(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137158
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法
(51)【国際特許分類】
B66C 1/46 20060101AFI20240927BHJP
B66C 1/66 20060101ALI20240927BHJP
E04G 21/16 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B66C1/46
B66C1/66 Z
E04G21/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048567
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】中村 知行
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 浩之
【テーマコード(参考)】
2E174
3F004
【Fターム(参考)】
2E174AA03
2E174BA01
2E174CA03
2E174CA12
2E174DA31
3F004AD04
3F004EA01
3F004EA27
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で効率よく建築用パネルを吊り上げることができる吊り治具を提供する。
【解決手段】吊り治具1は、吊り上げ装置に連結されて、建築用パネルに形成された孔を利用して建築用パネルを吊り上げるために用いられる。吊り治具1は、吊り上げ装置に連結される連結部材10と、連結部材10の下方に設けられ、建築用パネルの孔の内部に挿入可能な通常状態と、孔の内部に当接して建築用パネルを保持する保持状態との間で切り替わる伸縮部材20と、連結部材10と伸縮部材20を接続し、吊り上げ装置によって連結部材10が吊り上げられたときに動作し、伸縮部材20を通常状態から保持状態へと切り替える切替部材30と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊り上げ装置に連結されて、建築用パネルに形成された孔を利用して前記建築用パネルを吊り上げるために用いられる吊り治具であって、
前記吊り上げ装置に連結される連結部材と、
前記連結部材の下方に設けられ、前記建築用パネルの前記孔の内部に挿入可能な通常状態と、前記孔の内部に当接して前記建築用パネルを保持する保持状態との間で切り替わる伸縮部材と、
前記連結部材と前記伸縮部材を接続し、前記吊り上げ装置によって前記連結部材が吊り上げられたときに動作し、前記伸縮部材を前記通常状態から前記保持状態へと切り替える切替部材と、を備えることを特徴とする吊り治具。
【請求項2】
前記切替部材は、
前記連結部材に取り付けられるベース部材と、
前記ベース部材に取り付けられ、前記ベース部材から下方に向かって延びて前記伸縮部材を支持し、前記連結部材の吊り上げに伴って前記ベース部材に対して可動する可動部材と、を備え、
前記切替部材は、前記連結部材が吊り上げられたときに前記可動部材の可動動作に伴って、前記伸縮部材を前記通常状態から前記保持状態へと切り替えることを特徴とする請求項1に記載の吊り治具。
【請求項3】
前記可動部材は、前記連結部材に連結され、上下方向に延び、前記ベース部材に対して上下移動可能なスライド部と、前記スライド部の延出端部に設けられ、前記伸縮部材に下方から当接する当接部と、を有し、
前記スライド部は、前記連結部材が吊り上げられたときに、前記ベース部材に対して上方に移動し、
前記伸縮部材は、前記スライド部に取り付けられ、前記スライド部及び前記当接部の移動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わることを特徴とする請求項2に記載の吊り治具。
【請求項4】
前記連結部材は、前記吊り上げ装置に連結される係止部と、前記係止部と前記ベース部材とを連結し、前記ベース部材に回動可能に取り付けられる長尺な回動部と、を有し、
前記回動部は、前記係止部が吊り上げられたときに、前記ベース部材に対して回動し、
前記可動部材は、前記回動部の回動動作に伴って前記ベース部材に対して移動し、
前記伸縮部材は、前記可動部材の可動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わることを特徴とする請求項2又は3に記載の吊り治具。
【請求項5】
前記吊り治具は、斜め吊りによって前記建築用パネルを吊り上げるために用いられ、
前記切替部材は、前記連結部材と前記可動部材とを接続する長尺な接続部材を備え、
前記接続部材の一端部が、前記回動部における一方の端部と他方の端部との間の部分に回動可能に取り付けられ、
前記接続部材の他端部が、前記可動部材に回動可能に取り付けられ、
前記可動部材は、前記回動部の前記回動動作に伴って前記接続部材が回動することによって、前記ベース部材に対して移動し、
前記伸縮部材は、前記可動部材の可動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わることを特徴とする請求項4に記載の吊り治具。
【請求項6】
前記ベース部材は、前記連結部材を支持する支柱部と、前記支柱部の下方に設けられ、前記スライド部を上下方向に移動可能に支持する受け部と、を有し、
前記伸縮部材は、弾性力を有し、前記建築用パネルの前記孔の径方向に伸縮する弾性部材であって、前記受け部の下方位置において前記スライド部に取り付けられ、
前記伸縮部材は、前記スライド部及び前記当接部の移動動作に伴って、前記受け部の下面と前記当接部の上面とに挟持されることで膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わることを特徴とする請求項3に記載の吊り治具。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記連結部材を支持する支柱部と、前記支柱部の下方に設けられ、前記スライド部を上下方向に移動可能に支持する受け部と、を有し、
前記伸縮部材は、前記受け部の下方に取り付けられる第1リンク部と、前記第1リンク部に回動可能に取り付けられる第2リンク部と、前記第2リンク部に回動可能に取り付けられ、かつ、前記スライド部に摺動可能に支持される摺動部と、を有し、
前記摺動部は、前記当接部が下方から当接することによって、前記スライド部に対して上方へ移動し、
前記伸縮部材は、前記伸縮部材は、前記摺動部の移動動作に伴って、前記第1リンク部及び前記第2リンク部が回動することで膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わることを特徴とする請求項3に記載の吊り治具。
【請求項8】
請求項1に記載の吊り治具を用いて、平積みされた前記建築用パネルを吊り上げる吊り上げ方法であって、
前記建築用パネルの前記孔に前記吊り治具を配置する配置工程と、
前記吊り治具を用いて前記建築用パネルを吊り上げる吊上工程と、を含み、
前記配置工程では、平積みされた前記建築用パネルのうち、最上部に載置された前記建築用パネルの前記孔の内部に、前記通常状態の前記伸縮部材を配置し、
前記吊上工程では、前記吊り治具の吊り上げに伴って、前記通常状態から前記保持状態へ切り替わった前記伸縮部材によって前記建築用パネルを保持して吊り上げることを特徴とする吊り治具を用いた吊り上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法に係り、吊り上げ装置に連結されて、建築用パネルに形成された孔を利用して建築用パネルを吊り上げるために用いられる吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商業施設、工場、又は集合住宅等に用いられる建築用パネルとして、耐火性、耐震性、断熱性等に優れたALCパネル(軽量気泡コンクリートパネル)の普及が進んでいる。ALCパネルは、珪石、セメント、生石灰、発泡剤のアルミ粉末を主原料とするコンクリート建材であり、その重量は、約80kgに及ぶ場合がある。
一般に、人手では持ち上げることが困難な重量が大きい建築用パネルを吊る際には、クレーン等を用いて吊ることが必要である。その際に、建築用パネルを吊るための吊り治具を用いて作業を行うことが提案されている。
【0003】
特許文献1、特許文献2には、建築用パネルに形成された貫通孔を利用して建築用パネルを吊るために用いられる吊り治具が記載されている。吊り治具は、軸体である本体部と、貫通孔に引っ掛かる引っ掛け部と、引っ掛け部を作動させる作動部とを備え、貫通孔に引っ掛け部を引っ掛けることで、建築用パネルを吊り上げる。
【0004】
具体的には、特許文献1、特許文献2の吊り治具は、クレーンのワイヤと連結する連結部が設けられた本体部と、本体部の先端部に回動可能に取り付けられた引っ掛け部と、本体部に対して摺動可能に取り付けられた作動部と、を備える。
作動部が基端側に後退した後退位置において、引っ掛け部は、自重により回動して本体部と同一軸となった通常状態(第1状態)となる。通常状態では、引っ掛け部が建築用パネルの孔へと挿入可能となる。作動部が先端側に進出した進出位置において、引っ掛け部は、作動部によって回動されて本体部と交差した保持状態(第2状態)になる。保持状態では、引っ掛け部が建築用パネルの孔から抜けることが阻止されるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-302423号公報
【特許文献2】特開2020-055655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1、特許文献2に記載の吊り治具は、簡易な構造であるものの、建築用パネルの孔に吊り治具を挿入してから、作動部によって保持状態に切り替えた後、建築用パネルを吊り上げている。そのため、吊り治具を建築用パネルの孔に引っ掛けて保持する作業に時間がかかり、作業工数が増加するおそれがあった。
また、上記吊り治具は、引っ掛け部を貫通孔に貫通させて建築用パネルを保持する必要がある。そのため、貫通孔が建築用パネルに形成されていない場合には、建築用パネルを保持することができず、吊り上げることができなかった。
【0007】
さらに、特許文献1に記載の吊り治具では、平積みされた建築用パネルを吊り上げる際に、最上部に積載された建築用パネルを横にずらしてから吊り治具を挿入する必要がある。そのため、作業性が低下するおそれがあった。
【0008】
なお、特許文献2に記載の建築用パネルでは、引っ掛け部を回動させるための空間部が、孔近傍の下面に形成されている。そのため、最上部に積載された建築用パネルを横にずらす必要がないが、吊り上げ対象となる建築用パネルの形状が限定されてしまう。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、簡易な構成で効率よく建築用パネルを吊り上げることができる吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法を提供することにある。
また他の目的は、建築用パネルの形状に限らず、簡易な構成で建築用パネルを吊り上げることができる吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、本発明の吊り治具によれば、吊り上げ装置に連結されて、建築用パネルに形成された孔を利用して前記建築用パネルを吊り上げるために用いられる吊り治具であって、前記吊り上げ装置に連結される連結部材と、前記連結部材の下方に設けられ、前記建築用パネルの前記孔の内部に挿入可能な通常状態と、前記孔の内部に当接して前記建築用パネルを保持する保持状態との間で切り替わる伸縮部材と、前記連結部材と前記伸縮部材を接続し、前記吊り上げ装置によって前記連結部材が吊り上げられたときに動作し、前記伸縮部材を前記通常状態から前記保持状態へと切り替える切替部材と、を備えること、により解決される。
【0011】
上記構成により、簡易な構成で効率よく建築用パネルを吊り上げることができる。また、建築用パネルの形状に限らず、簡易な構成で建築用パネルを吊り上げることができる。
詳しく述べると、吊り治具の吊り上げ動作に伴って、伸縮部材が通常状態から保持状態へと切り替わるので、吊り治具に建築用パネルを保持させる作業時間を削減でき、作業効率を高めることができる。
また、吊り治具は、建築用パネルの形成された孔の内部に配置されるため、吊り治具を建築用パネルの下面から突出させずに、建築用パネルを保持することができる。そのため、貫通孔や空間部が形成されていない建築用パネルや、平積みされた建築用パネルであっても、簡易な構成の吊り治具で、効率よく吊り上げることができる。
【0012】
このとき、前記切替部材は、前記連結部材に取り付けられるベース部材と、前記ベース部材に取り付けられ、前記ベース部材から下方に向かって延びて前記伸縮部材を支持し、前記連結部材の吊り上げに伴って前記ベース部材に対して可動する可動部材と、を備え、前記切替部材は、前記連結部材が吊り上げられたときに前記可動部材の可動動作に伴って、前記伸縮部材を前記通常状態から前記保持状態へと切り替える、と良い。
上記構成により、吊り治具の吊り上げ動作に伴って、可動部材が可動することで伸縮部材が通常状態から保持状態へと切り替わるので、簡易な構成で建築用パネルを保持することができる。
【0013】
このとき、前記可動部材は、前記連結部材に連結され、上下方向に延び、前記ベース部材に対して上下移動可能なスライド部と、前記スライド部の延出端部に設けられ、前記伸縮部材に下方から当接する当接部と、を有し、前記スライド部は、前記連結部材が吊り上げられたときに、前記ベース部材に対して上方に移動し、前記伸縮部材は、前記スライド部に取り付けられ、前記スライド部及び前記当接部の移動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わる、と良い。
上記構成により、切替部材は、当接部の上下移動によって伸縮部材を通常状態と保持状態とに切り替えることができる。そのため、建築用パネルの孔径が狭い場合であっても、簡易な構成で建築用パネルを保持することができる。
【0014】
このとき、前記連結部材は、前記吊り上げ装置に連結される係止部と、前記係止部と前記ベース部材とを連結し、前記ベース部材に回動可能に取り付けられる長尺な回動部と、を有し、前記回動部は、前記係止部が吊り上げられたときに、前記ベース部材に対して回動し、前記可動部材は、前記回動部の回動動作に伴って前記ベース部材に対して移動し、前記伸縮部材は、前記可動部材の可動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わる、と良い。
上記構成により、切替部材は、連結部材の回動によって伸縮部材を通常状態と保持状態とに切り替えることができる。そのため、簡易な構成で建築用パネルを保持することができる。
【0015】
このとき、前記吊り治具は、斜め吊りによって前記建築用パネルを吊り上げるために用いられ、前記切替部材は、前記連結部材と前記可動部材とを接続する長尺な接続部材を備え、前記接続部材の一端部が、前記回動部における一方の端部と他方の端部との間の部分に回動可能に取り付けられ、前記接続部材の他端部が、前記可動部材に回動可能に取り付けられ、前記可動部材は、前記回動部の前記回動動作に伴って前記接続部材が回動することによって、前記ベース部材に対して移動し、前記伸縮部材は、前記可動部材の可動動作に伴って膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わる、と良い。
上記構成により、切替部材は、連結部材の回動によって、接続部材を介して、伸縮部材を通常状態と保持状態とに切り替えることができる。そのため、簡易な構成で、吊り上げ装置が係止部を斜めの方向へ引っ張る力を、伸縮部材が孔に作用する力に変換できる。そのため、吊り治具が建築用パネルの孔に当接して保持する力を高めることができる。
したがって、簡易な構成で保持力を高めることができ、吊り治具の安全性を高めることができる。
【0016】
このとき、前記ベース部材は、前記連結部材を支持する支柱部と、前記支柱部の下方に設けられ、前記スライド部を上下方向に移動可能に支持する受け部と、を有し、前記伸縮部材は、弾性力を有し、前記建築用パネルの前記孔の径方向に伸縮する弾性部材であって、前記受け部の下方位置において前記スライド部に取り付けられ、前記伸縮部材は、前記スライド部及び前記当接部の移動動作に伴って、前記受け部の下面と前記当接部の上面とに挟持されることで膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わる、と良い。
上記構成により、伸縮部材が弾性力を有することで、部品点数を増加させずに、保持力を高めることができる。
【0017】
このとき、前記ベース部材は、前記連結部材を支持する支柱部と、前記支柱部の下方に設けられ、前記スライド部を上下方向に移動可能に支持する受け部と、を有し、前記伸縮部材は、前記受け部の下方に取り付けられる第1リンク部と、前記第1リンク部に回動可能に取り付けられる第2リンク部と、前記第2リンク部に回動可能に取り付けられ、かつ、前記スライド部に摺動可能に支持される摺動部と、を有し、前記摺動部は、前記当接部が下方から当接することによって、前記スライド部に対して上方へ移動し、前記伸縮部材は、前記伸縮部材は、前記摺動部の移動動作に伴って、前記第1リンク部及び前記第2リンク部が回動することで膨出し、前記通常状態から前記保持状態へと切り替わる、と良い。
上記構成により、伸縮部材がリンク機構を有することで、保持力が経時的に劣化してしまうことを抑制できる。
【0018】
また、前記課題は、本発明の吊り治具を用いた吊り上げ方法によれば、平積みされた前記建築用パネルを吊り上げる吊り上げ方法であって、前記建築用パネルの前記孔に前記吊り治具を配置する配置工程と、前記吊り治具を用いて前記建築用パネルを吊り上げる吊上工程と、を含み、前記配置工程では、平積みされた前記建築用パネルのうち、最上部に載置された前記建築用パネルの前記孔の内部に、前記通常状態の前記伸縮部材を配置し、前記吊上工程では、前記吊り治具の吊り上げに伴って、前記通常状態から前記保持状態へ切り替わった前記伸縮部材によって前記建築用パネルを保持して吊り上げること、により解決される。
上記構成により、簡易な構成で効率よく建築用パネルを吊り上げることができる。また、建築用パネルの形状に限らず、簡易な構成で建築用パネルを吊り上げることができる。
詳しく述べると、吊り治具の吊り上げ動作に伴って、伸縮部材が通常状態から保持状態へと切り替わるので、吊り治具に建築用パネルを保持させる作業時間を削減でき、作業効率を高めることができる。
また、吊り治具は、建築用パネルの形成された孔の内部に配置されるため、吊り治具を建築用パネルの下面から突出させずに、建築用パネルを保持することができる。そのため、貫通孔や空間部が形成されていない建築用パネルや、平積みされた建築用パネルであっても、簡易な構成の吊り治具で、効率よく吊り上げることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法によれば、簡易な構成で効率よく建築用パネルを吊り上げることができる。
また、建築用パネルの形状に限らず、簡易な構成で建築用パネルを吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】吊り治具によって建築用パネルを吊り上げた状態を示す図である。
【
図2】吊り治具の正面図であって、伸縮部材の通常状態を示す図である。
【
図3】吊り治具の正面図であって、伸縮部材が通常状態よりも膨出した状態を示す図である。
【
図4】吊り治具の正面図であって、伸縮部材の保持状態を示す図である。
【
図5】複数の吊り治具で建築用パネルを吊り上げた状態を示す図である。
【
図7】変形例の吊り治具の正面図であって、伸縮部材の通常状態を示す図である。
【
図8】変形例の吊り治具の正面図であって、伸縮部材の保持状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、
図1~
図6に基づき、本発明の一実施形態(以下、本実施形態)の吊り治具1について説明する。以下の説明中、「上下方向」とは、建築用パネルPを吊り上げる際の上下方向を意味する。
【0022】
<吊り治具>
吊り治具1は、
図1に示すように、クレーンC(吊り上げ装置)に連結され、建築用パネルPを吊り上げる際に用いられる。
詳しく述べると、吊り治具1は、平積みされた建築用パネルPのうち、最上部に載置された建築用パネルPの孔Phに配置される。そして、吊り治具1が孔Phに配置された建築用パネルPは、吊り治具1によって保持された状態で、クレーンCによって吊り上げられる。
【0023】
建築用パネルPは、例えば、建物の床として使用される床パネル部材である。具体的には、建築用パネルPは、オートクレーブ養生した軽量気泡コンクリート(Autoclaved Lightweight Concrete、以下、ALC)製の床パネル部材である。
建築用パネルPには、建築用パネルPの厚さ方向に貫通する孔Phが形成される。建築用パネルPの孔Phは、建築用パネルPを建物の梁に固定するためのボルト等が挿入されるための孔部である。
【0024】
孔Phは、建築用パネルPの幅方向の中央部であって、長尺方向における両端部に形成されている。なお、孔Phの内部には段部P1が形成されており、上側の上孔Ph1の孔径は、下側の下孔Ph2の孔径よりも大きい(
図5参照)。
建築用パネルPの孔Phの形状及び個数は、これに限られない。例えば、孔Phは、段部P1が形成されていない円筒状の貫通孔であっても良く、建築用パネルPの厚さ方向に貫通していない凹部であっても良い。また、建築用パネルPは、孔Phの近傍において一部が切り欠かれることで、孔Phの下方に空間部が形成されても良い。
【0025】
吊り治具1は、
図1に示すように、クレーンワイヤWを介して、クレーンCと連結される。
クレーンCは、吊り治具1を用いて建築用パネルPを吊り上げる、吊り上げ装置ある。クレーンワイヤWは、クレーンCから下方に延びるワイヤ又はスリングやチェーン等であって、吊り治具1に掛け止めされる。クレーンワイヤWの下端には、例えばフック機構を有するフックが取り付けられる。なお、フックに限らずシャックル等であっても良い。
【0026】
吊り治具1は、
図1に示すように、建築用パネルPに形成された孔Phを利用して建築用パネルPを吊り上げるために用いられる。吊り治具1は、斜め吊りによって建築用パネルPを吊り上げる。
なお、
図1では、一つの吊り治具1によって、建築用パネルPを吊り上げる一点吊りの例を示すが、これに限られない。例えば、
図5に示すように、二つの吊り治具1によって、吊り上げる二点吊りによって、建築用パネルPを吊り上げても良い。
【0027】
吊り治具1は、
図2~
図4に示すように、クレーンCに連結される連結部材10と、
図2に示す通常状態と
図4に示す保持状態との間で切り替わる伸縮部材20と、伸縮部材20を通常状態から保持状態へと切り替える切替部材30と、から主に構成されている。
詳しく述べると、吊り治具1は、通常状態で建築用パネルPの孔Phに配置される。そして、クレーンCによって吊り治具1の連結部材10が吊り上げられたとき、切替部材30によって伸縮部材20が通常状態から保持状態へと切り替わる。このようにして、吊り治具1は、建築用パネルPを吊り上げることができる。
切替部材30は、連結部材10に取り付けられるベース部材40と、ベース部材40に取り付けられ、伸縮部材20を支持する可動部材50と、連結部材10と可動部材50とを接続する接続部材60と、を備える。
【0028】
<連結部材>
連結部材10は、
図2~
図4に示すように、クレーンCに連結され、クレーンワイヤWによって斜め方向(矢印Fの方向)に力が加えられる。連結部材10は、クレーンCに連結される係止部11と、係止部11と切替部材30とを連結する回動部12と、を有する。
【0029】
係止部11は、リング状であって、クレーンCのクレーンワイヤWが係止される部材である。
クレーンワイヤWの下端に設けられたフックが係止部11に係止されることで、クレーンCと吊り治具1とが連結される。
【0030】
回動部12は、係止部11と切替部材30とを連結する長尺な部材である。回動部12は、係止部11に連結する第1回動部13と、切替部材30のベース部材40に連結する第2回動部14と、を有する。第1回動部13と第2回動部14は、ボルト等の固定具12aによって固定され、ベース部材40に対して一体的に回動する。
【0031】
第1回動部13は、係止部11に連結される先端部13aと、第2回動部14に連結される基端部13bと、を有する。
第2回動部14は、第1回動部13に連結される固定端部14aと、ベース部材40に連結される回動軸部14bと、を有する。
回動部12は、一方の端部である先端部13aが係止部11に取り付けられ、他方の端部である回動軸部14bがベース部材40に回動可能に取り付けられる。
【0032】
<伸縮部材>
伸縮部材20は、
図2~
図4に示すように、連結部材10の下方に設けられ、建築用パネルPを保持する部材である。伸縮部材20は、切替部材30によって、
図2に示す通常状態から、
図3に示す状態を介して、
図4に示す保持状態へ切り替わる。
通常状態は、建築用パネルPの孔Phの内部に挿入可能な状態である。保持状態は、切替部材30によって膨出し、孔Phの内部に当接して建築用パネルPを保持する状態である。
【0033】
伸縮部材20は、
図2~
図4に示すように、例えば弾性力を有する弾性ゴムであって、建築用パネルPの孔Phの径方向に伸縮する。伸縮部材20は、可動部材50に取り付けられる。伸縮部材20は、切替部材30の動作に伴って孔Phの径方向に膨出し、孔Phの内部に当接する。
【0034】
詳しく述べると、
図5に示すように、伸縮部材20は、連結部材10が吊り上げられて可動部材50が動作し、可動部材50の可動動作に伴って孔Phの径方向に膨出する。そして、伸縮部材20は、建築用パネルPの孔Phのうち下孔Ph2の内面に当接することで、建築用パネルPを保持する。
このように、伸縮部材20は、連結部材10が吊り上げられたときに動作する切替部材30によって、通常状態から保持状態へと切り替わる。そして、伸縮部材20は、孔Phの径方向に膨出して孔Phの内部に当接することで、建築用パネルPを保持する。
【0035】
伸縮部材20は、孔Phの径方向へ不均一に膨出する弾性ゴムで形成されても良い。
図6に示すように、不均一に膨出する弾性ゴムで形成された伸縮部材20は、切替部材30によって、点線で示す通常状態から矢印Aの方向へ膨出し、実線で示す保持状態へ切り替わる。建築用パネルPの一例であるALCパネルは、孔Phよりも外側である外側領域P2が脆くなりやすい。
したがって、伸縮部材20を矢印Aの方向へ膨出させることで、外側領域P2に対して力がかかりにくくなる。そのため、伸縮部材20が膨出する力によって、建築用パネルPが破損してしまうことを抑制できる。
【0036】
<切替部材>
切替部材30は、
図2~
図4に示すように、連結部材10と伸縮部材20を接続し、クレーンCによって連結部材10が吊り上げられたときに動作し、伸縮部材20を通常状態から保持状態へと切り替える。
【0037】
具体的には、切替部材30は、連結部材10に取り付けられるベース部材40と、ベース部材40に取り付けられ、伸縮部材20を支持する可動部材50と、連結部材10と可動部材50とを接続する接続部材60と、から主に構成される。
切替部材30は、連結部材10が吊り上げられたときに、可動部材50の可動動作に伴って、伸縮部材20を通常状態から保持状態へと切り替える。
なお、切替部材30は、機械的に伸縮部材20を保持状態に切り替える構成に限らず、電気制御によって保持状態に切り替える構成でも良い。
【0038】
<ベース部材>
ベース部材40は、
図2~
図4に示すように、連結部材10に回動可能に取り付けられる部材である。ベース部材40は、連結部材10を支持する支柱部41と、支柱部41の下方に設けられ、可動部材50を上下方向に移動可能に支持する受け部42と、連結部材10を回動可能に支持する回動軸43と、を有する。
【0039】
支柱部41は、連結部材10に回動可能に取り付けられる回動取付部41aと、回動取付部41aから下方へ延び、受け部42が取り付けられる延在部41bと、を有する。
回動取付部41aは、連結部材10の回動部12を回動可能に支持する。詳しく述べると、支柱部41の回動取付部41aは、回動軸43によって、回動部12の回動軸部14bを回動可能に支持する。そして、回動部12は、係止部11が吊り上げられたときに、ベース部材40に対して回動する。
延在部41bは、可動部材50と平行に上下方向に延びる部分であって、下方部分に受け部42が取り付けられる。
【0040】
受け部42は、支柱部41の下方に設けられ、円筒形状を有する部材である。受け部42は、可動部材50を上下方向に移動可能に支持する。
受け部42には、上下方向に貫通する貫通孔42aが形成される。可動部材50は、貫通孔42aに挿入されることで、受け部42に支持される。
【0041】
<可動部材>
可動部材50は、
図2~
図4に示すように、伸縮部材20を支持する部材である。可動部材50は、ベース部材40に取り付けられ、連結部材10の吊り上げに伴ってベース部材40に対して可動する。
可動部材50は、連結部材10に連結され、上下方向に延び、ベース部材40に対して上下移動可能なスライド部51と、伸縮部材20に下方から当接する当接部52と、を有する。
【0042】
スライド部51は、上下方向に延びる棒状の部材であって、ベース部材40の受け部42に形成された貫通孔42aに取り付けられる。スライド部51は、上端部分である接続端部51aと、下端部分である延出端部51bと、を有する。
接続端部51aは、接続部材60に回動可能に接続される。そのため、スライド部51は、連結部材10が上方へ回動する動作に伴って、接続部材60を介して上方に引き上げられる。延出端部51bには、当接部52が取り付けられる。
【0043】
当接部52は、円板状の部材であって、スライド部51の延出端部51bに設けられる。
伸縮部材20は、ベース部材40の受け部42の下方位置において、スライド部51に取り付けられる。伸縮部材20は、下端部20bが当接部52の上面である当接面52aに下方から支持されることで、スライド部51に保持される。
【0044】
図2に示すように、伸縮部材20が通常状態のとき、下端部20bは当接面52aによって支持される。通常状態の伸縮部材20の直径は、建築用パネルPの孔Phの孔径よりも小さい。そのため、通常状態の伸縮部材20は、孔Phの内部に当接せずに、挿入及び引き抜きが可能となっている。
そして、
図3に示すように、スライド部51は、連結部材10が吊り上げられたときに、接続部材60を介して、ベース部材40の受け部42に対して上方に移動する。
当接部52は、スライド部51が上方へ移動したときに、スライド部51と共に、ベース部材40の受け部42に対して上方に移動する。
このとき、スライド部51及び当接部52の上方への移動動作に伴って、伸縮部材20の上端部20aは、受け部42の下面42bに当接する。そして、伸縮部材20は、受け部42の下面42bと当接部52の当接面52aとに挟持されることで徐々に膨出する。
【0045】
そして、
図4に示すように、伸縮部材20は、受け部42と当接部52とに挟持されることで径方向へ膨出し、保持状態へと切り替わる。保持状態の伸縮部材20は、建築用パネルPの孔Phの内部に当接し、する。
このように、伸縮部材20は、可動部材50の可動動作に伴って通常状態から保持状態へと切り替わり、建築用パネルPを保持することができる。
【0046】
<接続部材>
接続部材60は、
図2~
図4に示すように、V字形状を有する長尺な部材であって、連結部材10と可動部材50とを接続する。具体的には、接続部材60は、連結部材10の回動部12と、可動部材50のスライド部51を接続する。
接続部材60は、一端部である第1端部60aと、他端部である第2端部60bと、を有する。詳しく述べると、第1端部60aは、第1軸部61によって、回動部12の先端部13aと回動軸部14bとの間の部分に回動可能に取り付けられる。第2端部60bは、第2軸部62によって、スライド部51の接続端部51aに回動可能に取り付けられる。
【0047】
図2に示すように、連結部材10は、クレーンCによって斜め方向(矢印Fの方向)へ力が加えられる。そして、連結部材10の回動部12は、回動軸43によって、ベース部材40の支柱部41に対して回動する。
接続部材60の第1端部60aは、第1軸部61によって、上方へ移動する。そして、接続部材60の第2端部60bは、第2軸部62によって、上方へ移動する。
可動部材50は、回動部12がベース部材40に対して回動したときに、接続部材60が回動することによって、ベース部材40に対して上方へ移動する。
このように、連結部材10がクレーンCによって斜め方向(矢印Fの方向)へ力が加えられたときでも、接続部材60によって、可動部材50を上方に移動させることができる。
【0048】
このように、係止部11がクレーンCによって吊り上げられたときに、回動部12がベース部材40に対して回動する。そして、回動部12の回動動作に伴って、接続部材60が回動する。可動部材50のスライド部51及び当接部52は、接続部材60の回動動作に伴って、ベース部材40の受け部42に対して上方へ移動する。
伸縮部材20は、スライド部51及び当接部52が上方へ移動したときに、受け部42の下面42bと当接部52の当接面52aとに挟持されることで、通常状態から保持状態へと切り替わる。したがって、伸縮部材20は、建築用パネルPの孔Phの内部に当接するように膨出し、建築用パネルPを保持することができる。
【0049】
上記構成により、連結部材10はクレーンCによって吊り上げる力によって回動し、伸縮部材20の径方向へ膨出することによって建築用パネルPを保持する支持力が発生する。また、クレーンCによって吊り上げる力が吊り治具1にかかることで、吊り治具1が斜めになって孔Phの内部に接触する支持力が発生する。この二つの支持力によって、建築用パネルPをより安全に吊り上げることができる。
したがって、吊り治具1は、簡易な構成で効率よく、安全に建築用パネルPを吊り上げることができる。
【0050】
<変形例>
次に、変形例の吊り治具100について、
図7、
図8に基づいて説明する。なお、上述の吊り治具1と重複する内容については説明を省略する。
変形例の吊り治具100は、連結部材10と、伸縮部材120と、切替部材30と、を備える。切替部材30は、ベース部材40と、可動部材50と、接続部材60と、を有する。ベース部材40は、支柱部41と、受け部142と、を有する。変形例の吊り治具100は、上述の吊り治具1と比較して、伸縮部材120及び受け部142の構成が異なっている。
【0051】
伸縮部材120は、金属部材からなるリンク機構であって、受け部142に取り付けられる。伸縮部材120は、切替部材30によって、
図7に示す通常状態から、
図8に示す保持状態へ切り替わり、建築用パネルPを保持する。
【0052】
伸縮部材120は、
図7、
図8に示すように、受け部142の下方に取り付けられる第1リンク部121と、第1リンク部121に回動可能に取り付けられる第2リンク部122と、スライド部51に摺動可能に取り付けられる摺動部123と、第1リンク部121及び第2リンク部122を回動可能に支持するリンク軸部124と、を有する。
【0053】
第1リンク部121は、受け部142のリンク取付部142bに、回動可能に取り付けられる長尺棒状の部材である。なお、リンク取付部142bは、受け部142の下端部分に形成され、貫通孔142aに連通する孔部を有する円筒状の部材である。
第1リンク部121は、受け部142に一対設けられ、上端である第1リンク上端121aと、下端である第1リンク下端121bと、を有する。第1リンク上端121aは、それぞれリンク取付部142bに回動可能に取り付けられる。
【0054】
第2リンク部122は、第1リンク部121に回動可能に取り付けられる長尺棒状の部材である。第2リンク部122は、第1リンク部121に一対設けられ、上端である第2リンク上端122aと、下端である第2リンク下端122bと、を有する。第2リンク上端122aは、第1リンク部121のそれぞれの第1リンク下端121bに、リンク軸部124を介して、回動可能に取り付けられる。
【0055】
摺動部123は、スライド部51に対して上下方向に摺動するリング状の部材である。摺動部123は、第2リンク下端122bに回動可能に取り付けられ、かつ、スライド部51に摺動可能に取り付けられる。摺動部123は、当接部52の当接面52aが下方から当接することによって、スライド部51に対して上方へ移動する。
このように、摺動部123が上方へ移動したときに、第1リンク部121及び第2リンク部122は回動する。そして、第1リンク部121及び第2リンク部122の接続部分(リンク軸部124の近傍)が膨出し、孔Phの内部に当接する。
したがって、伸縮部材120は、切替部材30によって、通常状態から建築用パネルPを保持する保持状態へと切り替わる。
【0056】
なお、伸縮部材20が弾性ゴムであり、伸縮部材120が金属リンク機構である例を示したが、これに限られない。例えば、伸縮部材120のリンク軸部124にコイルバネのような弾性部材を設けて、伸縮部材120をスライド部51に取り付けても良い。
このように、伸縮部材120は、弾性力によって建築用パネルPの孔Phの径方向に伸縮する金属リンク機構であっても良い。
【0057】
<吊り治具を用いた吊り上げ方法>
次に、吊り治具1を用いた吊り上げ方法について、
図9に基づいて説明する。建築用パネルPは、例えばALC床パネルであって、吊り治具1によって建物の梁の上に配置される。
当該方法は、
図9に示すように、建築用パネルPの孔Phに吊り治具を配置する「配置工程(S1)」と、クレーンCを用いて建築用パネルPを吊り上げる「吊上工程(S2)」と、を少なくとも含むものである。以下、詳しく説明する。
なお、建築用パネルPの吊り上げ作業にあたって、その他の工程については、説明を省略する。
【0058】
「配置工程(S1)」では、作業者が、平積みされた建築用パネルPのうち、最上部に載置された建築用パネルPの孔Phの内部に、通常状態の伸縮部材20を配置する。
【0059】
「吊上工程(S2)」では、作業者が、クレーンCを作動させ、吊り治具1を用いて建築用パネルPを吊り上げる。吊り治具1は、クレーンCの吊り上げ動作に伴って、通常状態から保持状態へ切り替わった伸縮部材20によって、建築用パネルPを保持する。
【0060】
具体的には、連結部材10の係止部11がクレーンCによって吊り上げられたときに、回動部12がベース部材40の支柱部41に対して回動する。そして、回動部12及び接続部材60の回動動作に伴って、可動部材50のスライド部51及び当接部52が、ベース部材40の受け部42に対して上方へ移動する。
スライド部51及び当接部52の上方への移動動作に伴って、伸縮部材20が受け部42の下面42bと当接部52の当接面52aとに挟持されて膨出し、建築用パネルPの孔Phの内部に当接して、通常状態から保持状態へと切り替わる。
このように、伸縮部材20が通常状態から保持状態へと切り替わると、吊り治具1は、建築用パネルPを保持することができる。
【0061】
その後、作業者は、吊り治具1を上昇させ、建築用パネルPを梁の上に搬送して、建築用パネルPを梁の上に設置する。そして、この建築用パネルPの吊り上げ作業と設置作業を繰り返すことで、建物の梁上にALC床パネルが施工される。
【0062】
このように、吊り治具1は、建築用パネルPの下面から突出しないように、孔Phの内部に配置される。そのため、建築用パネルPをずらすことなく、吊り治具1によって保持することができる。
したがって、貫通孔や空間部が形成されていない建築用パネルPや、平積みされた建築用パネルPであっても、簡易な構成の吊り治具1で、効率よく吊り上げることができる。
また、建築用パネルPを梁の上に設置するときに、吊り治具1が建築用パネルPの下面から突出しない。そのため、吊り治具1と梁との干渉を抑制し、建築用パネルPを直接梁上に設置できるため、効率よく建築用パネルPを梁に設置できる。
【0063】
また、上記吊り治具1を用いた吊り上げ方法であれば、吊り治具1の吊り上げ動作に伴って、伸縮部材20が通常状態から保持状態へと切り替わる。そのため、吊り治具1に建築用パネルPを保持させる作業時間を削減でき、作業効率を高めることができる。
また、建築用パネルPを梁の上に設置した後、吊り治具1を建築用パネルPの孔Phから引き抜く際に、クレーンCのクレーンワイヤWによる引っ張り力を緩めるだけで、伸縮部材20が保持状態から通常状態へと切り替わる。そのため、吊り治具1を建築用パネルPから引き抜く作業時間を削減でき、作業効率を高めることができる。
【0064】
さらに、上記吊り治具1を用いた吊り上げ方法であれば、クレーンCが係止部11を斜めの方向へ引っ張る力を、伸縮部材20が孔Phに作用する力に変換できる。そのため、吊り治具1が建築用パネルPの孔Phに当接して保持する力を高めることができる。
したがって、簡易な構成で、吊り治具1による吊り上げ作業の安全性を高めることができる。
【0065】
さらに、上記吊り治具1を用いた吊り上げ方法であれば、伸縮部材20を建築用パネルPの孔Phの内部に配置して、孔Phの内側から建築用パネルPを保持できる。例えば、建築用パネルPの外側を挟持して吊り上げる方法では、複数の建築用パネルPを敷き詰めるときに、パネル間に隙間が生じてしまうおそれがある。
上記吊り治具1は、孔Phの内側から建築用パネルPを保持できるため、複数の建築用パネルPを隙間なく敷き詰めることができる。また、建築用パネルPのサイズによらずに、建築用パネルPを保持することができる。
【0066】
<その他の実施形態>
本発明の吊り治具及び吊り治具を用いた吊り上げ方法は、上記の実施形態に限定されるものではない。本実施形態では、建築用パネルPとしてALC床パネルを吊り上げる場合を例示して説明を行った。しかしこれに限らず、ALCパネル以外の床部材、又は屋根部材、柱部材、円筒部材等を吊り上げる場合にも好適である。
【0067】
上記実施形態では、主として本発明に係る吊り治具、及び吊り治具を用いた吊り上げ方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0068】
1 吊り治具
10 連結部材
11 係止部
11a 係止孔
12 回動部
12a 固定具
13 第1回動部
13a 先端部(一方の端部)
13b 基端部
14 第2回動部
14a 固定端部
14b 回動軸部(他方の端部)
20 伸縮部材
20a 上端部
20b 下端部
20c ゴム孔
30 切替部材
40 ベース部材
41 支柱部
41a 回動取付部
41b 延在部
42 受け部
42a 貫通孔
42b 下面
43 回動軸
50 可動部材
51 スライド部
51a 接続端部
51b 延出端部
52 当接部
52a 当接面
60 接続部材
60a 第1端部(一端部)
60b 第2端部(他端部)
61 第1軸部
62 第2軸部
120 伸縮部材
121 第1リンク部
121a 第1リンク上端
121b 第1リンク下端
122 第2リンク部
122a 第2リンク上端
122b 第2リンク下端
123 摺動部
123a 摺動下端部
124 リンク軸部
142 受け部
142a 貫通孔
142b リンク取付部
C 吊り上げ装置
W ワイヤ
P 建築用パネル
Ph 孔
P1 段部
Ph1 上孔
Ph2 下孔
P2 外側領域