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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137200
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電界効果トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240927BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/78 652H
H01L29/78 652J
H01L29/78 652T
H01L29/78 653A
H01L29/78 652F
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048629
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 龍太
(57)【要約】
【課題】 トレンチ下層とp型ディープ層を有する電界効果トランジスタにおいて、オン抵抗を低減する。
【解決手段】 電界効果トランジスタであって、トレンチ下層がトレンチの下部に配置されている。p型ディープ層が、上側から半導体基板を見たときにトレンチに対して交差する第1方向に沿って伸びており、第1方向に対して直交する第2方向に沿って間隔を空けて配置されている。ドレイン側n型層が、ボディ層の下面に接する位置から各p型ディープ層の間の各間隔を通って各p型ディープ層の下端よりも下側の位置まで分布している。ドレイン側n型層が、高濃度層と、中濃度層を有する。高濃度層が、各p型ディープ層と各トレンチ下層の両方が存在する深さ範囲の少なくとも一部に分布している。中濃度層が、高濃度層の下端と各p型ディープ層の下端の間の深さ範囲の少なくとも一部に分布している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電界効果トランジスタであって、
上面に複数のトレンチ(14)が設けられた半導体基板(12)と、
前記各トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜(16)と、
前記各トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(18)と、
前記半導体基板の上面に接するソース電極(22)、
を有し、
前記半導体基板が、
前記ソース電極に接しており、前記各トレンチの側面で前記ゲート絶縁膜に接するn型のソース層(30)と、
前記ソース層よりも下側で前記ゲート絶縁膜に接するp型のボディ層(34)と、
p型の複数のトレンチ下層(35)と、
複数のp型ディープ層(36)と、
ドレイン側n型層(42)、
を有し、
前記各トレンチ下層が、対応する前記トレンチの下部に配置されており、上側から前記半導体基板を見たときに前記トレンチの長手方向に沿って伸びており、前記ソース電極に電気的に接続されており、
前記各p型ディープ層が、前記ボディ層の下部に配置されており、前記各トレンチ下層の下端よりも上側の位置から前記各トレンチ下層の下端よりも下側の位置まで伸びており、上側から前記半導体基板を見たときに前記トレンチに対して交差する第1方向に沿って伸びており、前記各トレンチ下層と交差しており、上側から前記半導体基板を見たときに前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って間隔を空けて配置されており、前記ソース電極に電気的に接続されており、
前記ドレイン側n型層が、前記ボディ層の下面に接する位置から前記各p型ディープ層の間の各間隔(39a)を通って前記各p型ディープ層の下端よりも下側の位置まで分布しており、前記ボディ層よりも下側で前記ゲート絶縁膜に接しており、
前記ドレイン側n型層が、
n型の高濃度層(37)と、
前記高濃度層の下部に配置されており、前記高濃度層よりも低いn型不純物濃度を有するn型の中濃度層(38)と、
前記中濃度層の下部に配置されており、前記中濃度層よりも低いn型不純物濃度を有するn型のドリフト層(39)、
を有し、
前記高濃度層が、前記各p型ディープ層と前記各トレンチ下層の両方が存在する深さ範囲の少なくとも一部に分布しており、前記各トレンチ下層の側面と前記各p型ディープ層の側面に接しており、
前記中濃度層が、前記高濃度層の下端と前記各p型ディープ層の下端の間の深さ範囲の少なくとも一部に分布しており、前記各p型ディープ層の側面に接している、
電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記各p型ディープ層が、前記各トレンチの下端よりも上側の位置から前記各トレンチ下層の下端よりも下側の位置まで伸びており、
前記高濃度層が、前記中濃度層よりも高いn型不純物濃度を有する第1層(37a)と、前記第1層よりも高いn型不純物濃度を有する第2層(37b)、を有し、
前記第2層が、前記各トレンチの下端よりも上側に配置されており、
前記第1層が、前記第2層の下端と前記中濃度層の上端の間に配置されている、
請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記各トレンチ下層のp型不純物濃度が、前記各p型ディープ層のp型不純物濃度よりも高い、請求項1または2に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記電界効果トランジスタに飽和電流が流れている状態において、前記各p型ディープ層内に非空乏化領域が残存する、請求項3に記載の電界効果トランジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、電界効果トランジスタに関する。
【0002】
特許文献1には、トレンチゲート型の電界効果トランジスタが開示されている。この電界効果トランジスタは、複数のp型のトレンチ下層と複数のp型ディープ層を有している。各トレンチ下層は、対応するトレンチの下部に配置されている。各p型ディープ層は、ボディ層の下部に配置されている。各p型ディープ層は、上側から半導体基板を見たときにトレンチ及びトレンチ下層に対して交差するように伸びている。複数のp型ディープ層は、その幅方向に間隔を開けて配置されている。各間隔内に、n型層が設けられている。トレンチ下層及びp型ディープ層の下側に、n型ドリフト層が配置されている。この構造によれば、電界効果トランジスタの耐圧を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-140217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電界効果トランジスタにおいては、トレンチ下層及びp型ディープ層に隣接するn型層(すなわち、トレンチ下層及びp型ディープ層の間隔に設けられたn型層)が電流経路となる。電界効果トランジスタのオン状態においては、トレンチ下層及びp型ディープ層からn型層に空乏層が伸びることで、n型層内の電流経路が狭められる。この部分で電流経路が狭くなるため、電界効果トランジスタのオン抵抗低減に限界があった。例えば、微細化のためにトレンチの間隔(すなわち、トレンチ下層の間隔)を狭くすると、トレンチ下層の間のn型層の幅も狭くなり、オン抵抗が高くなる。本明細書では、トレンチ下層とp型ディープ層を有する電界効果トランジスタにおいて、オン抵抗をより低減する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する電界効果トランジスタは、上面に複数のトレンチが設けられた半導体基板と、前記各トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、前記各トレンチ内に配置されているとともに前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極と、前記半導体基板の上面に接するソース電極、を有する。前記半導体基板が、前記ソース電極に接しているとともに前記各トレンチの側面で前記ゲート絶縁膜に接するn型のソース層と、前記ソース層よりも下側で前記ゲート絶縁膜に接するp型のボディ層と、p型の複数のトレンチ下層と、複数のp型ディープ層と、ドレイン側n型層、を有する。前記各トレンチ下層が、対応する前記トレンチの下部に配置されており、上側から前記半導体基板を見たときに前記トレンチの長手方向に沿って伸びており、前記ソース電極に電気的に接続されている。前記各p型ディープ層が、前記ボディ層の下部に配置されており、前記各トレンチ下層の下端よりも上側の位置から前記各トレンチ下層の下端よりも下側の位置まで伸びており、上側から前記半導体基板を見たときに前記トレンチに対して交差する第1方向に沿って伸びており、前記各トレンチ下層と交差しており、上側から前記半導体基板を見たときに前記第1方向に対して直交する第2方向に沿って間隔を空けて配置されており、前記ソース電極に電気的に接続されている。前記ドレイン側n型層が、前記ボディ層の下面に接する位置から前記各p型ディープ層の間の各間隔を通って前記各p型ディープ層の下端よりも下側の位置まで分布しており、前記ボディ層よりも下側で前記ゲート絶縁膜に接している。前記ドレイン側n型層が、n型の高濃度層と、前記高濃度層の下部に配置されているとともに前記高濃度層よりも低いn型不純物濃度を有するn型の中濃度層と、前記中濃度層の下部に配置されているとともに前記中濃度層よりも低いn型不純物濃度を有するn型のドリフト層、を有する。前記高濃度層が、前記各p型ディープ層と前記各トレンチ下層の両方が存在する深さ範囲の少なくとも一部に分布しており、前記各トレンチ下層の側面と前記各p型ディープ層の側面に接している。前記中濃度層が、前記高濃度層の下端と前記各p型ディープ層の下端の間の深さ範囲の少なくとも一部に分布しており、前記各p型ディープ層の側面に接している。
【0006】
なお、本明細書において、「下部」は上側から見たときに対象物と重なる範囲内であって対象物よりも下側の位置を意味する。例えば、トレンチの下部に配置されているトレンチ下層は、上側からみたときにトレンチと重なる範囲内であってトレンチよりも下側の位置に配置されている。トレンチ下層は、トレンチに接していても、トレンチから間隔を空けてトレンチよりも下側に配置されていてもよい。また、ボディ層の下部に配置されているp型ディープ層は、上側からみたときにボディ層と重なる範囲内であってボディ層よりも下側の位置に配置されている。p型ディープ層は、ボディ層に接していても、ボディ層から間隔を空けてボディ層よりも下側に配置されていてもよい。
【0007】
また、上記の「ソース層」は、複数のn型層によって構成されていてもよい。
【0008】
また、上記の「高濃度層」は、各p型ディープ層の上端と各トレンチ下層の下端の間の深さ範囲の少なくとも一部に分布していれば、当該深さ範囲内のみに分布していても当該深さ範囲の外側まで分布していてもよい。
【0009】
また、上記の「中濃度層」は、高濃度層の下端と各p型ディープ層の下端の間の深さ範囲の少なくとも一部に分布していれば、当該深さ範囲内のみに分布していても当該深さ範囲の外側まで分布していてもよい。
【0010】
この電界効果トランジスタでは、トレンチ下層の下端がp型ディープ層の下端よりも上側に位置している。したがって、トレンチ下層の下端よりも下側の深さ範囲では、p型ディープ層の間に位置するドレイン側n型層内の電流経路が広く、当該電流経路の抵抗が低い。また、p型ディープ層とトレンチ下層の両方が存在する深さ範囲内のドレイン側n型層には高濃度層が設けられているので、この深さ範囲内でもドレイン側n型層内の電流経路の抵抗は低い。このように、トレンチ下層とp型ディープ層の間隔内では、いずれの深さ範囲でも、ドレイン側n型層内の電流経路の抵抗が低い。これによって、電界効果トランジスタのオン抵抗が低減される。また、p型ディープ層の下端がトレンチ下層の下端よりも上側に存在しているので、p型ディープ層の下端周辺に電界が集中し易い。しかしながら、p型ディープ層に隣接する位置にn型不純物濃度が比較的低い中濃度層が設けられているので、p型ディープ層の下端周辺における電界集中が抑制される。また、トレンチ下端に設けられたゲート絶縁膜に対する電界は、トレンチ下層によって緩和される。トレンチ下層の周辺の高濃度層には空乏層が伸展し難いが、トレンチ下層の下端よりも下側までディープp層が伸びているので、トレンチ下端には高い電界が生じ難い。したがって、トレンチ下層から高濃度層に空乏層が伸展し難くても、トレンチ下端のゲート絶縁膜に対する電界を十分に抑制できる。したがって、この電界効果トランジスタの構造によれば、十分な耐圧を確保しながら、従来よりも低いオン抵抗を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のMOSFETの断面斜視図(p型ディープ層36を含まないxz断面を示す図)。
図2】実施例1のMOSFETのソース電極22と層間絶縁膜20を省略した断面斜視図(p型ディープ層36を含まないxz断面を示す図)。
図3】実施例1のMOSFETの断面斜視図(p型ディープ層36を含むxz断面を示す図)。
図4】トレンチ14、p型ディープ層36及び高濃度層37を含む位置におけるxy断面を上側から見た断面図。
図5】トレンチ下層35、p型ディープ層36及び高濃度層37を含む位置におけるxy断面を上側から見た断面図。
図6】トレンチ下層35よりも下側のp型ディープ層36及び中濃度層38を含む位置におけるxy断面を上側から見た断面図。
図7】xz断面においてオフ状態におけるトレンチ下層35内の非空乏化領域の分布を示す断面図。
図8】xy断面において短絡状態におけるトレンチ下層35及びp型ディープ層36内の非空乏化領域の分布を示す断面図。
図9】実施例1のMOSFETの製造方法の説明図。
図10】実施例1のMOSFETの製造方法の説明図。
図11】実施例1のMOSFETの製造方法の説明図。
図12】第1変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図13】第2変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図14】第3変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図15】第4変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図16】第5変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図17】第6変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図18】第7変形例のMOSFETの図1に対応する断面斜視図。
図19】第8変形例のMOSFETのトレンチ周辺の断面図。
図20】第9変形例のMOSFETのトレンチ周辺の断面図。
図21】第10変形例のMOSFETのトレンチ周辺の断面図。
図22】実施例2のMOSFETの断面斜視図(図1に対応する斜視図)。
図23】実施例2のMOSFETの製造方法の説明図。
図24】実施例2のMOSFETの製造方法の説明図。
図25】実施例2のMOSFETの製造方法の説明図。
図26】実施例2のMOSFETの製造方法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書が開示する一例の電界効果トランジスタでは、前記各p型ディープ層が、前記各トレンチの下端よりも上側の位置から前記各トレンチ下層の下端よりも下側の位置まで伸びていてもよい。前記高濃度層が、前記中濃度層よりも高いn型不純物濃度を有する第1層と、前記第1層よりも高いn型不純物濃度を有する第2層、を有していてもよい。前記第2層が、前記各トレンチの下端よりも上側に配置されていてもよい。前記第1層が、前記第2層の下端と前記中濃度層の上端の間に配置されていてもよい。
【0013】
この構成によれば、高い耐圧を確保しながらオン抵抗をさらに低減することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の電界効果トランジスタでは、前記各トレンチ下層のp型不純物濃度が、前記各p型ディープ層のp型不純物濃度よりも高くてもよい。
【0015】
この構成によれば、電界効果トランジスタの帰還容量を低減できる。
【0016】
本明細書が開示する一例の電界効果トランジスタでは、前記電界効果トランジスタに飽和電流が流れている状態において、前記各p型ディープ層内に非空乏化領域が残存してもよい。
【0017】
この構成によれば、ドレイン側n型層がより空乏化し易くなる。したがって、負荷短絡時に電流経路を閉塞し易く、飽和電流を低減できる。
【実施例0018】
図1~3に示す実施例1のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field effect transistor)は、半導体基板12を有している。以下では、半導体基板12の厚み方向をz方向といい、半導体基板12の上面12aに平行な一方向(z方向に直交する一方向)をx方向といい、x方向及びz方向に直交する方向をy方向という。半導体基板12は、炭化シリコン(すなわち、SiC)により構成されている。なお、半導体基板12がシリコン、窒化ガリウム等の他の半導体材料により構成されていてもよい。半導体基板12の上面12aには、複数のトレンチ14が設けられている。図2に示すように、複数のトレンチ14は、上面12aにおいて、y方向に沿って長く伸びている。複数のトレンチ14は、x方向に間隔を開けて配置されている。
【0019】
図1~3に示すように、各トレンチ14の内面(すなわち、側面と底面)は、ゲート絶縁膜16によって覆われている。各トレンチ14内に、ゲート電極18が配置されている。各ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極18の上面は、層間絶縁膜20によって覆われている。半導体基板12の上部に、ソース電極22が設けられている。ソース電極22は、各層間絶縁膜20を覆っている。ソース電極22は、層間絶縁膜20によってゲート電極18から絶縁されている。ソース電極22は、層間絶縁膜20が存在しない位置で、半導体基板12の上面12aに接している。半導体基板12の下部には、ドレイン電極24が配置されている。ドレイン電極24は、半導体基板12の下面12bの全域に接している。
【0020】
半導体基板12は、複数のソース層30、複数のコンタクト層32、ボディ層34、複数のトレンチ下層35、複数のp型ディープ層36、及び、ドレイン側n型層42を有している。
【0021】
各ソース層30は、高いn型不純物濃度を有するn型層である。各ソース層30は、半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に配置されている。各ソース層30は、ソース電極22にオーミック接触している。各ソース層30は、トレンチ14の側面の最上部において、ゲート絶縁膜16に接している。各ソース層30は、ゲート絶縁膜16を介してゲート電極18に対向している。各ソース層30はトレンチ14の側面に沿ってy方向に長く伸びている。
【0022】
各コンタクト層32は、高いp型不純物濃度を有するp型層である。各コンタクト層32は、半導体基板12の上面12aを部分的に含む範囲に配置されている。各コンタクト層32は、対応する2つのソース層30の間に配置されている。各コンタクト層32は、ソース電極22にオーミック接触している。各コンタクト層32は、y方向に長く伸びている。
【0023】
ボディ層34は、コンタクト層32よりも低いp型不純物濃度を有するp型層である。ボディ層34は、複数のソース層30及び複数のコンタクト層32の下部に配置されている。ボディ層34は、複数のソース層30及び複数のコンタクト層32に対して下側から接している。ボディ層34は、ソース層30の下側に位置するトレンチ14の側面で、ゲート絶縁膜16に接している。ボディ層34は、ゲート絶縁膜16を介してゲート電極18に対向している。
【0024】
各トレンチ下層35は、対応するトレンチ14の下部に配置されているp型層である。各トレンチ下層35は、対応するトレンチ14の底面に接する位置に配置されている。すなわち、各トレンチ下層35は、対応するトレンチ14の底面においてゲート絶縁膜16に接している。図5に示すように半導体基板12を上側から見たときに、各トレンチ下層35はy方向に沿って長く伸びている。すなわち、各トレンチ下層35は、対応するトレンチ14の底面に沿ってy方向に長く伸びている。各トレンチ下層35のp型不純物濃度は、ボディ層34のp型不純物濃度よりも高く、コンタクト層32のp型不純物濃度よりも低い。各トレンチ下層35のp型不純物濃度は、各p型ディープ層36のp型不純物濃度よりも高い。
【0025】
図1~3に示すように、各p型ディープ層36は、ボディ層34の下面から下側に突出しているp型層である。複数のp型ディープ層36は、y方向に間隔を開けて配置されている。各p型ディープ層36は、yz断面において、z方向に長い形状を有している。すなわち、p型ディープ層36のz方向における寸法は、p型ディープ層36のy方向における寸法よりも大きい。各p型ディープ層36は、ボディ層34の下面から各トレンチ下層35の下端よりも下側の深さまで伸びている。図4~6に示すように半導体基板12を上側から見たときに、各p型ディープ層36は、x方向に長く伸びている。図4に示すように半導体基板12を上側から見たときに、各p型ディープ層36は各トレンチ14と交差している。各p型ディープ層36は、ボディ層34の下側に位置するトレンチ14の側面でゲート絶縁膜16に接している。図5に示すように半導体基板12を上側から見たときに、各p型ディープ層36は各トレンチ下層35と交差している。各p型ディープ層36は、トレンチ下層35との交差部において、トレンチ下層35に接続されている。各p型ディープ層36のp型不純物濃度は、ボディ層34のp型不純物濃度よりも高く、コンタクト層32のp型不純物濃度よりも低い。
【0026】
各p型ディープ層36は、ボディ層34に対して下側から接している。したがって、各p型ディープ層36は、ボディ層34とコンタクト層32を介してソース電極22に電気的に接続されている。また、上述したように、トレンチ下層35とp型ディープ層36との交差部において、トレンチ下層35はp型ディープ層36に接続されている。したがって、各トレンチ下層35は、p型ディープ層36、ボディ層34及びコンタクト層32を介してソース電極22に電気的に接続されている。
【0027】
図4は、トレンチ14とp型ディープ層36の両方が存在する深さ範囲R1のxy平面に沿う断面を示している。図5は、トレンチ下層35とp型ディープ層36の両方が存在する深さ範囲R2のxy平面に沿う断面を示している。また、図6は、トレンチ下層35の下端より下側かつp型ディープ層36の下端より上側の深さ範囲R3のxy平面に沿う断面を示している。図4~6に示すように、深さ範囲R1、R2、R3内では、複数のp型ディープ層36がy方向に間隔を空けて配置されている。以下では、p型ディープ層36どうしの間の間隔を、間隔部39aという。図4に示すように、深さ範囲R1内では、トレンチ14とp型ディープ層36が格子状に伸びている。このため、各間隔部39a内に、トレンチ14とp型ディープ層36によって区画された複数の矩形領域39sが形成されている。図5に示すように、深さ範囲R2内では、トレンチ下層35とp型ディープ層36が格子状に伸びている。このため、各間隔部39a内に、トレンチ下層35とp型ディープ層36によって区画された複数の矩形領域39tが形成されている。
【0028】
図1、2に示すように、ドレイン側n型層42は、ドレイン電極24に接しているn型層である。ドレイン側n型層42は、ボディ層34の下面に接する位置から間隔部39aを通って半導体基板12の下面12bまで分布している。ドレイン側n型層42は、ボディ層34の下側に位置するトレンチ14の側面でゲート絶縁膜16に接している。ドレイン側n型層42は、高濃度層37、中濃度層38、ドリフト層39及びドレイン層40を有している。中濃度層38のn型不純物濃度は、ドリフト層39のn型不純物濃度よりも高い。高濃度層37のn型不純物濃度は、中濃度層38のn型不純物濃度よりも高い。ドレイン層40のn型不純物濃度は、高濃度層37のn型不純物濃度よりも高い。
【0029】
高濃度層37は、ボディ層34の下部に配置されている。高濃度層37は、ボディ層34の下端から各トレンチ下層35の下端よりも下側の位置までの深さ範囲に分布している。したがって、図4、5に示すように、高濃度層37は深さ範囲R1及び深さ範囲R2内に分布している。図1~3に示すように、高濃度層37は、各間隔部39a内に配置されている。高濃度層37は、ボディ層34の下面に接している。図4に示すように、深さ範囲R1内では、高濃度層37は矩形領域39s内に配置されている。高濃度層37は、トレンチ14の側面でゲート絶縁膜16に接している。図5に示すように、深さ範囲R2内では、高濃度層37は矩形領域39t内に配置されている。高濃度層37は、各トレンチ下層35の側面に接している。図4、5に示すように、深さ範囲R1、R2内では、高濃度層37は、各p型ディープ層36の側面に接している。図1に示すように、高濃度層37は、トレンチ下層35の下面に接している。
【0030】
図1~3に示すように、中濃度層38は、高濃度層37の下部に配置されている。中濃度層38は、高濃度層37の下端から各p型ディープ層36の下端よりも下側の位置までの深さ範囲に分布している。したがって、図6に示すように、中濃度層38は深さ範囲R3内に分布している。図1、6に示すように、中濃度層38は、各間隔部39a内に配置されている。中濃度層38は、高濃度層37の下面に接している。中濃度層38は、各p型ディープ層36の側面と下面に接している。
【0031】
ドリフト層39は、中濃度層38の下部に配置されている。ドリフト層39は、複数のp型ディープ層36と複数の間隔部39aの下部に跨って分布している。ドリフト層39は、中濃度層38の下面に接している。
【0032】
ドレイン層40は、ドリフト層39の下部に配置されている。ドレイン層40は、ドリフト層39の下端から半導体基板12の下面12bまでの深さ範囲に分布している。ドレイン層40は、ドリフト層39の下面に接している。ドレイン層40は、ドレイン電極24にオーミック接触している。
【0033】
次に、実施例1のMOSFETの動作について説明する。通常時は、MOSFETは、ドレイン電極24にソース電極22よりも高い電位が印加された状態で使用される。各ゲート電極18にゲート閾値以上の電位が印加されると、ゲート絶縁膜16の近傍のボディ層34にチャネルが形成される。チャネルによって、ソース層30と高濃度層37が接続される。このため、ソース層30からチャネル、高濃度層37、中濃度層38、ドリフト層39を経由してドレイン層40へ電子が流れる。すなわち、MOSFETがオンする。各ゲート電極18の電位をゲート閾値以上の値からゲート閾値未満の値へ引き下げると、チャネルが消失し、電子の流れが停止する。すなわち、MOSFETがオフする。
【0034】
次に、MOSFETがオンするときの動作について、より詳細に説明する。上記の通り、MOSFETがオンすると、ソース層30からチャネル、高濃度層37、中濃度層38、ドリフト層39を経由してドレイン層40へ電子が流れる。したがって、高濃度層37と中濃度層38は電流経路の一部を構成している。また、MOSFETのオン状態においては、ビルトインポテンシャルによって、p型ディープ層36及びトレンチ下層35から高濃度層37及び中濃度層38に所定幅の空乏層が伸びている。空乏層によって、高濃度層37と中濃度層38の内部の電流経路が狭められる。
【0035】
図4、5に示すように、深さ範囲R1、R2内では、各間隔部39aがトレンチ14及びトレンチ下層35によって複数の矩形領域39s、39tに分断されている。このため、図4、5に示すxy断面において高濃度層37の面積が小さい。このような高濃度層37に対してp型ディープ層36及びトレンチ下層35から空乏層が広く伸展すると、高濃度層37内の電流経路が極めて狭くなる。しかしながら、高濃度層37のn型不純物濃度が高いので、p型ディープ層36及びトレンチ下層35から高濃度層37への空乏層の伸びが抑制される。したがって、高濃度層37内に広い電流経路を確保することができる。また、高濃度層37のn型不純物濃度が高いことで、深さ範囲R1、R2内の電流経路の抵抗率が低減される。したがって、深さ範囲R1、R2内における電流経路の抵抗が低減される。
【0036】
他方、中濃度層38は高濃度層37よりも低いn型不純物濃度を有するので、p型ディープ層36及びトレンチ下層35から中濃度層38に比較的広く空乏層が伸展する。空乏層によって、中濃度層38内の電流経路が狭められる。しかし、図6に示すように、深さ範囲R3内にはトレンチ14及びトレンチ下層35が存在しない。したがって、深さ範囲R1、R2内の高濃度層37に比べて、深さ範囲R3内の中濃度層38は、xy断面において広い面積を有している。このため、空乏層によって中濃度層38内の電流経路が狭められても、中濃度層38内に広い電流経路を確保することができる。また、深さ範囲R3内にドリフト層39よりも高いn型不純物濃度を有する中濃度層38が配置されていることで、深さ範囲R3内の電流経路の抵抗率が低減される。したがって、深さ範囲R3内における電流経路の抵抗が低減される。
【0037】
以上に説明したように、実施例1によれば、間隔部39a内の電流経路の抵抗を低減することができる。したがって、実施例1のMOSFETのオン抵抗は低い。
【0038】
次に、MOSFETがオフするときの動作について、より詳細に説明する。チャネルが消失すると、ボディ層34とドレイン側n型層42との界面のpn接合に逆電圧が印加される。したがって、ボディ層34からドレイン側n型層42に空乏層が広がる。また、各p型ディープ層36は、ソース電極22に電気的に接続されており、ボディ層34と略同じ電位を有する。したがって、チャネルが消失すると、各p型ディープ層36とドレイン側n型層42との界面のpn接合にも逆電圧が印加される。したがって、各p型ディープ層36からドレイン側n型層42へも空乏層が広がる。さらに、各トレンチ下層35は、ソース電極22に電気的に接続されており、ボディ層34と略同じ電位を有する。したがって、チャネルが消失すると、各トレンチ下層35とドレイン側n型層42との界面のpn接合にも逆電圧が印加される。したがって、各トレンチ下層35からドレイン側n型層42へも空乏層が広がる。このように、ボディ層34、各p型ディープ層36及び各トレンチ下層35からドレイン側n型層42に空乏層が伸びる。高濃度層37、中濃度層38及びドリフト層39の略全体が空乏化される。ドレイン層40はほとんど空乏化されない。空乏化した高濃度層37、中濃度層38及びドリフト層39によって、ドレイン電極24とソース電極22の間に印加される高電圧が保持される。なお、トレンチ下層35とp型ディープ層36のp型不純物濃度は、MOSFETのオフ状態においてトレンチ下層35とp型ディープ層36内に非空乏化領域が残るように設定されている。これによって、高濃度層37、中濃度層38及びドリフト層39への空乏層の伸展が促進される。
【0039】
各p型ディープ層36はトレンチ下層35よりも下側(すなわち、ドリフト層39側)に突出しているので、各p型ディープ層36の下端の周辺には電界が集中し易い。しかしながら、p型ディープ層36に隣接する中濃度層38のn型不純物濃度がそれほど高くないので、MOSFETがオフするときに各p型ディープ層36の下端の周辺は比較的速く空乏化される。これによって、各p型ディープ層36の下端の周辺における電界集中が抑制される。
【0040】
各トレンチ下層35が高濃度層37に接しているので、MOSFETがオフするときに各トレンチ下層35の周辺には空乏層が伸展し難い。すなわち、MOSFETがオフするときに、各トレンチ下層35の周辺において空乏層が伸展する速度は遅い。各トレンチ下層35の周辺において空乏層の伸展が不十分であると、トレンチ14の下端部を覆うゲート絶縁膜16に高電界が加わり、ゲート絶縁膜16の絶縁性が劣化する。しかしながら、本実施例では、p型ディープ層36がトレンチ下層35よりも下側に突出しているので、p型ディープ層36の下端よりも上側の領域には高い電界が発生し難い。したがって、各トレンチ下層35の周辺において空乏層の伸展が遅くても、ゲート絶縁膜16に加わる電界を十分に抑制することができる。
【0041】
以上に説明したように、実施例1によれば、各p型ディープ層36の下端及び各トレンチ14の下端において高電界の発生を抑制できる。したがって、実施例1のMOSFETは高い耐圧を有している。
【0042】
また、図7は、MOSFETがオフしている状態におけるトレンチ下層35の状態を示している。上述したように、トレンチ下層35のp型不純物濃度は、p型ディープ層36のp型不純物濃度よりも高い。したがって、図7に示すように、MOSFETがオフしている状態において、トレンチ下層35内のトレンチ14の底面に接する範囲に比較的大きい非空乏化領域60が残存する。このようにトレンチ14の下部に非空乏化領域60が残存することで、帰還容量(すなわち、ゲート電極18とドレイン電極24の間の静電容量)が低減される。したがって、実施例のMOSFETは高速でスイッチングすることができる。また、トレンチ14の下部に非空乏化領域60が残存することで、シールド効果によってゲート絶縁膜16に加わる電界を低減できる。
【0043】
次に、実施例1のMOSFETのオン状態において、MOSFETに接続されている負荷が短絡したときの動作について説明する。負荷短絡時には、ドレイン電極24の電位がソース電極22の電位に対して極めて高くなり、MOSFETに大電流が流れる。また、負荷短絡時には、ボディ層34、p型ディープ層36及びトレンチ下層35からなるp型層とドレイン側n型層42の界面のpn接合に高い逆電圧が印加される。このため、p型層からドレイン側n型層42に空乏層が伸びる。図8は、負荷短絡時におけるp型ディープ層36及びトレンチ下層35の状態を示している。図8に示すように、負荷短絡時において、p型ディープ層36及びトレンチ下層35の中心部に非空乏化領域60が残存する。これによって、p型ディープ層36及びトレンチ下層35から高濃度層37及び中濃度層38への空乏層の伸展が促進される。このため、負荷短絡時に高濃度層37及び中濃度層38が瞬時に空乏化される。このため、負荷短絡時にMOSFETに流れる電流(いわゆる、飽和電流)が低減される。このように、p型ディープ層36及びトレンチ下層35のp型不純物濃度が、負荷短絡時にp型ディープ層36及びトレンチ下層35内に非空乏化領域60が残存する程度に高濃度に設定されていることで、飽和電流を抑制できる。
【0044】
次に、実施例1のMOSFETの製造方法について説明する。まず、図9に示すように、ドリフト層39に対するイオン注入によって、中濃度層38、高濃度層37、p型ディープ層36、ボディ層34、ソース層30及びコンタクト層32を形成する。なお、p型ディープ層36は、上面12aに対して深くp型不純物を注入することによって形成される。次に、図10に示すように、半導体基板12の上面12aをエッチングすることによって、トレンチ14を形成する。次に、図11に示すように、トレンチ14の底面にp型不純物をイオン注入することによって、トレンチ下層35を形成する。次に、図1に示すように、ゲート絶縁膜16、ゲート電極18、層間絶縁膜20、ソース電極22及びドレイン電極24を形成する。これによって、実施例1のMOSFETが完成する。
【0045】
トレンチ14を形成する際には、トレンチ14の深さにばらつきが生じる。また、トレンチ下層35を形成する際には、イオン注入深さにばらつきが生じる。したがって、トレンチ下層35の下端の位置は、トレンチ14の深さのばらつきとイオン注入深さのばらつきの両方の影響を受ける。このため、トレンチ下層35の下端のz方向における位置のばらつきは大きい。実施例1のMOSFETでは、p型ディープ層36がトレンチ下層35よりも下側に突出しているので、トレンチ下層35の下端の位置がMOSFETの耐圧にそれほど大きく影響しない。このため、トレンチ下層35の下端の位置のばらつきが大きくても、MOSFETの耐圧のばらつきはほとんど生じない。また、MOSFETの耐圧に対しては、p型ディープ層36の下端のz方向における位置が大きく影響する。上述したように、p型ディープ層36は、半導体基板12の上面12aに対してp型不純物を注入することによって形成される。したがって、トレンチ14の深さのばらつきはp型ディープ層36の下端の位置に影響しない。このため、p型ディープ層36の下端の位置のばらつきは小さい。したがって、MOSFETの耐圧のばらつきは小さい。
【0046】
次に、実施例1の変形例について説明する。
【0047】
実施例1では、p型ディープ層36の上端がボディ層34に接していた。しかしながら、図12、13に示すように、p型ディープ層36の上端がボディ層34の下面から下側に離れていてもよい。図12では、p型ディープ層36の上端が、ボディ層34の下面よりも下側であってトレンチ14の下端よりも上側の深さ範囲内に配置されている。図13では、p型ディープ層36の上端が、トレンチ14の下端よりも下側であってトレンチ下層35の下端よりも上側の深さ範囲内に配置されている。図12、13では、p型ディープ層36とボディ層34の間に、n型層(例えば、高濃度層37)が配置されている。p型ディープ層36とボディ層34の間には、部分的にp型の接続層50が設けられている。接続層50は、p型ディープ層36とボディ層34を接続している。p型ディープ層36は、接続層50、ボディ層34、コンタクト層32を介してソース電極22に電気的に接続されている。このように、p型ディープ層36の上端は、トレンチ下層35の下端よりも上側であれば、ボディ層34から離れた位置に配置されていてもよい。
【0048】
実施例1では、高濃度層37がボディ層34に接していた。しかしながら、図14、15に示すように、高濃度層37の上端がボディ層34の下面から下側に離れていてもよい。図14では、高濃度層37の上端が、ボディ層34の下面よりも下側であってトレンチ14の下端よりも上側の深さ範囲内に配置されている。図15では、高濃度層37の上端が、トレンチ14の下端よりも下側であってトレンチ下層35の下端よりも上側の深さ範囲内に配置されている。図14、15では、高濃度層37とボディ層34の間に、高濃度層37よりもn型不純物濃度が低いn型層52が配置されている。このように、トレンチ下層35とp型ディープ層36の両方が存在する深さ範囲の少なくとも一部に高濃度層37が存在していれば、高濃度層37の上端はボディ層34から離れた位置に配置されていてもよい。
【0049】
実施例1では、高濃度層37の下端(すなわち、中濃度層38の上端)がトレンチ下層35の下端よりも下側に配置されていた。しかしながら、図16に示すように、高濃度層37の下端がトレンチ下層35の上端よりも下側であってトレンチ下層35の下端よりも上側の深さ範囲内に配置されていてもよい。もしくは、高濃度層37の下端がトレンチ下層35の下端と同じ深さに配置されていてもよい。このように、トレンチ下層35とp型ディープ層36の両方が存在する深さ範囲の少なくとも一部に高濃度層37が存在していれば、高濃度層37の下端はz方向のいずれの位置に配置されていてもよい。
【0050】
実施例1では、中濃度層38の下端がp型ディープ層36の下端よりも下側に配置されていた。しかしながら、図17に示すように、中濃度層38の下端がp型ディープ層36の下端よりも上側に配置されていてもよい。もしくは、中濃度層38の下端がp型ディープ層36の下端と同じ深さに配置されていてもよい。このように、p型ディープ層36が存在するとともにトレンチ下層35が存在しない深さ範囲の少なくとも一部に中濃度層38が存在していれば、中濃度層38の下端はz方向のいずれの位置に配置されていてもよい。
【0051】
実施例1では、トレンチ下層35がトレンチ14の底面に接していた。しかしながら、図18に示すように、トレンチ下層35がトレンチ14の底面から下側に離れていてもよい。トレンチ下層35がトレンチ14の下部に配置されていれば、トレンチ下層35の上端はトレンチ14の底面から離れていてもよい。また、実施例1では、トレンチ下層35の幅がトレンチ14の幅と等しかった。しかしながら、図19に示すようにトレンチ下層35の幅がトレンチ14の幅よりも広くてもよいし、図20に示すようにトレンチ下層35の幅がトレンチ14の幅よりも狭くてもよい。また、図21に示すように、トレンチ下層35の中心とトレンチ14の中心がずれていてもよい。
【実施例0052】
図22に示す実施例2のMOSFETでは、トレンチ下層35と高濃度層37の構成が実施例1とは異なり、その他の構成は実施例1と等しい。実施例2では、トレンチ下層35の幅がトレンチ14の底面の幅よりも広い。トレンチ下層35は、トレンチ14の側面の最下部でゲート絶縁膜16に接している。また、実施例2では、高濃度層37が、第1層37aと第2層37bを有している。第1層37aは中濃度層38よりも高いp型不純物濃度を有している。第2層37bは第1層37aよりも高いp型不純物濃度を有している。第2層37bは、ボディ層34の下面に接している。第2層37bは、ボディ層34の下側でゲート絶縁膜16に接している。第2層37bの下端は、トレンチ14の下端よりも上側に配置されている。第1層37aは、第2層37bの下部に配置されている。第1層37aは、第2層37bの下面に接している。第1層37aは、トレンチ下層35の側面と下面に接している。第1層37aは、中濃度層38の上面に接している。
【0053】
実施例2のMOSFETでは、トレンチ下層35がトレンチ14の底面だけでなくトレンチ14の側面の最下部でもゲート絶縁膜16に接している。このため、トレンチ14の底面を覆うゲート絶縁膜16に加わる電界がより効果的に抑制される。
【0054】
実施例2のMOSFETがオンしている状態では、チャネルを通過した電子が第2層37bに流入する。第2層37bのn型不純物濃度が高いので、第2層37bの抵抗は低い。したがって、チャネルを通過した電子が、第2層37bに沿って横方向に拡散し易い。したがって、電子が、横方向に広い範囲に拡散した状態で第1層37a内を下側に向かって流れる。これによって、実施例2のMOSFETのオン電圧がより低減される。
【0055】
次に、実施例2のMOSFETの製造方法について説明する。まず、図23に示すように、ドリフト層39に対するイオン注入によって、中濃度層38、高濃度層37及びp型ディープ層36を形成する。なお、ここでは、高濃度層37に対するイオン注入時に、深さによってイオン注入濃度を変更することで、第1層37aと第2層37bを形成する。次に、図24に示すように、イオン注入によって、高濃度層37内にp型のトレンチ下層35を形成する。次に、図25に示すように、半導体基板12上にエピタキシャル層を形成し、形成したエピタキシャル層に対してイオン注入を行うことでボディ層34、ソース層30及びコンタクト層32を形成する。次に、図26に示すように、半導体基板12の上面12aをエッチングすることによって、トレンチ14を形成する。ここでは、トレンチ14の底面が第2層37bの下面よりも下側に位置するとともにトレンチ下層35内に含まれるように、トレンチ14の深さを調整する。次に、図22に示すように、ゲート絶縁膜16、ゲート電極18、層間絶縁膜20、ソース電極22及びドレイン電極24を形成する。これによって、実施例2のMOSFETが完成する。
【0056】
実施例2では、第2層37bがトレンチ14の下端よりも上側に存在する。したがって、第2層37bを形成するときに、トレンチ14の下端近傍の深さにn型不純物が注入されることを防止できる。このため、適切にp型のトレンチ下層35を形成することができ、トレンチ下層35によってゲート絶縁膜16に加わる電界を効果的に抑制できる。
【0057】
なお、実施例2において、図12~14、16~21のように各部の構成を変形させてもよい。
【0058】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0059】
14:トレンチ、22:ソース電極、34:ボディ層、35:トレンチ下層、36:p型ディープ層、37:高濃度層、38:中濃度層、39:ドリフト層
図1
図2
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