(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137153
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】輸送容器の防振装置
(51)【国際特許分類】
B65D 81/107 20060101AFI20240927BHJP
B65D 19/38 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B65D81/107 Z
B65D19/38 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048557
(22)【出願日】2023-03-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-30
(71)【出願人】
【識別番号】593232402
【氏名又は名称】親和パッケージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】川部 優太
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】山口 翔太郎
【テーマコード(参考)】
3E063
3E066
【Fターム(参考)】
3E063BA01
3E063BB01
3E063FF09
3E063FF11
3E063GG03
3E066AA13
3E066CA12
3E066FA05
3E066JA13
3E066KA02
(57)【要約】
【課題】輸送容器の滑材に対して防振装置を容易に取付け可能にする。
【解決手段】本発明の輸送容器の防振装置は、輸送容器100の底部の滑材131に下方から嵌合可能な細長箱状の本体部材(長手部材210と端板部材220)と、本体部材の底壁上に配置された緩衝部材230と、本体部材の内側に突出する係合部(突起部212、221、切起こし部214、217)と、を有し、滑材131に本体部材を嵌合すると共に、係合部を滑材131に係合させることを特徴とする。
【選択図】
図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
輸送容器の底部の滑材に下方から嵌合可能な細長箱状の本体部材と、
当該本体部材の底壁上に配置された緩衝部材と、
前記本体部材の内側に突出する係合部と、を有し、
前記滑材に前記本体部材を嵌合すると共に、前記係合部を前記滑材に係合させるようにした
ことを特徴とする輸送容器の防振装置。
【請求項2】
前記係合部が、前記本体部材の長手方向の両端壁に螺合されたボルトを有することを特徴とする請求項1の防振装置。
【請求項3】
前記係合部が、前記本体部材の長手方向の両端壁に切起こし可能に形成された切起こし部を有することを特徴とする請求項1の防振装置。
【請求項4】
前記係合部が、前記本体部材の長手方向の両端壁の内面に形成されたテーパ状の突起部を有することを特徴とする請求項1の防振装置。
【請求項5】
前記係合部が、前記本体部材の長手方向の両端付近の両側壁内面に形成されたテーパ状の突起部を有することを特徴とする請求項1の防振装置。
【請求項6】
前記滑材がU字状断面を有し、前記係合部が前記U字状断面の滑材の内側底面に係合可能に構成されていることを特徴とする請求項1の防振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は輸送容器の防振装置に係り、特に輸送容器底部の滑材に容易に取付け可能な防振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品をはじめ様々な物品を輸送・保管するのに、鋼製コンテナなどのような輸送容器が広く使用されている。このような輸送容器は、医療機器や計測機器などの精密機器を収容してトラック、貨車、船舶等により輸送する場合、輸送中の物品を防振装置によって保護する場合がある。
【0003】
このような防振装置として、例えば特許文献1(特許第2676066号公報)や特許文献2(特許第7054119号公報)の防振装置が知られている。特許文献1の防振装置は輸送容器底部に積層ゴムと防振ゴムからなる緩衝部材を配設したものである。
【0004】
防振装置に使用される緩衝部材は、十分な緩衝効果を得るためには輸送する物品の荷重に応じて適正化された動的バネ定数を有するのが望ましい。しかし、特許文献1の防振装置は緩衝部材を簡単に交換できる構造ではなかった。
【0005】
これに対して特許文献2の防振装置は、輸送する物品の荷重の大きさや揺れやすさ等に応じて緩衝部材を容易に交換可能に配設している。しかしながら、特許文献2の防振装置は、緩衝部材を保持する取付用部材を床部材に対してスライド式に着脱可能にしているため、緩衝部材の個数が多い場合は取付・交換に手間が掛かる。また、取付用部材を床部材の下面に対して水平方向にスライドさせて取付けるようにしているので、床部材上に重量物を載せている場合は緩衝部材の取付・交換が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2676066号公報
【特許文献2】特許第7054119号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、輸送容器の滑材に防振装置を容易に取付け可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明に係る輸送容器の防振装置は、輸送容器の底部の滑材に下方から嵌合可能な細長箱状の本体部材と、当該本体部材の底壁上に配置された緩衝部材と、前記本体部材の内側に突出する係合部と、を有し、前記滑材に前記本体部材を嵌合すると共に、前記係合部を前記滑材に係合させるようにした、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、輸送容器の滑材に防振装置を容易に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の防振装置を取付け可能な輸送容器の一例の斜視図である。
【
図1B】輸送容器を吊下ろして本発明の防振装置を取付ける状態の側面図である。
【
図2】本発明の防振装置の(a)斜視図と(b)平面図である。
【
図3】輸送容器の床部材の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【
図4】実施形態1の防振装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【
図5】実施形態2の防振装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【
図6】実施形態3の防振装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【
図7】実施形態4の防振装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【
図8】実施形態5の防振装置の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面を参照して説明する。なお、全図を通じて同一又は相当部分には同一符号を付することで、重複した説明を適宜省略することとする。
【0012】
(●輸送容器の概要)
図1Aは、本発明の実施形態に係る防振装置を取付け可能な輸送容器100の一例の外観斜視図である。輸送容器100は鋼板製のコンテナであり、トラック等に搭載可能に構成されている。
【0013】
輸送容器100の底部すなわち床部材130には、U字状断面の滑材131が底部中央と底部両端の合計3本で配設されている。これら滑材131の相互間にフォークリフトのフォーク爪を挿入することで、輸送容器100を持ち上げ可能に構成されている。
【0014】
図1Bは、本発明の実施形態に係る防振装置200を、輸送容器100の各滑材131に取付ける取付方法の一例を示したものである。この取付方法ではクレーンのフックFで輸送容器100を吊上げ、吊下ろしすることで防振装置200を滑材131に取付ける。輸送容器100の重さによっては、クレーンに代えてフォークリフトで輸送容器100を持上げ・持下ろしすることでも、防振装置200を滑材131に取付け可能である。
【0015】
図2(a)(b)は防振装置200の一実施形態を示すものである。
図2(a)が防振装置200の斜視図、
図2(b)が防振装置200の平面図である。
【0016】
図示するように、防振装置200は細長箱状の本体部分を有する。この本体部分は、例えば、断面U字状の溝形鋼による長手部材210と、断面U字状の溝形鋼による端板部材220を相互溶接することで構成することができる。本体部分は細長箱状であれば他の構成でも構わない。
【0017】
細長箱状の本体部分の底壁上3箇所に、ゴム等による緩衝部材230が接着剤等で固定的に配設されている。この緩衝部材230は、輸送容器100で輸送する物品の荷重に対して適正化された動的バネ定数を有するように構成することができる。
【0018】
図示例では本体部分の長手方向中央と両端の3箇所に緩衝部材230が配設されているが、緩衝部材230の数は輸送容器100の重量等によって増減可能である。緩衝部材230は例えば矩形状のゴム板で構成することができる。
【0019】
ゴム板の厚みは、輸送容器100の重量等によって増減可能である。複数枚のゴム板を積層して緩衝部材230を構成することも可能である。
【0020】
図3は、輸送容器100の床部材130の(a)平面図、(b)正面図、(c)側面図を示すものである。床部材130の下部に前述した滑材131が配設されている。これら滑材131に、本発明の実施形態に係る
図2の防振装置200が嵌合されている。
【0021】
床部材130の上部には、輸送容器100内で物品を搭載・保定するための支持部140が配設されている。また、当該支持部140の上面に、搭載物品を載せるゴム板150が配設されている。ゴム板150によって搭載物品の摩擦傷等の底部損傷を防止するようにしている。
【0022】
次に、防振装置200を滑材131に係合するための係合部の構成を
図4-
図8の実施形態1-5を参照して説明する。
【0023】
●実施形態1
図4は実施形態1の防振装置200を示すものである。防振装置200の端板部材220の外側面にナット240が溶接付けされている。ナット240のネジ孔は端板部材220の内側に貫通している。
【0024】
輸送容器100の滑材131を
図1Bのように吊下ろして防振装置200に嵌入すると、滑材131の底壁131aが防振装置200の緩衝部材230の上面に
図4(b)のように着座する。この着座状態で前記ナット240のネジ孔に係合部としてのボルト241を外側から螺合する。そして、ボルト241の先端部241aを端板部材220の内側に所定長さで突出させることで、防振装置200が滑材131から脱落するのが防止される。
【0025】
ボルト241の先端部241aと滑材131の底壁131aとの間は、1~2mm程度の隙間を残しておくのが望ましい。このような隙間を残しておくことで、ボルト241の挿入を円滑にできると共に、輸送中に輸送容器100に作用する衝撃を隙間で逃がして緩和することができる。
【0026】
この実施形態1では、ボルト241を緩める方向に回して取外した後、フォークリフト等で輸送容器100を少し持上げるだけで簡単に防振装置200を取外すことができる。したがって、輸送容器100に収容する物品の重量や種類等に応じて、異なる動的バネ定数の緩衝部材230を有する他の防振装置200を簡単に付替えることができる。また、防振装置200の再利用が可能となる。
●実施形態2
図5は実施形態2の防振装置200を示すものである。防振装置200の端板部材220の内側面に係合部としてのテーパ状の突起部221が一体形成されている。突起部221のテーパ面は
図5(b)のように下方かつ内側に向かって傾斜している。
【0027】
輸送容器100の3本の滑材131を
図1Bのように吊下ろして3本の防振装置200に嵌入すると、滑材131の長手方向両端部が端板部材220の突起部221のテーパ面を乗り越え、滑材131が防振装置200の内側の緩衝部材230に着座する。
【0028】
防振装置200の長手部材210の内側底面には緩衝部材230が配設されているので、滑材131の底壁131aが
図5(b)のように緩衝部材230の上面に着座する。この着座状態で滑材131の底壁131aの長手方向両端部に突起部221が係合するので、防振装置200が滑材131から脱落するのが防止される。
【0029】
図5(b)の係合状態において、突起部221の先端部と滑材131の底壁131aとの間は、1~2mm程度の隙間を残しておくのが望ましい。このような隙間を残しておくことで、突起部221の係合を円滑にできると共に、輸送中に輸送容器100に作用する衝撃を隙間で逃がして緩和することができる。実施形態2の防振装置200は、滑材131に取付ける際に特別な工具を一切必要としないので、防振装置200の取付作業を容易・迅速に行うことができる。
【0030】
●実施形態3
図6は実施形態3の防振装置200を示すものである。この実施形態3では、防振装置200の長手部材210の長手方向両端部付近の両内側面に、係合部としてのテーパ状の突起部212が一対で形成されている。突起部212のテーパ面は
図6(c)のように下方かつ内側に向かって傾斜している。
【0031】
一方、滑材131の長手方向両端部付近の両側壁に矩形状の開口部131bが形成されている。この開口部131bは前記突起部212を受入れ可能な大きさを有し、開口部131bの下縁に突起部212の先端部を係合可能に構成されている。
【0032】
輸送容器100の滑材131を
図1Bのように吊下ろして防振装置200に嵌入すると、滑材131の長手方向両端部の両側壁が突起部212のテーパ面を乗り越え、
図6(b)のように突起部212の先端部が滑材131の開口部131bに係合する。この突起部212の係合と同時に、滑材131の底壁131aが防振装置200の内側の緩衝部材230の上面に着座する。
【0033】
この着座状態で滑材131の開口部131bに突起部212が係合しているので、防振装置200が滑材131から脱落するのが防止される。
【0034】
図6(c)の係合状態において、突起部212の先端部と開口部131bの縁部との間は、1~2mm程度の隙間を残しておくのが望ましい。このような隙間を残しておくことで、突起部212の係合を円滑にできると共に、輸送中に輸送容器100に作用する衝撃を隙間で逃がして緩和することができる。
【0035】
実施形態3では一対の突起部212が滑材131の長手方向両端部付近の両側壁の開口部131bにそれぞれ係合するので、防振装置200の脱落防止が実施形態1に比べてより確実である。また、実施形態3の防振装置200も実施形態1と同様に、滑材131に取付ける際に特別な工具を一切必要としないので、防振装置200の取付作業を容易・迅速に行うことができる。
【0036】
●実施形態4
図7は実施形態4の防振装置200を示すものである。防振装置200の端板部材220に
図7(c)のようにU字状の切欠き213が形成され、当該切欠き213で囲まれた矩形部分が係合部となる切起こし部214として切起こし可能に構成されている。
【0037】
この切起こし部214は、
図7(a)と(b)のように、防振装置200の内側に向けて直角に折倒すことができるようになっている。切起こし部214の基端部にはI字状の切欠き215が入れられ、この切欠き215によって切起こし部214を容易に内側に折倒し可能に構成されている。
【0038】
輸送容器100の滑材131を
図1Bのように吊下ろして防振装置200に嵌入すると、滑材131の底壁131aが防振装置200の緩衝部材230の上面に
図7(b)のように着座する。この着座状態で前記切起こし部214を内側に折倒す。
【0039】
そして、切起こし部214の下面を
図7(b)のように滑材131の長手方向両端部の内側底面に対向させる。これにより、防振装置200が滑材131から脱落するのが防止される。
【0040】
図7(b)の係合状態において、切起こし部214の下面と滑材131の底壁131aとの間は、1~2mm程度の隙間を残しておくのが望ましい。このような隙間を残しておくことで、輸送中に輸送容器100に作用する衝撃を隙間で逃がして緩和することができる。
【0041】
実施形態4では切起こし部214の下面全体を滑材131の内側底面に対向させるので、防振装置200の脱落を確実に防止することができる。また、滑材131の底壁131aの上下両面を緩衝部材230と切起こし部214でサンドイッチ状に挟み込むことができるので、滑材131の上下動を効果的に抑制することができる。
【0042】
また、切起こし部214を内側に折倒した後にU字状の切欠き213の内側が見通し孔となる。この見通し孔から滑材131の内側底面を視認することができる。したがって、切起こし部214が滑材131の長手方向両端部に係合している状態を外部から確認することもできる。
【0043】
●実施形態5
図8は実施形態5の防振装置200を示すものである。この実施形態5では、防振装置200の端板部材220に
図8(c)のようにT字状の切欠き216が形成されている。当該切欠き216により左右に分割された矩形部分が係合部となる切起こし部217として切起こし可能に構成されている。
【0044】
この切起こし部217は、
図8(a)と(b)のように、防振装置200の内側に直角に折曲げることができるようになっている。切起こし部214の基端部にはI字状の切欠き218が入れられ、この切欠き218によって切起こし部217を容易に内側に曲げられるように構成されている。
【0045】
輸送容器100の滑材131を
図1Bのように吊下ろして防振装置200に嵌入すると、滑材131の底壁131aが防振装置200の緩衝部材230の上面に
図8(b)のように着座する。この着座状態で前記切起こし部217を内側に直角に折曲げる。
【0046】
そして切起こし部217の下縁を滑材131の底壁131a上面に対向させる。これにより、防振装置200が滑材131から脱落するのが防止される。
【0047】
図8(b)の係合状態において、切起こし部217の下端と滑材131の底壁131aとの間は、1~2mm程度の隙間を残しておくのが望ましい。このような隙間を残しておくことで、切起こし部217の内側折曲げを容易化すると共に、輸送中に輸送容器100に作用する衝撃を隙間で逃がして緩和することができる。
【0048】
この実施形態5では、一対の切起こし部217で滑材131の浮上りを防止することができるので、防振装置200の脱落を確実に防止することができる。また、切起こし部217を内側に折倒した後にT字状の切欠き216が見通し孔となる。
【0049】
この見通し孔から滑材131の内側底面を視認することができる。したがって、切起こし部217が滑材131の長手方向両端部に係合している状態を外部から確認することもできる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、滑材に係合する係合部は、細長箱状の本体部材の長手方向両端部を左右に閂状に貫通するボルトで構成することも可能である。すなわち、係合部は前述した突起部、切起こし部、ボルト等に限らず、滑材に係合可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0051】
100:輸送容器 130:床部材
131:滑材 131a:底壁
131b:開口部 140:支持部
150:ゴム板 200:防振装置
210:長手部材 212:突起部
213:切欠き 214:切起こし部
215:切欠き 216:切欠き
217:切起こし部 218:切欠き
220:端板部材 221:突起部
230:緩衝部材 240:ナット
241:ボルト 241a:ボルトの先端部
F:フック