接合材を用い接合されている。Q値を向上させるため、筐体20と板部材36との接合にはエポキシ樹脂等の硬い接着剤を用いることが好ましい。板部材36には、板部材36をZ方向に貫通する孔37が設けられている。孔37は、筐体20内の音波を外部に放出する放音孔として機能する。
【0030】
筐体20、板部材34および36は、例えば金属または樹脂であり、一例としてアクリル樹脂である。固定部材30は、例えば金属または樹脂であり、筐体20より硬い材料が好ましく、例えばステンレス鋼、42アロイ、アルミニウムまたは真鍮であり、一例としてステンレス鋼である。振動板12は、例えば弾性を有する金属または樹脂であり、例えばステンレス鋼、42アロイ、アルミニウムまたは真鍮であり、一例として42アロイである。振動板12が金属の場合、圧電素子10との間に絶縁膜が設けられている。
【0031】
筐体20のX方向およびY方向における幅Wx1およびWy1は、一例としてそれぞれ26mmおよび12mmである。振動板12のX方向およびY方向における幅Wx2およびWy2は、一例としてそれぞれ22mmおよび7.5mmである。圧電素子10のX方向およびY方向における幅Wx3およびWy3は、一例としてそれぞれ18mmおよび7.5mmである。枠体22の内部のX方向およびY方向における幅Wx4およびWy4は、一例としてそれぞれ22.2mmおよび10mmである。段差部24および32の内部のX方向およびY方向における幅Wx5およびWy5は、一例としてそれぞれ20mmおよび9mmである。開口26のX方向およびY方向における幅Wx6およびWy6は、一例としてそれぞれ10mmおよび5mmである。錘14のX方向およびY方向における幅Wx7、Wy7および厚さは、一例としてそれぞれ9mm、3.6mmおよび2.3mmである。固定部材30のY方向における幅Wy8およびWy9は、一例としてそれぞれ7.7mmおよび5.2mmである。
【0032】
枠体22、段差部24および下壁部25の厚さT1、T2およびT3は、それぞれ3mm、2mmおよび1mmである。固定部材30の厚さT4は、一例として2.5mmである。板部材34および36の厚さT5およびT6は、例えば0.8mm~2mmであり、一例としてそれぞれ0.8mmである。振動板12、筐体20、固定部材30、板部材34および36の材料、形状および寸法は適宜設計できる。
【0033】
図6は、実施例1における圧電素子の断面図である。
図6に示すように、圧電素子10では、複数の圧電体層41からなる圧電体40、複数の第1電極42および複数の第2電極44を備えている。複数の第1電極42および複数の第2電極44はZ方向において互い違いに設けられている。1つの圧電体層41は、Z方向において1つの第1電極42と1つの第2電極44とに挟まれている。
【0034】
圧電体40の+X側および-X側の側面に、それぞれ外部電極43および45が設けられている。外部電極43には第1電極42が電気的に接続される。外部電極45には第2電極44が電気的に接続される。外部電極43は、圧電体40の上面(+Z側の面)に回り込んで設けられている。外部電極45は、圧電体40の上面(+Z側の面)および下面(-Z側の面)に回り込んで設けられている。圧電体40の上面の外部電極45と最上層の第1電極42とは最上層の圧電体層41を挟んで設けられ、圧電体40の下面の外部電極45と最下層の第1電極42とは最下層の圧電体層41を挟んで設けられている。
図6では、圧電体層41が8層設けられており、各圧電体層41は、第1電極42と第2電極44とに、または第1電極42と外部電極45とに、挟まれている。
【0035】
外部電極43および45は、それぞれケーブル16bおよび16aを介し駆動装置62に電気的に接続されている。圧電素子10のように、平面形状がX方向に長い短冊状の場合、駆動装置62が外部電極43と45との間に電圧を印加することで、圧電体40は、矢印56のようにX方向に伸縮する。このように、圧電素子10の平面形状は長方形であり、圧電体層41と、Z方向において圧電体層41を挟む第1電極42および第2電極44と、を備え、第1電極42と第2電極44との間に電圧を印加することで長方形の長辺の延伸するXに伸縮する振動モードを横変位型モードまたはd31モードという。
【0036】
図5(a)において、圧電素子10が矢印56のように伸縮すると、振動板12もX方向に伸縮する。振動板12のX方向における両辺部が固定部材30に固定されている。このため、振動板12は矢印57のようにZ方向に振動する。このような駆動方式を慣性駆動方式という。
【0037】
圧電体層41の材料としては、例えばチタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O3)、チタン酸バリウム系材料(BaTiO3、BaはCaでもよく、TiはZrでもよい)、チタン酸ビスマス系材料(BiTiO3、Biの一部がNaでもよい)、ニオブ酸アルカリ系材料(NaNbO3、NaはLiまたはKでもよい)を用いることができる。第1電極42、第2電極44、外部電極43および45の材料としては、例えばAg、Pd、Pt、Cu、NiおよびAu等の金属を用いることができる。圧電素子10は、表面に第1電極42および第2電極44が形成された圧電体シートを積層し、焼結することにより形成される焼結体からなるチップである。
【0038】
[実験1]
実施例1の振動発生装置を用い、振動を発生させる実験を行った。実験に用いた振動発生装置100の各部材の材料および寸法は、上記において一例として記載した材料および寸法である。圧電素子10は、圧電体層41としてPZTを用い、厚さが36μmの圧電体層41の積層数が10層である。振動板12は厚さが0.1mmの42アロイ板である。錘14は、0.58gである。
【0039】
駆動装置62が圧電素子10に信号を供給し、振動する錘14の振幅を測定した。測定では、板部材36上に10gの錘を載せた。用いた信号は以下である。
信号A:250Hzの正弦波
信号B:信号波を10Hzの正弦波とし、搬送波を250Hzの正弦波とした変調波
【0040】
図7は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の例を示す図であり、実験1における信号Bの波形を示す図である。
図7における横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。
図7に示すように、周期T1(周波数f1)の信号は搬送波64である。変調波66の包絡線65は信号波に対応する。信号波は周期T2(周波数f2)である。搬送波64としては正弦波を用いるが、図の簡略化のため搬送波64として三角波を図示している。また、周期T1は周期T2に比べ非常に小さいが、理解しやすいように
図7では周期T1を大きく図示している。変調波66のピーク-ピークの振幅はA1である。変調波66では、搬送波64が信号波により振幅変調されている。
【0041】
図8は、実験1における電圧に対する振幅量を示す図である。横軸は、駆動装置62が圧電素子10に供給する電圧の振幅A1示し、縦軸は、錘のZ方向の振幅量を示す。ドットは測定点を示し、直線はドットをつなぐ線である。
図8に示すように、信号AおよびBともに電圧が大きくなると、振幅量が大きくなる。電圧が30Vのとき、振幅量として12μmが得られた。また、信号AとBとで、電圧に対する振幅量はほとんど変わらない。これにより、信号Aのような正弦波の信号を用い、信号Bのような変調波の振幅量を測定できる。
【0042】
[実験2]
圧電素子10と振動板12を変えて、共振周波数および振幅量を測定した。測定したサンプルCおよびDは以下である。
サンプルC
圧電素子10:厚さが36μmの圧電体層41の積層数が8層
振動板12:厚さが0.08mmmの42アロイ板
サンプルD
圧電素子10:厚さが36μmの圧電体層41の積層数が10層
振動板12:厚さが0.1mmmの42アロイ板
その他の条件は実験1と同じである。
【0043】
図9(a)および
図9(b)は、実験2におけるサンプルCおよびDの周波数に対するインピーダンスおよび位相を示す図である。インピーダンスのピークの周波数が共振周波数である。位相は電圧と電流の位相である。
図9(a)に示すように、サンプルCの共振周波数は35.7kHzである。
図9(b)に示すように、サンプルDの共振周波数は40.5kHzである。位相は、高い周波数では-90°に近い。このように、圧電素子10の積層数を増やし、かつ振動板12を厚くすることで共振周波数が高くなる。また、無効電力はほとんど発生しない。
【0044】
図10は、実験2における電圧に対する振幅量を示す図である。
図10では、サンプルCおよびDに変調波でなく、250Hzの正弦波を供給している。ドットは測定点を示し、直線はドットをつなぐ線である。
図10に示すように、サンプルCおよびDでは、電圧が約22Vのときの振幅量はそれぞれ約7μmおよび約10μmである。同じ電圧に対する振幅量はサンプルDがサンプルCより大きい。
【0045】
サンプルCは共振周波数が低いことから、比較的に低周波の振幅変調に対し良好である。サンプルDは共振周波数が高いことから、比較的高周波の振幅変調に対し良好である。
【0046】
実施例1によれば、筐体20は、Z方向から見て横変位型モードの圧電素子10と振動板12を囲む枠体22を有し、振動板12をX方向における振動板12の両端において固定し、Y方向における振動板12の両端を自由端とする。これにより、慣性駆動方式を実現できる。振動板12に横変位型モードの圧電素子10を貼り付けるため、筐体20、板部材34および36の合計の厚さを小さくできる。よって、薄い振動発生装置を実現できる。また、横変位型モードの圧電素子10の圧電体層41の層数を少なくでき、静電容量を小さくできる。これにより、高い周波数において駆動するときの消費電力を抑制できる。一例では、縦変位型モードの圧電素子を振動方向から押圧する振動発生装置に比べ、10kHz以上の周波数において同程度の振動を発生する場合の消費電力を、約1/2とすることができる。
【0047】
板部材34(第1板部材)は、Z方向において振動板12および圧電素子10を覆い、筐体20に固定されている。板部材34が筐体20に固定されることで、筐体20の共振周波数付近におけるQ値が向上する。これにより、
図7における搬送波の周波数を10kHz以上とした変調波における駆動能力が高くなる。
【0048】
錘14は、振動板12と板部材34との間に設けられ、振動板12に固定され、板部材34に固定されていない。これにより、イナーシャ効果により、高出力化が可能となる。また、例えば1kHz以下の低周波の振動をより明確に表現できる。
【0049】
圧電素子10に電圧を印加しない状態において、錘14は板部材34と接していてもよいし、接していなくてもよい。錘14が板部材34と接していない場合には、振動板12が振動したときには、錘14が板部材34に接することが好ましい、すなわち、錘14と板部材34との距離は、振動板12の振幅の1/2以下である。なお、振動板12の振幅は、圧電素子10に供給される電圧の振幅が最も大きいときの振幅である。このように、錘14が振動したときに錘が板部材34に接触することで、錘14の振動が板部材34に伝達する。これにより、板部材34の表面に触れると、微細な触覚を得ることができる。特に、低周波振動の触覚をより得ることができる。錘14と板部材34との距離は、振動板12の振幅の1/4以下が好ましく、1/10以下がより好ましい。
【0050】
振動板12の固定されていない領域の平面サイズ(幅Wx5×幅Wy2)が、例えば10mm×5mm~30mm×10mmの場合、錘14の重さは、例えば0.1g以上かつ1g以下であり、0.3g以上かつ0.7g以下である。
【0051】
板部材36(第2板部材)は、Z方向において、板部材34とで振動板12および圧電素子10を挟み、筐体20に固定されている。これにより、筐体20の共振周波数付近におけるQ値がより向上する。よって、10kHz以上の周波数の信号を搬送波とする変調波における駆動能力が高くなる。後述する駆動信号の例4のような信号を圧電素子10に供給して、振動している板部材34の表面に触れると、浮揚感覚を得ることができる。また、駆動信号の例4の信号を用いて振動している筐体20のX方向の側面に触れると、浮揚感覚をより得ることができる。
【0052】
板部材36に、筐体20の内部と外部とを接続する孔37(貫通孔)を設けることで、振動を発生するだけでなく、音を放出できる。
【0053】
固定部材30は、振動板12を固定し、枠体22に固定されている。固定部材30により、筐体20の機械振動のQ値を向上できる。
【0054】
特に、固定部材30のヤング率は枠体22のヤング率より大きい。これにより、筐体20のQ値をより向上できる。例えば、筐体20のコストを削減するためには、筐体20はヤング率の小さな樹脂を用いる。この場合、Q値が低くなる。そこで、振動板12を固定する箇所に、固定部材30を設ける。これにより、Q値を向上できかつコストを削減できる。例えば、ステンレス鋼のヤング率は200GPaであり、アクリル樹脂等の樹脂のヤング率は10GPa以下である。固定部材30のヤング率は筐体20のヤング率の5倍以上が好ましく、10倍以上がより好ましく、100倍以上がさらに好ましい。
【0055】
圧電素子10および振動板12のZ方向から見た形状が長方形の例を説明したが、圧電素子10の平面形状は、圧電素子10のX方向における幅Wx3がY方向における幅Wy3より大きい形状であればよい。これにより、圧電素子10はX方向に伸縮する。幅Wx3は幅Wy3の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。振動板12の平面形状は、振動板12のX方向における幅Wx2がY方向における幅Wy2より大きい形状であればよい。これにより、圧電素子10の伸縮により振動板12がZ方向に振動する。幅Wx2は幅Wy2の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
【0056】
圧電素子10により振動板12を振動させる観点から、圧電素子10のY方向における幅Wy3は、振動板12のY方向における幅Wy2の0.5倍以上が好ましく、0.8倍以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
【0057】
圧電素子10が振動板12を効率的に振動させる観点から、圧電素子10のX方向における幅Wx3は、振動板12が固定されていないX方向における幅Wx5の0.5倍以上が好ましく、0.8倍以上がより好ましい、0.9倍以上がさらに好ましい。
【0058】
[実施例1の変形例1]
図11は、実施例1の変形例1に係る振動発生装置の断面図である。実施例1の変形例1はバイモルフ構造の例である。
図11に示すように、実施例1の変形例1の振動発生装置102では、錘が設けられていない。振動板12の上面には圧電素子10aが固定され、振動板12の下面には圧電素子10bが固定されている。圧電素子10aと10bとには、伸縮が反対となるような電圧を供給する。実施例1の変形例1では、駆動源が2倍となり、錘14を設けなくとも高出力が可能となる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0059】
実施例1およびその変形例1では、振動発生装置100および102を薄くできる。このため、耳たぶ、耳甲介腹腔に振動発生装置100および102を装着する。また、耳外耳後方裏側に振動発生装置100および102を挟むことにより、骨伝導によるイヤホンとして用いることができる。また、グローブの指先または腕時計のバンドに実施例1およびその変形例の振動発生装置100および102を設けることで、指先または腕に触覚を与えることができる。さらに、髪飾りまたは髪用のクリップ等に振動発生装置100および102を設けることで、頭に触覚を与えることができる。
【0060】
[駆動信号の例1]
振動発生装置100または102を耳付近に装着し音響装置として用いる場合、駆動装置62は、圧電素子10に、例えば10Hz~10kHzの周波数帯域の音響信号を供給する。
【0061】
[駆動信号の例2]
人体に触覚を与える場合、駆動装置62は、振動発生装置100および102に変調していない信号を供給してもよい。この場合、信号の周波数は、人体の皮膚の受容器であるパチニ小体が敏感に感じる周波数であることが好ましい。このような周波数として例えば、50Hz以上かつ1000Hz以下が好ましく、150Hz以上かつ400Hz以下がより好ましく、一例として250Hzである。また、信号の周波数は、人体の皮膚の受容器であるマイスナー小体に敏感に感じる周波数でもよい。このような周波数として、例えば1Hz以上かつ100Hz以下であり、1Hz以上かつ60Hz以下である。信号波の波形は、正弦波、矩形波、三角波またはのこぎり波等任意である。周波数および信号波の波形を変えることで、人体に与える触覚を調整することが可能となる。
【0062】
[駆動信号の例3]
人体に触覚を与える場合に、駆動装置62が、
図7のような電圧を圧電素子10に供給する場合、搬送波64の周波数f1は、例えばパチニ小体が敏感に感じる周波数であり、信号波の周波数f2は、例えばマイスナー小体に敏感に感じる周波数でもよい。すなわち、周波数f1は、例えば150Hz以上かつ1000Hz以下であり、150Hz以上かつ400Hz以下である。信号波の周波数f2は、例えば1Hz以上かつ100Hz以下であり、1Hz以上かつ60Hz以下である。この場合、周波数f1およびf2を調整することにより、人体に与える触覚をより調整することができる。
【0063】
[駆動信号の例4]
人体に触覚を与える場合に、駆動装置62が、
図7のような電圧を圧電素子10に供給する場合、搬送波64の周波数f1は、例えば筐体20の共振周波数である。共振周波数は、基本波でもよいし高調波でもよい。人体に触覚を与えるためには、搬送波64の周波数は、筐体20の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の範囲が好ましく、0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましい。搬送波64の周波数は、例えば10kHz以上かつ100kHz以下であり、20kHz以上かつ70kHz以下である。
【0064】
人体に触覚を与えるためには、信号波の周波数f2は、パチニ小体が敏感に感じる周波数であることが好ましい。このような周波数として例えば、50Hz以上かつ1000Hz以下が好ましく、150Hz以上かつ400Hz以下がより好ましく、一例として250Hzである。
【0065】
図7において、変調波66における包絡線65の最も大きい振幅をA1、包絡線の最も小さい振幅をA2としたとき、変調度MをM=(A1-A2)/(A1+A2)と定義する。変調波66の変調度Mは例えば50%以上かつ100%以下であり、80%以上かつ100%以下である。
図7の例では、搬送波64および信号波ともに正弦波である。信号波は正弦波以外の矩形波、三角波またはのこぎり波等でもよい。
【0066】
搬送波の周波数を筐体20の共振周波数またはその近傍とし、信号波の周波数および波形を調整することで、例えば、筐体20のX方向の側面のように、比較的面積の小さい面が対象物に接触して静止している状態では、ユーザの手に触覚を与えず、筐体20が対象物に接触しながら移動すると、ユーザの手に振動による浮揚感覚を与えることができる。これは、発明者らがはじめて見出した現象である。
【0067】
[駆動信号の例5]
図12は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号の別の例を示す図である。
図12における横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。
図12に示すように、駆動装置62は圧電素子10に電圧として変調波66を供給する。周期T2(周波数f2)の第2搬送波を周期T3(周波数f3)の信号波により振幅変調し第1変調波を生成する。周期T1(周波数f1)の搬送波64(第1搬送波)を、振幅変調された第1変調波により振幅変調し変調波66(第2変調波)とする。包絡線65aは、信号波と第2搬送波が重畳された波形となる。
【0068】
搬送波64の周波数f1は、筐体20の共振周波数である。共振周波数は、基本波でもよいし高調波でもよい。人体に触覚を与えるためには、搬送波64の周波数は、筐体20の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下の範囲が好ましく、0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましい。搬送波64の周波数は、例えば10kHz以上かつ100kHz以下であり、20kHz以上かつ70kHz以下である。
【0069】
第2搬送波の周波数f2は、パチニ小体に敏感な周波数であり、例えば150Hz以上かつ1000Hz以下であり、150Hz以上かつ400Hz以下である。信号波の周波数f3は、マイスナー小体に敏感な周波数であり、例えば1Hz以上かつ100Hz以下であり、1Hz以上かつ60Hz以下である。変調波66の変調度Mは例えば50%以上かつ100%以下であり、80%以上かつ100%以下である。
【0070】
このように、第2搬送波として、パチニ小体に敏感な周波数を有する信号を用い、信号波としてマイスナー小体に敏感な周波数を有する信号を用いる。例えば周波数f1を変えることで、人体は、異なる触覚を得ることができる。例えば周波数f2を3Hzとすると、パチパチといった触覚が得られ、周波数f2を30Hzとすると、ズィーンといった触覚が得られる。これは、発明者らがはじめて見出した現象である。
【0071】
[駆動信号の例6]
図13は、実施例1において駆動装置が圧電素子に供給する信号のさらに別の例を示す図である。
図13における横軸は時間を示し、縦軸は電圧を示している。搬送波の周期T1(周波数f1)の信号は搬送波64である。変調波66の包絡線65は信号波に対応する。信号波は周期T2(周波数f2)である。搬送波64としては正弦波を用いるが、図の簡略化のため搬送波64として三角波を図示している。また、周期T1は周期T2に比べ非常に小さいが、理解しやすいように
図13では周期T1を大きく図示している。変調波66では、搬送波64が信号波により振幅変調されている。搬送波64は正弦波であり、信号波は矩形波である。
【0072】
搬送波64の周波数f1は、例えば筐体20の共振周波数である。共振周波数は、基本波でもよいし高調波でもよい。信号波の周波数f2は、マイスナー小体が敏感に感じる周波数である。
【0073】
変調波66における包絡線65の最も大きい振幅をA1、包絡線65の最も小さい振幅をA2としたとき、変調度MをM=(A1-A2)/(A1+A2)と定義する。変調波66の変調度Mは例えば50%以上かつ100%より小さい。
【0074】
矩形波は、立ち上がり時間および立ち下り時間が周期T2より十分に小さい波形である。矩形波の立ち上がり時間および立下り時間は、例えば周期T2の1/25倍以下であり、1/100倍以下である。なお、立ち上がり時間および立下り時間の定義は、日本工業規格JIS C 161-02-05が準用される。すなわち、立ち上がり時間および立下り時間は、包絡線65の電圧が振幅A1のときと振幅A2のときの電圧の差に対し10%の電圧のときの時間と90%の電圧のときの時間との差である。
【0075】
以上のように、駆動装置62は、筐体20の共振周波数の周波数を有する搬送波64を搬送波64の周波数より低くマイスナー小体が感じる周波数を有し矩形波である信号波により振幅変調させ、変調度Mを100%より小さい変調波66を生成して、圧電素子10に変調波66を供給する。これにより、硬質な筐体20を触ると柔らかい触覚となる。これは、発明者らがはじめて見出した現象である。
【0076】
柔らかい触覚を得るためには、搬送波64の周波数は、筐体20の共振周波数の0.86倍以上かつ1.14倍以下が好ましく、共振周波数の0.9倍以上かつ1.1倍以下がより好ましく、共振周波数の0.95倍以上かつ1.05倍以下がさらに好ましい。搬送波64の周波数は、例えば10kHz以上かつ100kHz以下であり、20kHz以上かつ70kHz以下である。
【0077】
信号波の周波数は、例えば1Hz以上かつ60Hz以下が好ましく、3Hz以上かつ50Hz以下がより好ましく、13Hz以上かつ28Hz以下がさらに好ましい。変調波66の変調度Mは、50%以上かつ98%以下が好ましく、70%以上かつ90%以下がより好ましい。変調波66のデュティ比(振幅がA1の期間/周期T2)は50%付近が好ましい。デュティ比は、20%以上かつ80%以下でもよく、30%以上かつ70%以下でもよく、40%以上かつ60%以下でもよい。
【0078】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。