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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137204
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】接合治具
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
A61M25/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048634
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓弥
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA01
4C267BB02
4C267CC07
4C267CC08
4C267CC26
4C267FF01
4C267GG02
4C267GG22
4C267GG24
4C267GG31
4C267HH01
(57)【要約】
【課題】ワイヤ等の線状部材とリング状部材との接合位置の精度を高め、安定して接合することができる接合治具を提供する。
【解決手段】リング状部材110に複数の線状部材120の遠位部を接合するための治具1であって、リング状部材110を支持するリング状部材支持部10を有しており、リング状部材支持部10は、リング状部材110の内腔に挿入可能でありリング状部材110の軸方向に延在している突出部11を有し、突出部11は、突出部11の延在方向に延在しており線状部材120を載置可能である溝部30を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状部材に複数の線状部材の遠位部を接合するための治具であって、
前記リング状部材を支持するリング状部材支持部を有しており、
前記リング状部材支持部は、前記リング状部材の内腔に挿入可能であり前記リング状部材の軸方向に延在している突出部を有し、
前記突出部は、前記突出部の延在方向に延在しており前記線状部材を載置可能である溝部を有している接合治具。
【請求項2】
前記突出部の延在方向における前記突出部の長さは、前記リング状部材の軸方向の長さよりも長く、前記線状部材の長さよりも短い請求項1に記載の接合治具。
【請求項3】
前記突出部の延在方向に垂直な断面における前記突出部の断面形状は、上部に曲部と、前記曲部の下方に直線部を有している請求項1または2に記載の接合治具。
【請求項4】
前記突出部は、前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有し、前記中心軸を回転軸として回転可能であり、
前記突出部は、前記溝部を複数有している請求項1または2に記載の接合治具。
【請求項5】
前記リング状部材支持部を固定する固定部をさらに有しており、
前記固定部は、前記突出部が回転可能であるように前記リング状部材支持部を固定している請求項4に記載の接合治具。
【請求項6】
前記固定部は、本体部および蓋部を有しており、
前記本体部と前記蓋部との間に前記リング状部材支持部を配置している請求項5に記載の接合治具。
【請求項7】
前記リング状部材支持部は、前記突出部よりも外径が大きい拡径部を有しており、
前記拡径部の一方側は、前記リング状部材の端部と接触可能であり、
前記拡径部の他方側は、前記固定部と接触可能である請求項5に記載の接合治具。
【請求項8】
前記リング状部材支持部は、前記拡径部よりも外径が大きい把持部を前記拡径部よりも前記他方側に有しており、
前記把持部は、前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有し、前記中心軸を回転軸として回転可能であり、
前記把持部を回転させることにより、前記突出部が回転可能である請求項7に記載の接合治具。
【請求項9】
前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有しており、前記中心軸を回転軸として回転可能である回転体をさらに有しており、
前記回転体は、一方側と他方側を有し、
前記回転体の前記一方側に、複数の前記突出部の一方端部が固定されている請求項1または2に記載の接合治具。
【請求項10】
前記回転体の前記一方側の面において、前記回転体は、前記回転体の外形の図心を中心とし、前記回転体の外形の短径の長さの半分を直径とした円の領域である中央部と、前記中央部を除いた領域である周縁部と、を有しており、
複数の前記突出部は、前記周縁部に配置されている請求項9に記載の接合治具。
【請求項11】
前記リング状部材は、前記リング状部材の軸方向に沿って延在している切り欠き部を有しており、
前記線状部材は、前記溝部に載置され、かつ前記切り欠き部の内部に配置される請求項1または2に記載の接合治具。
【請求項12】
前記溝部の幅は、前記切り欠き部の幅よりも大きい請求項11に記載の接合治具。
【請求項13】
前記突出部は、前記リング状部材支持部から脱着可能である請求項1または2に記載の接合治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状部材に複数の線状部材の遠位部を接合するための治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、通常、血管や消化管、尿管等の体腔に挿入するためのチューブと、チューブの近位側に設けられたハンドルと、から構成されている。カテーテルには、手元側のハンドルを操作してチューブの遠位端部を屈曲できるように構成されたものが知られている。
【0003】
このようなカテーテルとして、チューブの内腔にワイヤが配され、ワイヤの遠位端部がチューブの遠位端部に配されているリング状の部材に固定され、ワイヤの近位端部がハンドルに接続されており、ハンドルを操作することによりチューブの遠位端部を屈曲することができるものがある。例えば、チューブの内腔にワイヤが2本配されたカテーテルでは、ハンドルを操作することにより、2本のワイヤの一方を近位側に引っ張ることでチューブの遠位端部を一方側に屈曲させ、他方を引っ張ることでチューブの遠位端部を他方側に屈曲させることができる。
【0004】
例えば、特許文献1には、両側面にそれぞれ取付溝が設けられ、遠位端にはリング部材を着脱自在に取り付けるための取付凸部が設けられているワイヤ付きリングの製造用治具であって、前記取付溝には、それぞれ前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの遠位端が軸方向に移動自在で着脱自在に取り付けることが可能になっており、前記治具の遠位端から飛び出している前記第1ワイヤおよび第2ワイヤの各遠位端が前記リング部材の通孔の内周面に接触しながら前記通孔を貫通して飛び出すように、前記リング部材を前記治具の取付凸部に着脱自在に取り付けられるようになっているワイヤ付きリングの製造用治具が記載されている。また、特許文献2には、略円筒状の円筒部を有する複数の節輪を軸心方向に沿って順次隣接して基端から先端にわたって延在するように配設してなる節輪構造体であって、前記複数の節輪の各節輪は、前記円筒部の基端側の面に突出するように形成され、軸心に関して互いに略対称な位置に配置された一対の基端側山部と、前記円筒部の先端側の面に突出するように形成され、前記基端側山部に対応する位置に配置された一対の先端側山部とを備え、先端部が最先端の節輪に係合し、基端部が当該節輪構造体の基端に至る複数のワイヤを設けた節輪構造体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2015-163128号公報
【特許文献2】特開2020-137898号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
カテーテルの遠位端部を屈曲させる機構において、リング状の部材とワイヤとは、強固かつ精密な接合が必要である。カテーテルの低侵襲性のため、カテーテルのシャフトの外径を小さくする要望があるが、外径が小さいチューブは内径も小さく、リング状の部材およびワイヤを配置するチューブの空間も小さくなる。リング状の部材とワイヤとの接合強度を高めるために、リング状部材にワイヤを接合する際に生じてしまうワイヤの浮きや接合のばらつきを抑え、安定的に接合することが求められている。
【0007】
特許文献1および2に記載されているような構成では、リング状の部材とワイヤとの接合や接合位置にばらつきが生じやすく、安定的な接合のために改善の余地があった。
【0008】
本発明は、前記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ワイヤ等の線状部材とリング状部材との接合位置の精度を高め、安定して接合することができる接合治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決することができた本発明の接合治具は、以下の通りである。
[1]リング状部材に複数の線状部材の遠位部を接合するための治具であって、
前記リング状部材を支持するリング状部材支持部を有しており、
前記リング状部材支持部は、前記リング状部材の内腔に挿入可能であり前記リング状部材の軸方向に延在している突出部を有し、
前記突出部は、前記突出部の延在方向に延在しており前記線状部材を載置可能である溝部を有している接合治具。
[2]前記突出部の延在方向における前記突出部の長さは、前記リング状部材の軸方向の長さよりも長く、前記線状部材の長さよりも短い[1]に記載の接合治具。
[3]前記突出部の延在方向に垂直な断面における前記突出部の断面形状は、上部に曲部と、前記曲部の下方に直線部を有している[1]または[2]に記載の接合治具。
[4]前記突出部は、前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有し、前記中心軸を回転軸として回転可能であり、
前記突出部は、前記溝部を複数有している[1]~[3]のいずれかに記載の接合治具。
[5]前記リング状部材支持部を固定する固定部をさらに有しており、
前記固定部は、前記突出部が回転可能であるように前記リング状部材支持部を固定している[4]に記載の接合治具。
[6]前記固定部は、本体部および蓋部を有しており、
前記本体部と前記蓋部との間に前記リング状部材支持部を配置している[5]に記載の接合治具。
[7]前記リング状部材支持部は、前記突出部よりも外径が大きい拡径部を有しており、
前記拡径部の一方側は、前記リング状部材の端部と接触可能であり、
前記拡径部の他方側は、前記固定部と接触可能である[5]または[6]に記載の接合治具。
[8]前記リング状部材支持部は、前記拡径部よりも外径が大きい把持部を前記拡径部よりも前記他方側に有しており、
前記把持部は、前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有し、前記中心軸を回転軸として回転可能であり、
前記把持部を回転させることにより、前記突出部が回転可能である[5]~[7]のいずれかに記載の接合治具。
[9]前記突出部の延在方向に平行な中心軸を有しており、前記中心軸を回転軸として回転可能である回転体をさらに有しており、
前記回転体は、一方側と他方側を有し、
前記回転体の前記一方側に、複数の前記突出部の一方端部が固定されている[1]~[8]のいずれかに記載の接合治具。
[10]前記回転体の前記一方側の面において、前記回転体は、前記回転体の外形の図心を中心とし、前記回転体の外形の短径の長さの半分を直径とした円の領域である中央部と、前記中央部を除いた領域である周縁部と、を有しており、
複数の前記突出部は、前記周縁部に配置されている[9]に記載の接合治具。
[11]前記リング状部材は、前記リング状部材の軸方向に沿って延在している切り欠き部を有しており、
前記線状部材は、前記溝部に載置され、かつ前記切り欠き部の内部に配置される[1]~[10]のいずれかに記載の接合治具。
[12]前記溝部の幅は、前記切り欠き部の幅よりも大きい[1]~[11]のいずれかに記載の接合治具。
[13]前記突出部は、前記リング状部材支持部から脱着可能である[1]~[12]のいずれかに記載の接合治具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の接合治具によれば、リング状部材を支持するリング状部材支持部を有しており、リング状部材支持部はリング状部材の内腔に挿入可能でありリング状部材の軸方向に延在している突出部を有し、突出部は突出部の延在方向に延在しており線状部材を載置可能である溝部を有していることにより、突出部によってリング状部材を支持しながら、溝部に載置されている線状部材とリング状部材との位置合わせを行うことができ、リング状部材に線状部材を精度よく位置合わせしながら接合することが行いやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施の形態における接合治具の斜視図を表す。
図2】複数の線状部材の遠位部が接合されたリング状部材の斜視図を表す。
図3図1に示した接合治具の正面図を表す。
図4】本発明の他の実施の形態における接合治具の突出部の延在方向に垂直な断面図を表す。
図5図1に示した接合治具の側面図を表す。
図6】本発明のさらに他の実施の形態における接合治具の斜視図を表す。
図7】本発明のさらに他の実施の形態における接合治具の側面図を表す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0013】
図1は本発明の一実施の形態における接合治具1の斜視図であり、図2は複数の線状部材120の遠位部が接合されたリング状部材110の斜視図を表す。なお、図1は、接合治具1を用いてリング状部材110に線状部材120を接合している状態を図示しており、接合治具1にリング状部材110および線状部材120が配置されている。図1および図2に示すように、接合治具1は、リング状部材110に複数の線状部材120の遠位部を接合するための治具であって、リング状部材110を支持するリング状部材支持部10を有している。
【0014】
接合治具1は、チューブと、チューブの遠位端部の内腔に配置されているリング状部材110と、リング状部材110に遠位端が接合されている複数の線状部材120と、を有する先端可動カテーテルの製造において用いられるものであることが好ましい。
【0015】
図2に示すように、リング状部材110に複数の線状部材120の遠位部が接合される。カテーテルのシャフトを構成するチューブの内腔に、複数の線状部材120の遠位部が接合されているリング状部材110を配置し、複数の線状部材120の近位部をハンドルに接続することにより、ハンドルの操作によってチューブの遠位端部を屈曲させることが可能となる。
【0016】
リング状部材110は、リング状の部材である。リング状部材110の形状は、例えば、円筒状、多角筒状、筒に切れ込みが入った断面C字状の形状、線材を巻回したコイル形状等が挙げられる。中でも、リング状部材110の形状は、円筒状であることが好ましい。リング状部材110の形状が円筒状であることにより、リング状部材110の表面が滑らかなものとなる。そのため、カテーテルにおいて、リング状部材110の表面とチューブとが接触してもチューブを傷つけにくくすることができる。
【0017】
リング状部材110を構成する材料としては、ステンレス鋼、炭素鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)、ポリカーボネート樹脂、繊維強化樹脂等の合成樹脂、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、天然ゴム等が挙げられる。中でも、リング状部材110を構成する材料は、金属であることが好ましく、ステンレス鋼であることがより好ましい。リング状部材110を構成する材料が金属であることにより、リング状部材110の強度が高まり、チューブの遠位端部を繰り返し屈曲させてもリング状部材110が破損しにくくなる。
【0018】
線状部材120は、1本の線材であってもよく、複数の線材からなる構成を有していてもよい。つまり、線状部材120は、単線であってもよく撚線であってもよい。中でも、線状部材120は、単線であることが好ましい。線状部材120が単線であることにより、線状部材120をリング状部材110に強固に接合しやすくすることができる。
【0019】
線状部材120の長手軸方向に垂直な断面の形状は、例えば、円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状とすることができる。中でも、線状部材120の長手軸方向に垂直な断面の形状は、円形状であることが好ましい。線状部材120の断面形状が円形状であることにより、線状部材120の表面が滑らかになる。そのため、チューブの内腔において、線状部材120がチューブに接触してもチューブを破損しにくくすることが可能となる。
【0020】
線状部材120を構成する材料としては、ステンレス鋼、チタン、ニッケルチタン合金、コバルトクロム合金、タングステン合金等の金属、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、PBO繊維、炭素繊維等の繊維が挙げられる。繊維は、モノフィラメントであってもよいし、マルチフィラメントであってもよい。中でも、線状部材120を構成する材料は、金属であることが好ましく、ステンレス鋼であることがより好ましい。線状部材120を構成する材料が金属であることにより、線状部材120の強度を高めることができ、チューブの遠位端部の屈曲のために線状部材120を手元側に引いても線状部材120を破損しにくくすることができる。
【0021】
線状部材120を構成する材料は、リング状部材110を構成する材料と異なるものであってもよいが、リング状部材110を構成する材料と同じものであることが好ましい。線状部材120を構成する材料が、リング状部材110を構成する材料と同じものであることにより、リング状部材110と線状部材120との接合強度を高めやすくなる。
【0022】
図1に示すように、接合治具1は、リング状部材支持部10を有している。リング状部材支持部10は、リング状部材110の内腔に挿入可能でありリング状部材110の軸方向に延在している突出部11を有している。突出部11は、突出部11の延在方向に延在しており線状部材120を載置可能である溝部30を有している。リング状部材110への線状部材120の接合において、接合治具1は、リング状部材支持部10の突出部11によってリング状部材110を支持し、溝部30によって線状部材120を支持する。
【0023】
リング状部材支持部10を構成する材料は、鉄、銅、アルミニウム、またはこれらの合金等の金属、アクリル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)等の合成樹脂が挙げられる。例えば、鉄の合金としてはステンレス鋼等が挙げられ、銅の合金としては真鍮等が挙げられ、アルミニウムの合金としてはジュラルミン等が挙げられる。中でも、リング状部材支持部10を構成する材料は、リング状部材110を構成する材料および線状部材120を構成する材料と異なる材料であることが好ましい。リング状部材支持部10を構成する材料がリング状部材110および線状部材120を構成する材料と異なる材料であることにより、リング状部材110に線状部材120を接合する際に、リング状部材支持部10も一緒に接合されてしまうおそれを低減することができる。
【0024】
また、リング状部材支持部10を構成する材料は、リング状部材110および線状部材120を構成する材料と異なる材料であって、かつ、金属であることが好ましい。具体的には、リング状部材110および線状部材120を構成する材料がステンレス鋼である場合、リング状部材支持部10を構成する材料は、真鍮であることが好ましい。リング状部材支持部10を構成する材料がリング状部材110および線状部材120を構成する材料と異なる材料かつ金属であることにより、リング状部材110と線状部材120との接合の際にリング状部材支持部10も一緒に接合されてしまうことを防止しながら、リング状部材支持部10の強度を高めることができる。そのため、リング状部材支持部10にリング状部材110を繰り返し取り付けおよび取り外ししても、リング状部材支持部10が変形する等の破損が生じにくくなる。
【0025】
接合治具1を用いたリング状部材110と線状部材120との接合において、リング状部材110の内腔に突出部11を挿入し、線状部材120を突出部11が有する溝部30に載置する。突出部11をリング状部材110の内腔に挿入して溝部30に線状部材120を載置することによって、リング状部材110と線状部材120との位置合わせを行いやすくすることができる。そのため、リング状部材110に線状部材120を精度よく目的の位置に配置することが行いやすく、線状部材120が接合されている位置の精度がよいリング状部材110を製造しやすくなる。
【0026】
また、リング状部材支持部10がリング状部材110の内腔に挿入可能であることにより、リング状部材110に線状部材120を接合した後にリング状部材110を周方向に回転させることによって、接合された線状部材122の位置がずれ、接合された線状部材122がリング状部材110に未接合の線状部材121を接合するときの妨げとなりにくくすることができる。その結果、複数の線状部材120を精度よく位置合わせしながらリング状部材110に接合することが行いやすくなる。
【0027】
リング状部材110と線状部材120との接合は、例えば、溶接、接着、溶着、ろう付け等の方法が挙げられる。中でも、リング状部材110と線状部材120との接合は、溶接であることが好ましい。リング状部材110と線状部材120とが溶接によって接合されていることにより、リング状部材110と線状部材120との接合強度を高めやすくすることができる。
【0028】
リング状部材110における線状部材120との接合箇所は、リング状部材110の少なくとも外表面にあることが好ましい。具体的には、リング状部材110と線状部材120とが溶接によって接合されている場合、リング状部材110の外方から溶接を行い、リング状部材110の少なくとも外表面においてリング状部材110と線状部材120とが接合されていることが好ましい。リング状部材110における線状部材120との接合箇所がリング状部材110の少なくとも外表面にあることにより、リング状部材110と線状部材120との接合が行いやすくなり、リング状部材110と線状部材120との位置合わせの精度を高めることや接合強度を高めることが可能となる。
【0029】
図3は接合治具1の正面図である。図3に示すように、突出部11の延在方向における突出部11の長さL3は、リング状部材110の軸方向の長さL1よりも長く、線状部材120の長さL2よりも短いことが好ましい。つまり、突出部11の延在方向の長さL3、リング状部材110の軸方向の長さL1、および線状部材120の長さL2のうち、線状部材120の長さL2が最も長く、リング状部材110の軸方向の長さL1が最も短いことが好ましい。突出部11の延在方向における長さL3がリング状部材110の軸方向の長さL1よりも長いことにより、突出部11によってリング状部材110の全体を内方から支えやすく、リング状部材110を安定して支持することができる。また、突出部11の延在方向における長さL3が線状部材120の長さL2よりも短いことにより、突出部11の溝部30に線状部材120を載置しやすく、リング状部材110と線状部材120との位置合わせが行いやすくなる。
【0030】
突出部11の延在方向における長さL3は、リング状部材110の軸方向の長さL1の3倍以上であることが好ましく、5倍以上であることがより好ましく、7倍以上であることがさらに好ましい。突出部11の延在方向における長さL3と、リング状部材110の軸方向の長さL1との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、リング状部材110を突出部11によってより安定的に支持しやすくなる。また、突出部11の延在方向における長さL3は、リング状部材110の軸方向の長さL1の50倍以下であることが好ましく、45倍以下であることがより好ましく、40倍以下であることがさらに好ましい。突出部11の延在方向における長さL3と、リング状部材110の軸方向の長さL1との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、突出部11の延在方向における長さL3が過度に長くなりすぎることを防止できる。
【0031】
突出部11の延在方向における長さL3は、線状部材120の長さL2の95%以下であることが好ましく、90%以下であることがより好ましく、85%以下であることがさらに好ましい。突出部11の延在方向における長さL3と、線状部材120の長さL2との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、突出部11の溝部30に線状部材120を載置しやすくすることができる。突出部11の延在方向における長さL3は、線状部材120の長さL2の10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましい。突出部11の延在方向における長さL3と、線状部材120の長さL2との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、突出部11の溝部30によって線状部材120を安定的に支持しやすくなる。
【0032】
図4は本発明の他の実施の形態における接合治具1の突出部11の延在方向に垂直な断面図である。図4に示すように、突出部11の延在方向に垂直な断面における突出部11の断面形状は、上部に曲部12と、曲部12の下方に直線部13を有していることが好ましい。突出部11の延在方向に垂直な断面における直線部13の延在方向は、水平方向であってもよく、鉛直方向であってもよい。突出部11の断面形状が、上部に曲部12と、曲部12の下方に直線部13を有していることにより、曲部12によってリング状部材110の上部をリング状部材110の内方から支えながら、突出部11が直線部13を曲部12の下方に有していることにより、リング状部材110に接合された線状部材122が突出部11に干渉しにくくなる。そのため、突出部11が内腔に挿入されているリング状部材110を回転させやすくすることができる。また、突出部11が内腔に挿入されているリング状部材110を回転させた際に、リング状部材110に接合された線状部材122が突出部11に接触しにくくなり、線状部材120が折れ曲がる等の破損が生じにくくなる。
【0033】
図4に示すように、突出部11の延在方向に垂直な断面における突出部11の断面形状は、曲部12の下方に、水平方向に延在している直線部13と、鉛直方向に延在している直線部13aの両方を有していることが好ましい。突出部11の断面形状が、曲部12の下方に、水平方向に延在している直線部13および鉛直方向に延在している直線部13aを有していることにより、リング状部材110に接合された線状部材122が突出部11に干渉しにくくなる効果をより高めることができる。
【0034】
突出部11は、突出部11の延在方向に平行な中心軸を有し、中心軸を回転軸として回転可能であり、突出部11は、溝部30を複数有していることが好ましい。つまり、突出部11は、突出部11の外表面の周方向に複数の溝部30を有しており、かつ、突出部11の周方向に回転可能であることが好ましい。突出部11が回転可能であって溝部30を複数有していることにより、突出部11を回転させることによってリング状部材110を周方向に回転させることができ、リング状部材110と複数の線状部材120との位置合わせをしながら接合することが行いやすくなる。
【0035】
図1および図3に示すように、接合治具1は、リング状部材支持部10を固定する固定部50をさらに有しており、固定部50は、突出部11が回転可能であるようにリング状部材支持部10を固定していることが好ましい。接合治具1が、突出部11が回転可能であるようにリング状部材支持部10を固定している固定部50を有していることにより、リング状部材支持部10を安定して回転可能に固定することができる。そのため、突出部11を回転させやすい接合治具1とすることが可能となる。
【0036】
図5は接合治具1の側面図であり、リング状部材支持部10の突出部11側から接合治具1を見た図である。図1図3および図5に示すように、固定部50は、本体部51および蓋部52を有しており、本体部51と蓋部52との間にリング状部材支持部10を配置していることが好ましい。つまり、固定部50は、本体部51と蓋部52とによってリング状部材支持部10を挟み込んで固定していることが好ましい。本体部51と蓋部52との間にリング状部材支持部10を配置していることにより、固定部50によるリング状部材支持部10の固定を容易かつ確実に行いやすくすることができる。
【0037】
図1に示すように、接合治具1は、リング状部材支持部10を固定する台座40を有していることが好ましい。台座40は、台座40の上方にリング状部材支持部10を載置して固定することが好ましい。また、台座40は、台座40の上方に固定部50を載置して固定していてもよく、固定部50と一体の構造であってもよい。中でも、台座40は、固定部50の本体部51と一体である構成であることが好ましい。接合治具1が台座40を有しており、台座40が固定部50の本体部51と一体の構成であることにより、リング状部材支持部10を安定して配置および固定することができ、リング状部材110と線状部材120との接合が行いやすくなる。
【0038】
台座40を構成する材料は、鉄、銅、アルミニウム、またはこれらの合金等の金属、アクリル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)等の合成樹脂が挙げられる。中でも、台座40を構成する材料は、合成樹脂であることが好ましい。台座40を構成する材料が合成樹脂であることにより、接合治具1の全体の重量を軽量なものとすることができ、接合治具1を取り扱いやすくすることができる。また、台座40を構成する材料が合成樹脂であることにより、台座40にリング状部材110や線状部材120等の他物が接触した際に、他物に傷がつくおそれを低減することが可能となる。台座40を構成する材料は、固定部50の本体部51を構成する材料と同じものであることがより好ましい。
【0039】
図1および図3に示すように、リング状部材支持部10は、突出部11よりも外径が大きい拡径部14を有しており、拡径部14の一方側は、リング状部材110の端部と接触可能であり、拡径部14の他方側は、固定部50と接触可能であることが好ましい。リング状部材支持部10が拡径部14を有し、拡径部14の一方側がリング状部材110の端部と接触可能であり、拡径部14の他方側が固定部50と接触可能であることにより、リング状部材支持部10の突出部11を回転させた際に、突出部11が支持しているリング状部材110や溝部30に載置されている線状部材120を突出部11の回転に巻き込みにくくすることができる。また、リング状部材支持部10を固定部50によって安定的に固定することができるため、リング状部材110と線状部材120との位置合わせが行いやすくなる。
【0040】
拡径部14の外径は、突出部11の外径の1.05倍以上であることが好ましく、1.1倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。拡径部14の外径と突出部11の外径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、突出部11を回転させたときにリング状部材110や線状部材120を回転に巻き込みにくくする効果を高めることができる。また、拡径部14の外径は、突出部11の外径の3倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2倍以下であることがさらに好ましい。拡径部14の外径と突出部11の外径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、拡径部14が大きくなりすぎることを防ぎ、取り扱いやすいリング状部材支持部10とすることができる。
【0041】
図1図3および図5に示すように、リング状部材支持部10は、拡径部14よりも外径が大きい把持部15を拡径部14よりも他方側に有していることが好ましい。つまり、リング状部材支持部10は、一方側に突出部11の先端を有し、突出部11の先端よりも他方側に拡径部14を有し、拡径部14よりも他方側に把持部15を有する構成であることが好ましい。
【0042】
把持部15は、突出部11の延在方向に平行な中心軸を有し、中心軸を回転軸として回転可能であり、把持部15を回転させることにより、突出部11が回転可能であることが好ましい。把持部15を回転させることによって突出部11が回転可能であることにより、リング状部材支持部10を突出部11の周方向に回転させることが行いやすくなり、リング状部材110と線状部材120との位置合わせや接合を効率的に行うことができる。
【0043】
把持部15の外径は、突出部11の外径の2倍以上であることが好ましく、2.5倍以上であることがより好ましく、3倍以上であることがさらに好ましい。把持部15の外径と突出部11の外径との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、把持部15を把持しやすくすることができ、把持部15の回転を行いやすくすることができる。また、把持部15の外径は、突出部11の外径の20倍以下であることが好ましく、18倍以下であることがより好ましく、15倍以下であることがさらに好ましい。把持部15の外径と突出部11の外径との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、把持部15の外径が大きくなりにくく、把持しやすい把持部15とすることができる。
【0044】
図6は本発明の他の実施の形態における接合治具1の斜視図であり、図7は接合治具1の側面図を表す。図7はリング状部材支持部10の突出部11側から接合治具1を見た図である。
【0045】
図6および図7に示すように、突出部11の延在方向に平行な中心軸を有しており、中心軸を回転軸として回転可能である回転体60を接合治具1がさらに有しており、回転体60は、一方側60aと他方側とを有し、回転体60の一方側60aに、複数の突出部11の一方端部が固定されていてもよい。接合治具1が回転体60を有し、回転体60の一方側60aに複数の突出部11の一方端部が固定されている構成であることにより、複数の突出部11を備え、回転体60を回転することによって、用いるリング状部材110や線状部材120に適した突出部11に切り替えることができる接合治具1とすることが可能となる。回転体60は、図6および図7に示すように、円盤状の形状であることが好ましい。
【0046】
回転体60を構成する材料は、鉄、銅、アルミニウム、またはこれらの合金等の金属、アクリル樹脂、芳香族ポリエーテルケトン樹脂(例えば、PEEK)等の合成樹脂が挙げられる。中でも、回転体60を構成する材料は、金属であることが好ましい。回転体60を構成する材料が金属であることにより、回転体60の強度を高めることができる。
【0047】
図7に示すように、回転体60の一方側60aの面において、回転体60は、回転体60の外形の図心を中心とし、回転体60の外形の短径の長さの半分を直径とした円の領域である中央部A1と、中央部A1を除いた領域である周縁部A2と、を有しており、複数の突出部11は、周縁部A2に配置されていることが好ましい。複数の突出部11が、回転体60の周縁部A2に配置されていることにより、回転体60を回転することによる突出部11の切り替えが行いやすくなる。また、1つの回転体60に多くの突出部11を設けやすくすることが可能となる。
【0048】
回転体60の中央部A1には、突出部11が配置されていないことが好ましい。つまり、突出部11は、周縁部A2に配置されており、中央部A1には配置されていないことが好ましい。中央部A1には突出部11が配置されていないことにより、線状部材120を接合するリング状部材110に、回転体60に配置されている突出部11を挿入しやすくすることができる。そのため、リング状部材110と線状部材120との接合が行いやすい接合治具1とすることができる。
【0049】
図2に示すように、リング状部材110は、リング状部材110の軸方向に沿って延在している切り欠き部111を有しており、線状部材120は、溝部30に載置され、かつ切り欠き部111の内部に配置されることが好ましい。線状部材120が溝部30に載置され、かつ切り欠き部111の内部に配置されることにより、リング状部材110に線状部材120を接合する際に、線状部材120が溝部30と切り欠き部111の内部の両方に配置されることとなる。その結果、溝部30および切り欠き部111によってリング状部材110と線状部材120との位置合わせの精度を高めることが可能となる。
【0050】
リング状部材110の軸方向における切り欠き部111の長さは、リング状部材110の軸方向の長さよりも短いことが好ましい。切り欠き部111の長さがリング状部材110の軸方向の長さよりも短いことにより、リング状部材110と線状部材120との位置合わせが行いやすくなる。
【0051】
溝部30の幅は、切り欠き部111の幅よりも大きいことが好ましい。溝部30の幅が切り欠き部111の幅よりも大きいことにより、リング状部材110と線状部材120との位置合わせを行いながら、線状部材120を溝部30に配置しやすくなる。そのため、リング状部材110と線状部材120との接合を効率的に行うことができる。
【0052】
溝部30の幅は、切り欠き部111の幅の1.05倍以上であることが好ましく、1.10倍以上であることがより好ましく、1.15倍以上であることがさらに好ましい。溝部30の幅と切り欠き部111の幅との比率の下限値を上記の範囲に設定することにより、リング状部材110に未接合の線状部材121を切り欠き部111の内部に配置しながら、溝部30の内部にも配置しやすくなる。そのため、リング状部材110と線状部材120との位置合わせを行いやすくすることができる。また、溝部30の幅は、切り欠き部111の幅の3.0倍以下であることが好ましく、2.5倍以下であることがより好ましく、2.0倍以下であることがさらに好ましい。溝部30の幅と切り欠き部111の幅との比率の上限値を上記の範囲に設定することにより、リング状部材110と線状部材120との位置合わせが行いやすく、かつリング状部材110と線状部材120との位置ずれが生じにくくなる。
【0053】
突出部11の最大外径は、リング状部材110の内径よりも大きくてもよい。この場合、突出部11は、リング状部材支持部10から脱着可能であることが好ましい。突出部11がリング状部材支持部10から脱着可能であることにより、突出部11の最大外径がリング状部材110の内径よりも大きい場合に、突出部11にリング状部材110を取り付けることや、線状部材120を接合した後のリング状部材110を突出部11から取り外すことが行いやすくなる。
【符号の説明】
【0054】
1:接合治具
10:リング状部材支持部
11:突出部
12:曲部
13:直線部
13a:直線部
14:拡径部
15:把持部
30:溝部
40:台座
50:固定部
51:本体部
52:蓋部
60:回転体
60a:一方側
110:リング状部材
111:切り欠き部
120:線状部材
121:リング状部材に未接合の線状部材
122:リング状部材に接合された線状部材
L1:リング状部材の軸方向の長さ
L2:線状部材の長さ
L3:突出部の長さ
A1:中央部
A2:周縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7