(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137234
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04029 20160101AFI20240927BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M8/04029
H01M8/12 101
H01M8/04303
H01M8/04746
H01M8/04701
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048678
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和宏
(72)【発明者】
【氏名】野田 航平
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H127AA07
5H127BA05
5H127BB02
5H127CC07
5H127DA11
5H127DC73
5H127DC76
5H127DC83
5H127EE02
5H127EE14
5H127EE18
(57)【要約】
【課題】発電運転を停止する停止工程においてセルスタックを短時間で冷却可能な固体酸化物形燃料電池を提供する。
【解決手段】固体酸化物形燃料電池が、容器1の内部に、改質用水を気化させる気化部2、原燃料を気化部2から供給される水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部3、改質部3から供給される燃料ガスを用いて発電するセルスタック4、及び、セルスタック4から排出されるオフガスを燃焼する燃焼部5を有するホットモジュール6と、容器1の外部から改質部3へ原燃料を供給する原燃料供給路7と、容器1の外部から気化部2へ改質用水を供給する改質用水供給路9とを備え、容器1の外部から供給される冷却用媒体が流れる媒体流路11を容器1の内部に備え、媒体流路11の一部は、流路断面積が拡大されることで冷却用媒体が滞留可能な滞留空間11cとなっている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器を有し、当該容器の内部に、供給される改質用水を気化させる気化部、原燃料を前記気化部から供給される水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部、前記改質部から燃料ガス供給路を介して供給される前記燃料ガスを用いて発電するセルスタック、及び、前記セルスタックから排出されるオフガスを燃焼する燃焼部を有するホットモジュールと、
前記容器の外部から前記改質部へ前記原燃料を供給する原燃料供給路と、
前記容器の外部から前記気化部へ前記改質用水を供給する改質用水供給路と、を備える固体酸化物形燃料電池であって、
前記容器の外部から供給される冷却用媒体が流れる媒体流路を前記容器の内部に備え、
前記媒体流路の一部は、流路断面積が拡大されることで前記冷却用媒体が滞留可能な滞留空間となっている固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記容器の内部に引き込まれた前記媒体流路は前記容器の内部で開放されることなく前記容器の外部に引き出される請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記媒体流路のうち、前記滞留空間よりも下流側の部分は、前記セルスタックを取り囲むように螺旋状に引き回された後で前記容器の外部に引き出される請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記容器の内部に引き込まれた前記媒体流路は前記容器の内部で開放され、前記容器の内部の気体が排出される排気口が前記容器に設けられる請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記媒体流路は前記滞留空間の下流側で開放される請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記媒体流路に供給される前記冷却用媒体の単位時間当たりの流量を調節する流量調節部と、
前記流量調節部の動作を制御する制御部とを備える請求項1~5の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記媒体流路に前記冷却用媒体が流れるように前記流量調節部の動作を制御する請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記容器の内部の所定部位の温度が低下して設定温度以下になると前記媒体流路での前記冷却用媒体の通流が停止するように前記流量調節部の動作を制御する請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記容器の内部の前記所定部位の温度が低下するのにつれて前記媒体流路での前記冷却用媒体の流量が減少するように前記流量調節部の動作を制御する請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項10】
前記媒体流路は前記改質用水供給路の途中の分岐部から分岐した流路であり、
前記流量調節部は前記分岐部から前記媒体流路に流れ込む前記冷却用媒体としての前記改質用水の単位時間当たりの流量を調節する請求項6に記載の固体酸化物形燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池を運用する上で起動や停止は不可欠な動作である。特に、数百℃以上の高温で作動する固体酸化物形燃料電池では、起動工程において昇温するための期間及び停止工程において降温するための期間が、低温で作動する固体高分子形燃料電池などと比較して長くなる。そして、固体酸化物形燃料電池の起動工程及び停止工程に要する時間が長いほど、機器寿命や保証期間に占める発電していない時間の割合が大きくなる。従って、固体酸化物形燃料電池の利用者のメリットを最大化するためには、起動工程及び停止工程の長さを短縮することが好ましい。
【0003】
例えば、固体酸化物形燃料電池の停止工程の場合、燃料電池を積極的に冷却すればその停止工程に要する期間を短くすることができる。例えば、特許文献1(特開2003-317761号公報)には、冷却剤タンク(208)に貯えている冷却剤を燃料電池セット(202)に供給して、その燃料電池セットを冷却する液体冷却式燃料電池システムが記載されている。しかし、燃料電池セットに対して冷却剤が具体的にどのように作用しているのかは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池を冷却するための例として、セルスタックを構成する燃料電池セルのカソードに供給される発電用の空気を用いる方法が考えられる。具体的には、燃料電池の停止工程を行っている間、燃料電池セルのアノードには燃料ガスを流さない状態で、カソードのみに空気を流し続ける方法である。この場合、停止工程に要する期間を短くするためには、カソードに供給する空気の流量を多くすることが好ましい。しかし、アノードには燃料ガスを流さず、且つ、カソードには多量の空気を流すような状態が継続されると、カソード側の圧力がアノード側の圧力よりも大幅に高くなるため、燃料電池セルにとって好ましくないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、発電運転を停止する停止工程においてセルスタックを短時間で冷却可能な固体酸化物形燃料電池を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明に係る固体酸化物形燃料電池の特徴構成は、容器を有し、当該容器の内部に、供給される改質用水を気化させる気化部、原燃料を前記気化部から供給される水蒸気を用いて水蒸気改質して燃料ガスを生成する改質部、前記改質部から燃料ガス供給路を介して供給される前記燃料ガスを用いて発電するセルスタック、及び、前記セルスタックから排出されるオフガスを燃焼する燃焼部を有するホットモジュールと、
前記容器の外部から前記改質部へ前記原燃料を供給する原燃料供給路と、
前記容器の外部から前記気化部へ前記改質用水を供給する改質用水供給路と、を備える固体酸化物形燃料電池であって、
前記容器の外部から供給される冷却用媒体が流れる媒体流路を前記容器の内部に備え、
前記媒体流路の一部は、流路断面積が拡大されることで前記冷却用媒体が滞留可能な滞留空間となっている点にある。
【0008】
上記特徴構成によれば、容器の内部において媒体流路は容器の内部と同等の温度になる。容器の内部に設けられる媒体流路に冷却用媒体を流した場合、容器内部の熱によりその冷却用媒体の温度上昇及び気化が発生する。特に、媒体流路の滞留空間では冷却用媒体が滞留可能であるため、滞留している冷却用媒体によって容器の内部から多くの熱を奪うことができる。つまり、冷却用媒体により容器の内部の温度を低下させることができる。例えば、固体酸化物形燃料電池の発電運転を停止する停止工程において、媒体流路に冷却用媒体を流すことで、容器の内部の温度低下を促進することができる。
従って、発電運転を停止する停止工程においてセルスタックを短時間で冷却可能な固体酸化物形燃料電池を提供できる。
【0009】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記容器の内部に引き込まれた前記媒体流路は前記容器の内部で開放されることなく前記容器の外部に引き出される点にある。
【0010】
上記特徴構成によれば、容器の内部に冷却用媒体が放出されないため、容器の内部に冷却用媒体が付着することを回避できる。また、容器の内部から熱を奪った冷却用媒体が容器の外部に排出されるため、容器の内部の温度を速やかに低下させることができる。
【0011】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記媒体流路のうち、前記滞留空間よりも下流側の部分は、前記セルスタックを取り囲むように螺旋状に引き回された後で前記容器の外部に引き出される点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、容器の内部のうち、セルスタックの周囲での温度低下が特に発生する。その結果、固体酸化物形燃料電池の発電運転を停止する停止工程において、媒体流路に冷却用媒体を流すことで、セルスタックの温度低下を促進することができる。
【0013】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記容器の内部に引き込まれた前記媒体流路は前記容器の内部で開放され、前記容器の内部の気体が排出される排気口が前記容器に設けられる点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、媒体流路が容器の内部で開放されることで、媒体流路に供給される冷却用媒体が容器の内部に行きわたることが期待される。その結果、容器の内部の温度を広範囲で低下させることができる。また、容器の内部から熱を奪った冷却用媒体が排気口から容器の外部に排出されるため、容器の内部の温度を速やかに低下させることができる。
【0015】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記媒体流路は前記滞留空間の下流側で開放される点にある。
【0016】
上記特徴構成によれば、滞留空間で冷却用媒体が気化し、その気化した冷却用媒体が容器の内部に充満することが期待される。その結果、容器の内部の隅々の温度を低下させることができる。
【0017】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記媒体流路に供給される前記冷却用媒体の単位時間当たりの流量を調節する流量調節部と、
前記流量調節部の動作を制御する制御部とを備える点にある。
【0018】
上記特徴構成によれば、媒体流路に供給される冷却用媒体の単位時間当たりの流量を調節することで、容器の内部の温度を調節できる。
【0019】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記媒体流路に前記冷却用媒体が流れるように前記流量調節部の動作を制御する点にある。
【0020】
上記特徴構成によれば、セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合に、容器の内部の温度を調節できる。
【0021】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記容器の内部の所定部位の温度が低下して設定温度以下になると前記媒体流路での前記冷却用媒体の通流が停止するように前記流量調節部の動作を制御する点にある。
ここで、前記制御部は、前記セルスタックでの発電を停止させる発電停止処理を行う場合、前記容器の内部の前記所定部位の温度が低下するのにつれて前記媒体流路での前記冷却用媒体の流量が減少するように前記流量調節部の動作を制御してもよい。
【0022】
上記特徴構成によれば、容器の内部の所定部位の温度が低下して設定温度以下になった後、即ち、容器の内部の温度が十分に低下した後は、媒体流路での冷却用媒体の通流を停止させることができる。その結果、容器の内部の温度が十分に低下したにも関わらず媒体流路に冷却用媒体が供給されることを回避できる。
【0023】
本発明に係る固体酸化物形燃料電池の別の特徴構成は、前記媒体流路は前記改質用水供給路の途中の分岐部から分岐した流路であり、
前記流量調節部は前記分岐部から前記媒体流路に流れ込む前記冷却用媒体としての前記改質用水の単位時間当たりの流量を調節する点にある。
【0024】
上記特徴構成によれば、冷却用媒体として改質用水を利用できるため、特別な冷却用媒体を用意することが不要になる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。
【
図2】第2実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。
【
図3】第3実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。
【
図4】第4実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<第1実施形態>
以下に図面を参照して本発明の第1実施形態に係る固体酸化物形燃料電池について説明する。
図1は、第1実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。図示するように、固体酸化物形燃料電池は、ホットモジュール6と、原燃料を供給する原燃料供給路7と、改質用水を供給する改質用水供給路9とを備える。ホットモジュール6は、容器1を有し、その容器1の内部に、気化部2、改質部3、セルスタック4、及び、燃焼部5を有する。
【0027】
気化部2には、改質用水供給路9を介して改質用水が供給される。改質用水供給路9には、ポンプや流量計などを用いて実現される、改質用水を供給する改質用水供給器10が設けられる。改質用水供給器10が、気化部2に供給する単位時間当たりの改質用水の流量を調節できる。そして、気化部2では、後述する燃焼部5で発生した燃焼熱の供給を受けて、改質用水供給器10から供給される改質用水を気化させる。
【0028】
また、気化部2には、原燃料供給路7を介して炭化水素を含む原燃料が供給される。原燃料供給路7には、ブロアや流量計などを用いて実現される、原燃料を供給する原燃料供給器8が設けられる。原燃料供給器8が、気化部2に供給する単位時間当たりの原燃料の流量を調節できる。
【0029】
本実施形態では、気化部2で生成された水蒸気と供給される原燃料とが混合されて、その混合ガスが改質部3に供給される構成を示しているが、原燃料を気化部2を介さずに改質部3に対して直接供給してもよい。
【0030】
改質部3には、上述したような原燃料供給路7を介して炭化水素を含む原燃料が供給される。改質部3には、気化部2での改質用水の気化によって生成された水蒸気が気化部2から供給される。また、改質部3には、後述する燃焼部5で発生した燃焼熱が供給される。そして、改質部3では、原燃料供給器8から供給される原燃料を気化部2から供給される水蒸気を用いて水蒸気改質して水素を含む燃料ガスを生成する。改質部3で生成された燃料ガスは、燃料ガス流路21を介してセルスタック4に向けて流れる。
【0031】
セルスタック4は、アノードと、カソードと、固体電解質とを有する複数の固体酸化物形の燃料電池セルを備える。また、セルスタック4の温度を測定する温度センサT1も設けられる。固体酸化物形燃料電池は、改質部3で生成された燃料ガスがセルスタック4に向けて流れる燃料ガス流路21と、セルスタック4に供給される空気が流れる空気供給路12とを備える。尚、改質部3で燃料ガスが生成されていない場合は、燃料ガス流路21には原燃料ガスが流れる。
【0032】
そして、各燃料電池セルは、改質部3で生成された燃料ガス及び空気供給器13から供給される空気(酸素)を用いて発電する。具体的には、アノードには、燃料ガス流路21を介して燃料ガスが供給され、カソードには、空気供給路12を介して空気(酸素)が供給される。空気供給路12には、ポンプや流量計などを用いて実現される、空気を供給する空気供給器13が設けられる。空気供給器13が、セルスタック4に供給する単位時間当たりの空気の流量を調節できる。
【0033】
尚、アノードに供給される燃料ガスに含まれる例えば水素等の全てが発電で用いられるのではなく、アノードから排出されるアノード排ガスにも水素等は含まれている。また、カソードから排出されるカソード排ガスにも酸素は含まれている。そして、燃焼部5には、アノード排ガスがセルスタック4からアノード排ガス路15を介して供給され、カソード排ガスがセルスタック4からカソード排ガス路16を介して供給されて、燃焼部5では、セルスタック4から排出されるオフガス(アノード排ガス)が燃焼される。燃焼部5で発生した燃焼熱は容器1の内部空間の温度を上昇させ、特に改質部3及び気化部2に伝達される。燃焼部5から排出される燃焼排ガスは燃焼排ガス路14を介して容器1の外部に排出される。尚、燃焼排ガス路14と後述する媒体流路11とを各別に容器1の外部に引き出すのではなく、燃焼排ガス路14を媒体流路11と合流させて、即ち、燃焼排ガスと冷却用媒体とを合流させて、容器1の外部に排出させてもよい。
【0034】
以上のように、燃焼部5でオフガスが燃焼されている間、容器1の内部は高温(例えば500℃~700℃など)に保たれる。固体酸化物形燃料電池の停止工程において、容器1の内部の温度、即ち、セルスタック4の温度をできるだけ早く低下させることができれば、機器寿命や保証期間に占める発電していない時間の割合が小さくなる点で好ましい。そのため、本実施形態の固体酸化物形燃料電池は、容器1の外部から供給される冷却用媒体が流れる媒体流路11を容器1の内部に備える。また、容器1の内部において、媒体流路11の一部は、流路断面積が拡大されることで冷却用媒体が滞留可能な滞留空間11cとなっている。
【0035】
図1に示すように、本実施形態では、冷却用媒体としての水が媒体流路11を流れる。媒体流路11に供給される水の単位時間当たりの流量は流量調節部23が調節する。容器1の内部において、媒体流路11の途中には滞留空間11cが設けられている。媒体流路11のうち、滞留空間11cよりも上流側を上流側媒体流路11aとし、下流側を下流側媒体流路11bとする。容器1の内部において媒体流路11は開放されておらず、水は容器1の内部を媒体流路11を通って通過する。つまり、容器1の内部に引き込まれた媒体流路11は容器1の内部で開放されることなく容器1の外部に引き出される。
【0036】
滞留空間11cには、上流側媒体流路11aから水が流入する流入口18と、下流側媒体流路11bへ水(水蒸気)が流出する流出口19が設けられている。そして、媒体流路11は容器1の内部の熱を受けるため、供給された水が気化する。つまり、媒体流路11を流れる水によって容器1の内部が冷却される。特に、流出口19は滞留空間11cの上方に設けられているため、滞留空間11cの下方に水が液体として存在し、滞留空間11cの上方に水が気体(水蒸気)として存在している場合、その水蒸気が下流側媒体流路11bへと流出する。
【0037】
固体酸化物形燃料電池の動作、即ち、原燃料供給器8の動作、空気供給器13の動作、改質用水供給器10の動作、流量調節部23の動作などは制御部17が制御する。例えば、制御部17が、媒体流路11を流れる水の流量を多くすることで、容器1の内部の冷却を促進できる。
【0038】
本実施形態では、制御部17は、セルスタック4での発電を停止させる発電停止処理を行う場合、媒体流路11に冷却用媒体としての水が流れるように流量調節部23の動作を制御する。そして、制御部17は、セルスタック4での発電を停止させる発電停止処理を行う場合、例えば温度センサT2で測定される容器1の内部の所定部位の温度が低下して設定温度以下になると媒体流路11での冷却用媒体の通流が停止するように流量調節部23の動作を制御する。このようにして、その結果、発電停止処理の実行中での固体酸化物形燃料電池の冷却を促進して、セルスタック4が所定温度まで低下するのに要する期間を短くすることができる。
【0039】
このように、容器1の内部の所定部位の温度が低下して設定温度以下になった後、即ち、容器1の内部の温度が十分に低下した後は、媒体流路11での冷却用媒体の通流を停止させることができる。その結果、容器1の内部の温度が十分に低下したにも関わらず媒体流路11に冷却用媒体が供給されることを回避できる。
【0040】
尚、制御部17は、セルスタック4での発電を停止させる発電停止処理を行う場合、容器1の内部の所定部位の温度が低下するのにつれて媒体流路11での冷却用媒体の流量が減少するように流量調節部23の動作を制御してもよい。
【0041】
以上のように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池では、容器1の内部に設けられる媒体流路11に冷却用媒体を流した場合、容器11内部の熱によりその冷却用媒体の温度上昇及び気化が発生する。特に、媒体流路11の滞留空間11cでは冷却用媒体が滞留可能であるため、滞留している冷却用媒体によって容器1の内部から多くの熱を奪うことができる。つまり、冷却用媒体により容器1の内部の温度を低下させることができる。例えば、固体酸化物形燃料電池の発電運転を停止する停止工程において、媒体流路11に冷却用媒体を流すことで、容器1の内部の温度低下を促進することができる。
【0042】
<第2実施形態>
第2実施形態の固体酸化物形燃料電池は、媒体流路11の構成が上記実施形態と異なっている。以下に第2実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0043】
図2は、第2実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。図示するように、媒体流路11のうち、滞留空間11cよりも下流側の部分である下流側媒体流路11bは、セルスタック4を取り囲むように螺旋状に引き回された後で容器1の外部に引き出される。
【0044】
このような構成を採用することで、容器1の内部のうち、セルスタック4の周囲での温度低下が特に発生する。その結果、固体酸化物形燃料電池の発電運転を停止する停止工程において、媒体流路11に冷却用媒体を流すことで、セルスタック4の温度低下を促進することができる。
【0045】
<第3実施形態>
第3実施形態の固体酸化物形燃料電池は、媒体流路11の構成が上記実施形態と異なっている。以下に第3実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0046】
図3は、第3実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。図示するように、容器1の内部に引き込まれた媒体流路11は容器1の内部で開放される。具体的には、本実施形態の固体酸化物形燃料電池では、媒体流路11は、滞留空間11cの下流側の下流側媒体流路11bで開放される。その結果、媒体流路11で発生した水蒸気が容器1の内部に放出され、容器1の内部に行きわたることが期待される。その結果、容器1の内部の温度を広範囲で低下させることができる。
【0047】
また、容器1の内部の気体が排出される排気口22が容器1に設けられる。つまり、容器1の内部から熱を奪った冷却用媒体が排気口22から容器1の外部に排出されるため、容器1の内部の温度を速やかに低下させることができる。
【0048】
<第4実施形態>
第4実施形態の固体酸化物形燃料電池は、媒体流路11の構成が上記実施形態と異なっている。以下に第4実施形態の固体酸化物形燃料電池について説明するが、上記実施形態と同様の構成については説明を省略する。
【0049】
図4は、第4実施形態の固体酸化物形燃料電池の構成を説明する図である。図示するように、媒体流路11は改質用水供給路9の途中の分岐部20から分岐した流路である。そして、流量調節部23は分岐部20から媒体流路11に流れ込む冷却用媒体としての改質用水の単位時間当たりの流量を調節する。このように、冷却用媒体として改質用水を利用できるため、特別な冷却用媒体を用意することが不要になる。
【0050】
例えば、制御部17は、固体酸化物形燃料電池を発電運転している間は、改質用水供給路9の分岐部20から媒体流路11に流れ込む冷却用媒体としての改質用水の流量がゼロになるように流量調節部23を動作させる。また、制御部17は、セルスタック4での発電を停止させる発電停止処理を行う場合、媒体流路11に冷却用媒体が流れるように流量調節部23の動作を制御する。
【0051】
<別実施形態>
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池の構成について具体例を挙げて説明したが、その構成は適宜変更可能である。
例えば、上記実施形態では、水を冷却用媒体として用いる例を説明したが、他の媒体を冷却用媒体として用いてもよい。
また、上記実施形態では、アノード排ガス及びカソード排ガスが、セルスタック4からアノード排ガス路15及びカソード排ガス路16を介して各別に排出される構成を説明したが、アノード排ガス及びカソード排ガスが、セルスタック4から単一の排ガス路を介して混合された状態で排出される構成を採用してもよい。
【0052】
尚、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、発電運転を停止する停止工程においてセルスタックを短時間で冷却可能な固体酸化物形燃料電池に利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 :容器
2 :気化部
3 :改質部
4 :セルスタック
5 :燃焼部
6 :ホットモジュール
7 :原燃料供給路
9 :改質用水供給路
11 :媒体流路
11c :滞留空間
17 :制御部
20 :分岐部
22 :排気口
23 :流量調節部