IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2024-137233エレベーターを制御するシステム、装置および方法
<>
  • 特開-エレベーターを制御するシステム、装置および方法 図1
  • 特開-エレベーターを制御するシステム、装置および方法 図2
  • 特開-エレベーターを制御するシステム、装置および方法 図3
  • 特開-エレベーターを制御するシステム、装置および方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137233
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】エレベーターを制御するシステム、装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240927BHJP
   B66B 5/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
B66B5/00 D
B66B5/02 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048677
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 恵治
(72)【発明者】
【氏名】高木 豊和
(72)【発明者】
【氏名】助川 祐太
(72)【発明者】
【氏名】高星 知和
(72)【発明者】
【氏名】出野 正樹
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA26
(57)【要約】
【課題】装置に設けられたウォッチドッグタイマーの動作ログを用いて当該装置の故障の原因を解析することが可能な技術を提供する。
【解決手段】エレベーター制御システムは、エレベーターを制御するシステムである。このエレベーター制御システムは、装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマーと、ウォッチドッグタイマーの動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部と、ウォッチドッグタイマーの動作ログを格納するログ格納部と、ウォッチドッグタイマーの動作ログをログ格納部に格納する処理を実行するログ格納処理部とを備える。WDT事前通知部は、ウォッチドッグタイマーの動作による装置のリセットをログ格納処理部に事前通知し、ログ格納処理部は、WDT事前通知部から事前通知を受信すると、ウォッチドッグタイマーの動作ログをログ格納部に退避させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーターを制御するエレベーター制御システムであって、
装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマーと、
前記ウォッチドッグタイマーの動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを格納するログ格納部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に格納する処理を実行するログ格納処理部と
を備え、
前記WDT事前通知部は、前記ウォッチドッグタイマーの動作による前記装置のリセットを前記ログ格納処理部に事前通知し、
前記ログ格納処理部は、前記WDT事前通知部から前記事前通知を受信すると、前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に退避させる
エレベーター制御システム。
【請求項2】
前記装置は、前記エレベーターの各ホール階に設けられたホール端末である、請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項3】
前記装置は、前記エレベーターの乗りかごである、請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項4】
前記装置の電源を監視する電源監視部をさらに備える、請求項1に記載のエレベーター制御システム。
【請求項5】
エレベーターを制御するエレベーター制御装置であって、
装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマーと、
前記ウォッチドッグタイマーの動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを格納するログ格納部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に格納する処理を実行するログ格納処理部と
を備え、
前記WDT事前通知部は、前記ウォッチドッグタイマーの動作による前記装置のリセットを前記ログ格納処理部に事前通知し、
前記ログ格納処理部は、前記WDT事前通知部から前記事前通知を受信すると、前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に退避させる
エレベーター制御装置。
【請求項6】
エレベーターを制御するエレベーター制御方法であって、
装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマーと、
前記ウォッチドッグタイマーの動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを格納するログ格納部と、
前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に格納する処理を実行するログ格納処理部と
を備え、
前記WDT事前通知部は、前記ウォッチドッグタイマーの動作による前記装置のリセットを前記ログ格納処理部に事前通知し、
前記ログ格納処理部は、前記WDT事前通知部から前記事前通知を受信すると、前記ウォッチドッグタイマーの動作ログを前記ログ格納部に退避させる
エレベーター制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーターを制御するためのコンピュータ技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベーターやエスカレーター等の昇降機、空調、照明、電源、水道等といった各種のビル設備に故障や不具合(以下、「故障等」と総称する)が生じた場合、当該故障等に的確に対処するためには、その様子や状態(故障モード)を正確に把握し、原因箇所を正しく特定することが欠かせない。
【0003】
然様な場合に、当該ビル設備に生じた故障等の原因箇所を特定するための各種技術が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-213469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ビル設備を構成する各種装置は、ウォッチドッグタイマー(Watchdog timer; WDT)とよばれるタイマー機能を備えていることが一般的である。例えば、主なビル設備の一つであるエレベーターの場合、ホール端末や乗りかご等といった装置にウォッチドッグタイマーが設けられていることが多い。そこで、仮にエレベーターに故障等が生じた場合には、当該故障等の原因箇所の特定に、このウォッチドッグタイマーの動作ログを利用することが考えられる。
【0006】
しかしながら、エレベーターを構成しているホール端末や乗りかご等の各種装置に組み込まれたウォッチドッグタイマーの動作ログは、通常、当該エレベーターの全体を統括制御する制御端末に送信され、当該装置の制御基板側には残っていない。そのため、エレベーターに生じた故障等の原因箇所が当該装置であることまで特定できたとしても、当該故障等の原因が、ハードウェアである当該装置自体の不具合に起因するのか、それとも当該装置の制御を行うソフトウェアの不具合に起因するのかを特定することができない、という課題があった。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、装置に設けられたウォッチドッグタイマーの動作ログを用いて当該装置の故障の原因を解析することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるエレベーター制御システムは、エレベーターを制御するシステムである。このエレベーター制御システムは、装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマーと、ウォッチドッグタイマーの動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部と、ウォッチドッグタイマーの動作ログを格納するログ格納部と、ウォッチドッグタイマーの動作ログをログ格納部に格納する処理を実行するログ格納処理部とを備える。WDT事前通知部は、ウォッチドッグタイマーの動作による装置のリセットをログ格納処理部に事前通知し、ログ格納処理部は、WDT事前通知部から事前通知を受信すると、ウォッチドッグタイマーの動作ログをログ格納部に退避させる。
【0009】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、装置に設けられたウォッチドッグタイマーの動作ログを用いて当該装置の故障の原因を解析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態に係るエレベーター制御システムを含むシステム全体の構成例を示す図である。
図2】実施形態に係るエレベーター制御システムのホール端末個別制御部の構成の一例を示す図である。
図3】平常動作時にエレベーター制御システムが実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図4】ウォッチドッグタイマーの動作による装置のリセット時にエレベーター制御システムが実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の説明では、「インターフェース装置」は、一つ以上のインターフェースデバイスでよい。当該一つ以上のインターフェースデバイスは、下記のうちの少なくとも一つでよい。
・一つ以上のI/O(Input/Output)インターフェースデバイス。I/O(Input/Output)インターフェースデバイスは、I/Oデバイスと遠隔の表示用計算機とのうちの少なくとも一つに対するインターフェースデバイスである。表示用計算機に対するI/Oインターフェースデバイスは、通信インターフェースデバイスでよい。少なくとも一つのI/Oデバイスは、ユーザーインターフェースデバイス、例えば、キーボードおよびポインティングデバイスのような入力デバイスと、表示デバイスのような出力デバイスとのうちのいずれでもよい。
・一つ以上の通信インターフェースデバイス。一つ以上の通信インターフェースデバイスは、一つ以上の同種の通信インターフェースデバイス(例えば一つ以上のNIC(Network Interface Card))であってもよいし二つ以上の異種の通信インターフェースデバイス(例えばNICとHBA(Host Bus Adapter))であってもよい。
【0013】
また、以下の説明では、「メモリ」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上のメモリデバイスであり、典型的には主記憶デバイスでよい。メモリにおける少なくとも一つのメモリデバイスは、揮発性メモリデバイスであってもよいし不揮発性メモリデバイスであってもよい。
【0014】
また、以下の説明では、「永続記憶装置」は、一つ以上の記憶デバイスの一例である一つ以上の永続記憶デバイスでよい。永続記憶デバイスは、典型的には、不揮発性の記憶デバイス(例えば補助記憶デバイス)でよく、具体的には、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、NVME(Non-Volatile Memory Express)ドライブ、または、SCM(Storage Class Memory)でよい。
【0015】
また、以下の説明では、「記憶装置」は、メモリと永続記憶装置の少なくともメモリでよい。
【0016】
また、以下の説明では、「プロセッサ」は、一つ以上のプロセッサデバイスでよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、典型的には、CPU(Central Processing Unit)のようなマイクロプロセッサデバイスでよいが、GPU(Graphics Processing Unit)のような他種のプロセッサデバイスでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、シングルコアでもよいしマルチコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、プロセッサコアでもよい。少なくとも一つのプロセッサデバイスは、処理の一部または全部を行うハードウェア記述言語によりゲートアレイの集合体である回路(例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit))といった広義のプロセッサデバイスでもよい。
【0017】
また、以下の説明では、「yyy部」の表現にて機能を説明することがあるが、機能は、一つ以上のコンピュータプログラムがプロセッサによって実行されることで実現されてもよいし、一つ以上のハードウェア回路(例えばFPGAまたはASIC)によって実現されてもよいし、それらの組合せによって実現されてもよい。プログラムがプロセッサによって実行されることで機能が実現される場合、定められた処理が、適宜に記憶装置および/またはインターフェース装置等を用いながら行われるため、機能はプロセッサの少なくとも一部とされてもよい。機能を主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。プログラムは、プログラムソースからインストールされてもよい。プログラムソースは、例えば、プログラム配布計算機または計算機が読み取り可能な記録媒体(例えば非一時的な記録媒体)であってもよい。各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0018】
また、以下の説明では、「プログラム」を主語として処理を説明する場合があるが、プログラムを主語として説明された処理は、プロセッサあるいはそのプロセッサを有する装置が行う処理としてもよい。また、二つ以上のプログラムが一つのプログラムとして実現されてもよいし、一つのプログラムが二つ以上のプログラムとして実現されてもよい。
【0019】
また、以下の説明では、「エレベーター制御システム」は、一つ以上の物理的な計算機で構成されたシステムでもよいし、物理的な計算リソース群(例えば、クラウド基盤)上に実現されたシステム(例えば、クラウドコンピューティングシステム)を含んでいてもよい。エレベーター制御システムが表示用情報を「表示する」ことは、計算機が有する表示デバイスに表示用情報を表示することであってもよいし、計算機が表示用計算機に表示用情報を送信することであってもよい(後者の場合は表示用計算機によって表示用情報が表示される)。
【0020】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態を詳細に説明する。
【0021】
なお、以下の説明においては、同一の、または類似する構成に共通の符号を付すことにより、重複した説明を省略することがある。
【0022】
また、同一あるいは同様の機能を有する要素が複数存在する場合に、当該複数の要素を区別するために、同一の符号に異なる添字を付して説明することがある。他方、当該複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明することがある。
【0023】
<エレベーター制御システム100の構成例>
まず、本実施形態に係るエレベーター制御システム100の構成例について、図1~2を参照して説明する。図1は、エレベーター制御システム100を含むシステム全体の構成の一例を概略的に示した図である。また、図2は、エレベーター制御システム100のホール端末個別制御部130の構成の一例を示す図である。
【0024】
なお、以下に説明する各ブロックは、主に、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0025】
(システム全体の構成例)
本実施形態のエレベーター制御システム100は、一つ以上の号機を備えるエレベーターの動作を制御するためのコンピュータシステムであり、それぞれ後述の各構成を備える複数のコンピュータ装置および/または制御基板によって実現される。
【0026】
このエレベーター制御システム100は、図1に例示したように、全体管理部110、号機制御部120およびホール端末個別制御部130と、制御用の各種専用線やインターネット等によりこれらを相互に通信可能に接続する通信ネットワーク140とを備えて構成される。
【0027】
全体管理部110は、例えば、エレベーター制御システム100の制御対象であるエレベーターが設置されているビルの管理室等に設置されて、当該エレベーターの全体を管理する情報処理端末である。すなわち、全体管理部110は、当該エレベーターを構成している全ての号機を管理対象とする。
【0028】
全体管理部110は、表示部111および通信部112の各機能ブロックを含んで構成される。
【0029】
表示部111は、ユーザーインターフェースに関する処理のうち、表示装置への各種画面の表示をはじめとする、出力に関する処理を担当する。表示部111は、例えば液晶ディスプレイやタッチスクリーン等を用いて構成される。
【0030】
通信部112は、LAN(Local Area Network)や専用線等といった通信線(通信ネットワーク140の一例)を介して行われる、当該エレベーターの号機毎に設けられた号機制御部120a、120b、120c・・・120n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「号機制御部120」と総称する)等の他の機器との通信処理を担当する。通信部112は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0031】
号機制御部120は、制御対象の号機の制御に関する各種処理を実行する。
【0032】
号機制御部120は、通信インターフェース部121、モーター制御部122、かご制御部123、ホール端末全体制御部124およびWDT要因解析部125の各機能ブロックを含んで構成される。
【0033】
通信インターフェース部121は、LAN(Local Area Network)や専用線等といった通信線(通信ネットワーク140の一例)を介して行われる、全体管理部110や、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末170a、170b、170c・・・170n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「ホール端末170」と総称する)に対応して設けられ、対応関係にあるホール端末170の制御をそれぞれ行うホール端末個別制御部130a、130b、130c・・・130n(以下、まとめて言うときや特に区別しないときには「ホール端末個別制御部130」と総称する)等の他の機器との通信処理を担当する。通信インターフェース部121は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0034】
モーター制御部122は、当該号機の動力源である、モーター150の制御に関する各種処理を実行する。モーター150は、かご160および錘に取り付けられたロープを巻回して、かご160を昇降させる。モーター制御部122は、ホール呼びが登録された乗り場階や、行先呼びが登録された行先階にかご160が停止するように、モーター150の動作を制御する。モーター制御部122の動作は、かご制御部123により制御される。モーター150は、不図示のプログラム格納部から読み出したプログラムに従って動作する。
【0035】
かご制御部123は、当該号機の乗りかごである、かご160の制御に関する各種処理を実行する。かご160は、当該ビルに設けられた不図示の昇降路を昇降する。かご制御部123は、この昇降動作をはじめとするかご160の各種かご動作を制御する。他のかご動作としては、例えば、ホール階におけるかご160の到着を知らせるランタンの点灯、かご160内の行先階ボタンの登録に応じた行先呼びの設定、かご160のかごドアの開閉制御等が挙げられる。
【0036】
ホール端末全体制御部124は、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末170の制御に関する各種処理を、当該ホール端末170とそれぞれ対応関係にあるホール端末個別制御部130と協働して実行する。ホール端末170は、当該ビルの各ホール階の当該号機の乗り場に設けられ、利用者がホール呼びを登録するために用いられる。ホール端末全体制御部124は、ホール端末170に登録されたホール呼びの情報を取得して、かご制御部123にホール呼びの情報を出力する。また、ホール端末全体制御部124は、ホールボタン171が押されたことを示す情報をかご制御部123に出力してもよい。
【0037】
WDT要因解析部125は、ウォッチドッグタイマー320が作動した場合に、その要因を解析するための各種処理を実行する。
【0038】
ホール端末個別制御部130は、各ホール階の当該号機の乗り場に設置されたホール端末170にそれぞれ対応して設けられている。ホール端末個別制御部130は、対応関係にあるホール端末170を制御のための各種処理を実行する。ホール端末個別制御部130の詳細は、図2に関連して後述する。
【0039】
なお、本実施形態では、図1に例示したように、全体管理部110と号機制御部120とが通信ネットワーク140を介して相互に接続されている別々の装置からなるものとして説明した。しかしながら、例えば、全体管理部110と号機制御部120とが、同一の装置によって構成されていてもよい。この場合において、エレベーター制御システムは、例えば、全体管理部110が号機制御部120の機能を含んで構成されるような形態で、号機制御部120と同じ一つのシステムとして構成されていてもよい。また、例えば、全体管理部110は、号機制御部120が担う一部または全部の機能を含む形で構成されていてもよい。
【0040】
(ホール端末個別制御部130の構成例)
次に、本実施形態に係るホール端末個別制御部130が備える各種機能のブロックの一例について、図2を参照しつつ説明する。なお、以下に説明する各ブロックは、主に、ハードウェア単位の構成ではなく、機能単位のブロックを示している。
【0041】
ホール端末個別制御部130は、図2に例示したように、制御部310、ウォッチドッグタイマー(Watchdog timer; WDT)320、リセット部330および電源監視部340を備えて構成される。
【0042】
制御部310は、当該ホール端末170の全体を制御する。
【0043】
制御部310は、通信部311、ログ格納部312、ログ格納処理部313、入出力制御部314およびWDTリフレッシュ部315の各機能ブロックを含んで構成される。
【0044】
通信部311は、LAN(Local Area Network)や専用線等といった通信線(通信ネットワーク140の一例)を介して行われる、号機制御部120(のホール端末全体制御部124)との各種通信処理を担当する。通信部311は、号機制御部120のホール端末全体制御部124に対して、入出力制御部314から入力されたホール呼びの情報を送信する。ホール呼びの情報は、ホール端末全体制御部124からかご制御部123およびモーター制御部122に出力され、ホール階にかご160が移動する。通信インターフェース部121は、例えばNIC(Network Interface Card)やHBA(Host Bus Adapter)等を用いて構成される。
【0045】
ログ格納部312は、後述するウォッチドッグタイマー320の動作ログを格納する。このログ格納部312は、ホール端末個別制御部130が主記憶デバイスとして元々備える、RAM(Random Access Memory)のような揮発性記憶素子からなるメモリによって実現される。
【0046】
ログ格納処理部313は、後述するウォッチドッグタイマー320の動作ログをログ格納部312に格納するための処理を実行する。
【0047】
入出力制御部314は、ホール呼びを登録するためのホールボタン171や移動中のかご160の階床数を表示するインジケーター172といったホール端末170の構成要素や、ホール端末170に接続された、かご160のホール階への到着を点灯して利用者に知らせるホールランタン等の制御を行う。
【0048】
WDTリフレッシュ部315は、後述するウォッチドッグタイマー320が作動した場合に、当該ウォッチドッグタイマー320をリフレッシュするための処理を実行する。
【0049】
ウォッチドッグタイマー320は、ホール端末170に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該ホール端末170のリセットを行う。
【0050】
ウォッチドッグタイマー320は、WDT事前通知部321、WDTパルスカウント部322およびWDTリセット発行部323の各機能ブロックを含んで構成される。
【0051】
WDT事前通知部321は、ウォッチドッグタイマー320の動作によるホール端末170のリセットをログ格納処理部313に事前通知するための処理を実行する。
【0052】
WDTパルスカウント部322は、ウォッチドッグタイマー320の発出するパルスをカウントすることにより、所定時間の経過を検知する。
【0053】
WDTリセット発行部323は、所定時間の経過により、リセットを発行する。
【0054】
リセット部330は、ウォッチドッグタイマー320の動作により、ホール端末個別制御部130および/またはホール端末170のリセットを行う。
【0055】
電源監視部340は、ホール端末個別制御部130および/またはホール端末170に電力を供給する電源を監視する。
【0056】
なお、上述した各機能の説明は一例であり、複数の機能が一つの機能にまとめられたり、一つの機能が複数の機能に分割されたりしてもよい。
【0057】
また、エレベーター制御システム100が、上述した各種機能に加えて、さらに別の機能を備えていてもよい。
【0058】
<エレベーター制御システム100の動作例>
次に、本実施形態に係るエレベーター制御システム100の動作の一例について、図3および図4を参照しつつ説明する。図3は、平常動作時にエレベーター制御システム100が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図300である。また、図4は、ウォッチドッグタイマー320の動作によってホール端末170のリセットを行う場合にエレベーター制御システム100が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図400である。
【0059】
なお、図3および図4において、横軸は、画面左側から右側に向けて時間が進むものとして時間の経過を表現した時間軸である。
【0060】
また、図3および図4に例示したように、本実施形態のエレベーター制御システム100において、ウォッチドッグタイマー320の動作を監視する時間を表すWDT監視時間は、タスク周期の1.5倍である。
【0061】
また、図3および図4に例示したように、本実施形態のエレベーター制御システム100において、ウォッチドッグタイマー320の動作を事前に通知する時間を表す事前通知時間は、タスク周期の1.25倍である。
【0062】
(平常動作時の動作例)
図3は、平常動作時にエレベーター制御システム100が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図300である。
【0063】
図3に例示したように、平常動作時において、WDTパルスカウント部322は、当該ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスをカウントする。これにより、WDTパルスカウント部322は、後述する事前通知時間およびWDT監視時間の経過を検知する。なお、本実施形態のエレベーター制御システム100では、ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスの1周期を1として当該パルスをカウントしているが、WDTパルスカウント部322がウォッチドッグタイマー320のパルスをカウントする際の具体的な方法や要領等は、斯様な方法や要領等にとどまらず、設計者が任意に設定することができる。例えば、本実施形態のエレベーター制御システム100では、WDTパルスカウント部322は、ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスをカウントアップ方式でカウントしているが、エレベーター制御システムは、ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスをカウントダウン方式でカウントしてもよい。
【0064】
また、図3に例示したように、平常動作時においては、WDTリフレッシュ部315は、定期的に当該ウォッチドッグタイマー320の動作をリフレッシュさせる。上述のタスク周期は、この、WDTリフレッシュ部315が当該ウォッチドッグタイマー320の動作をリフレッシュさせる周期を表す。なお、タスク周期、すなわちWDTリフレッシュ部315が当該ウォッチドッグタイマー320の動作をリフレッシュさせるタイミングは、事前通知時間よりも短い所定の時間毎であればよく、具体的な時間は、設計者が任意に設定することができる。
【0065】
WDTリフレッシュ部315がウォッチドッグタイマー320の動作をリフレッシュさせると、WDTパルスカウント部322は、当該ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスのカウント数をクリアする。
【0066】
WDTパルスカウント部322が、ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスのカウント数をクリアすると、その時点までに累積されてきたカウント数は0となる。WDTパルスカウント部322は、その後、当該ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスを再び1からカウントする。
【0067】
なお、図3に例示したように、平常動作時においては、定期的にウォッチドッグタイマー320がリフレッシュされるため、リセット部330、WDTリセット発行部323、WDT事前通知部321およびログ格納処理部313は、いずれも動作しない。
【0068】
(ウォッチドッグタイマー320の動作によるリセット時の動作例)
図4は、ウォッチドッグタイマー320の動作によってホール端末個別制御部130の動作をリセットさせる場合に、エレベーター制御システム100が実行する処理の流れの一例を示すシーケンス図400である。
【0069】
図4に例示したように、WDTパルスカウント部322によって計時された時間が進み、ログ格納処理部313に対してホール端末個別制御部130の動作のリセットの事前通知を行う時間を表す事前通知時間を超過すると(ステップS401)、WDT事前通知部321は、ログ格納処理部313に対して当該事前通知を行う(ステップS402)。
【0070】
WDT事前通知部321から受信した信号によって当該事前通知がセットされると、ログ格納処理部313は、この時点で未格納のウォッチドッグタイマー320の動作ログをログ格納部312に格納することによって、ログ格納部312に退避させる処理を開始する(ステップS403)。
【0071】
その時点で未格納のウォッチドッグタイマー320の動作ログの全てがログ格納部312に格納され、当該動作ログの退避が完了すると(ステップS404)、ログ格納処理部313は、当該処理を終了させる。
【0072】
ウォッチドッグタイマー320が発出するパルスのカウントがクリアされずに、WDTパルスカウント部322によって計時された時間がさらに進み、当該ウォッチドッグタイマー320の動作についての監視時間を表すWDT監視時間が超過すると(ステップS405)、WDTパルスカウント部322は、リセット部330にリセット発行を促す信号をWDTリセット発行部323に対して発信する。
【0073】
WDTリセット発行部323は、リセット部330にリセット発行を促す当該信号をWDTパルスカウント部322から受信すると、ウォッチドッグタイマー320の機能として、リセット部330に対して当該ホール端末個別制御部130の動作のリセットをセットする(ステップS406)。
【0074】
リセット部330は、ウォッチドッグタイマー320の動作により、当該ホール端末個別制御部130の動作をリセットさせる(ステップS407)。
【0075】
なお、WDT事前通知(タスク周期1.25倍)が行われた後であって、WDT監視時間(タスク周期1.5倍)の経過前に、WDTリフレッシュ部315から、ウォッチドッグタイマー320の動作をリフレッシュさせた場合には、WDTパルスカウント部322は、当該ウォッチドッグタイマー320が発するパルスをクリアする。この場合には、ログ格納部312に格納された動作ログにリフレッシュが完了した情報を追加する処理を実行するか、またはログ格納部312に格納された動作ログを削除する処理を実行する。当該処理によって、保守員が故障原因の解析を行う場合に、参照不要な情報の確認作業を減らすことができる。
【0076】
このように、エレベーター制御システム100によれば、ウォッチドッグタイマー320の動作によってホール端末個別制御部130の動作、すなわち各ホール階のホール端末170の動作をリセットさせる前に、ログ格納処理部313に対して事前通知を行うことができる。ログ格納処理部313は、WDT事前通知部321から受信したこの事前通知をトリガーとして、その時点で未格納のウォッチドッグタイマー320の動作ログを、ログ格納部312に格納することによって確実に退避させることができる。これにより、エレベーター制御システム100は、ウォッチドッグタイマー320の動作によるホール端末個別制御部130を含むホール端末170のリセット直前の期間についても、当該ウォッチドッグタイマー320の動作ログを確実にログ格納部312に格納することができる。その結果、エレベーター制御システム100のユーザーは、各ホール階のホール端末170が元々備えるハードウェア資源、すなわち、エレベーターが元々備えるハードウェア資源のみによって、電源喪失時等の場合の当該エレベーターの故障の原因を解析したり、故障モードを把握したりすることができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、ウォッチドッグタイマー320が各ホール階のホール端末170を制御するホール端末個別制御部130に設けられている場合について説明したが、本実施形態のエレベーター制御システム100は、例えば、当該エレベーターのかご160を制御するために当該かご160内に設けられたかご個別制御部(不図示)にウォッチドッグタイマー320が設けられている場合においても、同様に適用することができる。この場合、図2~4を参照しつつ説明した上述の各構成が、当該かご個別制御部に設けられていればよい。
【0078】
以上説明した本発明の実施形態は、以下のように総括される。
【0079】
(1)エレベーター制御システム100は、エレベーターを制御するシステムである。このエレベーター制御システム100は、装置に設けられ、所定時間の経過により稼働中の当該装置のリセットを行うウォッチドッグタイマー320と、ウォッチドッグタイマー320の動作による当該装置のリセットを事前通知するWDT事前通知部321と、ウォッチドッグタイマー320の動作ログを格納するログ格納部312と、ウォッチドッグタイマー320の動作ログをログ格納部312に格納する処理を実行するログ格納処理部313とを備える。WDT事前通知部321は、ウォッチドッグタイマー320の動作による装置のリセットをログ格納処理部313に事前通知し、ログ格納処理部313は、WDT事前通知部321から事前通知を受信すると、ウォッチドッグタイマー320の動作ログをログ格納部312に退避させる。このようにしたので、エレベーター制御システム100は、当該装置に設けられたウォッチドッグタイマー320の動作ログを用いて当該装置の故障の原因を解析することができる。
【0080】
(2)当該装置は、エレベーターの各ホール階に設けられたホール端末(170、130)である。このようにしたので、エレベーター制御システム100は、ホール端末(170、130)に設けられたウォッチドッグタイマー320の動作ログを用いて当該ホール端末(170、130)の故障の原因を解析することができる。
【0081】
(3)当該装置は、エレベーターの乗りかご160である。このようにしたので、エレベーター制御システム100は、かご160に設けられたウォッチドッグタイマー320の動作ログを用いて当該かご160の故障の原因を解析することができる。
【0082】
(4)ホール端末(170、130)やかご160等の装置の電源を監視する電源監視部340をさらに備える。このようにしたので、エレベーター制御システム100は、当該装置の電源異常に起因する当該装置の故障の原因を解析することができる。
【0083】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、任意の構成要素を用いて実施可能である。
【0084】
上記の実施形態や実施例、変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や実施例、変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【0085】
上記の各図において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、必ずしも実装上の全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。例えば、実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【0086】
また、以上に説明したエレベーター制御システム100の各機能部の配置形態は一例に過ぎない。各機能部の配置形態は、エレベーター制御システム100が備えるハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【符号の説明】
【0087】
100:エレベーター制御システム
図1
図2
図3
図4