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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137223
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】立体表示装置及び立体表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 30/50 20200101AFI20240927BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20240927BHJP
   H04N 13/398 20180101ALI20240927BHJP
   H04N 13/388 20180101ALI20240927BHJP
【FI】
G02B30/50
G02B26/10 C
H04N13/398
H04N13/388
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048666
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
2H045
2H199
【Fターム(参考)】
2H045AA01
2H045AB01
2H045BA13
2H045BA15
2H045BA20
2H199BA22
2H199BB02
2H199BB45
2H199BB60
(57)【要約】
【課題】立体像の画像品質を向上させる。
【解決手段】立体表示装置は、レーザー光を出射するレーザー光源と、出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、前記コリメート光の波面を変化させることにより、前記コリメート光をゼロ次光と、1次光以上の高次光とに分離する分離部と、レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記ゼロ次光と前記高次光とを含んだ収束光が出射される光軸方向と、前記ゼロ次光が収束する焦点距離とを変化させることにより、前記収束光の集光位置を三次元走査する走査部と、前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を出射するレーザー光源と、
出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、
前記コリメート光の波面を変化させることにより、前記コリメート光をゼロ次光と、1次光以上の高次光とに分離する分離部と、
レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記ゼロ次光と前記高次光とを含んだ収束光が出射される光軸方向と、前記ゼロ次光が収束する焦点距離とを変化させることにより、前記収束光の集光位置を三次元走査する走査部と、
前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、
を備える立体表示装置。
【請求項2】
前記分離部は、空間位相変調器であり、前記集光位置において、前記ゼロ次光の焦点位置と前記高次光の焦点位置とを、前記光軸方向に互いに離れた位置に分布させる
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項3】
前記分離部は、二次元回折格子であり、前記集光位置において、前記ゼロ次光の焦点位置と前記高次光の焦点位置とを、前記収束光の径方向に互いに離れた位置に分布させる
請求項1に記載の立体表示装置。
【請求項4】
レーザー光を出射することと、
出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換することと、
前記コリメート光の波面を変化させることにより、前記コリメート光をゼロ次光と、1次光以上の高次光とに分離することと、
レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記ゼロ次光と前記高次光とを含んだ収束光が出射される光軸方向と、前記ゼロ次光が収束する焦点距離とを変化させることにより、前記収束光の集光位置を三次元走査すること、
前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御することと、
を有する立体表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体表示装置及び立体表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に映像を表示する立体表示装置について、様々な方法が提案されている。このような従来の立体表示装置の例として、レーザーを集光してプラズマを発生させることでvoxel(空間的な画素)を形成し、空中に映像を表示する技術が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-206588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のような立体表示装置においては、蛍光物質にレーザー光を励起光として入射させて輝点を生じさせることにより、十分な明るさの立体像を描くことが可能である。一方で、蛍光物質の特性と、励起光であるレーザー光の強さとの対応関係によっては、所望の位置に輝点を描くことが困難である場合があった。このような場合、立体像の画像品質が低下してしまうという課題があった。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであって、立体像の画像品質を向上させることができる立体表示装置及び立体表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の一態様は、レーザー光を出射するレーザー光源と、出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換する変換部と、前記コリメート光の波面を変化させることにより、前記コリメート光をゼロ次光と、1次光以上の高次光とに分離する分離部と、レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記ゼロ次光と前記高次光とを含んだ収束光が出射される光軸方向と、前記ゼロ次光が収束する焦点距離とを変化させることにより、前記収束光の集光位置を三次元走査する走査部と、前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御する強度制御部と、を備える立体表示装置である。
【0007】
[2]また、本発明の一態様は、上記[1]に記載の立体表示装置において、前記分離部は、空間位相変調器であり、前記集光位置において、前記ゼロ次光の焦点位置と前記高次光の焦点位置とを、前記光軸方向に互いに離れた位置に分布させる。
【0008】
[3]また、本発明の一態様は、上記[1]に記載の立体表示装置において、前記分離部は、二次元回折格子であり、前記集光位置において、前記ゼロ次光の焦点位置と前記高次光の焦点位置とを、前記収束光の径方向に互いに離れた位置に分布させる。
【0009】
[4]本発明の一態様は、レーザー光を出射することと、出射されたレーザー光を所定の径のコリメート光に変換することと、前記コリメート光の波面を変化させることにより、前記コリメート光をゼロ次光と、1次光以上の高次光とに分離することと、レーザー光が照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質が含まれる描画空間を走査対象範囲として、前記ゼロ次光と前記高次光とを含んだ収束光が出射される光軸方向と、前記ゼロ次光が収束する焦点距離とを変化させることにより、前記収束光の集光位置を三次元走査すること、前記描画空間内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、前記集光位置における強度を制御することと、を有する立体表示方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、立体像の状態を観察される状況に応じて制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の立体表示装置の構成の一例を示す図である。
図2】本実施形態の立体表示装置の動作の流れの一例を示す図である。
図3】本実施形態の集光位置における集光状態の一例を示す図である。
図4】本実施形態の集光位置における収束光の入射エネルギーの計算モデルの一例を示す図である。
図5】分離部が存在しない場合の蛍光物質の発光量の一例を示す図である。
図6】第1実施形態の分離部による収束光の光路の一例を示す図である。
図7】本実施形態の集光位置を拡大した光路の一例を示す図である。
図8】本実施形態の集光位置における収束光の断面の一例を示す図である。
図9】本実施形態の蛍光物質の発光量の一例を示す図である。
図10】本実施形態の他の濃度に最適化した場合の集光位置を拡大した光路の一例を示す図である。
図11】本実施形態の他の濃度に最適化した場合の集光位置における収束光の断面の一例を示す図である。
図12】本実施形態の蛍光物質の発光量の一例を示す図である。
図13】第2実施形態の分離部による収束光の光路の一例を示す図である。
図14】本実施形態の集光位置を拡大した光路の一例を示す図である。
図15】本実施形態の集光位置における収束光の断面の一例を示す図である。
図16】本実施形態の集光位置を拡大した光路の他の一例を示す図である。
図17】本実施形態の集光位置における収束光の断面の他の一例を示す図である。
図18】本実施形態の蛍光物質の発光量の一例を示す図である。
図19】本実施形態の蛍光物質の発光量の一例を示す図である。
図20】本実施形態の変形例における集光位置付近の光路の一例を示す図である。
図21】本実施形態の変形例における収束光の断面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の態様に係る立体表示装置について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。また、本願でいう「XXに基づいて」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含む。また、「XXに基づいて」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含む。「XX」は、任意の要素(例えば、任意の情報)である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、各構造における縮尺および数等を、実際の構造における縮尺および数等と異ならせる場合がある。
以下、図を参照しながら、実施形態について説明する。
【0013】
[立体表示装置1の機能構成]
図1は、本実施形態の立体表示装置1の構成の一例を示す図である。立体表示装置1は、蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲としてレーザー光Lを走査することにより、描画空間2に立体像を表示する装置である。
描画空間2とは、内部に蛍光物質21を保持することができる空間である。一例として、描画空間2とは、内部に粉末状の蛍光物質21が封入された、円筒形状の透明な壁を有する円筒容器の内部空間である。この場合、描画空間2は、中空の領域である。他の一例として、描画空間2とは、蛍光物質21が練りこまれた透明樹脂で形成された物体である。この場合、描画空間2は、中実の領域である。
つまり、描画空間2の「空間」とは、三次元に広がる領域であればよく、中空であるか忠実であるかを問わない。また、描画空間2は、気体、液体、固体のいずれで構成されていてもよい。
【0014】
蛍光物質21とは、フォトルミネッセンス効果のある材料であり、本実施形態の一例においては量子ドット(QD;Quantum Dot)分散体である。QD分散体とは、量子ドットを有機溶媒(例えば、トルエン)中、気体中、あるいは固体中に、所定の体積濃度で散在させたものである。
例えば、蛍光物質21は、希土類元素を含む蛍光体を透明な樹脂中に分散(散在)させて固化したものであってもよい。
【0015】
立体表示装置1は、光源部10と、出射部20と、記憶部30と、制御部60とを備える。
【0016】
光源部10は、レーザー光源110と、変換部120とを備える。
レーザー光源110は、レーザー光Lを出射する。レーザー光源110は、一例として、紫外線レーザーや、波長405nmの小型レーザーダイオードなどであってもよい。以下の説明において、レーザー光源110が出射するレーザー光Lのことを光源光L1ともいう。
【0017】
レーザー光源110から出射される光源光L1は、平行光ではなく、レーザー光源110を頂点にした円錐状に広がって進む性質を有している。
レーザー光源110から出射された直後の光源光L1は、径が十分に小さい。一方、レーザー光源110から離れた位置の光源光L1は、出射された直後の光源光L1に比べて拡径している。このため、レーザー光源110から出射された直後の光源光L1は、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的高い。また、レーザー光源110から離れた位置の光源光L1は、径方向の単位面積(つまり、光束の断面積)当たりのエネルギーが比較的低い。
【0018】
変換部120は、コリメートレンズ121を備えている。コリメートレンズ121は、円錐状に広がって進む光源光L1を、所定の径の平行光に変換する。以下の説明において、コリメートレンズ121によって平行光に変換されたレーザー光Lのことを、コリメート光L2ともいう。すなわち、変換部120は、出射された光源光L1を所定の径のコリメート光L2に変換する。
コリメート光L2は、上述したように、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的低い状態の光源光L1を平行光に変換した光である。したがって、コリメート光L2は、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的低い。
【0019】
出射部20は、光源部10から入射するコリメート光L2を収束させて、収束させたコリメート光L2を描画空間2の内部の集光位置23に導光する。以下の説明において、出射部20が収束させたコリメート光L2のことを収束光L3ともいう。出射部20が出射する収束光L3の進行方向を光軸AXともいう。
【0020】
上述したように、収束光L3は、コリメート光L2を収束(つまり、縮径)させた光である。したがって、収束光L3は、コリメート光L2に比べ、径方向の単位面積当たりのエネルギーが比較的高い。収束光L3の径方向の単位面積当たりのエネルギーは、最も収束(縮径)した位置において、最も高くなる。
つまり、蛍光物質21に入射する収束光L3のエネルギーは、最も収束(縮径)した位置において最も高い。
【0021】
出射部20は、分離部210と、収束部230と、走査部240とを備える。
分離部210は、空間位相変調器211や回折格子212(二次元回折格子)を備えており、コリメート光L2の波面を変化させることにより、コリメート光L2をゼロ次光と、高次光とに分離する。以下の説明において、分離部210が分離したコリメート光L2のうち、ゼロ次光をゼロ次コリメート光L210ともいう。また、分離部210が分離したコリメート光L2のうち、±1次光を+1次コリメート光L211および-1次コリメート光L212ともいう。
すなわち、分離部210は、コリメート光L2の波面を変化させることにより、コリメート光L2をゼロ次コリメート光L210(ゼロ次光)と、1次光以上の高次光(例えば、+1次コリメート光L211、-1次コリメート光L212)とに分離する。
【0022】
収束部230は、収束レンズ231を備えている。収束レンズ231は、透過するレーザー光Lが収束する位置(つまり、焦点距離)を、制御部60の制御に基づいて変更することができる。収束部230を透過するレーザー光Lは、上述した分離部210によって分離されたゼロ次光と、高次光とによって構成されている。
【0023】
走査部240は、走査鏡241(例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラーなど)を備えており、収束部230が収束させるレーザー光Lの出射方向を変化させる。
ここで、走査部240が描画空間2を走査する方向について、XYZの三次元直交座標系を用いて説明する。
三次元直交座標系のX軸およびY軸は、出射部20から描画空間2を見込んだ場合の画角を表す。X軸は、描画空間2の水平方向(図1の左右方向)を示す。Y軸は、描画空間2の奥行き方向(図1の奥行き方向)を示す。走査部240は走査鏡241の方向を変化させることによって、描画空間2のXY平面内の任意の位置に向けて、収束光L3を出射することができる。つまり、走査部240は、収束光L3をXY平面において二次元走査する二次元走査部である、ともいえる。
三次元直交座標系のZ軸は、出射部20から描画空間2を見込んだ場合の奥行を表す。上述した収束部230は、収束光L3の収束位置(収束レンズ231の焦点距離)を変化させることにより、収束光L3の集光位置23を、Z軸方向に変化させることができる。
つまり、収束部230と、走査部240とを合わせて、収束光L3をXYZ空間において三次元走査する三次元走査部である、ともいえる。以下の説明において、収束部230と走査部240とを合わせた三次元走査部のことを単に走査部ともいう。
なお、本実施形態の一例では、描画空間2は円筒形状である。走査部240は、描画空間2の円筒の底面から、収束光L3を描画空間2に入射させる。この一例では、XY平面は、描画空間2の底面に平行な面を表す。また、Z軸は、描画空間2の円筒の高さを表す。
【0024】
走査部240は、レーザー光Lが照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲として、収束光L3が収束する焦点距離と、収束光L3が出射される光軸AXの方向とを変化させることにより、レーザー光Lの集光位置23を三次元走査する。
上述したように、走査部240から出射されるレーザー光L(つまり、収束光L3)は、上述した分離部210によって分離されたゼロ次光と、高次光とによって構成されている。
【0025】
すなわち、走査部240は、レーザー光Lが照射されることにより励起されて自発光する蛍光物質21が含まれる描画空間2を走査対象範囲として、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)と高次光(例えば、+1次コリメート光L211、-1次コリメート光L212)とを含んだ収束光L3(レーザー光L)が出射される光軸AXの方向(光軸方向)と、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)が収束する焦点距離とを変化させることにより、収束光L3の集光位置23を三次元走査する。
【0026】
なお、本実施形態において、走査部240は、レーザー光L(コリメート光L2または収束光L3)の出射光量を調整する光量調整部(例えば、絞り)や、レーザー光Lの出射を遮る遮断部(例えば、シャッター)を備えていてもよい(いずれも不図示)。これら光量調整部や遮断部は、収束部230および走査部240と同期制御されることにより、描画空間2内の任意の位置に収束光L3の集光位置23を制御する。
【0027】
収束光L3は、描画空間2内の集光位置23において、蛍光物質21を励起する励起光として利用される。蛍光物質21の発光強度は、励起光の強度(つまり、集光位置23において収束した収束光L3の強度)に比例する。収束光L3は、集光位置23において収束することにより単位体積当たりのエネルギー(つまり、体積エネルギー密度)が高まる。このため、蛍光物質21は、集光位置23において強く発光する。
以下の説明において、集光位置23のうち、収束光L3が最も収束する位置を、集光点ともいう。
【0028】
出射部20は、収束部230および走査部240(つまり、三次元走査部)によって、描画空間2内の各位置を集光位置23にするようにして走査することにより、描画空間2内に立体像22を描く。
なお、出射部20は、描画空間2内において、いわゆるベクタースキャンによる走査を行ってもよいし、いわゆるラスタースキャンによる走査を行ってもよい。
【0029】
記憶部30は、例えば、半導体記憶装置や磁気記憶装置などによる既知の記憶機能を備えており、制御部60が利用する種々の情報を記憶する。
【0030】
制御部60は、例えば、コンピュータ装置であり、記憶部30に記憶されているプログラムおよびデータに基づいて、所定の機能を提供する。制御部60は、その機能部として、強度制御部620を備える。
【0031】
強度制御部620は、記憶部30に記憶されている描画データに基づいて、出射部20が出射するレーザー光Lの強度を制御する。描画データとは、描画空間2内の三次元位置ごとの像の明るさを示す情報である。つまり、描画データは、立体像22を表示するための情報である。
すなわち、強度制御部620は、描画空間2内の位置ごとの発光強度を示す描画データに基づいて、走査部240が走査する収束光L3(レーザー光L)の集光位置23における強度を制御する。
【0032】
[立体表示装置1の動作]
次に、図2を参照して、立体表示装置1の動作の流れの一例について説明する。
図2は、本実施形態の立体表示装置1の動作の流れの一例を示す図である。
(ステップS10)制御部60は、記憶部30から描画データを取得する。上述したように、描画データとは、立体像22を表示するための情報である。
(ステップS20)制御部60は、レーザー光源110を制御することにより、レーザー光Lの出射強度を制御する。
【0033】
(ステップS30)制御部60は、収束部230の収束レンズ231及び走査部240の走査鏡241を制御する(つまり、走査部を駆動する)ことにより、収束光L3の集光位置23を制御する。
(ステップS40)制御部60は、描画データが示す三次元位置の走査が終了すると、次の描画データがあるか否かを判定する。制御部60は、次の描画データがある(ステップS40;YES)と判定した場合には、処理をステップS10に戻して、処理を継続する。制御部60は、次の描画データがない(ステップS40;NO)と判定した場合には、処理を終了する。
【0034】
[励起光(レーザー光L)の強度と蛍光物質の発光状態との関係について]
図3を参照して、本実施形態の集光位置23における集光状態の一例について説明する。同図は、レーザー光源110、変換部120、走査部240の記載を省略して、分離部210および収束部230と、集光位置23との間の光路の幾何学的な関係を模式的に表している。
分離部210には、コリメート光L2が入射する。分離部210は、コリメート光L2をゼロ次光と、高次光とに分離する。
収束部230は、収束レンズ231を備えており、ゼロ次光と、高次光とに分離されたコリメート光L2を収束させて収束光L3とする。収束部230は、収束光L3を描画空間2内の集光位置23に集光させる。
【0035】
なお、同図の一例では、分離部210が空間位相変調器211や回折格子212に代わる回折部材としての回折レンズを備え、収束部230が収束レンズ231を備える場合において、以下の条件に基づくシミュレーション結果を示している。
<出射部20>
・コリメート光L2のビーム径:φ12~20mm
・集光点距離(描画空間2の入射位置から集光位置23までの距離):30mm
・開口数(NA):0.2
・収束光L3の集光位置23におけるスポットサイズ:φ5~15μm
・入射光量:1.3mW
・量子効率:80%
<分離部210(回折レンズ)>
・材質:BK7(ボロシリケートクラウンガラス)
・厚さ(光軸(Z軸)方向の長さ):2mm
・形状:両面平面、後面に回折構造を有する
・2次の係数:25.236
・空気間隔:厚さ2mm
<収束レンズ231(集光レンズ)>
・材質:BK7(ボロシリケートクラウンガラス)
・厚さ(光軸(Z軸)方向の長さ):7.24mm
・形状:前面:R25.84mm、非球面係数 4次 2.38×10E-6、 6次 1.33×10E-9、後面:平面
・空気間隔:厚さ20mm
<描画空間2>
・蛍光物質21の屈折率:1.50
・厚さ(光軸(Z軸)方向の長さ):50mm
【0036】
同図に示すように、平行光であるコリメート光L2は、分離部210および収束部230を介して、描画空間2内の集光位置23において収束する。
ここで、集光位置23における収束光L3の入射エネルギーの計算モデルについて図4を参照して説明する。
【0037】
図4は、本実施形態の集光位置23における収束光L3の入射エネルギーの計算モデルの一例を示す図である。出射部20から出射された収束光L3は、光軸AXを中心とし、集光位置23の集光点を頂点とする円錐形状を有している。同図において、光軸AXの方向はZ軸の方向に一致している。角度θは円錐の頂角の半分の角度(すなわち、光軸AXと円錐の母線とがなす角度)である。面積Sは、集光位置23の集光点から-Z方向(つまり、出射部20の方向)に距離zだけ離れた位置での、光軸AXに直交し半径Rである仮想円盤(円錐の断面)の面積である。長さdzは、仮想円盤の厚み(Z軸方向の微小長さ)である。
この仮想円盤の面積Sは、集光点からの距離zと角度θの関数で表すことができ、集光点に近いほど小さい。
したがって、描画空間2内に蛍光物質21が一様に分布している場合、仮想円盤の体積(S×dz)内に含まれる蛍光物質21の粒子数は、集光点に近いほど少なくなる。つまり、仮想円盤の体積(S×dz)内に含まれる蛍光物質21の粒子数は、集光点を極小値として、集光点からZ軸方向に離れるほど増加する。
また、描画空間2に入射した収束光L3は、描画空間2内の光路上の蛍光物質21を発行させつつ進行する。このため、収束光L3は、蛍光物質21内を進む距離に応じた、蛍光物質21の存在数×量子効率分ずつエネルギーが減衰する。
上述した仮想円盤への収束光L3の入射エネルギーを仮想円盤の面積Sで割れば、断面ごとのエネルギー密度が算出される。このエネルギー密度は、面積Sが比較的小さくなる集光位置23の集光点付近で急激に高くなる。
蛍光物質21の発光量は、励起光(すなわち、収束光L3)のエネルギー密度に比例する。このため、蛍光物質21の発光量は、集光位置23の集光点付近で急激に高くなる。
【0038】
図5は、分離部210が存在しない場合の蛍光物質21の発光量の一例を示す図である。同図の横軸は、集光点からのZ軸方向の距離を示し、縦軸は蛍光物質21の発光量を示す。同図は、光軸AX上での上述した仮想円盤の微小体積(図4に示したdz×dy×R)に含まれる蛍光物質21の粒子数に基づく、単位面積当たりの発光量の変化特性を、蛍光物質21の濃度別に示したものである。
同図において、集光点(距離0.0mm)を基準にしてZ軸方向(光軸AX方向)に離れた位置(例えば、距離±2.0mm)から、集光点に近づくと発光量が増加することを示す。一方、集光点の近傍(例えば、距離±0.5mm付近)では、発光量の増加が頭打ちになっていることを示す。さらに、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲では、急激に発光量が減少していることを示す。
このように、集光点の近傍で蛍光物質21の発光量が頭打ちになるのは、蛍光物質21の励起エネルギーの吸収量に限度があることを示している。
また、集光点の直近で蛍光物質21の発光量が急減するのは、収束光L3の径(スポット径)が小さくなりすぎて、収束光L3に励起される蛍光物質21の粒子数が減少するためである。
同図に示すように、集光点(距離0.0mm)において発光量が極小値をとり、集光点の近傍(例えば、距離±0.5mm付近)において発光量が極大値をとる特性を有していると、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じることになる。このような2か所に輝点が生じると、本来は集光位置に輝点を生じさせて描こうとしている立体像22の画像品質が低下してしまう。
そこで、本実施形態の立体表示装置1は、集光点における収束光L3の励起エネルギーを空間的に分散させることにより、立体像22の画像品質を向上させる。以下、立体表示装置1の具体的な実施形態について説明する。
【0039】
[実施形態1:アキシャル複数スポット]
図6は、第1実施形態の分離部210による収束光L3の光路の一例を示す図である。本実施形態において、分離部210は、例えば、空間位相変調器211を備えている。分離部210は、空間位相変調器211によって、コリメート光L2を、ゼロ次コリメート光L210と、+1次コリメート光L211と、-1次コリメート光L212とに分離する。分離部210は、分離したゼロ次コリメート光L210、+1次コリメート光L211および-1次コリメート光L212を、収束部230に入射させる。
収束部230は、収束レンズ231によって、ゼロ次コリメート光L210、+1次コリメート光L211および-1次コリメート光L212をそれぞれ集光位置23の集光点に収束させる。ここで、収束レンズ231が収束させるゼロ次光および±1次光を、ゼロ次収束光L310、+1次収束光L311および-1次収束光L312という。
ここで、集光位置23において、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)の焦点位置と高次光(+1次収束光L311および-1次収束光L312)の焦点位置は、光軸AXの方向(光軸方向)に分布している。
【0040】
つまり、分離部210は、集光位置23において、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)の焦点位置と、高次光(+1次収束光L311および-1次収束光L312)の焦点位置とを、光軸AXの方向(光軸方向)に互いに離れた位置に分布させる。
【0041】
図7は、本実施形態の集光位置23を拡大した光路の一例を示す図である。集光位置23において、ゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点を基準に、光軸AX軸方向に離れた位置(例えば、±104μm離れた位置)に、+1次収束光L311どうしが収束する集光点、および-1次収束光L312どうしが収束する集光点が分布する。すなわち、本実施形態の分離部210は、収束光L3の焦点位置を、光軸AXの方向(光軸方向)に互いに離れた位置に分布させる。
【0042】
図8は、本実施形態の集光位置23における収束光L3の断面の一例を示す図である。同図(A)は、上述した-1次収束光L312が収束する集光点(例えば、-104μm離れた位置)における収束光L3の径(例えば、84μm)を示す。同図(B)は、上述したゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点における収束光L3の径(例えば、40m)を示す。同図(C)は、上述した+1次収束光L311どうしが収束する集光点(例えば、+104μm離れた位置)における収束光L3の径(例えば、84μm)を示す。
これは、集光位置23において、収束光L3の径が十分に拡径されて、単位体積あたりの収束光L3のエネルギー密度が、拡径される前に比べて低下していることを示す。
【0043】
図9は、本実施形態の蛍光物質21の発光量の一例を示す図である。同図の横軸および縦軸は、上述した図5と同様である。
同図に示すように、本実施形態の分離部210によって、集光位置23における励起光のエネルギー密度を低下させた結果、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が、上述した図5の場合(つまり、従来例)に比べて緩和されている。
特に、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が7[μg/mL](同図凡例の”7”のプロット)である場合、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が極めて小さくなり、光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象が抑制されている。すなわち、本実施形態の一例では、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が7[μg/mL]である場合に、画像品質が最適化されているといえる。
このように、本実施形態の分離部210を備える立体表示装置1によれば、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象を抑制でき、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0044】
[他の濃度に最適化した場合の例]
図10は、本実施形態の他の濃度に最適化した場合の集光位置23を拡大した光路の一例を示す図である。本実施形態では、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が5[μg/mL]である場合に、画像品質が最適化される。
【0045】
より具体的には、集光位置23において、ゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点を基準に、光軸AX軸方向に離れた位置(例えば、±208μm離れた位置)に、+1次収束光L311どうしが収束する集光点、および-1次収束光L312どうしが収束する集光点が分布する。すなわち、本実施形態の分離部210は、収束光L3の焦点位置を、光軸AXの方向(光軸方向)に互いに離れた位置に分布させる。
【0046】
図11は、本実施形態の他の濃度に最適化した場合の集光位置23における収束光L3の断面の一例を示す図である。同図(A)は、上述した-1次収束光L312が収束する集光点(例えば、-208μm離れた位置)における収束光L3の径(例えば、166μm)を示す。同図(B)は、上述したゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点における収束光L3の径(例えば、80m)を示す。同図(C)は、上述した+1次収束光L311どうしが収束する集光点(例えば、+208μm離れた位置)における収束光L3の径(例えば、166μm)を示す。
これは、集光位置23において、収束光L3の径が十分に拡径されて、単位体積あたりの収束光L3のエネルギー密度が、拡径される前に比べて低下していることを示す。
【0047】
図12は、本実施形態の蛍光物質21の発光量の一例を示す図である。同図の横軸および縦軸は、上述した図5および図9と同様である。
同図に示すように、本実施形態の分離部210によって、集光位置23における励起光のエネルギー密度を低下させた結果、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が、上述した図5の場合(つまり、従来例)に比べて緩和されている。
特に、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が5[μg/mL](同図凡例の”5”のプロット)である場合、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が極めて小さくなり、光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象が抑制されている。すなわち、本実施形態の一例では、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が5[μg/mL]である場合に、画像品質が最適化されているといえる。
このように、本実施形態の分離部210を備える立体表示装置1によれば、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象を抑制でき、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0048】
[実施形態2:パラレル複数スポット]
図13は、第2実施形態の分離部210による収束光L3の光路の一例を示す図である。本実施形態において、分離部210は、例えば、回折格子212を備えている。分離部210は、回折格子212によって、コリメート光L2を、ゼロ次コリメート光L210と、+1次コリメート光L211と、-1次コリメート光L212とに分離する。分離部210は、分離したゼロ次コリメート光L210、+1次コリメート光L211および-1次コリメート光L212を、収束部230に入射させる。収束部230は、収束レンズ231によって、ゼロ次コリメート光L210、+1次コリメート光L211および-1次コリメート光L212をそれぞれ集光位置23の集光点に収束させる。ここで、収束レンズ231が収束させるゼロ次光および±1次光を、ゼロ次収束光L310、+1次収束光L311および-1次収束光L312という。
ここで、集光位置23において、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)の焦点位置と高次光(+1次収束光L311および-1次収束光L312)の焦点位置は、収束光L3の径方向(光軸AXに直交する方向)に分布している。
【0049】
つまり、分離部210は、集光位置23において、ゼロ次収束光L310(ゼロ次光)の焦点位置と高次光(+1次収束光L311および-1次収束光L312)の焦点位置とを、収束光L3の径方向に互いに離れた位置に分布させる。
【0050】
図14は、本実施形態の集光位置23を拡大した光路の一例を示す図である。集光位置23において、ゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点を基準に、収束光L3の径方向に離れた位置に、+1次収束光L311どうしが収束する集光点、および-1次収束光L312どうしが収束する集光点が分布する。なお、同図の一例では、光束L3Aのゼロ次光と高次光、光束L3Bのゼロ次光と高次光、光束L3Cのゼロ次光と高次光の光路をそれぞれ模式的に図示している。
すなわち、本実施形態の分離部210は、収束光L3の焦点位置を、収束光L3の径方向に互いに離れた位置に分布させる。
【0051】
図15は、本実施形態の集光位置23における収束光L3の断面の一例を示す図である。レーザー光Lが、分離部210の回折格子212によって回折されることにより、収束光L3は、同図に示す断面A1-A2において所定の径(例えば、40μm)の範囲に分布する。
これは、集光位置23において、収束光L3の径が十分に拡径されて、単位体積あたりのエネルギー密度が、拡径される前に比べて低下していることを示す。
【0052】
図16は、本実施形態の集光位置23を拡大した光路の他の一例を示す図である。同図には、光束L3A2に、ゼロ次光、±1次光に加え、±2次光が含まれる場合を一例として示している。集光位置23において、ゼロ次収束光L310どうしが収束する集光点を基準に、収束光L3の径方向に離れた位置に、+1次収束光L311どうしが収束する集光点、および-1次収束光L312どうしが収束する集光点、+2次収束光L313どうしが収束する集光点、および-2次収束光L314どうしが収束する集光点、が分布する。このように、高次光には、±1次光に加え、±2次光や、さらに高次の光が含まれていてもよい。
すなわち、本実施形態の分離部210は、収束光L3の焦点位置を、収束光L3の径方向に互いに離れた位置に分布させる。
【0053】
図17は、本実施形態の集光位置23における収束光L3の断面の他の一例を示す図である。レーザー光Lが、分離部210の回折格子212によって回折されることにより、収束光L3はゼロ次光、±1次光に加え、±2次光を含み、同図に示す断面A1-A2において、所定の径(例えば、80μm)の範囲に分布する。
これは、集光位置23において、収束光L3の径が十分に拡径されて、単位体積あたりの収束光L3のエネルギー密度が、拡径される前に比べて低下していることを示す。
【0054】
図18は、本実施形態の蛍光物質21の発光量の一例を示す図である。同図の横軸および縦軸は、上述した図5図9および図12と同様である。
同図に示すように、本実施形態の分離部210によって、集光位置23における励起光のエネルギー密度を低下させた結果、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が、上述した図5の場合(つまり、従来例)に比べて緩和されている。
特に、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が7[μg/mL](同図凡例の”7”のプロット)である場合、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が極めて小さくなり、光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象が抑制されている。すなわち、本実施形態の一例では、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が7[μg/mL]である場合に、画像品質が最適化されているといえる。
このように、本実施形態の分離部210を備える立体表示装置1によれば、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象を抑制でき、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0055】
図19は、本実施形態の蛍光物質21の発光量の一例を示す図である。同図の横軸および縦軸は、上述した図5図9図12および図18と同様である。
同図に示すように、本実施形態の分離部210によって、集光位置23における励起光のエネルギー密度を低下させた結果、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が、上述した図5の場合(つまり、従来例)に比べて緩和されている。
特に、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が5[μg/mL](同図凡例の”5”のプロット)である場合、集光点の直近(例えば、距離±0.4mm以下)の範囲のおける発光量の減少が極めて小さくなり、光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象が抑制されている。すなわち、本実施形態の一例では、描画空間2内の蛍光物質21の濃度が5[μg/mL]である場合に、画像品質が最適化されているといえる。
このように、本実施形態の分離部210を備える立体表示装置1によれば、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象を抑制でき、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0056】
[変形例]
図20は、本実施形態の変形例における集光位置23付近の光路の一例を示す図である。この変形例においては、回折格子212に代えて球面収差を利用した拡径を行っている。例えば、収束部230の収束レンズ231が球面レンズである場合には、収束レンズ231の径方向の位置ごとに焦点距離が異なる、すなわち球面収差を有している。このため、収束レンズ231に入射したコリメート光L2は、入射位置ごとに異なる焦点距離をもつ収束光L3として、収束部230から出射される。
【0057】
図21は、本実施形態の変形例における収束光L3の断面の一例を示す図である。同図(A)は、図20に示した断面A1-A2における収束光L3の断面を示す。同図(B)は、図20に示した断面B1-B2における収束光L3の断面を示す。同図(C)は、図20に示した断面C1-C2における収束光L3の断面を示す。
このように構成された立体表示装置1によっても、集光位置23における収束光L3の径を十分に拡径することができる。したがって、この変形例による立体表示装置1によれば、集光点近傍の光軸AX方向の2か所に輝点が生じる現象を抑制でき、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0058】
なお、分離部210に空間位相変調器211などの、レーザー光Lの位相を制御可能な機能を有している場合には、制御部60は、蛍光物質21の材質や描画空間2内での分散濃度、集光位置23における輝点の発生の状態(例えば、光軸AX上の輝点の個数)などに基づいて、収束光L3の位相をフィードフォワード制御またはフィードバック制御してもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態の立体表示装置1によれば、収束光L3の強度を光軸AX方向あるいは収束光L3の径方向に分散させることができる。このため、立体表示装置1によれば、光軸AX上の蛍光物質21に入射する収束光L3の強度を、分散させない場合に比べて緩和させることができる。したがって、立体表示装置1によれば、蛍光物質21に入射する収束光L3の強度が強すぎることによって光軸AX上に複数の輝点が生じる現象を抑制することができる。つまり、本実施形態の立体表示装置1によれば、立体像22の画像品質を向上させることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。また、上述した各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1…立体表示装置、2…描画空間、10…光源部、20…出射部、21…蛍光物質、22…立体像、23…集光位置、30…記憶部、60…制御部、110…レーザー光源、120…変換部、210…分離部、230…収束部、240…走査部、620…強度制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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