(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137244
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 29/861 20060101AFI20240927BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/329 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/12 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20240927BHJP
H01L 29/739 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/8249 20060101ALI20240927BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H01L29/91 J
H01L29/06 301G
H01L29/06 301V
H01L29/91 C
H01L29/06 301D
H01L29/91 A
H01L29/78 652Q
H01L29/78 652P
H01L29/78 653A
H01L29/78 652T
H01L29/78 658H
H01L29/78 652G
H01L29/78 655A
H01L29/78 657D
H01L29/78 655B
H01L27/06 321E
H01L27/088 B
H01L27/06 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048689
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慎哉
【テーマコード(参考)】
5F048
【Fターム(参考)】
5F048AB10
5F048AC06
5F048AC10
5F048BA11
5F048BA12
5F048BA14
5F048BB19
5F048BC03
5F048BC07
5F048BC12
5F048BD07
(57)【要約】
【課題】スイッチング損失を低減可能な半導体装置を提供する。
【解決手段】実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第1領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第2電極と、を備える。第1半導体領域は、第1電極の上に設けられている。第1領域は、第1半導体領域中に設けられている。第1領域における炭素の濃度は、第1半導体領域における炭素の濃度よりも高い。第1領域における第1元素の濃度は、第1半導体領域における第1元素の濃度よりも高い。第1元素は、白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである。第2半導体領域は、第1半導体領域の上に設けられている。第2電極は、第2半導体領域の上に設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである、前記第1領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第2電極と前記第1領域との間の距離は、前記第1電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体領域は、第1部分と、前記第1部分の上に設けられた第2部分と、を含み、
前記第2部分におけるn形不純物濃度は、前記第1部分におけるn形不純物濃度よりも低く、
前記第1領域は、前記第1部分中に設けられた、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域中に設けられた第2領域をさらに備え、
前記第2領域における炭素の濃度は、前記第1半導体領域における炭素の前記濃度よりも高く、
前記第2領域における前記第1元素の濃度は、前記第1半導体領域における前記第1元素の前記濃度よりも高く、
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、
前記第2電極と前記第2領域との間の距離は、前記第1電極と前記第2領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電極と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
をさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第2半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第2半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項8】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の一部の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第1電極の一部と前記第1半導体領域の前記一部との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
前記第1電極の別の一部と前記第1半導体領域の別の一部との間に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第2導電形の第6半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域、前記第4半導体領域、及び前記第6半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項9】
前記第1元素は白金である、請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオード、Insulated Gate Bipolar Transistor(IGBT)、Reverse Conducting Insulated Gate Bipolar Transistor(RC-IGBT)などの半導体装置は、電力変換等の用途に用いられる。これらの半導体装置について、スイッチング損失は小さいことが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、スイッチング損失を低減可能な半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る半導体装置は、第1電極と、第1導電形の第1半導体領域と、第1領域と、第2導電形の第2半導体領域と、第2電極と、を備える。前記第1半導体領域は、前記第1電極の上に設けられている。前記第1領域は、前記第1半導体領域中に設けられている。前記第1領域における炭素の濃度は、前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高い。前記第1領域における第1元素の濃度は、前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高い。前記第1元素は、白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである。前記第2半導体領域は、前記第1半導体領域の上に設けられている。前記第2電極は、前記第2半導体領域の上に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図4】
図4は、濃度プロファイルを例示する模式図である。
【
図5】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示する模式図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図10】
図10は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図11】
図11は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第2実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図14】
図14は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図15】
図15は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図16】
図16は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図17】
図17は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図18】
図18は、第3実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
【
図20】
図20は、第3実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図21】
図21は、第3実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【
図22】
図22は、第3実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既に説明したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0008】
以下の説明において、n+、n、n-及びp+、pの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、n+はnよりもn形の不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp形の不純物濃度が相対的に高く、p-はpよりもp形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【0009】
実施形態の説明では、XYZ直交座標系を用いる。第1電極から第1半導体領域に向かう方向をZ方向(第1方向)とする。Z方向に対して垂直であり、相互に直交する二方向をX方向(第2方向)及びY方向(第3方向)とする。また、説明のために、第1電極から第1半導体領域に向かう方向を「上」と言い、その反対方向を「下」と言う。これらの方向は、第1電極と第1半導体領域との相対的な位置関係に基づき、重力の方向とは無関係である。
【0010】
(第1実施形態)
図1及び
図2は、第1実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図3は、
図1及び
図2のA1-A2断面図である。
第1実施形態に係る半導体装置は、ダイオードである。
図1~
図3に示すように、第1実施形態に係る半導体装置100は、n形(第1導電形の一例)のカソード領域101(第1半導体領域の一例)、p形(第2導電形の一例)のアノード領域102(第2半導体領域の一例)、コンタクト領域103、ガードリング領域104、絶縁層105、第1領域111、カソード電極121(第1電極の一例)、及びアノード電極122(第2電極の一例)を含む。なお、
図2では、絶縁層105が省略され、アノード電極122が破線で示されている。
【0011】
図1及び
図2に示すように、アノード電極122は、半導体装置100の上面に設けられている。アノード電極122の周囲において、半導体装置100の上面は、絶縁層105に覆われている。
図3に示すように、カソード電極121は、半導体装置100の下面に設けられている。
【0012】
コンタクト領域103は、カソード電極121とアノード電極122との間において、カソード電極121の上に設けられている。コンタクト領域103は、カソード電極121と電気的に接続されている。カソード領域101は、コンタクト領域103の上に設けられている。コンタクト領域103におけるn形不純物濃度は、カソード領域101におけるn形不純物濃度よりも低い。
【0013】
アノード領域102は、カソード領域101の上に設けられている。カソード領域101とアノード領域102との間に、pn接合が形成されている。アノード領域102は、p形半導体部102a及びp+形半導体部102bを含む。p+形半導体部102bは、p形半導体部102aの少なくとも一部の上に設けられている。p+形半導体部102bにおけるp形不純物濃度は、p形半導体部102aにおけるp形不純物濃度よりも高い。アノード電極122は、アノード領域102の上に設けられ、アノード領域102と電気的に接続されている。
【0014】
ガードリング領域104は、X-Y面に沿って、アノード領域102の周りに設けられている。ガードリング領域104は、アノード領域102から離れている。図示したように、半導体装置100の外周に向けて、複数のガードリング領域104が設けられても良い。複数のガードリング領域104は互いに離れている。
【0015】
第1領域111は、カソード領域101の中に設けられている。第1領域111における炭素の濃度は、カソード領域101における炭素の濃度よりも高い。また、第1領域111における第1元素の濃度は、カソード領域101における第1元素の濃度よりも高い。第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである。
【0016】
図示した例では、第1領域111は、X-Y面に沿って広がっている。すなわち、第1領域111のZ方向における長さは、第1領域111のX方向における長さよりも短く、第1領域111のY方向における長さよりも短い。
【0017】
半導体装置100は、
図1及び
図3に示すように、素子領域CRと、素子領域CRの周りに設けられた終端領域TRと、を含む。カソード領域101及び103は、素子領域CR及び終端領域TRに設けられている。アノード領域102は、素子領域CRに設けられている。ガードリング領域104は、終端領域TRに設けられている。アノード電極122は、素子領域CRの上に設けられている。例えば、第1領域111は、素子領域CRと終端領域TRの両方に設けられている。
【0018】
図4は、濃度プロファイルを例示する模式図である。
図4は、
図3のL1-L2線上における濃度プロファイルを示す。
図4において、横軸はZ方向における位置を示し、縦軸は濃度を示す。プロファイルP1は炭素の濃度を示し、プロファイルP2は第1元素の濃度を示す。
図4に示すように、カソード領域101に含まれる元素をZ方向に沿って分析した際、他の領域よりも高い炭素の濃度を有し、且つ他の領域よりも高い第1元素の濃度を有する領域が、第1領域111として特定される。
【0019】
第1領域111は、例えば以下の方法により特定できる。カソード領域101をZ方向に分析し、炭素の濃度及び第1元素の濃度のプロファイルを取得する。分析には、二次イオン質量分析(SIMS)やカソードルミネッセンス法、フォトルミネッセンス法、Deep Level Transient Spectroscopy(DLTS法)が用いられる。カソードルミネッセンス法及びフォトルミネッセンス法では、第1元素及び炭素によって形成される特定のエネルギー準位(結晶欠陥)で信号が観測される。DLTS法では、結晶欠陥の濃度が測定される。カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法で得られた信号強度のプロファイル、及びDLTS法で得られた結晶欠陥の濃度プロファイルは、それぞれ、元素の濃度プロファイルに対応する。ここでは、SIMSにより測定された元素の濃度プロファイルにおける第1領域111の特定方法を説明する。カソードルミネッセンス法又はフォトルミネッセンス法が用いられる場合、以下の説明における「濃度プロファイル」は、「信号の強度プロファイル」に読み替える。DLTS法が用いられる場合、「濃度プロファイル」は、結晶欠陥の濃度プロファイルに相当する。
【0020】
まず、炭素のプロファイルにおいて、濃度の低い領域を特定する。「濃度の低い領域」とは、検出限界以下の領域である。炭素のプロファイルにおいて、検出限界を超えて炭素濃度が増大している領域を特定する。いずれの領域でも炭素濃度が検出限界を超えている場合は、カソード電極121とアノード電極122との間の各半導体領域について、Z方向における炭素濃度のヒストグラムを取得する。そして、最も濃度の低い母集団を、「濃度の低い領域」として特定する。この場合、濃度の低い領域における平均値及び標準偏差σを計算する。平均値±1σを超えて炭素濃度が増大している領域を特定する。
【0021】
同様に、第1元素の濃度プロファイルにおいて、検出限界以下の領域を「濃度の低い領域」として特定し、検出限界を超えて第1元素の濃度が増大している領域を特定する。いずれの領域でも第1元素の濃度が検出限界を超えている場合は、カソード電極121とアノード電極122との間の各半導体領域について、Z方向における第1元素の濃度のヒストグラムを取得する。そして、最も濃度の低い母集団を、「濃度の低い領域」として特定する。この場合、濃度の低い領域における平均値及び標準偏差を計算する。濃度の平均値±1σを超えて、第1元素の濃度の増大している領域を特定する。炭素濃度が増大し、且つ第1元素濃度が増大している領域が、第1領域111と判断される。
【0022】
図4に示す例では、炭素の濃度プロファイルから、炭素の濃度が低い領域r1が特定される。領域r1における濃度の平均値A1及び標準偏差σが計算される。平均値A1±1σを超えた領域r2が特定される。同様に、第1元素の濃度プロファイルから、第1元素の濃度が低い領域r3が特定される。領域r3における濃度の平均値A2及び標準偏差σが計算される。平均値A2±1σを超えた領域r4が特定される。領域r2と領域r4の双方に含まれる領域が、第1領域111として特定される。
【0023】
図4に示すように、炭素の濃度が高い領域では、第1元素の濃度も高い。すなわち、濃度プロファイルから、炭素は、第1元素に対してゲッタリングの効果を有することが分かる。
【0024】
図5は、第1実施形態に係る半導体装置の特性を例示する模式図である。
図5において、横軸は時間である。縦軸は、電流又は電圧を示す。
図5において、縦軸の正側は、アノード電極122に対してカソード電極121に正の電圧が印加される状態、又はアノード電極122からカソード電極121へ電流が流れる状態を示す。縦軸の負側は、カソード電極121に対してアノード電極122に正の電圧が印加される状態、又はカソード電極121からアノード電極122へ電流が流れる状態を示す。
【0025】
カソード電極121に対してアノード電極122に正の電圧VFが印加されると、カソード領域101及びアノード領域102から構成されるpnダイオードに順方向の電圧が加わる。これにより、カソード領域101からアノード領域102に順方向電流IFが流れる。すなわち、半導体装置100がオン状態となる。このとき、カソード領域101にキャリアが蓄積され、カソード領域101の電気抵抗が低下する。その後、電圧VFが低下し、半導体装置100に逆方向の電圧VRが加わると、カソード領域101に蓄積されたキャリアがカソード電極121及びアノード電極122へ排出される。これにより、アノード領域102からカソード領域101へリカバリー電流Irrが流れる。
【0026】
各構成要素の材料の一例を説明する。
カソード領域101、アノード領域102、コンタクト領域103、及びガードリング領域104は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。半導体材料としてシリコンが用いられる場合、n形不純物として、ヒ素、リン、またはアンチモンを用いることができる。p形不純物として、ボロンを用いることができる。カソード電極121及びアノード電極122は、チタン又はアルミニウムなどの金属を含む。
【0027】
図6(a)、
図6(b)、
図7(a)、及び
図7(b)は、第1実施形態に係る半導体装置の製造方法を示す断面図である。
まず、n
-形半導体層101x及びn
+形半導体層103xを含む半導体基板を用意する。n
-形半導体層101xは、n
+形半導体層103xの上に設けられている。n
-形半導体層101xの表面に、炭素をイオン注入する。例えば、炭素の不純物濃度のピークがn
-形半導体層101xの表面に位置するように、イオン注入が行われる。炭素は、第1領域111が形成される領域にイオン注入される。第1領域111が、X-Y面においてカソード領域101の一部にのみ形成される場合は、n
-形半導体層101xの上にマスクを形成しても良い。マスクが形成されていない領域に炭素がイオン注入され、その後に第1領域111が形成される領域を制御できる。イオン注入により、
図6(a)に示すように、周囲の領域に比べて高い炭素の濃度を有する領域111xが形成される。
【0028】
n
-形半導体層101x及び領域111xの上に半導体材料をエピタキシャル成長させ、n
-形半導体層101yを形成する。n
-形半導体層101yの表面にp形不純物をイオン注入し、
図6(b)に示すように、p形半導体部102aを形成する。
【0029】
p形半導体部102aの表面の一部にp形不純物をイオン注入し、p
+形半導体部102bを形成する。
図7(a)に示すように、p形半導体部102a及びp
+形半導体部102bの上に、第1元素を含む層Lを形成する。熱処理により、層Lに含まれる第1元素をn
-形半導体層101x及びn
-形半導体層101yに向けて拡散させる。拡散した第1元素は、領域111xの炭素と反応する。これにより、領域111xにおける第1元素の濃度が、周囲の領域に比べて高くなる。
【0030】
p形半導体部102a及びp
+形半導体部102bの上に金属材料をスパッタリングし、アノード電極122を形成する。形半導体層101xが所定の厚さになるまで、形半導体層101xの裏面を研削する。
図7(b)に示すように、形半導体層101xの裏面に金属材料をスパッタリングし、カソード電極121を形成する。以上により、第1実施形態に係る半導体装置100が製造される。
【0031】
第1実施形態の利点を説明する。
図5に示すように、半導体装置100がオフ状態に切り替わった際、リカバリー電流I
rrが流れる。リカバリー電流I
rrは、より小さいことが好ましい。リカバリー電流I
rrが小さい(ゼロに近い)ほど、半導体装置100のスイッチングをより高速化でき、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。リカバリー電流I
rrを低減するためには、カソード領域101に第1元素を含有させることが有効である。第1元素は、キャリアのライフタイムを短縮させるライフタイムキラーとして機能する。第1元素によりキャリアのライフタイムが短縮されることで、リカバリー電流I
rrを低減し、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。
【0032】
また、第1元素は、局所的に存在していることが好ましい。第1元素がカソード領域101の全体に広がっている場合でも、リカバリー電流Irrを低減できる。しかし、この場合、半導体装置100がオン状態のときに、カソード領域101に蓄積されるキャリア密度も低下する。この結果、半導体装置100のオン抵抗が増大する。第1元素を局所的に存在させることで、オン抵抗の増大を抑えつつ、リカバリー電流Irrを低減できる。
【0033】
従来、第1元素を局所的に存在させるために、第1元素がカソード領域101の所定の深さにイオン注入されていた。この場合、高いエネルギーを有するイオンがカソード領域101及びアノード領域102に打ち込まれ、これらの領域における結晶欠陥が増大する。この結果、半導体装置100がオフ状態のときのリーク電流が増大する。結晶欠陥の発生を抑えるために、第1元素を含む層からカソード領域101へ第1元素を拡散させる方法も存在する。しかし、この方法によれば、カソード領域101へ第1元素が均一に拡散するため、局所的に第1元素を存在させることが難しい。
【0034】
この課題について、第1実施形態に係る半導体装置100では、カソード領域101の特定の領域に炭素を含有させている。炭素は、格子間シリコンや原子空孔といった点欠陥を介在して、白金、金、鉄、銅、ニッケルなどの金属原子に対してゲッタリング効果を示す。このため、カソード領域101に第1元素を拡散させた場合に、第1元素の多くは、炭素を介在したゲッタリングによって、炭素を含む領域に留まる。炭素は、第1元素に対するゲッタリング元素として機能する。これにより、周囲に比べて、より高い炭素の濃度を有し、且つより高い第1元素の濃度を有する第1領域111がカソード領域101中に形成される。また、炭素は電気的に中性である。
【0035】
第1領域111は、浅い位置への炭素のイオン注入及び第1元素の拡散により形成できるため、カソード領域101における結晶欠陥の発生を抑制できる。これにより、リーク電流の増大を抑えることができる。また、炭素は電気的に中性である。このため、第1領域111によるリーク電流への影響は、実質的に無い。第1元素の濃度が局所的に高い第1領域111が設けられることで、半導体装置100のオン抵抗の増加を抑えつつ、半導体装置100のスイッチング損失を低減できる。
【0036】
例えば、第1領域111は、カソード領域101の中に設けられ、アノード電極122側に位置する。すなわち、
図3に示すように、アノード電極122と第1領域111との間のZ方向における距離D2は、カソード電極121と第1領域111との間のZ方向における距離D1よりも短い。第1領域111がアノード電極122側に形成される場合、第1領域111がカソード領域101の中央に形成される場合に比べて、半導体装置100のオン抵抗を低減しつつ、リカバリー電流I
rrをより低減できる。
【0037】
第1元素としては、白金が最も好ましい。ライフタイムキラーとして性能を示す指標として、生成ライフタイムと、低注入レベル時でのライフタイムと、がある。生成ライフタイムが短いほど、電子正孔対が生成され易くなり、リーク電流の原因となりうる。また、低注入ライフタイムが小さいほど、デバイスのスイッチング速度が速くなる。つまり、低注入レベル時でのライフタイムをτsc、低注入ライフタイムをτLLとしたとき、これらの比τsc/τLLが大きいことが望ましい。白金は、高いτsc/τLL値する。例えば室温において、白金のτsc/τLL値は、金のτsc/τLL値の100倍以上である。また、白金のτsc/τLL値は、広く使われている電子線照射法よりも高い値を示す。このため、他の第1元素を用いた場合又は電子線照射による方法に比べて、白金は、ライフタイム制御因子として優れた性能を示す。
【0038】
図8~
図11は、第1実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図8に示した半導体装置100aのように、第1領域111は、カソード電極121側に位置しても良い。すなわち、カソード電極121と第1領域111との間の距離D1が、アノード電極122と第1領域111との間の距離D2よりも短い。第1領域111がカソード電極121側に形成される場合、第1領域111がカソード領域101の中央に形成される場合に比べて、半導体装置100aのオン抵抗を低減しつつ、リカバリー電流I
rrが減衰する期間P(
図5に示す)をより短縮できる。これにより、半導体装置100aのスイッチング損失を低減できる。
【0039】
図9に示した半導体装置100bでは、カソード領域101が、n形半導体部101a(第1部分の一例)及びn
-形半導体部101b(第2部分の一例)を含む。n
-形半導体部101bは、n形半導体部101aの上に設けられている。n形半導体部101aにおけるn形不純物濃度は、コンタクト領域103におけるn形不純物濃度よりも低い。n
-形半導体部101bにおけるn形不純物濃度は、n形半導体部101aにおけるn形不純物濃度よりも低い。
【0040】
第1領域111は、n形半導体部101aの中に設けられている。n形半導体部101aにおけるn形不純物濃度は、n-形半導体部101bにおけるn形不純物濃度よりも高いため、半導体装置100bがオフ状態のとき、n形半導体部101aは完全には空乏化しない。すなわち、空乏層は、n形半導体部101a中の第1領域111まで到達しない。第1領域111は、少量ながら、炭素をイオン注入する際に発生した結晶欠陥を含む。空乏層が到達しない領域に第1領域111が設けられることで、半導体装置100bのスイッチング損失を低減しつつ、半導体装置100bのリーク電流をより低減できる。
【0041】
図10に示した半導体装置100cのように、第1領域111は、p形半導体部102aの中に設けられても良い。この場合、第1領域111における炭素の濃度が、アノード領域102における炭素の濃度よりも高い。第1領域111における第1元素の濃度は、アノード領域102における第1元素の濃度よりも高い。アノード領域102に含まれる元素をZ方向に沿って分析した際、他の領域よりも高い炭素の濃度を有し、且つ他の領域よりも高い第1元素の濃度を有する領域が、第1領域111として特定される。
【0042】
p形半導体部102aにおけるp形不純物濃度は、n-形半導体部101bにおけるn形不純物濃度よりも高い。このため、半導体装置100cがオフ状態のとき、n-形半導体部101bに比べて、p形半導体部102aでは空乏層が広がり難い。p形半導体部102aにおいて、空乏化しない領域に第1領域111が設けられることで、半導体装置100cのスイッチング損失を低減しつつ、半導体装置100cのリーク電流をより低減できる。
【0043】
図11に示した半導体装置100dのように、第1領域111に加えて、第2領域112が設けられても良い。第2領域112は、カソード領域101の中に設けられている。第2領域112における炭素の濃度は、カソード領域101における炭素の濃度よりも高い。第2領域112における第1元素の濃度は、カソード領域101における第1元素の濃度よりも高い。第2領域112のZ方向における長さは、第2領域112のX方向における長さよりも短く、第2領域112のY方向における長さよりも短い。
【0044】
第2領域112は、Z方向において、第1領域111から離れている。第1領域111は、カソード電極121側に設けられている。第2領域112は、アノード電極122側に設けられている。すなわち、カソード電極121と第1領域111との間のZ方向における距離D1は、アノード電極122と第1領域111との間のZ方向における距離D2よりも短い。カソード電極121と第2領域112との間のZ方向における距離D3は、アノード電極122と第2領域112との間のZ方向における距離D4よりも長い。
【0045】
第2領域112は、第1領域111と同様の方法によって形成される。すなわち、n-形半導体層の形成途中で、第2領域112が形成される領域に炭素がイオン注入される。その後、第1元素が拡散した際、炭素がイオン注入された領域に第1元素が留まり、第1領域111及び第2領域112が形成される。
【0046】
第1領域111および第2領域112の両方が設けられることで、半導体装置100又は半導体装置100a~100cに比べて、スイッチング損失をさらに低減できる。
【0047】
以上で説明した各変形例に係る構造は、適宜組み合わせて実施することが可能である。例えば、半導体装置100dにおいて、第1領域111が、n形半導体部101aの中に設けられても良い。第2領域112が、p形半導体部102aの中に設けられても良い。
【0048】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図13は、
図12のA1-A2断面図である。
第2実施形態に係る半導体装置は、IGBTである。
図12及び
図13に示すように、第2実施形態に係る半導体装置200は、n形ベース領域201(第1半導体領域の一例)、p形ベース領域202(第2半導体領域の一例)、コレクタ領域203(第3半導体領域の一例)、エミッタ領域204(第4半導体領域の一例)、第1領域211、ゲート電極215、コレクタ電極221(第1電極の一例)、エミッタ電極222(第2電極の一例)、及びゲートパッド223を備える。
【0049】
図12に示すように、エミッタ電極222及びゲートパッド223は、半導体装置200の上面に設けられている。エミッタ電極222とゲートパッド223は、互いに離れている。図示した例では、エミッタ電極222が複数設けられ、各エミッタ電極222の周りにゲート配線223aが設けられている。ゲート配線223aは、ゲートパッド223と電気的に接続されている。
【0050】
図13に示すように、コレクタ電極221は、半導体装置200の下面に設けられている。コレクタ領域203は、コレクタ電極221の上に設けられ、コレクタ電極221と電気的に接続されている。n形ベース領域201は、コレクタ領域203の上に設けられている。n形ベース領域201は、n形半導体部201a(第1部分の一例)及びn
-形半導体部201b(第2部分の一例)を含んでも良い。n
-形半導体部201bは、n形半導体部201aの上に設けられている。n
-形半導体部201bにおけるn形不純物濃度は、n形半導体部201aにおけるn形不純物濃度よりも低い。
【0051】
p形ベース領域202は、n形ベース領域201の上に設けられている。エミッタ領域204は、p形ベース領域202の上に設けられている。p形ベース領域202は、p形半導体部202a及びp+形半導体部202bを含んでも良い。p+形半導体部202bは、p形半導体部202aの上に設けられ、X方向においてエミッタ領域204と並んでいる。p+形半導体部202bにおけるp形不純物濃度は、p形半導体部202aにおけるp形不純物濃度よりも高い。p形ベース領域202及びエミッタ領域204は、エミッタ電極222と電気的に接続されている。
【0052】
ガードリング領域205は、X-Y面に沿って、p形ベース領域202の周りに設けられている。ガードリング領域205は、p形ベース領域202から離れている。図示したように、半導体装置200の外周に向けて、複数のガードリング領域205が設けられても良い。複数のガードリング領域205は互いに離れている。
【0053】
ゲート電極215は、X方向において、ゲート絶縁層215aを介してp形半導体部202aと対面している。ゲート電極215とエミッタ電極222との間には、絶縁層217が設けられている。ゲート電極215とエミッタ電極222は、互いに電気的に分離されている。
【0054】
p形ベース領域202、エミッタ領域204、及びゲート電極215のそれぞれは、X方向において複数設けられている。各p形ベース領域202、各エミッタ領域204、及び各ゲート電極215は、ストライプ状に設けられ、Y方向に延びている。ゲート電極215のY方向における端部は、ゲート配線223aと接続されている。ゲート電極215は、ゲート配線223aを介してゲートパッド223と電気的に接続されている。
【0055】
第1領域211は、n-形半導体部201bの中に設けられている。第1実施形態に係る半導体装置と同様に、第1領域211における炭素の濃度は、n形ベース領域201における炭素の濃度よりも高い。また、第1領域211における第1元素の濃度は、n形ベース領域201における第1元素の濃度よりも高い。第1領域211は、X-Y面に沿って広がっている。例えば、エミッタ電極222と第1領域211との間のZ方向における距離D2は、コレクタ電極221と第1領域211との間のZ方向における距離D1よりも短い。
【0056】
n形ベース領域201の中の第1領域211の特定方法は、第1実施形態における第1領域111の特定方法と同様である。すなわち、n形ベース領域201に含まれる元素をZ方向に沿って分析し、炭素及び第1元素のそれぞれの濃度プロファイルを得る。各濃度プロファイルにおいて、炭素濃度が低い領域及び第1元素の濃度が低い領域を特定する。それぞれの濃度が低い領域に対して、炭素濃度が増大し、且つ第1元素濃度が増大している領域が、第1領域211として特定される。
【0057】
半導体装置200は、
図12及び
図13に示すように、素子領域CRと、素子領域CRの周りに設けられた終端領域TRと、を含む。n形ベース領域201及びコレクタ領域203は、素子領域CR及び終端領域TRに設けられている。p形ベース領域202及びエミッタ領域204は、素子領域CRに設けられている。ガードリング領域205は、終端領域TRに設けられている。エミッタ電極222は、素子領域CRの上に設けられている。例えば、第1領域211は、素子領域CRと終端領域TRの両方に設けられている。
【0058】
半導体装置200の動作について説明する。
エミッタ電極222に対してコレクタ電極221に正の電圧が印加された状態で、ゲート電極215に閾値以上の電圧が印加される。これにより、p形半導体部202aにチャネル(反転層)が形成される。電子が、チャネルを通ってエミッタ領域204からn-形半導体部201bに流れ、正孔が、コレクタ領域203からn-形半導体部201bへ流れる。n-形半導体部201bに蓄積されるキャリア密度が増大し、電導度変調が生じる。これにより、n-形半導体部201bの電気抵抗が大きく低下し、半導体装置200がオン状態となる。その後、ゲート電極215に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形半導体部202aにおけるチャネルが消滅し、半導体装置200がオフ状態に切り替わる。半導体装置200がオフ状態に切り替わると、n-形半導体部201bに蓄積されたキャリアは、コレクタ電極221及びエミッタ電極222へ排出される。
【0059】
各構成要素の材料の一例を説明する。
n形ベース領域201、p形ベース領域202、コレクタ領域203、エミッタ領域204、及びガードリング領域205は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。ゲート電極215は、ポリシリコンを含む。ゲート絶縁層215a及び絶縁層217は、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。コレクタ電極221、エミッタ電極222、ゲートパッド223、及びゲート配線223aは、チタン又はアルミニウムなどの金属を含む。
【0060】
第2実施形態の利点を説明する。
半導体装置200がオフ状態に切り替わったとき、n-形半導体部201bに蓄積されたキャリアがコレクタ電極221及びエミッタ電極222へ排出される。このとき、キャリアがより早く排出されるほど、半導体装置200のスイッチング損失を低減できる。第2実施形態によれば、第1実施形態と同様に、局所的に第1元素の濃度が高い第1領域211が設けられる。このため、第2実施形態によれば、半導体装置200のリーク電流を低減しつつ、半導体装置200のスイッチング損失を低減できる。
【0061】
図14~
図17は、第2実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
図14に示す半導体装置200aでは、第1領域211が終端領域TRにのみ設けられている。終端領域TRの第1領域211が設けられた高さ(Z方向における位置)において、素子領域CRでは、n形ベース領域201の一部が設けられている。このため、素子領域CRのn形ベース領域201の当該一部における炭素の濃度は、終端領域TRの第1領域211における炭素の濃度よりも低い。素子領域CRのn形ベース領域201の当該一部における第1元素の濃度は、終端領域TRの第1領域211における第1元素の濃度よりも低い。
【0062】
半導体装置200aがオフ状態に切り替わったとき、終端領域TRに蓄積されたキャリアは、素子領域CR外周のp形ベース領域202へ集まって排出される。このため、素子領域CR外周のp形ベース領域202では、素子領域CR中央のp形ベース領域202と比べて、より大きな電流が流れる。終端領域TRに第1領域211が設けられることで、終端領域TRに蓄積されたキャリアのライフタイムを短縮し、ターンオフ時に、素子領域CR外周のp形ベース領域202へ流れる電流を低減できる。これにより、半導体装置200aが破壊される可能性を低減できる。また、素子領域CRに第1領域211が設けられていないことで、半導体装置200aがオン状態のときのキャリア密度を高め、半導体装置200aのオン抵抗を低減できる。
【0063】
図15に示す半導体装置200bのように、第1領域211は、コレクタ電極221側に位置しても良い。すなわち、コレクタ電極221と第1領域211との間の距離D1が、エミッタ電極222と第1領域211との間の距離D2よりも短い。半導体装置200bによれば、半導体装置200と同様に、スイッチング損失を低減できる。
【0064】
図16に示す半導体装置200cのように、第1領域211は、n形半導体部101aの中に設けられても良い。半導体装置200cがオフ状態のとき、n形半導体部201aは完全には空乏化しない。第1領域211は、空乏層が到達しない位置に設けられている。半導体装置200cによれば、半導体装置200bに比べて、リーク電流をより低減できる。
【0065】
図17に示す半導体装置200dのように、第1領域211に加えて、第2領域212が設けられても良い。第2領域212は、n形ベース領域201の中に設けられている。第2領域212における炭素の濃度は、n形ベース領域201における炭素の濃度よりも高い。第2領域212における第1元素の濃度は、n形ベース領域201における第1元素の濃度よりも高い。第2領域212のZ方向における長さは、第2領域212のX方向における長さよりも短く、第2領域212のY方向における長さよりも短い。
【0066】
第2領域212は、Z方向において、第1領域211から離れている。第1領域211は、コレクタ電極221側に設けられている。第2領域212は、エミッタ電極222側に設けられている。すなわち、コレクタ電極221と第1領域211との間のZ方向における距離D1は、エミッタ電極222と第1領域211との間のZ方向における距離D2よりも短い。コレクタ電極221と第2領域212との間のZ方向における距離D3は、エミッタ電極222と第2領域212との間のZ方向における距離D4よりも長い。
【0067】
第1領域211に加えて、第2領域212が設けられることで、半導体装置200dのスイッチング損失をさらに低減できる。
【0068】
(第3実施形態)
図18は、第3実施形態に係る半導体装置を示す平面図である。
図19は、
図18のA1-A2断面図である。
第3実施形態に係る半導体装置は、RC-IGBTである。
図18及び
図19に示すように、第3実施形態に係る半導体装置300は、n形ベース領域301(第1半導体領域の一例)、p形ベース領域302(第2半導体領域の一例)、コレクタ領域303(第3半導体領域の一例)、エミッタ領域304(第4半導体領域の一例)、カソード領域305(第5半導体領域の一例)、アノード領域306(第6半導体領域の一例)、第1領域311、ゲート電極315、導電部316、絶縁層317、コレクタ電極321、エミッタ電極322、及びゲートパッド323を備える。
【0069】
半導体装置300のコレクタ電極321、エミッタ電極322、ゲートパッド323、及びゲート配線323aの構造は、例えば、半導体装置200のコレクタ電極221、エミッタ電極222、ゲートパッド223、及びゲート配線223aの構造と同様である。また、半導体装置300は、IGBT領域R1及びダイオード領域R2を含む。
図18に示す例では、IGBT領域R1及びダイオード領域R2のそれぞれが、X方向及びY方向において複数設けられている。
【0070】
図19に示すように、IGBT領域R1は、n形ベース領域301の一部、p形ベース領域302、コレクタ領域303、エミッタ領域304、及びゲート電極315を含む。
【0071】
コレクタ領域303は、コレクタ電極321の一部の上に設けられている。n形ベース領域301の一部は、コレクタ領域303の上に設けられている。n形ベース領域301は、n形半導体部301a(第1部分の一例)及びn-形半導体部301b(第2部分の一例)を含んでも良い。n-形半導体部301bは、n形半導体部301aの上に設けられている。n-形半導体部301bにおけるn形不純物濃度は、n形半導体部301aにおけるn形不純物濃度よりも低い。
【0072】
p形ベース領域302は、n形ベース領域301の当該一部の上に設けられている。エミッタ領域304は、p形ベース領域302の上に設けられている。p形ベース領域302は、p形半導体部302a及びp+形半導体部302bを含んでも良い。p+形半導体部302bは、p形半導体部302aの上に設けられ、X方向においてエミッタ領域304と並んでいる。p+形半導体部302bにおけるp形不純物濃度は、p形半導体部302aにおけるp形不純物濃度よりも高い。ゲート電極315は、X方向において、ゲート絶縁層315aを介してp形半導体部302aと対面している。
【0073】
p形ベース領域302、エミッタ領域304、及びゲート電極315のそれぞれは、X方向において複数設けられている。各p形ベース領域302、各エミッタ領域304、及び各ゲート電極315は、ストライプ状に設けられ、Y方向に延びている。ゲート電極315のY方向における端部は、ゲート配線323aと接続されている。
図19に示すように、IGBT領域R1において、一部のゲート電極315が導電部316に置き換えられても良い。その場合、導電部316は、X方向において、絶縁層316aを介してp形半導体部302aと対面する。
【0074】
ダイオード領域R2は、n形ベース領域301の別の一部、カソード領域305、アノード領域306、第1領域311、及び導電部316を含む。
【0075】
カソード領域305は、コレクタ電極321の別の一部の上に設けられている。カソード領域305におけるn形不純物濃度は、n形ベース領域301におけるn形不純物濃度よりも高い。n形ベース領域301の別の一部は、カソード領域305の上に設けられている。アノード領域306は、n形ベース領域301の当該別の一部の上に設けられている。
【0076】
アノード領域306は、p形半導体部306a及びp+形半導体部306bを含んでも良い。p+形半導体部306bは、p形半導体部306aの上に設けられ、X方向においてエミッタ領域304と並んでいる。p+形半導体部306bにおけるp形不純物濃度は、p形半導体部306aにおけるp形不純物濃度よりも高い。導電部316は、X方向において、絶縁層316aを介してp形半導体部306aと対面している。
【0077】
アノード領域306及び導電部316のそれぞれは、X方向において複数設けられている。例えば、各アノード領域306及び各導電部316は、ストライプ状に設けられ、Y方向に延びている。又は、ダイオード領域R2において、導電部316が省略されても良い。その場合、例えば半導体装置100と同様に、n形ベース領域301の上に、1つのアノード領域306が設けられる。
【0078】
エミッタ電極322は、IGBT領域R1とダイオード領域R2の上に設けられている。エミッタ電極322は、p形ベース領域302、エミッタ領域304、アノード領域306、ゲート電極315、及び導電部316の上に位置する。エミッタ電極322は、p形ベース領域302、エミッタ領域304、アノード領域306、及び導電部316と電気的に接続されている。ゲート電極315とエミッタ電極322との間には、絶縁層317が設けられ、ゲート電極315とエミッタ電極322は、互いに電気的に分離されている。
【0079】
第1領域311は、n-形半導体部301bの中に設けられている。第1実施形態に係る半導体装置と同様に、第1領域311における炭素の濃度は、n形ベース領域301における炭素の濃度よりも高い。また、第1領域311における第1元素の濃度は、n形ベース領域301における第1元素の濃度よりも高い。第1領域311は、X-Y面に沿って広がっている。例えば、第1領域311は、素子領域CRと終端領域TRの両方に設けられている。
【0080】
例えば、第1領域311は、エミッタ電極322側に設けられている。すなわち、コレクタ電極321と第1領域311との間の距離D1が、エミッタ電極322と第1領域311との間の距離D2よりも短い。
【0081】
n形ベース領域301の中の第1領域311の特定方法は、第1実施形態における第1領域111の特定方法と同様である。すなわち、n形ベース領域301に含まれる元素をZ方向に沿って分析し、炭素及び第1元素のそれぞれの濃度プロファイルを得る。各濃度プロファイルにおいて、炭素濃度が低い領域及び第1元素の濃度が低い領域を特定する。それぞれの濃度が低い領域に対して、炭素濃度が増大し、且つ第1元素濃度が増大している領域が、第1領域311として特定される。
【0082】
半導体装置300の動作について説明する。
エミッタ電極322に対してコレクタ電極321に正の電圧が印加された状態で、ゲート電極315に閾値以上の電圧が印加される。これにより、p形半導体部302aにチャネル(反転層)が形成される。電子が、チャネルを通ってエミッタ領域304からn-形半導体部301bに流れ、正孔が、コレクタ領域303からn-形半導体部301bへ流れる。n-形半導体部301bに蓄積されるキャリア密度が増大し、電導度変調が生じる。これにより、n-形半導体部301bの電気抵抗が大きく低下し、IGBT領域R1がオン状態となる。その後、ゲート電極315に印加される電圧が閾値よりも低くなると、p形半導体部302aにおけるチャネルが消滅し、IGBT領域R1がオフ状態に切り替わる。
【0083】
IGBT領域R1がオフ状態に切り替わった後、n-形半導体部301bに蓄積されていた電子は、コレクタ領域303を通ってコレクタ電極321へ排出される。正孔は、p形ベース領域302を通ってエミッタ電極322へ排出される。
【0084】
例えば、複数の半導体装置300によって、ブリッジ回路が構成される。1つの半導体装置300がオン状態からオフ状態に切り替わると、ブリッジ回路のインダクタンス成分により、別の半導体装置300のエミッタ電極322に誘導起電力が加わる。これにより、当該別の半導体装置300において、ダイオード領域R2が動作する。アノード領域306からn-形半導体部301bへ正孔が流れ、カソード領域305からn-形半導体部301bへ電子が流れる。ダイオード領域R2は、フリーホイールダイオード(FWD)として機能する。
【0085】
各構成要素の材料の一例を説明する。
n形ベース領域301、p形ベース領域302、コレクタ領域303、エミッタ領域304、カソード領域305、及びアノード領域306は、半導体材料として、シリコン、炭化シリコン、窒化ガリウム、またはガリウムヒ素を含む。p形不純物として、ボロンを用いることができる。ゲート電極315及び導電部316は、ポリシリコンを含む。ゲート絶縁層315a、絶縁層316a、及び絶縁層317は、酸化シリコン又は窒化シリコンなどの絶縁材料を含む。コレクタ電極321、エミッタ電極322、ゲートパッド323、及びゲート配線323aは、チタン又はアルミニウムなどの金属を含む。
【0086】
第3実施形態によれば、半導体装置300のダイオード領域R2に、第1領域311が設けられる。このため、第1実施形態と同様に、ダイオード領域R2の動作時において、オン抵抗の増加を抑えつつ、スイッチング損失を低減できる。
【0087】
第1領域311は、IGBT領域R1にも設けられても良いし、
図19に示すように、ダイオード領域R2にのみ設けられても良い。より好ましくは、第1領域311は、ダイオード領域R2にのみ設けられる。すなわち、第1領域311が設けられた高さにおいて、IGBT領域R1では、n形ベース領域301の一部が設けられている。IGBT領域R1のn形ベース領域301の当該一部における炭素の濃度は、ダイオード領域R2の第1領域311における炭素の濃度よりも低い。IGBT領域R1のn形ベース領域301の当該一部における第1元素の濃度は、ダイオード領域R2の第1領域311における第1元素の濃度よりも低い。
【0088】
図20~
図22は、第3実施形態の変形例に係る半導体装置の一部を示す断面図である。
第3実施形態に係る半導体装置に対して、第1実施形態の各変形例の構造を適用することも可能である。例えば
図20に示す半導体装置300aのように、第1領域311が、コレクタ電極321側に設けられても良い。これにより、ダイオード領域R2を流れるリカバリー電流I
rrが減衰する期間を短縮でき、スイッチング損失を低減できる。
【0089】
図21に示す半導体装置300bのように、第1領域311が、n形半導体部301aの中に設けられても良い。これにより、ダイオード領域R2におけるリーク電流をさらに低減できる。
【0090】
図22に示す半導体装置300cのように、第1領域311に加えて、第2領域312が設けられても良い。これにより、半導体装置300cのスイッチング損失をさらに低減できる。
【0091】
本発明の実施形態は、以下の構成を含む。
(構成1)
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである、前記第1領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
(構成2)
前記第2電極と前記第1領域との間の距離は、前記第1電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、構成1に記載の半導体装置。
(構成3)
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、構成1に記載の半導体装置。
(構成4)
前記第1半導体領域は、第1部分と、前記第1部分の上に設けられた第2部分と、を含み、
前記第2部分におけるn形不純物濃度は、前記第1部分におけるn形不純物濃度よりも低く、
前記第1領域は、前記第1部分中に設けられた、構成3に記載の半導体装置。
(構成5)
前記第1半導体領域中に設けられた第2領域をさらに備え、
前記第2領域における炭素の濃度は、前記第1半導体領域における炭素の前記濃度よりも高く、
前記第2領域における前記第1元素の濃度は、前記第1半導体領域における前記第1元素の前記濃度よりも高く、
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、
前記第2電極と前記第2領域との間の距離は、前記第1電極と前記第2領域との間の距離よりも短い、構成1に記載の半導体装置。
(構成6)
前記第1電極と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
をさらに備えた、構成1~5のいずれか1つに記載の半導体装置。
(構成7)
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第2半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第2半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
(構成8)
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の一部の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第1電極の一部と前記第1半導体領域の前記一部との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
前記第1電極の別の一部と前記第1半導体領域の別の一部との間に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第2導電形の第6半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域、前記第4半導体領域、及び前記第6半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
(構成9)
前記第1元素は白金である、構成1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【0092】
以上で説明した各実施形態によれば、リーク電流又はオン抵抗の増加を抑えつつ、半導体装置のスイッチング損失を低減できる。
【0093】
各実施形態における、各半導体領域の間の不純物濃度の相対的な高低については、例えば、SCM(走査型静電容量顕微鏡)を用いて確認することが可能である。なお、各半導体領域におけるキャリア濃度は、各半導体領域において活性化している不純物濃度と等しいものとみなすことができる。従って、各半導体領域の間のキャリア濃度の相対的な高低についても、SCMを用いて確認することができる。また、各半導体領域における不純物濃度については、例えば、SIMS(二次イオン質量分析法)により測定することが可能である。
【0094】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0095】
100,100a~100d:半導体装置、 101:カソード領域、 101a:n形半導体部、 101b:n-形半導体部、 101x:n-形半導体層、 101y:n-形半導体層、 102:アノード領域、 102a:p形半導体部、 102b:p+形半導体部、 103:コンタクト領域、 103x:n+形半導体層、 104:ガードリング領域、 105:絶縁層、 111:第1領域、 111x:領域、 112:第2領域、 121:カソード電極、 122:アノード電極、 200,200a~200d:半導体装置、 201:n形ベース領域、 201a:n形半導体部、 201b:n-形半導体部、 202:p形ベース領域、 202a:p形半導体部、 202b:p+形半導体部、 203:コレクタ領域、 204:エミッタ領域、 205:ガードリング領域、 211:第1領域、 212:第2領域、 215:ゲート電極、 215a:ゲート絶縁層、 217:絶縁層、 221:コレクタ電極、 222:エミッタ電極、 223:ゲートパッド、 223a:ゲート配線、 300,300a~300c:半導体装置、 301:n形ベース領域、 301a:n形半導体部、 301b:n-形半導体部、 302:p形ベース領域、 302a:p形半導体部、 302b:p+形半導体部、 303:コレクタ領域、 304:エミッタ領域、 305:カソード領域、 306:アノード領域、 306a:p形半導体部、 306b:p+形半導体部、 311:第1領域、 312:第2領域、 315:ゲート電極、 315a:ゲート絶縁層、 316:導電部、 317:絶縁層、 321:コレクタ電極、 322:エミッタ電極、 323:ゲートパッド、 323a:ゲート配線、 CR:素子領域、 D1~D4:距離、 L:層、 R1:IGBT領域、 R2:ダイオード領域、 TR:終端領域
【手続補正書】
【提出日】2024-01-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである、前記第1領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項2】
前記第2電極と前記第1領域との間の距離は、前記第1電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1半導体領域は、第1部分と、前記第1部分の上に設けられた第2部分と、を含み、
前記第2部分におけるn形不純物濃度は、前記第1部分におけるn形不純物濃度よりも低く、
前記第1領域は、前記第1部分中に設けられた、請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1半導体領域中に設けられた第2領域をさらに備え、
前記第2領域における炭素の濃度は、前記第1半導体領域における炭素の前記濃度よりも高く、
前記第2領域における前記第1元素の濃度は、前記第1半導体領域における前記第1元素の前記濃度よりも高く、
前記第1電極と前記第1領域との間の距離は、前記第2電極と前記第1領域との間の距離よりも短い、
前記第2電極と前記第2領域との間の距離は、前記第1電極と前記第2領域との間の距離よりも短い、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記第1電極と前記第1半導体領域との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
をさらに備えた、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項7】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第2半導体領域中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第2半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第2半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項8】
第1電極と、
前記第1電極の上に設けられた第1導電形の第1半導体領域と、
前記第1半導体領域の一部の上に設けられた第2導電形の第2半導体領域と、
前記第1電極の一部と前記第1半導体領域の前記一部との間に設けられた第2導電形の第3半導体領域と、
前記第2半導体領域の上に設けられた第1導電形の第4半導体領域と、
前記第1電極から前記第1半導体領域に向かう第1方向に垂直な第2方向において、前記第2半導体領域とゲート絶縁層を介して対面するゲート電極と、
前記第1電極の別の一部と前記第1半導体領域の別の一部との間に設けられ、前記第1半導体領域よりも高い第1導電形の不純物濃度を有する第1導電形の第5半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の上に設けられた第2導電形の第6半導体領域と、
前記第1半導体領域の前記別の一部の中に設けられた第1領域であって、前記第1領域における炭素の濃度は前記第1半導体領域における炭素の濃度よりも高く、前記第1領域における第1元素の濃度は前記第1半導体領域における前記第1元素の濃度よりも高く、前記第1元素は白金、金、鉄、銅、及びニッケルからなる群より選択された少なくとも1つである、前記第1領域と、
前記第2半導体領域、前記第4半導体領域、及び前記第6半導体領域の上に設けられた第2電極と、
を備えた半導体装置。
【請求項9】
前記第1元素は白金である、請求項1~8のいずれか1つに記載の半導体装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
以下の説明において、n+、n、n-及びp+、pの表記は、各導電形における不純物濃度の相対的な高低を表す。すなわち、n+はnよりもn形の不純物濃度が相対的に高く、n-はnよりもn形の不純物濃度が相対的に低いことを示す。また、p+はpよりもp形の不純物濃度が相対的に高いことを示す。以下で説明する各実施形態について、各半導体領域のp形とn形を反転させて各実施形態を実施してもよい。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
コンタクト領域103は、カソード電極121とアノード電極122との間において、カソード電極121の上に設けられている。コンタクト領域103は、カソード電極121と電気的に接続されている。カソード領域101は、コンタクト領域103の上に設けられている。コンタクト領域103におけるn形不純物濃度は、カソード領域101におけるn形不純物濃度よりも高い。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0025
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0025】
カソード電極121に対してアノード電極122に正の電圧VFが印加されると、カソード領域101及びアノード領域102から構成されるpnダイオードに順方向の電圧が加わる。これにより、カソード領域101からアノード領域102に順方向電流IFが流れる。すなわち、半導体装置100がオン状態となる。このとき、カソード領域101にキャリアが蓄積され、カソード領域101の電気抵抗が低下する。その後、電圧VFが低下し、半導体装置100に逆方向の電圧VRが加わると、カソード領域101に蓄積されたキャリアがカソード電極121及びアノード電極122へ排出される。これにより、カソード領域101からアノード領域102へリカバリー電流Irrが流れる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0030
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0030】
p形半導体部102a及びp
+形半導体部102bの上に金属材料をスパッタリングし、アノード電極122を形成する。
n
+
形半導体層
103xが所定の厚さになるまで、
n
+
形半導体層
103xの裏面を研削する。
図7(b)に示すように、
n
+
形半導体層
103xの裏面に金属材料をスパッタリングし、カソード電極121を形成する。以上により、第1実施形態に係る半導体装置100が製造される。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0037
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0037】
第1元素としては、白金が最も好ましい。ライフタイムキラーとして性能を示す指標として、生成ライフタイムと、低注入レベル時でのライフタイムと、がある。生成ライフタイムが短いほど、電子正孔対が生成され易くなり、リーク電流の原因となりうる。また、低注入ライフタイムが小さいほど、デバイスのスイッチング速度が速くなる。つまり、低注入レベル時でのライフタイムをτsc、低注入ライフタイムをτLLとしたとき、これらの比τsc/τLLが大きいことが望ましい。白金は、高いτsc/τLL値を有する。例えば室温において、白金のτsc/τLL値は、金のτsc/τLL値の100倍以上である。また、白金のτsc/τLL値は、広く使われている電子線照射法よりも高い値を示す。このため、他の第1元素を用いた場合又は電子線照射による方法に比べて、白金は、ライフタイム制御因子として優れた性能を示す。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0064
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0064】
図16に示す半導体装置200cのように、第1領域211は、n形半導体部
201aの中に設けられても良い。半導体装置200cがオフ状態のとき、n形半導体部201aは完全には空乏化しない。第1領域211は、空乏層が到達しない位置に設けられている。半導体装置200cによれば、半導体装置200bに比べて、リーク電流をより低減できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0080
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0080】
例えば、第1領域311は、エミッタ電極322側に設けられている。すなわち、コレクタ電極321と第1領域311との間の距離D1が、エミッタ電極322と第1領域311との間の距離D2よりも長い。