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特開2024-137167プログラム、モデル生成方法、情報処理方法及び情報処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137167
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】プログラム、モデル生成方法、情報処理方法及び情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240927BHJP
   E02B 3/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/10
E02B3/14 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048578
(22)【出願日】2023-03-24
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和 4年 4月15日に、土木学会 第25回応用力学シンポジウム講演概要集(2022年5月)にて公開 令和 4年 5月28日に、第25回応用力学シンポジウム 一般セッションにて公開 https://confit.atlas.jp/guide/event/jsceam2022/subject/2E01-05-02/tables?cryptoId= 令和 5年 3月 9日に、J-Stageのウェブサイトにて公開 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jscejj/79/15/79_22-15057/_article/-char/ja/ 令和 4年12月27日に、機械学習・ディープラーニングによる異常検知技術と活用事例集、第374頁~第386頁、株式会社技術情報協会にて公開
(71)【出願人】
【識別番号】592000886
【氏名又は名称】八千代エンジニヤリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】都築 幸乃
(72)【発明者】
【氏名】藤井 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 順一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 龍人
【テーマコード(参考)】
2D118
5L049
【Fターム(参考)】
2D118AA02
2D118BA03
2D118CA07
2D118DA01
2D118FA06
2D118FB02
2D118FB18
2D118HA00
2D118HD03
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】専門家でなくても、複数のブロックで構築された構造物を撮影した画像から各ブロックの状態を容易に判断することが可能となるプログラム等を提供する。
【解決手段】コンピュータは、プログラムに従って、複数のブロックで構築された構造物を撮影した撮影画像を取得し、取得した撮影画像をブロック毎に分割する。そして、コンピュータは、ブロックの画像を入力した場合に、前記画像から再構成処理によって生成された生成画像を出力するように学習された学習モデルに、撮影画像から分割された各ブロックのブロック画像を入力して、入力したブロック画像から生成された生成画像を取得する。コンピュータは、ブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、ブロックの状態に関する情報を出力する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブロックで構築された構造物を撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記ブロック毎に分割し、
ブロックの画像を入力した場合に、前記画像から再構成処理によって生成された生成画像を出力するように学習された学習モデルに、前記撮影画像から分割されたブロックのブロック画像を入力して、入力した前記ブロック画像から生成された生成画像を取得し、
前記ブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、前記ブロックの状態に関する情報を出力する
処理をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項2】
前記撮影画像から分割されたブロックのブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、前記ブロックの状態に関するスコアを算出し、
算出したスコアに基づいて、前記ブロックの状態に関する情報を出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記算出したスコアに基づいて、前記ブロックが正常な状態であるか否かを判断し、
前記撮影画像中のブロック画像に対して、正常な状態でないと判断されたブロックのブロック画像の割合を算出し、
前記撮影画像及び算出した割合を出力する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記撮影画像中の各ブロックの領域を、各ブロックの状態に応じた態様で表示する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~3のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項5】
撮影部を介して取得する前記構造物の画像を表示し、
前記構造物の画像上に、前記構造物を過去に撮影した撮影画像を重ねて表示し、
前記過去に撮影した撮影画像の透過率を受け付け、
前記過去に撮影した撮影画像を、受け付けた透過率で表示する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~3のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項6】
前記撮影画像に対して処理対象の領域の指定を受け付け、
指定された領域に対して射影変換を行い、
射影変換後の前記領域を前記ブロック毎に分割する
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~3のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項7】
前記構造物を撮影した撮影画像と、前記撮影画像に対して射影変換を行った後の撮影画像と、各ブロックの領域を各ブロックの状態に応じた態様で表示する撮影画像との表示を切り替える
処理を前記コンピュータに実行させる請求項1~3のいずれか1つに記載のプログラム。
【請求項8】
正常状態のブロックの撮影画像を訓練データとして取得し、
取得した前記撮影画像を入力した場合に、前記撮影画像から再構成処理によって前記撮影画像に類似する画像を生成して出力する学習モデルを生成する
処理をコンピュータが実行するモデル生成方法。
【請求項9】
前記ブロックは、護岸ブロックであり、
前記訓練データは、形状が異なる複数種類の護岸ブロックの撮影画像、及び/又は、水抜口、梯子又は植生を含む護岸ブロックの撮影画像を含む
請求項8に記載のモデル生成方法。
【請求項10】
複数のブロックで構築された構造物を撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記ブロック毎に分割し、
ブロックの画像を入力した場合に、前記画像から再構成処理によって生成された生成画像を出力するように学習された学習モデルに、前記撮影画像から分割されたブロックのブロック画像を入力して、入力した前記ブロック画像から生成された生成画像を取得し、
前記ブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、前記ブロックの状態に関する情報を出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【請求項11】
制御部を備える情報処理装置であって、
前記制御部は、
複数のブロックで構築された構造物を撮影した撮影画像を取得し、
前記撮影画像を前記ブロック毎に分割し、
ブロックの画像を入力した場合に、前記画像から再構成処理によって生成された生成画像を出力するように学習された学習モデルに、前記撮影画像から分割されたブロックのブロック画像を入力して、入力した前記ブロック画像から生成された生成画像を取得し、
前記ブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、前記ブロックの状態に関する情報を出力する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、モデル生成方法、情報処理方法及び情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
河川の法面、海岸、湖岸等に複数の護岸ブロックで構築された護岸施設が設けられている。特許文献1には、水位センサの収納が可能な護岸ブロックによって形成された擁壁構造が開示されている。特許文献1の技術では、河川の法面等を補強できると共に河川等の水位をリアルタイムで測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-181021号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
護岸施設は、機能維持のために、損傷状態等の点検を定期的に行うことが義務付けられている。現状では、例えば1年に1~2回程度、点検担当者が河川を歩いて見て回り、損傷と思われる箇所の写真を撮影し、写真に対して損傷の位置及び状態に関するコメントを付与した報告書を作成することが行われている。このような点検作業は、河川維持管理技術者及び河川点検士等の専門家が目視点検で行っており、日本全国の護岸施設を十分に点検するための人材を確保することは容易ではない。護岸施設のほかに例えば道路擁壁についても同様の点検を行っており、同様の課題がある。
【0005】
一つの側面では、専門家でなくても、複数のブロックで構築された構造物を撮影した画像から各ブロックの状態を容易に判断することが可能となるプログラム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面に係るプログラムは、複数のブロックで構築された構造物を撮影した撮影画像を取得し、前記撮影画像を前記ブロック毎に分割し、ブロックの画像を入力した場合に、前記画像から再構成処理によって生成された生成画像を出力するように学習された学習モデルに、前記撮影画像から分割されたブロックのブロック画像を入力して、入力した前記ブロック画像から生成された生成画像を取得し、前記ブロック画像と、前記ブロック画像から生成された生成画像とに基づいて、前記ブロックの状態に関する情報を出力する処理をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、専門家でなくても、複数のブロックで構築された構造物を撮影した画像から各ブロックの状態を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】情報処理システムの構成例を示す説明図である。
図2】サーバ及び撮影装置の構成例を示すブロック図である。
図3】護岸DBのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。
図4】学習モデルの概要を示す説明図である。
図5】学習モデルの生成処理手順の一例を示すフローチャートである。
図6】学習モデルの学習に用いる画像の説明図である。
図7】護岸ブロックの解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】護岸ブロックの解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
図9】護岸ブロックの解析処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】画面例を示す説明図である。
図11】画面例を示す説明図である。
図12】画面例を示す説明図である。
図13】画面例を示す説明図である。
図14】ブロック画像に分解する処理の説明図である。
図15】学習モデルの変形例を示す説明図である。
図16】状態判別モデルの概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示のプログラム、モデル生成方法、情報処理方法、及び情報処理装置について、その実施形態を示す図面に基づいて詳述する。以下の各実施形態では、河川の法面、海岸、湖岸等に複数の護岸ブロックで構築された護岸施設の状態を解析する処理を例に説明するが、解析対象は、護岸施設に限定されず、例えば擁壁及びブロック塀等、複数のブロックで構築された構造物であってもよい。
【0010】
(実施形態1)
図1は情報処理システムの構成例を示す説明図である。本実施形態では、複数の護岸ブロックで構築された護岸施設(以下では単に護岸と称する)の状態を検出する情報処理システムについて説明する。本実施形態の情報処理システムは、護岸の撮影に用いる撮影装置20及びサーバ10を含み、撮影装置20及びサーバ10は、インターネット等のネットワークNを介して通信接続されている。撮影装置20は、護岸の撮影を行う撮影者が使用する情報端末であり、複数設けられている。なお、撮影者は、河川維持管理技術者及び河川点検士等の専門家でなくてもよい。
【0011】
図2はサーバ10及び撮影装置20の構成例を示すブロック図である。サーバ10は、種々の情報処理及び情報の送受信が可能な情報処理装置であり、サーバコンピュータ又はパーソナルコンピュータ等で構成される。サーバ10は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、読み取り部16等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。制御部11は、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、又はAIチップ(AI用半導体)等の1又は複数のプロセッサを用いて構成されている。制御部11は、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pを適宜実行することにより、サーバ10が行うべき種々の情報処理及び制御処理を実行する。
【0012】
記憶部12は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等を含む。記憶部12は、制御部11が実行するプログラム12P(プログラム製品)及び各種のデータを記憶している。また記憶部12は、制御部11がプログラム12Pを実行する際に発生するデータ等を一時的に記憶する。また記憶部12は、例えば機械学習によって訓練データを学習済みの学習モデル12Mを記憶している。学習モデル12Mは、人工知能ソフトウェアを構成するプログラムモジュールとしての利用が想定される。学習モデル12Mは、入力値に対して所定の演算を行い、演算結果を出力するものであり、記憶部12には、この演算を規定する関数の係数や閾値等のデータが学習モデル12Mとして記憶される。更に記憶部12は、後述する護岸DB12aを記憶している。記憶部12の一部は、サーバ10に接続された他の記憶装置であってもよく、サーバ10が通信可能な他の記憶装置であってもよい。
【0013】
通信部13は、有線通信又は無線通信に関する処理を行うための通信モジュールであり、ネットワークNを介して他の装置との間で情報の送受信を行う。ネットワークNは、インターネット又は公衆電話回線網であってもよく、サーバ10が設けられている施設内に構築されたLAN(Local Area Network)であってもよい。入力部14は、ユーザによる操作入力を受け付け、操作内容に対応した制御信号を制御部11へ送出する。表示部15は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等であり、制御部11からの指示に従って各種の情報を表示する。入力部14及び表示部15は一体として構成されたタッチパネルであってもよい。
【0014】
読み取り部16は、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SD(Secure Digital)カード等を含む可搬型記憶媒体10aに記憶された情報を読み取る。記憶部12に記憶されるプログラム12P及び各種のデータは、制御部11が読み取り部16を介して可搬型記憶媒体10aから読み取って記憶部12に記憶してもよい。また、プログラム12P及び各種のデータは、サーバ10の製造段階において記憶部12に書き込まれてもよく、制御部11が通信部13を介して他の装置からダウンロードして記憶部12に記憶してもよい。
【0015】
本実施形態において、サーバ10は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであってもよく、1台の装置内にソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよく、クラウドサーバであってもよい。また、サーバ10は、入力部14及び表示部15は必須ではなく、接続されたコンピュータを通じて操作を受け付ける構成でもよく、表示すべき情報を外部の表示装置へ出力する構成でもよい。また、プログラム12Pは単一のコンピュータ上で実行されてもよく、ネットワークを介して相互に接続された複数のコンピュータ上で実行されてもよい。
【0016】
撮影装置20は、種々の情報処理及び情報の送受信が可能な情報処理装置であり、スマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等で構成される。撮影装置20は、護岸の撮影を行う撮影者が使用する情報端末であり、カメラを有する情報端末であれば、上述した機器に限定されない。撮影装置20は、制御部21、記憶部22、通信部23、入力部24、表示部25、読み取り部26、カメラ27、測位部28等を含み、これらの各部はバスを介して相互に接続されている。撮影装置20の制御部21、記憶部22、通信部23、入力部24、表示部25、及び読み取り部26は、サーバ10の制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、表示部15、及び読み取り部16と同様の構成を有するので、詳細な説明は省略する。なお、撮影装置20の記憶部22には、制御部21が実行するプログラム22P(プログラム製品)のほかに、護岸の撮影を支援すると共に、撮影された護岸の撮影画像をサーバ10に登録する処理を実現するためのアプリケーションプログラム(以下では護岸撮影アプリ22APと称する)が記憶してある。
【0017】
カメラ27は、レンズ及び撮像素子等を有する撮像部である。カメラ27は、撮影者によるシャッターボタンの操作に従った制御部21からの指示に従って撮影を行い、例えば1枚の画像データ(静止画像)を取得する。カメラ27にて取得された画像データ(撮影画像)は記憶部22に記憶される。測位部28は、撮影装置20の現在地を検出し、現在地を示す現在地情報(例えば経度及び緯度の座標値)を取得し、取得した現在地情報を制御部21へ送出する。測位部28は、例えばGPS(Global Positioning System )受信機を有し、GPS衛星から送信されるGPS信号をGPS受信機にて受信し、受信したGPS信号に基づいて現在地を検出する。なお、現在地の検出方法はGPS衛星からの電波に基づく方法に限らない。また測位部28は、ジャイロセンサ等を有し、カメラ27による撮影方向(例えば、東西南北で示される方角)を特定する構成でもよい。
【0018】
上述した構成の情報処理システムにおいて、撮影装置20は、撮影者からの指示に従って護岸の撮影を行い、得られた撮影画像をサーバ10に登録する処理を行う。サーバ10は、撮影装置20によって撮影された護岸の撮影画像(以下では護岸画像と称する)に基づいて、各護岸ブロックの劣化状態を解析する処理を行う。本実施形態のサーバ10は、護岸の撮影画像から、当該撮影画像中の各護岸ブロックの劣化状態を解析する際に学習モデル12Mを用いる。
【0019】
図3は護岸DB12aのレコードレイアウトの一例を示す説明図である。護岸DB12aは、撮影装置20を用いて撮影された護岸に関する情報を記憶するデータベースである。護岸DB12aは例えば、河川コード列、モニタリング地点列、撮影画像列、解析履歴列等を含む。河川コード列は、各河川に固有に割り当てられた識別情報(河川コード)を記憶する。河川コードは例えば河川コード管理システムによって各河川に付与された番号を用いることができる。モニタリング地点列は、河川コードが示す河川において解析対象の地点の情報、即ち、過去に護岸を撮影した撮影場所(モニタリング地点)の情報を記憶する。具体的には、モニタリング地点列は、地点ID列、橋情報列、住所列、及び位置情報列を含み、地点ID列は、各モニタリング地点に固有に割り当てられた識別情報(地点ID)を記憶する。橋情報列は、地点IDに対応付けて、モニタリング地点の近傍の橋の名称を記憶し、例えばモニタリング地点の上流側の橋及び下流側の橋の名称を記憶する。住所列は、地点IDに対応付けて、モニタリング地点の住所を記憶し、位置情報列は、地点IDに対応付けて、モニタリング地点の緯度及び経度等の位置情報を記憶する。撮影画像列は、モニタリング地点の情報に対応付けて、モニタリング地点での護岸の撮影画像(護岸画像)の情報を記憶する。具体的には、撮影画像列は、日時列、撮影者ID列、及び撮影画像データ列を含み、日時列は撮影日時を記憶し、撮影者ID列は、撮影者又は撮影装置20に固有に割り当てられた識別情報を記憶する。撮影画像データ列は、護岸画像の画像データを記憶する。なお、護岸画像の画像データは、護岸DB12aに記憶されずに、記憶部12の所定領域又はサーバ10に接続された外部記憶装置に記憶されてもよい。この場合、撮影画像データ列は、護岸画像の画像データを読み出すための情報(例えばデータの記憶場所を示すフォルダ名及びファイル名)を記憶する。
【0020】
解析履歴列は、護岸画像に基づいて護岸ブロックの状態を解析した結果の情報を記憶する。具体的には、解析履歴列は、日時列、解析者ID列、切取画像データ列、解析画像データ列、異常ブロック率列を含み、解析対象の護岸画像の情報に対応付けて各情報を記憶する。具体的には、日時列は解析処理を行った日時を記憶し、解析者ID列は、解析処理を行った担当者に固有に割り当てられた識別情報を記憶する。切取画像データ列は、解析処理の際に護岸画像から抽出して射影変換された後の処理領域(以下では切取画像と称する)の画像データを記憶し、解析画像データ列は、各護岸ブロックに対する解析結果(以下では解析画像と称する)を示す画像データを記憶する。切取画像及び解析画像の画像データは、記憶部12の所定領域又はサーバ10に接続された外部記憶装置に記憶されてもよく、この場合、切取画像データ列及び解析画像データ列は、切取画像及び解析画像の画像データを読み出すための情報(例えばフォルダ名及びファイル名)を記憶する。異常ブロック率列は、解析結果であり、護岸画像中に撮影された護岸ブロックに対して、異常状態であると判定された護岸ブロックの割合を記憶する。このような構成により、護岸DB12aには、撮影装置20によって撮影された護岸画像と、護岸画像に基づいて解析された護岸ブロックの状態を示す解析結果とが記憶される。なお、護岸DB12aは図3に示す構成に限定されず、解析対象の護岸に関する各種の情報を記憶することができる。
【0021】
図4は学習モデル12Mの概要を示す説明図であり、図4Aは学習モデル12Mの構成例を示し、図4Bは学習モデル12Mの入力データの例を示す。学習モデル12Mは、護岸ブロックを撮影した画像(以下ではブロック画像と称する)を入力とし、入力されたブロック画像に基づいて、当該ブロック画像に対して再構成処理を行い、生成した再構成画像(生成画像)を出力するように学習している。学習モデル12Mに入力されるブロック画像は、図4Bに示すように、護岸を撮影した撮影画像から1つの護岸ブロックの領域を抽出した画像を用いることができる。学習モデル12Mは、VAE(Variational Autoencoder:変分自己符号化器)を用いて構成される。VAEは、入力データの特徴量から潜在変数を生成するエンコーダと、生成した潜在変数から出力データを生成するデコーダとを有するモジュールである。なお、学習モデル12Mは、入力データに近いデータを出力するように学習する構成であれば、VAEに限定されず、各種の生成モデルを用いてもよい。
【0022】
学習モデル12Mは、学習用の訓練データを用いて機械学習することにより生成できる。訓練データは、護岸を撮影した撮影画像から抽出された護岸ブロックの画像(ブロック画像)のうちで、護岸ブロックが正常な状態であると判断されるブロック画像を用いることができる。なお、護岸ブロックが正常でない状態とは、護岸ブロックの少なくとも一部に、欠損、エフロレッセンス(白華現象)、表面剥離、溶出物等の劣化が発生している状態を意味し、正常な状態とは、これらの劣化が発生しておらず補修の必要がない状態を意味する。
【0023】
学習モデル12Mは、訓練データのブロック画像が入力された場合に、入力されたブロック画像に似た画像を出力するように学習する。学習処理において学習モデル12Mは、入力されたブロック画像に基づいて再構成処理を行い、出力データ(出力画像)を生成する。学習モデル12Mは、生成した出力画像と、入力したブロック画像とを比較し、両者が近似するように、演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、学習モデル12M(エンコーダ及びデコーダ)を構成するノード間の重み(結合係数)等であり、パラメータの最適化の方法は、誤差逆伝播法、最急降下法等を用いることができる。訓練データに用いるブロック画像は、正常な状態の護岸ブロックの画像であり、本実施形態の学習モデル12Mは、このようなブロック画像が入力された場合に、入力画像に近い画像(入力画像に似た再構成画像)を生成するように学習する。これにより、ブロック画像が入力された場合に、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た画像(再構成画像)を再構成し、生成した再構成画像を出力画像として出力する学習モデル12Mが得られる。
【0024】
学習モデル12Mの学習は他の学習装置で行われてもよい。他の学習装置で学習が行われて生成された学習済みの学習モデル12Mは、例えばネットワークN経由又は可搬型記憶媒体10a経由で学習装置からサーバ10にダウンロードされて記憶部12に記憶される。
【0025】
以下に、上述したブロック画像を訓練データに用いて学習して学習モデル12Mを生成する処理について説明する。図5は学習モデル12Mの生成処理手順の一例を示すフローチャート、図6は学習モデル12Mの学習に用いる画像の説明図である。以下の処理は、サーバ10の制御部11が、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pに従って実行するが、他の学習装置で行われてもよい。以下の処理では、制御部11はまず、護岸画像に基づいて訓練データを生成し、生成した訓練データを用いて学習モデル12Mの学習を行う。
【0026】
サーバ10の制御部11は、訓練データの生成に用いる学習用の護岸画像を取得する(S11)。学習用の護岸画像は、予め撮影装置20から取得して記憶部12に記憶されている画像を読み出してもよく、撮影装置20又は他のサーバから通信部13によってダウンロードしてもよい。制御部11は、取得した学習用の護岸画像を表示部15に表示し(S12)、表示した護岸画像を介して、訓練データの生成に用いる処理領域の指定を受け付ける(S13)。図6Aは、護岸画像の例を示しており、図6A中の白丸で示すように、実空間上の矩形の4頂点に対応する4点の指定を受け付ける。これにより、制御部11は、図6A中の白実線による四角形で示す領域を処理領域として受け付ける。
【0027】
制御部11は、指定された処理領域に対して射影変換処理を実行し(S14)、指定された四角形の処理領域を矩形領域(長方形の領域)に変換する。具体的には、制御部11は、表示中の護岸画像から、指定された処理領域を抽出し、抽出した処理領域を、当該処理領域と同程度の大きさの矩形領域に変換する。これにより、護岸の傾斜角度、カメラ27の撮影方向等によって撮影画像に生じる歪みが補正され、補正後の処理領域が得られる。図6B上側には射影変換後の処理領域を示す。次に制御部11は、射影変換後の処理領域からブロック画像を抽出する(S15)。例えば制御部11は、護岸ブロックの撮影画像の画像特徴量を示すテンプレート画像を予め用意しておき、テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングによって、護岸画像に含まれる護岸ブロックの領域(ブロック画像)を検出する。なお、護岸画像中のブロック画像を検出する処理は、テンプレートマッチングのほかに、学習モデルを用いた画像認識処理によって行ってもよい。例えば、護岸画像が入力された場合に、入力された護岸画像中の護岸ブロックの領域をバウンディングボックスで示したラベル画像を出力するように学習済みの学習モデルを用いることができる。この場合、制御部11は、射影変換後の処理領域の画像を学習モデルに入力し、学習モデルからの出力情報に基づいて、処理領域中の各ブロック画像を検出することができる。テンプレートマッチング又は学習モデルを用いた画像認識処理を行うことにより、護岸画像からブロック画像を自動で抽出することができる。図6B上側に示す射影変換後の処理領域中の白矩形は、図6B下側に拡大表示した1つのブロック画像を示している。なお、ステップS15において、制御部11は、処理領域中の全てのブロック画像を抽出する必要はなく、テンプレートマッチング又は画像認識によって検出できたブロック画像のみを抽出すればよい。
【0028】
制御部11は、抽出した各ブロック画像を訓練データとして記憶部12に記憶する(S16)。制御部11は、例えば記憶部12に用意された訓練DB(図示せず)に訓練データを記憶する。これにより、護岸画像からブロック画像として抽出できた領域が訓練データとして蓄積される。上述した処理では、護岸画像からブロック画像を抽出して訓練データに用いる構成であるが、護岸ブロックのみを撮影した撮影画像(ブロック画像)を訓練データに用いてもよい。この場合、制御部11は、ステップS11~S15の代わりに、学習モデル12Mの学習用に護岸ブロックのみを撮影した撮影画像(ブロック画像)を取得する処理を行い、ステップS16で、取得したブロック画像を訓練データとして記憶部12に記憶すればよい。
【0029】
制御部11は、訓練データの生成処理に用いられていない未処理の護岸画像があるか否かを判断する(S17)。未処理の護岸画像があると判断した場合(S17:YES)、制御部11は、ステップS11の処理に戻り、未処理の護岸画像についてステップS11~S16の処理を行う。制御部11は、未処理の護岸画像がないと判断するまでステップS11~S17の処理を繰り返す。これにより、学習用として用意された護岸画像に基づいて、学習モデル12Mの学習に用いる訓練データが生成されて訓練DBに蓄積される。
【0030】
制御部11は、未処理の護岸画像がないと判断した場合(S17:NO)、上述したように訓練DBに蓄積した訓練データを用いて、学習モデル12Mの学習を行う。制御部11は、訓練DBに蓄積した訓練データのうちの1つを取得し(S18)、取得した訓練データに基づいて学習モデル12Mの学習処理を行う(S19)。ここでは、制御部11は、訓練データであるブロック画像を学習モデル12Mに入力し、当該ブロック画像が入力されることによって学習モデル12Mから出力される出力情報(再構成画像)を取得する。学習モデル12Mは、入力されたブロック画像に基づく演算を行い、ブロック画像に対する再構成処理によって、入力されたブロック画像に似た再構成画像を生成して出力する。制御部11は、学習モデル12Mから出力された再構成画像と、入力されたブロック画像とを比較し、両者が近似するように学習モデル12Mを学習させる。学習処理において学習モデル12Mは、エンコーダ及びデコーダでの演算処理に用いるパラメータを最適化する。例えば制御部11は、エンコーダ及びデコーダにおけるノード間の重み(結合係数)等のパラメータを、学習モデル12Mの出力層から入力層に向かって順次更新する誤差逆伝播法を用いて最適化する。
【0031】
制御部11は、訓練DBに記憶してある訓練データのうちで、学習処理が行われていない未処理の訓練データがあるか否かを判断する(S20)。未処理の訓練データがあると判断した場合(S20:YES)、制御部11は、ステップS18の処理に戻り、未処理の訓練データについてステップS18~S19の処理を行う。未処理の訓練データがないと判断した場合(S20:NO)、制御部11は一連の処理を終了する。
【0032】
上述した学習処理により、図6B下側に示すようなブロック画像が入力された場合に、入力されたブロック画像に基づく再構成処理によって生成された再構成画像を出力する学習モデル12Mが生成される。サーバ10は、学習モデル12Mを用いることにより、ブロック画像から、当該ブロック画像中の護岸ブロックを正常な状態に変換した再構成画像を取得することができる。なお、上述した処理において、ステップS11~S17による訓練データの生成処理と、ステップS18~S20による学習モデル12Mの生成処理とは、各別の装置で行われてもよい。
【0033】
学習モデル12Mは、上述したような訓練データを用いた学習処理を繰り返し行うことにより更に最適化することが可能である。また、護岸ブロックは複数種類あり、1又は複数種類の護岸ブロックのブロック画像に基づいて学習済みの学習モデル12Mに対して、異なる種類の護岸ブロックのブロック画像を用いて上述した学習処理によってファインチューニングすることにより、各種類の護岸ブロック用の学習モデル12Mを生成することができる。
【0034】
以下に、本実施形態の情報処理システムにおいて、撮影装置20によって護岸が撮影され、撮影された護岸画像がサーバ10に登録され、護岸画像に基づいて各護岸ブロックの状態が解析される処理について説明する。図7図9は護岸ブロックの解析処理手順の一例を示すフローチャート、図10図13は画面例を示す説明図、図14はブロック画像に分解する処理の説明図である。以下の処理は、サーバ10の制御部11が、記憶部12に記憶してあるプログラム12Pに従って実行すると共に、撮影装置20の制御部21が、記憶部22に記憶してあるプログラム22P及び護岸撮影アプリ22APに従って実行する。
【0035】
護岸ブロックの状態を解析するために護岸を撮影する場合、撮影担当者は、撮影装置20に護岸撮影アプリ22APを起動させる。撮影装置20の制御部21は、護岸撮影アプリ22APに従って以下の処理を実行する。護岸撮影アプリ22APを起動した場合、制御部21は、これから撮影する護岸の場所の情報として、河川の情報及び橋の情報を受け付ける(S31)。例えば制御部21は、河川及び橋の情報の入力を受け付けるための入力画面(図示せず)を表示部25に表示し、入力画面を介して河川及び橋の情報の入力を受け付ける。なお、制御部21は、河川の情報として、撮影場所の河川の名称を受け付け、橋の情報として、撮影場所の近傍の上流側及び下流側の橋の名称を受け付ける。
【0036】
制御部21は、受け付けた河川及び橋の情報に基づいて、サーバ10に対して、これから撮影する撮影場所の近傍におけるモニタリング地点の検索を要求する(S32)。具体的には、制御部21は、受け付けた河川及び橋の情報をサーバ10へ送信し、当該河川及び橋の近傍のモニタリング地点の検索処理の実行を要求する。サーバ10の制御部11は、モニタリング地点の検索を要求された場合、護岸DB12aに記憶してあるモニタリング地点の情報を参照して、撮影装置20から受信した河川及び橋の近傍のモニタリング地点を検索する(S33)。具体的には、制御部11は、護岸DB12aに記憶してあるモニタリング地点から、撮影装置20から受信した河川及び橋の情報に一致するモニタリング地点及び近傍のモニタリング地点を抽出する。そして、制御部11は、検索結果を撮影装置20に送信する(S34)。
【0037】
撮影装置20の制御部21は、サーバ10から検索結果を受信した場合、検索結果を表示部25に表示する(S35)。制御部21は、例えば図10Aに示すような検索結果画面を表示する。図10Aに示す画面は、撮影装置20を介して入力された河川及び橋を含む地図を表示し、地図上に、検索されたモニタリング地点を示すポインタB1を表示している。図10Aの画面では、3つのポインタB1が表示されており、各ポインタB1は、各モニタリング地点に対する選択を受け付けるように構成されている。
【0038】
制御部21は、検索結果画面中のポインタB1を介して、いずれかのモニタリング地点の選択を受け付けたか否かを判断しており(S36)、受け付けていないと判断する場合(S36:NO)、いずれかのモニタリング地点の選択を受け付けるまで待機する。なお、検索結果画面は、図10Aに示すように、新たなモニタリング地点の追加を指示するためのモニタリング地点追加ボタンが設けられている。よって、制御部21は、検索結果画面においてモニタリング地点追加ボタンが操作された場合、新規に追加するモニタリング地点の位置情報として、測位部28によって現在地情報を取得する。そして、制御部21は、図11Aに示すような撮影画面を表示し、撮影担当者からのシャッターボタン(撮影ボタン)の操作に従って護岸の撮影処理を行い、得られた護岸画像と現在地情報とをサーバ10へ送信して護岸DB12aに登録する。
【0039】
いずれかのモニタリング地点の選択を受け付けたと判断した場合(S36:YES)、制御部21は、選択されたモニタリング地点の情報をサーバ10に要求する(S37)。なお、いずれかのポインタB1が操作された場合、制御部21は、操作されたポインタB1に対応するモニタリング地点での直近の護岸画像をサーバ10から受信して、図10Aに示すように地図上にポップアップウィンドウで表示する。図10Aは、地図の中央に表示されたポインタB1が操作された場合の状態を示しており、操作されたポインタB1が示すモニタリング地点での護岸画像が表示されている。ここで表示される護岸画像は、護岸画像から生成されたサムネイル画像であってもよい。また、検索結果画面に表示されるポップアップウィンドウは更に、対応するモニタリング地点に対する選択を受け付けるように構成されており、制御部21は、ポップアップウィンドウを介してモニタリング地点の選択を受け付けた場合、選択されたモニタリング地点の情報をサーバ10に要求するように構成されている。
【0040】
サーバ10の制御部11は、モニタリング地点の情報を要求された場合、当該モニタリング地点の情報を護岸DB12aから読み出し(S38)、読み出したモニタリング地点の情報を撮影装置20に送信する(S39)。ここでは、制御部11は、モニタリング地点の情報として、河川コードから特定される河川の名称、橋の情報、過去に撮影された護岸画像、各護岸画像の撮影日時、及び各護岸画像に基づく解析結果(具体的には異常ブロック率)を読み出す。撮影装置20の制御部21は、サーバ10からモニタリング地点の情報を受信した場合、受信した情報を表示部25に表示する(S40)。制御部21は、例えば図10Bに示すような画面を表示する。図10Bに示す画面は、メイン領域R1及びサブ領域R2を有し、サブ領域R2には、過去の護岸画像について、サムネイル画像、撮影日時、及び異常ブロック率が表示され、メイン領域R1には、サブ領域R2に表示された護岸画像から選択された1つの護岸画像が大きく表示されている。また、メイン領域R1には、表示中の護岸画像について、撮影画像である元画像の表示を指示するための元画像ボタンと、解析処理で生成された切取画像の表示を指示するための切取画像ボタンと、解析結果を示す解析画像の表示を指示するための解析画像ボタンとが設けられている。元画像ボタン、切取画像ボタン、及び解析画像ボタンは画像切替ボタンB2であり、いずれかのボタンの選択が可能に構成され、選択されたボタンに対応する画像がメイン領域R1に表示される。図10Bの例では、元画像ボタンが選択されており、撮影画像である護岸画像が表示されている。なお、撮影画面は例えば図6Aに示す画像であり、切取画像は例えば図6B上側に示す画像(射影変換後の画像)であり、解析画像は、後述する図13Bの画面のメイン領域R1に表示されている画像(解析結果を示す画像)である。
【0041】
図10Bに示す画面では、メイン領域R1に表示中の護岸画像に対して解析処理の実行を指示するための解析ボタンと、選択されたモニタリング地点の護岸画像の追加を指示するための写真追加ボタンとが設けられている。図10Bに示す画面において、制御部21は、写真追加ボタンが操作されたか否かを判断しており(S41)、操作されていないと判断する場合(S41:NO)、解析ボタンが操作されたか否かを判断する(S42)。解析ボタンが操作されていないと判断する場合(S42:NO)、制御部21は、ステップS41に戻り、写真追加ボタン又は解析ボタンが操作されるまでステップS41~S42の処理を繰り返す。制御部21は、写真追加ボタンが操作されたと判断した場合(S41:YES)、ステップS43に移行し、解析ボタンが操作されたと判断した場合(S42:YES)、ステップS51に移行する。
【0042】
写真追加ボタンが操作されたと判断した場合(S41:YES)、制御部21は、ステップS36で選択されたモニタリング地点における護岸画像の撮影画面を表示部25に表示する(S43)。制御部21は、例えば図11Aに示すような画面を表示する。図11Aに示す画面は、カメラ27(撮影部)を介して入力される撮影範囲の画像(モニタ中画像)を表示し、モニタ中画像の撮影(取得)を指示するための撮影ボタン(シャッターボタン)と、撮影画面の終了を指示するための閉じるボタンと、モニタ中画像に対して過去の護岸画像を重ねて表示する指示を行うためのオーバーレイボタンB3とが設けられている。オーバーレイボタンB3は、例えば、ここでのモニタリング地点で最初に撮影された護岸画像のサムネイル画像を表示する。なお、オーバーレイボタンB3に表示されるサムネイル画像は、直近に撮影された護岸画像のサムネイル画像でもよく、その他の過去の護岸画像のサムネイル画像でもよい。
【0043】
制御部21は、オーバーレイボタンB3が操作されたか否かを判断しており(S44)、操作されていないと判断する場合(S44:NO)、撮影ボタンが操作されたか否かを判断する(S46)。撮影ボタンが操作されていないと判断する場合(S46:NO)、制御部21は、ステップS44に戻り、オーバーレイボタンB3又は撮影ボタンが操作されるまでステップS44,S46の処理を繰り返す。なお、撮影画面において閉じるボタンが操作された場合、制御部21は、撮影画面の表示を終了し、図10Bの画面の表示に戻る。
【0044】
オーバーレイボタンB3が操作されたと判断した場合(S44:YES)、制御部21は、モニタ中画像に対して、オーバーレイボタンB3のサムネイル画像として表示されている護岸画像(過去の護岸画像)を重畳表示する(S45)。具体的には、モニタリング地点で最初に撮影された護岸画像が重畳表示される。なお、直近に撮影された護岸画像等、他の過去の護岸画像が重畳表示されてもよい。図11Bは、グレーで示す右側の領域が、過去の護岸画像が重畳されている領域を示し、護岸画像の右端を合わせて、過去の護岸画像がモニタ中画像に重畳表示されている。図11Bの画面では、過去の護岸画像の透過率の変更を指示するためのスライダB4が設けられており、スライダB4の黒丸を左右に移動させることにより、重畳された護岸画像の透過率を変更することができる。制御部21は、スライダB4によって透過率の変更指示を受け付け、変更指示された透過率で過去の護岸画像を表示する。また、図11Bの画面は、過去の護岸画像の重畳領域を変更できるように構成されており、図11B中の矢符B5で示すように、過去の護岸画像の左端を左右に移動させることにより、重畳される過去の護岸画像の領域を増減させることができる。制御部21は、過去の護岸画像の重畳領域の変更指示を受け付けた場合、変更指示された領域に過去の護岸画像を表示する。
【0045】
撮影担当者は、選択したモニタリング地点に到着した後、モニタ中画像と、重畳された過去の護岸画像とを比較し、過去の護岸画像の撮影範囲に一致するモニタ中画像が撮影画面に表示されるように撮影方向を調整し、撮影ボタンを操作する。なお、重畳される過去の護岸画像が最初に撮影された護岸画像である場合、以降の撮影タイミングにおいて、最初の撮影場所(モニタリング地点)を基準とする撮影が可能となる。また、重畳させる過去の護岸画像が直近に撮影された護岸画像である場合、直近の撮影タイミングでの護岸ブロックの状態との比較によって、直近の撮影場所(モニタリング地点)と同じ場所の特定が容易となる。
【0046】
制御部21は、撮影ボタンが操作されたと判断した場合(S46:YES)、この時点でモニタ中の画像を撮影画像として取得し、得られた撮影画像を撮影画面に表示する(S47)。制御部21は、例えば図12Aに示す撮影画面を表示する。図12Aに示す画面は、撮影された護岸画像を表示し、撮影のやり直しを指示するための撮り直しボタンと、撮影された護岸画像のサーバ10への保存を指示するための保存ボタンと、撮影画面の終了を指示するための閉じるボタンとが設けられている。制御部21は、保存ボタンが操作されたか否かを判断しており(S48)、操作されていないと判断する場合(S48:NO)、操作されるまで待機する。なお、制御部21は、図12Aの画面において撮り直しボタンが操作された場合、図11A又は図11Bの撮影画面の表示に戻り、閉じるボタンが操作された場合、撮影画面の表示を終了し、図10Bの画面の表示に戻る。
【0047】
保存ボタンが操作されたと判断した場合(S48:YES)、制御部21は、取得した撮影画像(護岸画像)を、ここでのモニタリング地点を示す情報(例えば地点ID)と共にサーバ10へ送信する(S49)。なお、護岸画像は、例えばExif(Exchangeable image file format)形式の画像ファイルであり、制御部21は、撮影日時及び撮影場所の位置情報を含むExif情報と撮影画像とを1つのファイルで送信することができる。撮影場所の位置情報は、撮影装置20の測位部28によって取得される。
【0048】
サーバ10の制御部11は、撮影装置20から撮影画像を受信した場合、受信した撮影画像(護岸画像)を、受信した地点IDに対応付けて護岸DB12aに記憶する(S50)。具体的には、制御部11は、護岸画像の撮影日時を日時列に記憶し、護岸画像の画像データを撮影画像データ列に記憶する。なお、サーバ10が撮影装置20から撮影担当者の情報(例えば撮影者ID)を受信している場合、制御部11は、撮影担当者の情報を撮影者ID列に記憶する。その後、制御部11は、ステップS38に移行し、撮影装置20の現在地であるモニタリング地点の情報を護岸DB12aから読み出し(S38)、読み出したモニタリング地点の情報を撮影装置20に送信する(S39)。これにより、撮影装置20の制御部21は、図12Bに示すような画面を表示部25に表示し、現在地のモニタリング地点の情報を表示する(S40)。図12Bの画面は、図10Bの画面と同様の構成を有するが、この時点でメイン領域R1に表示されている護岸画像に対しては解析処理が行われていないので、画像切替ボタンB2において切取画像ボタン及び解析画像ボタンは選択できないように非アクティブ状態で表示されている。
【0049】
図12Bの画面において解析ボタンが操作されたと判断した場合(S42:YES)、制御部21は、図12Bの画面中のメイン領域R1に表示されている護岸画像に対する解析処理を実行する解析画面を表示部25に表示する(S51)。制御部21は、例えば図13Aに示すような画面を表示する。図13Aに示す画面は、図12Bの画面中のメイン領域R1に表示されていた護岸画像を表示しており、この護岸画像中の任意の四角形領域に対して処理領域の指定を受け付けるように構成されている。撮影担当者(解析担当者)は、図13A中の白丸で示すように、表示中の護岸画像に対して、実空間上の矩形の4頂点に対応する4点を指定してOKボタンを操作する。これにより、制御部21は、図13Aの画面中の護岸画像に対して指定された4頂点による四角形領域(図13A中の白実線による四角形領域)を処理領域として受け付ける(S52)。そして、制御部21は、OKボタンが操作されたか否かを判断し(S53)、OKボタンが操作されていないと判断する場合(S53:NO)、OKボタンが操作されるまで待機する。
【0050】
図13Aの画面においてOKボタンが操作されたと判断した場合(S53:YES)、制御部21は、表示中の護岸画像と、この護岸画像に対して指定された処理領域とをサーバ10へ送信する(S54)。サーバ10の制御部11は、撮影装置20から護岸画像及び処理領域を受信し(S55)、受信した護岸画像中の受信した処理領域に対して射影変換処理を実行し(S56)、処理領域を矩形領域(長方形の領域)に変換する。ステップS56の処理は、図5に示す処理中のステップS14と同様である。ここで生成される射影変換後の処理領域が切取画像となり、制御部11は、撮影画像の情報に対応付けて、生成した切取画像の画像データを護岸DB12aに記憶しておく。なお、射影変換処理は、撮影装置20で行ってもよく、この場合、撮影装置20の制御部21は、護岸画像から、指定された処理領域を抽出して射影変換処理を実行し、射影変換後の処理領域をサーバ10へ送信する。また、護岸画像に対する処理領域の指定は、撮影者が行う代わりに、サーバ10のユーザが行う構成でもよい。この場合、撮影装置20の制御部21は、護岸画像のみをサーバ10へ送信し、サーバ10側で、護岸画像に対する処理領域の指定を受け付け、指定された処理領域に対して射影変換処理を行ってもよい。
【0051】
次に制御部11は、射影変換後の処理領域(切取画像)をブロック画像に分割する(S57)。ここでは、制御部11は、図5中のステップS15と同様に、テンプレート画像を用いたテンプレートマッチングによって切取画像中のブロック画像を検出する。またここでも、制御部11は、学習モデルを用いた画像認識処理によって切取画像中のブロック画像を検出してもよい。ステップS57において、制御部11は、切取画像中の全てのブロック画像を分割するように構成されており、テンプレートマッチングによって検出できなかった領域については、検出できたブロック画像のサイズに基づいて、ブロック画像の領域を推定する処理(内挿処理)を行う。
【0052】
図14は内挿処理の説明図であり、護岸画像の一部の拡大図を示す。図14に示す護岸画像において、白実線の矩形領域は、テンプレートマッチングによって検出されたブロック画像を示し、白破線の矩形領域は、テンプレートマッチングによって検出されなかったブロック画像を示している。制御部11は、テンプレートマッチングによってブロック画像の検出処理を行った後、検出できたブロック画像に基づいて、ここでの護岸ブロックのサイズを特定する。図14の例では、長さL1が護岸ブロックの横方向のサイズを示す。そして、制御部11は、ブロック画像を検出できなかった領域の横方向の長さL2が、護岸ブロックの横方向のサイズ(長さL1)よりも大きい場合に、長さL1毎のブロック画像に分割する。図14の例では、3つのブロック画像に分割されている。なお、各護岸ブロックのサイズが予め記憶部12に記憶してある場合、制御部11は、ブロック画像を検出できた場合に、検出した護岸ブロックの種類を特定し、特定した種類の護岸ブロックのサイズを記憶部12の記憶内容から特定してもよい。上述した処理により、テンプレートマッチングによってブロック画像を検出できなかった領域については、護岸ブロックのサイズに基づく内挿処理によって護岸ブロックに分割することができる。
【0053】
制御部11は、ステップS57で切取画像から分割したブロック画像のうちの1つを抽出し(S58)、抽出したブロック画像に対して再構成処理を行って再構成画像を生成する(S59)。ここでは、制御部11は、抽出した1つのブロック画像を学習モデル12Mに入力し、入力したブロック画像に対して再構成処理によって生成された再構成画像を学習モデル12Mから取得する。そして、制御部11は、学習モデル12Mに入力したブロック画像と、学習モデル12Mから取得した再構成画像とに基づいて、当該ブロック画像に撮影されている護岸ブロックの状態を示す異常スコアを算出する(S60)。
【0054】
本実施形態の学習モデル12Mは、入力されたブロック画像に基づいて、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像を生成する。即ち、学習モデル12Mは、正常でない状態の護岸ブロックのブロック画像が入力された場合、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像を出力し、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像が入力された場合も、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像を出力する。従って、入力されたブロック画像中の護岸ブロックが正常な状態であるほど、2つの画像(ブロック画像及び再構成画像)の類似度が高くなる。よって、本実施形態では、学習モデル12Mに入力したブロック画像と、学習モデル12Mから出力された再構成画像との類似度に基づいて、当該ブロック画像中の護岸ブロックの劣化度合(異常度合)を示す異常スコアを算出し、異常スコアに基づいて、撮影対象の護岸ブロックが正常な状態であるか否かを判定する。
【0055】
具体的には、制御部11はまず、2つの画像の類似度を算出する。2つの画像の類似度は、例えばSSIM(Structural SIMilarity)、ZNCC(Zero-mean Normalized Cross Correlation:零平均正規化相互相関)等の方法を用いて算出される。SSIMは、0~1の数値で表され、2つの画像の類似度が高いほど1に近い値となる。よって、2つの画像の類似度としてSSIMを用いる場合、制御部11は、1-SSIMによって、劣化度合(異常度合)が高いほど1に近い値となる異常スコアを算出する。また、ZNCCは、-1~1の数値で表され、2つの画像の類似度が高いほど1に近い値となる。よって、2つの画像の類似度としてZNCCを用いる場合、制御部11は、1-ZNCCによって、劣化度合(異常度合)が低いほど0に近い値となり、劣化度合が高いほど2に近い値となる異常スコアを算出する。このような異常スコアを算出することによって、ブロック画像と再構成画像との類似度が高いか否か、即ち、撮影対象の護岸ブロックが正常な状態であるか否かを判定できる。また、上述したような類似度に基づく異常スコアのほかに、2つの画像のMSE(Mean Squared Error:平均二乗誤差)等のように2つの画像の差異の程度を表すスコアを異常スコアとして算出してもよい。更に、ブロック画像に対する異常スコアは、上述したような類似度に基づく異常スコア、2つの画像の差異程度に基づく異常スコア等、複数の異常スコアに基づいて総合的に算出してもよい。
【0056】
制御部11は、ステップS58で抽出したブロック画像の情報(ブロック情報)と、ステップS60で算出した異常スコアとを対応付けて記憶部12に記憶する(S61)。ブロック情報は、例えばブロック画像の左上及び右下の画素の座標値であり、例えば切取画像の左上を原点として右方向にX軸、下方向にY軸としたXY座標の座標値によって表される。制御部11は、ステップS57で分割したブロック画像のうちで、異常スコアの算出が行われていない未処理のブロック画像があるか否かを判断する(S62)。未処理のブロック画像があると判断した場合(S62:YES)、制御部11は、ステップS58の処理に戻り、未処理のブロック画像についてステップS58~S61の処理を行う。制御部11は、未処理のブロック画像がないと判断するまでステップS58~S62の処理を繰り返す。これにより、切取画像中の全ての護岸ブロックに対して異常スコアを算出できる。
【0057】
未処理のブロック画像がないと判断した場合(S62:NO)、制御部11は、当該切取画像における異常ブロック率を算出する(S63)。具体的には、制御部11は、各ブロック画像について算出した異常スコアが閾値以上であるか否かを判断し、閾値以上である場合に、撮影対象の護岸ブロックは正常な状態ではない(異常ブロックである)と判定する。また制御部11は、切取画像中のブロック画像の数と、異常ブロックであると判定したブロック画像の数とを計数し、切取画像中のブロック画像に対する異常ブロックの割合(異常ブロック率)を算出する。次に制御部11は、切取画像に対して、異常ブロックであると判定したブロック画像の領域を強調表示した解析画像を生成する(S64)。ここでは制御部11は、切取画像中のブロック画像における異常ブロックの位置を特定し、特定した位置を強調表示する。図13Bに示す画面中のメイン領域R1に表示されている解析画像では、異常ブロックが白矩形で囲われて強調表示されている。制御部11は、生成した解析画像の画像データと、ステップS63で算出した異常ブロック率とを、撮影画像の情報に対応付けて護岸DB12aに記憶しておく。
【0058】
制御部11は、生成した解析画像を異常ブロック率と共に撮影装置20へ送信し(S65)、撮影装置20の制御部21は、サーバ10から受信した解析画像を表示部25に表示する(S66)。制御部21は、例えば図13Bに示す画面を表示する。図13Bの画面は、図10B又は図12Bの画面の画像切替ボタンB2の解析画像ボタンが選択された場合の画面例であり、メイン領域R1には、ステップS47で撮影された護岸画像に対する解析処理の結果を示す解析画像が表示される。その後、制御部21は、ステップS41に移行する。なお、図13Bの画面中において、画像切替ボタンB2が操作された場合、制御部21は、操作されたボタンに対応する画像をサーバ10から受信して表示することにより、メイン領域R1に表示される画像を切り替えることができる。また制御部21は、護岸撮影アプリ22APの終了指示を受け付けた場合、上述した一連の処理を終了する。
【0059】
上述した処理により、本実施形態では、護岸画像から分割されたブロック画像に基づいて、護岸画像中の護岸ブロック毎に正常な状態であるか否かを評価できる。また、護岸画像において、異常ブロックであると判定された護岸ブロックの割合が算出されて提示される。従来、護岸施設は、専門家が目視でひび割れ等の有無を点検しているが、本実施形態によれば、例えば異常ブロック率に応じて、撮影対象の護岸について、専門家による詳細な点検が必要であるか否かを振り分けることができる。例えば、異常ブロック率が高い場所については専門家による点検を実施することができ、異常ブロック率が低い場所については、専門家による点検を実施せずに学習モデル12Mを用いた点検による経過観察を行うことにより、専門家の負担を軽減することができる。本実施形態における護岸画像は、専門家が撮影する必要はなく、河川の管理者又は地域住民等が撮影できる。よって、専門家を手配することなく、専門家ではない撮影者が撮影した護岸画像に基づいて、手軽に護岸の点検作業を行うことができるので、点検頻度を増加することができる。また、本実施形態では、モニタリング地点において、護岸の劣化度合(異常ブロック率)だけでなく、劣化度合の時系列での変化を観察することができるので、護岸の劣化状態を容易に判断することができる。
【0060】
また、本実施形態では、撮影者が護岸を撮影する際に、過去の護岸画像が重畳表示されるので、過去の護岸画像の撮影場所に近い場所での撮影が可能となる。同じ場所又は近い場所から護岸画像を撮影することにより、護岸画像に基づく解析処理の時系列の結果を比較することができる。
【0061】
本実施形態において、解析画面中の異常ブロックは、異常スコアに応じて異なる態様で強調表示してもよい。異常スコアが高いほど護岸ブロックが正常でない状態であることを示すので、異常スコアに応じた態様で強調表示することにより、異常度合が高く観察すべき護岸ブロックをより強調して提示できる。例えば、解析画像中の異常ブロックを、異常スコアに応じた色の矩形で囲んで強調してもよい。
【0062】
本実施形態において、学習モデル12Mを用いた護岸ブロックの解析処理は、サーバ10で行う構成に限定されず、例えば撮影装置20によってローカルで実行されてもよい。この場合、撮影装置20の記憶部22に学習モデル12Mをダウンロードしておき、撮影装置20が、護岸画像から切取画像を生成し、生成した切取画像から、学習モデル12Mによる解析結果を示す解析画像を生成する。このような構成であっても、上述した本実施形態と同様の処理の実行が可能であり、同様の効果が得られる。
【0063】
本実施形態では、撮影者が撮影装置20を用いて護岸画像を撮影する構成であるが、この構成に限定されない。例えば、護岸を撮影できる位置に設置された定点カメラ、ドローンに搭載されたカメラを用いて護岸画像を撮影する構成でもよい。このようなカメラを用いる場合、撮影された護岸画像がサーバ10に送信され、サーバ10で、護岸画像に基づく解析処理が実行される。また、このようなカメラを用いる場合であっても、撮影時に、モニタ中の画像に過去の護岸画像を重畳表示し、一致度合を算出することにより、過去の護岸画像から撮影場所を特定してもよい。
【0064】
(実施形態2)
護岸ブロックには、形状が異なる複数種類の護岸ブロックが用意されている。本実施形態では、異なる種類の護岸ブロック毎に学習モデル12Mが設けられ、解析対象の護岸ブロックの種類に応じた学習モデル12Mを用いて護岸ブロックの状態を検出する情報処理システムについて説明する。本実施形態の情報処理システムは、図1及び図2に示す実施形態1の情報処理システムと同様の装置にて実現可能であるので、各装置の構成についての説明は省略する。なお、本実施形態のサーバ10の記憶部12には、各種類の護岸ブロックに応じた学習モデル12Mが複数記憶されている。
【0065】
本実施形態では、例えば図10B図12B又は図13Aに示す画面に、撮影対象の護岸ブロックの種類を指定するための入力欄(図示せず)が設けられている。撮影装置20の制御部21は、入力欄を介して護岸ブロックの種類の指定を受け付ける。そして、例えば図9中のステップS59で、制御部11は、指定された護岸ブロックの種類に応じた学習モデル12Mを記憶部12から読み出し、読み出した学習モデル12Mを用いて、切取画像から分割したブロック画像から再構成画像を生成する。
【0066】
本実施形態において、上述した処理以外の処理は実施形態1と同様であるので説明を省略する。本実施形態においても、上述した実施形態1と同様の処理の実行が可能であり、同様の効果が得られる。また、本実施形態では、護岸ブロックの種類毎に学習モデル12Mが用意されているので、ブロック画像に基づいてより精度の高い再構成画像を生成でき、より精度の高い異常スコアを算出できる。なお、護岸ブロックの種類毎に学習モデル12Mを学習させる構成のほかに、各種類の護岸ブロックのブロック画像を訓練データに用いて1つの学習モデル12Mを学習させることにより、全ての種類の護岸ブロックの再構成画像を生成できる学習モデル12Mを実現してもよい。
【0067】
(実施形態3)
護岸ブロックには、水抜口又は梯子等が設けられているものがあり、植生で表面が覆われているものもある。本実施形態では、実施形態1の学習モデル12Mに加えて、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロック用の学習モデルが設けられ、解析対象の護岸ブロックの状態(水抜口、梯子又は植生のいずれを有するか、有しないか)に応じた学習モデルを用いて護岸ブロックの状態を検出する情報処理システムについて説明する。本実施形態の情報処理システムは、図1及び図2に示す実施形態1の情報処理システムと同様の装置にて実現可能であるので、各装置の構成についての説明は省略する。なお、本実施形態のサーバ10の記憶部12には、図4Aに示す学習モデル12Mに加えて、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロック用の学習モデルが記憶されている。
【0068】
図15は学習モデル12Mの変形例を示す説明図である。図15Aは水抜口を有する護岸ブロック用の学習モデル12Maを、図15Bは梯子を有する護岸ブロック用の学習モデル12Mbを、図15Cは植生を有する護岸ブロック用の学習モデル12Mcをそれぞれ示す。学習モデル12Ma~12Mcは、学習モデル12Mと同様の構成を有し、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックのブロック画像を入力とし、入力されたブロック画像に基づいて、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像を出力するように学習している。学習モデル12Maの学習に用いる訓練データは、正常な状態の護岸ブロックであり、水抜口が設けられている護岸ブロックのブロック画像を用いることができる。学習モデル12Mbの学習に用いる訓練データは、正常な状態の護岸ブロックであり、梯子が設けられている護岸ブロックのブロック画像を用いることができる。学習モデル12Mcの学習に用いる訓練データは、正常な状態の護岸ブロックであり、表面の一部に植生を有する護岸ブロックのブロック画像を用いることができる。このような訓練データを用いることにより、学習モデル12Ma~12Mcは、入力されたブロック画像に似た画像を出力するように学習する。よって、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックのブロック画像が入力された場合に、水抜口、梯子又は植生を有する正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た画像(再構成画像)を再構成して出力する学習モデル12Ma~12Mcが得られる。このような学習モデル12Ma~12Mcを用いることにより、学習モデル12Ma~12Mcの入力データ及び出力データは、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックのブロック画像と、水抜口、梯子又は植生を有する正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像となる。よって、2つの画像の類似度に基づいて、水抜口、梯子又は植生を考慮せずに護岸ブロックの劣化度合が反映された異常スコアが算出される。これにより、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックについても、水抜口、梯子又は植生を有しない護岸ブロックと同様の処理によって劣化度合を解析することが可能となる。
【0069】
本実施形態では、例えば図9中のステップS59で、サーバ10の制御部11は、切取画像から分割されたブロック画像が、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックであるか否かを判別し、判別結果に応じた学習モデル12M,12Ma~12Mcを記憶部12から読み出し、読み出した学習モデル12M,12Ma~12Mcを用いて、各ブロック画像から再構成画像を生成する。なお、各ブロック画像が水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックであるか否かの判別は、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックのブロック画像の特徴量を示すテンプレート画像を用いたテンプレートマッチング、又は、学習モデルを用いた画像認識処理によって行ってもよい。学習モデルは、ブロック画像が入力された場合に、入力されたブロック画像中の水抜口、梯子又は植生の領域をバウンディングボックスで示したラベル画像を出力するように学習済みのモデルを用いることができる。
【0070】
本実施形態において、上述した処理以外の処理は実施形態1と同様であるので説明を省略する。本実施形態においても、上述した実施形態1と同様の処理の実行が可能であり、同様の効果が得られる。また、本実施形態では、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロックのブロック画像について、水抜口、梯子又は植生を有する再構成画像を生成できる。よって、学習モデル12Ma~12Mcの入出力データであるブロック画像及び再構成画像の類似度に基づく異常スコアによって、水抜口、梯子又は植生が異常状態であると判定されることなく、護岸ブロックの状態を適切に判定することができる。なお、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロック毎に学習モデル12Mを学習させる構成のほかに、全ての護岸ブロックのブロック画像を訓練データに用いて1つの学習モデル12Mを学習させることにより、全ての護岸ブロックについて、正常な状態の護岸ブロックのブロック画像に似た再構成画像を生成できる学習モデル12Mを実現してもよい。本実施形態の構成は、実施形態2にも適用できる。実施形態2に適用した場合、護岸ブロックの種類毎に、水抜口、梯子又は植生を有する護岸ブロック用の学習モデルを設けることにより、各種の護岸ブロックの状態を精度よく解析することが可能となる。
【0071】
(実施形態4)
護岸ブロックには、ブロックの一部が欠ける欠損、ブロック間に隙間が生じる目地開き、ブロックの表面の剥離、ブロックからの溶出物、エフロレッセンス(白華現象)等、複数種類の劣化状態が生じる。本実施形態では、異常ブロックであると判定された護岸ブロックの劣化状態を判別する情報処理システムについて説明する。本実施形態の情報処理システムは、図1及び図2に示す実施形態1の情報処理システムと同様の装置にて実現可能であるので、各装置の構成についての説明は省略する。なお、本実施形態のサーバ10の記憶部12には、護岸ブロックのブロック画像に基づいて、当該護岸ブロックの劣化状態を判別する学習モデル(以下では状態判別モデルと称する)が記憶されている。
【0072】
図16は状態判別モデルの概要を示す説明図である。状態判別モデルは、ブロック画像を入力とし、入力されたブロック画像に基づいて、当該ブロック画像中の護岸ブロックの劣化状態を判別する演算を行い、演算した結果を出力するように学習してある。状態判別モデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network)、SVM(Support Vector Machine)、Transformer、決定木、ランダムフォレスト等のアルゴリズムを用いて構成されてもよく、複数のアルゴリズムを組み合わせて構成されてもよい。
【0073】
図16の状態判別モデルは5つの出力ノードを有しており、各出力ノードには、欠損、目地開き、表面剥離、溶出物、エフロレッセンスがそれぞれ対応付けられており、各出力ノードから、対応付けられた状態であると判別すべき確率(確信度)を出力する。各出力ノードの出力値は例えば0~1の値であり、各出力ノードから出力された確信度の合計が1.0(100%)となる。上述した構成により、状態判別モデルは、ブロック画像が入力された場合に、画像中の護岸ブロックが各劣化状態である可能性(各劣化状態に対する確信度)を出力する。サーバ10は、状態判別モデルにおいて、最大の出力値(確信度)を出力した出力ノードに対応付けられている劣化状態を、画像中の護岸ブロックの状態であると予測する。
【0074】
状態判別モデルは、訓練用のブロック画像と、このブロック画像中の護岸ブロックの劣化状態を示す情報(正解ラベル)とを含む訓練データを用いて機械学習させることにより生成される。状態判別モデルは、訓練用のブロック画像が入力された場合に、正解ラベルが示す劣化状態に対応する出力ノードからの出力値が1に近づき、他の出力ノードからの出力値が0に近づくように学習する。学習処理において状態判別モデルは、入力されたブロック画像に基づく演算を行い、各出力ノードからの出力値を算出する。そして状態判別モデルは、算出した各出力ノードの出力値と正解ラベルに応じた値(正解ラベルが示す劣化状態に対応する出力ノードに対しては1、それ以外の出力ノードに対しては0)とを比較し、各出力値がそれぞれ正解ラベルに応じた値に近似するように、演算処理に用いるパラメータを最適化する。ここでも、状態判別モデルにおけるニューロン間の重み等のパラメータが、誤差逆伝播法、最急降下法等を用いて最適化される。状態判別モデルの学習は他の学習装置で行われてもよい。他の学習装置で学習が行われて生成された学習済みの状態判別モデルは、ネットワーク経由又は可搬型記憶媒体10a経由で学習装置からサーバ10の記憶部12にダウンロードされる。
【0075】
本実施形態では、サーバ10の制御部11は、図9中のステップS64で解析画像を生成する際に、状態判別モデルを用いて、異常ブロックであると判定された護岸ブロックの劣化状態を判別し、判別した劣化状態に応じた強調表示態様で、切取画像中の異常ブロックのブロック画像を表示する。具体的には、制御部11は、切取画像中のブロック画像から異常ブロックを特定し、特定した異常ブロックのブロック画像を状態判別モデルに入力し、状態判別モデルからの出力値に基づいて、当該異常ブロックの劣化状態を予測する。そして、制御部11は、当該異常ブロックの切取画像中の位置を特定し、特定した位置(異常ブロックの領域)を、判別した劣化状態に対応する態様で強調表示する。例えば図13Bに示す画面中のメイン領域R1に表示されている解析画像において、異常ブロックの領域が、劣化状態毎に異なる色の矩形で囲んで強調表示される。
【0076】
本実施形態において、上述した処理以外の処理は実施形態1と同様であるので説明を省略する。本実施形態においても、上述した実施形態1と同様の処理の実行が可能であり、同様の効果が得られる。また、本実施形態では、異常ブロックであると判定された護岸ブロックについて、劣化状態を判別し、劣化状態に応じた態様の強調表示を行うことにより、護岸画像中の各護岸ブロックの劣化状態を容易に把握できる。本実施形態の構成は、実施形態1~3に適用できる。
【0077】
上述の実施形態1~4では、護岸を構築する護岸ブロックの状態を解析する構成であるが、解析対象は、護岸ブロックに限定されない。例えばコンクリート擁壁及びブロック塀等、複数のブロックで構築された構造物であってもよく、ガードレール及びフェンス等の防護柵、マンホール等であってもよい。
【0078】
各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載しても良い。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
10 サーバ
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
20 撮影装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
27 カメラ
12a 護岸DB
12M 学習モデル
図1
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