(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137238
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】固体酸化物形燃料電池、及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20240927BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/0258 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/12 101
H01M8/0258
H01M8/12 102A
H01M8/04 J
H01M8/04537
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048682
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】河合 秀樹
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126AA08
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE31
5H126FF04
5H126GG02
5H127AA07
5H127AC01
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB66
5H127DC22
5H127DC97
5H127EE02
5H127EE18
(57)【要約】
【課題】固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化に起因する接触不良を抑制できる固体酸化物形燃料電池、及びその制御方法を提供する。
【解決手段】固体電解質膜の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルCと、燃料極及び空気極にそれぞれ相対して設けられるセパレータ12と、が積層された燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池であって、燃料極とセパレータ12との間、及び、空気極とセパレータ12との間の少なくとも何れか一方に配設され、内部に気体が流入して膨張する袋状の接点維持部材40と、接点維持部材40に気体を供給する気体供給機構と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体電解質膜の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルと、前記燃料極及び前記空気極にそれぞれ相対して設けられるセパレータと、が積層された燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池であって、
前記燃料極と前記セパレータとの間、及び、前記空気極と前記セパレータとの間の少なくとも何れか一方に配設され、内部に気体が流入して膨張する袋状の接点維持部材と、
前記接点維持部材に気体を供給する気体供給機構と、を備えた固体酸化物形燃料電池。
【請求項2】
前記接点維持部材は、金属箔からなり、袋内面に接合防止処理が施されている請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項3】
前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路を有し、
前記燃料極と前記セパレータとの間に前記接点維持部材が配設され、
前記接点維持部材は、耐酸化性を有する部材からなる請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項4】
前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、
前記空気極と前記セパレータとの間に形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、
前記気体供給機構は、前記燃料ガス流路を通流する前の前記燃料ガス、又は前記空気流路を通流する前の前記空気を前記接点維持部材に供給する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項5】
前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、
前記空気極と前記セパレータとの間に形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、
前記気体供給機構は、前記燃料ガス流路を通流した前記燃料ガス、又は前記空気流路を通流した前記空気を前記接点維持部材に供給する請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項6】
前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、
前記空気極と前記セパレータとの間に前記燃料ガス流路と平行な方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、
前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向上流側の端部及び下流側の端部と重複する領域と、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、或いは、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向下流側の端部及び上流側の端部と重複する領域と、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項7】
前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、
前記空気極と前記セパレータとの間に前記燃料ガス流路と直交する方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、
前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、前記セパレータの周縁部と重複する領域と、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向中央部又は前記空気の通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、或いは、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータの周縁部と重複する領域と、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向中央部又は前記燃料ガスの通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項8】
前記燃料電池セルと前記セパレータとの間に配設されたインターコネクタを備え、
前記接点維持部材は、前記セパレータと前記インターコネクタとの間に配設されている請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の固体酸化物形燃料電池の制御方法であって、
前記燃料電池セル又は前記燃料電池セルスタックの発電出力が高いほど前記接点維持部材の袋内部へ供給する気体の供給流量が多くなるように前記気体供給機構の動作を制御する、固体酸化物形燃料電池の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解質膜の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルと、燃料極及び空気極にそれぞれ相対して設けられるセパレータと、が積層された燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池、及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化物イオンを伝導する膜として固体電解質膜を用いたセルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC:Solid Oxide Fuel Cell)が知られている。固体酸化物形燃料電池においては、セルスタックは複数の燃料電池セルを多層構造として構成され、各燃料電池セルにおける固体電解質膜の片面側に燃料ガスを酸化するための燃料極が設けられ、その他面側に空気(酸化剤ガス)中の酸素を還元するための空気極が設けられている。
【0003】
説明を追加すると、このような固体酸化物形燃料電池のセルスタックは、燃料電池セル同士の間にインターコネクタの機能を有するセパレータを挟んだ状態で複数積層して形成され、燃料極の表面とセパレータの燃料極側の表面との間には、燃料極へ供給される燃料が通流する燃料極側空間が形成されると共に、空気極の表面とセパレータの空気極側の表面との間には、空気極へ供給される空気が通流する空気極側空間が形成されており、燃料極側空間へ燃料ガス(改質燃料ガス)を通流させると共に、空気極側空間へ空気を通流させることにより、燃料ガス中の水素や一酸化炭素、炭化水素と空気中の酸素とが電気化学反応を起こすことによって発電が行われる。
【0004】
上述の固体酸化物形燃料電池では、燃料極とセパレータとの間で接触不良が起こった場合、集電不良が起こることがある。これは、空気極とセパレータとの間においても同様である。
【0005】
これに関して、特許文献1に開示の技術では、燃料電池セル及びセパレータが一定数積層された後に、平坦な形状の仕切板が配置され、その上に再び燃料電池セル及びセパレータが一定数積層される。この技術によれば、製造工程において燃料電池セルに反りや歪みが生じていても、燃料電池セルの積層による変位の蓄積が、仕切板によって初期化される。その結果、製造工程において燃料電池セルに反りや歪みが生じていても、その反りや歪みによる接触不良が抑制されやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
固体酸化物形燃料電池が運転中であるとき(言い換えれば、発電を行っているとき)、固体酸化物形燃料電池は比較的高温となる。その結果、燃料電池セル及びセパレータが、熱膨張により、運転中でない状態に比べて反った形状になりがちである。特許文献1に開示の技術では、固体酸化物形燃料電池の運転によるこのような形状の変化によって生じる接触不良を抑制することができない。
【0008】
本発明の目的は、固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化に起因する接触不良を抑制できる固体酸化物形燃料電池、及びその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の特徴は、固体電解質膜の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルと、前記燃料極及び前記空気極にそれぞれ相対して設けられるセパレータと、が積層された燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池であって、前記燃料極と前記セパレータとの間、及び、前記空気極と前記セパレータとの間の少なくとも何れか一方に配設され、内部に気体が流入して膨張する袋状の接点維持部材と、前記接点維持部材に気体を供給する気体供給機構と、を備えたことにある。
【0010】
本構成によれば、固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化によって、燃料極とセパレータとが(又は空気極とセパレータとが)互いに離間した箇所、或いは接触圧が低下した箇所が生じた場合に、当該箇所に接点維持部材が配設されていれば、当該接点維持部材を膨張させることにより、当該箇所における燃料極とセパレータとの隙間(又は空気極とセパレータとの隙間)を当該接点維持部材によって埋めることができ、また、低下した接触圧を上昇させることができる。その結果、燃料極とセパレータとが(又は空気極とセパレータとが)、当該接点維持部材を介して良好に接触しやすくなる。これにより、固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化に起因する接触不良が抑制される。
【0011】
従って、本構成によれば、固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化に起因する接触不良を抑制できる固体酸化物形燃料電池を実現できる。
【0012】
さらに、本発明において、前記接点維持部材は、金属箔からなり、袋内面に接合防止処理が施されていると好適である。
【0013】
本構成によれば、接点維持部材が金属箔からなるため、接点維持部材を介した電気的な燃料極とセパレータとの接触状態(又は空気極とセパレータとの接触状態)が良好になりやすい。また、袋内面に接合防止処理が施されているため、袋内面同士が接合してしまう事態を回避しやすい。
【0014】
さらに、本発明において、前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路を有し、前記燃料極と前記セパレータとの間に前記接点維持部材が配設され、前記接点維持部材は、耐酸化性を有する部材からなると好適である。
【0015】
本構成によれば、接点維持部材の酸化が抑制されやすい。そのため、接点維持部材が酸化することにより接触不良が生じる事態を回避しやすい。
【0016】
さらに、本発明において、前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、前記空気極と前記セパレータとの間に形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、前記気体供給機構は、前記燃料ガス流路を通流する前の前記燃料ガス、又は前記空気流路を通流する前の前記空気を前記接点維持部材に供給すると好適である。
【0017】
本構成によれば、比較的低温の燃料ガス又は空気が接点維持部材に供給される。その結果、接点維持部材と燃料電池セルとの熱交換によって、燃料電池セルを冷却することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明において、前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、前記空気極と前記セパレータとの間に形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、前記気体供給機構は、前記燃料ガス流路を通流した前記燃料ガス、又は前記空気流路を通流した前記空気を前記接点維持部材に供給すると好適である。
【0019】
本構成によれば、比較的高温の燃料ガス又は空気が接点維持部材に供給される。そのため、比較的低温の燃料ガス又は空気が接点維持部材に供給される場合に比べて、燃料電池セルの温度への影響が小さくなりやすい。
【0020】
さらに、本発明において、前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、前記空気極と前記セパレータとの間に前記燃料ガス流路と平行な方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向上流側の端部及び下流側の端部と重複する領域と、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、或いは、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向下流側の端部及び上流側の端部と重複する領域と、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、と好適である。
【0021】
燃料ガス流路と空気流路とが互いに平行に延びている場合には、温度分布が流路に直交する方向に付き易く、それに伴いセル構成部材(燃料電池セルやセパレータ)も流路方向に膨張・収縮する。したがって温度による変形時の変位が大きい部分は流路の上流端と下流端になる。
それにより、燃料極(又は空気極)とセパレータとの間のうち、燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、セパレータにおける燃料ガス(又は空気)の通流方向上流側の端部及び下流側の端部と重複する領域と、空気極(又は燃料極)とセパレータとの間のうち、積層方向に沿った方向視において、セパレータにおける空気(又は燃料ガス)の通流方向中央部と重複する領域と、において、燃料極とセパレータとの隙間(又は空気極とセパレータとの隙間)が生じがちである(或いは接触圧が低下しがちである)ことが本願発明者により見出された。そして、本構成によれば、当該隙間を接点維持部材によって良好に埋めることができ、また、低下した接触圧を上昇させることができる。
【0022】
さらに、本発明において、前記燃料極と前記セパレータとの間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路と、前記空気極と前記セパレータとの間に前記燃料ガス流路と直交する方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路と、を備えており、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、前記セパレータの周縁部と重複する領域と、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記空気の通流方向中央部又は前記空気の通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、或いは、前記空気極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータの周縁部と重複する領域と、前記燃料極と前記セパレータとの間のうち、前記積層方向に沿った方向視において、前記セパレータにおける前記燃料ガスの通流方向中央部又は前記燃料ガスの通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に前記接点維持部材が設けられている、と好適である。
【0023】
燃料ガス流路と空気流路とが互いに直交している場合には、セル中央に比較的近い部分が最高温度となりそこから周囲方向に温度分布が付き易く、それに伴いセル構成部材(燃料電池セルやセパレータ)も周囲方向に膨張・収縮する。したがって温度による変形時の変位が大きい部分はセル構成部材の周囲となる。
それにより、燃料極(又は空気極)とセパレータとの間のうち、燃料電池セルスタックの積層方向に沿った方向視において、セパレータの周縁部と重複する領域と、空気極(又は燃料極)とセパレータとの間のうち、積層方向に沿った方向視において、セパレータにおける空気(又は燃料ガス)の通流方向中央部又は空気(又は燃料ガス)の通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、において、燃料極とセパレータとの隙間(又は空気極とセパレータとの隙間)が生じがちである(或いは接触圧が低下しがちである)ことが本願発明者により見出された。そして、本構成によれば、当該隙間を接点維持部材によって良好に埋めることができ、また、低下した接触圧を上昇させることができる。
【0024】
さらに、本発明において、前記燃料電池セルと前記セパレータとの間に配設されたインターコネクタを備え、前記接点維持部材は、前記セパレータと前記インターコネクタとの間に配設されていると好適である。
【0025】
本構成によれば、セパレータとインターコネクタとが別個に設けられる構成において、固体酸化物形燃料電池の運転による固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化に起因する接触不良を抑制することが可能となる。
【0026】
本発明の別の特徴は、上記の固体酸化物形燃料電池の制御方法であって、前記燃料電池セル又は前記燃料電池セルスタックの発電出力が高いほど前記接点維持部材の袋内部へ供給する気体の供給流量が多くなるように前記気体供給機構の動作を制御することにある。
【0027】
発電出力が高いほど、固体酸化物形燃料電池は高温になりやすい。固体酸化物形燃料電池が高温になるほど、固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化が大きくなりやすい。固体酸化物形燃料電池の構成部材の形状の変化が大きいほど、燃料極とセパレータとの隙間(又は空気極とセパレータとの隙間)が大きくなりやすい(或いは接触圧が大きく低下しやすい)。そのため、本構成によれば、燃料極とセパレータとの隙間(又は空気極とセパレータとの隙間)が大きいほど、或いは、接触圧が大きく低下しているほど、接点維持部材の袋内部へ供給される気体の供給流量が多くなる構成を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係る固体酸化物形燃料電池の概略構成図である。
【
図2】燃料電池セルスタックの構成を示す図である。
【
図3】セパレータの構成を示す前後方向視の図である。
【
図4】セパレータの構成を示す左右方向視の図である。
【
図5】セパレータ及び接点維持部材の構成を示す平面図である。
【
図6】セパレータ及び接点維持部材の構成を示す底面図である。
【
図8】接点維持部材の構成の別の例を示す断面図である。
【
図9】固体酸化物形燃料電池における発電が行われていないときの接点維持部材等を示す左右方向視の図である。
【
図11】固体酸化物形燃料電池における発電が行われているときの接点維持部材等を示す左右方向視の図である。
【
図15】発電出力と供給流量との関係を示すグラフ図である。
【
図16】第1別実施形態におけるセパレータの構成を示す前後方向視の図である。
【
図17】第1別実施形態におけるセパレータの構成を示す左右方向視の図である。
【
図18】第1別実施形態におけるセパレータ及び接点維持部材の構成を示す平面図である。
【
図19】第1別実施形態におけるセパレータ及び接点維持部材の構成を示す底面図である。
【
図20】その他の実施形態(1)における接点維持部材等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態について、図面に基づき説明する。尚、以下の説明においては、特に断りがない限り、図中の矢印Fの方向を「前」、矢印Bの方向を「後」として、図中の矢印Lの方向を「左」、矢印Rの方向を「右」とする。また、図中の矢印Uの方向を「上」、矢印Dの方向を「下」とする。
【0030】
尚、上下左右前後の方向は、説明の都合上定義したものに過ぎないのであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0031】
〔固体酸化物形燃料電池の全体構成〕
図1及び
図2に示すように、固体酸化物形燃料電池100は、平板状の固体電解質膜9の一方側の面に相対して燃料極7を設け、他方側の面に相対して空気極8を設けて構成される平板型の固体酸化物形の燃料電池セルCを、燃料電池セルC同士の間にセパレータ12を挟んだ状態で複数積層して形成される燃料電池セルスタック6を備える。セパレータ12は、燃料極7及び空気極8にそれぞれ相対して設けられる。
【0032】
即ち、固体酸化物形燃料電池100は、固体電解質膜9の一方側の面に相対して燃料極7を設け、他方側の面に相対して空気極8を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルCと、燃料極7及び空気極8にそれぞれ相対して設けられるセパレータ12と、が積層された燃料電池セルスタック6を備えている。
【0033】
図1に示すように、本実施形態の固体酸化物形燃料電池100は、脱硫部1と、気化部3と、改質部4と、燃焼部5と、熱交換部10と、を備える。また、固体酸化物形燃料電池100は、容器2を備える。容器2の内部に、気化部3と、改質部4と、燃焼部5と、熱交換部10と、燃料電池セルスタック6と、が収容され、容器2の内部が高温に保たれている。
【0034】
各燃料電池セルCの燃料極7には改質部4で生成された水素を主成分とする燃料ガスが供給され、空気極8には空気(酸素)が供給される。そして、燃料電池セルCからは、発電反応に用いられなかった水素を含むガス(燃料極排ガス)が排出され、発電反応に用いられなかった空気(空気極排ガス)が排出される。
【0035】
燃料極排ガス及び空気極排ガスは、燃焼部5に供給されて燃焼される。そして、燃焼部5から排出される燃焼排ガスは熱交換部10に供給され、容器2の内部に導入された空気と熱交換した後(即ち、空気極8に供給される空気を加熱した後)で容器2の外部に排気される。
【0036】
脱硫部1では、炭化水素ガスを含む原燃料ガス(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物が取り除かれる。気化部3には、改質用水と脱硫部1を通過した後の原燃料ガスとが供給される。気化部3は、供給される改質用水を、燃焼部5から伝達される燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。気化部3で生成された原燃料ガスと水蒸気との混合ガスは、改質部4に供給される。改質部4にも、燃焼部5で発生した燃焼熱が伝達される。そして、改質部4は、気化部3から供給される混合ガスに含まれる原燃料ガスの改質処理を行うことで、水素を主成分とする燃料ガスを生成する。
【0037】
燃料電池セルスタック6に供給される燃料ガスは、燃料極7の表面とセパレータ12の燃料極7側の表面との間に形成される燃料ガス流路32へ流入する。燃料ガスは、燃料ガス流路32を流れている間に燃料極7に供給される。燃料ガス流路32を流れた燃料ガスの残部及び反応生成ガス(水蒸気、炭酸ガス)を含む燃料極排ガスは、燃料ガス流路32の外部へ流出する。尚、燃料ガス流路32は、セパレータ12の表面に溝が形成される形態で設けられている。
【0038】
このように、固体酸化物形燃料電池100は、燃料極7とセパレータ12との間に形成され、燃料ガスが通流する燃料ガス流路32を有している。
【0039】
燃料電池セルスタック6に供給される空気は、空気極8の表面とセパレータ12の空気極8側の表面との間に形成される空気流路22に流入する。空気は、空気流路22を流れている間に空気極8に供給される。空気流路22を流れた空気の残部は、空気極排ガスとして、空気流路22の外部へ流出する。尚、空気流路22は、セパレータ12の表面に溝が形成される形態で設けられている。空気は、ブロア等により流量が調整される形態で供給される。
【0040】
このように、固体酸化物形燃料電池100は、空気極8とセパレータ12との間に形成され、空気が通流する空気流路22を有している。
【0041】
制御装置Sは、固体酸化物形燃料電池100の動作を制御する。例えば、制御装置Sは、脱硫部1に供給される単位時間当たりの原燃料ガスの量、気化部3に供給される単位時間当たりの改質用水の量、燃料電池セルスタック6から出力される電流などを調節することで、改質部4の温度、燃料電池セルスタック6での発電反応、燃焼部5の温度などを制御している。図示は省略するが、気化部3の温度、改質部4の温度、燃焼部5の温度などの情報が制御装置Sに伝達され、固体酸化物形燃料電池100の動作制御に利用される。このような制御装置Sは、公知のソフトウェアとハードウェアとの協働により実現される。
【0042】
〔セパレータ〕
図3から
図6に示すように、セパレータ12の上面(空気極8側の面)に、複数の空気流路22が形成されている。また、セパレータ12の下面(燃料極7側の面)に、複数の燃料ガス流路32が形成されている。このように、セパレータ12は、燃料電池セルスタック6に供給される燃料ガスと空気とを、互いに混ざらないように区分けするように構成されている。尚、一つのセパレータ12に設けられる空気流路22及び燃料ガス流路32の個数は、特に限定されない。
【0043】
また、セパレータ12は導電性を有している。これにより、セパレータ12は、セパレータ12を挟んで隣接する二つの燃料電池セルCを電気的に接続している。即ち、セパレータ12は、インターコネクタ13としての機能も有している。
【0044】
本実施形態において、空気流路22と燃料ガス流路32とは、何れも前後方向に沿って延びている。即ち、本実施形態の燃料電池セルスタック6において、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は互いに平行である。
【0045】
即ち、固体酸化物形燃料電池100は、空気極8とセパレータ12との間に燃料ガス流路32と平行な方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路22を備えている。
【0046】
尚、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は互いに同じであっても良いし、逆方向であっても良い。例えば、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は何れも前から後ろへ向かう方向であっても良い。あるいは、空気の流れる方向が前から後ろへ向かう方向であって、燃料ガスの流れる方向が後ろから前へ向かう方向であっても良い。
【0047】
本実施形態においては、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は何れも前から後ろへ向かう方向である。
【0048】
〔接点維持部材〕
図5及び
図6に示すように、固体酸化物形燃料電池100は、接点維持部材40を備えている。
図5から
図7に示すように、接点維持部材40は、セパレータ12の上面又は下面に対して平行に延びる長尺の袋状に構成されている。
【0049】
詳述すると、接点維持部材40は、複数の金属箔41から構成されている。本実施形態において、接点維持部材40は、二つの金属箔41から構成されている。より具体的には、二つの金属箔41のうちの一方の金属箔41の一端部と、他方の金属箔41の一端部と、を例えば溶接等により互いに接合すると共に、一方の金属箔41の他端部と、他方の金属箔41の他端部と、を例えば溶接等により互いに接合することにより、接点維持部材40が構成されている。
【0050】
尚、本発明はこれに限定されない。接点維持部材40は、例えば、
図8に示すように、単一の金属箔41から構成されていても良い。この場合、単一の金属箔41の一端部と他端部とを、例えば溶接等により互いに接合することにより、接点維持部材40を構成することができる。
【0051】
本実施形態における接点維持部材40の袋内面には、接合防止処理(例えばコーティングや酸化処理)が施されている。即ち、接点維持部材40は、金属箔41からなり、袋内面に接合防止処理が施されている。
【0052】
本実施形態における接点維持部材40(金属箔41)は、耐酸化性を有する部材からなる。例えば、接点維持部材40(金属箔41)は、ニッケルやNCA-1等により構成されていても良い。
【0053】
図5、
図6、
図9に示すように、接点維持部材40は、燃料極7とセパレータ12との間、及び、空気極8とセパレータ12との間に配設されている。
【0054】
尚、接点維持部材40は、燃料極7とセパレータ12との間のみに配設されていても良いし、空気極8とセパレータ12との間のみに配設されていても良い。燃料極7とセパレータ12との間に接点維持部材40が配設されている場合、燃料極7と当該接点維持部材40との間や、セパレータ12と当該接点維持部材40との間に、一つ又は複数の導電性の部材が介在していても良い。また、空気極8とセパレータ12との間に接点維持部材40が配設されている場合、空気極8と当該接点維持部材40との間や、セパレータ12と当該接点維持部材40との間に、一つ又は複数の導電性の部材が介在していても良い。
【0055】
本実施形態においては、
図5に示すように、空気極8とセパレータ12との間には、二つの接点維持部材40が配設されている。これらの接点維持部材40のうちの一方は、第1領域A1に設けられており、他方は、第2領域A2に設けられている。
【0056】
第1領域A1は、空気極8とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には平面視)において、セパレータ12における空気の通流方向下流側の端部(より具体的には後端部)と重複する領域である。また、第2領域A2は、空気極8とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には平面視)において、セパレータ12における空気の通流方向上流側の端部(より具体的には前端部)と重複する領域である。
【0057】
第1領域A1、及び、第1領域A1に設けられた接点維持部材40は、セパレータ12における空気の通流方向に対して直交する方向(より具体的には左右方向)に沿って延びている。また、第2領域A2、及び、第2領域A2に設けられた接点維持部材40は、セパレータ12における空気の通流方向に対して直交する方向(より具体的には左右方向)に沿って延びている。
【0058】
また、本実施形態においては、
図6に示すように、燃料極7とセパレータ12との間には、一つの接点維持部材40が配設されている。この接点維持部材40は、第3領域A3に設けられている。
【0059】
第3領域A3は、燃料極7とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には底面視)において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向中央部(より具体的には前後方向中央部)と重複する領域である。
【0060】
第3領域A3、及び、第3領域A3に設けられた接点維持部材40は、セパレータ12における燃料ガスの通流方向に対して直交する方向(より具体的には左右方向)に沿って延びている。
【0061】
尚、本発明はこれに限定されない。燃料極7とセパレータ12との間に二つの接点維持部材40が配設されていると共に、空気極8とセパレータ12との間に一つの接点維持部材40が配設されていても良い。この場合、各接点維持部材40の配置は、以上の説明と同様であっても良い。
【0062】
即ち、燃料極7とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向上流側の端部及び下流側の端部と重複する領域と、空気極8とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における空気の通流方向中央部と重複する領域と、に接点維持部材40が設けられている、或いは、空気極8とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における空気の通流方向下流側の端部及び上流側の端部と重複する領域と、燃料極7とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向中央部と重複する領域と、に接点維持部材40が設けられている。
【0063】
〔気体供給機構〕
図10に示すように、固体酸化物形燃料電池100は、第1供給装置15、第1供給通路16、第1排出通路17を備えている。第1供給通路16及び第1排出通路17は、燃料電池セルCに接続している。
【0064】
第1供給装置15は、第1供給通路16を介して、燃料電池セルCへ、空気又は燃料ガスを供給する。燃料電池セルCから排出された空気極排ガス又は燃料極排ガスは、第1排出通路17を介して、外部へ排出される。
【0065】
尚、第1供給通路16は、
図1に示した気体の通流経路のうち、燃料極7の上流側の部分の全体又は一部であっても良いし、空気極8の上流側の部分の全体又は一部であっても良い。また、第1排出通路17は、
図1に示した気体の通流経路のうち、燃料極7の下流側の部分の全体又は一部であっても良いし、空気極8の下流側の部分の全体又は一部であっても良い。
【0066】
図10に示すように、固体酸化物形燃料電池100は、気体供給機構50を備えている。気体供給機構50は、第2供給装置51、第2供給通路52、第2排出通路53を有している。
【0067】
第2供給通路52は、接点維持部材40に接続している。第2供給装置51は、第2供給通路52を介して、接点維持部材40へ、気体を供給する。当該気体は、特に限定されないが、例えば、空気又は燃料ガスであっても良い。当該気体が接点維持部材40の内部に流入することにより、接点維持部材40は膨張する。
【0068】
第2排出通路53は、接点維持部材40に接続している。接点維持部材40を通過した気体は、第2排出通路53を介して接点維持部材40の外部へ排出される。第2排出通路53は、第1排出通路17に接続していても良いし、接続していなくても良い。また、第2排出通路53に、オリフィスや電磁弁等が設けられていても良い。
【0069】
尚、第1供給装置15及び第2供給装置51は、気体(空気又は燃料ガス)を供給可能であれば、いかなる装置であっても良く、例えばブロア等であっても良い。
【0070】
このように、固体酸化物形燃料電池100は、燃料極7とセパレータ12との間、及び、空気極8とセパレータ12との間の少なくとも何れか一方に配設され、内部に気体が流入して膨張する袋状の接点維持部材40を備えている。また、固体酸化物形燃料電池100は、接点維持部材40に気体を供給する気体供給機構50を備えている。
【0071】
第2供給装置51は、制御装置Sによって制御される。固体酸化物形燃料電池100における発電が行われていないとき(あるいは、燃料電池セルスタック6が比較的低温であるとき)、第2供給装置51は駆動しない。即ち、接点維持部材40に気体が供給されない。そのため、このとき、
図9に示すように、接点維持部材40は、膨張していない状態である。
【0072】
また、固体酸化物形燃料電池100における発電が行われているとき(あるいは、燃料電池セルスタック6が比較的高温であるとき)、第2供給装置51は、制御装置Sの制御により駆動する。即ち、接点維持部材40に気体が供給される。そのため、このとき、
図11に示すように、接点維持部材40は、膨張した状態である。
【0073】
尚、
図11に示すように、固体酸化物形燃料電池100における発電が行われているとき(あるいは、燃料電池セルスタック6が比較的高温であるとき)、セパレータ12及び燃料電池セルCは、熱膨張によって反った形状となる。また、セパレータ12と燃料電池セルCとでは、熱膨張の程度が異なるため、形状変化の程度が異なる。その結果、セパレータ12と燃料電池セルCとの間に隙間が生じがちである(或いは接触圧が低下しがちである)。接点維持部材40は、当該隙間が生じる位置(或いは接触圧が低下する位置)に配置されている。
図11に示す状態において、各接点維持部材40は、それぞれ、セパレータ12と燃料電池セルCとに接している。その結果、各接点維持部材40を介して、セパレータ12と燃料電池セルCとの間の電気的な接点(接触圧)が維持される。
【0074】
尚、気体供給機構50の構成は、
図10に示すものに限定されない。例えば、気体供給機構50の構成は、
図12に示すものであっても良いし、
図13に示すものであっても良いし、
図14に示すものであっても良い。
【0075】
図12に示す構成において、気体供給機構50は、第2供給装置51を有していない。また、第2供給通路52は、第1供給通路16と接点維持部材40とを接続している。また、第2排出通路53は、接点維持部材40と第1排出通路17とを接続している。尚、第2供給通路52及び第2排出通路53に、オリフィスや電磁弁等が設けられていても良い。
【0076】
図13に示す構成において、気体供給機構50は、第2供給装置51を有していない。また、第2供給通路52は、第1供給通路16と接点維持部材40とを接続している。また、第2排出通路53は、接点維持部材40と第1供給通路16とを接続している。尚、第2供給通路52及び第2排出通路53に、オリフィスや電磁弁等が設けられていても良い。
【0077】
図12に示す構成、及び、
図13に示す構成においては、燃料電池セルCへ供給される前の気体(空気又は燃料ガス)が、接点維持部材40に供給される。即ち、これらの構成において、気体供給機構50は、燃料ガス流路32を通流する前の燃料ガス、又は空気流路22を通流する前の空気を接点維持部材40に供給する。
【0078】
図14に示す構成において、気体供給機構50は、第2供給装置51を有していない。また、第2供給通路52は、第1排出通路17と接点維持部材40とを接続している。また、第2排出通路53は、接点維持部材40と第1排出通路17とを接続している。尚、第2供給通路52及び第2排出通路53に、オリフィスや電磁弁等が設けられていても良い。
【0079】
図14に示す構成においては、燃料電池セルCを通流した後の気体(空気又は燃料ガス)が、接点維持部材40に供給される。即ち、この構成において、気体供給機構50は、燃料ガス流路32を通流した燃料ガス(燃料極排ガス)、又は空気流路22を通流した空気(空気極排ガス)を接点維持部材40に供給する。
【0080】
図12、
図13、
図14に示す構成であっても、固体酸化物形燃料電池100における発電が行われているとき(あるいは、燃料電池セルスタック6が比較的高温であるとき)に接点維持部材40に気体を供給する気体供給機構50を実現することができる。
【0081】
〔制御方法〕
固体酸化物形燃料電池100の制御方法(より具体的には、気体供給機構50の制御方法)について詳述する。本実施形態における固体酸化物形燃料電池100の制御方法では、
図15に示すように、燃料電池セルC又は燃料電池セルスタック6の発電出力が高いほど接点維持部材40の袋内部へ供給する気体の供給流量が多くなるように気体供給機構50の動作を制御する。
【0082】
より具体的には、制御装置Sは、固体酸化物形燃料電池100の発電運転中において、燃料電池セルスタック6の発電出力が高いほど、各接点維持部材40に対して単位時間当たりに供給される気体の量が多くなるように、第2供給装置51を制御する。ただし、本発明はこれに限定されない。気体供給機構50が、各接点維持部材40へ供給する気体の供給流量を個別に変更可能に構成されている場合、制御装置Sは、燃料電池セルCの発電出力が高いほど、複数の接点維持部材40のうち当該燃料電池セルCに隣接する接点維持部材40に対して単位時間当たりに供給される気体の量が多くなるように、気体供給機構50の動作を制御しても良い。
【0083】
以上で説明した構成によれば、固体酸化物形燃料電池100の運転による固体酸化物形燃料電池100の構成部材の形状の変化によって、燃料極7とセパレータ12とが(又は空気極8とセパレータ12とが)互いに離間した箇所、或いは接触圧が低下した箇所が生じた場合に、当該箇所に接点維持部材40が配設されていれば、当該接点維持部材40を膨張させることにより、当該箇所における燃料極7とセパレータ12との隙間(又は空気極8とセパレータ12との隙間)を当該接点維持部材40によって埋めることができ、また、低下した接触圧を上昇させることができる。その結果、燃料極7とセパレータ12とが(又は空気極8とセパレータ12とが)、当該接点維持部材40を介して良好に接触しやすくなる。これにより、固体酸化物形燃料電池100の運転による固体酸化物形燃料電池100の構成部材の形状の変化に起因する接触不良が抑制される。
【0084】
従って、以上で説明した構成によれば、固体酸化物形燃料電池100の運転による固体酸化物形燃料電池100の構成部材の形状の変化に起因する接触不良を抑制できる固体酸化物形燃料電池100を実現できる。
【0085】
〔第1別実施形態〕
上記実施形態においては、空気流路22と燃料ガス流路32とは、何れも前後方向に沿って延びている。即ち、上記実施形態の燃料電池セルスタック6において、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は互いに平行である。
【0086】
しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下では、本発明に係る第1別実施形態について、上記実施形態とは異なる点を中心に説明する。以下で説明している部分以外の構成は、上記実施形態と同様である。また、上記実施形態と同様の構成については、同じ符号を付している。
【0087】
図16から
図19に示すように、第1別実施形態において、空気流路22は前後方向に沿って延びている。また、燃料ガス流路32は左右方向に沿って延びている。即ち、第1別実施形態の燃料電池セルスタック6において、空気の流れる方向と、燃料ガスの流れる方向と、は互いに直交している。
【0088】
このように、第1別実施形態における固体酸化物形燃料電池100は、空気極8とセパレータ12との間に燃料ガス流路32と直交する方向に沿って延びるように形成され、空気が通流する空気流路22を備えている。
【0089】
第1別実施形態においては、
図18に示すように、空気極8とセパレータ12との間には、四つの接点維持部材40が配設されている。これらの接点維持部材40は、矩形の枠状に並べられている。また、これらの接点維持部材40は、第4領域A4に設けられている。
【0090】
第4領域A4は、空気極8とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には平面視)において、セパレータ12の周縁部と重複する領域である。
尚、
図18に示す例では、第4領域A4は、セパレータ12の外周部のうちの全周に亘っている。言い換えれば、
図18に示す例では、セパレータ12の外周部のうちの全周が、「セパレータ12の周縁部」に相当する。しかしながら、本発明はこれに限定されない。「セパレータ12の周縁部」は、セパレータ12の外周部のうちの一部であっても良い。例えば、「セパレータ12の周縁部」は、
図18におけるセパレータ12の前端部のみであっても良い。この場合、接点維持部材40は、
図18におけるセパレータ12の前端部のみに設けられていても良い。即ち、
図18に示す四つの接点維持部材40のうち、一部が設けられていなくても良い。言い換えれば、
図18に示す例において、接点維持部材40の設けられる個数は四つに限定されるものではなく、一つであっても良いし、例えば二つ又は三つであっても良い。
【0091】
また、第1別実施形態においては、
図19に示すように、燃料極7とセパレータ12との間には、一つの接点維持部材40が配設されている。この接点維持部材40は、第5領域A5に設けられている。
【0092】
第5領域A5は、燃料極7とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には底面視)において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向中央部(より具体的には左右方向中央部)又は燃料ガスの通流方向と直交する方向での中央部(より具体的には前後方向中央部)と重複する領域である。
【0093】
第1別実施形態における第5領域A5は、より具体的には、燃料極7とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視(より具体的には底面視)において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向と直交する方向での中央部(より具体的には前後方向中央部)と重複する領域である。
【0094】
第1別実施形態における第5領域A5、及び、第5領域A5に設けられた接点維持部材40は、セパレータ12における燃料ガスの通流方向(より具体的には左右方向)に沿って延びている。
【0095】
尚、本発明はこれに限定されない。第5領域A5、及び、第5領域A5に設けられた接点維持部材40は、セパレータ12における燃料ガスの通流方向に対して直交する方向(より具体的には前後方向)に沿って延びていても良い。
【0096】
また、燃料極7とセパレータ12との間に四つの接点維持部材40が配設されていると共に、空気極8とセパレータ12との間に一つの接点維持部材40が配設されていても良い。この場合、各接点維持部材40の配置は、以上の説明と同様であっても良い。
【0097】
即ち、燃料極7とセパレータ12との間のうち、燃料電池セルスタック6の積層方向に沿った方向視において、セパレータ12の周縁部と重複する領域と、空気極8とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における空気の通流方向中央部又は空気の通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に接点維持部材40が設けられている、或いは、空気極8とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12の周縁部と重複する領域と、燃料極7とセパレータ12との間のうち、当該積層方向に沿った方向視において、セパレータ12における燃料ガスの通流方向中央部又は燃料ガスの通流方向と直交する方向での中央部と重複する領域と、に接点維持部材40が設けられている。
【0098】
〔その他の実施形態〕
(1)
図20に示すように、セパレータ12とインターコネクタ13とが互いに別体であっても良い。
図20に示す構成では、インターコネクタ13が、燃料電池セルCとセパレータ12との間に配設されている。即ち、この構成において、固体酸化物形燃料電池100は、燃料電池セルCとセパレータ12との間に配設されたインターコネクタ13を備えている。
【0099】
図20に示す構成において、接点維持部材40は、セパレータ12とインターコネクタ13との間に配設されている。
図20において、各接点維持部材40は、それぞれ、セパレータ12とインターコネクタ13とに接している。尚、本発明はこれに限定されず、セパレータ12と接点維持部材40との間や、インターコネクタ13と接点維持部材40との間に、一つ又は複数の導電性の部材が介在していても良い。
【0100】
(2)燃料極7とセパレータ12とが(又は空気極8とセパレータ12とが)接点維持部材40を介して電気的に接触可能であれば、接点維持部材40は、金属箔41以外のいかなる素材から構成されていても良い。
【0101】
(3)接点維持部材40の袋内面に接合防止処理が施されていなくても良い。
【0102】
(4)接点維持部材40は、耐酸化性を有していない部材から構成されていても良い。
【0103】
(5)固体酸化物形燃料電池100における発電が行われているとき、接点維持部材40の袋内部へ供給する気体の供給流量が、燃料電池セルC又は燃料電池セルスタック6の発電出力にかかわらず一定となるように、気体供給機構50の動作が制御されても良い。
【0104】
(6)燃料極7とセパレータ12との間に配設される接点維持部材40の個数は、いかなる個数であっても良い。また、当該接点維持部材40の配置は、適宜変更することが可能である。例えば、当該接点維持部材40は、燃料ガスの入口又は出口に対応する位置や、燃料ガスの通流方向中央部に対応する位置に配置されていても良い。
【0105】
(7)空気極8とセパレータ12との間に配設される接点維持部材40の個数は、いかなる個数であっても良い。また、当該接点維持部材40の配置は、適宜変更することが可能である。例えば、当該接点維持部材40は、空気の入口又は出口に対応する位置や、空気の通流方向中央部に対応する位置に配置されていても良い。
【0106】
尚、上述の実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、固体電解質膜の一方側の面に相対して燃料極を設け、他方側の面に相対して空気極を設けて構成される固体酸化物形の燃料電池セルと、燃料極及び空気極にそれぞれ相対して設けられるセパレータと、が積層された燃料電池セルスタックを備えた固体酸化物形燃料電池、及びその制御方法に利用可能である。
【符号の説明】
【0108】
6 :燃料電池セルスタック
7 :燃料極
8 :空気極
9 :固体電解質膜
12 :セパレータ
13 :インターコネクタ
22 :空気流路
32 :燃料ガス流路
40 :接点維持部材
41 :金属箔
50 :気体供給機構
100 :固体酸化物形燃料電池
C :燃料電池セル