(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013724
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F02D 43/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
F02D43/00 301T
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116041
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】門田 浩之
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA33
3G384DA14
3G384EB07
3G384EB10
3G384ED07
3G384FA44Z
(57)【要約】
【課題】NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵分布を高精度に推定する。
【解決手段】車両は、エンジンと、前記エンジンに接続された排気流路に設けられるNOx吸蔵還元触媒と、1つまたは複数のプロセッサ、および、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリを有する制御装置と、を備え、前記プロセッサは、前記エンジンに供給される燃料の流量および前記エンジンの負荷に基づいて、排気ガスの流れ方向と、前記排気ガスの流れ方向に交差する所定の1方向とに分割された、前記NOx吸蔵還元触媒の複数の分割領域ごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定すること、を含む処理を実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
前記エンジンに接続された排気流路に設けられるNOx吸蔵還元触媒と、
1つまたは複数のプロセッサ、および、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリを有する制御装置と、
を備え、
前記プロセッサは、
前記エンジンに供給される燃料の流量および前記エンジンの負荷に基づいて、排気ガスの流れ方向と、前記排気ガスの流れ方向に交差する所定の1方向とに分割された、前記NOx吸蔵還元触媒の複数の分割領域ごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定すること、
を含む処理を実行する、車両。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記エンジンが高負荷である場合、前記NOx吸蔵還元触媒の複数の分割領域のうち、前記排気ガスの流れ方向に並んだ複数の分割領域を含む所定の高負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値を増加させ、
前記エンジンが低負荷である場合、前記NOx吸蔵還元触媒の複数の分割領域のうち、前記1方向に並んだ複数の分割領域を含む所定の低負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値を増加させる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記エンジンが高負荷である場合、前記高負荷分割領域における各分割領域において、分配率を異ならせて前記吸蔵量の推定値を増加させ、
前記エンジンが低負荷である場合、前記低負荷分割領域における各分割領域において、分配率を異ならせて前記吸蔵量の推定値を増加させる、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記高負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値の合計が所定の第1閾値以上である場合、または、前記低負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値の合計が所定の第2閾値以上である場合に、前記NOx吸蔵還元触媒から硫黄成分を脱離させる硫黄脱離処理を実行する、請求項2または3に記載の車両。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記高負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値の合計が所定の第1閾値以上である場合に、前記エンジンが高負荷であると、前記エンジンによるリーン燃焼を禁止し、
前記低負荷分割領域の各分割領域の前記吸蔵量の推定値の合計が所定の第2閾値以上である場合に、前記エンジンが低負荷であると、前記エンジンによるリーン燃焼を禁止する、請求項2または3に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンから排出される排気ガスが流通する排気流路には、排気ガスに含まれるNOx(つまり、窒素酸化物)を浄化するNOx吸蔵還元触媒が設けられる場合がある。NOx吸蔵還元触媒は、LNT(つまり、Lean NOx Trap)とも呼ばれる。NOx吸蔵還元触媒は、NOxのみならず、排気ガスに含まれる硫黄成分、例えばSOx(つまり、硫黄酸化物)も吸蔵してしまう。NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵量は、車両の運転時間、つまり、エンジンの運転時間が長くなるにつれて増加する。NOx吸蔵還元触媒において硫黄成分の吸蔵量が増加すると、NOx吸蔵還元触媒の浄化性能が低下してしまうという問題がある。
【0003】
そこで、NOx吸蔵還元触媒が設けられる車両では、NOx吸蔵還元触媒全体における硫黄成分の吸蔵量が所定の閾値以上になると、NOx吸蔵還元触媒から硫黄成分を脱離させる硫黄脱離処理が実行され、NOx吸蔵還元触媒の浄化性能が回復される。硫黄脱離処理は、Sパージとも呼ばれる。NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵量を推定する技術として、例えば、特許文献1には、エンジンの運転状態に基づいて排気ガスに含まれるSOx量を推定し、推定したSOx量を逐次積算し、このSOx量の積算値をNOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵量とみなす技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵量は、NOx吸蔵還元触媒に接触した排気ガスの総量に依存する。以下、NOx吸蔵還元触媒に接触した排気ガスの総量を「接触総量」という。例えば、接触総量が多い場合、NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵量は多くなり、接触総量が少ない場合、硫黄成分の吸蔵量は少なくなる。
【0006】
しかし、車両の運転の仕方、排気流路の形状等によって、NOx吸蔵還元触媒において、接触総量が異なる領域が生じる場合がある。この場合、NOx吸蔵還元触媒における接触総量が少ない領域は、硫黄成分の吸蔵量が少なく浄化性能を維持しているが、接触総量が多い領域は、硫黄成分の吸蔵量が多く浄化性能が低下してしまうという事態が生じる。
【0007】
このため、NOx吸蔵還元触媒全体における硫黄成分の吸蔵量に基づき硫黄脱離処理の実行タイミングを判断する従来技術では、NOx吸蔵還元触媒における接触総量が多い領域で浄化性能が低下しているにも拘わらず、硫黄脱離処理が実行されなくなってしまうという問題がある。また、NOx吸蔵還元触媒全体における硫黄成分の吸蔵量に基づきリーン燃焼の禁止を開始するタイミングを判断する従来技術では、NOx吸蔵還元触媒における接触総量が少ない領域でまだ浄化性能が維持されているにも拘わらず、リーン燃焼が禁止され、燃費が悪化してしまうという問題がある。
【0008】
そこで、NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵分布を高精度に推定する技術の開発が希求されている。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑み、NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵分布を高精度に推定することが可能な車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の一実施の形態に係る車両は、
エンジンと、
前記エンジンに接続された排気流路に設けられるNOx吸蔵還元触媒と、
1つまたは複数のプロセッサ、および、前記プロセッサに接続される1つまたは複数のメモリを有する制御装置と、
を備え、
前記プロセッサは、
前記エンジンに供給される燃料の流量および前記エンジンの負荷に基づいて、排気ガスの流れ方向と、前記排気ガスの流れ方向に交差する所定の1方向とに分割された、前記NOx吸蔵還元触媒の複数の分割領域ごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定すること、
を含む処理を実行する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、NOx吸蔵還元触媒における硫黄成分の吸蔵分布を高精度に推定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る車両の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る制御装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、排気ガスの流量と、NOx吸蔵還元触媒における排気ガスの接触領域との関係を説明する第1の図である。
【
図4】
図4は、排気ガスの流量と、NOx吸蔵還元触媒における排気ガスの接触領域との関係を説明する第2の図である。
【
図5】
図5は、NOx吸蔵還元触媒に設定される分割領域を説明する図である。
【
図6】
図6は、NOx吸蔵還元触媒を上流側から見た場合の分割領域を説明する図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る吸蔵量推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る硫黄脱離処理実行方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係るリーン燃焼実行可否判定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す具体的な寸法、材料、数値等は、発明の理解を容易にするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る車両100の構成を示す概略図である。なお、
図1中、破線の矢印は、信号の流れを示す。
【0015】
図1に示すように、車両100は、エンジン110と、吸気流路120と、スロットルバルブ122と、排気流路130と、三元触媒140と、NOx吸蔵還元触媒150と、マフラ160と、吸入空気量センサ170と、温度センサ172と、NOxセンサ174と、制御装置200と、を含む。
【0016】
エンジン110は、車両100の駆動源として機能する。エンジン110は、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンである。なお、車両100は、エンジン110に加えてモータを駆動源として備えるハイブリッド車両であってもよい。
【0017】
エンジン110の吸気ポートには、吸気マニホールドが連通される。吸気マニホールドの集合部には、吸気流路120が連通される。吸気流路120は、例えば、配管で構成される。吸気流路120には、スロットルバルブ122が設けられる。
【0018】
エンジン110の排気ポートには排気マニホールドが連通される。排気マニホールドの集合部には、排気流路130が連通される。排気流路130は、例えば、配管で構成される。エンジン110から排気された排気ガスは、排気流路130を流れる。以下、排気ガスの流れ方向の上流を単に「上流」という場合がある。また、排気ガスの流れ方向の下流を単に「下流」という場合がある。
【0019】
排気流路130には、エンジン110から近い順に、三元触媒140、NOx吸蔵還元触媒150、マフラ160が設けられる。
【0020】
三元触媒140は、エンジン110から排出された排気ガスに含まれる炭化水素、一酸化炭素、NOxを浄化する。三元触媒140は、例えば、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を含む。
【0021】
NOx吸蔵還元触媒150は、排気流路130における三元触媒140の下流側に設けられる。換言すれば、NOx吸蔵還元触媒150は、排気流路130における三元触媒140とマフラ160との間に設けられる。NOx吸蔵還元触媒150は、エンジン110がリーン燃焼(つまり、理論空燃比より大きい空燃比での燃焼)を行っている場合に、NOxを吸蔵する。また、NOx吸蔵還元触媒150は、エンジン110がリッチ燃焼(つまり、理論空燃比より小さい空燃比での燃焼)を行っている場合に、吸蔵したNOxを浄化する。NOx吸蔵還元触媒150は、例えば、バリウム(Ba)、カリウム(K)を含む。
【0022】
三元触媒140およびNOx吸蔵還元触媒150によって浄化された排気ガスは、マフラ160を通じて排気される。
【0023】
吸入空気量センサ170は、吸気流路120におけるスロットルバルブ122の上流側に設けられる。吸入空気量センサ170は、エンジン110に流入する吸入空気量を測定する。
【0024】
温度センサ172は、NOx吸蔵還元触媒150に導かれる排気ガスの温度を測定する。温度センサ172によって測定された温度は、NOx吸蔵還元触媒150の温度とみなすことができる。
【0025】
NOxセンサ174は、NOx吸蔵還元触媒150に導かれる排気ガスに含まれるNOxの濃度を測定する。
【0026】
制御装置200は、1つまたは複数のプロセッサ202と、プロセッサ202に接続される1つまたは複数のメモリ204と、を有する。プロセッサ202は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。メモリ204は、例えば、ROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)などを含む。ROMは、CPUが使用するプログラムおよび演算パラメータ等を記憶する記憶素子である。RAMは、CPUにより実行される処理に用いられる変数およびパラメータ等のデータを一時記憶する記憶素子である。
【0027】
制御装置200は、車両100に設けられる各装置(例えば、エンジン110、スロットルバルブ122、吸入空気量センサ170、温度センサ172、NOxセンサ174等)と通信を行う。制御装置200と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。
【0028】
図2は、本発明の実施形態に係る制御装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。例えば、
図2に示すように、制御装置200は、エンジン制御部250と、吸蔵量推定部252と、記憶部254とを有する。なお、エンジン制御部250、または、吸蔵量推定部252により行われる以下で説明する処理を含む各種処理は、プロセッサ202によって実行され得る。詳細には、メモリ204に記憶されているプログラムをプロセッサ202が実行することにより、各種処理が実行される。
【0029】
エンジン制御部250は、吸入空気量センサ170の測定値に基づき、エンジン110における燃料の噴射量を調整して排気ガスの空燃比を制御する。エンジン制御部250は、エンジン110の運転モードを、通常燃焼モード、リーン燃焼モード、または、リッチ燃焼モードに設定する。
【0030】
なお、通常燃焼モードは、エンジン110の空燃比を理論空燃比とするエンジン110の運転モードである。エンジン制御部250によって運転モードが通常燃焼モードに設定されると、エンジン110において、通常燃焼が行われる。
【0031】
リーン燃焼モードは、エンジン110の空燃比を理論空燃比よりも大きい空燃比とするエンジン110の運転モードである。エンジン制御部250によって運転モードがリーン燃焼モードに設定されると、エンジン110において、リーン燃焼が行われる。
【0032】
リッチ燃焼モードは、エンジン110の空燃比を理論空燃比よりも小さい空燃比とするエンジン110の運転モードである。エンジン制御部250によって運転モードがリッチ燃焼モードに設定されると、エンジン110において、リッチ燃焼が行われる。
【0033】
また、エンジン制御部250は、NOxセンサ174の測定値に基づき、NOx吸蔵還元触媒150におけるNOxの吸蔵量を推定する。そして、NOxの吸蔵量の推定値が所定値未満である場合、エンジン制御部250は、運転モードを、リーン燃焼モードに設定する。リーン燃焼モードに設定されている場合、NOx吸蔵還元触媒150にNOxが吸蔵される。また、エンジン制御部250は、NOxの吸蔵量の推定値が所定値以上である場合、運転モードを所定期間リッチ燃焼モードに設定し、NOx吸蔵還元触媒150に吸蔵されたNOxを還元して、NOx吸蔵還元触媒150を浄化する。
【0034】
また、エンジン制御部250は、後述する吸蔵量推定部252によって推定される硫黄成分の吸蔵量に基づいて、エンジン110を制御する。エンジン制御部250による、硫黄成分の吸蔵量に基づく制御については、後に詳述する。
【0035】
吸蔵量推定部252は、NOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分の吸蔵量を推定する。本実施形態において、吸蔵量推定部252は、エンジン110に供給される燃料の流量およびエンジン110の負荷に基づいて、NOx吸蔵還元触媒150に設定される複数の分割領域Dごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定する。なお、複数の分割領域Dは、NOx吸蔵還元触媒150に設定される仮想の領域である。また、エンジン110の回転数が所定回転数未満であり、かつ、トルクが所定値未満である場合、エンジン110が低負荷であるとし、エンジン110の回転数が所定回転数以上である、または、トルクが所定値以上である場合、エンジン110が高負荷であるとする。
【0036】
排気ガスに含まれる硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150に接触することによって、NOx吸蔵還元触媒150に吸蔵される。ここで、排気流路130の形状および排気流路130におけるNOx吸蔵還元触媒150の配置によって、NOx吸蔵還元触媒150において、排気ガスの当たり方(接触総量、排気ガスの接触頻度)が異なる領域が生じる場合がある。つまり、排気流路130の形状および排気流路130におけるNOx吸蔵還元触媒150の配置によって、NOx吸蔵還元触媒150において、硫黄成分の吸蔵量が異なる領域が生じる場合がある。
【0037】
図3は、排気ガスの流量と、NOx吸蔵還元触媒150における排気ガスの接触領域との関係を説明する第1の図である。
図4は、排気ガスの流量と、NOx吸蔵還元触媒150における排気ガスの接触領域との関係を説明する第2の図である。
図3、
図4中、白抜きの矢印は、排気ガスの流れ方向を示す。
【0038】
例えば、
図3、
図4に示すように、NOx吸蔵還元触媒150の近傍の排気流路130が、小径部132、拡径部134、および、大径部136を含むとする。小径部132、拡径部134、および、大径部136における
図3、
図4中、上側の部分は、同一直線上に位置する。小径部132は、軸方向に亘って実質的に等しい管径(つまり、流路断面積)を有する。大径部136は、小径部132の下流側に位置する。大径部136の管径は、小径部132の管径よりも大きい。大径部136は、軸方向に亘って実質的に等しい管径を有する。小径部132の中心軸は、大径部136の中心軸より、
図3、
図4中、上側に位置する。拡径部134は、小径部132と大径部136とを接続する。拡径部134は、上流側から下流側に向かうに従って漸増する管径を有する。また、拡径部134における、
図3、
図4中、下側の部分は、下流に向かうにつれて下側に傾斜する。また、NOx吸蔵還元触媒150は、大径部136に設けられるとする。
【0039】
このように、排気流路130に拡径部134が設けられる場合、排気ガスの流れが拡径部134の内壁から剥離する。
【0040】
図3に示すように、排気ガスの流量が相対的に大きい場合、剥離点Pは、相対的に上流側に位置する。剥離点Pの下流側では、渦流Wが生じ、排気ガスが滞留する。したがって、拡径部134の下流側にNOx吸蔵還元触媒150が設けられる場合、NOx吸蔵還元触媒150において排気ガスが滞留する領域が生じる。
【0041】
この場合、拡径部134における排気ガスが剥離しない領域の下流側に位置するNOx吸蔵還元触媒150の領域A(
図3中、上側の領域)には、新たな排気ガスが導かれる。一方、拡径部134における排気ガスが剥離する領域の下流側に位置するNOx吸蔵還元触媒150の領域B(
図3中、下側の領域)には、新たな排気ガスが導かれにくくなる。
【0042】
そうすると、領域Aにおける排気ガスの接触総量は多くなり、領域Bにおける排気ガスの接触総量は少なくなる。したがって、領域Aにおいて硫黄成分の吸蔵量が増加し、領域Bにおいて硫黄成分の吸蔵量がほとんど増加しないという事態が生じる。
【0043】
また、
図4に示されるように、排気ガスの流量が相対的に小さい場合、剥離点Pは、相対的に下流側に位置する。したがって、排気ガスの流量が小さくなるほど、新たな排気ガスが導かれる領域Aが大きくなり、新たな排気ガスが導かれにくい領域Bが小さくなる。
【0044】
また、上記したように、排気ガスに含まれる硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150に接触することによって、NOx吸蔵還元触媒150に吸蔵される。このため、硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150において、上流側から下流側に向かって徐々に吸蔵される。したがって、NOx吸蔵還元触媒150の上流側における硫黄成分の吸蔵量は、下流側よりも多くなる。
【0045】
このように、NOx吸蔵還元触媒150では、硫黄成分の吸蔵量に偏りが生じることになる。そこで、本実施形態の吸蔵量推定部252は、リーン燃焼モードにおいて、エンジン110に供給される燃料の流量およびエンジン110の負荷に基づいて、NOx吸蔵還元触媒150に設定される複数の分割領域Dごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定する。
【0046】
図5は、NOx吸蔵還元触媒150に設定される分割領域Dを説明する図である。
図6は、NOx吸蔵還元触媒150を上流側から見た場合の分割領域Dを説明する図である。なお、
図5中、白抜きの矢印は、排気ガスの流れ方向を示す。
【0047】
図5、
図6に示すように、NOx吸蔵還元触媒150を、排気ガスの流れ方向と、排気ガスの流れ方向に交差する所定の1方向とに分割することによって形成される各領域が分割領域Dに設定される。本実施形態において、排気ガスの流れ方向と、排気ガスの流れ方向に直交する1方向とに分割されて、複数の分割領域Dが設定される。つまり、複数の分割領域Dは、排気ガスの流れ方向に並列し、また、排気ガスの流れ方向に直交する方向に並列する。本実施形態において、NOx吸蔵還元触媒150には、4つの分割領域D1、分割領域D2、分割領域D3、および、分割領域D4が設定される。分割領域D1および分割領域D2と、分割領域D3および分割領域D4とは、排気ガスの流れ方向に並列する。また、分割領域D1および分割領域D3と、分割領域D2および分割領域D4とは、排気ガスの流れ方向に直交する方向に並列する。
【0048】
吸蔵量推定部252は、エンジン110に供給される燃料の流量およびエンジン110の負荷に基づいて、複数の分割領域Dごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定する。
【0049】
本実施形態において、吸蔵量推定部252は、エンジン110が高負荷である場合、NOx吸蔵還元触媒150に設定された複数の分割領域Dのうち、所定の高負荷分割領域HDに含まれる各分割領域Dの硫黄成分の吸蔵量の推定値を増加させる。高負荷分割領域HDは、排気ガスの流れ方向に並んだ分割領域D1、D3を含む。
【0050】
上記したように、排気ガスの流量が相対的に大きい場合、つまり、エンジン110が高負荷である場合、新たな排気ガスは、NOx吸蔵還元触媒150における、
図3、
図5に示す上側の方が下側よりも多く導かれる。また、排気ガスの流量が相対的に大きい場合、流速も大きくなる。そうすると、NOx吸蔵還元触媒150における排気ガスの接触時間が短くなり、硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150の上流側から下流側に亘って広く吸蔵される。したがって、エンジン110が高負荷である場合、高負荷分割領域HD(分割領域D1および分割領域D3)に硫黄成分が吸蔵される。
【0051】
このため、吸蔵量推定部252は、エンジン110が高負荷である場合、分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値を増加させる。
【0052】
また、本実施形態において、吸蔵量推定部252は、分割領域D1、D3において、分配率を異ならせて、吸蔵量の推定値を増加させる。上記したように、硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150において、上流側から下流側に向かって徐々に吸蔵されるため、NOx吸蔵還元触媒150の上流側における硫黄成分の吸蔵量は、下流側よりも多くなる。したがって、吸蔵量推定部252は、上流側に位置する分割領域D1の吸蔵量の推定値を、下流側に位置する分割領域D3の吸蔵量の推定値よりも増加させる。
【0053】
また、吸蔵量推定部252は、エンジン110が低負荷である場合、NOx吸蔵還元触媒150に設定された複数の分割領域Dのうち、所定の低負荷分割領域LDに含まれる各分割領域Dの硫黄成分の吸蔵量の推定値を増加させる。低負荷分割領域LDは、排気ガスの流れ方向に直交する1方向に並んだ分割領域D1、D2を含む。
【0054】
上記したように、排気ガスの流量が相対的に小さい場合、つまり、エンジン110が低負荷である場合、新たな排気ガスは、NOx吸蔵還元触媒150における、排気ガスの流れ方向と直交する方向に全体的に導かれる(
図4参照)。また、排気ガスの流量が相対的に小さい場合、流速も小さくなる。そうすると、NOx吸蔵還元触媒150における排気ガスの接触時間が長くなり、硫黄成分は、NOx吸蔵還元触媒150の上流側において下流側よりも多く吸蔵される。したがって、エンジン110が低負荷である場合、低負荷分割領域LD(分割領域D1および分割領域D2)に硫黄成分が吸蔵される。
【0055】
このため、吸蔵量推定部252は、エンジン110が低負荷である場合、分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値を増加させる。
【0056】
また、本実施形態において、吸蔵量推定部252は、分割領域D1、D2において、分配率を異ならせて、吸蔵量の推定値を増加させる。排気ガスの接触総量は、NOx吸蔵還元触媒150において、小径部132の中心軸側の方が、大径部136の中心軸側よりも多い。このため、NOx吸蔵還元触媒150において、小径部132の中心軸側における硫黄成分の吸蔵量は、大径部136の中心軸側よりも多くなる。したがって、吸蔵量推定部252は、小径部132の中心軸側に位置する分割領域D1の吸蔵量の推定値を、大径部136の中心軸側に位置する分割領域D2の吸蔵量の推定値よりも増加させる。
【0057】
図2に戻って説明すると、エンジン制御部250は、吸蔵量推定部252によって推定された硫黄成分の吸蔵量に基づき、硫黄脱離処理を実行する。硫黄脱離処理は、NOx吸蔵還元触媒150から硫黄成分を脱離させる処理である。
【0058】
[吸蔵量推定方法]
続いて、吸蔵量推定部252によるNOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分の吸蔵量推定方法について説明する。
図7は、本発明の実施形態に係る吸蔵量推定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示すように、吸蔵量推定方法は、硫黄成分供給量推定処理S110と、エンジン負荷判定処理S112と、高負荷積算処理S114と、低負荷積算処理S116とを含む。また、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって吸蔵量推定方法の各処理が繰り返し遂行される。
【0059】
[硫黄成分供給量推定処理S110]
吸蔵量推定部252は、エンジン110に供給される燃料の流量に基づき、NOx吸蔵還元触媒150に供給される硫黄成分の量を推定する。
【0060】
[エンジン負荷判定処理S112]
吸蔵量推定部252は、エンジン110の回転数およびトルクに基づき、エンジン110が高負荷であるか否かを判定する。その結果、高負荷であると判定した場合(S112におけるYES)、吸蔵量推定部252は、高負荷積算処理S114に処理を移す。一方、高負荷ではない、つまり、低負荷であると判定した場合(S112におけるNO)、吸蔵量推定部252は、低負荷積算処理S116に処理を移す。
【0061】
[高負荷積算処理S114]
吸蔵量推定部252は、高負荷分割領域HDの分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値として、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量を積算する。なお、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量を、分割領域D1と分割領域D3とに分配する。本実施形態において、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量に係数αを乗算した値を分割領域D1の推定値として積算する。また、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量に(1-係数α)を乗算した値を分割領域D3の推定値として積算する。なお、係数αは、0.5超の値であり、シミュレーション、実験等によって予め設定される。
【0062】
[低負荷積算処理S116]
吸蔵量推定部252は、低負荷分割領域LDの分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値として、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量を積算する。なお、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量を、分割領域D1と分割領域D2とに分配する。本実施形態において、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量に係数βを乗算した値を分割領域D1の推定値として積算する。また、吸蔵量推定部252は、硫黄成分供給量推定処理S110において推定された硫黄成分の量に(1-係数β)を乗算した値を分割領域D2の推定値として積算する。なお、係数βは、0.5超の値であり、シミュレーション、実験等によって予め設定される。
【0063】
[硫黄脱離処理実行方法]
続いて、エンジン制御部250による硫黄脱離処理実行方法について説明する。
図8は、本発明の実施形態に係る硫黄脱離処理実行方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、硫黄脱離処理実行方法は、閾値判定処理S210と、硫黄脱離処理S212と、リセット処理S214とを含む。また、本実施形態において、所定の時間間隔毎に生じる割込によって硫黄脱離処理実行方法の各処理が繰り返し遂行される。
【0064】
[閾値判定処理S210]
エンジン制御部250は、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が所定の第1閾値以上であるか、または、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が所定の第2閾値以上であるか否かを判定する。なお、第1閾値および第2閾値は、NOx吸蔵還元触媒150の浄化性能に基づいて決定される。また、第1閾値と第2閾値とは同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0065】
高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値以上である、または、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値以上である場合(S210におけるYES)、エンジン制御部250は、硫黄脱離処理S212に処理を移す。一方、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値以上ではなく、かつ、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値以上ではない、つまり、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値未満であり、かつ、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値未満である場合(S210におけるNO)、エンジン制御部250は、当該硫黄脱離実行判定処理を終了する。
【0066】
[硫黄脱離処理S212]
エンジン制御部250は、硫黄脱離処理を実行する。例えば、エンジン制御部250は、メイン噴射後(例えば、排気行程中)に燃料を噴射するポスト噴射を行うことによって、運転モードをリッチ燃焼モードに設定する。そして、エンジン制御部250は、リッチ燃焼モードに設定され、温度センサ172の測定値が所定値以上となる期間が所定期間経過したら、リーン燃焼モードに運転モードを設定する。
【0067】
[リセット処理S214]
硫黄脱離処理S212が実行されたら、吸蔵量推定部252は、複数の分割領域Dの吸蔵量の推定値をリセットする。
【0068】
以上説明したように、本実施形態に係る車両100は、エンジン110に供給される燃料の流量およびエンジン110の負荷に基づいて、NOx吸蔵還元触媒150の複数の分割領域Dごとに、硫黄成分の吸蔵量を推定する。これにより、車両100は、NOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分の吸蔵量の分布を高精度に推定することが可能となる。
【0069】
また、上記したように、エンジン110の負荷によって、NOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分が吸蔵される領域が異なる。そこで、吸蔵量推定部252は、エンジン110の負荷に応じて、NOx吸蔵還元触媒150における複数の分割領域Dのうち、硫黄成分の吸蔵量を推定する分割領域D、つまり、硫黄成分の吸蔵量の推定値を積算する分割領域Dを異ならせる。
【0070】
具体的に説明すると、吸蔵量推定部252は、エンジン110が高負荷である場合、分割領域Dのうち、高負荷の際に硫黄成分が吸蔵されやすい高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値を増加させる。また、吸蔵量推定部252は、エンジン110が低負荷である場合、分割領域Dのうち、低負荷の際に硫黄成分が吸蔵されやすい低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値を増加させる。
【0071】
これにより、吸蔵量推定部252は、エンジン110の負荷に応じて変動し得るNOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分の吸蔵分布を高精度に推定することができる。
【0072】
また、上記したように、吸蔵量推定部252は、エンジン110が高負荷である場合に、燃料の流量に基づく硫黄成分の推定量を、高負荷分割領域HDにおける各分割領域D1、D3において、分配率を異ならせて増加させる。同様に、吸蔵量推定部252は、エンジン110が低負荷である場合に、燃料の流量に基づく硫黄成分の推定量を、低負荷分割領域LDにおける各分割領域D1、D2において、分配率を異ならせて増加させる。
【0073】
これにより、硫黄成分がより吸蔵されやすい分割領域Dに、硫黄成分の推定量を多く分配することができ、NOx吸蔵還元触媒150における硫黄成分の吸蔵分布をより高精度に推定することが可能となる。
【0074】
また、上記したように、エンジン制御部250は、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値以上である、または、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値以上である場合に、硫黄脱離処理を実行する。これにより、NOx吸蔵還元触媒150全体における硫黄成分の吸蔵量に基づいて硫黄脱離処理の実行タイミングを判断する従来技術と比較して、エンジン制御部250は、NOx吸蔵還元触媒150の浄化性能の低下によるNOxの流出を確実に防止することができる。
【0075】
[変形例]
上記実施形態において、エンジン制御部250が、吸蔵量推定部252によって推定された硫黄成分の吸蔵量に基づき、硫黄脱離処理を実行する場合を例に挙げた。しかし、エンジン制御部250は、吸蔵量推定部252によって推定された硫黄成分の吸蔵量に基づき、リーン燃焼を禁止してもよい。
【0076】
[リーン燃焼実行可否判定方法]
図9は、本発明の変形例に係るリーン燃焼実行可否判定方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図9に示すように、リーン燃焼実行可否判定方法は、第1判定処理S310と、高負荷リーン燃焼禁止処理S312と、高負荷リーン燃焼許可処理S314と、第2判定処理S316と、低負荷リーン燃焼禁止処理S318と、低負荷リーン燃焼許可処理S320とを含む。また、変形例において、所定の時間間隔毎に生じる割込によってリーン燃焼実行可否判定方法の各処理が繰り返し遂行される。
【0077】
[第1判定処理S310]
エンジン制御部250は、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値以上であるか否かを判定する。その結果、第1閾値以上であると判定した場合(S310におけるYES)、エンジン制御部250は、高負荷リーン燃焼禁止処理S312に処理を移す。一方、第1閾値以上ではない、つまり、第1閾値未満であると判定した場合(S310におけるNO)、エンジン制御部250は、高負荷リーン燃焼許可処理S314に処理を移す。
【0078】
[高負荷リーン燃焼禁止処理S312]
エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が高負荷である場合に、リーン燃焼を禁止する。つまり、エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が高負荷である場合、通常燃焼モードに運転モードを設定する。
【0079】
[高負荷リーン燃焼許可処理S314]
エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が高負荷である場合に、リーン燃焼を許可する。つまり、エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が高負荷である場合に、リーン燃焼モードに運転モードを設定する。
【0080】
[第2判定処理S316]
エンジン制御部250は、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値以上であるか否かを判定する。その結果、第2閾値以上であると判定した場合(S316におけるYES)、エンジン制御部250は、低負荷リーン燃焼禁止処理S318に処理を移す。一方、第2閾値以上ではない、つまり、第2閾値未満であると判定した場合(S316におけるNO)、エンジン制御部250は、低負荷リーン燃焼許可処理S320に処理を移す。
【0081】
[低負荷リーン燃焼禁止処理S318]
エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が低負荷である場合に、リーン燃焼を禁止する。つまり、エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が低負荷である場合、通常燃焼モードに運転モードを設定する。
【0082】
[低負荷リーン燃焼許可処理S320]
エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が低負荷である場合に、リーン燃焼を許可する。つまり、エンジン制御部250は、エンジン110の負荷が低負荷である場合に、リーン燃焼モードに運転モードを設定する。
【0083】
以上説明したように、変形例において、エンジン制御部250は、エンジン110が高負荷であり、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値の合計が第1閾値以上である場合に、リーン燃焼を禁止する。また、エンジン制御部250は、エンジン110が低負荷であり、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値の合計が第2閾値以上である場合に、リーン燃焼を禁止する。これにより、NOx吸蔵還元触媒全体における硫黄成分の吸蔵量に基づいてリーン燃焼の禁止を開始するタイミングを判断する従来技術と比較して、エンジン制御部250は、リーン燃焼させることができる期間を延長することができる。これにより、車両100は、燃費を向上させることが可能となる。
【0084】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0085】
例えば、上記実施形態において、NOx吸蔵還元触媒150を、排気ガスの流れ方向と、排気ガスの流れ方向に直交する1方向に分割することによって形成される各領域を分割領域Dに設定する場合を例に挙げた。しかし、排気流路130の形状に応じて、分割領域Dの設定は適宜行われるとよい。少なくとも、NOx吸蔵還元触媒150を、排気ガスの流れ方向と、排気ガスの流れ方向に交差する所定の1方向とに分割することによって形成される各領域を分割領域Dに設定すればよい。
【0086】
また、上記実施形態において、NOx吸蔵還元触媒150が、排気ガスの流れ方向に2分割され、排気ガスの流れ方向に直交する1方向に2分割されて、分割領域D1、分割領域D2、分割領域D3、分割領域D4が設定される場合を例に挙げた。しかし、分割領域Dの数に限定はない。また、排気ガスの流れ方向の分割数、および、排気ガスの流れ方向に交差する1方向の分割数は、同一であってもよいし、異なってもよい。
【0087】
また、上記実施形態において、吸蔵量推定部252は、エンジン110が高負荷である場合に、高負荷分割領域HDの各分割領域D1、D3の吸蔵量の推定値を増加させ、エンジン110が低負荷である場合に、低負荷分割領域LDの各分割領域D1、D2の吸蔵量の推定値を増加させる場合を例に挙げた。しかし、吸蔵量推定部252は、エンジン110の負荷に拘わらず、複数の分割領域Dそれぞれにおいて、硫黄成分の推定量を積算してもよい。なお、この際、吸蔵量推定部252は、複数の分割領域Dそれぞれにおいて、硫黄成分の推定量を、分配率を異ならせて積算するとよい。
【0088】
また、上記実施形態において、高負荷分割領域HDとして、排気ガスの流れ方向に並んだ分割領域D1および分割領域D3を含む場合を例に挙げた。しかし、高負荷分割領域HDは、排気流路130の形状に応じて、適宜設定されればよい。例えば、エンジン110が高負荷である際、分割領域D1、分割領域D2、および、分割領域D3に排気ガスが多く導かれる場合、高負荷分割領域HDとして、分割領域D1、分割領域D2、および、分割領域D3が設定されるとよい。
【0089】
同様に、上記実施形態において、低負荷分割領域LDとして、排気ガスの流れ方向と交差する1方向に並んだ分割領域D1および分割領域D2を含む場合を例に挙げた。しかし、低負荷分割領域LDは、排気流路130の形状に応じて、適宜設定されればよい。例えば、エンジン110が低負荷である際、分割領域D1に排気ガスが多く導かれる場合、低負荷分割領域として、分割領域D1が設定されるとよい。
【符号の説明】
【0090】
100 車両
110 エンジン
130 排気流路
150 NOx吸蔵還元触媒
200 制御装置
202 プロセッサ
204 メモリ
250 エンジン制御部
252 吸蔵量推定部