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特開2024-137229撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137229
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/667 20230101AFI20240927BHJP
   H04N 23/74 20230101ALI20240927BHJP
   G03B 17/56 20210101ALI20240927BHJP
   G03B 15/00 20210101ALI20240927BHJP
   G02B 7/28 20210101ALI20240927BHJP
   G03B 13/36 20210101ALI20240927BHJP
   G03B 15/05 20210101ALI20240927BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H04N23/667
H04N23/74
G03B17/56 E
G03B15/00 T
G02B7/28 H
G03B13/36
G03B15/05
A61B5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048672
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 勝幸
(72)【発明者】
【氏名】岩田 海成
【テーマコード(参考)】
2H011
2H053
2H105
2H151
4C117
5C122
【Fターム(参考)】
2H011AA06
2H011DA06
2H053CA21
2H053DA02
2H105CC01
2H151EB20
4C117XE03
4C117XE43
5C122DA25
5C122EA42
5C122FA07
5C122FD05
5C122FH11
5C122FL03
5C122GE03
5C122GG02
5C122GG03
5C122GG17
5C122GG25
5C122HA87
5C122HB01
(57)【要約】
【課題】接写用アタッチメントの装着状況の判定結果に応じて撮像モードの設定を可能とする。
【解決手段】撮像装置としてのダーモスコピーカメラ1は、撮像対象である皮膚疾患部を撮像する撮像部21を備え、プロセッサ56により、撮像対象と撮像部21の撮像素子25との距離を導出し、この導出した距離に基づいて、自装置に接写用アタッチメントである立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3が取り付けられているか否か判定して、その判定結果に応じて、撮像モードを設定する。
【選択図】 図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象を撮像する撮像部と、
前記撮像対象と前記撮像部との距離を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出した前記距離に基づいて、自装置に接写用アタッチメントが取り付けられているか否か判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、撮像モードを設定する設定手段と、
を備える、撮像装置。
【請求項2】
前記撮像部は、オートフォーカス方式で前記撮像対象を撮像し、
前記導出手段は、前記撮像対象を撮像する際の焦点距離に基づいて、前記距離を導出する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像対象を照らす少なくとも1つの点灯部を更に備え、
前記導出手段は、前記焦点距離を導出する場合に、前記少なくとも1つの点灯部のうち何れかを点灯する、請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記設定手段が設定した前記撮像モードに対応させて、前記点灯部の点灯状態を制御する点灯制御手段を更に備える、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記点灯部は、前記撮像部に関して第1の範囲を照らす第1の点灯部と、前記撮像部に関して前記第1の範囲とは異なる第2の範囲を照らす第2の点灯部と、を含み、
前記設定手段が設定する前記撮像モードは、前記第1の点灯部を点灯する第1の撮像モードと、前記第2の点灯部を点灯する第2の撮像モードと、を含む、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記点灯制御手段は、前記導出手段による前記焦点距離を導出する際に、前記第1の点灯部を点灯し、
前記判定手段が前記焦点距離が接写距離であると判定した場合、前記設定手段は前記第1の撮像モードを設定し、前記点灯制御手段は前記第1の点灯部の点灯を継続し、
前記判定手段が前記焦点距離が接写距離ではないと判定した場合、前記点灯制御手段は前記第1の点灯部の点灯から前記第2の点灯部の点灯に切り替えると共に、前記設定手段は前記第2の撮像モードを設定する、前記請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記判定手段は、更に、前記導出手段によって導出した前記距離に基づいて、自装置に取り付けられている接写用アタッチメントの種類を判定し、
前記設定手段は、前記接写用アタッチメントの種類の判定結果に応じて、前記撮像モードを設定する、請求項4に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記点灯部は、前記撮像部に関して第1の範囲を照らす第1の点灯部と、前記撮像部に関して前記第1の範囲とは異なる第2の範囲を照らす第2の点灯部と、を含み、
前記接写用アタッチメントは、第1及び第2の接写用アタッチメントを含み、
前記設定手段が設定する前記撮像モードは、前記第1及び第2の接写用アタッチメントを使用しない第1の撮像モードと、前記第1の接写用アタッチメントを使用する第2の撮像モードと、前記第2の接写用アタッチメントを使用する第3の撮像モードと、を含む、請求項7に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記点灯制御手段は、前記導出手段による前記焦点距離の導出開始時に、前記第1の点灯部を点灯し、
前記判定手段が自装置に前記第1及び第2の接写用アタッチメントが取り付けられていないと判定した場合、前記設定手段は前記第1の撮像モードを設定し、前記点灯制御手段は前記第1の点灯部の点灯を継続し、
前記判定手段が自装置に前記第1の接写用アタッチメントが取り付けられていると判定した場合、前記設定手段は前記第2の撮像モードを設定し、
前記判定手段が自装置に前記第1の接写用アタッチメントが取り付けられていないと判定した場合、前記点灯制御手段は前記第1の点灯部の点灯から前記第2の点灯部の点灯に切り替えて前記導出手段による前記焦点距離の導出を継続し、
前記判定手段が自装置に前記第2の接写用アタッチメントが取り付けられていると判定した場合、前記設定手段は前記第3の撮像モードを設定し、前記点灯制御手段は前記第2の点灯部の点灯を継続する、前記請求項8に記載の撮像装置。
【請求項10】
撮像装置、
撮像対象を撮像する撮像部と前記撮像対象との距離を導出し、
前記導出した前記距離に基づいて、前記撮像装置に接写用アタッチメントが取り付けられているか否か判定し、
前記判定の結果に応じて、撮像モードを設定する、
処理を実行するようにした撮像装置の制御方法。
【請求項11】
撮像装置の制御部が、
撮像対象を撮像する撮像部と前記撮像対象との距離を導出し、
前記導出した前記距離に基づいて、前記撮像装置に接写用アタッチメントが取り付けられているか否か判定し、
前記判定の結果に応じて、撮像モードを設定する、
処理を実行するように機能させるためのプログラム。
【請求項12】
レンズを介して撮像対象を撮像する撮像部と、
前記撮像対象に向けて光を照射する照射部と、
前記撮像対象と前記撮像部との距離を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出した前記距離に基づいて、前記レンズを覆うカバーが自装置に取り付けられているか否か判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、前記照射部の照射モードを含む動作モードを設定する設定手段と、
を備える、撮像装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚疾患の診断には、皮膚内部の色素分布や色合いを撮影できるダーモスコピーカメラと呼ばれる撮像装置が活用されている。例えば、特許文献1には、ダーモスコピー撮影を行うため、市販のカメラの前面に接写用アタッチメントを装着して撮影する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-214552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の撮像装置では、接写用アタッチメントの装着状況に応じて、ユーザは所定のモード切替操作を行って、撮像装置の撮像モードを設定する必要があった。更には、複数種類の接写用アタッチメントを使い分ける場合には、ユーザがその接写用アタッチメントの種類に適合した撮像モードを設定しなければならない。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接写用アタッチメントの装着状況の判定結果に応じて撮像モードを設定することが可能になる撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置は、
撮像対象を撮像する撮像部と、
前記撮像対象と前記撮像部との距離を導出する導出手段と、
前記導出手段によって導出した前記距離に基づいて、自装置に接写用アタッチメントが取り付けられているか否か判定する判定手段と、
前記判定手段の判定結果に応じて、撮像モードを設定する設定手段と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、接写用アタッチメントの装着状況の判定結果に応じて撮像モードを設定することが可能になる撮像装置、撮像装置の制御方法及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の撮像装置の一実施形態に係るダーモスコピーカメラの斜視図。
図2】第1の接写用アタッチメントとしての立体物撮影用アダプタを装着した状態を示すダーモスコピーカメラの斜視図。
図3】第2の接写用アタッチメントとしての小径範囲撮影用アダプタを装着した状態を示すダーモスコピーカメラの斜視図。
図4】ダーモスコピーカメラの分解斜視図。
図5】ダーモスコピーカメラに設けられた照明装置の断面図。
図6】立体物撮影用アダプタを装着した照明装置の断面図。
図7】小径範囲撮影用アダプタを装着した照明装置の断面図。
図8】ダーモスコピーカメラの電気的構成を示すブロック図。
図9】ダーモスコピーカメラの撮影動作の一例を説明するためのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の撮像装置の一実施形態として、ダーモスコピーカメラを例に、図面を参照しながら説明する。なお、本願明細書では、「マイクロスコープ(Microscope):顕微鏡」及び「マイクロスコピー(Microscopy):顕微鏡による検査又は顕微鏡使用(法)」の使い分けに準じ、「ダーモスコープ(Dermoscope)」及び「ダーモスコピー(Dermoscopy)」の用語を、皮膚検査用の拡大鏡(装置)及び同拡大鏡を用いた皮膚検査又は同拡大鏡使用(行為)という意味で用いている。
【0010】
図1は、本発明の撮像装置の一実施形態に係るダーモスコピーカメラ1の斜視図である。また、図2は、第1の接写用アタッチメントとしての立体物撮影用アダプタ2を装着した状態を示すダーモスコピーカメラ1の斜視図であり、図3は、第2の接写用アタッチメントとしての小径範囲撮影用アダプタ3を装着した状態を示すダーモスコピーカメラ1の斜視図である。以下の説明において、図1に示すように、撮像対象(被写体)側をダーモスコピーカメラ1の前方(前面、正面)、その反対側を後方とし、ダーモスコピーカメラ1を前方から見たときの上下左右方向をそのまま上下左右方向とした直交座標系に基づいて説明するものとする。また、各部材に関する取り付けは、特に言及がない限り、ネジ、ビス等を用いた取り付けや、嵌合等の取り付け等、適宜の方法で行われる。
【0011】
ダーモスコピーカメラ1は、皮膚の状態を診察するための画像を撮像する撮像装置である。ダーモスコピーカメラ1は、図2及び図3に示すように立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3を取り付けた状態と、図1に示すように立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3が取り外された状態とで撮像対象を撮像することができる。立体物撮影用アダプタ2は、高さのある皮膚疾患部全体にピントを合わせた接写をする際に用いられる。また、小径範囲撮影用アダプタ3は、指の間や耳の窪みなど、狭隘な箇所を撮像する際に用いられる。
【0012】
図4は、ダーモスコピーカメラ1の分解斜視図である。図4に示すように、ダーモスコピーカメラ1は、コントローラ10と、コントローラ10の前方に設けられたカメラ本体11と、カメラ本体11の前方に設けられた照明装置12と、を有している。
【0013】
コントローラ10は、表示部13と、本体部14と、表示部13と本体部14との間に収容された回路基板15と、を有している。表示部13には、各種の操作情報や撮像した画像を表示すると共にユーザの操作を受け付ける設定手段としてのタッチパネル式の液晶モニタ16が設けられている。本体部14には、シャッタボタン17及び電源ボタン18等の操作ボタンが設けられている。回路基板15には、撮像された画像を記憶する記憶部19と、ダーモスコピーカメラ1の各部を制御する制御部20と、が設けられている。
【0014】
カメラ本体11は、撮像部21と、撮像部21を支持した状態で後述するカバー体26に取り付けられる枠体22と、を有している。撮像部21は、光軸OA上に設けられたレンズ群を有する撮像レンズ系23を有している。また、撮像レンズ系23の後方すなわち筐体24の後面には、撮像素子25が収容されている。撮像素子25は、公知の撮像素子であって、例えば、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサなどであり、被写体の光学像を電気信号に変換するように構成されている。撮像部21は、撮像素子25を用いて、撮像対象を撮像することができる。撮像部21は、例えば静止画及び動画を撮影することができる。撮像部21のその他の細部構造については、特許第6897712号公報に詳細に説明されている。よって、本明細書では、その説明を省略する。
【0015】
照明装置12は、図4に示すように、コントローラ10の本体部14に取り付けられるカバー体26と、カバー体26の前端に取り付けられる照明装置本体27と、カバー体26に取り付けられ照明装置本体27の前方を覆う立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3と、を有している。上述したように、立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3は、着脱自在な構成であり、立体物を撮像する際や指の間や耳の窪みなどの狭隘な箇所を撮像する際にはカバー体26に選択的に取り付けられる一方、撮像箇所が顔や腕等である場合には、取り外される。このように、立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3は、撮像に用いられる場合には照明装置12の一部を構成する一方で、撮像に用いられない場合には照明装置12に含まれない。
【0016】
図5は、ダーモスコピーカメラ1に設けられた照明装置12の断面図である。図1図5に示すように、カバー体26は円筒状に形成されており、その内部には前記カメラ本体11が収容されている。カバー体26の外周面には、4つの突起部28が等間隔で配置されている。この突起部28は、小径範囲撮影用アダプタ3を取り付ける際に小径範囲撮影用アダプタ3と係合し、小径範囲撮影用アダプタ3を取り外す際には小径範囲撮影用アダプタ3との係合状態が解除される。なお、立体物撮影用アダプタ2は、レンズ保護用のレンズキャップ(図示せず)と同様に、カバー体26の外周面に対して嵌合する状態で取り付けられるものであり、突起部28とは係合しないものとなっている。
【0017】
照明装置本体27は、図5に示すように、光源としてLED(Light Emitting Diode)が搭載された複数のLED基板が設けられたベース部29と、ベース部29の周囲を覆う円環状の第1カバー部30と、第1カバー部30にねじ止めされた第2カバー部31と、を有している。
【0018】
ベース部29には、光軸OAの周囲の上下左右4方向それぞれにLED32、33、34が取り付けられる。LED32及び33は可視光を出射し、LED34は紫外光を出射する。各方向において、LED32、LED33、LED34、LED33、LED32の5個のLEDが、この順序で一列に配置されている。このうち2つのLED33は偏光板38によって覆われている。これにより、2つのLED33は、偏光された光を出射することとなる。LED32,33,34は、立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3を取り外した図6に示す照明装置12の状態でダーモスコピー撮影をする際に、または、立体物撮影用アダプタ2を装着した立体物撮影をする際に、光を皮膚疾患部に照射する。
【0019】
また、ベース部29には、光軸OAの周囲に4個のLED35が取り付けられている。これら4個のLED35は、可視光を出射する。LED35は、小径範囲撮影用アダプタ3を取り付けた小径範囲撮影の際に、LED32の代わりに光を皮膚疾患部に照射する。
【0020】
さらに、ベース部29には、光軸OAを中心に円環状に16個のLED36が取り付けられている。これら16個のLED36は、例えば白色の光を出射するLEDであり、第1カバー部30のLED36に対応する位置には、光出射孔37が形成されている。LED36からの光を、周方向に配置された複数の光出射孔37から出射することで、照明装置12を、照明装置本体27の外周位置から光を前方に向けて出射するリングフラッシュとして機能させることができる。LED36は、ダーモスコピーカメラ1を一般的なカメラとして使用して皮膚疾患部を撮影(臨床撮影)する際に、光を発光して皮膚疾患部を照射する臨床撮影用LEDとして機能する。
【0021】
このように、照明装置12には、臨床撮影をするときに光を出射するLED36と、ダーモスコピー撮影及び立体物撮影をするときに光を出射するLED32,33,34と、小径範囲撮影をするときに光を出射するLED35と、が設けられている。以下、臨床撮影時に使用するLED36を臨床撮影用LED、ダーモスコピー撮影及び立体物撮影時に使用するLED32,33,34をダーモ撮影用LED、小径範囲撮影時に使用するLED35を小径範囲撮影用LEDと称する。
【0022】
第2カバー部31は、図6に示すように、円錐台形の筒状に形成された第1カバーとしての筒体39と、筒体39の頂部(前端部)の開口41に嵌められた保護ガラス40と、を有している。保護ガラス40は、光を透過可能な部材、例えばガラスで構成され、円板状に形成されている。保護ガラス40は、その主面が光軸OAに直交するように配置されていて、保護ガラス40の主面の面積は所定の第1面積に設定されている。皮膚疾患部に押し当てられた保護ガラス40には、ダーモ撮影用LEDであるLED32,33,34及び小径範囲撮影用LEDであるLED35からの光を透過させて、皮膚疾患部に光を照射すると共に、皮膚疾患部で反射した光をダーモスコピーカメラ1内に入射させ、撮像部21に導く。保護ガラス40を皮膚に押し当てることで、皮膚とダーモスコピーカメラ1との距離と、照明する皮膚の明るさと、を一定に保つことができ、露出条件が安定するなど、ダーモスコピー撮影を安定して行うことができる。さらに、保護ガラス40は、湿気やほこりからダーモスコピーカメラ1内を保護する。
【0023】
その他の照明装置12の細部構造についても、前述した特許第6897712号公報に詳細に説明されている。よって、本明細書では、その説明を省略する。
【0024】
図6は、立体物撮影用アダプタ2を装着した照明装置12の断面図である。立体物撮影用アダプタ2は、図2及び図6に示すように、円錐台状の第2カバーとしての筒体42と、筒体42の頂部(前端部44)に形成された開口43と、を有している。筒体42は、例えば、ポリ塩化ビニル誘導体、アクリル系樹脂等の樹脂から構成されており、その内周面は、光の反射を抑制するためのシボ加工または反射防止塗装が施されている。また、筒体42の底部(後端部)には、図6に示すように、嵌合部45が形成されている。カバー体26の外周部に対してこの嵌合部45の内壁部46を嵌合することにより、立体物撮影用アダプタ2をカバー体26に取り付けることができる。
【0025】
立体撮影時には、筒体42の前端部44の前面が撮像対象である皮膚疾患部の周囲の皮膚に接触させられる。この皮膚と前端部44の前面とが接触した領域の内周部は、筒体42の前端部44の厚みにより、照明装置12の第2カバー部31の頂部に形成された保護ガラス40と接触しない領域が形成される。よって、この領域に存在する、高さのある皮膚疾患部は、保護ガラス40と接触することはない。立体物撮影の際に、ダーモ撮影用LEDであるLED32,33,34から出射された光を、前端部44の開口43から皮膚疾患部に光を照射する共に、皮膚疾患部で反射した光を入射させる。この立体物撮影の際、皮膚疾患部の周囲の皮膚に筒体42の前端部44の前面を押し当てることにより、皮膚疾患部の周囲の領域で皮膚が前端部44の前面と接触することで、この前端部44によって外光が遮られる。これにより、第4の領域の皮膚は外光の影響を受けにくくなり、前端部44の開口43内に侵入する皮膚疾患部も、外光の影響を受けにくい。
【0026】
図7は、小径範囲撮影用アダプタ3を装着した照明装置12の断面図である。小径範囲撮影用アダプタ3は、図3及び図7に示すように、円錐台状の第2カバーとしての筒体47と、筒体47の頂部(前端部)に形成された開口49に嵌められた小径範囲撮影用保護ガラス48と、を有している。筒体47は、例えば、ポリ塩化ビニル誘導体、アクリル系樹脂等の樹脂から構成されており、その内周面は、光の反射を抑制するためのシボ加工または反射防止塗装が施されている。また、筒体47の底部(後端部)には、図7に示すように、鉤状部50が形成されている。この鉤状部50を、カバー体26に形成された突起部28に係合させることにより、小径範囲撮影用アダプタ3をカバー体26に取り付けることができる。一方、小径範囲撮影用アダプタ3をカバー体26から取り外す場合には、鉤状部50を押し拡げて突起部28との係合状態を解除する。この鉤状部50及び突起部28は、小径範囲撮影用アダプタ3をカバー体26に着脱するための着脱手段として機能する。
【0027】
小径範囲撮影用保護ガラス48は、光を透過可能な部材、例えばガラス体で構成され、円板状に形成されており、小径範囲撮影時には、撮像対象である皮膚疾患部に接触させられる。小径範囲撮影用保護ガラス48は、その主面が光軸OAに直交するように配置されていて、小径範囲撮影用保護ガラス48の主面の面積は、保護ガラス40の第1面積よりも小さい所定の第2面積に設定されている。そのため、小径範囲撮影用保護ガラス48は、先細の筒体47によって狭隘な箇所の皮膚疾患部に接触することができる。小径範囲撮影用保護ガラス48には、小径範囲撮影の際に、小径範囲撮影用LEDであるLED35から出射された光を透過させて、皮膚疾患部に光を照射すると共に、皮膚疾患部で反射した光を入射させる。
【0028】
小径範囲撮影の際、皮膚と小径範囲撮影用保護ガラス48とが接触した領域の周囲には、皮膚と筒体47の先端とが接触した領域が形成される。この領域で皮膚と接触した筒体47によって、外光が遮られ、小径範囲撮影用保護ガラス48と接触した皮膚は外光の影響を受けにくい。また、小径範囲撮影用保護ガラス48を設けることで、小径範囲撮影を安定して行うことができるという効果は、上述した保護ガラス40を設けることによる効果と同様である。
【0029】
図8は、ダーモスコピーカメラ1の電気的構成を示すブロック図である。ダーモスコピーカメラ1は、前述した記憶部19として、バッファメモリ51、ワークメモリ52及びプログラムメモリ53を備える。また、ダーモスコピーカメラ1は、前述した制御部20として、AGC・A/D変換部54、画像処理部55、プロセッサ56、レンズ駆動部57、点灯部駆動部58、撮像素子駆動部59、メモリカードコントローラ60及び画像出力部61を備える。
【0030】
ダーモスコピーカメラ1は、前述した撮像レンズ系23により撮像素子25の撮像面上に撮像対象である皮膚疾患部の光像を入射して結像させる。なお、図9では、「撮像素子」を「IS」と記している。
【0031】
スルー画像表示、あるいはライブビュー画像表示とも称されるモニタ状態では、この撮像素子25での撮像により得た画像信号をAGC・A/D変換部54に送り、相関二乗サンプリングや自動ゲイン調整、A/D変換処理を実行してデジタル化する。このデジタル値の画像データはシステムバスSBを介してバッファメモリ51に保持される。
【0032】
このバッファメモリ51に保持された画像データに対して、画像処理部55が適宜必要な画像処理を施す。画像処理部55は、撮像素子25に備えられるベイヤー配列のカラーフィルタの構成に応じた画像データに対してマトリックス演算、画素補間処理、ガンマ補正処理等を含むデモザイク処理することで、RAW(生)データであるベイヤーデータに現像を施して輝度色差系(YUV)の画像データに変換する。画像処理部55は、その画像データから表示用に画素数及び階調ビットを大幅に減じた画像データを作成して液晶モニタ16へ送り、スルー画像として表示させる。
【0033】
以上の回路を、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ56が統括制御する。このプロセッサ56は、ワークメモリ52及びプログラムメモリ53と直接接続される。ワークメモリ52は、例えばDRAMで構成される。プログラムメモリ53は、例えばフラッシュメモリなどの電気的に書換可能な不揮発性メモリで構成され、後述する撮影動作制御を含む動作プログラムやデータ等を固定的に記憶する。プロセッサ56はプログラムメモリ53から必要なプログラムやデータ等を読出し、ワークメモリ52に適宜一時的に展開記憶させながら、このダーモスコピーカメラ1全体の制御動作を実行する。さらに、プロセッサ56は、前述のシャッタボタン17及び電源ボタン18等の操作ボタンを含む操作部62から直接入力される各種キー操作信号、前述の液晶モニタ16上に設けられるタッチ入力部63からの操作信号に対応して制御動作を実行する。
【0034】
タッチ入力部63は、透明導電膜を用いて液晶モニタ16上に一体に形成されるものであり、ユーザの手指でタッチ操作された位置の座標情報を操作信号としてプロセッサ56へ送出する。
【0035】
プロセッサ56は、システムバスSBを介して上記のAGC・A/D変換部54、バッファメモリ51、画像処理部55、液晶モニタ16及びタッチ入力部63の他、さらにレンズ駆動部57、点灯部駆動部58、撮像素子駆動部59、メモリカードコントローラ60及び画像出力部61と接続される。
【0036】
レンズ駆動部57は、プロセッサ56からの制御信号を受けてレンズ用DCモータ(M)64の回転を制御し、撮像レンズ系23を構成する複数のレンズ群中の撮像レンズの位置を光軸OA方向に沿って移動させる。
【0037】
点灯部駆動部58は、画像撮影時にプロセッサ56からの制御信号を受けて、LED32,33,34,35,36を点灯駆動する。なお、前述したように、ダーモスコピーカメラ1は、LED32,33,34,35,36をそれぞれ複数個有しているが、図8では、紙面の都合上、各LEDを一つずつ示している。
【0038】
撮像素子駆動部59は、その時点で設定されている撮影条件等に応じて撮像素子25の走査駆動を行なう。
【0039】
画像処理部55は、操作部62のシャッタボタン17操作に伴う画像撮影時に、AGC・A/D変換部54から送られてきてバッファメモリ51に保持される画像データをデモザイク処理し、さらに所定のデータファイル形式、例えばJPEG(Joint Photographic Experts Group)であればDCT(離散コサイン変換)やハフマン符号化等のデータ圧縮処理を施してデータ量を大幅に削減した画像データファイルを作成する。作成した画像データファイルはシステムバスSB、メモリカードコントローラ60を介してメモリカード65に記録される。
【0040】
また画像処理部55は、再生モード時にメモリカード65からメモリカードコントローラ60を介して読出されてくる画像データをシステムバスSBを介して受取り、バッファメモリ51に保持させた上で、このバッファメモリ51に保持させた画像データを記録時とは逆の手順で圧縮を解く伸長処理により元のサイズの画像データを得る。そして、画像処理部55は、この画像データを、システムバスSBを介して液晶モニタ16に出力して表示させる。或いは、画像処理部55は、画像データをシステムバスSBを介して画像出力部61に送り、画像出力部61から外部に出力させる。
【0041】
メモリカードコントローラ60は、カードコネクタCCを介してメモリカード65と接続される。メモリカード65は、このダーモスコピーカメラ1に着脱自在に装着され、このダーモスコピーカメラ1の記録媒体となる画像データ等の記録用メモリである。メモリカード65の内部には、ブロック単位で電気的に書換え可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリと、その駆動回路とが設けられる。
【0042】
画像出力部61は、再生モード時に画像処理部55から送られてきた画像データを、画像出力コネクタICに接続された図示しないケーブルを介して図示しない外部モニタに送信し、その外部モニタに表示させる。
【0043】
次に、以上のように構成した本発明の撮像装置の一実施形態に係るダーモスコピーカメラ1の動作について説明する。
【0044】
ダーモスコピーカメラ1は、ユーザにより電源ボタン18が操作されると起動する。ダーモスコピーカメラ1の撮像モードには、上述した臨床撮影をする臨床撮影モード、ダーモスコピー撮影をするダーモスコピー撮影モード、立体物撮影用アダプタ2を利用して高さのある皮膚疾患部を撮影する立体物撮影モード、小径範囲撮影用アダプタ3を利用して指の間や耳の窪みなどの狭隘な箇所を撮像する小径範囲撮影モードが含まれる。
【0045】
従来のダーモスコピーカメラでは、起動されると、まず、ユーザによる撮像モードの設定を受け付ける。例えば、ユーザは、液晶モニタ16へのタッチ操作により上記の撮像モードの何れか1つを選択し、それに応じて、プロセッサ56は、選択された撮像モードに、撮像モードを設定する。
【0046】
これに対して、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1は、この撮像モードの設定を行うため、ユーザによるこの起動後の撮像モードの設定操作は不要となる。
【0047】
図9は、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1の撮影動作の一例を説明するためのフローチャートである。なお、撮影した画像の再生動作については、従来と同様であるので、その説明は省略する。図9に示す撮影動作は、シャッタボタン17の半押し検知に応じて開始される。
【0048】
ユーザによってシャッタボタン17が半押しされると、プロセッサ56は、点灯部駆動部58により、ダーモ撮影用LEDを点灯させる(ステップS11)。なお、この点灯させるダーモ撮影用LEDは、LED32,33,34の全てを点灯させなくてもよい。例えば可視光を出射する8つのLED32のみを点灯させるものとしてよい。接写を行う場合、前述したように皮膚により保護ガラス40又は小径範囲撮影用保護ガラス48の前面が塞がれて外光が遮断されるため、何らかの照明が無いと、撮像素子25で取得する画像は真っ暗になってしまい、後述するオートフォーカス(AF)方式による撮像を実施することができない。そこで、まず最初に、ダーモ撮影用LEDを点灯させるものである。
【0049】
次に、プロセッサ56は、至近から無限大方向へAFサーチを実行する(ステップS12)。すなわち、プロセッサ56は、レンズ駆動部57によりレンズ用DCモータ64を回転させて、撮像レンズ系23を至近距離から無限遠へ向けて移動させながら、撮像素子駆動部59により撮像素子25を走査駆動して画像を取得していき、これら取得した画像から既知のAF方式により合焦点をサーチする。
【0050】
プロセッサ56は、保護ガラス面で合焦したか否かを判断する(ステップS13)。ここで、保護ガラス面とは、保護ガラス40の前面である。具体的には、プロセッサ56は、合焦した際の焦点距離に基づいて、撮像対象である皮膚疾患部と撮像部21の撮像素子25との距離を導出し、その導出した距離が、撮像素子25から保護ガラス面までの距離であるか否か判断する。なお、撮像素子25から保護ガラス面までの距離は、プログラムメモリ53に予め記憶されている、カメラ本体11と照明装置12のカバー体26及び照明装置本体27との設計値に基づいて導出することができる。或いは、事前にそれらの設計値に基づいて導出した距離を、プログラムメモリ53に記憶しておくものとしてもよい。立体物撮影用アダプタ2や小径範囲撮影用アダプタ3が装着されておらず、皮膚が直接、保護ガラス面に接触していると、この皮膚が接触している保護ガラス面で合焦する。また、立体物撮影用アダプタ2や小径範囲撮影用アダプタ3が装着されていた場合、或いは、接写を行わない場合には、保護ガラス面で合焦することはない。
【0051】
保護ガラス面で合焦したと判断すると(ステップS13(YES))、プロセッサ56は、撮像モードをダーモスコピー撮影モードに設定する(ステップS14)。
【0052】
そして、プロセッサ56は、ダーモスコピー撮影を行って(ステップS15)、この撮影動作を終了する。ダーモスコピー撮影自体は、従来と同様であるため、ここでは、簡単に説明する。シャッタボタン17が全押しされると、プロセッサ56は、可視光を出射する8つのLED32を点灯したまま、つまり、保護ガラス40に接触した皮膚疾患部が可視光により明るく照射された状態で、その皮膚疾患部を撮影し、撮影した画像をメモリカード65に保存する。次に、プロセッサ56は8つのLED32を消灯し、可視光を出射する8つのLED33を点灯させて、偏光板38により偏光された光を出射する。これにより、保護ガラス40に接触した皮膚疾患部が偏光光により明るく照射され、この状態で、皮膚疾患部を撮影し、撮影した画像をメモリカード65に保存する。次に、プロセッサ56は、8つのLED33を消灯し、紫外光を出射する4つのLED34を点灯させる。これにより、保護ガラス40に接触した皮膚疾患部が紫外光により明るく照射され、この状態で、皮膚疾患部を撮影し、撮影した画像をメモリカード65に保存する。そして、プロセッサ56は、4つのLED34を消灯して、このダーモスコピー撮影を終了する。このように、ダーモスコピー撮影においては、シャッタボタン17を一度操作することで、可視光が照射された皮膚疾患部、偏光光が照射された皮膚疾患部、及び紫外光が照射された皮膚疾患部が連続して撮像され、撮像された画像がメモリカード65に記録される。
【0053】
また、保護ガラス面で合焦していないと判断すると(ステップS13(NO))、プロセッサ56は、更に無限大方向へのAFサーチを継続する(ステップS16)。
【0054】
そして、プロセッサ56は、立体物撮影時の被写体距離で合焦したか否かを判断する(ステップS17)。具体的には、プロセッサ56は、合焦した際の焦点距離に基づいて、撮像対象である皮膚疾患部と撮像部21の撮像素子25との距離を導出し、その導出した距離が、保護ガラス面までの距離よりも遠いが、立体物撮影用アダプタ2の前端部44の前面までの距離よりも近い、距離範囲内にあるか否かを判断する(ステップS17)。この距離範囲は、プログラムメモリ53に予め記憶されている、カメラ本体11と立体物撮影用アダプタ2を装着した場合の照明装置12との設計値に基づいて導出することができる。或いは、事前にそれらの設計値に基づいて導出した距離範囲を、プログラムメモリ53に記憶しておくものとしてもよい。立体物撮影用アダプタ2が装着されている場合に、前端部44の前面が皮膚に押しつけられると、この前端部44に形成された開口43に高さのある皮膚疾患部が入り込み、その高さのある皮膚疾患部の頂部で合焦することとなる。
【0055】
立体物撮影時の被写体距離で合焦したと判断すると(ステップS17(YES))、プロセッサ56は、撮像モードを立体撮影モードに設定する(ステップS18)。
【0056】
そして、プロセッサ56は、立体物撮影を行って(ステップS19)、この撮影動作を終了する。立体物撮影自体は、従来と同様であるため、ここでは、簡単に説明する。シャッタボタン17が全押しされると、プロセッサ56は、ダーモスコピー撮影の場合と同様に、可視光が照射された皮膚疾患部、偏光光が照射された皮膚疾患部、及び紫外光が照射された皮膚疾患部を連続して撮像し、撮像した画像をメモリカード65に記録する。そして、プロセッサ56は、一定の微小距離だけ撮像レンズ系23を無限遠側に移動させて、同様にダーモスコピー撮影を行う。これを、立体物撮影用アダプタ2の前端部44の前面に相当する焦点距離となるまで繰り返し実施する。こうして、立体物撮影では、高さのある皮膚疾患部の様々な高さに合焦した複数の画像を取得する。これら複数の画像を合成することで、高さのある皮膚疾病患部の全てにピントの合った画像を得ることができる。この画像の合成処理は、プロセッサ56又は画像処理部55で行い、処理結果の画像をメモリカード65に記録することができる。もちろん、画像の合成処理は、別の外部装置で実施するようにしてもよい。
【0057】
また、立体物撮影時の被写体距離で合焦していないと判断すると(ステップS17(NO))、プロセッサ56は、ダーモ撮影用LEDを消灯して、小径範囲撮影用LEDである、可視光を出射する4つのLED35を点灯させる(ステップS20)。この4つのLED35は、小径範囲撮影用に光軸OAに近づけて配置した光源である。これにより、小径範囲撮影用保護ガラス48に接触した皮膚疾患部が可視光により明るく照射される。
【0058】
そして、プロセッサ56は、無限大方向へのAFサーチを継続する(ステップS21)。
【0059】
その後、プロセッサ56は、小径範囲撮影用保護ガラス面で合焦したか否かを判断する(ステップS22)。ここで、小径範囲撮影用保護ガラス面とは、小径範囲撮影用保護ガラス48の前面である。具体的には、プロセッサ56は、合焦した際の焦点距離に基づいて、撮像対象である皮膚疾患部と撮像部21の撮像素子25との距離を導出し、その導出した距離が、撮像素子25から小径範囲撮影用保護ガラス面までの距離であるか否か判断する。なお、撮像素子25から小径範囲撮影用保護ガラス面までの距離は、プログラムメモリ53に予め記憶されている、カメラ本体11と小径範囲撮影用アダプタ3を装着した照明装置12との設計値に基づいて導出することができる。或いは、事前にそれらの設計値に基づいて導出した距離を、プログラムメモリ53に記憶しておくものとしてもよい。
【0060】
小径範囲撮影用保護ガラス面で合焦したと判断すると(ステップS22(YES))、プロセッサ56は、撮像モードを小径範囲撮影モードに設定する(ステップS23)。
【0061】
そして、プロセッサ56は、小径範囲撮影を行って(ステップS24)、この撮影動作を終了する。小径範囲撮影自体は、従来と同様であるため、ここでは、簡単に説明する。シャッタボタン17が全押しされると、プロセッサ56は、可視光を出射する4つのLED35を点灯したまま、つまり、小径範囲撮影用保護ガラス48に接触した皮膚疾患部が可視光により明るく照射された状態で、その皮膚疾患部を撮影し、撮影した画像をメモリカード65に保存する。そして、プロセッサ56は、4つのLED35を消灯して、この小径範囲撮影を終了する。このように、小径範囲撮影においては、シャッタボタン17を一度操作することで、可視光が照射された皮膚疾患部が撮像され、撮像された画像がメモリカード65に記録される。
【0062】
また、小径範囲撮影用保護ガラス面で合焦していないと判断すると(ステップS22(NO))、プロセッサ56は、小径範囲撮影用LEDを消灯して、臨床撮影用LEDである、白色光を出射する16個のLED36を点灯させる(ステップS25)。これにより、皮膚疾患部が明るく照射される。
【0063】
そして、プロセッサ56は、無限大方向へのAFサーチを継続する(ステップS26)。
【0064】
その後、プロセッサ56は、合焦したか否かを判断する(ステップS27)。
【0065】
合焦したと判断すると(ステップS27(YES))、プロセッサ56は、撮像モードを臨床撮影モードに設定する(ステップS28)。
【0066】
そして、プロセッサ56は、臨床撮影を行って(ステップS29)、この撮影動作を終了する。臨床撮影自体は、一般的なカメラと同様であるため、ここでは、その説明を省略する。臨床撮影においては、シャッタボタン17を一度操作することで、白色光が照射された皮膚疾患部が撮像され、撮像された画像がメモリカード65に記録される。
【0067】
なお、合焦しなかったと判断した場合には(ステップS27(NO))、プロセッサ56は、液晶モニタ16にエラー表示を行う(ステップS30)。そして、この撮影動作を終了する。
【0068】
以上、詳述したように、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、撮像対象である皮膚疾患部を撮像する撮像部21を備え、プロセッサ56により、撮像対象と撮像部21の撮像素子25との距離を導出し、この導出した距離に基づいて、自装置に接写用アタッチメントである立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3が取り付けられているか否か判定して、その判定結果に応じて、撮像モードを設定する。このように、プロセッサ56は、導出手段、判定手段及び設定手段として機能する。よって、接写用アタッチメントとしての立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3の装着状況の判定結果に応じて撮像モードを設定することが可能になる。
【0069】
なお、撮像部21は、オートフォーカス方式で撮像対象を撮像し、プロセッサ56は、撮像対象を撮像する際の焦点距離に基づいて、撮像対象と撮像部21の撮像素子25との距離を導出する。よって、撮像対象と撮像部21の撮像素子25との距離をセンサ等の部品を追加すること無く、容易に導出することができる。
【0070】
また、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、撮像対象を照らす少なくとも1つの点灯部としてLED32,33,34,35,36を更に備え、プロセッサ56は、焦点距離を導出する場合に、それら少なくとも1つの点灯部のうち何れかを点灯する。よって、接写用アタッチメントである立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3が取り付けられていたとしても、撮像対象である皮膚疾患部を確実に照明して画像を取得し、焦点距離を導出することができる。
【0071】
更に、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、プロセッサ56により、設定した撮像モードに対応させて、点灯部の点灯状態を制御する。よって、撮像モードに応じた照明で、撮像対象である皮膚疾患部を撮影することができる。
【0072】
また、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、点灯部は、撮像部21に関して第1の範囲を照らす第1の点灯部(ダーモ撮影用LED又は小径範囲撮影用LED)であるLED32,33,34,35と、撮像部21に関して第1の範囲とは異なる第2の範囲を照らす第2の点灯部(臨床撮影用LED)であるLED36と、を含み、撮像モードは、第1の点灯部を点灯する第1の撮像モードとしてのダーモスコピー撮影モード、立体物撮影モード及び小径範囲撮影モードと、第2の点灯部を点灯する第2の撮像モードとしての臨床撮影モードと、を含む。よって、撮像対象である皮膚疾患部を接写することと、ダーモスコピーカメラ1を一般的なカメラとして使用して撮像対象を撮影することとを、ユーザの手動操作の手間無く切り替えることができる。
【0073】
なお、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、プロセッサ56により、焦点距離を導出する際に、第1の点灯部(ダーモ撮影用LED又は小径範囲撮影用LED)であるLED32,33,34,35を点灯し、焦点距離が接写距離であると判定した場合には、第1の撮像モードを設定すると共に、第1の点灯部の点灯を継続する。また、焦点距離が接写距離ではないと判定した場合には、プロセッサ56により、第1の点灯部の点灯から第2の点灯部(臨床撮影用LED)であるLED36の点灯に切り替えると共に、第2の撮像モードを設定する。よって、撮像モードに応じた照明を行って、撮影することが可能となる。
【0074】
また、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、プロセッサ56により、更に、導出した距離に基づいて、自装置に取り付けられている接写用アタッチメントの種類を判定し、その接写用アタッチメントの種類の判定結果に応じて、撮像モードを設定する。よって、接写用アタッチメントの何れが取り付けられているのかに応じて、撮像モードを切り替えることができるので、複数種類の接写用アタッチメントを使い分ける場合であっても、ユーザがその接写用アタッチメントの種類に適合した撮像モードを設定する手間を省くことができる。
【0075】
なお、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、点灯部は、撮像部21に関して第1の範囲を照らす第1の点灯部(ダーモ撮影用LED)としてのLED32,33,34と、撮像部21に関して第1の範囲とは異なる第2の範囲を照らす第2の点灯部(小径範囲撮影用LED)としてのLED35と、を含み、接写用アタッチメントは、第1の接写用アタッチメントとしての立体物撮影用アダプタ2と第2の接写用アタッチメントとしての小径範囲撮影用アダプタ3とを含む。そして、撮像モードは、それら立体物撮影用アダプタ2及び小径範囲撮影用アダプタ3のどちらも使用しない第1の撮像モードであるダーモスコピー撮影モードと、立体物撮影用アダプタ2を使用する第2の撮像モードである立体物撮影モードと、小径範囲撮影用アダプタ3を使用する第3の撮像モードである小径範囲撮影モードと、を含む。よって、ユーザは、ダーモスコピーカメラ1に立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3を装着させるだけで、モード選択操作をすることなく、そのアダプタに応じた撮像モードで撮像対象である皮膚疾患部を撮影することができる。
【0076】
ここで、本実施形態に係るダーモスコピーカメラ1によれば、プロセッサ56により、焦点距離の導出開始時に、第1の点灯部(ダーモ撮影用LED)としてのLED32,33,34を点灯して自装置に立体物撮影用アダプタ2又は小径範囲撮影用アダプタ3が取り付けられているか否か判断し、それらが取り付けられていないと判定した場合には、第1の撮像モードであるダーモスコピー撮影モードを設定すると共にLED32,33,34の点灯を継続する。また、自装置に立体物撮影用アダプタ2が取り付けられていると判定した場合には、プロセッサ56により、第2の撮像モードである立体物撮影モードを設定すると共にLED32,33,34の点灯を継続する。そして、自装置に立体物撮影用アダプタ2が取り付けられていないと判定した場合には、プロセッサ56により、LED32,33,34の点灯から第2の点灯部(小径範囲撮影用LED)としてのLED35の点灯に切り替えて、焦点距離の導出を継続し、自装置に小径範囲撮影用アダプタ3が取り付けられていると判定した場合、第3の撮像モードである小径範囲撮影モードを設定すると共に、LED35の点灯を継続する。よって、装着された接写用アタッチメントの種類に応じた撮像モードに適した照明を行って、撮像対象である皮膚疾患部を撮影することができる。
【0077】
なお、本発明の撮像装置の一実施形態に係るダーモスコピーカメラ1では、焦点距離に基づいて撮像対象である皮膚疾患部と撮像部21の撮像素子25との距離を導出するものとしているが、距離センサなどで対象物までの距離を測定することで、皮膚疾患部と撮像素子25との距離を導出するようにしてもよいことは勿論である。
【0078】
また、一実施形態では、立体物撮影用アダプタ2と小径範囲撮影用アダプタ3の2種類の接写用アタッチメントを選択的に装着する例を説明したが、接写用アタッチメントの種類は2種類に限るものではない。1種類の接写用アタッチメントのみ許容する撮像装置や、例えば顕微鏡撮影用アダプタなどを含む3種類以上の接写用アタッチメントに対応する撮像装置に対しても、本発明は適用可能である。
【0079】
また、一実施形態では、撮像対象と撮像部21の撮像素子25との間の距離に基づいて接写用アタッチメントが自装置に装着されているか否か、または、自装置に装着されている接写用アタッチメントの種類を判別しているが、プロセッサ56は、オートフォーカス方式による焦点距離導出や距離センサによる距離導出によって、撮像レンズ系23を覆うカバーが自装置に取り付けられているか否かを判定し、撮像レンズ系23を覆うカバーが自装置に取り付けられていると判定した場合はLED32~36を点灯させないように制御してもよい。換言すれば、設定する撮像モードは、撮影を禁止するモードであることができる。また、設定するモードは撮像に関するものではなく、LED32~36を点灯させないように制御する動作モードであってもよい。なお、撮像レンズ系23を覆うカバーとは、撮像レンズ系23に接触するものでなく、保護ガラス40を覆うものであってよい。
【0080】
また、一実施形態では、プロセッサ56がプログラムメモリ53に記憶されたプログラムに記述された命令に従い回路各部の動作を制御し、ソフトウェアとハードウエアとが協働して動作することで、撮影機能を実現するものとしたが、この撮影機能の内の少なくとも一部について、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(field-programmable gate array)、GPU(Graphics Processing Unit)、等の集積回路により実現するようにしても良い。
【0081】
更に、フローチャートを参照して説明した各処理の流れは、説明した手順に限定されるものではない。いくつかのステップの順序が入れ替えられても良いし、いくつかのステップが同時併行で実施されても良い。更には、いくつかのステップの処理内容が修正されても構わない。
【0082】
また、一実施形態は、ダーモスコピーカメラ1を例に説明したが、コルポスコピーカメラやサービコスコピーカメラなど、被写体に接触することで撮影する他の撮像装置(クローズアップカメラ)にも本発明は適用可能なことは言うまでも無い。なお、コルポスコピーカメラやサービコスコピーカメラは、膣や子宮頸部を診察するための撮像装置であり、ダーモスコピーと同様、「マイクロスコープ(Microscope):顕微鏡」及び「マイクロスコピー(Microscopy):顕微鏡による検査又は顕微鏡使用(法)」の使い分けに準じ、ここでは、「コルポスコープ(Colposcope):膣拡大鏡」及び「コルポスコピー(Colposcopy):膣拡大鏡による検査又は膣拡大鏡使用(法)」、「サービコスコープ(Cervicoscope):側視型頸管内視鏡」及び「サービコスコピー(Cervicoscopy):側視型頸管内視鏡による検査又は側視型頸管内視鏡使用(法)」の用語を、膣や子宮頸部の検査用の拡大鏡(装置)及び同拡大鏡を用いた子宮癌(子宮頸癌)検査又は同拡大鏡使用(行為)という意味で用いている。
【0083】
また、以上の一実施形態において記載したダーモスコピーカメラ1による各処理の手法、すなわち、図9のフローチャートに示す処理などの各手法は、何れもコンピュータに実行させることができるプログラムとして、メモリカード(ROMカード、RAMカードなど)、磁気ディスク(フロッピ(登録商標)ディスク、ハードディスクなど)、光ディスク(CD-ROM、DVDなど)、半導体メモリなどの外部記録装置の媒体に格納して配布することができる。そして、情報処理装置(撮像装置)の制御部(プロセッサ56)は、この外部記録装置の媒体に記録されたプログラムを記憶部19に読み込み、この読み込んだプログラムによって動作が制御されることにより、一実施形態において説明した各種の機能を実現し、前述した手法による同様の処理を実行することができる。
【0084】
また、各手法を実現するためのプログラムのデータは、プログラムコードの形態として通信ネットワーク上を伝送させることができ、この通信ネットワークに接続されたコンピュータ装置(プログラムサーバ)から、前記プログラムのデータを情報処理装置(撮像装置)に取り込んで記憶部19に記憶させ、前述した各種の機能を実現することもできる。
【0085】
なお、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、実施形態は適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。更に、実施形態には種々の発明が含まれており、開示される複数の構成要件から選択された組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件からいくつかの構成要件が削除されても、課題が解決でき、効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0086】
1…ダーモスコピーカメラ
2…立体物撮影用アダプタ
3…小径範囲撮影用アダプタ
10…コントローラ
11…カメラ本体
12…照明装置
13…表示部
14…本体部
15…回路基板
16…液晶モニタ
17…シャッタボタン
18…電源ボタン
19…記憶部
20…制御部
21…撮像部
22…枠体
23…撮像レンズ系
25…撮像素子
26…カバー体
27…照明装置本体
29…ベース部
32,33,34,35,36…LED
40…保護ガラス
41,43,49…開口
42,47…筒体
44…前端部
48…小径範囲撮影用保護ガラス
53…プログラムメモリ
55…画像処理部
56…プロセッサ
57…レンズ駆動部
58…点灯部駆動部
59…撮像素子駆動部
62…操作部
65…メモリカード
OA…光軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9