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特開2024-137202記録装置、記録システムおよび記録方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137202
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】記録装置、記録システムおよび記録方法
(51)【国際特許分類】
   G07C 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G07C5/00 Z
G08G1/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048632
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佃 浩司
【テーマコード(参考)】
3E138
5H181
【Fターム(参考)】
3E138AA07
3E138MA02
3E138MB02
3E138MB03
3E138MB08
3E138MB09
3E138MC01
3E138MD03
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB05
5H181BB12
5H181BB13
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC27
5H181EE02
5H181FF10
5H181FF27
(57)【要約】
【課題】証拠能力の高いデータを提供することができる記録装置、記録システムおよび記録方法を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る記録装置は、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、車両の挙動データを取得し、車両の挙動データと、動画像データとを対応付けて記録するコントローラを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、
車両の挙動データを取得し、
前記車両の挙動データと、前記動画像データとを対応付けて記録するコントローラ
を備える、記録装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記動画像データから前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの動作状況を解析し、
前記車両の挙動データと、前記動画像データから得られる前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルの動作状況に関する解析結果を対応付けて記録する、
請求項1に記載の記録装置。
【請求項3】
前記ブレーキペダルまたはアクセルペダルは、
発光体が設けられ、
前記コントローラは、
前記ブレーキペダルまたはアクセルペダルに設けられた前記発光体を撮影した動画像データを取得する、
請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記ブレーキペダルおよび前記アクセルペダルを側面側から撮影した動画像データを取得し、
前記ブレーキペダルおよび前記アクセルペダルは、
それぞれ側面に異なる色で発光する前記発光体を有する、
請求項3に記載の記録装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
タイヤの舵角、タイヤの回転数、ブレーキパッドをそれぞれ撮影した動画像データを取得する、
請求項3に記載の記録装置。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記車両に設けられた灯火機器を撮影した動画像データを取得する、
請求項1または2に記載の記録装置。
【請求項7】
前記コントローラは、
運転者の運転動作を撮影した動画像データを取得する、
請求項1に記載の記録装置。
【請求項8】
少なくとも車両の外部を撮影するカメラを有し、
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、
前記車両の外部を撮影した画像と、前記動画像データとを対応付けて記録するコントローラを備える、記録装置。
【請求項9】
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、
車両の挙動データを取得し、
前記車両の挙動データと、前記動画像データとを対応付けて記録するコントローラ
を備える、記録装置と、
前記ブレーキペダルまたは前記アクセルペダルに設置されたカメラと、
を含む記録システム。
【請求項10】
コンピュータが実行する記録方法であって、
ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、
車両の挙動データを取得し、
前記車両の挙動データと、前記動画像データとを対応付けて記録する、
記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、記録システムおよび記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の映像を記録するドライブレコーダがある。かかるドライブレコーダでは、事故などのイベント発生時の映像に加え、車載センサによって検出されたセンサデータなどの各種信号を記録する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
例えば、ドライブレコーダに記録した映像や各種信号は、例えば、裁判の証拠資料として提出され、事故の原因究明などに活用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-124927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来技術では、証拠能力の高いデータを提供するうえで改善の余地があった。例えば、事故発生時にブレーキが作動しなかった原因として、ドライバがブレーキペダルを踏んだにもかかわらず、ブレーキが作動しなかった場合、あるいは、ドライバがブレーキペダルを踏まず、ブレーキが作動しなかった場合が考えられるが、従来技術では、これらを立証することはできなかった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、証拠能力の高いデータを提供することができる記録装置、記録システムおよび記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る記録装置は、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、車両の挙動データを取得し、前記車両の挙動データと、前記動画像データとを対応付けて記録するコントローラを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、証拠能力の高いデータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、記録システムの構成例を示すブロック図である。
図2図2は、カメラの設置位置の具体例を示す図(その1)である。
図3図3は、カメラの設置位置の具体例を示す図(その2)である。
図4図4は、カメラの設置位置の具体例を示す図(その3)である。
図5図5は、カメラの設置位置の具体例を示す図(その4)である。
図6図6は、カメラの設置位置の具体例を示す図(その5)である。
図7図7は、記録装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する記録装置、記録システムおよび記録方法について説明する。なお、以下に示す実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、図1を用いて、実施形態に係る記録システムの構成例について説明する。図1は、記録システムの構成例を示すブロック図である。図1に示す記録システム1は、図示しない車両に搭載される。
【0012】
ところで、従来、ドライブレコーダにおいて、ドライブレコーダで撮影した画像データに加え、車両のアクセル、ブレーキ、ステアリングなどといった各パーツを制御する制御信号(いわゆるダイアグ)を記録する技術がある。
【0013】
例えば、ドライブレコーダに記録された各種データは、交通事故など所定のイベントが発生した場合に、その原因の解析や、証拠として用いられる。しかしながら、例えば、車両のブレーキが作動しなかったことを起因として事故が発生した場合、車両の運転者が、ブレーキペダルを踏んだにもかかわらず、ブレーキが動作しなかったと主張するケースもある。
【0014】
このようなケースにおいて、ブレーキが作動しなかった原因として、運転者側にある場合と、車両側にある場合とが考えられるが、従来技術では、ブレーキが作動しなかった原因が運転者側あるいは車両側のどちらにあるのかを立証するのは困難であった。
【0015】
そこで、実施形態に係る記録システム1では、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを、車両の挙動データに対応付けて記憶することで、証拠能力の高いデータを提供する。
【0016】
例えば、記録システム1では、ブレーキペダルを撮影した動画像データと、車両の加減速に関する速度等の挙動データとを対応付けて記憶する。これにより、記録システム1では、事後的に動画像データと挙動データとをあわせて確認することができるので、ブレーキが作動しなかった際の原因を特定することができる。
【0017】
なお、かかる構成により、実施形態に係る記録システム1では、ブレーキペダルまたはアクセルペダルが正常に機能しているか否かをあわせてチェックすることができ、車両の故障を随時監視することもできる。なお、実施形態に係る記録システム1では、ブレーキペダルやアクセルペダルに加え、ハンドル等を撮影した動画像データを車両の挙動データと対応付けて記憶するようにしてもよい。
【0018】
図1に示すように、記録システム1は、記録装置10と、カメラ群50とを備える。また、図1に示すように、記録装置10は、通信バス2に接続される。通信バス2は、いわゆるCAN(Controller Area Network)通信によって車両の各種ECU(Electronic Control Unite)に接続する通信バスである。
【0019】
カメラ群50は、記録対象となるパーツの動作状況を撮影する複数のカメラによって構成される。例えば、カメラ群50は、ブレーキペダル、アクセルペダルをそれぞれ撮影可能な位置に設けられるカメラを含む。また、カメラ群50は、ハンドル、タイヤの舵角、タイヤの回転数、ブレーキパッドを撮影可能な位置に設けられるカメラを含むようにしてもよい。
【0020】
記録装置10は、いわゆるドライブレコーダであり、通信部21と、記憶部22と、カメラ23と、制御部30とを備える。通信部21は、インターネットや携帯電話回線網等であるネットワークに接続され、ネットワークアダプタ等によって実現される。
【0021】
記憶部22は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置によって実現される。なお、記憶部22は、例えば、SDカードなどの記録装置10に着脱可能な記憶媒体であってもよい。
【0022】
カメラ23は、例えば、車両の外部(例えば、前方)を撮影するカメラである。なお、カメラ23は、車両の周囲あるいは車両の内部を撮影する1または複数のカメラを含むようにしてもよい。カメラ23は、車両の外部あるいは車両の内部を撮影した動画像データを生成する。
【0023】
制御部30は、コントローラ(controller)であり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等によって、記憶部22に記憶されている図示略の各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。また、制御部30は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現することができる。
【0024】
制御部30は、車両の挙動データと、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データとを対応付けて記録する。また、制御部30は、カメラ23によって車両の外部が撮影された動画像データと、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データとを対応付けて記録する。
【0025】
制御部30は、通信バス2を介して、車速センサ、舵角センサ、加速度センサ等から車両の挙動データを取得し、カメラ群50を構成する各カメラからブレーキペダルやアクセルペダル等のパーツ(以下、対象パーツと記載)の動作状況を撮影した動画像データを取得する。
【0026】
そして、制御部30は、挙動データおよび動画像データを対応付けて記憶部22に記憶する。例えば、制御部30は、車速、加減速度(G値)、操舵角等の挙動に関するデータを車両の挙動データとして取得する。
【0027】
なお、制御部30は、各ECUからブレーキやアクセルの制御信号データを挙動データとして取得するようにしてもよいし、後述する動画像データの解析結果を挙動データとして用いるようにしてもよい。
【0028】
また、制御部30は、対象パーツとして、ブレーキペダルやアクセルペダル、ハンドル、タイヤ、シャフト、ブレーキパッド、ステアリングなどを含む各対象パーツを撮影した動画像データを取得する。なお、制御部30は、例えば、ブレーキパッド等については動作音を収音した音声データを取得するようにしてもよい。
【0029】
また、制御部30は、動画像データを解析することで、解析対象となる対象パーツの動作状況を解析する。ここで、図2図6を用いて、制御部30による動画像データに関する解析処理の具体例について説明する。図2図6は、カメラの設置位置の具体例を示す図である。図2には、対象パーツがアクセルペダルPaと、ブレーキペダルPbである場合を示す。
【0030】
なお、電車や障害者用の車では手でアクセル/ブレーキを操作するものがある。これら車両操作のように足でアクセル/ブレーキを操作するいわゆる「ペダル」を用いない場合があり、例えば手で操作する「レバー」がアクセル/ブレーキの操作を受け付ける。言い換えればアクセルペダルPaと、ブレーキペダルPbは「ブレーキ操作受付部」または「アクセル操作受付部」とも言えるが本実施例では代表して足で操作するアクセルペダルPaと、ブレーキペダルPbである場合で説明を行う。
【0031】
図2に示す例において、カメラ群50を構成する第1カメラ50aは、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量を撮影するためのカメラである。
【0032】
図2に示すように、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbには、それぞれ側面に発光体L1、L2が設けられる。例えば、発光体L1および発光体L2は、それぞれ可視光で発光するLED(Light Emitting Diode)である。
【0033】
そして、図2に示すように、第1カメラ50aは、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの側面側に設けられ、発光体L1、L2を撮影する。すなわち、図2において、制御部30は、第1カメラ50aによって撮影される動画像データから発光体L1、L2の位置を解析することによって、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量を解析する。
【0034】
このように、記録システム1では、対象パーツに発光体を設けることで、対象パーツに関する画像解析処理を容易にすることができる。なお、例えば、制御部30は、発光体L1、L2の位置と、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量との関係性を予め学習しておき、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量を解析する。
【0035】
ここで、例えば、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbに設けられる発光体L1、L2は、それぞれ異なる色(例えば、赤と青など)で発光する発光体であることが好ましい。これにより、制御部30は、その色の違いによってアクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの識別を容易に行うことが可能となる。
【0036】
また、制御部30は、第1カメラ50aによって撮影される動画像データから、例えば、運転者の靴の種別を解析するようにしてもよい。靴の種別には、運転に適した靴、運転に適していない靴が含まれる。運転に適した靴は、スニーカーなどであり、運転に適していない靴は、サンダル、ヒールなどがある。
【0037】
なお、例えば、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbに対し、それぞれ個別に第1カメラ50aに相当するカメラを設ける場合には、これに限定されるものではなく、発光体L1、L2に同一の発光素子を用いることにしてもよい。この場合、例えば、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbは、それぞれ反対側の側面に発光体L1、L2を設けることとし、第1カメラ50aは、それぞれ反対側からアクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbを撮影するように設置するようにしてもよい。
【0038】
また、発光体L1、発光体L2は、可視光で発光する発光素子に代えて、赤外領域で発光する発光素子であってもよい。この場合、例えば、運転者が発光体L1、発光体L2の光を気にすることなく、制御部30は、アクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量を解析することができる。
【0039】
また、例えば、制御部30は、第1カメラ50aによって撮影された動画像データから発光体L1、発光体L2を検出できない場合、異常と判定するようにしてもよい。この場合の異常の要因として、例えば、アクセルペダルPaまたはブレーキペダルPbの周囲の荷物によって発光体L1、発光体L2が遮蔽されている場合が想定される。
【0040】
次に、図3を用いて、対象パーツがタイヤTである場合について説明する。図3に示すように、タイヤTのシャフトには発光体L3が設けられ、カメラ群50を構成する第2カメラ50bは、発光体L3を撮影する。
【0041】
例えば、制御部30は、カメラ群50を構成する第2カメラ50bによって撮影される動画像データからシャフトSHに設けられた発光体L3の回転周期を解析することで、単位時間当たりのタイヤTの回転数を算出する。なお。例えば、タイヤTのホイール内部に発光体を設け、制御部30は、かかる発光体を検出することで、単位時間当たりのタイヤTの回転数を算出するようにしてもよい。
【0042】
また、図3に示すように、例えば、タイヤTの上部には、タイヤTの表面にレーザ光を照射するセンサ50cを設けるようにしてもよい。センサ50cは、タイヤTの溝の深さや、ひび割れを検知するためのレーザ変位計である。
【0043】
制御部30は、車両の停車時にセンサ50cから取得したセンサデータに基づいて、タイヤTの溝の深さや、ひび割れに関する解析を行う。これにより、記録装置10は、車両のタイヤTの交換時期などを運転者に対して通知することができる。
【0044】
ところで、図3に示す第2カメラ50bは、車両の外に設けられるので、第2カメラ50bのレンズが汚れる恐れがある。そのため、レンズ表面を洗浄する機構を設けるようにしてもよい。
【0045】
具体的には、図4に示すように、シャフトSHに対して、シャフトSHの回転にあわせて回転するブラシBrを設け、第2カメラ50bのレンズ表面のごみをブラシBrで洗浄するようにしてもよい。なお、図4では、シャフトSHを側面側(軸方向)から見た模式図である。
【0046】
つまり、この場合、シャフトSHが回転すると、第2カメラ50bのレンズ表面がブラシBrによって研磨されることになる。そのため、第2カメラ50bのレンズ表面の洗浄に関するメンテナンスの頻度を抑えつつ、第2カメラ50bの動画像データを得ることが可能となる。
【0047】
また、図4に示す例では、第2カメラ50bは、シャフトSHに設けられた反射板Rの回転周期を算出することで、単位時間当たりのタイヤTの回転数を算出することができる。具体的には、図4に示すように、反射板Rは、別途設けられた発光体Lによる光を反射するリフレクターである。なお、単位時間当たりのタイヤTの回転数を算出する手順は、図3に示した発光体L3に関する解析手法と同様である。なお、例えば、発光体Lを第2カメラ50bに内包することで、部品点数を削減することができる。また、ブラシBrに代えて、例えば、第2カメラ50bのレンズ表面にワイパーを備えるようにしてもよい。
【0048】
次に、図5を用いて、対象パーツがブレーキBである場合について説明する。図5に示す例では、ブレーキBのブレーキディスクBdの両脇にあるブレーキパッドBpに発光体L4を設け、カメラ群50を構成する第3カメラ50dは、ブレーキパッドBpに設けられた発光体L4を例えばブレーキディスクBdの上部から撮影する。
【0049】
制御部30は、第3カメラ50dによって撮影された動画像データから発光体L4を検出し、発光体L4間の距離からブレーキBの動作状況を解析することができる。なお、第3カメラ50dに加え、例えば、ブレーキBの動作音を収音する集音センサを設けるようにしてもよい。
【0050】
例えば、制御部30は、集音センサによって収音された音声データを解析することで、ブレーキパッドBpの摩耗を判定するようにしてもよい。例えば、制御部30は、ブレーキパッドBpが摩耗した状態におけるブレーキ音の特徴を予め学習しておき、集音センサによって収音された音声データを解析することで、ブレーキパッドBpの摩耗を判定する。
【0051】
また、ブレーキBは、ステアリングによってその向きが変化することから、制御部30は、第3カメラ50dによって撮影された動画像データからステアリングの動作状況を解析する。例えば、制御部30は、ブレーキパッドBpに設けられた発光体L4の光軸を解析し、光軸の向きによって現在のステアリング角を算出することができる。
【0052】
次に、図6を用いて、対象パーツがハンドルである場合について説明する。例えば、図6に示すように、カメラ群50を構成する第4カメラ50eは、ハンドルHを撮影する。例えば、この場合、ハンドルHには、第4カメラ50eの向きに操舵量に関する目盛りなどのマーカを付しておくことが好ましい。そして、制御部30は、第4カメラ50eによって撮影された動画像データからハンドルHの目盛りを検出することで、ハンドルHの操舵量を解析する。
【0053】
また、例えば、第4カメラ50eは、ハンドルHに加え、運転者の顔、ハンドル操作、ウインカーレバ、ワイパーレバー、シフトレバーなどに対する各種運転操作を撮影するように設置されていてもよく、制御部30は、第4カメラ50eによって撮影された動画像データから運転者の視線や各種運転操作を解析するようにしてもよい。
【0054】
このように、実施形態に係る記録システム1では、第4カメラ50eによって運転者の顔や運転操作を撮影することで、運転者の視線に着目した解析結果や、運転操作に着目した解析結果を記録することができる。つまり、事故の原因究明に関して、さらなる視点でデータを提供することが可能となる。
【0055】
例えば、1つのカメラ(第4カメラ50eに相当)で運転者の視線まで解析する場合には、図6に示すように、メータM周辺にスイッチSWを集約しておくようにしてもよい。スイッチSWは、ライト、ウィンカー、シフトレバー、ワイパーにそれぞれ対応するスイッチを含む。この場合、制御部30は、運転者の視線とスイッチSWとの対応関係を容易に把握することができる。
【0056】
次に、制御部30による異常判定処理について説明する。制御部30は、カメラ群50から取得した動画像データの解析結果、および、挙動データの比較結果に基づいて、各対象パーツの動作状況に関する異常判定処理を実行する。
【0057】
制御部30は、動画像データの解析結果となるアクセルペダルPaおよびブレーキペダルPbの踏み込み量と、挙動データとを比較し、ブレーキBが正常に機能しているか否かを判定する。
【0058】
制御部30は、アクセルペダルPaと車速や加減速との相関関係、ブレーキペダルPbと車速や加減速との相関関係が所定範囲内か否かを判定する。すなわち、運転者がアクセルペダルPaを踏み込んだにもかかわらず車速が上昇しない場合にアクセルが正常に機能していないと判定する。
【0059】
同様に、制御部30は、運転者がブレーキペダルPbを踏み込んだにもかかわらず、車速が減少しない場合等にブレーキが正常に機能していないと判定する。なお、制御部30は、動画像データを基に、ブレーキパッドBpの動き、タイヤTの回転数などに基づいて、ブレーキBが正常に機能しているか否かを判定するようにしてもよい。
【0060】
制御部30は、ブレーキペダルPbの踏み込み量と、ブレーキパッドBpの動き、タイヤTの回転数それぞれの相関関係が許容範囲か否かによって、ブレーキBが正常に動作しているか否かを判定する。
【0061】
この際、制御部30は、さらに、ブレーキに関する制御信号データをさらに考慮して、ブレーキBが正常に機能しているか否かを判定する。つまり、制御部30は、ブレーキに関する制御信号データを参照することで、ブレーキが正常に機能していない原因を特定することができる。
【0062】
具体的には、例えば、運転者がブレーキペダルPbを踏み込んだにもかかわらず、ブレーキパッドBpが正常に機能しない場合に、その制御信号データが正常の値(ブレーキを作動させる信号)が検出できない場合には、ブレーキペダルPb周辺の異常が想定される。
【0063】
また、このようなケースにおいて、例えば、制御信号データが正常であれば、ブレーキパッドBp周辺の異常が想定される。つまり、制御部30は、動画像データの解析結果に加え、制御信号データを含めて異常解析を行うことで、異常の原因を特定することができる。
【0064】
また、制御部30は、センサデータの解析結果に含まれるタイヤTのステアリング角、ハンドルHの操作量などに基づいて、ステアリングが正常に動作しているか否かを判定する。
【0065】
例えば、制御部30は、ステアリング角と、ハンドルHの操作量が対応関係にある場合、ステアリングが正常に機能していると判定し、対応関係から逸脱する場合、ステアリングが正常に機能していないと判定する。この際、制御部30は、上述のように、ステアリングに関する制御信号データに基づいて、異常の原因を特定するようにしてもよい。制御部30は、ステリング角、ハンドルHの操作量、制御信号データをそれぞれ比較することで、異常の原因を特定する。
【0066】
ところで、データを時間同期させる手法としてタイムスタンプを用いる方法がある。一方で、例えば、タイムスタンプにエラーが生じた場合、各データを時間的に同期させることは困難となる。
【0067】
そこで、例えば、カメラ群50に集音機能を備えることとし、制御部30は、各センサによって収音された音声データを解析することで、各データの時間同期を行うようにしてもよい。
【0068】
具体的には、制御部30は、各音声データを解析し、各音声データに共通して含まれる特徴的な音声をキーにして、各データの時間同期を行う。特徴的な音声は、例えば、車内の会話や、BGM、ブレーキ音、車外の音声などを含む。すなわち、制御部30は、例えば、事故の衝撃等でタイムスタンプのエラーが起こったとしても各データの時間同期を行うことができる。
【0069】
つまり、制御部30は、音声データを解析することで、対象パーツの異常音を検出するのみならず、各データの時間同期に活用することができる。
【0070】
そのほか、カメラ群50は、例えば、ヘッドライト、ブレーキランプ、ウィンカー、リバース灯などを含む灯火機器内に設置されるカメラが含まれていてもよく、制御部30は、各カメラによって撮影された動画像データから灯火機器の異常解析を行うようにしてもよい。
【0071】
例えば、ここでの異常解析は、動画像データから得られる灯火機器の点灯状態、灯火機器に対する運転者の操作、および、灯火機器の制御信号データを比較することで行われる。
【0072】
このように、制御部30は、灯火機器の異常を検出することで、ブレーキランプ、ウィンカー、リバース灯の不具合による事故などを未然に防ぐことができる。また、カメラ群50は、ワイパーを撮影するカメラを含むようにしてもよく、制御部30は、ワイパーが正常に動作するか否かを解析するようにしてもよい。
【0073】
その後、制御部30は、カメラ群50から取得した各動画像データと、各ECUから取得した制御信号データを含む挙動データとを対応付けて記録する。制御部30は、挙動データについては動画像データ等の解析結果を用いて、当該解析結果に関するデータと、制御信号データとを対応付けたデータを記憶部22に記録する。
【0074】
例えば、制御部30は、動画像データや音声データであるセンサデータを解析することで、解析結果としてテキスト形式のデータに変換することができ、制御部30は、テキスト形式のデータを制御信号データに対応付けたデータを記憶部22に記録する。
【0075】
つまり、制御部30は、動画像データ等による解析結果を記憶部22に記録することで、センサデータをそのまま記録する場合に比べ、データ量を削減することができる。なお、制御部30は、動画像データを挙動データに対応付けて記憶部22に記録するようにしてもよい。
【0076】
また、制御部30は、動画像データおよび挙動データを対象パーツ毎に時間同期を取って記憶部22に記録する。これにより、それぞれ別々のセンサから得られるセンサデータを集約して管理することができる。
【0077】
制御部30によって記憶部22に記録された各種データは、事故などの証拠として用いることができる。つまり、記憶部22に記録された各種データは、実際のタイヤの舵角や、ブレーキのかかり方などに関するデータが含まれるので、事故の証拠として用いる場合には、証拠能力の高いデータを提供することが可能となる。
【0078】
また、制御部30は、異常解析処理の結果、対応パーツに関する異常が検出された場合には、その異常検出処理の対応データについて、通信部21を介して、外部サーバ(不図示)へ送信する。
【0079】
例えば、外部サーバは、各車両の製造メーカやディーラーが管理するサーバ装置である。例えば、外部サーバの管理者は、記録装置10から送信された対応データを解析し、対象パーツに異常があると判定すると、車両のユーザに対し対象パーツの故障連絡を行う。つまり、車両の運転者は、対象パーツに異常が生じた場合には、故障連絡によって対象パーツの異常をすることができ、定期点検を待たずに、修理を行う機会を得ることができる。
【0080】
なお、制御部30は、車両の運転者に対し直接異常を通知するようにしてもよい。この場合、車両のディスプレイパネルを介し、運転者に対し、異常を通知することができる。
【0081】
次に、図7を用いて、実施形態に係る記録装置10が実行する処理手順について説明する。なお、以下に示す処理手順は、記録装置10の制御部30によって、繰り返し実行される。
【0082】
図7に示すように、制御部30は、通信バス2を介し、車両の挙動データを取得し(ステップS101)、カメラ群50を構成する各カメラからアクセルペダルまたはブレーキペダルを含む各対象パーツを撮影した動画像データを取得する(ステップS102)。
【0083】
つづいて、制御部30は、ステップS102にて取得した動画像データを解析し(ステップS103)、対象パーツに関する異常の有無を判定する(ステップS104)。制御部30は、ステップS103の結果、異常なしと判定した場合(ステップS104;Yes)、ステップS103の解析結果とステップS101にて取得した挙動データとを対応付けて記録し(ステップS105)、処理を終了する。
【0084】
また、制御部30は、ステップS104の判定処理で異常ありと判定した場合(ステップS104;No)、外部サーバやユーザに対しアラートを通知したうえで(ステップS106)、ステップS105の処理へ移行する。
【0085】
上述したように、実施形態に係る記録装置10は、ブレーキペダルまたはアクセルペダルの動作状況を撮影した動画像データを取得し、車両の挙動データを取得し、車両の挙動データと、動画像データとを対応付けて記録するコントローラを備える。したがって、実施形態に係る記録装置10によれば、証拠能力の高いデータを提供することができる。
【0086】
本願の記録データは、裁判の証拠資料として提出され、事故の原因究明などに活用することを目的としているので公平な観点から利用されることが好ましい。よって、取得した映像を外部サーバにアップすることで第三者の管理下におくことにより改ざん対策を行うことも可能である。言うまでもなく、これにより裁判の証拠資料としての価値は向上する。
【0087】
ところで、上述した実施形態では、車両が運転者による運転操作によって走行する車両である場合を説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、本願発明は、いわゆる自動運転車両に適用することも可能である。つまり、本願発明において、「運転操作」とは、運転者による運転操作およびコンピュータが機械的に決定した運転操作を含む概念である。
【0088】
また、上述した実施形態では、対象パーツに可視領域あるいは赤外領域で発光する発光体を設ける場合について説明したが、限定されるものではない。制御部30による各種解析処理によって各対象パーツを識別できれば、蛍光体などの特殊塗料であってもよく、熱線などであってもよい。
【0089】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0090】
1 記録システム
2 通信バス
10 記録装置
21 通信部
22 記憶部
23 カメラ
30 制御部
50 カメラ群
L 発光体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7