(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137221
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】立体表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 30/50 20200101AFI20240927BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20240927BHJP
H04N 13/388 20180101ALI20240927BHJP
H04N 13/398 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B30/50
G02B26/10 C
H04N13/388
H04N13/398
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048664
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
2H045
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AA01
2H045AB01
2H045BA13
2H045BA15
2H045BA20
2H199BA22
2H199BB02
2H199BB17
2H199BB45
2H199BB60
(57)【要約】
【課題】立体像の画像品質を向上させる。
【解決手段】立体表示装置は、レーザー光源と、レーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、変換部から入射するコリメート光を、反射方向が互いに異なる複数の反射鏡によって反射することにより複数のコリメート光として出射する分割部と、を備える光源部と、光源部から入射する複数のコリメート光をそれぞれ収束させて複数の収束光とし、集光位置において複数の収束光どうしを干渉させる収束部と、収束部によって収束光が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の光軸方向変更素子によって複数の収束光が出射される光軸方向をまとめて変化させることにより、集光位置を三次元走査する走査部と、を備える出射部と、描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、集光位置における強度を制御する強度制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザー光源と、
前記レーザー光源から出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、
前記変換部から入射するコリメート光を、反射方向が互いに異なる複数の反射鏡によって反射することにより、複数のコリメート光として出射する分割部と、
を備える光源部と、
前記光源部から入射する複数のコリメート光をそれぞれ収束させて複数の収束光とし、集光位置において前記複数の収束光どうしを干渉させる収束部と、
レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記収束部によって前記収束光が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の光軸方向変更素子によって前記複数の収束光が出射される光軸方向をまとめて変化させることにより、前記集光位置を三次元走査する走査部と、
を備える出射部と、
前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、
を備える立体表示装置。
【請求項2】
前記光源部は、前記複数のコリメート光のうち、少なくとも1つの前記コリメート光の位相を制御する位相制御部
をさらに備え、
前記位相制御部によって位相が制御された少なくとも1つの前記コリメート光を、前記収束部に出射する
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
それぞれレーザー光を出射する複数のレーザー光源と、
それぞれの前記レーザー光源から出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、
を備え、前記変換部が変換した複数のコリメート光をそれぞれ出射する光源部と、
前記光源部から入射する前記複数のコリメート光をそれぞれ収束させて複数の収束光とし、集光位置において前記複数の収束光どうしを干渉させる収束部と、
レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記収束部によって前記収束光が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の光軸方向変更素子によって前記複数の収束光が出射される光軸方向をまとめて変化させることにより、前記集光位置を三次元走査する走査部と、
を備える出射部と、
前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、
を備える立体表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に映像を表示する立体表示装置について、様々な方法が提案されている。このような従来の立体表示装置の例として、レーザーを集光してプラズマを発生させることでvoxel(空間的な画素)を形成し、空中に映像を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような立体表示装置においては、蛍光物質にレーザー光を励起光として入射させて輝点を生じさせることにより、十分な明るさの立体像を描くことが可能である。一方で、蛍光物質の特性と、励起光であるレーザー光の強さとの対応関係によっては、所望の位置に輝点を描くことが困難である場合があった。このような場合、立体像の画像品質が低下してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、立体像の画像品質を向上させることができる立体表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一態様は、レーザー光を出射するレーザー光源と、前記レーザー光源から出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、前記変換部から入射するコリメート光を、反射方向が互いに異なる複数の反射鏡によって反射することにより、複数のコリメート光として出射する分割部と、を備える光源部と、前記光源部から入射する複数のコリメート光をそれぞれ収束させて複数の収束光とし、集光位置において前記複数の収束光どうしを干渉させる収束部と、レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記収束部によって前記収束光が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の光軸方向変更素子によって前記複数の収束光が出射される光軸方向をまとめて変化させることにより、前記集光位置を三次元走査する走査部と、を備える出射部と、前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、を備える立体表示装置である。
【0007】
[2]本発明の一態様は、上記[1]に記載の立体表示装置において、前記光源部は、前記複数のコリメート光のうち、少なくとも1つの前記コリメート光の位相を制御する位相制御部をさらに備え、前記位相制御部によって位相が制御された少なくとも1つの前記コリメート光を、前記収束部に出射する。
【0008】
[3]本発明の一態様は、それぞれレーザー光を出射する複数のレーザー光源と、それぞれの前記レーザー光源から出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、を備え、前記変換部が変換した前記複数のコリメート光をそれぞれ出射する光源部と、前記光源部から入射する前記複数のコリメート光をそれぞれ収束させて複数の収束光とし、集光位置において前記複数の収束光どうしを干渉させる収束部と、レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記収束部によって前記収束光が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の光軸方向変更素子によって前記複数の収束光が出射される光軸方向をまとめて変化させることにより、前記集光位置を三次元走査する走査部と、を備える出射部と、前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、を備える立体表示装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、立体像の画像品質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の立体表示装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態の分割部の構成の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態の立体表示装置の動作の流れの一例を示す図である。
【
図4】本実施形態の立体表示装置から出射された収束光の干渉の状態を示す図である。
【
図5】本実施形態の集光位置における収束光の入射エネルギーの計算モデルの一例を示す図である。
【
図6】収束光の波の変位特性の一例を示す図である。
【
図7】複数の収束光どうしの干渉特性の一例を示す図である。
【
図8】本実施形態の分割ミラーの構成の変形例を示す図である。
【
図9】本変形例における、収束光の波の変位特性の一例を示す図である。
【
図10】本変形例における、複数の収束光どうしの干渉特性の一例を示す図である。
【
図11】本実施形態の立体表示装置の構成の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の態様に係る立体表示装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
以下、図を参照しながら、実施形態について説明する。
【0012】
[立体表示装置1の機能構成]
図1は、本実施形態の立体表示装置1の構成の一例を示す図である。立体表示装置1は、蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲としてレーザー光Lを走査することにより、描画空間2に立体像を表示する装置である。
描画空間2とは、内部に蛍光物質21を保持することができる空間である。一例として、描画空間2とは、内部に粉末状の蛍光物質21が封入された、円筒形状の透明な壁を有する円筒容器の内部空間である。この場合、描画空間2は、中空の領域である。他の一例として、描画空間2とは、蛍光物質21が練りこまれた透明樹脂で形成された物体である。この場合、描画空間2は、中実の領域である。
つまり、描画空間2の「空間」とは、三次元に広がる領域であればよく、中空であるか中実であるかを問わない。また、描画空間2は、気体、液体、固体のいずれで構成されていてもよい。
【0013】
蛍光物質21とは、フォトルミネッセンス効果のある材料であり、本実施形態の一例においては量子ドット(QD;Quantum Dot)分散体である。QD分散体とは、量子ドットを有機溶媒(例えば、トルエン)中、気体中、あるいは固体中に、所定の体積濃度で散在させたものである。
例えば、蛍光物質21は、希土類元素を含む蛍光体を透明な樹脂中に分散(散在)させて固化したものであってもよい。
【0014】
立体表示装置1は、光源部10と、出射部20と、記憶部30と、制御部60とを備える。
【0015】
光源部10は、レーザー光源110と、変換部120と、分割部130とを備える。
レーザー光源110は、レーザー光Lを出射する。レーザー光源110は、一例として、紫外線レーザーや、波長405nmの小型レーザーダイオードなどであってもよい。以下の説明において、レーザー光源110が出射するレーザー光Lのことを光源光L1ともいう。
【0016】
レーザー光源110から出射される光源光L1は、平行光ではなく、レーザー光源110を頂点にした円錐状に広がって進む性質を有している。
レーザー光源110から出射された直後の光源光L1は、径が十分に小さい。一方、レーザー光源110から離れた位置の光源光L1は、出射された直後の光源光L1に比べて拡径している。このため、レーザー光源110から出射された直後の光源光L1は、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的高い。また、レーザー光源110から離れた位置の光源光L1は、径方向の単位面積(つまり、光束の断面積)当たりのエネルギーが比較的低い。
【0017】
変換部120は、コリメートレンズ121を備えている。コリメートレンズ121は、円錐状に広がって進む光源光L1を、所定の径の平行光に変換する。以下の説明において、コリメートレンズ121によって平行光に変換されたレーザー光Lのことを、コリメート光L2ともいう。すなわち、変換部120は、出射された光源光L1を所定の径のコリメート光L2に変換する。
コリメート光L2は、上述したように、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的低い状態の光源光L1を平行光に変換した光である。したがって、コリメート光L2は、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的低い。
【0018】
分割部130は、変換部120から入射するコリメート光L2を、反射方向が互いに異なる複数の分割ミラー132(反射鏡)によって反射することにより、複数のコリメート光L2として出射する。分割部130の構成の具体例について
図2を参照して説明する。
【0019】
図2は、本実施形態の分割部130の構成の一例を示す図である。分割部130は、導光ミラー131と、分割ミラー132とを備える。
導光ミラー131は、変換部120から入射するコリメート光L2を分割ミラー132に導光する。なお、分割部130は、コリメート光L2を分割ミラー132に導光できる構成になっていればよく、導光ミラー131は必須の構成要素ではない。例えば、変換部120から出射されたコリメート光L2が直接的に分割ミラー132に入射するように構成されていてもよい。
分割ミラー132は、入射するコリメート光L2を、複数のコリメート光L2に分割する。一例として、分割ミラー132は、第1分割ミラー1321と、第2分割ミラー1322とを備えている。分割ミラー132に入射したコリメート光L2は、第1分割ミラー1321に反射された第1コリメート光L21と、第2分割ミラー1322に反射された第2コリメート光L22とに分割される。
【0020】
第1分割ミラー1321の法線NL1と、分割ミラー1322の法線NL2とは、互いに平行ではなく、1点(例えば、遠方の1点)で交わるように配置されている。つまり、第1分割ミラー1321と第2分割ミラー1322とは、反射方向が互いに異なる。
第1分割ミラー1321で反射された第1コリメート光L21と、第2分割ミラー1322で反射された第2コリメート光L22とは、1点で交わるように導光される。
第1コリメート光L21と、第2コリメート光L22とは、平行光ではなく、波面が互いに一致していないため、互いに干渉して光軸AX方向に強度分布を生じさせる。
【0021】
分割部130は、コリメート光L2を第1コリメート光L21と第2コリメート光L22とに分割して、分割したコリメート光L2を出射部20に出射する。
【0022】
図1に戻り、出射部20は、光源部10から入射するコリメート光L2を収束させて、収束させたコリメート光L2を描画空間2の内部の集光位置23に導光する。以下の説明において、出射部20が収束させたコリメート光L2のことを収束光L3ともいう。出射部20が出射する収束光L3の進行方向を光軸AXともいう。
【0023】
上述したように、収束光L3は、コリメート光L2を収束(つまり、縮径)させた光である。したがって、収束光L3は、コリメート光L2に比べ、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的高い。収束光L3の径方向の単位面積当たりのエネルギーは、最も収束(縮径)した位置において、最も高くなる。
つまり、蛍光物質21に入射する収束光L3のエネルギーは、最も収束(縮径)した位置において最も高い。
【0024】
出射部20は、収束部230と、走査部240とを備える。なお、出射部20は、変調部220を備えていてもよい。
【0025】
変調部220は、空間位相変調器221を備える。空間位相変調器221は、分割部130によって分割された複数のコリメート光L2のうち、少なくとも1つのコリメート光L2の位相を、制御部60の制御に基づいて変調する。
例えば、
図2に示すように、変調部220は、分割された第1コリメート光L21と第2コリメート光L22のうちの一方(同図の一例では、第2コリメート光L22)の位相を変調する。変調部220は、第2コリメート光L22の位相を変調することにより、第1コリメート光L21と第2コリメート光L22とが干渉する位置において、コリメート光L2どうしの干渉の状態を変更することができる。
変調部220は、位相を変調した(すなわち、位相が制御された)コリメート光L2を、収束部230に出射する。
【0026】
なお、出射部20が変調部220を備えていない場合がある。この場合には、光源部10から出射部20に入射したコリメート光L2は、変調部220を経ずに収束部230に入射する。すなわち、収束部230には、光源部10の分割部130からコリメート光L2が入射する。
【0027】
図1に戻り、収束部230は、入射する複数のコリメート光L2をそれぞれ収束させて複数の収束光L3とし、集光位置23において複数の収束光L3どうしを干渉させる。
より具体的には、収束部230は、収束レンズ231を備えている。収束レンズ231は、透過するレーザー光Lが収束する位置(つまり、焦点距離)を、制御部60の制御に基づいて変更することができる。
収束部230を透過するレーザー光Lは、上述した分割部130によって分割された第1コリメート光L21と第2コリメート光L22とによって構成されている。収束部230は、入射する第1コリメート光L21と、第2コリメート光L22とをそれぞれ収束させる。したがって、収束部230から出射される収束光L3は、第1コリメート光L21に基づく第1収束光L31と、第2コリメート光L22に基づく第2収束光L32とによって構成される。
【0028】
走査部240は、走査鏡241(例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラーなど)を備えており、収束部230が収束させるレーザー光Lの出射方向を変化させる。
ここで、走査部240が描画空間2を走査する方向について、XYZの三次元直交座標系を用いて説明する。
三次元直交座標系のX軸およびY軸は、出射部20から描画空間2を見込んだ場合の画角を表す。X軸は、描画空間2の水平方向(
図1の左右方向)を示す。Y軸は、描画空間2の奥行き方向(
図1の奥行き方向)を示す。走査部240は走査鏡241の方向を変化させることによって、描画空間2のXY平面内の任意の位置に向けて、収束光L3を出射することができる。つまり、走査部240は、収束光L3をXY平面において二次元走査する二次元走査部である、ともいえる。
三次元直交座標系のZ軸は、出射部20から描画空間2を見込んだ場合の奥行を表す。上述した収束部230は、収束光L3の収束位置(収束レンズ231の焦点距離)を変化させることにより、収束光L3の集光位置23を、Z軸方向に変化させることができる。
つまり、収束部230と、走査部240とを合わせて、収束光L3をXYZ空間において三次元走査する三次元走査部である、ともいえる。以下の説明において、収束部230と走査部240とを合わせた三次元走査部のことを単に走査部ともいう。
なお、本実施形態の一例では、描画空間2は円筒形状である。走査部240は、描画空間2の円筒の底面から、収束光L3を描画空間2に入射させる。この一例では、XY平面は、描画空間2の底面に平行な面を表す。また、Z軸は、描画空間2の円筒の高さを表す。
【0029】
走査部240は、レーザー光Lが照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲として、収束光L3が収束する焦点距離と、収束光L3が出射される光軸AXの方向とを変化させることにより、レーザー光Lの集光位置23を三次元走査する。
走査部240から出射されるレーザー光L(つまり、収束光L3)は、上述した分割部130が分割した第1コリメート光L21に基づく第1収束光L31と、第2コリメート光L22に基づく第2収束光L32とによって構成されている。
【0030】
ここで、走査部240は、単一の走査鏡241を備えている。走査部240は、単一の走査鏡241に入射する複数の収束光L3(例えば、第1収束光L31および第2収束光L32)が出射される光軸AXの方向をまとめて変化させる。
【0031】
すなわち、走査部240は、レーザー光Lが照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲として、収束部230によって収束光L3が収束される焦点距離を変化させるとともに、単一の走査鏡241(光軸方向変更素子の一例)によって複数の収束光L3が出射される光軸AXの方向(つまり、光軸方向)をまとめて変化させることにより、集光位置23を三次元走査する。
このように走査部240が単一の走査鏡241によって構成されているため、複数の収束光L3の出射方向をまとめて変化させることができる。
【0032】
ここで、仮に複数の走査鏡によって収束光L3の出射方向を変化させる場合、複数の走査鏡の角度間に機械的な誤差が生じる場合がある。複数の走査鏡の角度間に誤差が生じると、第1収束光L31および第2収束光L32の収束位置における収束光L3どうしの干渉の状態に誤差が生じる。つまり、複数の収束光L3を複数の走査鏡によってそれぞれ出射させる構成であると、収束光L3の干渉の状態の制御が困難になる。
一方、本実施形態の走査部240は、単一の走査鏡241によって構成されているため、複数の収束光L3の出射方向間に機械的な誤差が生じない。したがって、本実施形態の走査部240によれば、収束光L3の干渉の状態の制御をより容易にすることができる。
【0033】
なお、本実施形態において、走査部240は、レーザー光L(コリメート光L2または収束光L3)の出射光量を調整する光量調整部(例えば、絞り)や、レーザー光Lの出射を遮る遮断部(例えば、シャッター)を備えていてもよい(いずれも不図示)。これら光量調整部や遮断部は、収束部230および走査部240と同期制御されることにより、描画空間2内の任意の位置に収束光L3の集光位置23を制御する。
【0034】
収束光L3は、描画空間2内の集光位置23において、蛍光物質21を励起する励起光として利用される。蛍光物質21の発光強度は、励起光の強度(つまり、集光位置23において収束した収束光L3の強度)に比例する。収束光L3は、集光位置23において収束することにより単位体積当たりのエネルギー(つまり、体積エネルギー密度)が高まる。このため、蛍光物質21は、集光位置23において強く発光する。
以下の説明において、集光位置23のうち、収束光L3が最も収束する位置を、集光点ともいう。
【0035】
出射部20は、収束部230および走査部240(つまり、三次元走査部)によって、描画空間2内の各位置を集光位置23にするようにして走査することにより、描画空間2内に立体像22を描く。
なお、出射部20は、描画空間2内において、いわゆるベクタースキャンによる走査を行ってもよいし、いわゆるラスタースキャンによる走査を行ってもよい。
【0036】
記憶部30は、例えば、半導体記憶装置や磁気記憶装置などによる既知の記憶機能を備えており、制御部60が利用する種々の情報を記憶する。
【0037】
制御部60は、例えば、コンピュータ装置であり、記憶部30に記憶されているプログラムおよびデータに基づいて、所定の機能を提供する。制御部60は、その機能部として、強度制御部620と、位相制御部640とを備える。
【0038】
強度制御部620は、記憶部30に記憶されている描画データに基づいて、出射部20が出射するレーザー光Lの強度を制御する。描画データとは、描画空間2内の三次元位置ごとの像の明るさを示す情報である。つまり、描画データは、立体像22を表示するための情報である。
【0039】
強度制御部620は、複数の収束光L3それぞれ単独では蛍光物質21が発光しない程度の強度にしつつ、複数の収束光L3が集光位置23の集光点において互いに干渉した場合に蛍光物質21が発光する程度の強度にして、レーザー光Lの強度を制御する。
一例として、記憶部30には、強度制御テーブル(不図示)が予め記憶されている。強度制御テーブルとは、レーザー光Lの波長、ビーム径、干渉特性などのレーザー光Lの特性、描画空間2の寸法、描画空間2内における蛍光物質21の濃度、蛍光物質21の発光特性などの描画空間2の特性、出射部20から描画空間2までの光路長、描画空間2の周囲の明るさなどの立体表示装置1の設置状況の特性、などの各種パラメータに基づいて予め算出された、レーザー光Lの強度を示す情報である。強度制御部620は、立体表示装置1の記憶部30に記憶されている強度制御テーブルを参照して、レーザー光Lの強度を制御する。
強度制御部620は、立体表示装置1の設置状況において変化する上記の各種パラメータを取得して、取得したパラメータに応じてレーザー光Lの強度を可変制御してもよい。例えば、強度制御部620は、描画空間2の周囲の明るさを取得して、取得した描画空間2の周囲の明るさに応じてレーザー光Lの強度を可変制御してもよい。
【0040】
位相制御部640は、光源部10からの、複数のコリメート光L2のうち、少なくとも1つのコリメート光L2の位相を制御する。上述したように、本実施形態の出射部20は、変調部220を備える場合がある。位相制御部640は、変調部220が備える空間位相変調器221を制御することにより、複数のコリメート光L2のうち、少なくとも1つ(例えば、第2コリメート光L22)の位相を制御する。
一例として、位相制御部640は、既知の手段によって立体像22を形成する蛍光物質21の発光状態を検出する。位相制御部640は、蛍光物質21の発光状態が、所定の状態(例えば、描画データによって定義された明るさ)になっているか否かを判定する。位相制御部640は、蛍光物質21の発光状態が所定の状態からずれている場合には、蛍光物質21の発光状態が所定の状態に近づくように、変調部220を制御する。
【0041】
[立体表示装置1の動作]
次に、
図3を参照して、立体表示装置1の動作の流れの一例について説明する。
図3は、本実施形態の立体表示装置1の動作の流れの一例を示す図である。
(ステップS10)制御部60は、記憶部30から描画データを取得する。上述したように、描画データとは、立体像22を表示するための情報である。
(ステップS20)制御部60は、レーザー光源110を制御することにより、レーザー光Lの出射強度を制御する。
【0042】
(ステップS30)制御部60は、変調部220の空間位相変調器221を制御することにより、コリメート光L2の位相を制御する。
【0043】
(ステップS40)制御部60は、収束部230の収束レンズ231及び走査部240の走査鏡241を制御する(つまり、走査部を駆動する)ことにより、収束光L3の集光位置23を制御する。
(ステップS50)制御部60は、描画データが示す三次元位置の走査が終了すると、次の描画データがあるか否かを判定する。制御部60は、次の描画データがある(ステップS40;YES)と判定した場合には、処理をステップS10に戻して、処理を継続する。制御部60は、次の描画データがない(ステップS40;NO)と判定した場合には、処理を終了する。
【0044】
[励起光(レーザー光L)の強度と蛍光物質の発光状態との関係について]
図4を参照して、本実施形態の集光位置23における集光状態の一例について説明する。
図4は、本実施形態の立体表示装置1から出射された収束光L3の干渉の状態を示す図である。同図は、立体表示装置1から出射された収束光L3が収束する集光位置23における、光軸AX方向(Z軸方向)の干渉の状態を模式的に表している。
出射部20が出射した第1収束光L31および第2収束光L32は、集光位置23においてそれぞれ収束するとともに、これら2つの収束光L3どうしが干渉する。
この複数の収束光L3どうしの干渉によって、集光位置23の光軸AX方向に励起エネルギーの強弱の分布が生じる。
ここで、集光位置23における収束光L3の入射エネルギーの計算モデルについて
図5を参照して説明する。
【0045】
図5は、本実施形態の集光位置23における収束光L3の入射エネルギーの計算モデルの一例を示す図である。出射部20から出射された収束光L3は、光軸AXを中心とし、集光位置23の集光点を頂点とする円錐形状を有している。同図において、光軸AXの方向はZ軸の方向に一致している。角度θは円錐の頂角の半分の角度(すなわち、光軸AXと円錐の母線とがなす角度)である。面積Sは、集光位置23の集光点から-Z方向(つまり、出射部20の方向)に距離zだけ離れた位置での、光軸AXに直交し半径Rである仮想円盤(円錐の断面)の面積である。長さdzは、仮想円盤の厚み(Z軸方向の微小長さ)である。
この仮想円盤の面積Sは、集光点からの距離zと角度θの関数で表すことができ、集光点に近いほど小さい。
したがって、描画空間2内に蛍光物質21が一様に分布している場合、仮想円盤の体積(S×dz)内に含まれる蛍光物質21の粒子数は、集光点に近いほど少なくなる。つまり、仮想円盤の体積(S×dz)内に含まれる蛍光物質21の粒子数は、集光点を極小値として、集光点からZ軸方向に離れるほど増加する。
また、描画空間2に入射した収束光L3は、描画空間2内の光路上の蛍光物質21を発行させつつ進行する。このため、収束光L3は、蛍光物質21内を進む距離に応じた、蛍光物質21の存在数×量子効率分ずつエネルギーが減衰する。
【0046】
上述した仮想円盤への収束光L3の入射エネルギーを仮想円盤の面積Sで割れば、断面ごとのエネルギー密度が算出される。このエネルギー密度は、面積Sが比較的小さくなる集光位置23の集光点付近で急激に高くなる。
蛍光物質21の発光量は、励起光(すなわち、収束光L3)のエネルギー密度に比例する。このため、蛍光物質21の発光量は、集光位置23の集光点付近で急激に高くなる。したがって、立体表示装置1は、描画空間2内の集光点の位置を制御して、描画空間2内における任意の位置で蛍光物質21を発光させることにより、立体像22を描くことができる。
【0047】
蛍光物質21は描画空間2内に一様に分布している。このため、出射部20から集光位置23に向けて収束光L3を出射した場合、その収束光L3の光軸AX上にある蛍光物質21は、少なからず励起エネルギーを吸収して発光する。この状態を描画空間2を観察する観察者400から見れば、描画空間2に入射した収束光L3の光路が視認されることになる。つまり、本来発光させるべき集光点以外の位置が発光することになり、立体像22のコントラスト低下が生じる。出射部20から集光位置23までの収束光L3の経路上にある蛍光物質21は発光させずに、集光位置23の集光点においてのみ蛍光物質21を発光させることができれば立体像22のコントラストを向上させることができ、立体像22の画像品質が向上する。
【0048】
本実施形態の立体表示装置1は、出射部20から複数の収束光L3を出射するとともに、出射した複数の収束光L3を集光点において干渉させる。立体表示装置1は、収束光L3の集光点における励起エネルギーを途中光路上よりも高めて、収束光L3の光軸AX上の蛍光物質21の発光を抑えることにより、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0049】
図6は、収束光L3の波の変位特性の一例を示す図である。同図において、第1収束光L31および第2収束光L32の変位を、いずれも±1に正規化して表現している。この一例の場合、第1収束光L31および第2収束光L32は、いずれも波長0.0004[mm]であり、かつ、互いの位相のずれはない。
【0050】
図7は、複数の収束光L3どうしの干渉特性の一例を示す図である。
図6に示した第1収束光L31と第2収束光L32とが集光位置23において互いに干渉すると、干渉後のレーザー光Lの強度は、元の収束光L3(つまり、第1収束光L31および第2収束光L32)の強度の和の2乗となる。
例えば、第1収束光L31および第2収束光L32の変位(振幅)がいずれも±1である場合、干渉後のレーザー光Lの強度の最大値は4となる。一方、干渉前の収束光L3(第1収束光L31および第2収束光L32)の強度の最大値は、それぞれ1である。つまり、干渉後のレーザー光Lの強度は、干渉前のレーザー光Lの強度に比べて大きくなっている。この一例では、干渉後のレーザー光Lの強度は、干渉前のレーザー光Lの強度の4倍である。
【0051】
ここで、複数のレーザー光Lが集光位置23に至るまでは互いに干渉せず、集光位置23(特に集光点)において互いに干渉するようにレーザー光Lの光学系が配置されていれば、集光位置23に至るまでは蛍光物質21が発光しにくく、集光位置23において強く発光するようにすることが可能である。すなわち、複数のレーザー光Lが集光位置23に至るまでは互いに干渉せず、集光位置23(特に集光点)において互いに干渉するようにレーザー光Lの光学系が配置されていれば、描画空間2内における立体像22のコントラストが高まり、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0052】
本実施形態の立体表示装置1は、複数のレーザー光Lが集光位置23に至るまでは互いに干渉せず、集光位置23(特に集光点)において互いに干渉するようにレーザー光Lの光学系を配置しているため、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0053】
また、本実施形態の立体表示装置1は、位相制御部640を備えているため、集光位置23における複数の収束光L3どうしの干渉の状態を変化させることができる。このように構成された立体表示装置1によれば、集光位置23における励起エネルギーの強さを変化させることができ、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0054】
[変形例]
図8は、本実施形態の分割ミラー132の構成の変形例を示す図である。上述した実施形態では、分割ミラー132は、第1分割ミラー1321と第2分割ミラー1322との2分割ミラーであるとして説明したが、これに限られない。同図に示すように、分割ミラー132は、4分割ミラーであってもよい。この場合、分割ミラー132は、第11分割ミラー1321A、第12分割ミラー1321B、第21分割ミラー1322A、および、第22分割ミラー1322Bに4分割されている。第11分割ミラー1321Aの法線NL11、第12分割ミラー1321Bの法線NL12、第21分割ミラー1322Aの法線NL21、および、第22分割ミラー1322Bの法線NL22は、遠方のある1点において収束するように、いずれも互いに異なる方向に向けて配置される。
第11分割ミラー1321Aが出射する収束光L3を第1収束光L31、第12分割ミラー1321Bが出射する収束光L3を第2収束光L32、第21分割ミラー1322Aが出射する収束光L3を第3収束光L33、および第22分割ミラー1322Bが出射する収束光L3を第4収束光L34ともいう。
【0055】
図9は、本変形例における、収束光L3の波の変位特性の一例を示す図である。同図において、第1収束光L31、第2収束光L32、第3収束光L33および第4収束光L34の変位を、いずれも±1に正規化して表現している。実際には第1収束光L31から第4収束光L34は、集光位置23において同時に重なって干渉するが、ここでは説明のために便宜的に二つずつの光束が重なる場合に分けて説明する。
図9は
図7と同じように、まず二つの収束光例えば第1収束光L31と第2収束光L32が、集光位置23において重なった状態を示していて、振幅は±2である。同様に第3収束光L33および第4収束光L34を重ねた状態も、振幅は±2になる。この一例の場合、第1収束光L31、第2収束光L32、第3収束光L33および第4収束光L34は、いずれも波長0.0004[mm]であり、かつ、互いの位相のずれはない。
【0056】
図10は、本変形例における、複数の収束光L3どうしの干渉特性の一例を示す図である。
図9に示した第1収束光L31と第2収束光L32との重ね合わせと、第3収束光L33および第4収束光L34との重ね合わせとが集光位置23において互いに干渉すると、干渉後のレーザー光Lの強度は、元の収束光L3の振幅の和の2乗となる。
例えば、第1収束光L31と第2収束光L32とを重ね合わせた波の変位(振幅)と、第3収束光L33と第4収束光L34とを重ね合わせた波の変位(振幅)がいずれも±2である場合、干渉後のレーザー光Lの振幅は±4となり、強度の最大値は16となる。一方、干渉前の収束光L3(第1収束光L31、第2収束光L32、第3収束光L33および第4収束光L34)の強度の最大値は、それぞれ1である。つまり、干渉後のレーザー光Lの強度は、干渉前のレーザー光Lの強度に比べて大きくなっている。この一例では、干渉後のレーザー光Lの強度は、干渉前のレーザー光Lの強度の16倍である。
【0057】
立体表示装置1において、分割ミラー132が4分割されている場合には、出射部20から出射される収束光L3が4分割される。分割ミラー132の分割数が増えるほど、干渉前の収束光L3の強度と、干渉後の収束光L3の強度との比を大きくすることができ、立体像22のコントラストをより向上させることができる。
【0058】
また、この変形例においても、立体表示装置1は、分割した収束光L3を単一の走査系(例えば、単一の収束レンズ231と単一の走査鏡241)によって走査するため、収束光L3の干渉位置の機械誤差を低減することができる。
【0059】
なお、分割ミラー132の分割数が、2分割または4分割であることは一例であって、これに限られない。分割ミラー132の分割数は、2分割以上であれば、その分割数は問わない。また、上述した説明において分割ミラー132は、平面鏡であることを前提にしたが、これに限られない。例えば、分割ミラー132は、凹面鏡であってもよい。この場合、分割部130は、コリメート光L2の光路の一部を遮光する遮光マスクなどによって光路分割させてから、凹面鏡である分割ミラー132に入射させてもよい。このように遮光マスクと凹面鏡とで構成された分割部130によれば、レーザー光Lの分割数を容易に増加させることができ、かつ複数の平面鏡の光軸AXを合わせこむための機械的誤差を低減することができる。
【0060】
[他の変形例]
図11は、本実施形態の立体表示装置1の構成の変形例を示す図である。立体表示装置1は、集光位置23で干渉する複数のレーザー光Lを出射できれば、どのように構成されていてもよい。上述した実施形態において、立体表示装置1は、単一のレーザー光源110から出射されたレーザー光Lを分割部130が複数のレーザー光Lに分割するとして説明したが、これに限られない。
本変形例において、立体表示装置1は、レーザー光源110が、第1レーザー光源1101と、第2レーザー光源1102との複数の光源によって構成されている。レーザー光源110は、第1光源光L11と第2源光L12とを出射する。
【0061】
すなわち、本変形例の立体表示装置1は、それぞれレーザー光Lを出射する複数のレーザー光源110(例えば、第1レーザー光源1101、第2レーザー光源1102)を備える。変換部120は、それぞれのレーザー光源110から出射されたレーザー光Lを所定の径のコリメート光L2に変換する。
なお、コリメートレンズ121には、第1コリメートレンズ1211と、第2コリメートレンズ1212とがある。第1コリメートレンズ1211は、第1コリメート光L21を出射する。第2コリメートレンズ1212は、第2コリメート光L22を出射する。第1コリメートレンズ1211と、第2コリメートレンズ1212とは、互いに、やや内側に向けて配置されている。すなわち、第1コリメートレンズ1211の出射軸と、第2コリメートレンズ1212の出射軸とが、互いに平行ではなく、ある1点で交わるように、第1コリメートレンズ1211と、第2コリメートレンズ1212とが配置されている。
光源部10は、変換部120が変換した複数のコリメート光L2をそれぞれ出射する。
収束部230は、光源部10から入射する複数のコリメート光L2をそれぞれ収束させて、集光位置23において複数のコリメート光L2どうしを干渉させる。
【0062】
このように構成された立体表示装置1においても、干渉前の収束光L3の強度よりも、干渉後の収束光L3の強度を大きくすることができ、立体像22のコントラストをより向上させることができる。
【0063】
また、この変形例においても、立体表示装置1は、分割した収束光L3を単一の走査系(例えば、単一の収束レンズ231と単一の走査鏡241)によって走査するため、収束光L3の干渉位置の機械誤差を低減することができる。
【0064】
以上説明したように、本実施形態の立体表示装置1は、収束光L3を複数の光束に分割して、あるいは複数の光源を備えることにより、複数の収束光L3を描画空間2に入射させるとともに、集光位置23において複数の収束光L3どうしを干渉させることができる光学系を備えている。したがって、本実施形態の立体表示装置1によれば、描画空間2に入射する収束光L3の強度を、蛍光物質21の発光が十分に抑制される程度に低くしつつ、集光位置23において蛍光物質21が十分に発光する程度の励起エネルギーを蛍光物質21に与えることができる。このため、本実施形態の立体表示装置1によれば、描画空間2の入射位置から集光位置23までの収束光L3の途中経路における蛍光物質21の発光を抑制することができ、立体像22のコントラストを向上させることができる。つまり、本実施形態の立体表示装置1によれば、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…立体表示装置、2…描画空間、10…光源部、20…出射部、21…蛍光物質、22…立体像、23…集光位置、30…記憶部、60…制御部、110…レーザー光源、120…変換部、130…分割部、220…変調部、230…収束部、240…走査部、620…強度制御部