(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137213
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】熱転写インクリボン、熱転写インクリボンロール、熱転写プリンタ、及び、熱転写インクリボンロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/40 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
B41M5/40 300
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048646
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦田 誠子
(72)【発明者】
【氏名】牛腸 智
【テーマコード(参考)】
2H111
【Fターム(参考)】
2H111AA26
2H111BA02
2H111BA03
2H111BA14
2H111DA00
(57)【要約】
【課題】 小巻きロール形状の熱転写インクリボンロールを形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る熱転写インクリボンを提供することを目的とする。
【解決手段】 熱転写インクリボンは、一方向に長いフィルム状であって、一方の面上で長手方向に沿って配置するインクパネル形成領域を有するキャリアと、前記インクパネル形成領域内に設けられ、前記キャリアの長手方向に沿って面順次に複数の熱転写インク層を有する複数のインクパネルセットと、前記キャリアの前記一方の面上で前記インクパネル形成領域の外側に隣接して前記長手方向に沿って連続的に配置され、前記キャリアの前記一方の面からの高さが前記インクパネルセットの前記複数の熱転写インク層のうち最も高い熱転写インク層と同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成される、枕部分とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に長いフィルム状であって、一方の面上で長手方向に沿って配置するインクパネル形成領域を有するキャリアと、
前記インクパネル形成領域内に設けられ、前記キャリアの長手方向に沿って面順次に複数の熱転写インク層を有する複数のインクパネルセットと、
前記キャリアの前記一方の面上で前記インクパネル形成領域の外側に隣接して前記長手方向に沿って連続的に配置され、前記キャリアの前記一方の面からの高さが前記インクパネルセットの前記複数の熱転写インク層のうち最も高い熱転写インク層と同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成される、枕部分と
を有する、熱転写インクリボン。
【請求項2】
前記枕部分は、前記複数の熱転写インク層の少なくとも1つで形成される、請求項1に記載のインクリボン。
【請求項3】
前記複数のインクパネルセットは、前記インクパネル形成領域内において、前記複数の熱転写インク層に対して前記キャリアの前記長手方向に隣接する接着層としてのプライマ層を備え、
前記枕部分の高さは、前記複数のインクパネルセットの前記複数の熱転写インク層と前記プライマ層とのうち、最も高い層と同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成される、
請求項1又は請求項2に記載のインクリボン。
【請求項4】
前記枕部分は、前記キャリアの前記一方の面のうち、前記キャリアの前記長手方向に交差する幅方向の1対の側端の少なくとも一方に隣接する、
請求項1又は請求項2に記載のインクリボン。
【請求項5】
インクリボンコアと、
前記インクリボンコアに対してロール形状に巻回される、請求項1又は請求項2に記載のインクリボンと
を有し、
前記枕部分の高さは、2.0μmより大きく、4.5μm以下である、
熱転写インクリボンロール。
【請求項6】
本体と、
前記本体に対して交換可能に配置される、請求項5に記載の熱転写インクリボンロールと、
前記本体に設けられるサーマルヘッドと
を有する、熱転写プリンタ。
【請求項7】
一方向に長いフィルム状のキャリアの一方の面上の第1のインクパネルセット形成領域内で、前記キャリアの長手方向に離間する複数の第1の領域において、第1のインクパネルを第1のインクにより順に形成するとともに、
前記第1のインクパネルセット形成領域を挟むようにそれぞれ隣接し前記第1のインクで前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する第1の1対の枕部分の第1の層を形成すること、
前記キャリアの一方の面上の前記複数の第1の領域に対して前記長手方向にそれぞれ隣接する複数の第2の領域において、第2のインクパネルを第2のインクにより順に形成するとともに、
前記第2のインクで前記第1の層上に、前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する、前記第1の1対の枕部分の第2の層を形成すること
を含み、
前記第1の1対の枕部分の、前記キャリアの前記一方の面からの前記第2の層の高さを、前記第1のインクパネルの高さと、前記第2のインクパネルの高さとの最も高い高さと同じか、それよりも高く形成する、
熱転写インクリボンロールの製造方法。
【請求項8】
前記第1のインクパネルを形成することは、前記複数の第1の領域を互いに隣接する複数のエリアに分けたときに、前記第1の領域の1つのエリアに対して前記第1のインクで前記第1のインクパネルを形成することを含み、
前記第1の領域の1つのエリアに対して前記第1のインクパネルを形成した後、前記第1の領域の残りのエリアの1つのエリアに対して、前記第1のインクパネルに隣接し前記第1のインクとは異なる第3のインクで第3のインクパネルを形成することを含み、
前記第1の1対の枕部分の、前記キャリアの前記一方の面からの前記第2の層の高さを、前記第1のインクパネルの高さ、前記第2のインクパネルの高さ、前記第3のインクパネルの高さ、及び、前記第1のインクパネルと前記第3のインクパネルとを重ねた高さの最も高い高さと同じか、それよりも高く形成する、
請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記第1のインクパネルを形成することは、前記第1のインクパネルセット形成領域に平行に延び、前記第1の1対の枕部分の間から外れ、前記第1の1対の枕部分との間に長手方向に延びる非塗工エリアを間に挟むように隣接する第2のインクパネルセット形成領域内で、前記キャリアの前記長手方向に離間する複数の第3の領域において、前記第1のインクパネルを前記第1のインクにより順に形成することを含み、
前記第1の層を形成することは、前記第2のインクパネルセット形成領域を挟むようにそれぞれ隣接し前記第1のインクで前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する第2の1対の枕部分の最下層となる第3の層を形成することを含み、
前記第2のインクパネルを前記第2のインクにより形成することは、前記第2のインクで前記第3の層上に、前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する、前記第2の1対の枕部分の第4の層を形成することを含み、
前記非塗工エリアに沿って前記キャリアを切断することをさらに含む、
請求項7に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱転写方式のプリンタに用いられる熱転写インクリボン、そのインクリボンを有する熱転写インクリボンロール、その熱転写インクリボンロールを有する熱転写プリンタ、及び、熱転写インクリボンロールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばIDカード、パスポート、運転免許証等の表面に印刷するために、例えば熱転写記録方式プリンタが用いられ得る。このプリンタの熱転写機録方式には、熱転写インクリボンロールのインクリボンから直接印画対象に画像を熱転写記録する直接熱転写方式と、熱転写インクリボンロールのインクリボンから一旦中間転写フィルム上に画像を熱転写記録し、次いでヒートローラ等の加熱加圧手段で印画対象上に画像を再転写する間接熱転写方式のものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-170685号公報
【特許文献2】特開2009-45931号公報
【特許文献3】特開平6-255234号公報
【特許文献4】実開昭59-153154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような熱転写方式のプリンタに用いるインクリボンの色数を多くすると、カラーパネルによってフィルム状のキャリア(フィルム基材)に対する塗工膜厚が異なったり、2色のカラーパネル同士が接している部分に重なりが発生して局所的に塗工膜厚が厚くなったりすることがある。この場合、インクリボンをロール状に小巻きした小巻きロール形状に加工して熱転写インクリボンロールを形成すると、インクリボンのヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみが発生し、熱転写インクリボンロールの製品品質に問題が生ずる可能性がある。
【0005】
本発明は、小巻きロール形状の熱転写インクリボンロールを形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る、熱転写方式のプリンタに用いられる熱転写インクリボン、そのインクリボンを有する熱転写インクリボンロール、その熱転写インクリボンロールを有する熱転写プリンタ、及び、熱転写インクリボンロールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係る熱転写インクリボンは、一方向に長いフィルム状であって、一方の面上で長手方向に沿って配置するインクパネル形成領域を有するキャリアと、前記インクパネル形成領域内に設けられ、前記キャリアの長手方向に沿って面順次に複数の熱転写インク層を有する複数のインクパネルセットと、前記キャリアの前記一方の面上で前記インクパネル形成領域の外側に隣接して前記長手方向に沿って連続的に配置され、前記キャリアの前記一方の面からの高さが前記インクパネルセットの前記複数の熱転写インク層のうち最も高い熱転写インク層と同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成される、枕部分とを有する。
【0007】
本発明の第2の態様に係るインクリボンの前記枕部分は、前記複数の熱転写インク層の少なくとも1つで形成されることが好適である。
【0008】
本発明の第3の態様に係るインクリボンの前記複数のインクパネルセットは、前記インクパネル形成領域内において、前記複数の熱転写インク層に対して前記キャリアの前記長手方向に隣接する接着層としてのプライマ層を備え、前記枕部分の高さは、前記複数のインクパネルセットの前記複数の熱転写インク層と前記プライマ層とのうち、最も高い層と同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成されることが好適である。
【0009】
本発明の第4の態様に係るインクリボンの前記枕部分は、前記キャリアの前記一方の面のうち、前記キャリアの前記長手方向に交差する幅方向の1対の側端の少なくとも一方に隣接することが好適である。
【0010】
本発明の第5の態様に係る熱転写インクリボンロールは、インクリボンコアと、前記インクリボンコアに対してロール形状に巻回されるインクリボンとを有し、前記枕部分の高さは、2.0μmより大きく、4.5μm以下であることが好適である。
【0011】
本発明の第6の態様に係る熱転写プリンタは、本体と、前記本体に対して交換可能に配置される熱転写インクリボンロールと、前記本体に設けられるサーマルヘッドとを有する。
【0012】
本発明の第7の態様に係る熱転写インクリボンロールの製造方法は、一方向に長いフィルム状のキャリアの一方の面上の第1のインクパネルセット形成領域内で、前記キャリアの長手方向に離間する複数の第1の領域において、第1のインクパネルを第1のインクにより順に形成するとともに、前記第1のインクパネルセット形成領域を挟むようにそれぞれ隣接し前記第1のインクで前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する第1の1対の枕部分の第1の層を形成すること、前記キャリアの一方の面上の前記複数の第1の領域に対して前記長手方向にそれぞれ隣接する複数の第2の領域において、第2のインクパネルを第2のインクにより順に形成するとともに、前記第2のインクで前記第1の層上に、前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する、前記第1の1対の枕部分の第2の層を形成することを含む。そして、前記第1の1対の枕部分の、前記キャリアの前記一方の面からの前記第2の層の高さを、前記第1のインクパネルの高さと、前記第2のインクパネルの高さとの最も高い高さと同じか、それよりも高く形成する。
【0013】
本発明の第8の態様に係る熱転写インクリボンロールの製造方法において、前記第1のインクパネルを形成することは、前記複数の第1の領域を互いに隣接する複数のエリアに分けたときに、前記第1の領域の1つのエリアに対して前記第1のインクで前記第1のインクパネルを形成することを含み、前記第1の領域の1つのエリアに対して前記第1のインクパネルを形成した後、前記第1の領域の残りのエリアの1つのエリアに対して、前記第1のインクパネルに隣接し前記第1のインクとは異なる第3のインクで第3のインクパネルを形成することを含み、前記第1の1対の枕部分の、前記キャリアの前記一方の面からの前記第2の層の高さを、前記第1のインクパネルの高さ、前記第2のインクパネルの高さ、前記第3のインクパネルの高さ、及び、前記第1のインクパネルと前記第3のインクパネルとを重ねた高さの最も高い高さと同じか、それよりも高く形成する、ことが好適である。
【0014】
本発明の第9の態様に係る熱転写インクリボンロールの製造方法において、前記第1のインクパネルを形成することは、前記第1のインクパネルセット形成領域に平行に延び、前記第1の1対の枕部分の間から外れ、前記第1の1対の枕部分との間に長手方向に延びる非塗工エリアを間に挟むように隣接する第2のインクパネルセット形成領域内で、前記キャリアの前記長手方向に離間する複数の第3の領域において、前記第1のインクパネルを前記第1のインクにより順に形成することを含み、前記第1の層を形成することは、前記第2のインクパネルセット形成領域を挟むようにそれぞれ隣接し前記第1のインクで前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する第2の1対の枕部分の最下層となる第3の層を形成することを含み、前記第2のインクパネルを前記第2のインクにより形成することは、前記第2のインクで前記第3の層上に、前記キャリアの前記長手方向に沿って連続的に配置する、前記第2の1対の枕部分の第4の層を形成することを含み、前記非塗工エリアに沿って前記キャリアを切断することをさらに含むことが好適である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、小巻きロール形状の熱転写インクリボンロールを形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る、熱転写方式のプリンタに用いられる熱転写インクリボン、そのインクリボンを有する熱転写インクリボンロール、その熱転写インクリボンロールを有する熱転写プリンタ、及び、熱転写インクリボンロールの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る熱転写インクリボンロールを示す概略図。
【
図2】第1実施形態に係る熱転写インクリボンロールのインクリボンの一部を示す概略図。
【
図3】
図2に示すインクリボンの拡大図、上図中のX-X線に沿う断面図の概略図、及び、上図中のY-Y線に沿う断面図の概略図。
【
図4A】
図3中のZ-Z線に沿う断面図の概略図の一例。
【
図4B】
図3中のZ-Z線に沿う断面図の概略図の他の一例。
【
図5】複数の熱転写インクリボンロールを一度に製造するための製造装置の概略図。
【
図6】
図5に示す製造装置で製造するスリット前全判ロールフィルムの一部を示す概略図。
【
図7A】
図6に示す熱転写インクリボンのZ-Z線に沿う概略的な断面図。
【
図7B】
図6に示す熱転写インクリボンのZ-Z線に沿う概略的な断面図の
図7Aとは異なる例。
【
図9】インクパネルとIDカードの印刷部分との対応関係を示す概略図。
【
図10】比較例に係る熱転写インクリボンロールを示す概略図。
【
図11】比較例に係る熱転写インクリボンロールのインクリボンを示す概略図。
【
図13】第2実施形態に係る熱転写インクリボンロールのインクリボンの一部を示す概略図。
【
図14】
図5に示す製造装置で製造するスリット前全判ロールフィルムの一部を示す概略図。
【
図15】
図14に示す熱転写インクリボンのZ-Z線に沿う概略的な断面図。
【
図16】第3実施形態に係る熱転写インクリボンロールを示す概略図。
【
図17】
図16に示す熱転写インクリボンロールのインクリボンの一部を示す概略図。
【
図18】上列(横列)にインクパネルセットを形成するインクパネルの種類及び枕部分の高さを取り、縦軸(縦列)に適宜の実施例1-7、比較例を設定したきの、小巻きロール形状の熱転写インクパネルの円形度合い(ヨレ、うねり)、プリンタ内での搬送性、エコロジー性、価格(製造費用)の観点を考慮した表。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明の各実施形態を、図面を参照して説明する。
【0018】
プリンタの熱転写機録方式には、熱転写インクリボンロールから直接印画対象に画像を熱転写記録する直接熱転写方式と、熱転写インクリボンロールから一旦中間転写フィルム上に画像を熱転写記録し、次いでヒートローラ等の加熱加圧手段で印画対象上に画像を再転写する間接熱転写方式のものがある。
【0019】
本実施形態では、プリンタの熱転写機録方式は、間接熱転写方式の例について説明する。本実施形態で説明する熱転写インクリボンロール1は、間接熱転写方式、直接熱転写方式のいずれのプリンタにも用いられ得る。
【0020】
(第1実施形態)
図1には、本実施形態に係るインクリボン5をロール状に小巻きした小巻きロール形状の熱転写インクリボンロール1の概略図を示す。
図1に示す熱転写インクリボンロール1は、インクリボンコア(以下、主にコアという)3と、長手方向に沿う一端又はその近傍がコア3に固定され、コア3に巻回された帯状の熱転写インクリボン(以下、主にリボンという)5とを有する。
【0021】
リボン5は、一例として、長手方向の長さが300mから500m程度、幅方向の幅が60mm程度に形成される。なお、コア3の直径は、例えば30mm程度である。そして、熱転写インクリボンロール1は、直径が55m程度の小巻きロールとして形成される。
【0022】
図2には、本実施形態に係る熱転写インクリボンロール1のリボン5を延ばした概略図を示す。
図3には、
図2のリボン5の拡大図、
図3中のX-X線に沿う断面図の概略図、及び、
図3中のY-Y線に沿う断面図の概略図を示す。
【0023】
図4A及び
図4Bには、それぞれ、
図3中のZ-Z線に沿う断面図の概略図を示す。
図4A及び
図4B中の後述するインクパネルセット14のそれぞれの外枠となる所定領域20aの領域22,24,26,28,30にインクパネルを塗工する塗料等のうち、キャリア12の上表面に対して最も高い位置の高さをhxとする。枕部分16a,16bの高さを同じ高さhyとする。
図4Aは、hy>hxの例であり、
図4Bは、hy=hxの例である。
【0024】
図2から
図4Bに示すように、本実施形態に係る熱転写インクリボンロール1のリボン5は、一方向に長いフィルム状のキャリア(基材)12と、キャリア12の一方の面に塗工された複数のインクパネルセット(カラーパネルセット)14と、インクパネル形成領域20の外側でインクパネル形成領域20を挟むようにキャリア12の長手方向に連続的に塗工された、1対の枕部分(嵩高部)16a,16bとを有する。
【0025】
キャリア12は、適宜の耐熱性を有する。キャリア12としては、コンデンサペーパー等の紙、またはポリエステルフィルム、ポリスチレン、ポリカーボネート、アクリル、ポリプロピレンフィルム、あるいはセロファン等が挙げられるが、特に耐熱性や取り扱いの容易性等を顧慮するとポリエステルフィルムが好ましく、具体的にはPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等が好ましい。キャリア12の厚みは、機械的強度、取り扱いの容易さ、あるいは入手の容易性等から2μm~50μmが良いが、より好ましくは2μm~16μmが好適である。ここでは、キャリア12は、例えば厚さが12μm程度の例えばPETなどの樹脂材製のフィルムを用いる。
【0026】
キャリア12の一方の面は、長手方向に沿って配置するインクパネル形成領域20を有する。インクパネル形成領域20は、キャリア12の一方の面の一端から他端までの間の1つの領域を指す。インクパネル形成領域20の幅と、インクパネルの幅とは同じである。また、インクパネル形成領域20の長手方向の長さは、複数のインクパネルセット14が1つの領域に収まる長さである。なお、インクパネル形成領域20内のインクパネルはプリンタ10を用いたIDカード98等への印刷時に印刷に寄与する。インクパネル形成領域20外の枕部分16a,16bは、プリンタ10を用いたIDカード98等への印刷時の印刷には寄与しない。
インクパネル形成領域20は、キャリア12の長手方向に沿って隣接する複数の所定領域20aを有する。各所定領域20aは、同じ大きさで同じ形状に形成される。複数の所定領域20aは、インクパネル形成領域20内で、キャリア12の長手方向に順に設けられる。各所定領域20aは、例えば矩形状の5つの領域22,24,26,28,30を有する。本実施形態では、各領域22,24,26,28,30の大きさは、一般的なIDカード、クレジットカード、キャッシュカード等の大きさである、国際規格ISO/IEC7810のID-1(縦53.98mm、横85.60mm)と同じか、それよりも僅かに大きく形成される。なお、本実施形態で説明するリボン5は、国際規格ISO/IEC7810のID-1の大きさの被印刷物であるIDカード98(
図8及び
図9参照)に印刷をする場合を例に説明する。規格ID-1の縦53.98mmよりも本実施形態に係るリボン5の幅方向の幅は、大きく形成される。
【0027】
なお、ID-2の規格やID-3の規格のカードなど、適宜の大きさの被印刷物に画像を印刷する場合、リボン5のキャリア12の幅は、被印刷物の短手方向の長さよりも大きい、適宜の大きさに形成される。このため、熱転写インクリボンロール1のリボン5は、各規格にあった大きさのものとして形成される。
【0028】
キャリア12の一方の面の各所定領域20aには、長手方向に沿ってインクパネルセット14が塗工される。このため、キャリア12の一方の面のインクパネル形成領域20には、多数組(複数組)のインクパネルセット14がキャリア12の長手方向に沿って順に塗工される。
【0029】
各インクパネルセット14は、長手方向に離間し、キャリア12の幅方向に配置する複数のセンサーマーク32を有する。センサーマーク32は、領域22を挟むとともに領域24を挟む。センサーマーク32は、プリンタ10内に配置される図示しないセンサにより検知され、プリンタ10内で、リボン5の位置の制御に用いられる。センサーマーク32は、それぞれ例えばブラックK(Bk)と同じ塗料で塗工されている。また、領域28にはブラックKの塗料が塗工されているので、領域28のうち、隣接する領域26側のエッジをセンサーマークとすることにより、領域26はセンサーマーク32により挟まれていることとなる。
【0030】
第1の領域22は、2つの例えば矩形状で長手方向に隣接する隣接エリア22a,22bに分割される。これら隣接エリア22a,22bを併せた領域が第1の領域22となる。一例として、隣接エリア(色相パネル領域)22aの方が、隣接エリア(セキュリティパネル領域)22bに比べて大きく形成される。本実施形態では、第1の領域22には、例えば第1の色相インクとしてシアンCと第1の特色としての赤色(セキュリティレッド)Rがリボン5の長手方向に隣接して塗工され、それぞれインク層(インクパネル)を形成する。
図3中に示すように、シアンCと赤色Rとは、符号23で示す位置で一部が重なっていてもよい。本実施形態では、赤色RがシアンCの上側に塗工されているが、上下関係、すなわち、キャリア12への塗工順は反対であっても良い。また、シアンCと赤色Rとは、エリア22a,22bの境界にシアンCと赤色Rとの端面同士が当接した状態に塗工されることも好適である。
なお、第1の領域22のシアンCと赤色Rとは補色の関係にある。
【0031】
第2の領域24は、2つの例えば矩形状で長手方向に隣接する隣接エリア24a,24bに分割される。これら隣接エリア24a,24bを併せた領域が第2の領域24となる。一例として、隣接エリア(色相パネル領域)24aの方が、隣接エリア(セキュリティパネル領域)24bに比べて大きく形成される。本実施形態では、第2の領域24には、例えば第2の色相インクとしてマゼンタMと第2の特色としての緑色(セキュリティグリーン)Gがリボン5の長手方向に隣接して塗工され、それぞれインク層(インクパネル)を形成する。
図3中に示すように、マゼンタMと緑色Gとは、符号25で示す位置で一部が重なっている。本実施形態では、緑色GがマゼンタMの上側に塗工されているが、上下関係、すなわち、キャリア12への塗工順は反対であっても良い。また、マゼンタMと緑色Gとは、端面同士が当接した状態に塗工されることも好適である。
なお、第2の領域24のマゼンタMと緑色Gとは補色の関係にある。
【0032】
第3の領域26は、2つの例えば矩形状で長手方向に隣接する隣接エリア26a,26bに分割される。これら隣接エリア26a,26bを併せた領域が第3の領域26となる。一例として、隣接エリア(色相パネル領域)26aの方が、隣接エリア(セキュリティパネル領域)26bに比べて大きく形成される。本実施形態では、第3の領域26には、例えば第3の色相インクとしてイエローYと第3の特色としての青色(セキュリティブルー)Bがリボン5の長手方向に隣接して塗工され、それぞれインク層(インクパネル)を形成する。
図3中に示すように、イエローYと青色Bとは、符号27で示す位置で一部が重なっている。本実施形態では、青色BがイエローYの上側に塗工されているが、上下関係、すなわち、キャリア12への塗工順は反対であっても良い。また、イエローYと青色Bとは、端面同士が当接した状態に塗工されることも好適である。
なお、第3の領域26のイエローYと青色Bとは補色の関係にある。
【0033】
第4の領域28には、第4の色相インクとしてブラックKが塗工され、インク層(インクパネル)を形成する。
【0034】
第5の領域30には、記録媒体への接着層となるプライマパネルPが塗工され、インク層(インクパネル)を形成する。なお、本実施形態では、プライマパネルPも熱転写インク層の一種であるとする。
【0035】
リボン5のインクパネルセット14は、このような5つの領域22,24,26,28,30に塗工されたインク層を1つのセットとし、複数のインクパネルセット14がキャリア12の長手方向に沿って順次設けられる。
【0036】
したがって、本実施形態のリボン5は、キャリア12の片面(一方の面)に熱転写インク層として、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックKの4色(色の3原色+黒)のカラーインクパネルが面順次に設けられ、続いてプライマパネルPが設けられて1つのインクパネルセット14を構成する。本実施形態では、シアンC、マゼンタM、イエローYのインクパネルは、その一部が第1の色としての赤色(セキュリティレッド)R、第2の色としての緑色(セキュリティグリーン)G、第3の色としての青色(セキュリティブルー)Bの特色インク部に置き換えられて形成されている。すなわち、本実施形態の熱転写インクリボンロール1のリボン5は、色の3原色に加えて、光の3原色のインクパネルを有する。
【0037】
なお、C,M,Y,Kの色相パネルインクの組成の一例は、色顔料(C、M、Y、Bk)がそれぞれ5重量部、有機溶剤可溶型樹脂が15重量部、有機溶剤が80重量部である。R,G,Bのパネルの組成の一例は、光輝性顔料(R、G、B)がそれぞれ5重量部、有機溶剤可溶型樹脂が15重量部、有機溶剤が80重量部である。プライマパネルインクの組成の一例は、保護層を形成する樹脂が5重量部、有機溶剤可溶型樹脂が15重量部、有機溶剤が80重量部である。保護層を形成する樹脂の例は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂等、種々から選択される。
【0038】
このように、複数のインクパネルセット14は、キャリア12の一方の面上でキャリア12の長手方向に沿って配置するインクパネル形成領域20内の所定領域20a内にそれぞれ設けられる。複数のインクパネルセット14は、キャリア12の長手方向に沿って面順次に複数の熱転写インク層を有する。
【0039】
キャリア12には、各色のインクパネル(インク層)が塗工される側に対して反対面側にバックコート層を必要に応じて設けることができる。バックコート層は
図8に示すサーマルヘッド962の熱源であるサーマルヘッド素子962aに密着する層であり、主に耐熱性や滑り性が求められる。バックコート層は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ウレタンシリコーン樹脂、あるいはこれらにシリコーンオイルやワックス、油脂、微粒子などを添加した公知のものを適宜選択することができる。
【0040】
1対の枕部分16a,16bは、印画に使用しないリボン5のキャリア12の領域22,24,26,28,30の外側に形成される。1対の枕部分16a,16bは、キャリア12の幅方向の側端12a,12bを含む位置又は側端12a,12bの近傍の位置に形成される。そして、枕部分16a,16bは、キャリア12の長手方向に沿って連続的に配置されている。このため、枕部分16a,16bは、インクパネル形成領域20の外側の位置で、インクパネル形成領域20を挟むようにキャリア12の長手方向に沿って連続的に配置されている。
【0041】
図3に示すように、1対の枕部分16a,16bは、本実施形態では、シアンCを最下層とし、マゼンタMを中間層とし、イエローYを最上層として、塗料が順に重ねて塗工されている。1対の枕部分16a,16bの塗料は、インクパネルの各色の塗料と同じである。
【0042】
なお、1対の枕部分16a,16bは、キャリア12の領域22,24,26,28,30に塗工されたインクパネルに接していてもよく、僅かに離間していてもよい。
【0043】
ここで、
図3から
図4Bに示すように、領域22,24,26,28,30に塗工されたインクパネルのうち、キャリア12の一方の面に対する最も高い位置の高さをhxとする。また、枕部分16a,16bの高さをhyとする。なお、1対の枕部分16a,16bの高さhyは揃っているものとする。
【0044】
このとき、
図4Aに示すように、枕部分16a,16bの高さhyの方がインクパネルの高さhxよりも高いことが好適である。又は、
図4Bに示すように、枕部分16a,16bの高さhyとインクパネルの高さhxとが同じであることが好適である。
【0045】
なお、本実施形態に係るリボン5は、従来から用いられている熱転写プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷株式会社)にインクリボンロール1を取り付ける際、及び、プリンタ10内でリボン5を搬送するときに影響を与えない大きさに形成される。すなわち、本実施形態に係るリボン5は、従来から用いられている熱転写プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷株式会社)用のインクリボンロールの大きさと同じ大きさに形成される。なお、枕部分16a,16bは、IDカード98等の被印刷媒体への印刷には使用しない位置に形成される。
【0046】
このように、枕部分16a,16bは、キャリア12の一方の面上でキャリア12のインクパネル形成領域20から外れた位置で、キャリア12の長手方向に沿って連続的に配置される。枕部分16a,16bは、キャリア12の一方の面からの高さhyがインクパネルセット14の複数の熱転写インク層とプライマ層とのうち、最も高い熱転写インク層の高さhxと同じ高さ又はそれよりも高い高さに形成される。
なお、枕部分16a,16bは、インクパネル形成領域20に隣接する位置に形成されることが好適である。
【0047】
このようなインクリボンロール1の製造方法の一例について、
図5から
図7Bを用いて説明する。
【0048】
図5には、一度に複数のインクリボンロール1を製造するための製造装置50の概略図を示す。ここでは、グラビアコーター52を用いるものとする。
【0049】
図6には、例えば8つのインクリボンロール1を一度に製造するため、グラビアコーター52を用いて塗工したスリット前全判ロール61の一部を示す概略図である。
【0050】
図5に示すように、製造装置50は、グラビアコーター52と、切断するとインクリボンロール1のコア3となる全判ロールのコア63を回転させる巻き取り機構(回転機構)54と、切断するとインクリボンロール1のリボン5のキャリア12となる小巻きロール状の全判キャリアロール72をグラビアコーター52に送り出す送り出し機構(回転機構)56とを有する。すなわち、送り出し機構56を回転させて全判キャリアロール72を送り出してグラビアコーター52で
図6に示すスリット前全判ロールフィルム65を順に形成しながら、巻き取り機構54を回転させてグラビアコーター52で形成したスリット前全判ロールフィルム65を全判ロールのコア63で巻き取り、スリット前全判ロール61を形成する。なお、巻き取り機構54及び送り出し機構56は、それぞれの回転速度、回転トルク等の制御により、全判キャリアロール72の長手方向に沿う張力を適宜に調整する。
【0051】
図6に示すように、本実施形態では、全判キャリアロール72は、リボン5を幅方向に複数(8つ)並べた大きさと同じ幅、又は、それよりも大きい幅を有する。すなわち、全判キャリアロール72は、リボン5のキャリア12を幅方向に複数(8つ)並べた大きさ、又は、それよりも大きい幅を有する。なお、リボン5の全長は例えば100m以上など、長尺に形成される。このため、全判キャリアロール72が全判ロールのコア63に向かって送られながら、全判キャリアロール72の一方の面のインクパネル形成領域20の各領域22,24,26,28,30にインクが塗工された部分であるスリット前全判ロールフィルム65が全判ロールのコア63に巻き取られて、スリット前全判ロール61が形成される。
【0052】
グラビアコーター52の版82a,84a,86a,88,82b,84b,86b,90は、本実施形態では、一例であるが、上流から下流側に向かって、シアンC、マゼンタM、イエローY、ブラックK、赤色R、緑色G、青色B、プライマ層Pの順に並べられる。
【0053】
版82aを通る際、全判キャリアロール72の長手方向に好ましくは直交する状態に交差する例えば8つのエリア22aに、シアンCの塗料が所定厚さに同時期に塗工された直後に同時期に乾燥される。その後、同様に、全判キャリアロール72の長手方向の上流側に隣接する8つのエリア22aに、シアンCの塗料が所定厚さに同時期に塗工された直後に同時期に乾燥される。このような作業を繰り返し、全判キャリアロール72のエリア22aには、シアンCの塗料が全判キャリアロール72の長手方向に沿って順に塗工される。
【0054】
また、全判キャリアロール72が版82aを通る際、枕部分16a,16bを形成するため、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、シアンCの塗料が所定厚さに塗工されながら乾燥される。
ここでは、版82aは、全判キャリアロール72の長手方向に離間するエリア22aにシアンCの塗料を塗工するのとは異なり、枕部分16a,16bとなる境界76には、連続的にシアンCの塗料がそれぞれ所定厚さに連続的に塗工される。
なお、境界76の幅は、リボン5の各枕部分16a,16bの例えば2倍程度の幅を有する。
【0055】
同様に、全判キャリアロール72が版82aを通った後、版82aよりも下流側の版84aを通る際、マゼンタMの塗料が所定厚さに多数のエリア24aに塗工された直後に乾燥される。また、全判キャリアロール72が版84aを通る際、枕部分16a,16bを形成するため、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、マゼンタMの塗料がシアンCの塗料の上に所定厚さに塗工されながら乾燥される。
【0056】
同様に、全判キャリアロール72が版82a,84aを順に通った後、版84aよりも下流側の版86aを通る際、イエローYの塗料が所定厚さに多数のエリア26aに塗工された直後に乾燥される。また、全判キャリアロール72が版86aを通る際、枕部分16a,16bを形成するため、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、イエローYの塗料がマゼンタMの塗料の上に所定厚さに塗工されながら乾燥される。
【0057】
その後、全判キャリアロール72が版82a,84a,86aを順に通った後、版86aよりも下流側の版88を通る際、ブラックKの塗料が所定厚さに多数の領域28に塗工された直後に乾燥される。本実施形態では、全判キャリアロール72が版88を通る際、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、ブラックKの塗料はイエローYの塗料の上に塗工されないものとする。
【0058】
また、全判キャリアロール72が版82a,84a,86a,88を順に通った後、版88よりも下流側の版82bを通る際、赤色Rの塗料が所定厚さに多数のエリア22bに塗工された直後に乾燥される。本実施形態では、全判キャリアロール72が版82bを通る際、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、赤色Rの塗料はイエローYの塗料の上に塗工されないものとする。
全判キャリアロール72が版82a,84a,86a,88,82bを順に通った後、版82bよりも下流側の版84bを通る際、緑色Gの塗料が所定厚さに多数のエリア24bに塗工された直後に乾燥される。本実施形態では、全判キャリアロール72が版84bを通る際、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、緑色Gの塗料はイエローYの塗料の上に塗工されないものとする。
全判キャリアロール72が版82a,84a,86a,88,82b,84bを順に通った後、版84bよりも下流側の版86bを通る際、青色Bの塗料が所定厚さに多数のエリア26bに塗工された直後に乾燥される。本実施形態では、全判キャリアロール72が版86bを通る際、スリット前全判ロールフィルム65の境界76となる位置に、青色Bの塗料はイエローYの塗料の上に塗工されないものとする。
【0059】
さらに、全判キャリアロール72が版82a,84a,86a,88,82b,84b,86bを順に通った後、版86bよりも下流側の版90を通る際、プライマ層Pを領域30に塗工する。
【0060】
このようにして、全判ロールのコア63で全判キャリアロール72を巻き取りながら、グラビアコーター52により、キャリア12の各領域22,24,26,28,30にそれぞれ1色又は2色の塗料を塗工し、カラーパネルを形成するとともに、枕部分16a,16bを形成する境界76をシアンC、マゼンタM、イエローYの塗料を重ねて連続的に形成する。
【0061】
このようにして、長手方向に離間する各所定領域20aに複数のインクパネルセット14を順に形成する。このとき、
図6に示すように、リボン5のキャリア12となる全判キャリアロール72のある所定領域20aに対して幅方向に隣接する所定領域20aには、同時期にインクパネルセット14を形成する。
【0062】
そして、全判ロールのコア63で全判キャリアロール72を巻き取り終えたときには、スリット前全判ロール61が製造される。すなわち、インクパネルセット14が長手方向に順に形成されたスリット前全判ロールフィルム65を小巻きロール状に巻回し、スリット前全判ロール61を形成する。
【0063】
このとき、
図7Aに示すように、スリット前全判ロールフィルム65は、リボン5の幅方向の境界76を形成する枕部分16a,16bの高さ(キャリア12の一方の面に対する高さ)hyが、所定領域20aに塗工されたカラーパネルの高さ(キャリア12の一方の面に対する高さ)hxに比べて高い。このとき、全判ロールのコア63に巻き、小巻き加工したスリット前全判ロール61は、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを無くして、円形状の外観となることが確認された。
【0064】
または、
図7Bに示すように、スリット前全判ロールフィルム65は、リボン5の幅方向の境界76を形成する枕部分16a,16bの高さhyと、所定領域20aに塗工されたカラーパネルの高さhxとが同じである。このとき、全判ロールのコア63に巻き、小巻き加工したスリット前全判ロール61は、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを無くして、円形状の外観となることが確認された。
【0065】
このように、枕部分16a,16bを形成する境界76の高さhyがカラーパネルの高さhxと同じか、それよりも嵩高いため、カラーパネルの局圧を避けて、スリット前全判ロールフィルム65を小巻き加工し、スリット前全判ロール61を製造することできた。
【0066】
このため、スリット前全判ロール61は、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを無くして、円形又は略円形に形成される。
【0067】
なお、ここでは、色相パネル(C,M,Y,K)の膜厚をそれぞれ1.0μmとし、セキュリティパネル(R,G,B)の膜厚をそれぞれ1.5μmとし、プライマパネル(P)の膜厚を2.0μmと設定した。そうすると、
図3中に符号23,25,27で示す重ね塗り部の最大膜厚が2.5μm(=hx)となることから、枕部分16a,16bの高さhyを2.5μm以上とする必要がある。
【0068】
実際に、枕部分16a,16bの高さhyが2.0μmのときは、リボン5を小巻き加工したときのリボン5のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを制御できなかった。枕部分16a,16bの高さhyを2.5μm以上とすると、リボン5を小巻き加工したときのリボン5のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみがなくなった、又は、減少したことが確認された。
【0069】
このように、枕部分16a,16bの高さhyをインクパネルの高さhxと同じか、それよりも高い2.5μm以上に形成すれば、小巻き加工時のリボン5のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみをなくすことができる。一方、インクをより積層し、枕部分16a,16bの高さhyを2.5μmよりも高くすると、インクの無駄やインクリボンロール1の搬送性に不具合が生じ得る。このため、枕部分16a,16bの高さhyを2.5μm以上であっても、2.5μmに近い薄層で形成することがより好ましい。
【0070】
そして、最後に、スリット前全判ロール61を所定間隔に切断する。ここでは、スリット前全判ロールフィルム65のそれぞれの境界76を長手方向に沿って2つに切断することにより、例えば8つのインクリボンロール1が一度に製造される。この作業において、スリット前全判ロールフィルム65とともに、全判ロールのコア63を切断する。
【0071】
このように、熱転写インクリボンロール1の製造方法は、一方向に長いフィルム状のキャリア12の一方の面上のインクパネルセット形成領域20内で、キャリア12の長手方向に離間する複数の第1の領域22において、第1のインクパネルを第1のインク(例えばシアンC)により順に形成する。また、このとき、インクパネルセット形成領域20を挟むようにそれぞれ隣接し第1のインクでキャリア12の長手方向に沿って連続的に配置する1対の枕部分の第1の層を形成する。
キャリア12の一方の面上の複数の第1の領域22に対して長手方向にそれぞれ隣接する複数の第2の領域24において、第2のインクパネルを第2のインク(例えばマゼンタM)により順に形成する。また、このとき、第2のインクで第1の層上に、キャリア12の長手方向に沿って連続的に配置する、1対の枕部分16a,16bの第2の層を形成する。
好ましくは1対の枕部分16a,16bの、キャリア12の一方の面からの第2の層の高さhyを、第1のインクパネル(シアンC)の高さと、第2のインクパネル(マゼンタM)の高さとの最も高い高さhxと同じか、それよりも高く形成する。
【0072】
なお、第1のインクパネルを形成することは、複数の第1の領域22を互いに隣接する複数のエリア22a,22bに分けたときに、第1の領域22の1つのエリア22aに対して第1のインク(例えばシアンC)で第1のインクパネルを形成することを含む。
第1の領域22の1つのエリア22aに対して第1のインクパネルを形成した後、第1の領域22の残りのエリアの1つのエリア22bに対して、第1のインクパネルに隣接し第1のインク(例えばシアンC)とは異なる第3のインク(例えば赤色R)で第3のインクパネルを形成することを含む。
好ましくは1対の枕部分16a,16bの、キャリア12の一方の面からの第2の層の高さhyを、第1のインクパネルの高さ、第2のインクパネルの高さ、第3のインクパネルの高さ、及び、前記第1のインクパネルと前記第3のインクパネルとを重ねた高さの最も高い高さhxと同じか、それよりも高く形成する。
【0073】
なお、このようにして形成されたインクリボンロール1は、
図7に示す熱転写機構93を有する熱転写プリンタ10にセットされて用いられる。
【0074】
プリンタ10は、本体91と、インクリボンロール1と、熱転写機構93とを有する。
【0075】
熱転写機構93は、本体91内に配置される。また、インクリボンロール1は、本体91内に交換可能に配置される。
【0076】
熱転写機構93は、リボン5の巻き出し部94a及び巻き取り部94bと、中間転写フィルム95の巻き出し部94a及び巻き取り部94bと、一次転写部96と、二次転写部97とを有する。
【0077】
熱転写インクリボンロール1および中間転写フィルム95は通常ロール状に巻かれた態様で供給され、ロールから順次巻き出されながら使用される。インクリボンロール1は、熱転写機構93の巻き出し部94aに取り付けられ、リボン5の開放端が巻き取り部94bに連結され、巻き取られる。中間転写フィルム95は熱転写機構93の巻き出し部95aと巻き取り部95bとの間に配置される。
【0078】
中間転写フィルム95は、耐熱性の基材の片面に、剥離層と受像層を含む2層以上の多層構造からなる転写層を有している。
【0079】
一次転写部96は、プラテンロール961と、サーマルヘッド素子962aを有するサーマルヘッド962と、を有する。
【0080】
図9中のIDカード98の左側部のためのデータ(第一の顔写真データ)とIDカード98の右上部のためのデータ(第二の顔写真データ)を準備し、右上部のためのデータをネガポジ反転した。そして、IDカード98の左側部のためのデータと、ネガポジ反転させた右上部のためのデータをID-1の規格のカードサイズのレイアウト内に配置し、1つの画像データを作成した。
【0081】
図8に示す一次転写部96において、中間転写フィルム95の受像層とリボン5のインクパネルとは、対向する。サーマルヘッド962は、サーマルヘッド素子962aでリボン5のバックコート層側に熱を印加することにより、中間転写フィルム95にリボン5のインクパネルのインクを転写する。このとき、一次転写部96は、中間転写フィルム95に、1つのインクパネルセット14のインクC,M,Y,K,R,G,B,Pを転写し、像を作成する。このため、一次転写部96は、所定の画像を中間転写フィルム95の受像層に熱転写する。
【0082】
このとき、顔写真などの一般的なカラー画像(IDカード98の左側部の像)は、インクパネルの一般的な色の3原色であるシアンC、マゼンタM、イエローYの熱転写インクの色重ねにより記録され、一般的な3原色の色重ねでは再現が困難な特色を有する特色パターンの像(IDカード98の右上部の像)は、特色熱転写インクである赤色R、緑色G、青色Bの熱転写インクにより記録される。各特色の熱転写インクの色は、特色パターンの色に応じて適宜設定して設ければ良い。
【0083】
リボン5は通常、インクパネルセット14の所定領域20aの1つの領域22の長手方向の長さのインクが中間転写フィルム95に転写されることで1色の熱転写記録が行われ、これを1工程と称することとする。本実施形態に係るリボン5では、同じ長さに亘っての転写で、例えばシアンCと赤色Rの、2色分の転写が1回の工程で行える。また、特色の記録が可能であるにもかかわらず、1つのインクパネルセット14全体の長さが長くならず、熱転写インクリボンロール1のロール径も大きくなってしまうことが無い。
【0084】
次いで、マゼンタM及び緑色G、イエローY及び青色Bのインクを中間転写フィルム95に転写する。
【0085】
次いで、ブラックKのインクにより例えば文字情報が中間転写フィルム95に転写され、さらに、記録媒体に再転写される領域全体に亘ってプライマパネルPから接着層が転写される。すなわち、搬送方向の長さに亘っての熱転写を5工程(領域22,24,26,28,30の数)繰り返すことで、シアンC及び赤色R、マゼンタM及び緑色G、イエローY及び青色B、ブラックKの7色の熱転写記録およびプライマパネルPの中間転写フィルム95への転写が行われる。
【0086】
二次転写部97は、ヒートローラ971を有する。中間転写フィルム95はヒートローラ971と印画対象物であるIDカード98の間に配置され、ヒートローラ971で熱をかけながら中間転写フィルム95を押圧することによって、中間転写フィルム95のインク層が印画対象物であるIDカード98に熱圧転写される。すなわち、二次転写部97は、一次転写部96で作成した像をIDカード98に転写する。
【0087】
その後、中間転写フィルム95は接着層が転写された側を最終的な記録媒体と対向させて重ね合わせ、熱圧転写により記録媒体に記録が転写される。
【0088】
このようにして、ID-1の規格のIDカード98の表面に、所望の内容が印刷された。得られたIDカード98には左側に色相インク(CMY顔料)パネルで形成された第一の顔写真が、右側にセキュリティインク(本実施形態では光輝性顔料RGB顔料)パネルで形成された第二の顔写真が印刷された。第二顔写真は特定の光源下ではフルカラーの画像として視認され、例えば傾けることにより色調が変化した。なお、枕部分16a,16bを形成しても、印刷されたカード98の品質に影響がないことが確認された。
【0089】
このように、感熱転写媒体として形成されたIDカード98と、中間転写フィルム95、インクリボンロール1をカードプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷株式会社)にセットし、印刷データを転送し、ID-1サイズのIDカードの基材(被印刷媒体)に印刷を行うことでIDカード98を得た。
【0090】
本実施形態に係るリボン5は、小巻き加工しても外観に問題なく巻くことができ、プリンタ(例えば、CP500;凸版印刷)を用いた印字動作の確認では搬送性に問題はなかった。
【0091】
上記IDカード98を発行するにあたり、プリンタ10のファームウェアや発行ソフトウェアは変更しなかった。すなわち、1対の枕部分16a,16bを有するリボン5を用いても、プリンタ(例えば、CP500;凸版印刷)10を用いて、適切にプリントを行うことができた。また、インクリボンロール1を用いたときのIDカード98の発行(印刷)に必要な時間は、後述する比較用のCMYKリボンロール501(
図10から
図12参照)を用いた場合と同一であった。
【0092】
本実施形態で説明した枕部分16a,16bを形成することで、リボン5を小巻き加工し、熱転写インクリボンロール1を製造する際にリボン5のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを無くす、又は、最小化することができる。
【0093】
枕部分16a,16bの高さhyを、カラーパネルの重なった高さhxと同じか、それよりも嵩高くすることにより、カラーパネルの局圧を避けて、リボン5を小巻き加工し、外形が略円形状のインクリボンロール1を製造することができる。
【0094】
本実施形態で説明したシアンC、マゼンタM、イエローYの塗料は、顔料成分は異なるが、有機溶剤可溶型樹脂及び有機溶剤は共通する。このため、有機溶剤可溶型樹脂及び有機溶剤が同一の材料として、シアンC、マゼンタM、イエローYの塗料を用いて枕部分16a,16bを形成すると、積層する塗料間の層間剥離などの心配がない、安定したリボン5を形成することができる。
【0095】
本実施形態では、枕部分16a,16bは、シアンC、マゼンタM、イエローYが順に重ねて塗工されている例について説明した。これらシアンC、マゼンタM、イエローYの塗工順は順不同である。また、これらシアンC、マゼンタM、イエローYのいずれか又は全部に代えて、赤色R、緑色G、青色Bを塗工してもよい。これら赤色R、緑色G、青色Bの塗工順も順不同である。
【0096】
また、一方の枕部分16aと、他方の枕部分16bとが同じ高さになっていれば、例えば一方の枕部分16aにシアンC、マゼンタM、イエローYを用い、他方の枕部分16bに赤色R、緑色G、青色Bを用いてもよい。
【0097】
なお、得られたIDカード98のうちの左側にCMY顔料で形成された第1の部分(例えば顔写真)が、右側に光輝性顔料RGBで形成された第2の部分(例えば第二の顔写真)が印刷され、所定のプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)を用いたときに、プリンタ10におけるリボン5の搬送性、リボン5を用いた印字性に問題はなかった。
【0098】
図10には、比較例に係る小巻きロール形状にした熱転写インクリボンロール501の概略図を示す。
図10に示す熱転写インクリボンロール501は、コア3と、長手方向に沿う一端がコア3に固定され、コア3に巻回された帯状の熱転写インクリボン(以下、単にリボンと称することがある)505とを有する。
【0099】
図11及び
図12には、比較例に係る熱転写インクリボンロール501のリボン505を延ばした概略図を示す。
図12には、
図11のリボン505のX-X線に沿う断面図の概略図を示す。
図12に示す断面は、
図3中のX-X線に沿う断面と同じ形状に形成されている。
【0100】
図11に示すように、比較例の場合のリボン505では、枕部分16a,16bが存在していない。ここで、シアンC、マゼンタM、イエローYのカラーパネルの厚みとセキュリティパネル(R,G,B)の厚みが異なる場合がある。また、リボン505をコア3に巻回すると、符号523,525,527で示す位置のインク層同士の重なりが生じることがある。このため、インクパネルセット14の長手方向に沿う数が多いことによるパネル同士の重なりによる段差が発生する。このため、リボン505を小巻き加工したとき、リボン505のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみが生じる場合があった。また、塗工が重なった符号523,525,527で示す部分は、局所的に嵩高くなっているため、小巻き加工を行った際に局所的に巻き圧が大きくなる箇所が生じた。
【0101】
これに対し、本実施形態に係る、1対の枕部分16a,16bを有するリボン5を用いることで、コア3に小巻き加工を行った際の巻き圧の変動を抑制でき、リボン5のヨレやズレ、偏肉やたるみを抑制しながら、略円形状にリボン5を巻回することができる。
【0102】
したがって、本実施形態によれば、小巻きロール形状の熱転写インクリボンロール1を形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る、熱転写方式のプリンタ10に用いられるリボン5、そのリボン5を有する熱転写インクリボンロール1、その熱転写インクリボンロール1を有する熱転写プリンタ10、及び、熱転写インクリボンロール1の製造方法を提供することができる。
【0103】
本実施形態では、エリア22a,22bの幅を同じ幅とした。エリア22aを略L字状とし、エリア22bをエリア22aと協働して略矩形状の領域22を形成するように形成してもよい。
シアンC、マゼンタM、イエローYの熱転写インクパネルのエリア22a,24a,26aと赤色R、緑色G、青色Bの熱転写インクのエリア22b,24b,26bとは、記録する画像の位置、大きさ等の記録仕様に応じて適宜設定し、区分けしておけば良い。
【0104】
本実施形態では、各リボン5がそれぞれ1対の枕部分16a,16bを有する例について説明した。各リボン5は、1対の枕部分16a,16bの少なくとも一方を有していれば、スリット前全判ロール61を製造したときに、小巻形状を円形状にすることができる。また、スリット前全判ロールフィルム65を全判ロールのコア63ごと切断し、複数のインクリボンロール1を得るときに、円形形状を維持することができれば、リボン5は、1対の枕部分16a,16bの少なくとも一方があればよい。
【0105】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係るインクリボンロール1及びそのインクリボンロール1の製造方法について、
図13から
図15を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態の変形例であって、第1実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0106】
インクリボンロール1の基本的な構造は、第1実施形態で説明したインクリボンロール1と同じであるので、同一の構成部分については同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0107】
インクリボンロール1のリボン5の1対の枕部分16a,16bは、キャリア12の側端12a,12bを含む位置になく、側端12a,12bよりも幅方向の中央側に近い位置に形成される。
【0108】
このため、
図13中の一方の枕部分16aとキャリア12の側端12aとの間には、タブ領域13aが形成される。同様に、
図13中の他方の枕部分16bとキャリア12の側端12bとの間には、タブ領域13bが形成される。
【0109】
次に、本実施形態に係るインクリボンロール1の製造方法について、
図14及び
図15を用いて説明する。インクリボンロール1の基本的な製造方法は、第1実施形態で説明したため、ここでは、簡略化して説明する。
【0110】
図14及び
図15に示すように、スリット前全判ロールフィルム65を製造するとき、第1実施形態で説明した境界76を形成するのではなく、枕部分16a,16bを形成する。このとき、全判キャリアロール72の隣接するリボン5の枕部分16a,16b間には、全判キャリアロール72の長手方向に平行な非塗工エリア(スリット)73をそれぞれ形成する。
【0111】
そして、スリット前全判ロールフィルム65の非塗工エリア73を全判ロールのコア63の回転機構54の回転軸に直交するように切断することにより、一度に複数のインクリボンロール1を製造することができる。このとき、非塗工エリア73には、インク層がないため、インク層を切断しない。このため、インク層を切断したときに生じる粉が、例えばカラーパネル等に付着することを防止することができる。
【0112】
熱転写インクリボンロール1の製造方法において、キャリア12の長手方向に離間する複数の第1の領域22において、第1のインクパネルを形成することは、第1のインクパネルセット形成領域20に平行に延び、第1の1対の枕部分16a,16bの間から外れ、第1の1対の枕部分16a,16bとの間に長手方向に延びる非塗工エリア73を間に挟むように隣接する第2のインクパネルセット形成領域20内で、キャリア12の長手方向に離間する第1の領域(複数の第3の領域)22において、第1のインクパネルを第1のインク(例えばシアンC)により順に形成することを含む。第1の層を形成することは、第2のインクパネルセット形成領域20を挟むようにそれぞれ隣接し第1のインクでキャリア12の長手方向に沿って連続的に配置する第2の1対の枕部分16a,16bの最下層となる第1の層(第3の層)を形成することを含む。第2のインクパネルを第2のインク(例えばマゼンタ)により形成することは、第2のインクで第1の層(第3の層)上に、キャリア12の長手方向に沿って連続的に配置する、第2の1対の枕部分16a,16bの第2の層(第4の層)を形成することを含む。また、非塗工エリア73に沿ってキャリア12を切断することをさらに含む。
【0113】
したがって、本実施形態によれば、小巻きロール形状の熱転写インクリボンロール1を形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る、熱転写方式のプリンタ10に用いられるリボン5、そのリボン5を有する熱転写インクリボンロール1、その熱転写インクリボンロール1を有する熱転写プリンタ10、及び、熱転写インクリボンロール1の製造方法を提供することができる。
【0114】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係るインクリボンロール1及びそのインクリボンロール1の製造方法について、
図16及び
図17を用いて説明する。本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態の変形例であって、第1実施形態及び第2実施形態で説明した部材と同一の部材又は同一の機能を有する部材には極力同一の符号を付し、詳しい説明を省略する。
【0115】
本実施形態に係るリボン5のキャリア12の所定領域20aの領域22,24,26には、それぞれ、シアンC、マゼンタM、イエローYの1つのインクによるインク層としてインクパネルが形成される。
【0116】
このようなインクリボンロール1を製造し、このインクリボンロール1をプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にセットして印刷を行った。このとき、プリンタ10内でのリボン5の搬送性は第1実施形態及び第2実施形態で説明したリボン5と同様の搬送性を得た。
【0117】
(実施例)
図18には上列(横列)にインクパネルセット14を形成するインクパネルの種類及び枕部分16a,16bの高さhyを取り、縦軸(縦列)に適宜の実施例1-7、比較例を設定したきの、小巻きロール形状の熱転写インクパネルの円形度合い(ヨレ、うねり)、プリンタ10内での搬送性、エコロジー性、価格(製造費用)の観点を考慮した表である。
【0118】
実施例1は、
図2から
図4Aに示すリボン5を示す一例である。必要な枕部分16a,16bの高さは2.5μmであるのに対し、ここでは、枕部分16a,16bの高さhyを10.5μmとした。すなわち、プライマパネルPを含めた全てのインクをそれぞれ重ねて枕部分16a,16bを形成した。このような状態のインクリボンロール1は、
図1に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
なお、第1実施形態で説明したように、枕部分16a,16bは、複数の熱転写インク層の少なくとも1つなど、選択して形成されていればよい。
【0119】
そして、実施例1のインクリボンロール1をプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にセットして印刷を行った。このとき、プリンタ10内でのリボン5の搬送性は、後述する実施例2に比べては劣っていた。これは、枕部分16a,16bの高さが、必要な枕部分16a,16bの高さに対して高すぎていることに起因すると考えられる。実際に、第1実施形態で説明した厚さのインクパネル及び枕部分16a,16bを有するインクリボンロール1を用いる場合には、リボン5の搬送性は、後述する実施例2と同程度に良好であった。
また、枕部分16a,16bの高さhy(=10.5μm)を必要なインクパネルの高さhx(=2.5μm)に比べて4倍以上にしたため、エコロジー性は失われたと考えられる。また、枕部分16a,16bの高さhyを必要なインクパネルの高さhxに比べて4倍以上にし、かつ、赤色R、緑色G、青色Bの塗料にそれぞれセキュリティレッド、セキュリティグリーン、セキュリティブルーを用いることにより価格が高くなった。
【0120】
実施例2は、
図17に示すリボン5であって、枕部分16a,16bの高さhy(=4.0μm)をインクパネルの高さhx(=1.0μm)の4倍とした。このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
そして、このインクリボンロール1をプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にセットして印刷を行った。このとき、プリンタ10内でのリボン5の搬送性は、枕部分16a,16bの高さhyをインクパネルの高さhxの4倍としたが、良好であった。これは、実施例1の場合の高さの差(hy-hx)は7μm(=10.5μm-1.5μm-1.0μm)であるのに対し、実施例2の場合の高さの差(hy-hx)は3μm(=4.0μm-1.0μm)であったことに起因すると考えられる。
また、枕部分16a,16bの高さhy(=4.0μm)を必要なインクパネルの高さhx(=1.0μm)に比べて4倍としたが、3μmの差に抑制したため、実施例1に比べてエコロジー性は失われたと考えられる。また、赤色R、緑色G、青色Bの塗料にそれぞれセキュリティレッド、セキュリティグリーン、セキュリティブルーを用いなかったことにより、製造コストを抑制することができる。
【0121】
実施例3は、
図17に示すリボン5からブラックKのインクパネルを除去した例である。この場合も、実施例2と同様に、このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
また、実施例2と同様に、プリンタ10にインクリボンロール1をセットした用いたときにそのリボン5の搬送性に問題はなく、また、エコロジー性が確保でき、製造コストも低く抑えられる。
【0122】
実施例4は、図示しないが、例えば第1の領域22をセキュリティレッドのインクで塗工し、第2の領域をセキュリティグリーンのインクで塗工し、第3の領域をセキュリティブルーのインクで塗工した例である。また、枕部分16a,16bを、これらセキュリティレッド、セキュリティグリーン、セキュリティブルーを重ねて形成した。
枕部分16a,16bの高さhy(=4.5μm)をインクパネルの高さhx(=1.5μm)の3倍とした。このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
そして、このインクリボンロール1をプリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にセットして印刷を行った。このとき、プリンタ10内でのリボン5の搬送性は、実施例1よりも良好であったが、実施例2、実施例3の場合よりも低下した。これは、枕部分16a,16bの高さhy自体が、搬送性を維持するために良好であった実施例2、実施例3の高さよりも高くなったことに起因すると考えられる。しかしながら、枕部分16a,16bの高さを4.5μmとしても、プリンタ10内でのリボン5の搬送性に問題が生じたとは言えない。このため、枕部分16a,16bの高さは、4.5μm以下であることが好適であり得る。
枕部分16a,16bを高くしたため、エコロジー性が、実施例1に対して良好であるが、実施例2、実施例3に比べて悪化している。
インクパネル及び枕部分16a,16bを、セキュリティレッド、セキュリティグリーン、セキュリティブルーで形成したため、製造コストが高くなる。
【0123】
実施例5は、図示しないが、例えば第1の領域22にシアンCの塗料を塗工し、第2の領域24にマゼンタMの塗料で塗工し、残りの領域26,28,30に塗料を塗工しなかった例である。また、枕部分16a,16bを、これらシアンC及びマゼンタMを重ねて形成した。
枕部分16a,16bの高さhy(=2.0μm)をインクパネルの高さhx(=1.0μm)の2倍とした。しかしながら、このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すような円形状と、
図10に示す形状との間の形状のようになった。すなわち、このような状態のインクリボンロール1は、枕部分16a,16bの高さhyがインクパネルの高さhxに比べて高い、hy>hxの条件を満たしているが、インクリボンロール1にヨレ/うねりが少し生じた。このため、枕部分16a,16bは、ある程度の高さhyが必要であることがわかる。
また、実施例2、実施例3と同様に、プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にインクリボンロール1をセットした用いたときにそのリボン5の搬送性に問題はなく、また、エコロジー性が確保でき、製造コストも低く抑えられる。
このため、実施例1-実施例5によれば、hy≧hxの条件を維持しつつ、枕部分16a,16bの高さhyは、2.0μmより大きく、4.5μm以下である、ことが好適であった。
【0124】
実施例6は、図示しないが、例えば第1の領域22にセキュリティレッドの塗料を塗工し、第2の領域24にセキュリティグリーンの塗料で塗工し、残りの領域26,28,30に塗料を塗工しなかった例である。また、枕部分16a,16bを、これらセキュリティレッド及びセキュリティグリーンを重ねて形成した。
枕部分16a,16bの高さhy(=3.0μm)をインクパネルの高さhx(=1.5μm)の2倍とした。このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
また、実施例2、実施例3と同様に、プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にインクリボンロール1をセットした用いたときにそのリボン5の搬送性に問題はなく、また、エコロジー性が確保できた。一方で、高価なセキュリティレッド及びセキュリティグリーンをインクパネル及び枕部分16a,16bの両方に用いることで、製造コストが高くなり得る。
【0125】
実施例7は、図示しないが、例えば第1の領域22にセキュリティレッドの塗料を塗工し、第2の領域24にシアンCの塗料で塗工し、残りの領域26,28,30に塗料を塗工しなかった例である。また、枕部分16a,16bを、これらセキュリティレッド及びシアンCを重ねて形成した。
枕部分16a,16bの高さhy(=2.5μm)をインクパネルの高さhx(=1.5μm)よりも1μm高くした。このような状態のインクリボンロール1は、
図16に示すように円形状に近くなり、ヨレ/うねりは見られなかった。
実施例2、実施例3と同様に、プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にインクリボンロール1をセットした用いたときにそのリボン5の搬送性が実施例2-実施例6の例に比べて低下した。これの原因は不明である。
また、本実施例7のリボン5は、適宜のエコロジー性が確保できた。一方で、高価なセキュリティレッドをインクパネル及び枕部分16a,16bの両方に用いることで、製造コストが高くなり得る。
【0126】
比較例は、
図10から
図12に示すリボン505を有するインクリボンロール501を用いた例である。
上述したように、枕部分がないため、
図10に示すように、小巻き形状のインクリボンロール501にヨレ/うねりが生じた。
一方、プリンタ10(例えば、CP500;凸版印刷)にインクリボンロール501をセットした用いたときにそのリボン505の搬送性に問題はなく、また、エコロジー性が確保でき、製造コストも低く抑えられる。
【0127】
上述した各実施形態、及び、各実施例では、枕部分16a,16bの高さhyは、hy≧hxの条件を維持しつつ、リボン5のヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみを無くし、搬送性に影響させないために、2.5μm以上10.0μm以下であることが好ましい。また、色相インクC,M,Yを積層して枕部を形成することで、エコロジー性やリボンロール価格への影響を鑑みることができた。また、枕部分16a,16bの高さhyは、2.0μmより大きく、4.5μm以下である、ことがより好適であった。
【0128】
このような条件により、小巻きロール形状の熱転写インクリボンロール1を形成するときに、ヨレやズレ、偏肉(コブ)やたるみの発生を抑制し、製品品質を良好にし得る、熱転写方式のプリンタ10に用いられるリボン5、そのリボン5を有する熱転写インクリボンロール1、その熱転写インクリボンロール1を有する熱転写プリンタ10、及び、熱転写インクリボンロール1の製造方法を提供することができる。
【0129】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、上記実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0130】
1…熱転写インクリボンロール、10…熱転写プリンタ、
3…インクリボンコア、5…熱転写インクリボン、12…キャリア、12a,12b…側端、14…インクパネルセット、16a,16b…枕部分、20…インクパネル形成領域、20a…所定領域、22,24,26,28,30…領域、32…センサーマーク、
50…製造装置、52…グラビアコーター、54…回転機構、56…送り出し機構、61…スリット前全判ロール、63…全判ロールのコア、65…スリット前全判ロールフィルム、72…全判キャリアロール、76…境界、91…本体、93…熱転写機構、94a…巻き出し部、94b…巻き取り部、95…中間転写フィルム、95a…巻き出し部、95b…巻き取り部、96…一次転写部、961…プラテンロール、962…サーマルヘッド、962a…サーマルヘッド素子、97…二次転写部、971…ヒートローラ、98…IDカード。