(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137226
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】機器及び機器の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 37/18 20060101AFI20240927BHJP
G04B 37/22 20060101ALI20240927BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
G04B37/18 Y
G04B37/22 Q
C23C14/06 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048669
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】長澤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】下野 勉
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA07
4K029AA24
4K029BA48
4K029BA55
4K029BA60
4K029BB02
4K029BD07
4K029CA01
4K029CA06
4K029DC03
(57)【要約】
【課題】透光性を有する外装部材が用いられる機器等の外観を損ねてしまうことを抑制することができる、外装部材、時計、外装部材の製造方法、機器の製造方法、及び時計の製造方法、を提供する。
【解決手段】本発明の一形態にかかる外装部材(時計ケース10)は、透光性を有し、開口部の内方に別の部材(センターケース11)が配置される外装部材であって、
前記開口部の内周面には視認性を有する第1膜(32)が設けられ、前記第1膜(32)を覆うように、前記開口部の前記内周面に対向配置される前記別の部材(11)の壁部(111)の外周面の硬さよりも表面が硬い第2膜(32a)が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性を有し、開口部の内方に別の部材が配置される外装部材であって、
前記開口部の内周面には視認性を有する第1膜が設けられ、前記第1膜を覆うように、前記開口部の前記内周面に対向配置される前記別の部材の壁部の外周面の硬さよりも表面が硬い第2膜が設けられている、
外装部材。
【請求項2】
前記外装部材の前記内周面の前記第2膜は化合物膜を有する、
請求項1記載の外装部材。
【請求項3】
前記化合物膜は窒化膜、酸化膜、または炭化膜の少なくともいずれかを含む
請求項2記載の外装部材。
【請求項4】
前記外装部材の前記内周面の前記第2膜の表面は、ビッカース硬度において、前記別の部材の前記壁部の前記外周面よりも硬い
請求項3記載の外装部材。
【請求項5】
前記第2膜の表面の硬さは、前記第1膜の表面の硬さよりも硬い
請求項1記載の外装部材。
【請求項6】
前記第1膜は、前記外装部材の本体を通して視認可能である
請求項1記載の外装部材。
【請求項7】
前記外装部材の前記開口部は、平面視における前記開口部の大きさが、平面視における前記壁部の大きさと略同一である
請求項1記載の外装部材。
【請求項8】
前記外装部材の前記開口部の内周面は、前記別の部材の前記壁部の前記外周面が擦れ合うようにして前記別の部材が嵌合される面である
請求項1記載の外装部材。
【請求項9】
前記外装部材はサファイアガラスからなる
請求項1記載の外装部材。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の外装部材としてのベゼルと、
前記外装部材の前記開口部の内方に配置された別の部材としてのケースと、
前記別の部材の前記壁部の内方に配置された時計モジュールと、
を備える時計。
【請求項11】
透光性を有し、開口部が設けられた外装部材の前記開口部の内周面に、反応性スパッタリング処理により化合物金属膜を形成する成膜処理を含み、
前記成膜処理において、前記外装部材の前記開口部の前記内周面に対向配置される別の部材の壁部の外周面の硬さよりも表面が硬くなるように、前記化合物金属膜を形成する、
外装部材の製造方法。
【請求項12】
透光性を有し、開口部が設けられた外装部材の前記開口部の内周面に、反応性スパッタリング処理により化合物金属膜を形成する成膜処理と、
前記外装部材の前記開口部の内周面に、壁部を有する別の部材の前記壁部の外周面が擦れ合うようにして、前記外装部材の前記開口部の内方に前記別の部材を嵌合する嵌合工程と、
を含み、
前記成膜処理において、前記別の部材の前記壁部の前記外周面の硬さよりも表面が硬くなるように、前記化合物金属膜を形成する、
機器の製造方法。
【請求項13】
透光性を有し、開口部が設けられた外装部材の前記開口部の内周面に、反応性スパッタリング処理により化合物金属膜を形成する成膜処理と、
前記外装部材の前記開口部の内周面に、壁部を有する別の部材の前記壁部の外周面が擦れ合うようにして、前記外装部材の前記開口部の内方に前記別の部材を嵌合する嵌合工程と、
を含み、
前記成膜処理において、前記別の部材の前記壁部の前記外周面の硬さよりも表面が硬くなるように、前記化合物金属膜を形成し、
前記別の部材の前記壁部の内方には時計モジュールが配置されている、
時計の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機器及び機器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、時計等の外装部材として、サファイアガラス等の可視光を透過する材料を用いるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、外装部材として透光性を有する材料を用いると、外装部材を通して外装部材に隣接して配置された部材が視認できるため、外観を損ねてしまう場合がある。
【0005】
本発明はこうした課題を解決するためのものであり、透光性を有する外装部材が用いられる機器等の外観を損ねてしまうことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態にかかる外装部材は、透光性を有し、開口部の内方に別の部材が配置される外装部材であって、前記開口部の内周面には視認性を有する第1膜が設けられ、前記第1膜を覆うように、前記開口部の前記内周面に対向配置される前記別の部材の壁部の外周面の硬さよりも表面が硬い第2膜が設けられている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば透光性を有する外装部材が用いられる機器等の外観を損ねてしまうことを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る時計の構成を示す正面図である。
【
図5】実施形態に係るベゼルの製造方法示す説明図である。
【
図6】実施形態に係るベゼルの製造方法の流れを示すフロー図である。
【
図7】実施形態に係るベゼルの表面の構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の第1実施形態にかかる機器としての時計1及び時計1の製造方法について、
図1乃至
図4を参照して説明する。
図1は時計1の構成を示す正面図であり、
図2は時計1の断面図である。
図3は
図2のB部の拡大図、
図4は
図2のC部の拡大図である。 図中X軸、Y軸、及びZ軸は互いに直交する3方向を示す。各図において、X軸はアナログ式の時計における3時-9時方向に沿い、Y軸は12時-6時方向、Z軸は時計1の正面-裏面方向(第1方向)に沿う姿勢を一例として示す。なお、各図において、適宜構成を拡大、縮小、省略して概略的に示す。例えば
図2では時計ケース10に収容されるモジュール20等の部品を省略して示す。
【0010】
本実施形態において、時計1は、一方向の一方側であって時計ケース10の底部を構成する裏蓋12の時計モジュール20と反対側の主面が向く方を裏側とし、一方向の他方側であって風防部材等のカバー14の外面が向く方を表側として、説明する。例えば時計1は裏側となる裏蓋12の時計モジュール20と反対側の主面が、装着対象である腕に対向する姿勢となる。また以下の説明において「径方向」とは、Z方向に沿ったベゼル13の中心軸Axに垂直な方向をいい、「周方向」とは、中心軸Axを中心とする回転方向をいう。また、「内」「外」とは、特に断りのない限り、中心軸Axを中心とする径方向の内側及び外側をいう。
【0011】
図1及び
図2に示すように、時計1は、例えば、ユーザの手首に装着される腕時計である。時計1は、機器としての時計ケース10と、時計ケース10内に設けられる時計モジュール20(モジュール)と、を備える。また、時計1は、時計ケース10の外周部に接続される時計バンドや、時計ケース10の外周に配された複数のスイッチを備える。
【0012】
時計ケース10は、円形状に構成され、時計モジュール20の外周部に配されるセンター部材としてのセンターケース11と、時計モジュール20の裏側(裏面側)に配置される裏蓋12と、センターケース11の表側の外周部に配されるベゼル13と、時計モジュール20の表側(正面側)を覆うカバー14と、を有する。時計ケース10は、センターケース11及び裏蓋12によって、時計モジュール20が配置される収容空間11a(収容部)を構成する。
【0013】
例えば時計1は、一例として一方向に沿う中心軸を有する円形状に構成され、時計ケース10を構成するセンターケース11、裏蓋12、ベゼル13、カバー14が、同心円状あるいは同心円に近い形状に、それぞれ構成される。なお、時計1及び各部材の形状は円形に限られず、角形その他の形状であってもよい。
【0014】
センターケース11は、中央に開口部を形成する周壁部111を備える。周壁部111は、チタン等の金属材料で、一方向に沿う軸を有する円筒状に構成される。一例として周壁部111の表面はTiN(窒化チタン)で構成され、ビッカース硬度が1000HV~3000HV程度に構成される。周壁部111は、時計モジュール20の外周部に配される。周壁部111は、開口部の表側がカバー14で覆われ、裏側が裏蓋12で覆われることで、内側に時計モジュール20が配される収容空間11a(収容部)を構成する。例えばセンターケース11はベゼル13の開口部の内方に配置される。
【0015】
周壁部111は、裏側の端部に、裏蓋12に係合する環状の保持部112を有する。例えば、保持部112は、周壁部111の内周縁の裏側の縁部に形成され、裏蓋12の係合筒部1213に係合する係合構造を有する。保持部112は、パッキンや接着剤などの接続部材51を介して嵌め込まれた裏蓋12を保持する。
【0016】
また、周壁部111は、外周面の表側の端部に、ベゼル13が配置される凹部113を有する。例えば凹部113は、ベゼル13の内側の形状に沿う所定の形状に構成される。一例として、凹部113は、ベゼル13の内周面13cに対向する外周面113aと、ベゼル13の裏面13bに対向する座面113bとを有する、断面視L字状の段差である。座面113bは、第1方向に直交する平面を形成する。外周面113aは座面113bから軸方向に沿って表側に立ち上がる周面を形成する。周壁部111の表側の外周部は、ベゼル13によって覆われる。
【0017】
また、周壁部111は、表側の内周側に、パッキンなどの防水部材である接続部材52を介してカバー14を保持する保持枠114を有する。すなわち、周壁部111の表側の内周側には、パッキンなどの接続部材52を介してカバー14が装着される。
【0018】
一例として、センターケース11、裏蓋12、ベゼル13、カバー14、等の各部の部材は、同心円状、あるいは例えば八角形などの角型の場合には同形状で、互いに組付けられる対象部材の外形状に沿う形状である。例えば、カバー14の外形は、周壁部111の表側の開口に倣う形状である。なお、カバー14の外形としては円形以外に四角形の場合もあり得る。また、裏蓋12の係合筒部1213は、周壁部111の裏側の開口に倣う形状である。ベゼル13の内周面13cは、センターケース11の外周面113aに倣う形状であり、ベゼル13の裏面13bはセンターケースの凹部113の座面113bに倣う形状である。例えば本実施形態において凹部113は保持枠114の外周部に形成される。
【0019】
裏蓋12は、センターケース11及び時計モジュール20の裏側を覆う板状部材である。例えば裏蓋12は例えば金属材料で構成され、板状に構成され時計ケース10の底部を構成するプレート部1212と、プレート部1212の外周縁から表側に立設される係合筒部1213と、を一体に有する。
【0020】
係合筒部1213は表側に突出する筒状部材である。例えば係合筒部1213は、センターケース11の周壁部111に係合する。係合筒部1213は、センターケース11の裏側の開口に挿入され、センターケース11に締結、接着、接合等により固定される。例えば裏蓋12は、センターケース11に対してパッキンや接着剤等の接続部材51を介して、接合される。
【0021】
図1乃至4及び
図7に示すように、ベゼル13は、外装部材の一例であり、可視光を透過する透光材料で、円形あるいは多角形の環状に構成される。例えばベゼル13はサファイアガラスで構成される。軸方向寸法である厚みが1、4mm以上の環板状に構成される。一例として厚みは2mm以上であり、好ましくは3mm以上の厚さを有する。ベゼル13はセンターケース11の正面側の外周に取付けられる。具体的には、ベゼル13は、周壁部111の外周面に形成される凹部113に配される。なお、ベゼル13の開口部の内周面13cは、凹部113の外周面113aの外径と略同径であって軸方向に延びる曲面状に構成される。すなわちベゼル13の内周面13cと凹部113の外周面113aとの間はごく僅かな隙間が形成されるか、あるいは殆ど隙間が形成されない寸法に構成される。すなわち、ベゼル13は、開口部の内方に別の部材としてのセンターケース11が配置される外装部材である。平面視におけるベゼル13の開口部は、平面視における周壁部111の大きさと略同一である。例えばベゼル13の開口部の内周面は、センターケース11の周壁部111の外周面が擦れ合うようにして、センターケース11が挿入または嵌合される面である。
【0022】
例えばベゼル13はカバー14等の各種部品を保護及び支持する。ベゼル13は、例えば接着により、あるいは各種締結部材により、センターケース11に、固定される。一例としてベゼル13は接着剤や締結部材等の接続部材53を介して、センターケース11に接合される。
【0023】
図3、
図4、及び
図7に示すように、具体例として、ベゼル13は、正面13a、裏面13b、内周面13c、及び外周面13dを有し、矩形状の断面を有する環状に形成される。正面13aと外周面13dとのなす角部は面取りされ、テーパ面13eを有する。裏面13bと外周面13dとがなす角部も面取りされ、テーパ面13fを有する。
【0024】
裏側のテーパ面13fの傾斜角度は、ベゼル13内をZ方向に沿った光がテーパ面13fに入射した場合に、反射光がベゼル13外に抜けない角度に設定される。ベゼル13の表面は、所定の平滑度まで鏡面仕上げが施されている。
【0025】
ベゼル13の各表面のうち、正面13a、外周面13d、テーパ面13eは外側(時計1における外方)に位置して視認される側の面であり、総称してベゼル13の外面とする。一方、裏面13b、内周面13c、裏側のテーパ面13fは、内側に位置し、外面を介して視認される面であり、総称してベゼル13の内面とする。
【0026】
ベゼル13の内面には、その表面全面に亘り人間が視認可能な不透明層である被膜30が形成されている。被膜30は、可視光に含まれるある波長域の光を反射するものであり、本実施形態では青色の薄膜である。
【0027】
被膜30は、蒸着膜31と、第1膜としてのスパッタ膜32と、を有する。
【0028】
蒸着膜31は、ベゼル13の裏面13b及び裏側のテーパ面13fに形成される。蒸着膜31は、例えば蒸着処理により成膜される金属の蒸着膜である。
【0029】
スパッタ膜32は、ベゼル13の内周面13cに形成される。ベゼル13の内周面に形成された不透明層であるスパッタ膜32は、ベゼル13の外面を介して視認可能である。スパッタ膜32は視認性を有する第1膜である。例えばスパッタ膜32はベゼル13の本体を通して視認可能である。なお、蒸着膜31とスパッタ膜32は一部が重ねて形成されていてもよい。一例として、スパッタ膜32は、その一部が裏面13bの一部に至って形成され、蒸着膜31上に重ねて形成される。
【0030】
スパッタ膜32は、例えばスパッタリング処理により成膜される金属のスパッタ膜である。一例としてスパッタ膜32はチタンのスパッタ膜である。スパッタ膜32は高硬度化された高硬度膜32aを、その表面に有している。例えば高硬度膜32aは、反応性スパッタリングによって表層部に形成される化合物薄膜(化合物膜、化合物金属膜)であり、一例として窒化された窒化膜である。すなわち、例えばスパッタ膜32は、反応性スパッタリングにより形成され、表面が高硬度化されている。言い換えると、スパッタ膜32の表面に、スパッタ膜32を覆うように、開口部の内周面に対向配置されるセンターケース11の周壁部111の外周面の硬さよりも表面が硬い第2膜としての高硬度膜32aが設けられている。
【0031】
例えばベゼル13の内周面13cの表面の硬度は、対向配置されるセンターケース11の対向面、すなわち凹部113の外周面113aの表面の硬度よりも、硬く構成されている。すなわち、高硬度膜32aはセンターケース11の周壁部111の外周面113aの硬さよりも表面が硬い第2膜である。例えば高硬度膜32aはビッカース硬度が1000~3000HV程度以上である。高硬度膜32aは、例えばビッカース硬度において、ベゼル13の内周面13cの表面の硬度がセンターケース11の対向面の硬度よりも高く構成されている。すなわちスパッタ膜32の最表面の硬度はビッカース硬度がベゼル13の内周面13cの表面のビッカース硬度以上に構成される。なお、高硬度膜32aは、窒化膜に限らず、酸化膜、炭化膜等、他の化合物による膜であってもよい。例えば高硬度膜32aは、例えば化合物のガスを導入しないスパッタ膜と比べて硬度が高く構成されている。
【0032】
時計モジュール20は、時刻や日付などの情報を表示する表示部、表示部を動作させるムーブメント、ICやアンテナ等の電子部品を搭載した回路基板、電池等、時計機能に必要な各種部品を備える。例えば表示部は、デジタル表示機能を備える液晶表示パネル等を有するデジタル方式の表示部であってもよく、文字板と指針等を備えるアナログ方式の表示部であってもよい。また複数の表示部を備えていてもよい。
【0033】
カバー14は、例えばSiO2ガラス等の無機ガラス等で形成された透明な部材である。例えばカバー14は透明な円板形状の時計ガラスであり、時計モジュール20の表側に配され、時計モジュール20を覆う。例えば、カバー14はパッキンなどの接続部材を介して、センターケース11の開口部の表側の内周縁に支持される。
【0034】
次に、実施形態にかかる時計1の製造方法について説明する。
図5は、ベゼル13の製造方法を説明するための図であり、
図6は、ベゼル13の製造方法の流れを示すフロー図である。
【0035】
本実施形態にかかる時計1の製造方法は、ベゼルベース13Aを加工するベース加工処理と、ベゼルベース13Aの裏面に第1の被膜を成膜してベゼルベース13Bを形成する第1の成膜処理と、ベゼルベース13Bの内周面13cに第2の被膜を成膜してベゼル13を形成する第2の成膜処理と、作製されたベゼル13をセンターケース11に組み付ける組付け工程と、を備える。
【0036】
図5及び
図6に示すように、ベゼル13の作製にあたっては、まず素材である、可視光を透過する透明のサファイアガラスを環状に形成する(ステップST1(加工工程):
図5(a))。ここでは、サファイアが各面13a~13fを有する最終形状まで加工された後に、各面13a~13fが鏡面仕上げされる。ステップST1により、ブランク状態(透明)のベゼルベース13Aが作製される。
【0037】
次に、加工工程後のベゼルベース13Aの裏面13b及び裏側のテーパ面13fに対し、蒸着により青色の不透明層である蒸着膜31を形成する(ステップST2(第1の成膜処理))。蒸着膜31は視認性を有する膜である。裏面13b及び裏側のテーパ面13fに不透明層としての蒸着膜31が形成されたベゼルベース13Bが作製される。
【0038】
次に、第1成膜処理工程後のベゼルベース13Bの内周面13cに対し、スパッタリングにより青色のスパッタ膜32を形成する(ステップST3(第2の成膜処理))。スパッタ膜32は視認性を有する第1膜である。このとき、最初はターゲットにチタンを用いたスパッタ処理を行いスパッタ膜32を形成し、途中から反応性ガスとしての窒素を導入して反応性スパッタ処理を行うことで、高強度膜32aとなる化合物薄膜を形成する。例えば化合物は酸化物や窒化物であり、一例として本実施形態においては、窒素ガスを用いて窒化膜を形成する。ターゲットはチタンに限らず、ケイ素、チタン、クロム、ニオブ、タングステンなどであってもよいし、それらを組み合わせてもよい。
【0039】
具体的には、減圧チャンバに、ターゲットと、機材となるベゼルベース13Bを設置し、不活性ガスを導入し、電圧を加えてプラズマを精製させ、アルゴンイオンをターゲットに衝突させて薄膜を形成する。このとき、アルゴンガスに、窒素ガスや酸素ガス等の反応性ガスを添加してプロセスガスを導入することで、反応性スパッタ処理を行う。なおスパッタリング処理において、表面のうち、第2の被膜であるスパッタ膜32を形成しない領域には、予めマスキングを施しておく。一例として、
図7に示すように、すでに蒸着膜31が形成されている裏面13bのうち、外周側の一部にはマスキングを施すことでスパッタ膜32を形成せず、内周面13cに連続する内周側の領域においては蒸着膜31に重ねてスパッタ膜32を形成する。
【0040】
ステップS3により、内周面13cにスパッタ膜32が形成され、ベゼル13が完成する。そして、作製したベゼル13の開口部に、センターケース11を第1方向に沿って、挿入することにより、ベゼル13をセンターケース11に組付ける。
【0041】
以上のように構成された時計1及び時計ケース10によれば、ベゼル13は、センターケース11の外周面の表面の硬さよりも硬い表面を有するスパッタ膜32を有することにより、センターケース11をベゼル13の開口部に対して軸方向に沿って挿入して装着する際にベゼル13のスパッタ膜32が削れるのを抑制できる。したがって、透光性を有する外装部材が用いられる機器等の外観を損ねてしまうことを抑制することができる。例えばビッカース硬度について、センターケース11の表面の硬度よりも高く構成したことにより、スパッタ膜32が削れることや剥離することを防止できる。また、上記実施形態においては、反応性スパッタリング処理によって、容易にスパッタ膜32の硬度を向上できる。さらに、スパッタ膜32は、高硬度膜32aとして化合物薄膜である窒化膜を有する構成とし、外観に影響せずに硬度を向上できる。また、上記実施形態において、例えばアルゴンガス等のベースとなるガスに、窒素ガスや酸素ガスを添加して、プロセスガスを導入することで、容易に化合物薄膜を形成できる。
【0042】
また、ベゼル13は、透光性材料で環状に構成されるとともに、裏面に形成される蒸着膜31を有することにより、異物が視認しにくい構成とし、外観性を向上できる。
【0043】
なお、上述した実施形態は例示であり、発明の範囲を限定するものではない。
【0044】
例えば上記実施形態において、スパッタリング処理において反応性ガスとして窒素を用い、化合物薄膜として、窒化膜を形成する例を示したがこれに限られるものではない。例えば酸素ガスを用いた酸化膜など、他の化合物薄膜を形成してもよい。
【0045】
さらに上記実施形態において、また、被膜30を形成する手法は、スパッタリングと蒸着の組み合わせに限定されるものではない。第1の被膜は蒸着膜31以外の、例えばスパッタ膜で構成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態において機器の一例として時計ケース10を例示したが、これに限られるものではない。例えば時刻機能を備えないリスト機器等の各種のデバイスに適用することができる。
【0047】
例えば、上記実施形態では、ベゼル13は表面にテーパ面13e,13fを有し、裏面13b及びテーパ面13fに蒸着膜31が形成され、内周面13cにスパッタ膜32が形成される例を示したが、これに限られるものではない。例えば裏面13bやテーパ面13fの一部に蒸着膜31が形成されていなくてもよく、内周面13cの一部にスパッタ膜32が形成されていなくてもよい。また、ベゼル13の裏面13bにスパッタ膜32が形成されていなくてもよい。
【0048】
ベゼル13の形状は特に限定されず、貫通孔を含む環状でなく、例えば弧状などであってもよい。ベゼル13の材料もサファイアガラスに限定されるものではない。なお、ベゼル13の固定方法についても限定されるものではなく、両面接着テープや接着剤、その他の適当な固定方法を適用できる。
【0049】
また、被膜30の色は青色以外であってもよい。また、複数の非視認側面に対応した複数の被膜を形成する場合、これらの色が異なっていてもよい。
【0050】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明は特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1…時計
10…時計ケース
11…センターケース
11a…収容空間
12…裏蓋
13…ベゼル
13A…ベゼルベース
13B…ベゼルベース
13a…正面
13b…裏面
13c…内周面
13d…外周面
13e…テーパ面
13f…テーパ面
14…カバー
20…時計モジュール(モジュール)
31…蒸着膜
32…スパッタ膜(第1膜)
32a…高硬度膜(第2膜)
51…接続部材
52…接続部材
53…接続部材
111…周壁部
112…保持部
113…凹部
113a…外周面
113b…座面
114…保持枠
1212…プレート部
1213…係合筒部