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特開2024-137176分析装置、分析方法および分析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137176
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】分析装置、分析方法および分析プログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20240927BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L21/306 R
G05B23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048591
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100108523
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 雅博
(74)【代理人】
【識別番号】100125704
【弁理士】
【氏名又は名称】坂根 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100187931
【弁理士】
【氏名又は名称】澤村 英幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 義徳
【テーマコード(参考)】
3C223
5F043
【Fターム(参考)】
3C223AA13
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB02
3C223FF04
3C223FF05
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF41
3C223GG01
3C223HH02
5F043DD13
5F043DD27
5F043EE07
5F043EE08
5F043EE23
5F043EE29
(57)【要約】
【課題】 任意の時点における基板処理装置の状態を分析することを可能にする。
【解決手段】 分析装置は、基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得部110と、データ取得部110によって取得された処理条件と処理結果とに基づき、処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新部130と、パラメータ更新部130で更新されたパラメータに基づき、基板処理装置の状態を分析する分析部220と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新部と、
前記パラメータ更新部で更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析部と、を備えた分析装置。
【請求項2】
前記分析部は、前記回帰式の前記パラメータの経時変化量に基づいて、前記基板処理装置の状態を分析する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記基板処理装置は、前記処理の一部を実行する処理実行部材と、
前記処理実行部材の動作を予め設定された設定操作量に従って制御する駆動制御部材と、を有し、
前記分析装置は、
前記パラメータ更新部により更新された前記回帰式の前記パラメータに基づき、前記操作量を決定する操作量決定部を、さらに備えた、請求項1に記載の分析装置。
【請求項4】
前記分析部による分析結果は、前記基板処理装置の状態の経時変化量の検出結果を含み、
前記操作量決定部は、前記経時変化量が所定のしきい値以上である場合に、前記操作量を決定する、請求項3に記載の分析装置。
【請求項5】
前記操作量決定部は、前記操作量を決定することに応じて、前記基板処理装置に設定されている前記設定操作量を前記操作量で更新する、請求項3に記載の分析装置。
【請求項6】
前記基板処理装置は複数あり、
前記分析部は、複数の前記基板処理装置ごとに前記基板処理装置の状態を分析する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項7】
前記基板処理装置は複数あり、
前記分析部は、複数の前記基板処理装置間で状態を分析する、請求項1に記載の分析装置。
【請求項8】
前記分析部で分析された前記基板処理装置の状態を通知する通知部を、さらに備えた、請求項1に記載の分析装置。
【請求項9】
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、
前記パラメータ更新ステップにおいて更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、を備える、分析方法。
【請求項10】
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、
前記パラメータ更新ステップにおいて更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、をコンピューターに実行させる分析プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の状態を分析する分析装置、その分析装置で実行される分析方法およびその分析方法をコンピューターに実行させる分析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造プロセスにおいて、洗浄プロセスがある。洗浄プロセスでは、基板に薬液を供給するエッチング処理によって、基板に形成されている被膜の膜厚調整が行なわれる。この膜厚調整においては、基板の面が均一となるようにエッチング処理すること、あるいは、基板の面をエッチング処理によって平坦にすることが重要である。エッチング液をノズルから基板の一部に吐出する場合、ノズルを基板に対して径方向に移動させる必要がある。
【0003】
特許文献1には、エッチングノズルから基板にエッチング液を吐出することにより、基板をエッチング処理する液処理装置が記載されている。特許文献1には、基板の中央領域のエッチング処理を行いつつ、ウエハの面内温度分布を均一にするために、吐出されたエッチング液がウエハの中心を通る中央側の第1位置と、この中央側の位置よりもウエハの周縁側の第2位置との間でエッチングノズルを繰り返し往復させながらエッチング液を吐出する例が記載される。
【0004】
エッチング処理は、被膜が処理される処理量がノズルを移動させる動作の他に、エッチング液の濃度、温度、基板の回転数等の処理条件の違いによって変化する複雑なプロセスである。このため、被膜の処理に適した処理条件を設定する作業が困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-103656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに、基板処理装置の部品等の経年劣化ならびに基板処理装置間の機差がある。そのため、基板処理装置を管理する作業者は、基板処理装置に処理を実行させた後に得られる処理結果に基づいて、基板処理装置の部品を駆動するために設定されている操作量をチューニングする。この操作量をチューニングする作業は、経時変化する基板処理装置の状態を正確に把握して行う必要があり、熟練を要する。そのため、未熟者によるチューニング作業においては、ヒューマンエラーによる基板処理装置の調整不良が発生するといった問題があった。
【0007】
本発明の目的の1つは、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析装置を提供することである。この発明の他の目的は、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析方法を提供することである。この発明のさらに他の目的は、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一局面に従う分析装置は、基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得部と、データ取得部によって取得された処理条件と処理結果とに基づき、処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新部と、パラメータ更新部で更新されたパラメータに基づき、基板処理装置の状態を分析する分析部と、を備える。
【0009】
本発明の他の局面に従う分析方法は、基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップにおいて取得された処理条件と処理結果とに基づき、処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、パラメータ更新ステップにおいて更新されたパラメータに基づき、基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、を備える。
【0010】
本発明のさらに他の局面に従う分析プログラムは、基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、データ取得ステップにおいて取得された処理条件と処理結果とに基づき、処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、パラメータ更新ステップにおいて更新されたパラメータに基づき、基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、をコンピューターに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、任意の時点における基板処理装置の状態を分析することを可能な分析装置、分析方法および分析プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。
図2】分析装置の構成の一例を示す図である。
図3】一実施の形態に係る基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。
図4】処理結果を説明するための図である。
図5】パラメータ履歴データの一例を示す概念図である。
図6】分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図7】処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図8】装置設定変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムについて図面を参照しながら詳細に説明する。以下の説明において、基板とは、半導体基板(半導体ウェハ)、液晶表示装置もしくは有機EL(Electro Luminescence)表示装置等のFPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板または太陽電池用基板等をいう。
【0014】
(1)基板処理システムの全体構成
図1は、本発明の一実施の形態に係る基板処理システムの構成を説明するための図である。図1の基板処理システム1は、分析装置100および基板処理装置300を含む。分析装置100は、例えばパーソナルコンピューターである。
【0015】
分析装置100は、基板処理装置300を管理するために用いられる。なお、分析装置100が管理する基板処理装置300は、1台に限定されるものではなく、基板処理装置300の複数を管理してもよい。
【0016】
本実施の形態に係る基板処理システム1において、分析装置100および基板処理装置300は、互いに有線または無線の通信線または通信回線網により接続される。分析装置100および基板処理装置300は、それぞれがネットワークに接続され、互いにデータの送受信が可能である。ネットワークは、例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)またはワイドエリアネットワーク(WAN)が用いられる。また、ネットワークは、インターネットであってもよい。また、分析装置100と基板処理装置300とは、専用の通信回線網で接続されてもよい。ネットワークの接続形態は、有線接続であってもよいし、無線接続であってもよい。
【0017】
基板処理装置300には、図示しない表示装置、音声出力装置および操作部が設けられる。基板処理装置300は、基板処理装置300の予め定められた処理条件(処理レシピ)に従って運転される。
【0018】
(2)基板処理装置の概要
基板処理装置300は、制御装置10と、複数の基板処理ユニットWU1~WU4を備える。本実施の形態においては、基板処理装置300が4つの基板処理ユニットWU1~WU4を備える例が記載されるが、この数に限定されるものではない。基板処理装置300においては、1以上の基板処理ユニットが含まれていてもよい。制御装置10は、複数の基板処理ユニットWU1~WU4を制御する。複数の基板処理ユニットWU1~WU4は、被膜が形成された基板Wに処理液を供給することにより基板Wの被膜の処理を行う。複数の基板処理ユニットWU1~WU4が有する部材および機能は同じである。従って、以下の説明では、特に言及しない限り基板処理ユニットWU1を例に説明する。
【0019】
本実施の形態において、処理対象の基板Wは、直径300mmを有するが、本発明は、これに限定されるものではない。処理液はエッチング液を含み、基板処理ユニットWUはエッチング処理を実行する。エッチング液は、薬液である。エッチング液は、例えば、フッ硝酸(フッ酸(HF)と硝酸(HNO)との混合液)、フッ酸、バファードフッ酸(BHF)、フッ化アンモニウム、HFEG(フッ酸とエチレングリコールとの混合液)、または、燐酸(HPO)である。
【0020】
基板処理ユニットWU1は、スピンチャックSCと、スピンモータSMと、表面ノズル311と、ノズル移動機構301と、裏面ノズル312と、を備える。スピンチャックSCは、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベースSBと、スピンベースSBの上方で基板Wを水平な姿勢で保持可能な複数のチャックピン306とを含む。これにより、スピンチャックSCは、基板Wを水平に保持する。基板Wは、スピンモータSMの第1回転軸AX1と基板Wの中心とが一致するようにスピンチャックSCに保持される。スピンモータSMは、第1回転軸AX1を有する。第1回転軸AX1は、上下方向に延びる。スピンチャックSCは、スピンモータSMの第1回転軸AX1の上端部に取り付けられる。スピンモータSMが回転すると、スピンチャックSCが第1回転軸AX1を中心として回転する。スピンモータSMは、ステッピングモータである。スピンチャックSCに保持された基板Wは、第1回転軸AX1を中心として回転する。このため、基板Wの回転速度は、ステッピングモータの回転速度と同じである。なお、スピンモータの回転速度を示す回転速度信号を生成するエンコーダを設ける場合、エンコーダにより生成される回転速度信号から基板Wの回転速度が取得されてもよい。この場合、スピンモータSMは、ステッピングモータ以外のモータを用いることができる。
【0021】
表面ノズル311は、スピンチャックSCに保持された基板Wの表面(上面)にエッチング液を供給する。表面ノズル311には、図示しないエッチング液供給部からエッチング液が供給される。表面ノズル311は、回転中の基板Wの表面に向けてエッチング液を吐出する。裏面ノズル312は、スピンチャックSCに保持された基板Wの裏面(下面)にエッチング液を供給する。裏面ノズル312は、図示しないエッチング液供給部からエッチング液が供給され、回転中の基板Wの裏面に向けてエッチング液を吐出する。以下、裏面ノズル312からエッチング液の吐出を行う処理を裏面吐出処理と呼ぶ。
【0022】
ノズル移動機構301は、略水平方向に表面ノズル311を移動させる。具体的には、ノズル移動機構301は、第2回転軸AX2を有するノズルモータ303と、ノズルアーム305と、を有する。ノズルモータ303は、第2回転軸AX2が略鉛直方向に沿うように配置される。ノズルアーム305は、直線状に延びる長手形状を有する。ノズルアーム305の一端は、ノズルアーム305の長手方向が第2回転軸AX2とは異なる方向となるように、第2回転軸AX2の上端に取り付けられる。ノズルアーム305の他端には、エッチング液の吐出口が下方を向くように表面ノズル311が取り付けられる。
【0023】
ノズルモータ303が動作すると、ノズルアーム305は第2回転軸AX2を中心として水平面内で回転する。これにより、ノズルアーム305の他端に取り付けられた表面ノズル311は、第2回転軸AX2を中心として水平方向に移動する(旋回する)。表面ノズル311は、水平方向に移動しながら基板Wに向けてエッチング液を吐出する。ノズルモータ303は、例えば、ステッピングモータである。
【0024】
制御装置10は、CPU(中央演算処理装置)およびメモリを含み、CPUがメモリに記憶されたプログラムを実行することにより、基板処理装置300の全体を制御する。制御装置10は、スピンモータSMおよびノズルモータ303を制御する。
【0025】
分析装置100には、基板処理装置300から実績データが入力される。実績データは、基板処理ユニットWU1における一の基板に対する被膜の処理ごとに、当該被膜の処理を実行させた処理条件と被膜の処理の処理結果とを含む。分析装置100は、実績データを用いて基板処理ユニットWU1に対応する予測アルゴリズムを生成し、予測アルゴリズムを用いて基板処理ユニットWU1の状態を分析し、分析結果に基づいて基板処理ユニットWU1の設定を変更する。実績データは、4つの基板処理ユニットWU1~WU4ごとに基板処理装置300から分析装置100に入力される。分析装置100は、4つの基板処理ユニットWU1~WU4ごとに予測アルゴリズムを生成し、4つの予測アルゴリズムを用いて基板処理ユニットWU1~WU4それぞれの状態を分析し、分析結果に基づいて基板処理ユニットWU1~WU4の設定を変更する。
【0026】
分析装置100が4つの基板処理ユニットWU1~WU4にそれぞれ対応して4つの予測アルゴリズムを生成する処理、4つの予測アルゴリズムを用いて基板処理ユニットWU1~WU4の状態を分析する処理、および基板処理ユニットWU1~WU4の設定を変更する処理は、すべて同じである。従って、以下の説明では、特に言及しない限り、基板処理ユニットWU1に対する予測アルゴリズムを生成する処理、その予測アルゴリズムを用いて基板処理ユニットWU1の状態を分析する処理、および基板処理ユニットWU1の設定を変更する処理について説明する。
【0027】
分析装置100は、さらに、予測アルゴリズムを用いて、基板処理ユニットWU1がこれから処理する予定の基板に対して、基板を処理するための処理条件を決定する。分析装置100は、決定された処理条件を基板処理装置300に出力する。
【0028】
図2は、分析装置の構成の一例を示す図である。図2を参照して、分析装置100は、CPU101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリメモリ)103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F(インターフェイス)107により構成される。CPU101、RAM102、ROM103、記憶装置104、操作部105、表示装置106および入出力I/F107はバス108に接続される。
【0029】
RAM102は、CPU101の作業領域として用いられる。ROM103にはシステムプログラムが記憶される。記憶装置104は、ハードディスクまたは半導体メモリ等の記憶媒体を含み、プログラムを記憶する。プログラムは、ROM103または他の外部記憶装置に記憶されてもよい。
【0030】
記憶装置104には、CD-ROM109が着脱可能である。CPU101が実行するプログラムを記憶する記録媒体としては、CD-ROM109に限られず、光ディスク(MO(Magnetic Optical Disc)/MD(Mini Disc)/DVD(Digital Versatile Disc))、ICカード、光カード、マスクROM、EPROM(Erasable Programmable ROM)などの半導体メモリ等の媒体でもよい。さらに、CPU101がネットワークに接続されたコンピューターからプログラムをダウンロードして記憶装置104に記憶する、または、ネットワークに接続されたコンピューターがプログラムを記憶装置104に書込みするようにして、記憶装置104に記憶されたプログラムをRAM102にロードしてCPU101で実行するようにしてもよい。ここでいうプログラムは、CPU101により直接実行可能なプログラムだけでなく、ソースプログラム、圧縮処理されたプログラム、暗号化されたプログラム等を含む。
【0031】
操作部105は、キーボード、マウスまたはタッチパネル等の入力デバイスである。使用者は、操作部105を操作することにより、分析装置100に所定の指示を与えることができる。表示装置106は、液晶表示装置等の表示デバイスであり、使用者による指示を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入出力I/F107は、ネットワークに接続される。
【0032】
(3)基板処理システムの機能構成
図3は、一実施の形態に係る基板処理システムの機能的な構成の一例を示す図である。図3を参照して、基板処理装置300は、制御装置10と、分析装置100とを備える。制御装置10は、複数の基板処理ユニットWU1~WU4それぞれを制御する。例えば、制御装置10は、基板処理ユニットWU1を制御して、処理条件に従って基板Wに対して被膜の処理を行う。基板処理ユニットWU1が基板に対する被膜の処理を実行する時間を処理時間という。詳細には、処理時間は、表面ノズル311が基板Wにエッチング液を吐出している間の時間である。処理条件は、基板処理ユニットWU1が被膜の処理を実行する際に用いる条件である。
【0033】
処理条件は、エッチング液の設定温度T、エッチング液の設定濃度c、エッチング液の設定流量D、基板Wの単位時間当たりの設定回転数Rおよび表面ノズル311の位置を含む。本実施の形態において、エッチング液の設定温度Tは、エッチング液が流れる配管に設置されたヒータ(図示せず)により調整される。エッチング液の設定濃度cは、複数の薬液の混合比で示され、複数の薬液それぞれが流れる複数の配管に設置されたバルブ(図示せず)により調整される。また、エッチング液の設定流量Dは、エッチング液が流れる配管に設置されたバルブ(図示せず)により調整される。バルブは、例えばニードルバルブである。また、基板Wの設定回転数Rは、スピンモータSMにより調整される。
【0034】
表面ノズル311の位置は、被膜の処理が実行される間の複数の時点それぞれにおける表面ノズル311と基板Wとの相対位置で示される。表面ノズル311と基板Wとの相対位置は、ノズルモータ303の回転角度で示され、ノズルモータ303により調整される。
【0035】
処理条件は、時間の経過に伴って変動しない固定条件と、時間の経過に伴って変動する変動条件とを含む。本実施の形態において、固定条件は、エッチング液の設定温度T、エッチング液の設定濃度c、エッチング液の設定流量Dおよび基板Wの設定回転数Rである。変動条件は、表面ノズル311と基板との相対位置である。
【0036】
ここで、基板処理装置300が被膜の処理を実行して得られる処理結果について説明する。図4は、処理結果を説明するための図である。図4において、縦軸が膜厚を示し、横軸が基板の半径方向の位置を示す。なお、横軸の原点が基板の中心を示す。基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された膜の膜厚が実線で示される。基板処理装置300により処理条件に従ってエッチング液を塗布する被膜の処理が実行されることにより、基板Wに形成される被膜の膜厚が調整される。基板処理装置300により被膜の処理が実行された後の基板Wに形成された膜の膜厚が点線で示される。基板Wの径方向の位置それぞれにおける被膜の膜厚を膜厚特性と呼ぶ。
【0037】
基板処理装置300により処理される前の基板Wに形成された被膜の膜厚と基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された被膜の膜厚との差が処理結果(エッチング量)である。換言すれば、処理結果は、基板処理装置300の被膜の処理により基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおいて減少した被膜の厚さを示す。
【0038】
基板処理装置300により実行される処理に対して、目標となる目標膜厚が定められる。目標膜厚は、一点鎖線で示される。乖離特性は、基板処理装置300により処理された後の基板Wに形成された被膜の膜厚と目標膜厚との差分である。乖離特性は、基板Wの径方向における複数の位置それぞれにおける差分を含む。
【0039】
次に、本実施の形態における分析装置100により生成される予測アルゴリズムについて説明する。予測アルゴリズムは、次式(1)で示される回帰式G(x)で示される。以下、回帰式G(x)の同定について説明する。
【0040】
【数1】
【0041】
回帰式G(x)は、第1関数F1(x)と、第2関数F2(x)と、第3関数H(x)の積で示される。第1関数F1(x)は、次式(2)および(3)で示すように、基板処理装置300が裏面吐出処理なしの処理条件で基板Wに被膜の処理を実行する場合の基板Wの径方向に異なる複数の位置それぞれの被膜の処理の前後の膜厚の差を表す関数である。第1処理結果ER1は、基板処理装置300が裏面吐出処理なしの処理条件で被膜の処理を実行した場合における、処理結果を示す。具体的には、第1処理結果ER1は、基板処理装置300が裏面吐出処理なしの処理条件で被膜の処理を実行した場合における、基板Wの径方向に異なる複数の位置それぞれの被膜の処理の前後の膜厚の差を示す。第1関数F1(x)については、発明者が、複数の第1処理結果ER1から見出した関数である。
【0042】
【数2】
【0043】
第1関数F1(x)は、基板Wの半径方向の位置xを変数とし、エッチング液の設定温度Tおよびエッチング液の設定流量Dを説明変数とし、かつパラメータα1~α3,β1~β3を用いて示される回帰式である。なお、パラメータα1~α3,β1~β3は、処理条件のうち、エッチング液の設定濃度cに依存する値である。また、式(3)に示されるように、パラメータα1,β1についてはエッチング液の設定温度Tに関連し、パラメータα2,β2についてはエッチング液の設定流量Dに関連する。第1関数F1(x)は、変数xのn1(n1は正の定数)次の関数である。
【0044】
裏面吐出処理なしの処理条件と、その処理条件で基板処理装置300が被膜の処理を実行して得られる第1処理結果ER1とのデータセットの複数組を第1関数F1(x)に与えて回帰分析することにより、パラメータα1~α3,β1~β3が決定される。
【0045】
第2関数F2(x)は、裏面吐出処理の影響を考慮した関数であり、次式(4)で示される。第2処理結果ER2は、基板処理装置300が裏面吐出処理ありの処理条件で基板Wに被膜の処理を実行した場合における、処理結果を示す。具体的には、第2処理結果ER2は、基板処理装置300が裏面吐出処理ありの処理条件で基板Wに被膜の処理を実行した場合における、基板Wの径方向に異なる位置ごとの被膜の処理の前後の膜厚の差を示す。第2関数F2(x)は、基板処理装置300が裏面吐出処理ありの処理条件で基板Wに被膜の処理を実行した第2処理結果ER2を第1関数F1(x)で除算した値を表す関数であり、発明者が、複数の第2処理結果ER2を第1関数F1(x)で除算した結果から導き出した関数である。第2関数F2(x)は、次式(5)、式(6)および式(7)で示される。
【0046】
【数3】
【0047】
第2関数F2(x)は、基板Wの半径方向の位置xを変数とし、エッチング液の設定濃度c、エッチング液の設定流量Dおよび基板Wの設定回転数Rを説明変数とし、かつパラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4を用いて示される回帰式である。なお、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4は、処理条件のうち、エッチング液の設定温度Tに依存する値である。また、式(6)および式(7)に示されるように、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1についてはエッチング液の設定濃度cに関連し、パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2についてはエッチング液の設定流量Dに関連し、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3については基板Wの設定回転数Rに関連する。裏面吐出処理ありの処理条件と、その処理条件で基板処理装置300が被膜の処理を実行して得られる第2処理結果ER2のデータセットの複数組を第2関数F2(x)に与えて回帰分析することにより、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4が決定される。
【0048】
第3関数H(x)は、変動条件を考慮した関数である。ここで、基板処理装置300の被膜の処理において、裏面吐出処理が行われる場合、第2処理結果ER2は、次式(8)で示される。ここで、式(8)を変形すると、裏面吐出処理を考慮した第3関数H(x)は、第2処理結果ER2の値を第1関数F1(x)および第2関数F2(x)で除算した値に等しくなる。第2処理結果ER2の値を第1関数F1(x)および第2関数F2(x)で除算した値は、処理時間のうちノズル動作により実際に基板Wにエッチング液が供給されない時間が第2処理結果ER2に及ぼす影響度と定義される。以下、第2処理結果ER2の値を第1関数F1(x)および第2関数F2(x)で除算した値を第2影響度(またはエッチング液のカバレッジ率)と呼ぶ。
【0049】
第3関数H(x)は、基板処理装置300が裏面吐出処理ありの処理条件で基板Wに被膜の処理を実行した第2処理結果ER2を第1関数F1(x)および第2関数F2(x)で除算した値を表す関数となる。発明者は、複数の第2処理結果ER2を第1関数F1(x)および第2関数F2(x)で除算した結果から、第3関数H(x)を導き出した。第3関数H(x)は、次式(10)で示される関数h1(x)の逆関数を含む次式(9)で示される。
【0050】
【数4】
【0051】
式(10)の関数h1(x)は、エッチング液の設定濃度c、エッチング液の設定流量Dおよび基板Wの設定回転数Rを説明変数とし、表面ノズル311が基板W上の位置xに位置している時、既にエッチング液が到達している位置を表す関数である。関数h1(t)は、時刻tにおいて、既にエッチング液が到達している位置を表す関数である。
【0052】
tprocは、被膜の処理が開始されてから被膜の処理が終了するまでの経過時間を示す。tdelayは、被膜の処理が開始されてから実際にエッチング液が基板Wに供給されるまでの時間を示す。つまり、tproc―tdelayは、エッチング液が基板W上に存在する時間を示す。
【0053】
実際にエッチング液が基板Wに供給され始めるtdelayの時点で、既にエッチング液が到達している位置については、第3関数H(x)を考慮する必要がない。このため、変数xが第1距離関数h1(tdelay)以上の範囲の第3関数H(x)は、1で示される。一方、変数xが第1距離関数h1(tdelay)より小さい範囲の第3関数H(x)は、関数h1(x)の逆関数h1―1(x)をエッチング液が基板W上に存在する時間を示すtproc-tdelayで除算することにより得られる。第3関数H(x)は、基板Wの半径方向の位置xを変数とし、基板Wの設定回転数Rおよびエッチング液の設定流量Dを説明変数とし、かつパラメータν1~ν4を用いて示される回帰式である。なお、式(10)に示されるように、パラメータν1については基板Wの設定回転数Rに関連し、パラメータν2についてはエッチング液の設定流量Dに関連する。
【0054】
処理条件のうち裏面吐出処理ありの処理条件と、その処理条件で基板処理装置300が被膜の処理を実行して得られる第2処理結果ER2のデータセットの複数組を第3関数H(x)に与えて回帰分析することにより、パラメータν1~ν4が決定される。
【0055】
本実施の形態においては、基板処理装置300の被膜の処理で裏面吐出処理が行われるので、第1予測アルゴリズムを構成する回帰式G(x)は、第1関数F1(x)と、第2関数F2(x)と、第3関数H(x)との積で示される。
【0056】
なお、基板処理装置300の被膜の処理で裏面吐出処理が行われない場合においては、第1予測アルゴリズムを構成する回帰式G(x)は、第1関数F1(x)と、第3関数H(x)との積で示される。この場合において、処理条件のうち裏面吐出処理なしの処理条件と、その処理条件で基板処理装置300が被膜の処理を実行して得られる第1処理結果ER1とのデータセットの複数組を第3関数H(x)に与えて回帰分析することにより、パラメータν1~ν4が決定される。
【0057】
図3に戻って、分析装置100は、データ取得部110と、蓄積データ生成部120と、パラメータ更新部130と、処理条件決定部140と、予測部150と、評価部160と、処理条件送信部170と、パラメータ履歴生成部210と、分析部220と、操作量決定部230と、操作量取得部240と、を含む。分析装置100が備える機能は、分析装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された分析プログラムを実行することにより、CPU101により実現される。本実施の形態における分析装置100と、基板処理装置300とでデジタルツインが実現される。具体的には、分析装置100の予測部150は、上述した予測アルゴリズムを用いて基板処理装置300をシミュレートする。
【0058】
基板処理装置300の制御装置10は、複数の基板処理ユニットWU1~WU4のいずれかが一の基板に対して被膜の処理を実行すると、一の基板に対する被膜の処理ごとに、当該被膜の処理を実行させた処理条件と被膜の処理の処理結果とを含む実績データを出力する。データ取得部110は、基板処理装置300から基板処理ユニットWU1に対応する処理条件と処理結果とを含む実績データを取得する。処理結果は、基板の径方向に異なる複数の位置それぞれにおける被膜の処理が実行される前後の膜厚の差である。データ取得部110は、基板処理ユニットWUに対応する実績データを取得することに応じて、その実績データを蓄積データ生成部120に出力する。また、データ取得部110は、基板処理ユニットWUに対応する実績データを取得することに応じて、その実績データに含まれる処理条件を操作量決定部230に出力する。
【0059】
蓄積データ生成部120は、データ取得部110から基板処理ユニットWU1に対応する実績データが入力されることに応じて、実績データを含む蓄積データを生成し、記憶装置104に格納する。これにより、記憶装置104には、基板処理ユニットW1に対応する実績データが時系列で蓄積される。蓄積データは、実績データに加えて、その実績データに対応する基板処理ユニットを識別するユニット識別情報、被膜の処理が実行された日時を示す情報をさらに含んでもよい。
【0060】
パラメータ更新部130は、記憶装置104に記憶された複数の蓄積データを回帰式G(x)に与えて回帰分析することにより予測アルゴリズムを生成する。また、パラメータ更新部130は、所定の条件が満たされた場合、予測アルゴリズムを更新する。所定の条件は、限定するものではないが、基板処理ユニットWU1が基板Wの被膜の処理を行った回数が所定の回数に到達した場合である。所定の回数は、記憶装置104に実績データの数として予め記憶される。本実施の形態において、所定の回数を500としている。このため、所定の条件は、基板処理装置300により基板Wの被膜の処理が行われた回数が500の倍数に到達した場合に満たされる。なお、所定の条件は、予め定められた期間が経過した場合としてもよい。
【0061】
パラメータ更新部130は、基板処理装置300が備える4つの基板処理ユニットWU1~WU4それぞれに対応する予測アルゴリズムを生成する。パラメータ更新部130は、4つの基板処理ユニットWU1~WU4ごとに生成した予測アルゴリズムを予測部150に出力する。以下、基板処理ユニットWU1に対して生成された予測アルゴリズムを例に説明する。
【0062】
パラメータ更新部130は、回帰式G(x)に複数の蓄積データを与えて回帰分析することにより、第1~第3関数にそれぞれ含まれるパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4を決定し、回帰式G(x)からなる予測アルゴリズムを生成する。
【0063】
パラメータ更新部130は、決定されたパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4と実績データの数(以下、データセット数と略記する。)とを含むパラメータデータをパラメータ履歴生成部210に出力する。データセット数は、予測アルゴリズムを特定する値であり、予測アルゴリズムが生成される時点までに基板処理ユニットWU1により基板Wに対して被膜の処理が行われた累積回数の最大値を示す。
【0064】
パラメータ履歴生成部210には、パラメータ更新部130からパラメータデータが入力される。パラメータ履歴生成部210は、パラメータデータが入力されることに応じて、そのパラメータデータを記憶装置104に格納し、パラメータ履歴データを生成する。パラメータ履歴データは、基板処理ユニットWU1~WU4のいずれかを識別するためのユニット識別情報およびパラメータが更新された日時を示す更新日時を含む。
【0065】
図5は、パラメータ履歴データの一例を示す概念図である。図5に示すように、パラメータ履歴データは、基板処理ユニットWU1~WU4ごとのテーブルを含む。基板処理ユニットWU1~WU4それぞれのテーブルに含まれる複数の項目は同じなので、ここでは、基板処理ユニットWU1に対応するパラメータ履歴データが例に示される。基板処理ユニットWU1に対応するパラメータ履歴データは、データセット数の項目と、パラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4それぞれの値が設定される項目とを含む。データセット数の項目は、予測アルゴリズムが生成された時点までに基板処理ユニットWU1により基板Wに対して被膜の処理が行われた累積回数の最大値を示す。ここでは、データセット数が500の倍数である場合が示される。パラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4の値の図示が省略されている。
【0066】
図3に戻って、分析部220は、パラメータ履歴生成部210により生成され、記憶装置104に格納されたパラメータ履歴データに基づいて、基板処理装置300の状態を分析する。分析部220は、基板処理装置300の状態を分析した分析結果を操作量決定部230に出力する。
分析部220は、基板処理装置300が備える処理実行部材の状態を分析することにより、基板処理装置300の状態を分析する。処理実行部材は、基板処理装置300が被膜の処理を実行する間に動作する部材である。処理実行部材は、スピンモータSM、エッチング液の温度を調整するヒータ、エッチング液の流量を調整するニードルバルブを含む。
【0067】
分析部220は、記憶装置104に記憶されたデータセット数が異なる複数のパラメータ履歴データを読み出し、パラメータ履歴データに含まれるパラメータの時系列的な変化量に基づいて、基板処理装置300が備える処理実行部材の状態の変化を検出する。例えば、パラメータ履歴データに含まれるパラメータの時系列的な変化量をしきい値と比較することにより、処理実行部材の状態の変化を検出する。しきい値は、例えば、記憶装置104に予め記憶されるようにすればよい。
【0068】
上述したように、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3については基板Wの設定回転数Rに関連する。このため、分析部220は、記憶装置104に記憶されたデータセット数が異なる複数のパラメータ履歴データを読み出し、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3の経時変化量に基づいてスピンモータSMの状態の経時変化の有無を検出する。例えば、分析部220は、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3それぞれについて、前回の更新時の値と今回の更新時の値との差分(経時変化量)をしきい値と比較することにより、スピンモータSMの経時変化の有無を検出する。具体的には、分析部220は、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3の少なくとも1つにおいて、前回の更新時の値と今回の更新時の値との差分がしきい値以上である場合、スピンモータSMの状態が経時変化したこと検出する。分析部220は、スピンモータSMの状態の経時変化を検出する場合、スピンモータSMに対する変更指示を操作量決定部230に出力する。変更指示は、スピンモータSMを識別するための部品識別情報を含む。
【0069】
また、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1についてはエッチング液の設定温度Tに関連する。このため、分析部220は、記憶装置104に記憶されたデータセット数が異なる複数のパラメータ履歴データを読み出し、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1の経時変化量に基づいてヒータの状態の経時変化の有無を検出する。例えば、分析部220は、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1それぞれについて、前回の更新時の値と今回の更新時に値との差分(経時変化量)をしきい値と比較することにより、ヒータの状態が経時変化したことを検出する。具体的には、分析部220は、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1の少なくとも1つにおいて、前回の更新時の値と今回の更新時に値との差分が所定のしきい値以上の場合、ヒータの状態が経時変化したことを検出する。分析部220は、ヒータの状態の経時変化を検出する場合、ヒータに対する変更指示を操作量決定部230に出力する。変更指示は、ヒータを識別するための部品識別情報を含む。
【0070】
パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2についてはエッチング液の設定流量Dに関連する。このため、分析部220は、記憶装置104に記憶されたデータセット数が異なる複数のパラメータ履歴データを読み出し、パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2の経時変化量に基づいてニードルバルブの状態の経時変化の有無を検出する。例えば、分析部220は、パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2それぞれについて、前回の更新時の値と今回の更新時に値との差分(経時変化量)をしきい値と比較することにより、ニードルバルブの状態が経時変化したことを検出する。具体的には、分析部220は、パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2の少なくとも1つにおいて、前回の更新時の値と今回の更新時に値との差分がしきい値以上の場合、ニードルバルブの状態が経時変化したことを検出する。分析部220は、ニードルバルブの状態の経時変化を検出する場合、ニードルバルブに対する変更指示を操作量決定部230に出力する。変更指示は、ニードルバルブを識別するための部品識別情報を含む。
【0071】
操作量取得部240は、基板処理装置300の被膜の処理において動作する各処理実行部材に対して設定されている設定操作量、その処理実行部材が処理条件にしたがって実際に動作した実績動作量を取得する。実績動作量は、処理条件の一部である設定動作量に従ってその部品が実際に動作した実績動作量を含む。操作量取得部240は、取得した設定操作量および実績動作量を操作量決定部230に出力する。
【0072】
設定操作量は、スピンモータSMを制御するために用いられるゲインA、エッチング液の温度を調整するヒータを制御するために用いられるゲインB、エッチング液の流量を調整するニードルバルブの制御に用いられるゲインCを含む。
【0073】
スピンモータSMに対する実績動作量は、処理条件に含まれる設定回転数Rが与えられたスピンモータSMが実際に基板を単位時間当たりに回転させた回転数を示す実績回転数Rrである。ヒータに対する実績動作量は、処理条件に含まれるエッチング液の設定温度Tが与えられたヒータにより熱が加えられたエッチング液の実際の温度を示す実績温度Trである。ニードルバルブに対する実績動作量は、処理条件に含まれるエッチング液の設定流量Dが与えられたニードルバルブにより流量が調整されたエッチング液の実際の流量を示す実績流量Drである。
【0074】
操作量決定部230には、操作量取得部240から各処理実行部材に対する設定操作量および実績動作量が入力され、データ取得部110から処理条件が入力される。操作量決定部230は、分析部220から処理実行部材の部品識別情報を含む変更指示が入力されることに応じて、その処理実行部材の設定操作量を変更するための操作量を決定する。操作量決定部230は、基板処理装置300に設定されている設定操作量を、決定された操作量で更新する。
具体的には、操作量決定部230は、分析部220からスピンモータSMの部品識別情報を含む変更指示が入力されることに応じて、スピンモータSMの設定操作量を変更するための操作量を決定する。スピンモータSMの設定操作量は、ゲインAである。操作量決定部230は、スピンモータSMのゲインA、実績回転数Rrおよび設定回転数Rの関係を示す次式(20)を用いて、スピンモータSMに対して設定操作量として設定されるべき操作量を決定する。設定回転数Rは、スピンモータSMに指令として入力される単位時間当たりの回転数である。実績回転数Rrは、指令に従って動作するスピンモータSMの単位時間当たりの回転数である。
具体的には、操作量決定部230は、操作量取得部240から入力される実績回転数Rrおよび処理条件に含まれる設定回転数Rを式(20)に代入し、スピンモータSMに対して設定されている設定操作量を変更するためのゲインA(操作量)を算出する。
【0075】
【数5】
【0076】
式(20)に示すように、実績回転数Rrは、設定回転数Rと、ゲインAと、定数kとの積で示される。定数kは、実績回転数Rrと設定回転数Rとを関連付けるために予め定められた定数である。基板処理装置300においては、実績回転数Rrと、処理条件に含まれる設定回転数Rとが等しくなることが理想である。そこで、操作量決定部230は、定数kを一定の値とした状態で式(20)が成立するゲインAの値をスピンモータSMの設定操作量として設定されるべき操作量に決定する。
【0077】
操作量決定部230は、決定された操作量を含む更新コマンドを、基板処理装置300の制御装置10に出力する。制御装置10は、更新コマンドを受信することに応じて、コマンドに従って基板処理装置300にスピンモータSMの設定操作量を、コマンドとともに受信される操作量で更新する。これにより、スピンモータSMの設定操作量が操作量で更新されるので、スピンモータSMの経時変化による設定回転数Rと実績回転数Rrとの差が補正される。
【0078】
操作量決定部230は、分析部220からヒータの部品識別情報を含む変更指示が入力されることに応じて、ヒータの設定操作量を変更するための設定値を決定する。ヒータの設定操作量は、ゲインBである。操作量決定部230は、ヒータのゲインB、実績温度Trおよび設定温度Tの関係を示す次式(21)を用いて、ヒータに対して設定操作量として設定されるべき操作量を決定する。設定温度Tは、ヒータに指令として入力される温度である。実績温度Trは、指令に従って動作するヒータの温度である。
具体的には、操作量決定部230は、操作量取得部240から入力される実績温度Trおよび処理条件に含まれる設定温度Tを式(21)に代入し、ヒータに対して設定操作量として設定されるべきゲインB(操作量)を算出する。
【0079】
【数6】
【0080】
式(21)に示すように、実績温度Trは、設定温度Tと、ゲインBと、定数kとの積で示される。定数kは、実績温度Trと設定温度Tとを関連付けるために予め定められた定数である。基板処理装置300においては、実績温度Trと、設定温度Tとを等しくすることが理想である。そこで、操作量決定部230は、定数kを一定の値とした状態で式(21)が成立するゲインBの値をヒータの設定操作量として設定されるべき操作量に決定する。
【0081】
操作量決定部230は、決定された操作量を含む更新コマンドを基板処理装置300の制御装置10に出力する。制御装置10は、基板処理装置300にヒータの設定操作量を、コマンドに含まれる操作量で更新する。これにより、ヒータの設定操作量が更新されるので、ヒータの経時変化による設定温度Tと実績温度Trの差が補正される。
【0082】
操作量決定部230は、分析部220からニードルバルブの部品識別情報を含む指示が入力されることに応じて、ニードルバルブの設定操作量を変更するための操作量を決定する。ニードルバルブの設定操作量は、ゲインCである。操作量決定部230は、ニードルバルブのゲインC、実績流量Drおよび設定流量Dの関係を示す次式(22)を用いて、ニードルバルブに対して設定操作量として設定されるべき操作量を決定する。設定流量Dは、ニードルバルブに指令として入力される単位時間当たりの流量である。実績流量Drは、指令に従って動作するニードルバルブを単位時間当たりに流れる流量である。
具体的には、操作量決定部230は、操作量取得部240から入力される実績流量Drおよび処理条件に含まれる設定流量Dを式(22)に代入し、ニードルバルブに対して設定操作量として設定されるべきゲインC(操作量)を算出する。
【0083】
【数7】
【0084】
式(22)に示すように、実績流量Drは、設定流量Dと、ゲインCと、定数kとの積で示される。定数kは、実績流量Drと設定流量Dとを関連付けるために予め定められた定数である。基板処理装置300においては、実績流量Drと、設定流量Dとを等しくすることが理想である。そこで、操作量決定部230は、定数kを一定の値とした状態で式(22)が成立するゲインCの値をニードルバルブの設定操作量として設定されるべき操作量に決定する。
【0085】
操作量決定部230は、決定された操作量を含むコマンドを基板処理装置300の制御装置10に出力する。制御装置10は、基板処理装置300にニードルバルブの設定操作量を、コマンドに含まれる操作量で更新する。これにより、ニードルバルブの経時劣化による設定流量Dと実績流量Drとの差が補正される。
【0086】
処理条件決定部140は、基板処理ユニットWU1がこれから処理の対象とする基板Wに対する仮の処理条件を決定し、仮の処理条件を予測部150に出力する。仮の処理条件は、基板処理装置300で被膜の処理を実行するための条件であり、固定条件および変動条件を含む。予測部150は、パラメータ更新部130から予測アルゴリズムが入力され、処理条件決定部140から仮の処理条件が入力される。予測部150は、予測アルゴリズムを用いて仮の処理条件から予測処理結果を推測する。予測部150は、処理条件決定部140から入力される仮の処理条件を予測アルゴリズムに入力し、予測アルゴリズムが出力する予測処理結果を評価部160に出力する。具体的には、予測部150は、第1関数F1(x)に固定条件のエッチング液の設定温度Tおよびエッチング液の設定流量Dとを与え、第2関数F2(x)に固定条件のエッチング液の設定濃度c、エッチング液の設定流量Dおよび基板Wの設定回転数Rとを与え、第3関数H(x)に変動条件ならびにエッチング液の設定流量Dおよび基板Wの設定回転数Rを与える。
【0087】
評価部160は、予測部150から入力される予測処理結果を評価し、評価結果を処理条件決定部140に出力する。詳細には、評価部160は、基板処理ユニットWU1が処理対象とする予定の基板Wの処理前の膜厚特性を取得する。評価部160は、予測部150から入力される予測処理結果と、基板Wの処理前の膜厚特性とからエッチング処理後に予測される膜厚特性を算出し、目標とする膜厚特性と比較する。比較の結果が評価基準を満たしていれば、処理条件決定部140から入力される仮の処理条件を実際に使用する処理条件に決定し、処理条件送信部170に出力する。例えば、評価部160は、乖離特性を算出し、乖離特性が評価基準を満たしているか否かが判断される。乖離特性は、エッチング処理後の基板Wの膜厚特性と目標の膜厚特性との差分である。評価基準は、任意に定めることができる。例えば、評価基準は、乖離特性において差分の最大値が閾値以下であるとしてもよいし、差分の平均が閾値以下であるとしてもよい。
【0088】
処理条件送信部170は、評価部160から入力される処理条件を、基板処理装置300の制御装置10に送信する。制御装置10は、基板処理ユニットWU1に、処理条件に従って基板Wに被膜の処理を実行させる。
【0089】
評価部160は、評価結果が評価基準を満たしていない場合は、評価結果を処理条件決定部140に出力する。評価結果は、エッチング処理後に予測される膜厚特性またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分を含む。
【0090】
処理条件決定部140は、評価部160から評価結果が入力されることに応じて、予測部150に推測させるための新たな仮の処理条件を決定する。処理条件決定部140は、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の処理条件のうちから1つを選択し、選択された仮の処理条件を予測部150に推測させるための新たな仮の処理条件として決定する。
【0091】
処理条件決定部140は、ベイズ推定を用いて処理条件を探索してもよい。評価部160により複数の評価結果が出力される場合、処理条件と評価結果とのデータセットが複数組となる。複数組のデータセットそれぞれにおける予測処理結果の傾向から被膜の膜厚が均一となる処理条件またはエッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分が最小となる処理条件を探索する。
【0092】
具体的には、処理条件決定部140は、目的関数を最小化するように仮の処理条件を探索する。目的関数は、被膜の膜厚の均一性を示す関数または被膜の膜厚特性と目標膜厚特性との一致性を示す関数である。例えば、目的関数は、エッチング処理後に予測される膜厚特性と目標の膜厚特性との差分をパラメータで示した関数である。ここでのパラメータは、対応する処理条件である。対応する処理条件は、予測アルゴリズムが予測処理結果を推測するために用いた処理条件である。処理条件決定部140は、複数の処理条件のうちから探索により決定されたパラメータである仮の処理条件を選択し、選択された仮の処理条件を新たな仮の処理条件として決定する。
【0093】
図6は、分析処理の流れの一例を示すフローチャートである。分析処理は、分析装置100が備えるCPU101がRAM102に格納された分析プログラムを実行することにより、CPU101により実行される処理である。分析処理が実行される前の段階で予測アルゴリズムとしての回帰式G(x)は、予め決定している。
【0094】
図6を参照して、分析装置100が備えるCPU101は、処理条件決定処理を実行する(ステップS01)。ここでは、基板処理装置300が被膜の処理を実行するための処理条件が決定される。処理条件決定処理の詳細については後述する。次のステップS02においては、決定された処理条件を基板処理装置300に送信する。次のステップS03においては、基板処理装置300から処理条件と処理結果とを実績データとして取得する。次のステップS04においては、CPU101は、取得した処理条件と処理結果とを含む蓄積データを生成し、記憶装置104に格納する。
【0095】
次のステップS05においては、CPU101は、記憶装置104に格納された蓄積データが所定の数に到達したか否かを判定する。ここでの所定の数は、500の倍数である。蓄積データは、基板処理装置300が基板を処理するごとに生成されるので、蓄積データの数は基板処理装置300が被膜の処理を実行した基板の枚数に等しい。ステップS05において、記憶装置104に格納された蓄積データが所定の数に到達した場合、処理はステップS06に進むが、記憶装置104に格納された蓄積データが所定の数に到達していない場合、処理はステップS01に戻る。これにより、記憶装置104に格納された蓄積データが所定の数になるまで、ステップS01~ステップS04が繰り返される。
【0096】
ステップS06においては、CPU101は、所定の数に到達した複数の蓄積データに基づいて予測アルゴリズムを生成する。ここでは、回帰式G(x)のパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4が決定される。
【0097】
次のステップS07においては、CPU101は、決定されたパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4を含むパラメータ履歴データを生成する。このとき、CPU101は、パラメータ履歴データを記憶装置104に格納する。パラメータ履歴データは、基板処理ユニットWU1~WU4のいずれかを識別するためのユニット識別情報およびステップS06において予測アルゴリズムが生成された日時を示す更新日時情報を含む。次のステップS08において、CPU101は、予め決定されている回帰式G(x)をステップS06において決定された回帰式G(x)に置き換えることにより、予測アルゴリズムを更新する。
【0098】
次のステップS09において、CPU101は、装置設定変更処理を実行する。装置設定変更処理については、後述する。次のステップS10においては、分析処理の終了が指示されたか否かが判定される。分析処理の終了は、使用者が分析処理の終了を指示してもよく、所定の条件を満たした場合に自動的に分析処理の終了が指示されてもよい。分析処理の終了が指示されていない場合、処理は、ステップS01に戻る。それにより、ステップS01~ステップS09が分析処理の終了が指示されるまで繰り返される。分析処理の終了が指示された場合、分析処理が終了する。
【0099】
図7は、処理条件決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。処理条件決定処理は、分析処理のステップS01においてCPU101により実行される処理である。分析装置100が備えるCPU101は、予め準備された複数の処理条件のうちから1つを選択し(ステップS11)、処理をステップS12に進める。ここでは、実験計画法、ペアワイズ法またはベイズ推定等を用いて、予め準備された複数の処理条件のうちから1つが選択される。
【0100】
ステップS12においては、予測アルゴリズムを用いて、処理条件から処理結果が予測され、処理はステップS14に進む。具体的には、処理条件に含まれる変動条件および固定条件が予測アルゴリズムに与えられ、予測アルゴリズムが出力する処理結果が予測処理結果として取得される。ここで用いられる予測アルゴリズムは、分析処理が実行され、ステップS08において更新された後の予測アルゴリズムである。なお、分析処理が最初に実行される場合には、基板処理装置300に所定数の基板に被膜の処理を実行させて得られる処理条件および処理結果を用いて生成される予測アルゴリズムが用いられる。
【0101】
ステップS13においては、予測処理結果が目標膜厚特性と比較される。基板処理装置300が処理の対象とする基板Wの処理前の膜厚特性と、ステップS12において取得された予測処理結果とから基板Wを処理した後の膜厚特性が算出される。そして、処理後の膜厚特性が目標膜厚特性と比較される。ここでは、基板Wを処理した後の膜厚特性と目標膜厚特性との差分が算出される。
【0102】
ステップS14においては、比較結果が評価基準を満たすか否かが判断される。比較結果が評価基準を満たすならば(ステップS14でYES)、処理はステップS15に進むが、そうでなければ処理はステップS11に戻る。ここでは、例えば、差分の最大値が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断する。また、差分の平均が閾値以下である場合に評価基準を満たすと判断してもよい。
【0103】
ステップS15においては、基板処理装置300を駆動するための処理条件の候補に、ステップS11において選択された処理条件が設定され、処理はステップS16に進む。ステップS16においては、探索の終了指示が受け付けられたか否かが判断される。分析装置100を操作するユーザーにより終了指示が受け付けられたならば処理はステップS17に進むが、そうでなければ処理はステップS11に戻る。なお、ユーザーにより入力される終了指示に変えて、予め定められた数の処理条件が候補に設定されたか否かが判断されてもよい。
【0104】
ステップS17においては、候補に設定された1以上の処理条件のうちから1つが決定され、処理はステップS18に進む。候補に設定された1以上の処理条件のうちから分析装置100を操作するユーザーにより1つが選択されてもよい。したがって、ユーザーの選択の範囲が広がる。また、複数の処理条件に含まれる変動条件のうちからノズル動作が最も簡略な変動条件が自動的に選択されてもよい。ノズル動作が最も簡略な変動条件は、例えば、変速点の数が最少の変動条件とすることができる。これにより、基板Wを処理する複雑なノズル動作に対する処理結果に対して複数の変動条件を提示することができる。複数の変動条件のうちからノズルの制御が容易な変動条件が選択される場合、基板処理装置300の制御が簡略になる。
【0105】
ステップS18においては、ステップS17において決定された処理条件が基板処理装置300に送信され、処理は分析処理に戻る。CPU101は、入出力I/F107を制御して、処理条件を基板処理装置300に送信する。基板処理装置300は、分析装置100から処理条件を受信する場合、その処理条件に従って基板Wを処理する。
【0106】
図8は、装置設定変更処理の流れの一例を示すフローチャートである。装置設定変更処理は、分析処理のステップS09においてCPU101により実行される処理である。分析装置100が備えるCPU101は、記憶装置104に蓄積されたパラメータ履歴データを取得し(ステップS31)、処理をステップS32に進める。ここで取得されたパラメータ履歴データは、基板処理ユニットWU1~WU4のいずれかを識別するためのユニット識別情報および予測アルゴリズムが生成された日時を示す更新日時情報を含む。
【0107】
次のステップS32においては、基板処理装置300を構成する複数の処理実行部材のうちから処理対象となる処理実行部材が選択され、処理はステップS33に進む。基板処理装置300を構成する複数の処理実行部材は、例えば、基板Wを回転させるスピンモータSM、基板Wに供給されるエッチング液を温めるためのヒータ、基板Wに供給されるエッチング液の流量を調整するニードルバルブを含む。ステップS32においては、処理対象に選択された処理実行部材に関連するパラメータが選択される。例えば、処理対象に選択された処理実行部材がスピンモータSMである場合、パラメータγ3,δ3,ε3,ξ3が選択され、処理対象に選択された処理実行部材がヒータである場合、パラメータγ1,δ1,ε1,ξ1が選択され、処理対象に選択された処理実行部材がニードルバルブである場合、パラメータγ2,δ2,ε2,ξ2が選択される。
【0108】
次のステップS33においては、CPU101は、ステップS32で選択した処理実行部材に関連するパラメータを分析し、処理をステップS34に進める。ステップS32で処理対象に選択された処理実行部材に関連するパラメータの経時変化量に基づいて選択された処理実行部材の経時変化の有無が分析される。具体的には、ステップS32で処理対象に選択された処理実行部材に関連するパラメータの経時変化量に基づいて経時変化の有無が判定される。この判定については、前回生成された予測アルゴリズムのパラメータと最新の予測アルゴリズムのパラメータとの差分が所定のしきい値とが比較される。差分がしきい値以上の場合に選択された部品の経時変化が有りと判定される。また、過去3回以上のパラメータ履歴データを用いて、経時変化の有無を判定してもよい。さらに、過去のパラメータの変動傾向から将来の経時変化を予測してもよい。
【0109】
ステップS34において、分析結果により処理が分岐する。処理対象に選択された処理実行部材に経時変化が有りと判定された場合、処理はステップS35に進むが、そうでなければ処理はステップS38に進む。ステップS35においては、CPU101は、基板処理装置300から、処理対象に選択された処理実行部材に対する実績動作量を取得する。処理対象に選択された処理実行部材がスピンモータSMである場合、実績動作量は、スピンモータSMの実績回転数Rrである。処理対象に選択された処理実行部材が基板Wに供給されるエッチング液が流れる配管を温めるためのヒータである場合、実績動作量は、ヒータの実績温度Trである。処理対象に選択された処理実行部材が基板Wに供給されるエッチング液の流量を調整するニードルバルブである場合、実績動作量は、ニードルバルブの実績流量Drである。
【0110】
ステップS36においては、CPU101は操作量を決定し、処理をステップS37に進める。ここでは、ステップ35で取得された実績動作量と処理条件とを用いて、処理対象に選択された処理実行部材に対する新たな操作量を決定する。具体的には、処理対象に選択された処理実行部材がスピンモータSMである場合、上述した式(20)が定数kを一定の値とした状態で成立するスピンモータSMのゲインAの値をスピンモータSMの新たな操作量として決定する。また、処理対象に選択された部品がヒータである場合、上述した式(21)が定数kを一定の値とした状態で成立するヒータのゲインBの値をヒータの新たな操作量として決定する。また、処理対象に選択された部品がニードルバルブである場合、上述した式(22)が定数kを一定の値とした状態で成立するニードルバルブのゲインCの値をニードルバルブの新たな操作量として決定する。
【0111】
次のステップS37においては、ステップS36で決定された新たな操作量が基板処理装置300に送信される。CPU101は、入出力I/F107を制御して、新たな操作量を基板処理装置300に設定させるコマンドを送信する。基板処理装置300の制御装置10は、分析装置100から新たな操作量を設定するコマンド受信する場合、その操作量で、設定操作量を更新する。
【0112】
次のステップS38においては、ステップS32において処理対象に選択されていない処理実行部材が存在するか否かが判定される。未選択の処理実行部材が存在すると判定されたならば処理はステップS32に戻るが、未選択の部品が存在しないと判定されたならば処理は分析処理に戻る。これにより、基板処理装置300が備える予め定められた複数の処理実行部材のすべてに対して、ステップS32~ステップS38が実行される。
【0113】
(4)実施の形態の効果
上記実施の形態の分析装置100によれば、基板処理装置300で実行される処理の処理条件と処理結果とに基づいて回帰式G(x)のパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4が更新される。それにより、任意の時点に取得された処理条件および処理結果に基づいて回帰式G(x)のパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4を更新することができる。また、回帰式G(x)は、基板処理装置300により実行される処理条件に含まれる少なくとも1つの条件に用いられる変数を説明変数とするので、更新されたパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4は、処理を実行する間に経時変化する基板処理装置300の更新時の状態を示す。このため、任意の時点における基板処理装置300の状態を分析することが可能な分析装置100を提供することができる。
【0114】
また、分析部は更新されたパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4の経時変化量に基づいて基板処理装置300の状態を分析するので、処理を実行する間に変化する基板処理装置300の状態の経時変化を検出することが可能になる。
【0115】
さらに、基板処理装置300の状態に基づいて基板処理装置300の設定操作量が調整されるので、使用者が基板処理装置300の設定操作量を直接的に変更する操作する必要がなくなり、使用者の負担を軽減することが可能になる。
【0116】
(5)他の実施の形態
(5-1)上記実施の形態において、分析部220が、新たな操作量を設定するコマンドを基板処理装置300に送信するようにしたが、分析装置100が備える表示装置106に新たな操作量を表示することによりユーザーに通知してもよい。ユーザーは、表示装置106に表示された新たな操作量で、基板処理装置300に設定された設定操作量を更新することができるので、基板処理装置300のメンテナンス作業が容易になる。また、前回生成された予測アルゴリズムのパラメータと最新の予測アルゴリズムのパラメータとの差分が所定のしきい値以上の場合に、その部品に経時変化が認められることを分析部220が表示装置106に表示させてもよい。この場合、ユーザーに部品の問題を提示することができるので、被膜の処理の予測精度を担保することができる。
【0117】
(5-2)上記実施の形態において、分析部220の分析結果に基づいて、操作量決定部230が基板処理装置300に対して新たな操作量を送信する例が記載されるが本発明はこれに限定されない。例えば、分析装置100が操作量決定部230および操作量取得部240を有さずに、分析部220の分析結果が表示装置106に表示されてもよい。この場合、基板処理装置300の状態を通知することが可能になるので、基板処理装置300の基板Wの処理不良を未然に抑制することができる。また、使用者が基板処理装置300のメンテナンスすべき時期を容易に把握することが可能になる。
【0118】
(5-3)上記実施の形態の分析装置100においては、基板処理ユニットWU1を構成する部品の経時変化を検出する例が記載されているが、本発明は、これに限定されない。基板処理ユニットWU1~WU4それぞれのパラメータα1~α3,β1~β3、パラメータγ1~γ4,δ1~δ4,ε1~ε4,ξ1~ξ4およびパラメータν1~ν4を比較することにより基板処理ユニットWU1~WU4間の機差を検出してもよい。この場合、分析部220は、基板処理ユニットWU1~WU4間の同一のパラメータを統計処理することにより、基板処理ユニットWU1~WU4間における部品の機差を検出してもよい。例えば、基板処理ユニットWU1~WU4間で、同一のパラメータの平均および/または分散を用いて分析してもよい。この場合、基板処理ユニットWU1~WU4間の部品の機差を検出することが可能になるので、部品の機差に起因する被膜の処理の誤差を抑制することが可能になる。また、一の基板処理ユニットの部品と、他の基板処理ユニットの部品との機差を比較することができるので、各基板処理ユニットにおける異常を予測することが可能になる。
【0119】
(5-4)上記実施の形態の分析装置100においては、予測アルゴリズムが有する複数のパラメータそれぞれの時系列的な変化量に基づいて処理実行部材の状態の変化を検出する例として、第1予測アルゴリズムが前回生成された時点のパラメータの値と第1予測アルゴリズムが今回生成された時点の値とを比較する例が記載されるが、本発明はこれに限定されない。分析装置100においては、任意の時点に生成された第1予測アルゴリズムの各パラメータの値と更新時に生成された予測アルゴリズムの各パラメータの値とを比較することにより、処理実行部材の状態の変化を検出してもよい。任意の時点は、例えば、基板処理装置300が設定された後に最初に予測アルゴリズムが生成された時点、処理実行部材が交換された後に最初に予測アルゴリズムが生成された時点、または、複数の時点で予測アルゴリズムが生成されている場合は、ユーザーにより指定された時点のいずれであってもよい。また、異なる2つの時点におけるパラメータの値を比較するのに代えて、または、その比較とともに、3以上の時点にけるパラメータの変化の割合を、しきい値と比較することにより、処理実行部材の状態の変化を検出してもよい。
【0120】
(6)実施の形態の総括
(第1項) 本発明の一態様に係る分析装置は、
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得部と、
前記データ取得部によって取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新部と、
前記パラメータ更新部で更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析部と、を備える。
【0121】
第1項に記載の分析装置によれば、基板処理装置で実行される処理の処理条件と処理結果とに基づいて回帰式のパラメータが更新される。回帰式は、基板処理装置により実行される処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とするので、更新されたパラメータは、処理を実行する間に経時変化する基板処理装置の更新時の状態を示す。このため、パラメータが更新された時点の基板処理装置の状態が検出される。その結果、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析装置を提供することができる。
【0122】
(第2項) 第1項に記載の分析装置において、
前記分析部は、前記回帰式の前記パラメータの経時変化量に基づいて、前記基板処理装置の状態を分析してもよい。
【0123】
第2項に記載の分析装置によれば、分析部は回帰式のパラメータの経時変化量に基づいて基板処理装置の状態が分析されるので、基板処理装置が処理を実行する間に変化する基板処理装置の状態の経時変化を検出することが可能になる。
【0124】
(第3項) 第1項または第2項に記載の分析装置において、
前記基板処理装置は、前記処理の一部を実行する処理実行部材と、
前記処理実行部材の動作を予め設定された設定操作量に従って制御する駆動制御部材と、を有し、
前記分析装置は、
前記パラメータ更新部により更新された前記回帰式の前記パラメータに基づき、前記操作量を決定する操作量決定部を、さらに備えてもよい。
【0125】
第3項に記載の分析装置によれば、回帰式の前記パラメータに基づいて基板処理装置の設定操作量が調整されるので、使用者が基板処理装置を直接的に操作する必要がなくなり、使用者の負担を軽減することが可能になる。
【0126】
(第4項) 第3項に記載の分析装置において、
前記分析部による分析結果は、前記基板処理装置の状態の経時変化量の検出結果を含み、
前記操作量決定部は、前記経時変化量が所定のしきい値以上である場合に、前記操作量を決定してもよい。
【0127】
第4項に記載の分析装置によれば、基板処理装置の状態の経時変化量が所定のしきい値以上の場合に、基板処理装置に設定操作量として設定されている操作量が決定される。したがって、経時変化する基板処理装置の状態に適した操作量を設定することが可能になる。
【0128】
(第5項) 第3項または第4項に記載の分析装置において、
前記操作量決定部は、前記操作量を決定することに応じて、前記基板処理装置に設定されている前記設定操作量を前記操作量で更新してもよい。
【0129】
第5項に記載の分析装置によれば、基板処理装置の状態の経時変化量が所定のしきい値以上の場合に、基板処理装置に設定されている設定操作量が決定された操作量で更新される。したがって、経時変化する基板処理装置の状態に適した設定操作量で基板処理装置を動作させることが可能になる。
【0130】
(第6項) 第1項~第5項のいずれかに記載の分析装置において、
前記基板処理装置は複数あり、
前記分析部は、複数の前記基板処理装置ごとに前記基板処理装置の状態を分析してもよい。
【0131】
第6項に記載の分析装置によれば、複数の基板処理装置ごとに基板処理装置の状態が分析されるので、複数の基板処理装置それぞれの状態の経時変化を検出することが可能になる。
【0132】
(第7項) 第1項~第6項のいずれかに記載の分析装置において、
前記基板処理装置は複数あり、
前記分析部は、複数の前記基板処理装置間で状態を分析してもよい。
【0133】
第7項に記載の分析装置によれば、複数の基板処理装置それぞれの状態が比較されるので、複数の基板処理装置間の機差を把握することが可能になる。
【0134】
(第8項) 第1項~第7項のいずれかに記載の分析装置は、
前記分析部で分析された前記基板処理装置の状態を通知する通知部を、さらに備えてもよい。
【0135】
第8項に記載の分析装置によれば、基板処理装置の状態が通知されるので、使用者に、基板処理装置のメンテナンスを支援する情報を提供することが可能になる。
【0136】
(第9項) 本発明の他の態様に係る分析方法は、
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、
前記パラメータ更新ステップにおいて更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、を備える。
【0137】
第9項に記載の分析方法によれば、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析方法を提供することができる。
【0138】
(第10項) 本発明の他の態様に係る分析プログラムは、
基板処理装置で実行される処理の処理条件と、当該処理の処理結果を取得するデータ取得ステップと、
前記データ取得ステップにおいて取得された前記処理条件と前記処理結果とに基づき、前記処理条件に含まれる少なくとも1つの条件で用いられる変数を説明変数とし、前記処理結果の推定値を算出する回帰式のパラメータを更新するパラメータ更新ステップと、
前記パラメータ更新ステップにおいて更新された前記パラメータに基づき、前記基板処理装置の状態を分析する分析ステップと、をコンピューターに実行させる。
【0139】
第10項に記載の分析プログラムによれば、経時変化する基板処理装置の任意の時点における状態を検出することが可能な分析プログラムを提供することができる。
【符号の説明】
【0140】
1…基板処理システム,10…制御装置,100…分析装置,110…データ取得部,120…蓄積データ生成部,130…パラメータ更新部,140…処理条件決定部,150…予測部,160…評価部,170…処理条件送信部,210…パラメータ履歴生成部,220…分析部,221…データ取得部,230…操作量決定部,240…操作量取得部,300…基板処理装置,301…ノズル移動機構,303…ノズルモータ,305…ノズルアーム,311…表面ノズル,SC…スピンチャック,SM…スピンモータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8