(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137209
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】鉄道車両用の台車枠の側ばり
(51)【国際特許分類】
B61F 5/52 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B61F5/52
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048640
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】下川 嘉之
(57)【要約】
【課題】曲げ応力に対する剛性を確保しつつ、軽量化を図ることのできる鉄道車両用の台車枠の側ばりを提供する。
【解決手段】鉄道車両用の台車枠の側ばり(30)は、本体(31)と、ばね帽(32,33)と、を備える。本体(31)は、鉄道車両の前後方向に延び、閉断面を有する。本体(31)は、天板部と、天板部に対向する底板部と、天板部と底板部とをつなぐ第1側板部及び第2側板部と、を含む。ばね帽(32,33)は、本体(31)の前端(311)及び後端(312)にそれぞれ接続される。第1側板部は、天板部につながる上側第1側板部、及び底板部につながる下側第1側板部に区分される。下側第1側板部の厚みは、上側第1側板部の厚みより大きい。第2側板部は、天板部につながる上側第2側板部、及び底板部につながる下側第2側板部に区分される。下側第2側板部の厚みは、上側第2側板部の厚みより大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用の台車枠の側ばりであって、
前記鉄道車両の前後方向に延び、閉断面を有する本体であって、天板部と、前記天板部に対向する底板部と、前記天板部と前記底板部とをつなぐ第1側板部及び第2側板部と、を含む前記本体と、
前記本体の前端及び後端にそれぞれ接続されたばね帽と、を備え、
前記第1側板部は、前記天板部につながる上側第1側板部、及び前記底板部につながる下側第1側板部に区分され、前記上側第1側板部と前記下側第1側板部とが相互に溶接によって接合され、
前記下側第1側板部の厚みは、前記上側第1側板部の厚みより大きく、
前記第2側板部は、前記天板部につながる上側第2側板部、及び前記底板部につながる下側第2側板部に区分され、前記上側第2側板部と前記下側第2側板部とが相互に溶接によって接合され、
前記下側第2側板部の厚みは、前記上側第2側板部の厚みより大きい、側ばり。
【請求項2】
請求項1に記載の側ばりであって、
前記本体は、側方から見て弓型の形状を有し、
前記本体は、前記前端に配置された前記ばね帽側で湾曲する第1湾曲領域と、前記後端に配置された前記ばね帽側で湾曲する第2湾曲領域と、を有し、
前記第1湾曲領域における前記下側第1側板部の高さ及び前記下側第2側板部の高さは、それぞれ前記本体の前記前端における前記下側第1側板部の高さ及び前記下側第2側板部の高さよりも高く、
前記第2湾曲領域における前記下側第1側板部の高さ及び前記下側第2側板部の高さは、それぞれ前記本体の前記後端における前記下側第1側板部の高さ及び前記下側第2側板部の高さよりも高い、側ばり。
【請求項3】
請求項1に記載の側ばりであって、
前記上側第1側板部は、前記下側第1側板部と内面が面一になるように接合され、
前記上側第2側板部は、前記下側第2側板部と内面が面一になるように接合される、側ばり。
【請求項4】
請求項1に記載の側ばりであって、
前記上側第1側板部は、前記下側第1側板部と外面が面一になるように接合され、
前記上側第2側板部は、前記下側第2側板部と外面が面一になるように接合される、側ばり。
【請求項5】
請求項1に記載の側ばりであって、
前記下側第1側板部は、前記上側第1側板部と接合される第1テーパ部を含み、
前記第1テーパ部の上端の厚みは、前記上側第1側板部の厚みと同じであり、
前記下側第2側板部は、前記上側第2側板部と接合される第2テーパ部を含み、
前記第2テーパ部の上端の厚みは、前記上側第2側板部の厚みと同じである、側ばり。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の側ばりであって、
前記第1側板部及び前記第2側板部には、それぞれ前記台車枠の横ばりが貫通するための孔が設けられ、
前記上側第1側板部と前記下側第1側板部との接合面及び前記上側第2側板部と前記下側第2側板部との接合面は、それぞれ前記孔と交わる位置に設けられる、側ばり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鉄道車両用の台車枠の側ばりに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両は、レール上を走行する台車と、台車上に支持された車体と、を備える。台車は、台車枠と、台車枠の左右に配置された空気ばねと、台車枠の前後に配置された輪軸とを含む。空気ばねは、車体と台車枠との間に配置されて車体を支持する。台車枠は、左右に一対の側ばりと、横ばりとで構成される。左右の側ばりの前端及び後端にはばね帽が設けられている。ばね帽には、軸ばねが収容されている。左右の側ばりは、それぞればね帽及び軸ばねを介して輪軸に支持されている。
【0003】
台車枠の側ばりの詳細な構成は、例えば特許文献1及び2に記載されている。特許文献1に記載された側ばりは、上部部材及び下部部材から構成される。上部部材の断面形状は、開口部を有する略コの字状である。下部部材は、板状であり、上部部材の開口部を塞いで溶接接合されている。下部部材の前端及び後端には、軸ばね座(ばね帽)が形成される。上部部材の軸ばね座に対応する位置には、幅方向外側に突出した補強突出部が形成される。要するに、軸ばねと当接して荷重を受ける部分が拡大されている。そのため、レールから振動が伝わり、軸ばね座が強い振動力を受けるとき、応力集中を防止し、応力を分散させることができる、と特許文献1には記載されている。
【0004】
特許文献2に記載された側ばりは、上枠及び下枠の上下二分割構造となっている。上枠及び下枠は、それぞれプレス成形によって構成された略コの字状(凹型)の断面を有しており、相互に溶接されて側ばりを構成する。側ばりは、長手方向中央部にフランジを有する。フランジは、台車枠の枕木方向(幅方向)中央に向かって突出形成され、横ばり及び側板と溶接接合される。側板は、角パイプ若しくはプレス成形された板である。側ばりと横ばりの接合部は、曲率半径が小さい部位であり、当該接合部において、別部材の側板が側ばり及び横ばりと接合される。そのため、減肉や割れ、或いは皺が発生せず、製作性が向上する、と特許文献2には記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-215881号公報
【特許文献2】特開2011-148400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
側ばりの軽量化を図るには、側ばり自体の厚みを小さくすればよい。しかしながら、側ばりの厚みを単に小さくすると、曲げ応力に対する剛性が低下してしまう。
【0007】
本開示の目的は、曲げ応力に対する剛性を確保しつつ、軽量化を図ることのできる鉄道車両用の台車枠の側ばりを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る鉄道車両用の台車枠の側ばりは、本体と、ばね帽と、を備える。本体は、鉄道車両の前後方向に延び、閉断面を有する。本体は、天板部と、天板部に対向する底板部と、天板部と底板部とをつなぐ第1側板部及び第2側板部と、を含む。ばね帽は、本体の前端及び後端にそれぞれ接続される。第1側板部は、天板部につながる上側第1側板部、及び底板部につながる下側第1側板部に区分され、上側第1側板部と下側第1側板部とが相互に溶接によって接合される。下側第1側板部の厚みは、上側第1側板部の厚みより大きい。第2側板部は、天板部につながる上側第2側板部、及び底板部につながる下側第2側板部に区分され、上側第2側板部と下側第2側板部とが相互に溶接によって接合される。下側第2側板部の厚みは、上側第2側板部の厚みより大きい。
【発明の効果】
【0009】
本開示に係る鉄道車両用の台車枠の側ばりによれば、曲げ応力に対する剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る側ばりを備える鉄道車両の全体構成を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第1実施形態に係る側ばりの側面図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る側ばりの横断面図である。
【
図8】
図8は、第3実施形態に係る側ばりの側面図である。
【
図9】
図9は、第3実施形態に係る側ばりの変形例を示す側面図である。
【
図10】
図10は、第4実施形態に係る側ばりの横断面図である。
【
図11】
図11は、第5実施形態に係る側ばりの横断面図である。
【
図12】
図12は、第5実施形態に係る側ばりの変形例を示す横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施形態に係る鉄道車両用の台車枠の側ばりは、本体と、ばね帽と、を備える。本体は、鉄道車両の前後方向に延び、閉断面を有する。本体は、天板部と、天板部に対向する底板部と、天板部と底板部とをつなぐ第1側板部及び第2側板部と、を含む。ばね帽は、本体の前端及び後端にそれぞれ接続される。第1側板部は、天板部につながる上側第1側板部、及び底板部につながる下側第1側板部に区分され、上側第1側板部と下側第1側板部とが相互に溶接によって接合される。下側第1側板部の厚みは、上側第1側板部の厚みより大きい。第2側板部は、天板部につながる上側第2側板部、及び底板部につながる下側第2側板部に区分され、上側第2側板部と下側第2側板部とが相互に溶接によって接合される。下側第2側板部の厚みは、上側第2側板部の厚みより大きい(第1の構成)。
【0012】
一般に、台車枠の側ばりの上部には圧縮の曲げ応力がはたらき、下部には引張の曲げ応力がはたらく。したがって、側ばりの下部は、上部と比較して許容応力が小さい。そのため、軽量化を目指して側ばりの厚みを単に小さくし、曲げ応力に対する剛性が低下すると、側ばりの下部における強度が不足する。
【0013】
一方、第1の構成の側ばりでは、閉断面を有する本体は、天板部、底板部、第1側板部、及び第2側板部を含む。第1側板部は、上側第1側板部及び下側第1側板部で構成され、第2側板部は、上側第2側板部及び下側第2側板部で構成される。本体において、下側第1側板部の厚みは、上側第1側板部の厚みより大きく、下側第2側板部の厚みは、上側第2側板部の厚みよりも大きい。要するに、本体の下部の厚みは上部の厚みよりも大きい。この場合、本体の下部の厚みが上部の厚みと同じ場合と比較して本体の断面係数が大きくなるため、曲げ応力に対する剛性が高まる。したがって、第1の構成の側ばりによれば、曲げ応力に対する剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0014】
第1の構成の側ばりは、以下の構成を有してもよい。本体は、側方から見て弓型の形状を有する。本体は、前端に配置されたばね帽側で湾曲する第1湾曲領域と、後端に配置されたばね帽側で湾曲する第2湾曲領域と、を有する。第1湾曲領域における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さは、それぞれ本体の前端における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さよりも高い。第2湾曲領域における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さは、それぞれ本体の後端における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さよりも高い(第2の構成)。
【0015】
第2の構成の側ばりでは、本体の形状は、弓型である。この場合、本体の第1湾曲領域及び第2湾曲領域において、主に上下荷重によるモーメントがばね帽近傍よりも大きくなるため、特に大きい応力が発生する。第2の構成の側ばりでは、第1湾曲領域における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さは、それぞれ本体の前端における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さよりも高い。要するに、第1湾曲領域において、厚みが比較的大きい下側第1側板部及び下側第2側板部の高さを高くすることにより、断面係数が大きくなり、曲げ応力に対する剛性が高まる。第2湾曲領域でも同様に、下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さは、それぞれ本体の後端における下側第1側板部の高さ及び下側第2側板部の高さよりも高いため、曲げ応力に対する剛性が高まる。つまり、第2の構成の側ばりでは、側ばりに作用する応力分布に応じて、板厚の大きい下側第1側板部及び下側第2側板部の領域(高さ)を大きくしており、各板部の高さの最適化を図っている。これにより、発生応力の大きい第1湾曲領域及び第2湾曲領域における剛性を高めることができる。
【0016】
第1又は第2の構成の側ばりにおいて、好ましくは、上側第1側板部は、下側第1側板部と内面が面一になるように接合され、上側第2側板部は、下側第2側板部と内面が面一になるように接合される(第3の構成)。第3の構成の側ばりでは、上側第1側板部は、厚みが異なる下側第1側板部と内面が面一になるように接合される。同様に、上側第2側板部は、厚みの異なる下側第2側板部と内面が面一になるように接合される。このような側ばりは、これらの部材同士を溶接によって接合する場合に裏板を用いることができる。この場合、部材同士の溶接を効率的に行うことができ、溶接部の品質も高まる。
【0017】
第1又は第2の構成の側ばりにおいて、好ましくは、上側第1側板部は、下側第1側板部と外面が面一になるように接合され、上側第2側板部は、下側第2側板部と外面が面一になるように接合される(第4の構成)。これにより、側ばりの外観品質が向上する。
【0018】
第1の構成から第4の構成のいずれか1つの側ばりは、下記の構成を備えてもよい。
下側第1側板部は、上側第1側板部と接合される第1テーパ部を含む。第1テーパ部の上端の厚みは、上側第1側板部の厚みと同じである。下側第2側板部は、上側第2側板部と接合される第2テーパ部を含む。第2テーパ部の上端の厚みは、上側第2側板部の厚みと同じである(第5の構成)。第5の構成の側ばりでは、下側第1側板部のうち、上端の厚みが上側第1側板部の厚みと同じ第1テーパ部が上側第1側板部と接合される。同様に、下側第2側板部のうち、上端の厚みが上側第2側板部の厚みと同じ第2テーパ部が上側第2側板部と接合される。要するに、第5の構成の側ばりでは、接合される2つの部材の端部の厚みが同じである。したがって、部材同士の溶接を簡易に行うことができる。
【0019】
第1の構成から第5の構成のいずれか1つの側ばりは、下記の構成を備えてもよい。第1側板部及び第2側板部には、それぞれ台車枠の横ばりが貫通するための孔が設けられる。上側第1側板部と下側第1側板部との接合面及び上側第2側板部と下側第2側板部との接合面は、それぞれ孔と交わる位置に設けられる(第6の構成)。
【0020】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0021】
[第1実施形態]
[台車の構成]
図1は、本実施形態に係る側ばり30を備える鉄道車両10の全体構成を示す模式図である。
図1には、鉄道車両10を進行方向に沿って見たときの様子が示される。本明細書において、鉄道車両10の進行方向を前後方向と称し、鉄道車両10の幅方向を左右方向と称し、鉄道車両10の高さ方向を上下方向と称する場合がある。
【0022】
図1を参照して、鉄道車両10は、車体11と、台車20とを備える。台車20は、車体11の前側と後側にそれぞれ配置され、車体11を支持する。
図1に示す例では、台車20はボルスタレス台車であるが、ボルスタ付き台車であってもよい。
【0023】
台車20は、台車枠21と、台車枠21の左右に配置される空気ばね22a,22bと、輪軸23とを含む。空気ばね22a,22bは、車体11と台車枠21との間に配置されて車体11を支持し、車体11の振動を緩和する。輪軸23は、台車枠21の前側と後側にそれぞれ配置される。輪軸23は、左右に一対の車輪231と、左右方向に延びる車軸232とを有する。左右の車輪231は、それぞれ車軸232の両端部に固定される。輪軸23の左右にそれぞれ軸箱24が配置されている。車軸232は、軸箱24内に設けられた軸受(図示略)によって回転可能に支持される。
【0024】
図2は、台車枠21の上面図である。
図1及び
図2を参照して、台車枠21は、左右に一対の側ばり30と、2つの横ばり40とを含む。左右の側ばり30は、それぞれ前後方向に延びる。2つの横ばり40は、前後方向に並んで設けられる。2つの横ばり40の各々は、左右方向に延び、左右の側ばり30それぞれに接合される。左右の側ばり30は、それぞれ、前後方向に延びる本体31と、本体31の前端及び後端にそれぞれ接続されたばね帽32,33と、を含む。ばね帽32,33の各々には、軸ばね34が収容されている。左右の側ばり30は、それぞれ、軸ばね34を介して軸箱24に支持されている。つまり、台車枠21は、前後の輪軸23によって支持されている。
【0025】
[側ばり]
以下、本実施形態に係る側ばり30についてより詳細に説明する。
図3は、本実施形態に係る側ばり30の側面図である。
図3を参照して、本体31は、側方から見て、全体として下に凸な弓型の形状を有する。本体31は、第1湾曲領域35と、第2湾曲領域36と、接続領域37とを含む。第1湾曲領域35は、本体31の前端311に配置されたばね帽32側で湾曲する領域である。第2湾曲領域36は、本体31の後端312に配置されたばね帽33側で湾曲する領域である。接続領域37は、第1湾曲領域35と第2湾曲領域36を接続する領域である。第1湾曲領域35及び第2湾曲領域36はそれぞれ上に凸な形状を有する。接続領域37は、本実施形態の例では若干下に凸な形状を有しているが、略直線形状を有していてもよい。第1湾曲領域35、接続領域37及び第2湾曲領域36が、この順に前後方向に配置される。側ばり30の本体31において、横ばり40(
図2)は、典型的には接続領域37に接合される。
【0026】
本体31は、上述した通り、下方向に湾曲しながら前後方向に延びる。本明細書では、本体31が延在する方向(本体31に沿った方向)を、前後方向と区別して長手方向と言う。
【0027】
本実施形態の例では、第1湾曲領域35の前端は、本体31の前端311と一致する。同様に、第2湾曲領域36の後端は、本体31の後端312と一致する。しかしながら、第1湾曲領域35の前端の位置及び第2湾曲領域36の後端の位置は、これに限定されない。本体31は、本体31の前端311と第1湾曲領域35の前端との間や、本体31の後端312と第2湾曲領域36の後端との間に、湾曲していない直線部を含んでいてもよい。この場合、第1湾曲領域35の前端は本体31の前端311よりも後方(ばね帽33側)に位置し、第2湾曲領域36の後端は、本体31の後端312よりも前方(ばね帽32側)に位置する。
【0028】
本実施形態に係る側ばり30では、本体31は、第1部材31a及び第2部材31bを接合することによって構成される。第1部材31aは、本体31の上部に相当する。第2部材31bは、本体31の下部に相当する。第1部材31aと第2部材31bとは、接合面Aで上下方向に接合される。
【0029】
図4は、
図3のIV-IV断面図である。
図4は、本体31の前端311(本体31とばね帽32との境界)における横断面図とも言える。本明細書において、横断面とは、側ばり30の長手方向に垂直に切断したときの断面を意味する。
【0030】
図4を参照して、本体31は、第1部材31a及び第2部材31bによって形成される閉断面を有する。本実施形態の例では、第1部材31aは、前後方向から見てU字型の形状を有する一体の部材である。第2部材31bは、第1部材31aと同様に、前後方向から見てU字型の形状を有する一体の部材である。
【0031】
本体31は、天板部313と、天板部313に対向する底板部314と、天板部313と底板部314とをつなぐ第1側板部315及び第2側板部316と、を含む。第1側板部315は、第2側板部316と対向する。
【0032】
第1側板部315及び第2側板部316は、それぞれ上下に2つに区分される。具体的には、第1側板部315は、天板部313につながる上側第1側板部315a、及び底板部314につながる下側第1側板部315bに区分される。同様に、第2側板部316は、天板部313につながる上側第2側板部316a、及び底板部314につながる下側第2側板部316bに区分される。
【0033】
第1部材31aは、天板部313、上側第1側板部315a、及び上側第2側板部316aからなる。第2部材31bは、底板部314、下側第1側板部315b、及び下側第2側板部316bからなる。
【0034】
上側第1側板部315aは、下側第1側板部315bと相互に溶接によって接合される。上側第1側板部315a及び下側第1側板部315bを接合する方法は、特に限定されるものではないが、例えば突合せ溶接である。上側第1側板部315a及び下側第1側板部315bを突合せ溶接によって接合する場合、典型的には、上側第1側板部315aの下端及び下側第1側板部315bの上端に開先が設けられる。上側第1側板部315aと下側第1側板部315bとを接合する溶接部W1は、この開先内に設けられる。上側第2側板部316a及び下側第2側板部316bは、上側第1側板部315a及び下側第1側板部315bと同様の方法で接合される。
【0035】
また、上側第1側板部315aの下端及び下側第1側板部315bの上端を突合せ溶接によって接合する際、好ましくは、上側第1側板部315aは、下側第1側板部315bと内面が面一になるように接合される。同様に、上側第2側板部316aは、下側第2側板部316bと内面が面一になるように接合される。この場合、溶接の際に裏板38を用いることができる。要するに、第1部材31a及び第2部材31bを接合する際、第1部材31a及び第2部材31bの両方に閉断面の内側から裏板38を接触させた状態で溶接を行うことができる。これにより、部材同士の溶接を効率的に行うことができ、溶接部の品質も高まる。
【0036】
第1部材31aは、第2部材31bと異なる厚みを有する。特に、下側第1側板部315bの厚みtb1は、上側第1側板部315aの厚みta1より大きい。また、下側第2側板部316bの厚みtb2は、上側第2側板部316aの厚みta2より大きい。特に限定されるものではないが、上側第1側板部315aの厚みta1は上側第2側板部316aの厚みta2と同じであってもよいし、下側第1側板部315bの厚みtb1は下側第2側板部316bの厚みtb2と同じであってもよい。なお、天板部313の厚みや、底板部314の厚みは、特に限定されない。
【0037】
上側第1側板部315aの高さ、すなわち上下方向における寸法は、典型的には、上側第2側板部316aの高さと同じである。また、下側第1側板部315bの高さは、典型的には、下側第2側板部316bの高さと同じである。側ばり30のうち発生応力が大きい領域において、下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さは、側ばり30全体の高さHを一定とした上で極力大きいことが好ましい。要するに、第1部材31aと第2部材31bとの接合面Aを極力高い位置に設けることが好ましい。比較的厚みの大きい下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さを高くすることにより、断面係数が大きくなるからである。
【0038】
図5は、
図3のV-V断面図である。
図5は、本体31の第1湾曲領域35の湾曲中心における横断面図とも言える。図示は省略するが、本体31の第2湾曲領域36の湾曲中心における横断面の形状は、
図5に示される本体31の横断面形状と実質的に同じである。
【0039】
側ばり30のうち第1湾曲領域35及び第2湾曲領域36では、主に上下荷重によるモーメントがばね帽32,33近傍よりも大きくなるため、発生応力が比較的大きい。特に、各湾曲領域の湾曲中心に近いほど、発生応力は大きくなる。そのため、第1湾曲領域35における下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さh2は、好ましくは、それぞれ本体31の前端311における下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さh1よりも大きい。本実施形態の例では、
図5に示す第1湾曲領域35の湾曲中心における下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さh2は、
図4に示す高さh1よりも高い。同様に、第2湾曲領域36における下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さは、本体31の後端312における下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さよりも高い。つまり、本実施形態に係る側ばり30では、側ばり30に作用する応力分布に応じて、板厚の大きい下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの領域(高さ)を大きくしており、各板部の高さの最適化を図っている。これにより、発生応力の大きい第1湾曲領域35及び第2湾曲領域36における剛性を高めることができる。
【0040】
図3にも示す通り、本実施形態の例では、下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さは、長手方向において変化する。しかしながら、下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bの高さは、長手方向全域にわたって一定であってもよい。
【0041】
[効果]
本実施形態に係る側ばり30では、閉断面を有する本体31は、天板部313、底板部314、第1側板部315、及び第2側板部316を含む。第1側板部315は、上側第1側板部315a及び下側第1側板部315bで構成され、第2側板部316は、上側第2側板部316a及び下側第2側板部316bで構成される。本体31において、下側第1側板部315bの厚みtb1は、上側第1側板部315aの厚みta1より大きく、下側第2側板部316bの厚みtb2は、上側第2側板部316aの厚みta2よりも大きい。要するに、本体31の下部の厚みは上部の厚みよりも大きい。この場合、本体31の下部の厚みが上部の厚みと同じ場合と比較して、本体31の断面係数が大きくなるため、曲げ応力に対する剛性が高まる。したがって、本実施形態に係る側ばり30によれば、曲げ応力に対する剛性を確保しつつ、軽量化を図ることができる。
【0042】
[第2実施形態]
図6を参照して、第2実施形態の側ばり30を説明する。
図6は、第2実施形態に係る側ばり30の横断面図である。
図6には、本体31の前端311における横断面図が示される。
【0043】
本実施形態の側ばり30は、第1実施形態の側ばり30と比較して第2部材31bの構成が異なる。第1実施形態の第2部材31bは前後方向から見てU字型の形状を有する単一の部材であったのに対し、第2実施形態の第2部材31bは、3つの板状部材を溶接によって接合することによって構成される。具体的には、第2部材31bは板状の底板部314、下側第1側板部315b、及び下側第2側板部316bを含む。下側第1側板部315bの下端と底板部314の上面とが相互に溶接によって接合され、下側第2側板部316bの下端と底板部314の上面とが相互に溶接によって接合される。下側第1側板部315bの下端及び下側第2側板部316bの下端には、開先が設けられてもよい。
【0044】
本実施形態の例では、第1部材31aは第1実施形態と同様にU字型の横断面形状を有する部材である。しかしながら、第1部材31aも3つの板状部材(天板部313、上側第1側板部315a、及び上側第2側板部316a)から構成されてもよい。
【0045】
参考のため、従来の側ばりの一例を
図7に示す。
図7は、従来の側ばり90の横断面図である。側ばり90の本体91は、第1部材91a及び第2部材91bから構成される。第1部材91aは、前後方向から見てU字型の形状を有する。第1部材91aは、天板部911a、第1側板部912a、及び第2側板部913aを有する。第1側板部912a及び第2側板部913aの高さは、本体91の高さHと一致する。第2部材91bは板状であり、その上面に第1側板部912a及び第2側板部913aが溶接によって接合される。これにより、閉断面が形成される。
【0046】
ここで、第1部材91aと第2部材91bとを接合する溶接部W´は、本体91の閉断面の外側にのみ設けられる。閉断面の内部に溶接を行うことができないからである。そのため、本体91の閉断面の外側にのみ溶接を行った側ばり90は、閉断面の外側と内側の両方に溶接を行った場合と比較して溶接部W´での強度が低い。さらに、側ばり90の溶接部W´は、本体91の中立面から離れた位置に設けられている。そのため、溶接部W´に発生する応力は大きい。
【0047】
一方、本実施形態に係る側ばり30の場合、第1側板部315及び第2側板部316は上下に区分されている。下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bと底板部314との溶接は、上側第1側板部315aと下側第1側板部315bとの溶接や上側第2側板部316aと下側第2側板部316bとの溶接よりも先に行うことができる。この場合、下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bと底板部314との溶接部W2を、本体31の閉断面の外側と内側の両方に設けることができる。
【0048】
ただし、本実施形態に係る側ばり30でも、第1部材31aと第2部材31bとを接合する溶接部W1は、閉断面の外側にのみ設けられる。しかしながら、溶接部W1は、
図7に示す溶接部W´と比較して、本体31の中立面の近くに位置する。要するに、本実施形態の側ばり30では、強度の低い溶接部W1は、発生応力が比較的小さい位置に設けられる。以上より、本実施形態の側ばり30によれば、溶接部W1,W2における信頼性を向上させることができる。
【0049】
また、本実施形態に係る側ばり30の第2部材31bは、単一の部材ではなく、3つの板状部材(底板部314、下側第1側板部315b、及び下側第2側板部316b)から構成される。そのため、U字型の横断面形状を有する部材を製造する場合と比較して、簡易に第2部材31bを製造することができる。
【0050】
[第3実施形態]
図8を参照して、第3実施形態の側ばり30を説明する。
図8は、第3実施形態に係る側ばり30の側面図である。
【0051】
本実施形態に係る側ばり30の第1側板部315及び第2側板部316には、それぞれ横ばり40(
図2)が貫通するための2つの孔39が設けられている。具体的には、2つの孔39は、第2部材31bの側板部(下側第1側板部315b及び下側第2側板部316b)の接続領域37において、前後方向に間隔を空けて配置される。側ばり30を側方から見て、2つの孔39は例えば円形である。側ばり30のうち2つの孔39の近傍では、応力集中によって発生応力が大きくなる。
【0052】
本実施形態に係る側ばり30では、接続領域37における第1部材31aと第2部材31bとの接合面Aは2つの孔39よりも高い位置に設けられる。つまり、2つの孔39の近傍における第2部材31bの高さは、
図3に示す第2部材31bの同じ位置における高さよりも大きい。上述した通り、第2部材31bの側板部(下側第1側板部315b及び下側第2側板部316b)の厚みは、第1部材31aの側板部(上側第1側板部315a及び上側第2側板部316a)の厚みより大きい。したがって、本実施形態に係る側ばり30によれば、発生応力の大きい2つの孔39の近傍における剛性を高めることができる。
【0053】
第3実施形態の側ばり30では、接続領域37における第1部材31aと第2部材31bとの接合面Aは2つの孔39よりも高い位置に設けられる。しかしながら、接合面Aの位置は、これに限定されない。
図9は、第3実施形態に係る側ばり30の変形例を示す側面図である。
図9に示すように、接合面Aは、2つの孔39と交わる位置に設けられてもよい。具体的には、上側第1側板部315aと下側第1側板部315bとの接合面及び上側第2側板部316aと下側第2側板部316bとの接合面は、それぞれ2つの孔39と交わる位置に設けられてもよい。この場合、第1部材31a及び第2部材31bそれぞれの側板部に半円形の開口が形成される。この場合、横ばり40は、第1部材31aと第2部材31bの両方を貫通する。横ばり40が貫通する部分については、第1部材31aと第2部材31bを溶接する必要はない。そのため、第1部材31aと第2部材31bの溶接線の長さが短くなり、溶接時間が短縮される。
【0054】
[第4実施形態]
図10を参照して、第4実施形態の側ばり30を説明する。
図10は、第4実施形態に係る側ばり30の横断面図である。
図10は、第1実施形態における
図4と同様に、本体31の前端311における横断面図である。
【0055】
第4実施形態の側ばり30では、下側第1側板部315bは、第1テーパ部3151bを含む。第1テーパ部3151bは、下側第1側板部315bの上端部に設けられ、上側第1側板部315aと接合される。第1テーパ部3151bにおいて、上端に向かうにつれて厚みが薄くなるように、表面は傾斜している。第1テーパ部3151bの上端の厚みは、上側第1側板部315aの厚みta1と同じである。
【0056】
同様に、下側第2側板部316bは、第2テーパ部3161bを含む。第2テーパ部3161bは、下側第2側板部316bの上端部に設けられ、上側第2側板部316aと接合される。第2テーパ部3161bにおいて、上端に向かうにつれて厚みが薄くなるように、表面は傾斜している。第2テーパ部3161bの上端の厚みは、上側第2側板部316aの厚みta2と同じである。
【0057】
第4実施形態の側ばり30では、接合される2つの部材の端部の厚みが同じである。したがって、部材同士の溶接を簡易に行うことができる。
【0058】
なお、第4実施形態の側ばり30では、下側第1側板部315b及び下側第2側板部316bはそれぞれテーパ部を含むため、厚みが均一ではない。この場合には、下側第1側板部315bの厚みtb1とは、下側第1側板部315bの最も大きい厚みを意味し、下側第2側板部316bの厚みtb2とは、下側第2側板部316bの最も大きい厚みを意味する。
【0059】
[第5実施形態]
図11を参照して、第5実施形態の側ばり30を説明する。
図11は、第5実施形態に係る側ばりの横断面図である。本実施形態の例では、上側第1側板部315aの下端及び下側第1側板部315bの上端を突合せ溶接によって接合する際、上側第1側板部315aは、下側第1側板部315bと外面が面一になるように接合される。下側第1側板部315bの厚みtb1は上側第1側板部315aの厚みta1よりも大きいため、この場合、上側第1側板部315a及び下側第1側板部315bの内面は面一にならない。同様に、上側第2側板部316aは、下側第2側板部316bと外面が面一になるように接合される。これにより、側ばり30の外観品質が向上する。
【0060】
各側板部の外面が面一となるように溶接する際には、上述した各実施形態で用いられた裏板とは異なる形状の裏板38が用いられてもよい。
図12は、第5実施形態に係る側ばり30の変形例を示す横断面図である。
図12に示される例では、裏板38は段差面を有し、第1部材31a及び第2部材31bの両方に閉断面の内側から接触する。裏板38のうち第1部材31a(上側第1側板部315a及び上側第2側板部316a)と接触する部分の左右方向における寸法は、第2部材31b(下側第1側板部315b及び下側第2側板部316b)と接触する部分の左右方向における寸法よりも大きい。これにより、裏板38を接触させた状態で溶接を行うことができるため、部材同士の溶接を効率的に行うことができ、溶接部の品質も高まる。
【0061】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0062】
10:鉄道車両
20:台車
21:台車枠
30:側ばり
31:本体
311:前端
312:後端
313:天板部
314:底板部
315:第1側板部
315a:上側第1側板部
315b:下側第1側板部
316:第2側板部
316a:上側第2側板部
316b:下側第2側板部
32,33:ばね帽
35:第1湾曲領域
36:第2湾曲領域