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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137172
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20240927BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240927BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20240927BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/249
H01M50/293
B60K1/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048585
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】石▲崎▼ 諒
(72)【発明者】
【氏名】安井 健
(72)【発明者】
【氏名】立脇 正章
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB23
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF12
5H040AA07
5H040AT06
(57)【要約】
【課題】特定の周波数における振動を抑制可能なバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリパック1は、バッテリモジュール10と、バッテリモジュール10をモジュール固定部N1において剛結合で固定するバッテリケース31と、バッテリモジュール10の上方に架設されるアッパーフレーム34と、アッパーフレーム34上に配置されるジャンクションボックス11と、を備える。アッパーフレーム34は、ジャンクションボックス11の前方及び後方に位置するボルト穴H1、H2において、バッテリケース31又はバッテリモジュール10に剛結合で固定される。ジャンクションボックス11は、ボルト穴H1、H2の間に位置するボルト穴H5において、アッパーフレーム34にマウントラバー80を介して弾性結合で固定されている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセルが積層されたバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールをモジュール固定部で固定するバッテリケースと、
車両の前後方向に延設され、前記バッテリモジュールの上方に架設されるフレーム部材と、
前記フレーム部材上に配置されるジャンクションボックスと、を備え、前記車両に搭載されるバッテリパックであって、
前記フレーム部材は、前記ジャンクションボックスの前方に位置する第1固定部と、前記ジャンクションボックスの後方に位置する第2固定部とで、前記バッテリケース又は前記バッテリモジュールに固定され、
前記ジャンクションボックスは、前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する中間固定部で、前記バッテリモジュール及び前記バッテリケースには固定されず、前記フレーム部材に固定され、
前記モジュール固定部、前記第1固定部、及び前記第2固定部は、弾性部材を介さない剛結合で固定され、
前記中間固定部は、弾性部材を介して弾性結合で固定されている、バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、
セル積層体と、
前記セル積層体の積層方向両端で前記前後方向に延びるエンドプレートと、
車幅方向に延びて、セル端子を覆うとともに電気端子が取り付けられていないカバープレートと、を有し、
前記フレーム部材は、前記第1固定部と前記第2固定部で前記カバープレートに固定されている、バッテリパック。
【請求項3】
請求項2に記載のバッテリパックであって、
前記フレーム部材は、さらに、前記第2固定部を挟んで前記第1固定部とは反対側に位置する第3固定部で、前記バッテリモジュールに前記剛結合で固定され、
前記フレーム部材は、前記第1固定部、前記第2固定部、及び前記第3固定部により、前記バッテリケース内の全ての前記バッテリモジュールの両端に固定されている、バッテリパック。
【請求項4】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記中間固定部の弾性部材はラバーで形成されている、バッテリパック。
【請求項5】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記フレーム部材には、前記第1固定部の前方、又は、前記第2固定部の後方に補器が設けられ、
前記補器、前記ジャンクションボックス、及び前記バッテリモジュールの重量は、この順に大きい、バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等の移動体に搭載可能なバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動化技術ではバッテリが重要な役割を担っている。電動車両には、バッテリを収容したバッテリパックが搭載される。バッテリパックには、バッテリモジュールに加えて、導電部材、ヒューズ、コンタクト等の電子部品が配置されたジャンクションボックスもあわせて収容される。
【0004】
例えば、特許文献1に記載のバッテリパックでは、バッテリモジュールの上方に架設されるアッパデッキにジャンクションボックスを搭載することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-077357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、近年では、車両の航続距離を延ばすためにより大型のバッテリが搭載される傾向にあり、特定の周波数において、バッテリの振動が大きくなる虞がある。特に、ジャンクションボックスの搭載方法によっては、特定の周波数におけるバッテリの振動が大きくなる虞がある。
【0007】
本発明は、特定の周波数における振動を抑制可能なバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
複数のセルが積層されたバッテリモジュールと、
前記バッテリモジュールをモジュール固定部で固定するバッテリケースと、
車両の前後方向に延設され、前記バッテリモジュールの上方に架設されるフレーム部材と、
前記フレーム部材上に配置されるジャンクションボックスと、を備え、前記車両に搭載されるバッテリパックであって、
前記フレーム部材は、前記ジャンクションボックスの前方に位置する第1固定部と、前記ジャンクションボックスの後方に位置する第2固定部とで、前記バッテリケース又は前記バッテリモジュールに固定され、
前記ジャンクションボックスは、前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する中間固定部で、前記バッテリモジュール及び前記バッテリケースには固定されず、前記フレーム部材に固定され、
前記モジュール固定部、前記第1固定部、及び前記第2固定部は、弾性部材を介さない剛結合で固定され、
前記中間固定部は、弾性部材を介して弾性結合で固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特定の周波数においてバッテリパックの振動を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】バッテリパック1の分解斜視図である。
図2】バッテリモジュール10の分解斜視図である。
図3】ジャンクションボックス11の固定とアッパーフレーム34の固定の一例を説明する図である。
図4】ジャンクションボックス11の固定部の拡大図である。
図5】ジャンクションボックス11の固定とアッパーフレーム34の固定の他の例を説明する図である。
図6】振動モードの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のバッテリパックについて、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本発明の一実施形態のバッテリパック1は、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車等の電動車両に搭載可能に構成される。バッテリパック1は、図1に示すように、4つのバッテリモジュール10と、ジャンクションボックス11と、補器12と、これらを収容するバッテリケース31と、を備える。4つのバッテリモジュール10は、前後方向に2列、左右方向に2列に配置されている。なお、バッテリモジュール10は、2つ以上であればその数は任意に設定することができ、配置も特に限定されるものではない。
【0013】
バッテリモジュール10は、不図示の電気接続部材を介して互いに電気的に接続されている。バッテリモジュール10が蓄える電力は、車両の駆動源となるモータ等に供給される。なお、以下の説明では、4つのバッテリモジュール10をまとめてバッテリと称することがある。補器12、ジャンクションボックス11、バッテリモジュール10の重量は、この順に大きい。
【0014】
バッテリモジュール10は、図2に示すように、セル21が複数積層されたセル積層体20と、中間プレート30と、一対のエンドプレート37と、一対の拘束部材38と、一対のカバープレート60と、を備える。
【0015】
セル積層体20は、複数のセル21が左右方向に積層されて構成される。中間プレート30は、複数のセル21の積層方向(ここでは左右方向)における中間部に設けられている。中間プレート30は、2つ以上設けられてもよい。一対のエンドプレート37は、複数のセル21の積層方向における両端部に設けられている。一対の拘束部材38は、上下方向において互いに対向し、一対のエンドプレート37に連結されて複数のセル21を拘束する。一対のカバープレート60は、前後方向において複数のセル21よりも外側に設けられ、積層方向に延在している。カバープレート60は、前後方向において互いに対向して2つ設けられており、一対のエンドプレート37の前端部又は後端部に固定されてバッテリモジュール10の前面又は後面を形成している。カバープレート60は、前後方向から見たとき、電気絶縁性を有するバスバーカバー23を介して、セル21の電極タブ212同士を接続するバスバー22及びセル21の電極タブ212を覆い、バスバー22及び電極タブ212を保護する。カバープレート60には、電気端子が取り付けられていない。
【0016】
図3も参照して、カバープレート60には、左右に上下方向に貫通する貫通穴61が設けられている。バッテリモジュール10は、この貫通穴61を通るボルトB1が、後述するクロスメンバ333~335に形成されたモジュール固定部N1に締結されることで、バッテリケース31に固定される。弾性部材を介さないボルトとナットによるリジッドな固定を剛結合と呼ぶと、バッテリモジュール10はバッテリケース31に剛結合されている。
【0017】
図1に戻って、バッテリケース31は、複数のバッテリモジュール10が載置されるバッテリトレイ32と、バッテリモジュール10の上方を覆う上部カバー33と、を有する。
【0018】
図3に示すように、バッテリトレイ32は、バッテリモジュール10が載置されるボトムプレート321と、ボトムプレート321の左右両側に設けられた一対のサイドフレーム322と、一対のサイドフレーム322を連結する前クロスメンバ333、中央クロスメンバ334、後クロスメンバ335と、を備える。
【0019】
前クロスメンバ333はバッテリケース31の前壁を構成し、後クロスメンバ335はバッテリケース31の後壁を構成する。中央クロスメンバ334は、バッテリケース31の内部を前後2つの空間に分割する。前方空間には、2つのバッテリモジュール10が左右に配置され、後方空間には、2つのバッテリモジュール10が左右に配置される。クロスメンバ333~335には、バッテリトレイ32との連結部分にバッテリモジュール10を固定するモジュール固定部N1が設けられ、さらに、中央クロスメンバ334には、中央上部にアッパーフレーム34を固定するフレーム固定部N2が設けられている。
【0020】
図1に示すように、バッテリケース31の左右中央部には、左側に位置する2つのバッテリモジュール10と、右側に位置する2つのバッテリモジュール10の上方に、前後方向に延びるアッパーフレーム34が架け渡されている。アッパーフレーム34上には、前方にジャンクションボックス11が配置され、後方に補器12が配置されている。ジャンクションボックス11には、バッテリケース31の内部の電力系統とバッテリケース31の外部のDC線とを接続する導電部材、ヒューズ、コンタクタ等の電子部品が配置される。補器12は、例えば、バッテリECUである。
【0021】
図3に示すように、アッパーフレーム34の前端部34aは、左右に設けられたボルトB1によって、バッテリモジュール10及びバッテリケース31に固定される。より具体的に説明すると、アッパーフレーム34の前端部34aには、左右にボルト穴H1が設けられる。右側のボルト穴H1は、右前のバッテリモジュール10の前方に位置するカバープレート60の左方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の前クロスメンバ333の下部に設けられたモジュール固定部N1に右前のバッテリモジュール10と共締めされる。左側のボルト穴H1は、左前のバッテリモジュール10の前方に位置するカバープレート60の右方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の前クロスメンバ333の下部に設けられたモジュール固定部N1に左前のバッテリモジュール10と共締めされる。
【0022】
アッパーフレーム34の前端部34aを、バッテリモジュール10とともにバッテリケース31にボルトB1で共締めすることで、アッパーフレーム34はバッテリモジュール10に剛締結されているとともに、バッテリケース31に剛締結されている。なお、ボルト穴H1は、ジャンクションボックス11の前方に位置している限り、位置や数は適宜変更可能である。
【0023】
アッパーフレーム34の中央部34bは、左右にボルト穴H2が設けられ、ボルト穴H2を通るボルトB1によって、中央クロスメンバ334の中央上部に設けられたフレーム固定部N2に固定される。即ち、アッパーフレーム34の中央部34bは、バッテリケース31の中央クロスメンバ334に剛締結されている。なお、ボルト穴H2は、ジャンクションボックス11の後方に位置している。
【0024】
アッパーフレーム34の後端部34cは、左右に設けられたボルトB1によって、バッテリモジュール10及びバッテリケース31に固定される。より具体的に説明すると、アッパーフレーム34の後端部34cには、左右にボルト穴H3が設けられる。右側のボルト穴H3は、右後のバッテリモジュール10の後方に位置するカバープレート60の左方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の後クロスメンバ335の下部に設けられたモジュール固定部N1に右後のバッテリモジュール10と共締めされる。左側のボルト穴H3は、左後のバッテリモジュール10の後方に位置するカバープレート60の右方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の後クロスメンバ335の下部に設けられたモジュール固定部N1に左後のバッテリモジュール10と共締めされる。
【0025】
アッパーフレーム34の後端部34cを、バッテリモジュール10とともにバッテリケース31にボルトB1で共締めすることで、アッパーフレーム34はバッテリモジュール10に剛締結されているとともに、バッテリケース31に剛締結されている。なお、ボルト穴H3は、ジャンクションボックス11の後方に位置している。
【0026】
即ち、アッパーフレーム34は、バッテリモジュール10と同様に、バッテリケース31に剛結合されている。なお、本実施形態では、アッパーフレーム34の前端部34a及び後端部34cは、バッテリモジュール10とともにバッテリケース31に共締めされていたが、アッパーフレーム34は、バッテリモジュール10が剛締結されたバッテリケース31にのみ剛締結されていてもよく、バッテリモジュール10にのみ剛締結され且つバッテリモジュール10がバッテリケース31に剛締結されていてもよい。
【0027】
このように、バッテリモジュール10及びアッパーフレーム34がバッテリケース31に剛締結されていることで、バッテリモジュール10、アッパーフレーム34、及びバッテリケース31は、車両の上下動にあわせて一緒に振動する。
【0028】
一方で、ジャンクションボックス11は、バッテリモジュール10及びバッテリケース31には固定されず、図4に示すように、アッパーフレーム34にマウントラバー80を介して固定される。より具体的に説明すると、アッパーフレーム34には、図3に示すように、前後方向において、アッパーフレーム34の前端部34aに位置する左右のボルト穴H1と、中央部34bに位置する左右のボルト穴H2との間に、4か所のボルト穴H5が設けられている。ジャンクションボックス11には、アッパーフレーム34のボルト穴H5と対応する位置に、前端部に2か所、後端部に2か所の合計4か所に切欠部13が設けられている。
【0029】
切欠部13には、マウントラバー80が配置されている。マウントラバー80は、弾性材から構成され、全体として円筒形状を有する。より具体的には、マウントラバー80は、上大径部15aと下大径部15bとの間に小径部15cが設けられており、切欠部13に形成された板状の係止片13aに係合する。ジャンクションボックス11は、このマウントラバー80を貫通するボルトB3がアッパーフレーム34のボルト穴H5又はナットに螺合することにより、アッパーフレーム34に固定される。
【0030】
即ち、バッテリモジュール10及びアッパーフレーム34がバッテリケース31に剛締結されているのに対し、ジャンクションボックス11はアッパーフレーム34にマウントラバー80を介して弾性結合で固定されている。
【0031】
したがって、ジャンクションボックス11はバッテリとは異なる振動をとりやすくなる。即ち、ジャンクションボックス11の配置、ジャンクションボックス11の重さ、マウントラバー80の弾性、アッパーフレーム34の剛性などを調整することで、バッテリの位相とジャンクションボックス11の位相をずらしてバッテリパック1の振動を抑えることができる。
【0032】
図6を参照して説明すると、ジャンクションボックス11をバッテリモジュール10及びアッパーフレーム34に剛締結すると、特定の周波数fで、バッテリの位相ABとジャンクションボックス11の位相AJが同位相となりバッテリモジュール10の振幅APが増幅してしまう。また、バッテリの位相ABとジャンクションボックス11の位相AJとをずらすことが難しい。これに対し、上記したようにジャンクションボックス11をアッパーフレーム34にマウントラバー80を介して弾性結合で固定し、ジャンクションボックス11の配置等を調整することで、バッテリの位相ABに対しジャンクションボックス11の位相AJを容易にずらすことができる。
【0033】
バッテリの位相ABに対するジャンクションボックス11の位相AJのずらし方は、車両に搭載された際に想定される車両走行時の周波数帯域において、所定値を超えるような振動が発生しないように、振幅の最大値となる周波数が異なるように設定する。最も好ましくは、図6の右図に示すように、バッテリの位相ABとジャンクションボックス11の位相AJが逆位相となるように設定する。
【0034】
このように、本開示によれば、車両の走行時に想定される特定の周波数におけるバッテリパック1の振幅を抑えることができる。したがって、車両に搭載された際に想定される車両走行時の周波数帯域において、所定値を超えるような振動の発生を抑制できる。また、振動抑制のために特別な部材が必要ないため、重量増加を回避することができる。さらに、振動モードが安定化することによって更なる大型バッテリの搭載が可能となり、航続距離を延ばすことができる。
【0035】
また、特定の周波数fにおいて逆位相となるように設定すると、ジャンクションボックス11が振動したとき、バッテリモジュール10はジャンクションボックス11に反対方向に引っ張られる。ここで、ジャンクションボックス11が固定されるアッパーフレーム34は、電気端子が取り付けられていないバッテリモジュール10のカバープレート60に固定されている。したがって、逆位相による応力から電気端子を保護する追加的な保護構造を設ける必要がない。
【0036】
補器12は、アッパーフレーム34上にジャンクションボックス11の後方に配置されている。補器12は、図示は省略するが、アッパーフレーム34の中央部34bに位置する左右のボルト穴H2とアッパーフレーム34の後端部34cに位置する左右のボルト穴H3との間に剛締結されている。
【0037】
上記実施形態では、マウントラバー80を用いて固定される個所がボルト穴H1とボルト穴H2との間のジャンクションボックス11の周辺に集約される。このようにマウントラバー80の固定部を集約することで、マウントラバー80の固定部をバッテリモジュール10等にも分散させる場合に比べて振動モードの調整が容易となる。
【0038】
続いて、上記実施形態の変形例について図5を参照しながら説明する。
以下で説明する変形例では、上記実施形態との相違点についてのみ説明する。上記実施形態では、アッパーフレーム34の中央部34bは、左右に位置する2つのボルト穴H2を通るボルトB1によって中央クロスメンバ334にのみ固定されていたが、本変形例では、バッテリモジュール10及び中央クロスメンバ334に固定される。
【0039】
即ち、本変形例のアッパーフレーム34の中央部34bには、前後左右に4つのボルト穴H2が設けられる。右前側のボルト穴H2は、右前のバッテリモジュール10の後方に位置するカバープレート60の左方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の中央クロスメンバ334の下部に設けられたモジュール固定部N1に右前のバッテリモジュール10と共締めされる。左前側のボルト穴H2は、左前のバッテリモジュール10の後方に位置するカバープレート60の右方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の中央クロスメンバ334の下部に設けられたモジュール固定部N1に左前のバッテリモジュール10と共締めされる。
【0040】
右後側のボルト穴H2は、右後のバッテリモジュール10の前方に位置するカバープレート60の左方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の中央クロスメンバ334の下部に設けられたモジュール固定部N1に右後のバッテリモジュール10と共締めされる。左後側のボルト穴H2は、左後のバッテリモジュール10の前方に位置するカバープレート60の右方の貫通穴61を通るボルトB1によって、バッテリケース31の中央クロスメンバ334の下部に設けられたモジュール固定部N1に左後のバッテリモジュール10と共締めされる。
【0041】
本変形例では、アッパーフレーム34の前端部34a及び後端部34cに加えて、中央部34bも、バッテリモジュール10とともにバッテリケース31にバッテリモジュール10と共締めされる。そして、各バッテリモジュール10は、前後方向に位置するカバープレート60の両方がアッパーフレーム34に固定される。したがって、アッパーフレーム34が振動するとき、アッパーフレーム34が全てのバッテリモジュール10の両端を引っ張るので、引張荷重がバッテリモジュール10の前後方向で一方側にのみ作用することが防止される。
【0042】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0043】
上記実施形態では、アッパーフレーム34の固定部である、アッパーフレーム34の前端部34aに位置する左右のボルト穴H1とアッパーフレーム34の中央部34bに位置する左右のボルト穴H2との間に、ジャンクションボックス11を配置し、アッパーフレーム34の中央部34bに位置する左右のボルト穴H2とアッパーフレーム34の後端部34cに位置する左右のボルト穴H3との間に補器12を配置したが、これに限らない。
【0044】
例えば、アッパーフレーム34の中央部34bに位置する左右のボルト穴H2とアッパーフレーム34の後端部34cに位置する左右のボルト穴H3との間にジャンクションボックス11を配置してもよい。また、アッパーフレーム34の固定部である、アッパーフレーム34の前端部34aに位置する左右のボルト穴H1とアッパーフレーム34の中央部34bに位置する左右のボルト穴H2との間に補器12を配置してもよい。
【0045】
また、マウントラバー80は、弾性的に結合している限り、全てが弾性部材で形成されている場合に限らず、一部に他の部材、例えば金属、樹脂等を含むものでもよい。
【0046】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0047】
(1) 複数のセルが積層されたバッテリモジュール(バッテリモジュール10)と、
前記バッテリモジュールをモジュール固定部(モジュール固定部N1)で固定するバッテリケース(バッテリケース31)と、
車両の前後方向に延設され、前記バッテリモジュールの上方に架設されるフレーム部材(アッパーフレーム34)と、
前記フレーム部材上に配置されるジャンクションボックス(ジャンクションボックス11)と、を備え、前記車両に搭載されるバッテリパック(バッテリパック1)であって、
前記フレーム部材は、前記ジャンクションボックスの前方に位置する第1固定部(ボルト穴H1)と、前記ジャンクションボックスの後方に位置する第2固定部(ボルト穴H2、ボルト穴H3)とで、前記バッテリケース又は前記バッテリモジュールに固定され、
前記ジャンクションボックスは、前記第1固定部と前記第2固定部との間に位置する中間固定部(ボルト穴H5)で、前記バッテリモジュール及び前記バッテリケースには固定されず、前記フレーム部材に固定され、
前記モジュール固定部、前記第1固定部、及び前記第2固定部は、弾性部材を介さない剛結合で固定され、
前記中間固定部は、弾性部材(マウントラバー80)を介して弾性結合で固定されている、バッテリパック。
【0048】
(1)によれば、ジャンクションボックスがバッテリモジュールやバッテリケースに固定されていないので、ジャンクションボックスはバッテリとは異なる振動をとりやすくなる。即ち、バッテリパックの振幅が大きくなる固有振動数(周波数)に対して、ジャンクションボックスの配置と重さと中間固定部の弾性、フレーム部材の剛性等を調節することで、バッテリの位相とジャンクションボックスの位相をずらしてバッテリパックの振動を抑えることができる。また、剛結合の固定と弾性結合の固定を組み合わせ、中間固定部に弾性結合の場所を集中させているので、弾性結合を用いない場合や弾性結合の固定部をバッテリモジュール等にも分散させる場合に比べて振動モードの調整が容易となる。また、振動抑制のための重量増加を回避することができる。さらに、振動モードが安定化することによって更なる大型バッテリの搭載が可能となり、航続距離を延ばすことができる。
【0049】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記バッテリモジュールは、
セル積層体(セル積層体20)と、
前記セル積層体の積層方向両端で前記前後方向に延びるエンドプレート(エンドプレート37)と、
車幅方向に延びて、セル端子を覆うとともに電気端子が取り付けられていないカバープレート(カバープレート60)と、を有し、
前記フレーム部材は、前記第1固定部と前記第2固定部で前記カバープレートに固定されている、バッテリパック。
【0050】
(2)によれば、ジャンクションボックスを固定しているフレーム部材が、バッテリモジュールを直接引っ張ることができる。望ましくない振幅に至る固有振動数においてジャンクションボックスの振動とバッテリモジュールの振動が逆位相になるように調節することができるが、このとき、フレーム部材が電気端子が取り付けられていないカバープレートを引っ張るので、逆位相による応力から端子を保護する追加的な保護構造を設ける必要がない。
【0051】
(3) (2)に記載のバッテリパックであって、
前記フレーム部材は、さらに、前記第2固定部を挟んで前記第1固定部とは反対側に位置する第3固定部(ボルト穴H3)で、前記バッテリモジュールに前記剛結合で固定され、
前記フレーム部材は、前記第1固定部、前記第2固定部、及び前記第3固定部により、前記バッテリケース内の全ての前記バッテリモジュールの両端に固定されている、バッテリパック。
【0052】
(3)によれば、ジャンクションボックスを固定しているフレーム部材で、全てのバッテリモジュールの両端を直接引っ張るので、引張荷重がバッテリモジュールの前後方向で一方側にのみ作用することが防止され、バッテリケース内の全てのバッテリモジュールの両端に引張荷重が作用する。
【0053】
(4) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記中間固定部の弾性部材はラバーで形成されている、バッテリパック。
【0054】
(4)によれば、構造設計を変更せずにラバーの材質を変更することで、中間固定部の弾性力が変わり、ジャンクションボックスが揺れる周波数を変化させることができる。これにより、弾性部材としてコイルばね、板ばね、皿バネなど金属製の弾性体を用いる場合に比べて、望ましくない振幅に至る固有振動数における振動モードの調整が容易となる。
【0055】
(5) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記フレーム部材には、前記第1固定部の前方、又は、前記第2固定部の後方に補器が設けられ、
前記補器、前記ジャンクションボックス、及び前記バッテリモジュールの重量は、この順に大きい、バッテリパック。
【0056】
(5)によれば、ある程度重さのあるジャンクションボックスが揺れて逆位相を起こすことで、バッテリパックの振動を抑制しやすくなる。
【符号の説明】
【0057】
1 バッテリパック
10 バッテリモジュール
11 ジャンクションボックス
20 セル積層体
31 バッテリケース
34 アッパーフレーム(フレーム部材)
37 エンドプレート
60 カバープレート
80 マウントラバー(弾性部材)
H1 ボルト穴(第1固定部)
H2 ボルト穴(第2固定部)
H3 ボルト穴(第3固定部)
H5 ボルト穴(中間固定部)
N1 モジュール固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6