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特開2024-137157変性エチレン系重合体組成物とその製造方法、それを含むオレフィン系重合体組成物、及びそれを用いた積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137157
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】変性エチレン系重合体組成物とその製造方法、それを含むオレフィン系重合体組成物、及びそれを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/26 20060101AFI20240927BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 123/26 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 127/12 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240927BHJP
   C09J 123/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 33/10 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 23/02 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 8/00 20060101ALI20240927BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L23/26
C09J133/04
C09J123/26
C09J127/12
C09J11/06
C09J123/02
C08L27/12
C08L33/10
C08L23/02
C08F8/00
B32B27/32 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048565
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 翔平
(72)【発明者】
【氏名】芝田 健一
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 真保
(72)【発明者】
【氏名】樋口 晶光
【テーマコード(参考)】
4F100
4J002
4J040
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB33B
4F100AK01B
4F100AK04A
4F100AK17A
4F100AK25A
4F100AL05A
4F100AL06A
4F100AP00B
4F100AT00B
4F100BA02
4F100DG01B
4F100DG10B
4F100EH17
4F100JA06A
4F100JA13A
4F100JB16B
4F100JK06
4F100YY00A
4J002BB01Z
4J002BB20W
4J002BB21W
4J002BD12Y
4J002BD14Y
4J002BD15Y
4J002BG05X
4J002FD010
4J002FD070
4J002FD17Y
4J002FD20X
4J002FD340
4J002GJ01
4J040DA031
4J040DA111
4J040DA151
4J040DA161
4J040DC091
4J040DF041
4J040DF051
4J040DF061
4J040GA07
4J040GA14
4J040KA11
4J040LA10
4J040MA02
4J040MA08
4J040MA09
4J040MA10
4J040MB02
4J040MB03
4J040MB09
4J040NA06
4J040NA08
4J040QA02
4J100AA02P
4J100AA03Q
4J100AA04Q
4J100AA09Q
4J100AA15Q
4J100AA16Q
4J100AA17Q
4J100AA19Q
4J100AA21Q
4J100AG04Q
4J100AJ02Q
4J100AL02Q
4J100AL02R
4J100AR22R
4J100AS11R
4J100AU21R
4J100CA31
4J100DA12
4J100DA42
4J100HA57
4J100HA61
4J100HC11
4J100HC30
4J100HC34
4J100HC36
4J100HE17
4J100JA03
(57)【要約】
【課題】良好なフィッシュアイの発生低減効果を奏し、基材との高い接着性を示す変性エチレン系重合体組成物を提供する。
【解決手段】変性エチレン系重合体、アクリル系重合体、及びフッ素含有重合体を含み、前記変性エチレン系重合体は、エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体であり、前記アクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含み、変性エチレン系重合体組成物における、前記アクリル系重合体の含有率は0.05~5質量%であり、前記フッ素含有重合体の含有率は0.005~2質量%である、変性エチレン系重合体組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性エチレン系重合体、アクリル系重合体、及びフッ素含有重合体を含み、
前記変性エチレン系重合体は、エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体であり、
前記アクリル系重合体は、構成単位としてメチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む共重合体であり、
変性エチレン系重合体組成物における、前記アクリル系重合体の含有率は0.05~5質量%であり、かつ、前記フッ素含有重合体の含有率は0.005~2質量%である、変性エチレン系重合体組成物。
【請求項2】
前記アクリル系重合体は、前記メチル(メタ)アクリレート単位として、メチルメタクリレート単位を含み、かつ、前記炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位として、ブチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位を含む共重合体である、請求項1に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和化合物が、カルボキシル基、水酸基若しくはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物、又は芳香族ビニル化合物である、請求項1に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和化合物が、前記カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物であり、
前記カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物が、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である、請求項3に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項5】
前記変性エチレン系重合体組成物における、前記エチレン性不飽和化合物の含有率が0.05~10質量%である、請求項1に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項6】
JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.05~50g/10分であり、かつ
JIS K 7112:1999年に準拠して水中置換法で測定される密度が0.85~0.97g/cmである、請求項1に記載の変性エチレン系重合体組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物と、オレフィン系重合体とを含有し、
前記変性エチレン系重合体組成物と前記オレフィン系重合体の質量比が1:99~99:1である、オレフィン系重合体組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の変性エチレン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着された積層体。
【請求項9】
前記被着体である層が、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類の層である、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項7に記載のオレフィン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着された積層体。
【請求項11】
前記被着体である層が、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類の層である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
変性エチレン系重合体組成物の製造方法であって、
エチレン系重合体、エチレン性不飽和化合物、アクリル系重合体、フッ素含有重合体、及びラジカル発生剤を、溶融混練する工程を含み、
前記アクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む共重合体であり、
前記アクリル系重合体の配合量は、前記エチレン系重合体100質量部あたり0.05~5質量部であり、
前記フッ素含有重合体の配合量は、前記エチレン系重合体100質量部あたり0.005~2質量部である、変性エチレン系重合体組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性エチレン系重合体組成物とその製造方法に関する。また、本発明は、上記変性エチレン系重合体組成物を含むオレフィン系重合体組成物、及び、上記変性エチレン系重合体組成物を用いた積層体にも関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、接着性、成形加工性、機械的特性、酸素ガスや炭酸ガス等に対するバリヤ性に優れた、エチレン性不飽和化合物で変成された変性エチレン系重合体組成物が、各種の包装・容器用資材等に使用されている。
【0003】
変性エチレン系重合体組成物は、エチレン性不飽和化合物の使用量やラジカル発生剤の使用量を多くすることによりエチレン性不飽和化合物の付加量を上げ得るものの、変性エチレン系重合体組成物のゲル化等に起因するフィッシュアイが多量に発生する。
【0004】
これに対し、例えば特許文献1では、変性エチレン系重合体組成物を構成する重合体や化合物について特定のものを採用することにより、フィッシュアイの発生を低減できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-036221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された変性エチレン系重合体組成物は、フィッシュアイの発生低減について改善の余地があり、また、基材とのより優れた接着性の実現も望まれる。
【0007】
そこで本発明は、良好なフィッシュアイの発生低減効果を奏し、基材との高い接着性を示す変性エチレン系重合体組成物とその製造方法を提供することを目的とする。また、本発明は、上記変性エチレン系重合体組成物を含むオレフィン系重合体組成物や、上記変性エチレン系重合体組成物を用いた積層体を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、変性エチレン系重合体組成物がアクリル系重合体及びフッ素含有重合体を含み、上記アクリル系重合体について、特定の構成単位を採用することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
【0009】
本発明の態様1は、変性エチレン系重合体、アクリル系重合体、及びフッ素含有重合体を含む変性エチレン系重合体組成物であって、前記変性エチレン系重合体は、エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体であり、前記アクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む共重合体であり、変性エチレン系重合体組成物における、前記アクリル系重合体の含有率は0.05~5質量%部であり、かつ、前記フッ素含有重合体の含有率は0.005~2質量%である。
【0010】
本発明の態様2は、態様1の変性エチレン系重合体組成物において、前記アクリル系重合体は、前記メチル(メタ)アクリレート単位として、メチルメタクリレート単位を含み、かつ、前記炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位として、ブチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位を含む共重合体である。
【0011】
本発明の態様3は、態様1又は態様2の変性エチレン系重合体組成物において、前記エチレン性不飽和化合物が、カルボキシル基、水酸基若しくはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物、又は芳香族ビニル化合物である。
【0012】
本発明の態様4は、態様3の変性エチレン系重合体組成物において、前記エチレン性不飽和化合物が、前記カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物であり、前記カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物が、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である。
【0013】
本発明の態様5は、態様1~態様4のいずれか一つの変性エチレン系重合体組成物において、前記エチレン性不飽和化合物の含有率が0.05~10質量%である。
【0014】
本発明の態様6は、態様1~態様5のいずれか一つの変性エチレン系重合体組成物において、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレートが0.05~50g/10分であり、かつJIS K 7112:1999年に準拠して水中置換法で測定される密度が0.85~0.97g/cmである。
【0015】
本発明の態様7は、オレフィン系重合体組成物であって、態様1~態様6のいずれか一つの変性エチレン系重合体組成物と、オレフィン系重合体とを含有し、前記変性エチレン系重合体組成物と前記オレフィン系重合体の質量比がで1:99~99:1である。
【0016】
本発明の態様8は、積層体であって、態様1~態様6のいずれか一つの変性エチレン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着されたものである。
【0017】
本発明の態様9は、態様8の積層体において、前記被着体である層が、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類の層である。
【0018】
本発明の態様10は、積層体であって、態様7のオレフィン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着されたものである。
【0019】
本発明の態様11は、態様10の積層体において、前記被着体である層が、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類の層である。
【0020】
本発明の態様12は、変性エチレン系重合体組成物の製造方法であって、エチレン系重合体、エチレン性不飽和化合物、アクリル系重合体、フッ素含有重合体、及びラジカル発生剤を、溶融混練する工程を含み、前記アクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む共重合体であり、前記アクリル系重合体の配合量は、前記エチレン系重合体100質量部あたり0.05~5質量部であり、前記フッ素含有重合体の配合量は、前記エチレン系重合体100質量部あたり0.005~2質量部である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、良好なフィッシュアイの発生低減効果を奏し、基材との高い接着性を示す変性エチレン系重合体組成物を得ることができる。そのため、上記変性エチレン系重合体組成物や、それを含むオレフィン系重合体組成物、また、それらを用いた積層体は、基材が金属や極性樹脂である場合でも、優れた接着力と良好な外観を両立でき、非常に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、以下の実施形態は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。
本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの少なくとも一方を意味する。また、「(メタ)アクリレート」を「(メタ)アクリル酸」と表記することもある。
また、本明細書において“質量%”と“重量%”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。
【0023】
《変性エチレン系重合体組成物》
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、変性エチレン系重合体、アクリル系重合体、及びフッ素含有重合体を含む。
上記変性エチレン系重合体は、エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体である。
また、上記アクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む。
変性エチレン系重合体組成物上記アクリル系重合体の含有量は0.05~5質量%である。また、変性エチレン系重合体組成物における上記フッ素含有重合体の含有量は0.05~2質量%である。
【0024】
〈変性エチレン系重合体〉
本実施形態における変性エチレン系重合体は、エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体である。
【0025】
変性される前のエチレン系重合体は、エチレンの単独重合体でも、構成単位としてエチレン単位を含む共重合体でもよい。
【0026】
上記エチレン系重合体が共重合体である場合、エチレン単位以外の構成単位としては、例えば、炭素数3以上のα-オレフィン、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。
炭素数3以上のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4,4-ジメチル-1ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられ、α-オレフィンの炭素数は3~20が好ましい。
上記エチレン系重合体の構成単位であるエチレン及びエチレン単位以外の構成単位は、植物を原料として用いて製造したバイオマス由来の構成単位であってもよい。バイオマスエチレン系重合体としては、バイオマス由来のエチレン及びエチレン以外の構成単位を含むバイオマス分岐状低密度ポリエチレン、バイオマス直鎖状高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0027】
上記エチレン系重合体がエチレンの単独重合体である場合には、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状高密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0028】
上記エチレン系重合体が共重合体である場合には、例えば、直鎖状低・中密度エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン系樹脂、エチレン系ゴム等が挙げられる。
【0029】
直鎖状低・中密度エチレン-α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-プロピレン-1-ブテン共重合体、エチレン-4-メチル-ペンテン共重合体、エチレン-1-ヘプテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体等が挙げられる。
【0030】
エチレン系樹脂としては、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
【0031】
エチレン系ゴムとしては、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、それら共重合体に1,4-ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネン等の非共役ジエンを更に共重合体させた、エチレン-プロピレン-非共役ジエン共重合体、エチレン-1-ブテン-非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
【0032】
中でも、上記エチレン系重合体は、分岐状低密度エチレン単独重合体、直鎖状低密度エチレン-α-オレフィン共重合体がより好ましい。エチレン系重合体は1種を用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
上記エチレン系重合体の、JIS K 7112:1999年に準拠して水中置換法で測定される密度は0.85~0.97g/cmが好ましく、0.86~0.965g/cmがより好ましい。ここで、変性エチレン系重合体組成物とした際の被着材に対する接着性等の観点から、上記密度は0.85g/cm以上が好ましく、0.86g/cm以上がより好ましく、また、0.97g/cm以下が好ましく、0.965g/cm以下がより好ましい。
【0034】
上記エチレン系重合体の、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.1~200g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましい。ここで、変性エチレン系重合体組成物の成形性等の観点から、上記MFRは0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく、また、200g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましい。
【0035】
上記エチレン系重合体は、上記密度が0.85~0.97g/cm、かつ、上記MFRが0.1~200g/10分であることが好ましく、密度及びMFRのより好適な範囲は上述したとおりである。
【0036】
本実施形態における変性エチレン系重合体は、上記エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された重合体である。
【0037】
上記エチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和結合を有する化合物であれば特に限定されない。エチレン性不飽和化合物としては、例えば、カルボキシル基、水酸基若しくはアミノ基を有する極性エチレン性不飽和化合物や、カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物の無水物等が挙げられる。また、エチレン性不飽和化合物として、芳香族ビニル化合物等を用いてもよい。
エチレン性不飽和化合物は、1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0038】
カルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等の不飽和カルボン酸、又はこれらの無水物が挙げられる。上記不飽和カルボン酸とは、不飽和ジカルボン酸等、カルボン酸を2以上有するものも含む概念である。
【0039】
水酸基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
アミノ基を含有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、一級、二級又は三級アミノ基含有単量体を用いることができる。より具体的には、例えば、アクリル酸モノメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸モノメチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、アリルアミン等が挙げられる。
【0041】
芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、ジメチルスチレン、クロロスチレン等の芳香族ビニル化合物等が挙げられる。
【0042】
これらの中でも、エチレン性不飽和化合物は、変性エチレン系重合体組成物の接着性の観点からカルボキシル基を有する極性エチレン性不飽和化合物又はその無水物が好ましく、不飽和ジカルボン酸又はその無水物がより好ましい。
上記不飽和ジカルボン酸としては、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、テトラヒドロフタル酸等が挙げられるが、上記と同様、接着性の観点から、エチレン性不飽和化合物はマレイン酸又はマレイン酸無水物がさらに好ましく、マレイン酸無水物が特に好ましい。
【0043】
本実施形態におけるエチレン性不飽和化合物の、変性エチレン系重合体組成物における含有率は0.05~10質量%が好ましく、0.1~5質量%がより好ましい。ここで、エチレン系重合体を十分に変性させ、変性エチレン系重合体組成物としてより良好な接着性を得る観点から、上記含有率は0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましい。また、フィッシュアイの発生をより抑制する観点から、上記含有率は10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。
【0044】
エチレン系重合体がエチレン性不飽和化合物で変性された、本実施形態における変性エチレン系重合体の、JIS K 7112:1999年に準拠して水中置換法で測定される密度は0.85~0.97g/cmが好ましく、0.86~0.965g/cmがより好ましい。ここで、変性エチレン系重合体組成物とした際の被着材に対する接着性等の観点から、上記密度は0.85g/cm以上が好ましく、0.86g/cm以上がより好ましく、また、0.97g/cm以下が好ましく、0.965g/cm以下がより好ましい。
【0045】
本実施形態における変性エチレン系重合体の、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.1~200g/10分が好ましく、0.5~100g/10分がより好ましい。ここで、変性エチレン系重合体組成物の成形性等の観点から、上記MFRは0.1g/10分以上が好ましく、0.5g/10分以上がより好ましく、また、200g/10分以下が好ましく、100g/10分以下がより好ましい。
【0046】
本実施形態における変性エチレン系重合体は、上記密度が0.85~0.97g/cm、かつ、上記MFRが0.1~200g/10分であることが好ましく、密度及びMFRのより好適な範囲は上述したとおりである。
【0047】
〈アクリル系重合体〉
本実施形態におけるアクリル系重合体は、構成単位として、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含む。これにより、変性エチレン系重合体組成物の見かけの流動性を向上させ、フィッシュアイの発生を抑制できる。さらに、アクリル系重合体は変性エチレン系重合体との相溶性にも優れ、変性エチレン系重合体組成物の透明性も向上する。
【0048】
本実施形態におけるアクリル系重合体は、本実施形態におけるフッ素含有重合体と共に、得られる変性エチレン系重合体組成物の成形性及び成形外観を向上させる、ポリマー加工助剤として含有される成分である。
【0049】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物では、フッ素含有重合体から構成されるフッ素系ポリマー加工助剤と、特定のアクリル系重合体から構成されるアクリル系ポリマー加工助剤を共に含有することにより、良好なフィッシュアイの発生低減効果を奏し、かつ、接着性も非常に優れたものとできる。
【0050】
具体的には、本実施形態におけるアクリル系重合体は、構成単位としてメチル(メタ)アクリレート単位を含むことにより、金属との離型性、つまり滑性に優れるものとなる。中でも、変性エチレン系重合体と金属の界面に効果的に集積し、滑性を発現する観点から、上記アクリル系重合体は、メチルメタクリレート単位を含むことが好ましい。メチル(メタ)アクリレート単位として、メチルメタクリレート単位とメチルアクリレート単位を共に含んでいてもよい。
【0051】
本実施形態におけるアクリル系重合体は、構成単位として炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位を含むことにより、変性エチレン系重合体との相溶性に優れるものとなる。
【0052】
上記アルキル(メタ)アクリレート単位は炭素数2~18であればよく、炭素数2~12が好ましい。変性エチレン系重合体との相溶性の観点から、上記炭素数は2以上であり、3以上がより好ましい。また、重合速度の低下を抑制し、好適な重合性、すなわち良好な生産性の観点から、上記炭素数は18以下であり、12以下が好ましい。炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位は、1種のみでも、2種以上を含んでいてもよい。
【0053】
上記炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位は、アルキル基が、直鎖状でも分枝があるものでもよく、また、環状のアルキル基でもよい。
直鎖状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
分岐状のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
環状のアルキル基を有するものとしては、メタクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
【0054】
アクリル系重合体は、変性エチレン系重合体への相溶性の観点から、ブチル(メタ)アクリレート単位を含むことが好ましく、ブチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位を含むことがより好ましい。また、n-ブチルメタクリレート単位、n-ブチルアクリレート単位及びi-ブチルメタクリレート単位からなる群より選ばれる2種以上の単位を含むこともより好ましい。
【0055】
本実施形態におけるアクリル系重合体は、変性エチレン系重合体への相溶性の観点から、メチル(メタ)アクリレート単位として、メチルメタクリレート単位を含み、かつ、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位として、ブチルメタクリレート単位及びブチルアクリレート単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0056】
本実施形態におけるアクリル系重合体は、構成単位として、本発明の効果を損なわない範囲において、メチル(メタ)アクリレート単位、及び、炭素数が2~18のアルキル(メタ)アクリレート単位以外の、他の構成単位を含んでいてもよい。
他の構成単位としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、酢酸ビニル等のビニルエステル、無水マレイン酸等のジカルボン酸無水物等が挙げられる。
他の構成単位を含む場合、構成単位全体に対する、他の構成単位の合計の単位量は、0~30モル%が好ましく、0~25モル%がより好ましく、0~20モル%がさらに好ましい。
【0057】
本実施形態におけるアクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000~500,000が好ましい。ここで、好適な滑性付与効果を得て、変性エチレン系重合体組成物の高い透明性を得る観点、及び、良好な接着性を得る観点から、上記重量平均分子量は10,000以上が好ましい。また、好適な滑性付与効果を得て、変性エチレン系重合体組成物の高い透明性を得る観点から、上記重量平均分子量は500,000以下が好ましい。なお、本明細書における重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて下記条件によって測定される値である。
(条件)
0.05gのアクリル系重合体を10mlのテトラヒドロフランに溶解させ、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所(株)社製、LC-10Aシステム)において、カラム(昭和電工(株)社製K-806L)を用い、ポリメチルメタクリレート換算分子量として求める。
【0058】
本実施形態におけるアクリル系重合体の含有量は、上記エチレン系重合体100質量部あたり0.05~5質量部であり、0.1~2質量部がより好ましく、0.2~1.8質量部がさらに好ましい。ここで、好適な滑性付与効果を得て、変性エチレン系重合体組成物のフィッシュアイ発生をより好適に抑制する観点から、上記含有量は0.05質量部以上であり、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上がより好ましい。また、変性エチレン系重合体組成物のより高い透明性の確保や、接着性の確保といった観点から、上記含有量は5質量部以下であり、2質量部以下が好ましく、1.8質量部以下がより好ましい。
【0059】
本実施形態におけるアクリル系重合体の変性エチレン系重合体組成物における含有率は、0.05~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましく、0.2~1.8質量%がさらに好ましい。ここで、好適な滑性付与効果を得て、変性エチレン系重合体組成物のフィッシュアイ発生をより好適に抑制する観点から、上記含有量は0.05質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.2質量部以上がさらに好ましい。また、変性エチレン系重合体組成物のより高い透明性の確保や、接着性の確保といった観点から、上記含有量は5質量%以下が好ましく、2質量%以下がより好ましく、1.8質量%以下がさらに好ましい。
【0060】
本実施形態におけるアクリル系重合体は、製造しても、市販のものを用いてもよいが、市販のものとしては、例えば、三菱ケミカル株式会社製「メタブレン(登録商標) Lタイプ」、ARKEMA社の「PLASTISTRENGTH(登録商標) Lシリーズ」、カネカ社製「カネエース(登録商標) PAシリーズ」、ダウ・ケミカル社製「PARALOID Kシリーズ」等が挙げられる。
【0061】
〈フッ素含有重合体〉
本実施形態におけるフッ素含有重合体は、分子中にフッ素原子を含む重合体であり、本実施形態におけるアクリル系重合体と共に、得られる変性エチレン系重合体組成物の成形性を向上させる、ポリマー加工助剤として含有される成分である。
フッ素含有重合体を含有することにより、本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、フィッシュアイの低減効果に加えて、押出機金属との滑り性を向上させ高い生産性を示すことができる。
【0062】
上記フッ素含有重合体における水素原子に対するフッ素原子の割合(モル比)は、滑性の観点から1:1以上が好ましく、1:1.5以上がより好ましい。また、上記フッ素原子の割合の上限は特に限定されないが、例えば、1:99以下である。
【0063】
上記フッ素含有重合体は、本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物の製造時に流動することが好ましく、フッ素ゴム、又は、融点が300℃以下の熱可塑性フッ素樹脂がより好ましい。融点が300℃以下であることにより、変性エチレン系重合体組成物を得るための溶融混練時の溶融性に優れ、フィッシュアイ低減の効果を好適に得ることができる。熱可塑性フッ素樹脂の融点は230℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。上記融点の下限は特に限定されないが、通常100℃以上である。
【0064】
本実施形態におけるフッ素含有重合体としてのフッ素ゴム、又は、熱可塑性フッ素樹脂としては、ビニリデンフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、2-ヒドロペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキル-パーフルオロビニルエーテル等の単独重合体、若しくは、これらの共重合体、又は、これら単量体とエチレン、プロピレン等のα-オレフィンとの共重合体等が挙げられる。
【0065】
フッ素ゴムとしては、具体的に、ビニリデンフルオライドと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選ばれるコモノマーと、の共重合体、ビニリデンフルオライドと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選ばれるコモノマーと、の3元共重合体、テトラフルオロエチレンとプロピレンとの共重合体等が挙げられる。
中でも、ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレン共重合体等が好ましい。
【0066】
熱可塑性フッ素樹脂としては、具体的に、テトラフルオロエチレン単独重合体、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン単独重合体、ビニリデンフルオライド単独重合体、テトラフルオロエチレン-プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体等が挙げられる。
中でも、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン-ビニリデンフルオライド共重合体等が好ましい。
【0067】
本実施形態におけるフッ素含有重合体の臨界表面張力は、金属との離型性の観点から28mN/m以下が好ましく、25mN/m以下がより好ましい。上記臨界表面張力の下限は特に限定されないが、例えば10mN/m以上である。なお、本明細書における臨界表面張力は、接触角測定により求められる値である。
【0068】
本実施形態におけるフッ素含有重合体の含有量は、上記エチレン系重合体100質量部当たり0.005~2質量部が好ましく、0.01~1質量部がより好ましく、0.01~0.5質量部がさらに好ましい。ここで、フィッシュアイの低減効果を好適に得る観点から、上記含有量は0.005質量部以上が好ましくであり、0.01質量部以上が好ましい。また、フィッシュアイの低減効果が頭打ちになり、また、透明性の維持や経済性の観点から、上記含有量は2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
【0069】
本実施形態におけるフッ素含有重合体の変性エチレン系重合体組成物における含有率は0.005~2質量%であり、0.01~1質量%が好ましく、0.01~0.5質量%がより好ましい。ここで、フィッシュアイの低減効果を好適に得る観点から、上記含有量は0.005質量%以上であり、0.01質量%以上が好ましい。また、フィッシュアイの低減効果が頭打ちになり、また、透明性の維持や経済性の観点から、上記含有量は2質量%以下が好ましく、1質量%以下がより好ましく、0.5質量%以下がさらに好ましい。
【0070】
本実施形態におけるフッ素含有重合体には、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールやポリカプロラクトン等のポリエステル、タルク、炭酸カルシウム、シリカ等の無機充填剤を配合することができる。
【0071】
本実施形態におけるフッ素含有重合体におけるフッ素原子の含有率は50質量%以上が好ましく、60~95質量%がより好ましく、65~90質量%がさらに好ましい。ここで、耐熱性を向上し、得られる変性エチレン系重合体組成物の表面にブリードし、滑性を発現しやすくできるといった観点から、上記含有率は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、65質量%以上がさらに好ましい。得られる変性エチレン系重合体組成物の加工性を維持する観点から、上記含有率は95質量%以下が好ましく、90質量%以下がより好ましい。
【0072】
本実施形態におけるフッ素含有重合体は、製造しても、市販のものを用いてもよいが、市販のものとしては、例えば、3M製「Dynamer(登録商標) FXシリーズ」、Chemours社の「Viton(登録商標) FreeFlowシリーズ」等が挙げられる。
【0073】
〈物性・用途〉
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物の、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2Nの条件で測定されるメルトフローレート(MFR)は0.05~50g/10分が好ましく、0.1~30g/10分がより好ましく、0.5~10g/10分がさらに好ましい。ここで、製造する際のエネルギー負荷低減と成形品の加工性の観点から、上記MFRは0.05g/10分以上が好ましく、0.1g/10分以上がより好ましく、0.5g/10分以上がさらに好ましい。また、同様の観点から、上記MFRは50g/10分以下が好ましく、30g/10分以下がより好ましく、10g/10分以下がさらに好ましい。
【0074】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物の、JIS K 7112:1999年に準拠して水中置換法で測定される密度は0.85~0.97g/cmが好ましく、0.87~0.95g/cmがより好ましく、0.89~0.93g/cmがさらに好ましい。ここで、剛性と耐熱性の観点から、上記密度は0.85g/cm以上が好ましく、0.87g/cm以上がより好ましく、0.89g/cm以上がさらに好ましい。また、接着性の観点から、上記密度は0.97g/cm以下が好ましく、0.95g/cm以下がより好ましく、0.93g/cm以下がさらに好ましい。
【0075】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、上記メルトフローレート(MFR)が0.05~50g/10分であり、かつ、上記密度が0.85~0.97g/cmであることが好ましく、MFR及び密度の各々のより好ましい範囲は上述したとおりである。
【0076】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、フィッシュアイの発生低減効果を奏し、良好な外観を有するが、その目安として、厚み50μmのフィルムとした際の、長径が0.1mm以上0.5mm未満であるフィッシュアイ量(FE量)は、150個/g以下が好ましく、135個/g以下がより好ましく、120個/g以下がさらに好ましく、少ないほど好ましい。
また、上記フィルムとした際の、長径が0.5mm以上であるFE量は20個/g未満が好ましく、18個/g以下がより好ましく、15個/g以下がさらに好ましく、少ないほど好ましい。
さらに、上記フィルムとした際に、長径が0.1mm以上0.5mm未満であるFE量が160個/g以下であり、かつ、長径が0.5mm以上であるFE量が20個/g未満であることがより好ましく、上記各FE量のさらに好適な範囲は、それぞれ上述したとおりである。
ここで、上記FE量は、200mm×120mmの範囲について、表面欠陥検査装置を用いることにより求められる値であり、詳細な条件は後述する実施例に記載の条件を採用できる。
【0077】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物はそのまま接着性組成物として用いてもよく、また、上記変性エチレン系重合体組成物と他の任意成分とをさらに混練して得られた別の重合体組成物を、接着性組成物として用いてもよい。
別の重合体組成物として、例えば、上記他の任意成分にオレフィン系重合体を用いたオレフィン系重合体組成物が挙げられるが、その詳細は後述する。
【0078】
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は接着性組成物として積層体の製造に用い、積層体を構成する一層とできる。また、本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、他の任意成分とをさらに混練して得られた別の重合体組成物を接着性組成物として積層体の製造に用い、積層体を構成する一層とすることもできる。
【0079】
〈その他成分〉
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、上記変性エチレン系重合体とアクリル系重合体以外に、本発明の効果を損なわない範囲内において、必要に応じて任意のその他成分を配合することができる。
【0080】
その他成分としては、例えば、本実施形態における重合体以外の熱可塑性樹脂、粘着付与剤、光安定剤、紫外線吸収剤、造核剤、滑剤、抗酸化剤、ブロッキング防止剤、可塑剤、離形剤、難燃剤、着色剤、分散剤、充填剤、フィラー等が挙げられ、それぞれ従来公知のものを使用できる。これらは1種を用いても、2種以上を用いてもよい。
【0081】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン類及びオレフィン系エラストマー、ポリフェニレンエーテル類、ポリカーボネート類、ナイロン66、ナイロン11等のポリアミド類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル類及びポリエステル系エラストマー、ポリスチレン及びスチレン共重合体又はその水添物及びスチレン系エラストマー、環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート等のアクリル/メタクリル類等を挙げることができる。
また、上記その他成分の一部又は全部が植物由来の原料で製造されたものであってもよい。
【0082】
本実施形態における熱可塑性樹脂の使用量は、用いる樹脂の種類によっても異なるものの、上記エチレン系重合体100重量部に対して、例えば、0~49質量部が好ましく、0~20質量部がより好ましい。ここで、変性エチレン系重合体組成物のより高い透明性の確保や、接着性の確保といった観点から、上記使用量は49質量部以下が好ましく、20質量部以下がより好ましい。
【0083】
粘着付与剤としては、常温で固体の非晶性樹脂が挙げられ、例えば、例えば、石油樹脂、ロジン樹脂、テルペン樹脂又はそれらの水素添加物が挙げられる。
【0084】
上記のうち石油樹脂としては、例えば、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、又はそれらの共重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。石油樹脂の骨格としては、C5樹脂、C9樹脂、C5/C9共重合樹脂、シクロペンタジエン系樹脂、ビニル置換芳香族系化合物の重合体、オレフィン/ビニル置換芳香族化合物の共重合体、シクロペンタジエン系化合物/ビニル置換芳香族系化合物の共重合体等が挙げられる。また、上記のように、これらの水素添加物も粘着付与剤として用いることができる。
【0085】
上記のうちロジン樹脂とはアビエチン酸を主成分とする天然樹脂であり、例えば、天然ロジン、天然ロジンから誘導される重合ロジン、天然ロジンや重合ロジンを不均化して得られる安定化ロジン、天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジン、天然ロジンエステル、変性ロジンエステル、重合ロジンエステルが挙げられる。また、上記の水素添加物としては、天然ロジンや重合ロジンを水素添加して得られる安定化ロジン等が挙げられる。
【0086】
上記のうちテルペン樹脂としては、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の芳香族テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂が挙げられる。また、上記のように、これらの水素添加物も粘着付与剤として用いることができる。
【0087】
本実施形態における粘着付与剤の使用量は、用いる樹脂の種類によっても異なるものの、上記エチレン系重合体100重量部に対して、例えば、1~40質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。ここで、接着性の確保の観点から、上記使用量は1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましい。また、変性エチレン系樹脂の生産性、つまり、ペレタイズ時のブロッキングを抑制する観点から、上記使用量は40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0088】
抗酸化剤としては、例えば、フェノール系抗酸化剤、リン系抗酸化剤、イオウ系抗酸化剤が挙げられる。中でもフェノール系抗酸化剤が好ましく、フェノール系抗酸化剤とリン系抗酸化剤又はイオウ系抗酸化剤との併用も好ましい。
【0089】
フェノール系抗酸化剤としては、例えば、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、2,4,6-トリ-t-ブチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、ブチル化ヒドロキシアニソール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、4,4’-ジヒドロキシジフェニル、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,6-ビス(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルベンジル)-4-メチルフェノール等のビスフェノール系、1,1,3-トリス(2’-メチル-4’-ヒドロキシ-5’-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス〔β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のトリ以上のポリフェノール系、2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(2-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)等のチオビスフェノール系、アルドール-α-ナフチルアミン、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン等のナフチルアミン系、p-イソプロポキシジフェニルアミン等のジフェニルアミン系、N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジ-β-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-シクロヘキシル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン等のフェニレンジアミン系等が挙げられる。中でも、モノフェノール系、ビスフェノール系、トリ以上のポリフェノール系、チオビスフェノール系等が好ましい。
【0090】
リン系抗酸化剤としては、リン原子に3個のアルコキシ基が結合した亜リン酸エステルが基本骨格であり、少なくともひとつのアルコキシ基の炭素数が3以上のかさ高い基であることが好ましい。例えば、フェニルジイソアルキル(C1~C10)ホスファイト、ジフェニルイソアルキル(C1~C10)ホスファイト、トリス-(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等が挙げられる。
【0091】
イオウ系抗酸化剤としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール-テトラキス-(β-ラウリル-チオプロピオネート)、2-メルカプト-5-メチルベンズイミダゾール等が挙げられる。
【0092】
本実施形態における抗酸化剤の使用量は、用いる抗酸化剤の種類によっても異なるものの、上記エチレン系重合体100質量部に対して、例えば、0.001~2質量部が好ましく、0.005~1質量部がより好ましく、0.007~0.8質量部がさらに好ましい。ここで、より良好なフィッシュアイの低減効果を得る観点から、上記使用量は0.001質量部以上が好ましく、0.005質量部以上がより好ましく、0.007質量部以上がさらに好ましい。また、変性エチレン系重合体組成物から抗酸化剤がブリードアウトすること等を抑制する観点から、上記使用量は2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.8質量部以下がさらに好ましい。
【0093】
充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、シリカ等の無機充填剤が挙げられる。
また、充填剤を本実施形態におけるフッ素含有重合体に配合した上で、フッ素含有重合体及び充填剤を共に、本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物に含有させてもよい。その場合には、上記無機充填剤の他、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコールやポリカプロラクトン等のポリエステルのような有機充填剤も使用できる。
【0094】
〈製造方法〉
本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物の製造方法は、エチレン系重合体、エチレン性不飽和化合物、アクリル系重合体、フッ素含有重合体、及びラジカル発生剤を、溶融混練する工程を含む。
【0095】
ここで、エチレン系重合体、エチレン性不飽和化合物、アクリル系重合体、及びフッ素含有重合体は、それぞれ上記〈変性エチレン系重合体〉に記載のエチレン系重合体、エチレン性不飽和化合物、〈アクリル系重合体〉に記載のもの、及び〈フッ素含有重合体〉に記載のものを使用でき、好ましい態様も同様である。
また、上記の他に任意成分として、上記〈その他成分〉に記載のものを共に溶融混練してもよい。
【0096】
本実施形態におけるラジカル発生剤は、例えば有機過酸化物が好ましい。具体的には、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、1,4-ビス(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレエート、2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)ブタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシラウレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t-ブチルパーオキシマレイックアシッド、ジ-t-ブチルパーオキシイソフタレート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(トルイルパーオキシ)ヘキサン等のパーオキシエステル類、3,5,5-トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、t-ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド、p-メンタヒドロパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ヒドロパーオキシ)ヘキサン等のヒドロパーオキサイド類、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類等が挙げられる。これらは1種を用いても、2種以上用いてもよい。
【0097】
中でも、1分間半減期温度が140℃以上のラジカル発生剤が好ましく、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド類、又は、t-ブチルパーオキシベンゾエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン-3等のパーオキシエステル類が特に好ましい。
【0098】
本実施形態に係る製造方法における溶融混練は、通常、各成分を、均一に混合した後、溶融混練することによって行われる。ここで、エチレン性不飽和化合物やラジカル発生剤は、溶融混練の途中に添加してもよい。また、エチレン性不飽和化合物やラジカル発生剤は、有機溶剤等に溶解した状態で添加してもよい。
【0099】
また、フッ素含有重合体は、エチレン系重合体や、その他成分である本実施形態における重合体以外の熱可塑性樹脂でマスターバッチを製造した状態で添加し、溶融混練に供することも可能である。この場合、フッ素含有重合体等の各成分は、最終的な配合量が所望する範囲となるように添加量を調整する。
【0100】
混合装置は、例えば、タンブラーブレンダー、リボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等が使用される。
混合時間は通常0.1~30分であり、好ましくは0.5~5分である。
【0101】
溶融混練を行う混練装置は、例えば、ミキシングロール、ニーダー、バンバリーミキサー、ブラベンダープラストグラフ、一軸又は二軸押出機等が使用される。
【0102】
溶融混練を行う温度は通常120~300℃、好ましくは150~280℃であり、混練時間は通常0.1~30分、好ましくは0.5~10分である。
【0103】
本実施形態におけるエチレン性不飽和化合物の配合量は、上記エチレン系重合体100質量部に対して、0.05~10質量部が好ましく、0.1~5質量部がより好ましい。ここで、エチレン系重合体を十分に変性させ、変性エチレン系重合体組成物としてより良好な接着性を得る観点から、上記配合量は0.05質量部以上が好ましく、0.1質量部以上がより好ましい。また、フィッシュアイの発生をより抑制する観点から、上記配合量は10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。
【0104】
本実施形態におけるラジカル発生剤の配合量は、上記エチレン系重合体100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましく、0.01~5質量部がより好ましく、0.01~1質量部がさらに好ましい。ここで、十分なグラフト量を得る観点から、上記配合量は0.01質量部以上が好ましい。また、エチレン系重合体の架橋等の副反応を抑制する観点から、上記配合量は10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、1質量部以下がさらに好ましい。
【0105】
本実施形態におけるアクリル系重合体の配合量は、上記エチレン系重合体100質量部あたり0.01~10質量部であり、0.01~10質量部が好ましく、0.05~5質量部がより好ましく、0.1~2質量部がさらに好ましい。ここで、好適な滑性付与効果を得て、変性エチレン系重合体組成物のフィッシュアイ発生をより好適に抑制する観点から、上記配合量は0.01質量部以上が好ましく、0.05質量部以上がより好ましく、0.1質量部以上がさらに好ましい。また、変性エチレン系重合体組成物のより高い透明性の確保や、接着性の確保といった観点から、上記配合量は10質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましく、2質量部以下がさらに好ましい。
【0106】
本実施形態におけるフッ素含有重合体の配合量は、上記エチレン系重合体100質量部あたり0.005~2質量部であり、0.01~1質量部が好ましく、0.01~0.5質量部がより好ましい。ここで、フィッシュアイの低減効果を好適に得る観点から、上記含有量は0.005質量部であり、0.01質量部が好ましい。また、フィッシュアイの低減効果が頭打ちになり、また、透明性の維持や経済性の観点から、上記含有量は2質量部以下が好ましく、1質量部以下がより好ましく、0.5質量部以下がさらに好ましい。
【0107】
エチレン系重合体に対するアクリル系重合体の配合量とフッ素含有重合体の配合量は、透明性の維持とフィッシュアイの発生低減効果の観点から、アクリル系重合体の配合量がフッ素含有重合体の配合量より多いことが好ましい。
【0108】
《オレフィン系重合体組成物》
本実施形態に係るオレフィン系重合体組成物は、変性エチレン系重合体組成物とオレフィン系重合体とを含有する。ここで、上記変性エチレン系重合体組成物とは、上記《変性エチレン系重合体組成物》に記載のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0109】
本実施形態に係るオレフィン系重合体組成物を接着性組成物として用いると、上記変性エチレン系重合体組成物をそのまま接着性組成物として用いる場合と比べて、重合体組成物中の変性量やフィッシュアイの発生低減効果を安定させる観点及び生産性の観点から好ましい。
【0110】
本実施形態におけるオレフィン系重合体は、単独重合体でも共重合体でもよい。
単独重合体としては、例えば、エチレンの単独重合体、炭素数3~20のα-オレフィンの単独重合体が好ましく、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体がより好ましい。
本実施形態におけるオレフィン系重合体は、植物を原料として用いて製造したバイオマス由来の構成単位を含むバイオマスポリオレフィンでもよい。
【0111】
共重合体としては、エチレン及び炭素数3~20のα-オレフィンからなる群より選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体、エチレンと、酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル等との共重合体等が好ましく、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンから選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体、エチレンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体がより好ましい。
【0112】
炭素数3~20のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が挙げられ、中でも、炭素数3~10のα-オレフィンがより好ましい。
【0113】
本実施形態におけるオレフィン系重合体は、エチレンの単独重合体、プロピレンの単独重合体、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンから選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体、エチレンと、酢酸ビニル及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる2種以上のモノマーから得られる共重合体がさらに好ましく、エチレンの単独重合体、エチレンと、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン及び1-オクテンから選ばれる2種以上の共重合体がよりさらに好ましい。
【0114】
本実施形態に係るオレフィン系重合体組成物において、上記変性エチレン系重合体組成物と、上記オレフィン系重合体とは、質量比(変性エチレン系重合体組成物:オレフィン系重合体)で1:99~99:1が好ましく、2:98~98:2がより好ましい。すなわち、変性エチレン系重合体組成物とオレフィン系重合体の合計含有量に対するオレフィン系重合体の含有率は1~99質量%が好ましく、2~98質量%がより好ましい。また、上記合計含有量に対する変性エチレン系重合体組成物の含有率は1~99質量%が好ましく、2~98質量%がより好ましい。
【0115】
ここで、良好な接着性等を得る観点から、上記オレフィン系重合体の含有率は99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましく、また、上記変性エチレン系重合体組成物の含有率は1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましい。また、フィッシュアイの発生低減効果と生産性の観点から、上記オレフィン系重合体の含有率は1質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、また、上記変性エチレン系重合体組成物の含有率は99質量%以下が好ましく、98質量%以下がより好ましい。
【0116】
本実施形態に係るオレフィン系重合体組成物の製造方法は、特に制限されず、従来公知の方法を使用できる。
例えば、変性エチレン系重合体組成物、オレフィン系重合体、及び必要に応じて添加される他の配合成分を、押出機、ニーダー等を用いて機械的にブレンドする方法、又は、適当な良溶媒に溶解し混合した後、溶媒を除去する方法等を用いることができる。
【0117】
上記機械的にブレンドする方法としては、例えば、溶融混練する方法が挙げられる。
溶融混練を行う温度は通常120~300℃、好ましくは150~280℃であり、混練時間は通常0.1~30分、好ましくは0.5~10分である。
【0118】
《積層体》
本実施形態に係る積層体の一態様は、変性エチレン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着されて積層されたものである。
本実施形態に係る積層体の別の態様は、オレフィン系重合体組成物からなる層と、被着体である層とが接着されて積層されたものである。
【0119】
ここで、変性エチレン系重合体組成物とは、上記《変性エチレン系重合体組成物》に記載のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。また、オレフィン系重合体組成物とは、上記《オレフィン系重合体組成物》に記載のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0120】
本実施形態における被着体である層としては、熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材及び繊維からなる群より選ばれる少なくとも1種類の層が挙げられる。
【0121】
本実施形態における変性エチレン系重合体組成物やオレフィン系重合体組成物はいずれも、従来の重合体組成物と比べて良好な接着性を示すため、接着性組成物層として好適に用いることができ、上記のような熱可塑性樹脂、金属箔、紙、木材、繊維に対する接着性にも優れる。
【0122】
本実施形態における熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン・ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。
ポリアミド系樹脂としては、例えばナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6-6、ナイロン6-10、ナイロン6-12などが挙げられる。
【0123】
金属箔としては、例えば、アルミニウム、銅、ステンレス等の箔が挙げられる。
木材としては、例えばベニヤ、合板、木質繊維板等が挙げられる。
繊維としては、例えば、織布、不織布が挙げられる。
【0124】
上記の中でも、特にエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂又は金属箔からなる層を有する積層体は、ガスバリヤー性に優れており、食品保存容器、包装体等として好適に用いられる。
【0125】
本実施形態に係る積層体の形態は、フィルム状、板状、管状、箔状、織布状の他、ビン、容器、射出成形品などが挙げられる。中でも、フィッシュアイの軽減された効果がより好適に活用される観点から、上記積層体の形態は、フィルム状又は板状が好ましく、フィルム状がより好ましい。また、積層体がフィルム状である場合、その厚みは2mm以下が好ましく、1mm以下がより好ましい。
【0126】
本実施形態に係る積層体の製造方法は特に限定されない。
例えば、予め成形されたフィルムやシートに対して、押出ラミネーション法、ドライラミネーション法、サンドイッチラミネーション法等のラミネーション法等により他の層を積層する方法が挙げられる。また、多層ダイを用いて押出機で溶融された樹脂をダイス先端で接合させ積層体とする多層インフレーション法、多層Tダイの共押出成形法等の共押出成形法、多層ブロー成形法、射出成形法等の通常の成形法も挙げられる。
【0127】
被着体である層がエチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリアミド系樹脂、又は、ポリエステル系樹脂の層であり、本実施形態における変性エチレン系重合体組成物やオレフィン系重合体組成物からなる接着性組成物層との積層体とする場合、積層体の製造方法は共押出成形が好ましい。
【0128】
金属箔等と上記変性エチレン系重合体組成物やオレフィン系重合体組成物からなる接着性組成物層との積層体とする場合には、積層体の製造方法はラミネーション法が好ましい。
【0129】
本実施形態に係る積層体の具体的な層構成は、例えば、ガスバリヤー層/変性エチレン系重合体組成物層、ガスバリヤー層/変性エチレン系重合体組成物層/ポリオレフィン層、ポリオレフィン層/変性エチレン系重合体組成物層/ガスバリヤー層/変性エチレン系重合体組成物/ポリオレフィン層等が挙げられる。ここで、上記ガスバリヤー層が、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物や金属箔等からなる層である。
また、上記の層構成における変性エチレン系重合体組成物層は、本実施形態におけるオレフィン系重合体組成物に置き換えることができる。
【0130】
本実施形態に係る積層体は、変性エチレン系重合体組成物やオレフィン系重合体組成物からなる層による優れた接着性と、フィッシュアイの発生が低減された優れた表面平滑性を有する。
【0131】
また、被着体である層として、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体鹸化物、金属箔を構成層として用いた積層体は、良好なガスバリヤー性を有している。そのため、本実施形態におけるオレフィン系重合体組成物やオレフィン系重合体組成物と共に積層体を構成することで、良好な加工性、耐水性、耐薬品性、柔軟性等の特性を有する。
【0132】
さらに、被着体である層として、ポリカーボネート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、金属箔、木材を構成層として用いた積層体は剛性に優れている。また、紙、木材及び繊維を構成層として用いた積層体は機械的強度に優れている。
【実施例0133】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限又は下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は上述した上限又は下限の値と、下記実施例の値又は実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0134】
《原材料》
以下の諸例では次の原材料を使用した。
【0135】
〈成分(A):エチレン系重合体〉
・(A)-1
直鎖状エチレン-1-ブテン共重合体[密度:0.92g/cm、MFR(190℃、荷重21.2N):30.0g/10分、融点:123℃]
・(A)-2
直鎖状エチレン-1-ブテン共重合体[密度:0.92g/cm、MFR(190℃、荷重21.2N):2.1g/10分、融点:123℃]
【0136】
〈成分(B):フッ素系ポリマー加工助剤〉
・(B)-1
フッ化ビニリデン・テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体[3M社製:Dynamer(登録商標) FX5911]
・(B)-2
フッ化ビニリデン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体+粘着防止剤混合物[3M社製:Dynamer(登録商標) FX9613]
【0137】
〈成分(C):アクリル系ポリマー加工助剤〉
・(C)-1
アクリル系重合体[メチルメタクリレート単位とブチルメタクリレート単位とブチルアクリレート単位からなる共重合体、重量平均分子量:約25万g/mol、ガラス転移温度:約25℃]
【0138】
〈成分(D):エチレン性不飽和化合物〉
・(D)-1
無水マレイン酸[日本油脂社製]
【0139】
〈成分(E):ラジカル発生剤)
・(E)-1
2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン[日本油脂社製:パーヘキサ25B(登録商標)]
【0140】
〈成分(F):抗酸化剤〉
・(F)-1
フェノール系酸化防止剤[BASF社製:IRGANOX(登録商標)1010]
【0141】
〈成分(G):オレフィン系重合体〉
・(G)-1
直鎖状エチレン-1-ブテン共重合体[サウディ石油化学社製、QAMAR(商標登録)FD18N、MFR:2.0g/10分、密度:0.92g/cm
【0142】
《実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3》
上記《原材料》に記載の各成分を、それぞれ表1に記載の配合量にて、スーパーミキサーにより1分間混合した。得られた混合物を、二軸押出機(日本製鋼所社製:TEX25αIII、径25mm、L/D43)を用い、混練温度240℃、スクリュー回転数300rpm、吐出量20kg/時間の条件で溶融混練し、これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングすることにより変性エチレン系重合体組成物をそれぞれ得た。
得られた変性エチレン系重合体組成物を各評価に供する場合には、ストランドカット造粒を開始してから30分~1時間の間の変性エチレン系重合体組成物を用いた。
なお、表1中の空欄は未配合であることを意味する。
【0143】
《実施例2-1a~2-2a、比較例2-1a~2-3a、参考例2-2a~2-3a》
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-3、及び参考例1-2~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物10質量部と、オレフィン系重合体90質量部とを配合した混合物を、単軸押出機(PSM50-32(1V)、IKG社製、D=50mmφ、L/D=32)を用い、混練温度210℃で溶融混練し、これをダイよりストランド状に押し出し、カッティングすることで、変性オレフィン系重合体をそれぞれ得た。
【0144】
《実施例2-1b~2-2b、比較例2-1b~2-3b、参考例2-2b~2-3b》
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-3、及び参考例1-2~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物15質量部と、オレフィン系重合体85質量部とを配合した混合物を、単軸押出機(PSM50-32(1V)、IKG社製、D=50mmφ、L/D=32)を用い、混練温度210℃で溶融混練することで、変性オレフィン系重合体をそれぞれ得た。
【0145】
《測定・評価方法》
〈成分(D);エチレン性不飽和化合物の含有率〉
エチレン性不飽和化合物の含有率、すなわちグラフト率を、赤外分光測定装置を用いて求めた。
具体的には、予め核磁気共鳴測定法により、標準サンプルとして変性エチレン系重合体中におけるエチレン性不飽和化合物成分の定量を行い、その定量値から検量線を作成した。
次いで、実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物のペレットを200℃で、厚さ100μmのフィルム状にプレス成形した。これをサンプルとして、FT-IR装置(JASCO FT/IR610、日本分光株式会社製)にて、サンプル中のエチレン性不飽和化合物特有の吸収、すなわち、1900~1600cm-1(C=O伸縮振動帯)に観測されるカルボニル特性吸収を測定し、上記で作成した検量線を用いて、その含有率を求めた。
なお、エチレン性不飽和化合物による変性は、エチレン性不飽和化合物の100%となるすべてが反応に供される訳ではなく、エチレン系重合体と反応していないエチレン性不飽和化合物も変性エチレン系重合体組成物中に残留している場合がある。しかし、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物の含有率(グラフト率)は、上記の方法で測定した際の値を意味するものとする。結果を表1に示す。
【0146】
〈メルトフローレート(MFR)〉
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物について、JIS K 7210:2014年に準拠し、温度190℃、荷重21.2N、10分の条件でメルトフローレート(MFR)を測定した。結果を表1に示す。
【0147】
〈密度〉
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物について、JIS K 7112:1999年に準拠し、水中置換法で密度を測定した。結果を表1に示す。
【0148】
〈フィッシュアイ(FE)〉
実施例1-1~1-2、比較例1-1~1-5及び参考例1-1~1-3で得られた各変性エチレン系重合体組成物に対し、幅300mmのTダイスを有する単層フィルム成形機(株式会社GSIクレオス)を用いて、Tダイスの温度200℃、成形速度5m/分、キャストロール温度30℃の条件にて、層の厚みが50μmの単層フィルムを得た。
得られた単層フィルムについて、長さ200mm、幅120mmに切削し、これを検査範囲とした。そして、コンパクトデジタル表面欠陥検査装置(GX-70LT、Mamiya-OP株式会社製)を用い、長径0.1mm以上0.5mm未満のFEと、長径0.5mm以上のFEの個数をそれぞれ計測した。計測されたFEの個数を、検査範囲面積における単層フィルムの質量で除することで、単位質量当たりのフィッシュアイ(FE)量(個/g)を求めた。
本評価では長径0.1mm以上0.5mm未満のFE量が150個/g以下であれば良好な外観と評価する。また、長径0.5mm以上のFE量は15個/g以下がより好適である。結果を表1に示す。
【0149】
〈接着力〉
幅350mmの3種5層フィードブロック型Tダイスを有する多層フィルム成形機(Labtech Engineering Co.製)を用いて、エチレン系重合体層/接着樹脂層/エチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)層/接着樹脂層/エチレン系重合体層の5層フィルムとなる積層体を作製した。
ここで、上記接着樹脂層には、共に、実施例2-1a~2-2a、比較例2-1a~2-3a及び参考例2-2a~2-3a、並びに、実施例2-1b~2-2b、比較例2-1b~2-3b及び参考例2-2b~2-3bで得られた各オレフィン系重合体組成物を用いた。また、上記エチレン系重合体層には、共にノバテック(登録商標)SF8402(日本ポリエチレン社製)を用いた。さらに、エチレン・ビニルアルコール共重合体層には、ソアノール(登録商標) DC3203RB(三菱ケミカル社製)を用いた。
具体的な条件は、Tダイスの温度240℃、成形速度5m/分、キャストロール温度80℃とし、各層の厚みが、順に30μm/10μm/20μm/10μm/30μmであり、総厚みが100μmの5層フィルムの積層体を得た。
【0150】
上記で得られた積層体である5層フィルムについて、成形方向と平行に幅15mmの短冊状に切り出して試験片とした。各試験片に対し、23℃の恒温雰囲気下にて、速度300mm/分でTピール剥離試験を行い、接着樹脂層とEVOH層との界面における接着力を測定した。
一般に積層体の層間強度が2N/15mm以上あれば実用に足る強度であると考えられるため、本評価でも、接着樹脂層とEVOH層との界面における接着力が2N/15mm以上であると、接着性が良好と評価する。結果を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1の結果より、本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物は、良好なフィッシュアイの発生低減効果を奏し、基材との高い接着性も示すことが分かった。特に本実施形態に係る変性エチレン系重合体組成物を含むオレフィン系重合体組成物は、ポリマー加工助剤としてフッ素系ポリマー加工助剤及びアクリル系ポリマー加工助剤を共に含むことにより、それらの一方を単独で含む場合、又はいずれも含まない場合と比べて、フィッシュアイの発生低減効果、基材との接着性のいずれにおいても、顕著な効果を奏することが分かった。