(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137243
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】DC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048688
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】715010864
【氏名又は名称】エイブリック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】須藤 稔
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AA15
5H730AS04
5H730AS17
5H730BB02
5H730BB57
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD61
5H730FF01
5H730FG01
(57)【要約】
【課題】小さい電力が供給される場合においても、高効率の電力変換が可能なDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】DC-DCコンバータ10は、端子T1~T4と、発振回路を有し、端子T1と端子T3との間に設けられたチャージポンプ回路151と、ヒステリシス特性を持ち、端子T1及びT2間の入力電圧に比例する電圧と第1の基準電圧との大小関係に基づいて前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第1発振入切制御信号を出力する比較器112を有する比較回路110と、ヒステリシス特性を持ち、端子T3及びT4間の出力電圧に比例する電圧と第2の基準電圧との大小関係に基づいて前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第2発振入切制御信号を出力する比較器122を有する比較回路120と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入力端子、第2の入力端子、第1の出力端子、及び第2の出力端子を備えるDC-DCコンバータであって、
発振回路を有し、前記第1の入力端子と前記第1の出力端子との間に設けられたチャージポンプ回路と、
ヒステリシス特性を持ち、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間の入力電圧に比例する電圧と第1の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第1の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第1の制御信号として出力する第1の制御回路と、
ヒステリシス特性を持ち、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の間の出力電圧に比例する電圧と、第2の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第2の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第2の制御信号を生成する第2の制御回路と、
を備えることを特徴とするDC-DCコンバータ。
【請求項2】
前記第1の制御回路及び前記第2の制御回路のうち、少なくとも一方の制御回路は、二つの電界効果トランジスタで構成される請求項1に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項3】
前記第1の制御回路は、前記第1の基準電圧を生成する第1の基準電圧回路を有し、
前記第1の基準電圧回路は、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子に接続される回路に含まれる発電素子の温度特性と合わせた温度特性を有する請求項2に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項4】
第1の入力端子、第2の入力端子、第1の出力端子、及び第2の出力端子を備えるDC-DCコンバータであって、
発振回路を有し、前記第1の入力端子と前記第1の出力端子との間に設けられたチャージポンプ回路と、
前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間の入力電圧に比例する電圧と第1の基準電圧との差を増幅した信号を出力する誤差増幅器を有し、前記信号を前記発振回路の発振周波数を制御する第1の制御信号として出力する第1の制御回路と、
ヒステリシス特性を持ち、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の間の出力電圧に比例する電圧と、第2の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第2の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第2の制御信号を生成する第2の制御回路と、
を備えることを特徴とするDC-DCコンバータ。
【請求項5】
前記第1の制御回路は、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子に入力される電圧が高くなると、前記発振回路の発振周波数が高くなり、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子に入力される電圧が低くなると、前記発振回路の発振周波数が低くなる前記第1の制御信号を生成可能に構成される請求項4に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項6】
前記第1の制御回路及び前記第2の制御回路のうち、少なくとも一方の制御回路は、二つの電界効果トランジスタで構成される請求項4又は5に記載のDC-DCコンバータ。
【請求項7】
前記第1の制御回路は、前記第1の基準電圧を生成する第1の基準電圧回路を有し、
前記第1の基準電圧回路は、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子に接続される回路に含まれる発電素子の温度特性と合わせた温度特性を有することを特徴とする請求項6に記載のDC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
光、熱、圧力等の周辺環境の変動によって出力が不安定な電源から効率良く電力を伝送するためにDC-DCコンバータが使われている。例えば、光エネルギーを電気エネルギーに変換する太陽電池をエネルギー源として、最大電力変換効率で動作させるDC-DCコンバータがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
太陽電池をエネルギー源として、最大電力変換効率で動作させるDC-DCコンバータの一例として特許文献1に記載される太陽電池の最大電力点追尾装置(以下、「トラッカー」と称する)は、マイコンを備えている。マイコンは、入力電力が最大となるように、DC-DCコンバータの一例であるスイッチング・レギュレータのデューティー比(スイッチング素子のオン・オフ比)を制御している。
【0004】
もう少し詳しく説明すれば、マイコンは、入力電力の増減があった場合、当該増減に応じてスイッチング・レギュレータのデューティー比を適切な値に制御するための増減量を算出し、算出結果のデューティー比に制御するための制御信号を生成し、生成した制御信号をスイッチング素子の制御端子へ供給している。スイッチング素子のオン/オフを制御することによって、スイッチング・レギュレータのデューティー比が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-240552号公報(
図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従前の最大電力変換効率で動作させるDC-DCコンバータは、最大電力変換効率で動作させる制御を実現するためにマイコンを備えている。マイコンの動作時の消費電力は、DC-DCコンバータに給電される電力から賄われるため、高効率での電力変換を困難にしていた。また、マイコンの消費電力未満の電力を給電する装置に対して使用することができなかった。
【0007】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、マイコンの消費電力未満のような小さい電力が供給される場合においても、高効率の電力変換が可能なDC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るDC-DCコンバータは、上述した課題を解決するため、第1の入力端子、第2の入力端子、第1の出力端子、及び第2の出力端子を備えるDC-DCコンバータであって、発振回路を有し、前記第1の入力端子と前記第1の出力端子との間に設けられたチャージポンプ回路と、ヒステリシス特性を持ち、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間の入力電圧に比例する電圧と第1の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第1の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第1の制御信号として出力する第1の制御回路と、ヒステリシス特性を持ち、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の間の出力電圧に比例する電圧と、第2の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第2の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第2の制御信号を生成する第2の制御回路と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明に係るDC-DCコンバータは、上述した課題を解決するため、第1の入力端子、第2の入力端子、第1の出力端子、及び第2の出力端子を備えるDC-DCコンバータであって、発振回路を有し、前記第1の入力端子と前記第1の出力端子との間に設けられたチャージポンプ回路と、ヒステリシス特性を持ち、前記第1の入力端子及び前記第2の入力端子の間の入力電圧に比例する電圧と第1の基準電圧との差を増幅した信号を出力する誤差増幅器を有し、前記信号を前記発振回路の発振周波数を制御する第1の制御信号として出力する第1の制御回路と、ヒステリシス特性を持ち、前記第1の出力端子及び前記第2の出力端子の間の出力電圧に比例する電圧と、第2の基準電圧との大小関係に基づいて、2個の信号レベルを含む信号を出力する第2の比較器を有し、前記信号を前記発振回路の発振動作のオンとオフとを切替制御する第2の制御信号を生成する第2の制御回路と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、供給を受ける電力が、マイコンの動作時の消費電力未満のような小さい電力であっても高効率で電力変換できる。また、本発明によれば、コイルを備えずに回路を構成することができるため、当該回路を集積化、ひいては小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係るDC-DCコンバータの適用例を示す説明図である。
【
図2】第1の実施形態に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図3】第1の実施形態に係るDC-DCコンバータが備える比較回路の一例を示す回路図である。
【
図4】1セル太陽電池の電圧に対する電流を示す(電圧-電流特性)特性図である。
【
図5】第2の実施形態に係るDC-DCコンバータの回路図である。
【
図6】第2の実施形態に係るDC-DCコンバータが備える発振制御回路の一例を示す回路図である。
【
図7】第2の実施形態に係るDC-DCコンバータが備える誤差増幅回路の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態に係るDC-DCコンバータについて、図面を参照して説明する。
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るDC-DCコンバータの一例であるDC-DCコンバータ10の適用例を示す概略図である。
【0014】
DC-DCコンバータ10は、1次(入力)側の端子である端子T1及び端子T2と、2次(出力)側の端子である端子T3及び端子T4と、を備えている。例えば、端子T1と端子T2には、電力の供給源となる給電回路60が接続される。接続される給電回路60は、発電する電圧と出力する電流との関係(電圧-電流特性)が既知な発電素子を含む給電可能な装置である。端子T3と端子T4には、電力の供給先であって蓄電可能な容量性素子を含む蓄電回路70が接続される。
【0015】
図2は、第1の実施形態に係るDC-DCコンバータの一例であるDC-DCコンバータ10の回路図である。なお、
図2に示される抵抗101~106の各端について、図示される状態で上側(端子T1及び端子T3側)の端を「第1端」と呼称し、図示される状態で下側(端子T2及び端子T4側)の端を「第2端」と呼称する。
【0016】
DC-DCコンバータ10は、端子T1~T4の他に、チャージポンプ回路151と、発振制御回路152と、第1の制御回路としての比較回路110と、第2の制御回路としての比較回路120と、をさらに備えている。端子T2は、端子T4と接続されている。チャージポンプ回路151及び発振制御回路152は、昇圧回路150を構成している。
【0017】
端子T1と端子T2との間には、端子T1から端子T2へ向かって、抵抗101と、抵抗102と、抵抗103とが直列に接続されて抵抗分圧回路が形成されている。また、端子T3と端子T4との間には、端子T3から端子T4へ向かって、抵抗104と、抵抗105と、抵抗106とが直列に接続されて抵抗分圧回路が形成されている。
【0018】
ここで、抵抗101と抵抗102との接続点、抵抗102と抵抗103との接続点、抵抗103の第2端と端子T2との接続点、抵抗104と抵抗105との接続点、抵抗105と抵抗106との接続点、及び抵抗106の第2端と端子T4との接続点を、それぞれ、ノードN1、ノードN2、ノードN3、ノードN4、ノードN5、及びノードN6と呼称する。
【0019】
ノードN2及びノードN3には、それぞれ、電界効果トランジスタ(以下、「FET」と称する)の一例であるNMOSトランジスタ107のドレイン及びソースが接続されている。また、ノードN5及びノードN6には、それぞれ、NMOSトランジスタ108のドレイン及びソースが接続されている。
【0020】
比較回路110は、抵抗101と抵抗102との接続点であるノードN1の電圧VN1と、第1の基準電圧Vref1との大小を比較し、比較結果に対応した2個の異なる信号レベル(2個のうち、信号レベルの高い方を「Hレベル」と呼称し、低い方を「Lレベル」と呼称する)を含む第1発振入切制御信号を、出力端子であるノードN7から出力する回路である。
【0021】
比較回路110は、第1の比較器としての比較器112と、第1の基準電圧回路としての基準電圧回路113と、を有している。比較器112は、ノードN1と接続される反転入力端子(-)と、基準電圧Vref1の供給を受ける非反転入力端子(+)と、比較回路110の出力端子であるノードN7と接続される出力端子と、を有している。基準電圧回路113は、比較器112の非反転入力端子(+)と接続され、基準電圧Vref1を比較器112の非反転入力端子(+)へ供給する出力端を含んでいる。
【0022】
比較回路120は、抵抗104と抵抗105との接続点であるノードN4の電圧VN4と、第2の基準電圧Vref2との大小を比較し、比較結果に対応した2個の異なる信号レベル(Hレベル及びLレベル)を含む第2発振入切制御信号を、出力端子であるノードN8から出力する回路である。
【0023】
比較回路120は、第2の比較器としての比較器122と、第2の基準電圧回路としての基準電圧回路123と、を有している。比較器122は、ノードN4と接続される反転入力端子(-)と、基準電圧Vref2の供給を受ける非反転入力端子(+)と、比較回路120の出力端子であるノードN8と接続される出力端子と、を有している。基準電圧回路123は、比較器122の非反転入力端子(+)と接続され、基準電圧Vref2を比較器122の非反転入力端子(+)へ供給する出力端を含んでいる。
【0024】
チャージポンプ回路151は、端子T1と接続される入力端と、端子T3と接続される出力端と、発振制御信号を受ける制御端と、を有している。発振制御回路152は、ノードN7と接続される第1入力端と、ノードN8と接続される第2入力端と、チャージポンプ回路151の制御端と接続される出力端と、を有している。
【0025】
図3は、第1の実施形態に係るDC-DCコンバータが備える比較回路の一例である比較回路110の構成例を示す回路図である。
【0026】
比較回路110は、例えば、デプレッション型FETの一例であるデプレッション型NMOSトランジスタ131と、エンハンスメント型FETの一例であるエンハンスメント型NMOSトランジスタ(以下、単に「NMOSトランジスタ」と称する)132と、直列に接続されたインバータ133及びインバータ134と、を有して構成されている。
【0027】
デプレッション型NMOSトランジスタ131は、端子T1と接続されるドレインと、ゲートと、自身ゲートと接続されるソースと、を含んでいる。NMOSトランジスタ132は、デプレッション型NMOSトランジスタ131のゲート及びソースと接続されるドレインと、ノードN1と接続されるゲートと、端子T2と接続されるソースと、を含んでいる。ここで、デプレッション型NMOSトランジスタ131のゲート及びソースとNMOSトランジスタ132のドレインとの接続点をノードN9と呼称する。ノードN9とノードN7との間には、インバータ133及びインバータ134が直列に接続されている。
【0028】
なお、比較回路120については、比較回路110と同様に、1個のデプレッション型FET(デプレッション型NMOSトランジスタ131に対応)と、1個のエンハンスメント型FETと、(NMOSトランジスタ132に対応)直列に接続された2個のインバータ(インバータ133,134に対応)と、を有して構成可能であるため、比較回路110と重複する説明を省略する。
【0029】
次に、DC-DCコンバータ10の作用及び効果について説明する。
DC-DCコンバータ10は、1次側に接続される給電回路60から電力の供給を受ける。1次側から供給された電力は、チャージポンプ回路151によって直流-直流変換(昇圧)されて、2次側に供給される。2次側から供給された電力は、蓄電回路70に供給されて蓄えられる。
【0030】
比較回路110には、抵抗101,102,103によって分圧されてノードN1に現れる電圧VN1が入力される。比較回路110では、比較器112の反転入力端子(-)に入力される電圧VN1と非反転入力端子(+)に入力される第1の基準電圧Vref1との大小が比較され、比較結果に応じた信号レベルの第1発振入切制御信号が出力端子から出力される。比較器112は、NMOSトランジスタ107と協働してヒステリシス特性を持つヒステリシスコンパレータとして動作する。
【0031】
ここで、ノードN1の電圧VN1と、第1の基準電圧Vref1とを用いて、比較器112の動作を説明する。比較器112は、非反転入力端子(+)に入力される第1の基準電圧Vref1と反転入力端子(-)に入力される電圧VN1とを比べ、例えば、VN1>Vref1の場合、Lレベルの第1発振入切制御信号が出力される。一方、VN1<Vref1の場合、Hレベルの第1発振入切制御信号が出力される。第1の制御信号としての第1発振入切制御信号は、NMOSトランジスタ107のゲート及び発振制御回路152の第1入力端に供給される。
【0032】
比較回路110を、より詳細な構成レベル、すなわちデプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132で説明すれば、デプレッション型NMOSトランジスタ131は、NMOSトランジスタ132の定電流源として動作する。ここで、デプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132のK値(μ・Cox・W/L)をほぼ等しくすれば、NMOSトランジスタ132のゲート電圧が、温度特性によらず、ほぼ一定の値(デプレッション型NMOSトランジスタ131の閾(しきい)値電圧の絶対値とNMOSトランジスタ132の閾値電圧の和)で、NMOSトランジスタ132のドレイン電圧を反転させることができる。すなわち、NMOSトランジスタ132のゲート電圧が、デプレッション型NMOSトランジスタ131の閾値電圧の絶対値とNMOSトランジスタ132の閾値電圧の和よりも大きくなると、NMOSトランジスタ132のドレイン電圧を、HレベルからLレベルに遷移させることができる。
【0033】
NMOSトランジスタ107は、ゲートに供給される第1発振入切制御信号の信号レベルに応じてオンとオフとが切り替わる。NMOSトランジスタ107がオンしている場合、端子T1と端子T2との間の電圧は、抵抗101及び抵抗102によって分圧される。NMOSトランジスタ107がオフしている場合、端子T1と端子T2との間の電圧は、抵抗101、抵抗102及び抵抗103によって分圧される。
【0034】
発振制御回路152は、第1入力端に供給される第1発振入切制御信号の信号レベルに応じて、チャージポンプ回路151内の発振回路(
図2及び
図3において図示省略)のオンとオフ、すなわち発振している発振動作状態と発振が停止している発振停止状態とを切り替える発振制御信号を供給する。
【0035】
発振制御信号は、LレベルとHレベルとの異なる2つの信号レベルを含み、VN1>Vref1の場合、例えば、Hレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給される。Hレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給されると、チャージポンプ回路151内の発振回路はオンして発振動作状態となる。一方、VN1<Vref1の場合、例えば、Lレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給される。Lレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給されると、チャージポンプ回路151内の発振回路はオフして発振停止状態となる。
【0036】
給電回路60から供給される電圧Vinが、低い電圧から高い電圧に変化(上昇)して電圧Vdeti+に到達すると、比較器112の出力端子に現れる電圧の信号レベルは、HレベルからLレベルに遷移する。一方、給電回路60から供給される電圧が、高い電圧から低い電圧に変化(下降)して電圧Vdeti-に到達すると、比較器112の出力端子に現れる電圧の信号レベルは、LレベルからHレベルに遷移する。ここで、抵抗101、抵抗102及び抵抗103の抵抗値を、それぞれ、R101、R102及びR103とすると、電圧Vdeti+及び電圧Vdeti-は、抵抗値R101、R102及びR103と、第1の基準電圧Vref1とを用いて、次式(1)及び(2)で表される。
【0037】
【数1】
また、比較回路120には、抵抗104,105,106によって分圧されてノードN4に現れる電圧VN4が入力される。比較回路120では、比較器122の反転入力端子(-)に入力される電圧VN4と非反転入力端子(+)に入力される第2の基準電圧Vref2との大小が比較され、比較結果に応じた信号レベルの第2発振入切制御信号が出力端子から出力される。比較器122は、NMOSトランジスタ108と協働してヒステリシス特性を持つヒステリシスコンパレータとして動作する。
【0038】
ここで、ノードN4の電圧VN4と、第2の基準電圧Vref2とを用いて、比較器122の動作を説明する。比較器122は、非反転入力端子(+)に入力される第2の基準電圧Vref2と反転入力端子(-)に入力される電圧VN4とを比べ、例えば、VN4>Vref2の場合、Lレベルの第2発振入切制御信号が出力される。一方、VN4<Vref2の場合、Hレベルの第2発振入切制御信号が出力される。第2の制御信号としての第2発振入切制御信号は、NMOSトランジスタ108のゲート及び発振制御回路152の第2入力端に供給される。
【0039】
NMOSトランジスタ108は、ゲートに供給される第2発振入切制御信号の信号レベルに応じてオンとオフとが切り替わる。NMOSトランジスタ108がオンしている場合、端子T3と端子T4との間の電圧は、抵抗104及び抵抗105によって分圧される。NMOSトランジスタ108がオフしている場合、端子T3と端子T4との間の電圧は、抵抗104、抵抗105及び抵抗106によって分圧される。
【0040】
発振制御回路152は、第1発振入切制御信号の信号レベルの場合と同様に、第2入力端に供給される第2発振入切制御信号の信号レベルに応じて、LレベルとHレベルとの異なる2つの信号レベルを含む発振制御信号を供給する。
【0041】
発振制御信号は、VN4>Vref2の場合、例えば、Lレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給される。Lレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給されると、チャージポンプ回路151内の発振回路はオフして発振停止状態となる。一方、VN4<Vref2の場合、例えば、Hレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給される。Hレベルの発振制御信号がチャージポンプ回路151に供給されると、チャージポンプ回路151内の発振回路はオンして発振動作状態となる。
【0042】
端子T3と端子T4との間の電圧である、DC-DCコンバータ10の出力電圧Voutが、低い電圧から高い電圧に変化(上昇)して電圧Vdeto+に到達すると、比較器122の出力端子に現れる電圧の信号レベルは、HレベルからLレベルに遷移する。一方、出力電圧Voutが、高い電圧から低い電圧に変化(下降)して電圧Vdeto-に到達すると、比較器122の出力端子の電圧の信号レベルは、LレベルからHレベルに遷移する。ここで、抵抗104、抵抗105及び抵抗106の抵抗値を、それぞれ、R104、R105及びR106とすると、電圧Vdeto+及び電圧Vdeto-は、抵抗値R104、R105及びR106と、第2の基準電圧Vref2とを用いて、次式(3)及び(4)で表される。
【0043】
【0044】
続いて、より具体的な一例として、次の(i)から(iii)、すなわち
(i)給電回路60が、発電素子の一例として光電変換素子である太陽電池セルを含む太陽光発電装置である、
(ii)電圧Vdeti+が0.55V、電圧Vdeti-が0.5Vとなるように、抵抗値R101、R102及びR103と第1の基準電圧Vref1が設定されている、
(iii)電圧Vdeto+が3.3V、電圧Vdeto-が3.0Vとなるように、抵抗値R104、R105及びR106と第2の基準電圧Vref2が設定されている、
場合を説明する。
【0045】
図4は、1セル太陽電池の電圧(横軸)に対する電流(縦軸)の関係を示す説明図(電圧-電流特性を示す特性図)である。
【0046】
図4に示される曲線C1(実線)及び曲線C2(破線)は、それぞれ、1セル太陽電池の温度が25℃の場合及び50℃の場合における電圧―電流特性示している。1セルの太陽電池の電圧―電流特性は、
図4に示されるように、1セル太陽電池の温度が25℃の場合、電池電圧が約0.5V付近で、最大の電力(電圧×電流)となる。1セル太陽電池から最大電力を得ることができる電圧の近傍でDC-DCコンバータ10を動作させて蓄電回路70内の容量性素子を充電することが効率的である。電圧Vdeti+が0.55V及び電圧Vdeti-が0.5Vは、最大電力を得ることができる電圧の近傍の一例として設定された電圧である。
【0047】
給電回路60からの供給電圧、すなわち端子T1及び端子T2間に供給される電圧が0.55V(=電圧Vdeti+)を超えると、チャージポンプ回路151にHレベルの発振制御信号が供給されてチャージポンプ回路151内の発振回路はオフからオンに遷移する。すなわち、発振回路は発振動作状態となる。
【0048】
発振回路がオンし、DC-DCコンバータ10が動作すると、太陽電池セルを含む太陽光発電装置の負荷電流が増大するので、電池電圧が低下していく。電池電圧が低下していき、端子T1及び端子T2間に供給される電圧が0.5V(=電圧Vdeti-)未満になると、チャージポンプ回路151にLレベルの発振制御信号が供給されてチャージポンプ回路151内の発振回路はオンからオフに遷移する。すなわち、発振回路は発振停止状態となる。
【0049】
発振回路がオフし、DC-DCコンバータ10が停止すると、太陽光発電装置の負荷電流が無くなるので、電池電圧が上昇していく。電池電圧が上昇していき、端子T1及び端子T2間に供給される電圧が0.55Vを超えると、チャージポンプ回路151内の発振回路はオフからオンに遷移する。
【0050】
また、DC-DCコンバータ10の出力電圧Voutが、低い電圧から高い電圧に変化(上昇)して3.3V(=電圧Vdeto+)に到達すると、チャージポンプ回路151にLレベルの発振制御信号が供給されてチャージポンプ回路151内の発振回路はオンからオフに遷移する。すなわち、発振回路は発振停止状態となる。一方、出力電圧Voutが、高い電圧から低い電圧に変化(下降)して3.0V(=電圧Vdeto-)に到達すると、チャージポンプ回路151にHレベルの発振制御信号が供給されてチャージポンプ回路151内の発振回路はオフからオンに遷移する。すなわち、発振回路は発振動作状態となる。
【0051】
このように、DC-DCコンバータ10は、給電回路60からの供給電圧Vin、すなわち端子T1及び端子T2間に供給される電圧が0.5V以上0.55V以下の範囲(Vdeti-≦Vin≦Vdeti+)内で動作して蓄電回路70内の容量性素子を充電する。また、DC-DCコンバータ10は、DC-DCコンバータ10の出力電圧Vout、すなわち端子T3及び端子T4間に供給される電圧を、3.0V以上3.3V以下の範囲(Vdeto-≦Vout≦Vdeto+)内に制御して、蓄電回路70内の容量性素子を充電する。
【0052】
給電回路60から供給される電圧の発生源が太陽電池である場合、太陽電池は一般に負の温度特性(1セルの太陽電池の場合、約-2mv/℃)を有する。仮に、1セル太陽電池の温度が25℃(常温環境下)で電池電圧0.5Vで最大電力が得られている場合、1セル太陽電池の温度が50℃等、常温よりも高温になると、電池電圧0.5Vよりも低い電池電圧で最大電力が得られるようになる(
図4に例示の曲線C2)。
【0053】
常温よりも高い温度域(以下、単に「高温域」と称する)でも、太陽電池の最大電力を得ようとする場合、抵抗101に負の温度特性を与えて、ノードN1の電圧VN1を、高温域では常温時よりも低くすること、又は/及び基準電圧回路113の出力電圧、すなわち基準電圧Vref1を負の温度特性とし高温域では常温時よりも低くすること、が必要になる。
【0054】
抵抗101に負の温度特性を与えるには、抵抗101の素子としてサーミスタを適用すればよい。一方、高温域の基準電圧Vref1を常温時の基準電圧Vref1よりも低くするには、例えば、デプレッション型NMOSトランジスタ131のK値に対して、NMOSトランジスタ132のK値を大きくすればよい。NMOSトランジスタ132のK値を大きくすることで、基準電圧回路113の基準電圧Vref1に負の温度特性を与えることができる。
【0055】
DC-DCコンバータ10を集積化して構成したい場合、抵抗101に負の温度特性を与えるよりも、基準電圧回路113の基準電圧Vref1に負の温度特性を与える方が好ましい。基準電圧Vref1に負の温度特性を与えるのは、デプレッション型NMOSトランジスタ131のK値及びNMOSトランジスタ132のK値を調整して製造するだけでよいためである。例えば、1セル太陽電池の温度が50℃で最大電力が得られる電池電圧が0.4V付近である場合には、電圧Vdeti+の値が0.4V付近となるように、基準電圧Vref1に負の温度特性を与えればよい。
【0056】
太陽電池のように、給電回路60の発電素子が負の温度特性を有する場合は、基準電圧Vref1に負の温度特性を与えればよいが、逆に、給電回路60の発電素子が正の温度特性を有する場合は、基準電圧Vref1に正の温度特性を与えればよい。基準電圧Vref1に正の温度特性を与えるには、例えば、デプレッション型NMOSトランジスタ131のK値に対して、NMOSトランジスタ132のK値を小さくすればよい。NMOSトランジスタ132のK値を小さくすることで、基準電圧回路113の基準電圧Vref1に正の温度係数を持たせることができる。
【0057】
DC-DCコンバータ10によれば、2個の比較回路110及び120によって、DC-DCコンバータ10の発振動作状態(オン)と発振停止状態(オフ)とを切り替えることができる。したがって、DC-DCコンバータ10がマイコンを備えていなくても、DC-DCコンバータ10の発振動作状態(オン)と発振停止状態(オフ)とを切り替えることができ、効率良く電力変換することができる。
【0058】
また、マイコンを備えずに、発振動作状態(オン)と発振停止状態(オフ)とを切り替え可能にDC-DCコンバータ10を構成することができるので、マイコンを備えるDC-DCコンバータと比べると、構成がシンプルで、消費電流が格段に少なく(例えば、1桁μA程度に)抑えることができる。
【0059】
さらに、DC-DCコンバータ10によれば、マイコンの動作時の消費電力が無いので、1次側から供給を受ける電力が、マイコンの動作時の消費電力未満のような小さい電力であっても高効率で電力変換することができる。例えば、給電回路60に含まれる発電素子が太陽電池の場合、太陽電池の発電能力は、太陽電池の面積に比例する。したがって、DC-DCコンバータ10は、より面積の小さい太陽電池に対しても高効率で電力を取り出すことができる。
【0060】
DC-DCコンバータ10によれば、少なくともDC-DCコンバータ10を利用する温度領域において、基準電圧Vref1の温度特性と給電回路60に含まれる発電素子の温度特性とを合わせることによって、温度変化に影響されることなく効率の良い電力変換を維持することができる。また、比較回路110を、2個のFET、具体的にはデプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132を有する構成とすることで、基準電圧Vref1の温度特性と給電回路60に含まれる発電素子の温度特性とを合わせつつ、比較回路110を小型化することができる。
【0061】
さらに、昇圧回路150において、集積化困難なコイルを含まずに構成可能なDicson型のチャージポンプ回路151を適用すれば、昇圧回路150を小型化することができる。
【0062】
したがって、デプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132を有する比較回路110と、コイルを含まないチャージポンプ回路151を有する昇圧回路150と、を備えるDC-DCコンバータ10とすれば、DC-DCコンバータ10を集積化、ひいては小型化することができる。
【0063】
[第2の実施形態]
図5は、本発明の第2の実施形態に係るDC-DCコンバータの一例であるDC-DCコンバータ20の回路図である。
【0064】
DC-DCコンバータ20は、DC-DCコンバータ10に対して、端子T1及び端子T2の間に接続される抵抗103及びNMOSトランジスタ107が省略されている点と、発振制御回路152の代わりに発振制御回路162を備える点と、比較回路110の代わりに誤差増幅回路210を備える点において相違しているが、その他の点は実質的に相違しない。そこで、本実施形態では、DC-DCコンバータ10に対する相違点を中心に説明し、DC-DCコンバータ10と実質的に相違しない内容については、その説明を省略する。
【0065】
DC-DCコンバータ20は、端子T1~T4の他に、チャージポンプ回路151と、発振制御回路162と、誤差増幅回路210と、比較回路120と、をさらに備えている。端子T2は、端子T4と接続されている。チャージポンプ回路151及び発振制御回路162は、昇圧回路160を構成している。
【0066】
端子T1と端子T2との間には、端子T1から端子T2へ向かって、抵抗101と抵抗102が直列に接続されて抵抗分圧回路が形成されている。ここで、抵抗102の第2端と端子T2との接続点をノードN10と呼称する。
【0067】
誤差増幅回路210は、第1入力端子、第2入力端子、及び出力端子を有し、第1入力端子に入力される第1の基準電圧Vref1と第2入力端子に入力される電圧VN1との差を増幅して、出力端子から出力する回路である。
【0068】
誤差増幅回路210は、誤差増幅器212と、第1の基準電圧回路としての基準電圧回路113と、を有している。誤差増幅器212は、ノードN1と接続される反転入力端子(-)と、基準電圧Vref1の供給を受ける非反転入力端子(+)と、誤差増幅回路210の出力端子であるノードN7と接続される出力端子と、を有している。基準電圧回路113は、誤差増幅器212の非反転入力端子(+)と接続され、基準電圧Vref1を誤差増幅器212の非反転入力端子(+)へ供給する出力端を含んでいる。
【0069】
発振制御回路162は、ノードN7と接続される第1入力端と、ノードN8と接続される第2入力端と、チャージポンプ回路151の制御端と接続される出力端と、を有している。発振制御回路162は、機能的には、発振動作状態と発振停止状態、すなわち発振のオンとオフとを切り替える発振入切機能と、発振周波数を所定範囲内で調整する発振周波数調整機能と、を有している。
【0070】
図6は、発振制御回路162の一例を示す回路図である。
発振制御回路162は、リングオシレータ116へ供給する電源電圧を制御する制御トランジスタとしてのPMOSトランジスタ117と、発振入切制御回路118と、を有している。
【0071】
チャージポンプ回路151内の発振回路としてのリングオシレータ116は、リング状に結線されたn(nは奇数)個のインバータ16_1,16_2,…,16_nを有している。インバータ16_1,16_2,…,16_nの電源端子は、それぞれ、PMOSトランジスタ117のドレインに接続される。インバータ16_1,16_2,…,16_nの接地端子は、端子T2と接続されている。
【0072】
PMOSトランジスタ117は、誤差増幅器212の出力端子と接続されるゲートと、端子T1と接続されるソースと、インバータ16_1,16_2,…,16_nの各電源端子と接続されるドレインと、を含んでいる。
【0073】
発振入切制御回路118は、比較回路120の出力端子であるノードN8と接続される制御信号入力端と、最終段のインバータ16_nの出力端、すなわちノードN11と接続される入力端と、第1段のインバータ16_1の入力端、すなわちノードN12と接続される出力端と、を有している。発振入切制御回路118は、制御信号入力端に入力される第2発振入切制御信号の信号レベルに応じて、入力端から入力された信号の信号レベルをLレベルからHレベル又はHレベルからLレベルに反転させるか否かを切り替えて出力端から出力可能に構成されている。
【0074】
図7は、第2の実施形態に係るDC-DCコンバータが備える誤差増幅回路210の一例を示す回路図である。
【0075】
誤差増幅回路210は、例えば、デプレッション型NMOSトランジスタ131とNMOSトランジスタ132と、を有して構成されている。デプレッション型NMOSトランジスタ131は、端子T1と接続されるドレインと、ゲートと、自身ゲートと接続されるソースと、を含んでいる。NMOSトランジスタ132は、デプレッション型NMOSトランジスタ131のゲート及びソースと接続されるドレインと、ノードN1と接続されるゲートと、端子T2と接続されるソースと、を含んでいる。
【0076】
次に、DC-DCコンバータ20の作用及び効果について、DC-DCコンバータ10の作用及び効果と相違する内容を中心に説明する。
【0077】
誤差増幅回路210には、抵抗101,102によって分圧されてノードN1に現れる電圧VN1が入力される。誤差増幅回路210では、誤差増幅器212の非反転入力端子(+)に入力される第1の基準電圧Vref1と誤差増幅器212の反転入力端子(-)に入力される電圧VN1との差を増幅して、出力端子から電圧Ve1を出力する。
【0078】
誤差増幅器212は、非反転入力端子(+)に入力される第1の基準電圧Vref1よりも反転入力端子(-)に入力される電圧VN1が高い場合、すなわちVref1-VN1<0の場合、誤差増幅器212の出力端子に現れる電圧Ve1は低下する。一方、非反転入力端子(+)に入力される第1の基準電圧Vref1が反転入力端子(-)に入力される電圧VN1よりも高い場合、すなわちVref1-VN1>0の場合、誤差増幅器212の出力端子に現れる電圧Ve1は上昇する。電圧Ve1は、発振周波数制御信号として、出力端子であるノードN7から出力される。
【0079】
発振制御回路162は、第1の制御信号としての発振周波数制御信号を、第1入力端に受ける。発振制御回路162は、第1入力端に発振周波数制御信号を受けると、発振周波数制御信号の電圧の高低によってPMOSトランジスタ117のゲート電圧が増減し、ひいてはPMOSトランジスタ117のドレイン電流が増減する。発振周波数制御信号の電圧、すなわち電圧Ve1が低下すると、PMOSトランジスタ117が多くの電流を流すので、リングオシレータ116の発振周波数が高くなる。
【0080】
リングオシレータ116の発振周波数が高くなると、DC-DCコンバータ20は、より多くの電力を給電回路60から必要とするため、給電回路60の負荷電流が増大する。給電回路60から供給される電圧の発生源が太陽電池である場合、太陽電池の電圧-電流特性から、太陽電池の負荷電流が増大すると、電池電圧が低下し、電圧VN1が低下する。電圧VN1が低下すると、電圧Ve1は上昇する。
【0081】
一方、電圧Ve1が上昇すると、PMOSトランジスタ117がドレイン電流を絞るので、リングオシレータ116の発振周波数は低くなる。電圧Ve1がさらに上昇すると、やがて、リングオシレータ116の発振は停止する。
【0082】
リングオシレータ116の発振周波数が低くなると、DC-DCコンバータ20が必要とする電力は少なくなるので、給電回路60の負荷電流が減少する。給電回路60から供給される電圧の発生源が太陽電池である場合、太陽電池の電圧-電流特性から、太陽電池の負荷電流が減少すると、電池電圧が上昇する。電圧VN1が上昇すると、電圧Ve1は低下する。
【0083】
このように、給電回路60から供給される電圧の発生源が太陽電池である場合、電圧VN1と第1の基準電圧Vref1が等しくなるような発振周波数で、チャージポンプ回路151が動作するように制御される。太陽電池の電池電圧Vsolは、上述した抵抗値R101及びR102と、第1の基準電圧Vref1とを用いて、次式(5)で表される。
【0084】
【0085】
例えば、電池電圧Vsol=0.5Vになるように、抵抗値R101及びR102と第1の基準電圧Vref1が設定されている場合、DC-DCコンバータ20は、電池電圧Vsolが0.5Vになるように、リングオシレータ116の発振周波数が制御される。
【0086】
また、発振制御回路162は、第2入力端に第2発振入切制御信号を受ける。発振制御回路162は、第2入力端に第2発振入切制御信号を受けると、発振制御回路152と同様に、発振のオンとオフとを切り替える。すなわち、発振制御回路162は、第2発振入切制御信号の信号レベルが、VN4>Vref2を示す信号レベルの場合、発振動作をオフさせる発振制御信号をチャージポンプ回路151の制御端へ供給する一方、VN4<Vref2を示す信号レベルの場合、発振動作をオンさせる発振制御信号をチャージポンプ回路151の制御端へ供給する。
【0087】
発振制御回路162内の動作について、もう少し詳しく説明すれば、発振制御回路162では、第2発振入切制御信号を、発振入切制御回路118の制御信号入力端から受ける。発振入切制御回路118は、制御信号入力端に入力される第2発振入切制御信号の信号レベルに応じて、入力端から入力される信号の信号レベルを反転させて発振を停止させるか、入力端から入力される信号の信号レベルを反転させずに発振するか、を制御する。発振入切制御回路118の上記動作によって、リングオシレータ116の発振のオンとオフとが切り替えられる。
【0088】
DC-DCコンバータ20によれば、誤差増幅回路210と比較回路120とによって、DC-DCコンバータ20の発振動作状態(オン)と発振停止状態(オフ)とを切り替えることができる。したがって、DC-DCコンバータ20がマイコンを備えていなくても、DC-DCコンバータ20の発振動作状態と発振停止状態とを切り替えることができ、効率良く電力変換することができる。
【0089】
また、マイコンを備えずに、発振動作状態と発振停止状態とを切り替え可能にDC-DCコンバータ20を構成することができるので、マイコンを備えるDC-DCコンバータと比べると、構成がシンプルで、消費電流が格段に少なく(例えば、1桁μA程度に)抑えることができる。
【0090】
さらに、DC-DCコンバータ20によれば、マイコンの動作時の消費電力が無いので、1次側から供給を受ける電力が、マイコンの動作時の消費電力未満のような小さい電力であっても高効率で電力変換することができる。例えば、給電回路60に含まれる発電素子が太陽電池の場合、より面積の小さい太陽電池に対しても高効率で電力を取り出すことができる。
【0091】
DC-DCコンバータ20によれば、少なくともDC-DCコンバータ20を利用する温度領域において、基準電圧Vref1の温度特性と給電回路60に含まれる発電素子の温度特性とを合わせることによって、温度変化に影響されることなく効率の良い電力変換を維持することができる。また、誤差増幅回路210を、2個のFET、具体的にはデプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132を有する構成とすることで、基準電圧Vref1の温度特性と給電回路60に含まれる発電素子の温度特性とを合わせつつ、誤差増幅回路210を小型化することができる。
【0092】
さらに、昇圧回路150において、集積化困難なコイルを含まずに構成可能なDicson型のチャージポンプ回路151を適用すれば、昇圧回路150を小型化することができる。
【0093】
したがって、デプレッション型NMOSトランジスタ131及びNMOSトランジスタ132を有する誤差増幅回路210と、コイルを含まないチャージポンプ回路151を有する昇圧回路160と、を備えるDC-DCコンバータ20とすれば、DC-DCコンバータ20を集積化、ひいては小型化することができる。
【0094】
なお、本発明は上述した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では、上述した実施例以外にも様々な形態で実施することが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、追加、置き換え又は変更することができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0095】
10,20 DC-DCコンバータ
110 比較回路(第1の制御回路)
112 比較器(第1の比較器)
113 基準電圧回路(第1の基準電圧回路)
120 比較回路(第2の制御回路)
122 比較器(第2の比較器)
123 基準電圧回路(第2の基準電圧回路)
210 誤差増幅回路(第1の制御回路)
116 リングオシレータ(発振回路)
151 チャージポンプ回路
131 デプレッション型NMOSトランジスタ(FET)
132 NMOSトランジスタ(FET)
T1 第1の入力端子
T2 第2の入力端子
T3 第1の出力端子
T4 第2の出力端子