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特開2024-137250走行音と環境音とを考慮して移動経路を探索する管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法
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  • 特開-走行音と環境音とを考慮して移動経路を探索する管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137250
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】走行音と環境音とを考慮して移動経路を探索する管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20240927BHJP
   G01C 21/34 20060101ALI20240927BHJP
   G08G 1/0968 20060101ALI20240927BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20240927BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240927BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20240927BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20240927BHJP
   G16Y 20/10 20200101ALI20240927BHJP
   G16Y 20/20 20200101ALI20240927BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALI20240927BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20240927BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G05D1/02 P
G01C21/34
G08G1/0968 B
G08G1/01 A
G08G1/09 S
G08G1/13
G16Y10/40
G16Y20/10
G16Y20/20
G16Y40/20
G16Y40/35
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048696
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135068
【弁理士】
【氏名又は名称】早原 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】原 彬寛
(72)【発明者】
【氏名】神谷 尚保
(72)【発明者】
【氏名】稗圃 泰彦
【テーマコード(参考)】
2F129
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
2F129AA01
2F129BB03
2F129BB33
2F129BB49
2F129CC03
2F129CC18
2F129CC19
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD39
2F129DD45
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE81
2F129EE84
2F129EE94
2F129FF12
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF65
2F129FF68
2F129FF71
2F129GG02
2F129GG17
2F129HH35
5H181AA20
5H181BB04
5H181CC04
5H181CC11
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181LL09
5H181MB02
5H301AA01
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG07
5H301JJ01
5H301KK03
5H301KK07
5H301QQ06
(57)【要約】
【課題】走行音ができる限り人の不快とならないように移動ロボットを移動させることができる管理装置等を提供する。
【解決手段】移動ロボットが走行する移動経路を探索する管理装置であって、経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶手段と、経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶手段と、走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する経路区間選択手段と、選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する移動経路探索手段とを有する。差分指数は、当該経路区間の周囲の人における不快指数を意味する。また、環境音指数記憶手段は、各時間帯における環境音指数を記憶し、経路区間選択手段も、当該時間帯について経路区間を選択する。
【選択図】図6

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動ロボットが走行する移動経路を探索する管理装置であって、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶手段と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する経路区間選択手段と、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する移動経路探索手段と
を有することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
経路区間選択手段における差分指数を、当該経路区間の周囲の人における不快指数とする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
環境音指数記憶手段は、各時間帯における当該経路区間の環境音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、当該時間帯について、走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
経路区間毎に、各時間帯における周囲の人の在圏密度を記憶する在圏密度記憶手段を
更に有し、
経路区間選択手段は、在圏密度が高いほど小さい指数を、在圏密度が低いほど大きい指数を、当該不快指数から差し引いた値が第2の所定閾値以下となる経路区間を選択する
ことを特徴とする請求項3に記載の管理装置。
【請求項5】
走行音指数記憶手段は、移動ロボットの重量区分毎に、各経路区間における走行音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、移動ロボットの重量区分に応じた走行音指数を用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項6】
経路区間選択手段によって当該差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択できないことによって、移動経路探索手段が経路区間を結べず移動経路を探索できない場合、移動ロボットの移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段を
更に有することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項7】
移動経路探索手段は、走行対象の移動ロボットの出発地点から目的地点までの到着所望時間を登録しており、
移動経路探索手段によって探索された複数の移動経路の中で、到着所望時間内に到着できる移動経路に絞り込む
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項8】
走行音指数記憶手段は、高周波走行音指数及び低周波走行音指数を記憶し、
環境音指数記憶手段は、高周波環境音指数及び低周波環境音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、
高周波走行音指数と高周波環境音指数との第1の差分値と、
高周波走行音指数と低周波環境音指数との第2の差分値と、
低周波走行音指数と高周波環境音指数との第3の差分値と、
低周波走行音指数と低周波環境音指数との第4の差分値と
の中で、最も大きい差分値を、当該差分指数とする
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項9】
移動ロボットにマイクが搭載されており、
走行音指数記憶手段の走行音指数は、経路区間を過去に走行した移動ロボットのマイクによって収音された走行音の指数であり、
経路区間に配置された設備にマイクが搭載されており、
環境音指数記憶手段の環境音指数は、経路区間における設備のマイクによって収音された環境音の指数である
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項10】
走行音指数は、移動ロボット自体の駆動音と、当該移動ロボットが路面を走行する際に生じる衝撃音とを含む走行音の指数であり、
走行音指数及び環境音指数は、デシベル単位で表現された平均値である
ことを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項11】
移動ロボットであって、
走行音指数を取得するマイクと、
環境音指数を取得する環境音指数取得手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段と
を有することを特徴とする移動ロボット。
【請求項12】
移動ロボットが走行する移動経路を探索するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶手段と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する経路区間選択手段と、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する移動経路探索手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
移動ロボットに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
走行音指数を取得するマイクと、
環境音指数を取得する環境音指数取得手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする移動ロボットのプログラム。
【請求項14】
移動ロボットが走行する移動経路を探索する装置の移動経路探索方法であって、
装置は、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶部と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶部と
を有し、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する第1のステップと、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する第2のステップと
を実行することを特徴とする装置の移動経路探索方法。
【請求項15】
移動ロボットの移動速度制御方法であって、
移動ロボットが、
マイクを用いて走行音指数を取得すると共に、走行中の経路区間における環境音指数を取得する第1のステップと、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する第2のステップと
を実行することを特徴とする移動速度制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、移動体の移動経路を探索する技術に関する。移動体としては、自走可能な移動ロボットを想定する。
【背景技術】
【0002】
近年、住居やマンションなど、人が居住地域の周辺を走行する移動ロボットの需要が高まっている。移動ロボットは、昼夜を問わず走行することができ、ユーザへの配送サービスの利便性を高めることができる。
【0003】
従来、ロボットにおけるタスクの作業効率と騒音低減とを両立させる制御装置の技術がある(例えば特許文献1参照)。この技術によれば、制御装置は、施設内で移動するロボットに対して、所定区域に存在するユーザの検出情報に基づいて、最大動作速度以下で走行するべく制御する。
【0004】
また、被駆動部が駆動部で駆動する機器に対して、耳障りな動作音(モータ音やギヤの噛み合い音など)を防止する制御装置の技術もある(例えば特許文献2参照)。この技術によれば、制御装置は、その機器の周囲の環境音の音量に応じて、動作音の音量が抑制されるように、駆動部を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-102061号公報
【特許文献2】特開2019-166272号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「環境音の快-不快評価と音圧の関係」、[online]、[令和5年3月21日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/49/4/49_KJ00001456635/_article/-char/ja/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
移動ロボットが人の居住地域の周辺を移動する場合、その走行音が、人における不快音となるという課題が生じてきた。
路面には段差や凸凹も多く、移動ロボットがそれらを乗り越える際に、衝撃音が発生する。特に人の居住地域では、例えばドレーン(電線やエアコンホースのカバー)は敷居ブロックも多い。また、積載荷物も含む移動ロボットの重量が重くなるほど、その衝撃音は大きくなる。更に、移動ロボットの走行音には、自らの駆動音も重なることとなる。
このような移動ロボットの走行音は、深夜の時間帯では人に対する不快音となるだけでなく、住民トラブルの原因にもなりかねない。
一方で、移動ロボットとして、路面や通路の凸凹状態によって生じる衝撃音や、自らの駆動音を、抑止することは難しい。
【0008】
そこで、本発明は、走行音ができる限り人の不快とならないように移動ロボットを移動させることができる管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、移動ロボットが走行する移動経路を探索する管理装置であって、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶手段と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する経路区間選択手段と、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する移動経路探索手段と
を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
経路区間選択手段における差分指数を、当該経路区間の周囲の人における不快指数とする
ことも好ましい。
【0011】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
環境音指数記憶手段は、各時間帯における当該経路区間の環境音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、当該時間帯について、走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する
ことも好ましい。
【0012】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
経路区間毎に、各時間帯における周囲の人の在圏密度を記憶する在圏密度記憶手段を
更に有し、
経路区間選択手段は、在圏密度が高いほど小さい指数を、在圏密度が低いほど大きい指数を、当該不快指数から差し引いた値が第2の所定閾値以下となる経路区間を選択する
ことも好ましい。
【0013】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
走行音指数記憶手段は、移動ロボットの重量区分毎に、各経路区間における走行音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、移動ロボットの重量区分に応じた走行音指数を用いる
ことも好ましい。
【0014】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
経路区間選択手段によって当該差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択できないことによって、移動経路探索手段が経路区間を結べず移動経路を探索できない場合、移動ロボットの移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段を
更に有することも好ましい。
【0015】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
移動経路探索手段は、走行対象の移動ロボットの出発地点から目的地点までの到着所望時間を登録しており、
移動経路探索手段によって探索された複数の移動経路の中で、到着所望時間内に到着できる移動経路に絞り込む
ことも好ましい。
【0016】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
走行音指数記憶手段は、高周波走行音指数及び低周波走行音指数を記憶し、
環境音指数記憶手段は、高周波環境音指数及び低周波環境音指数を記憶し、
経路区間選択手段は、
高周波走行音指数と高周波環境音指数との第1の差分値と、
高周波走行音指数と低周波環境音指数との第2の差分値と、
低周波走行音指数と高周波環境音指数との第3の差分値と、
低周波走行音指数と低周波環境音指数との第4の差分値と
の中で、最も大きい差分値を、当該差分指数とする
ことも好ましい。
【0017】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
移動ロボットにマイクが搭載されており、
走行音指数記憶手段の走行音指数は、経路区間を過去に走行した移動ロボットのマイクによって収音された走行音の指数であり、
経路区間に配置された設備にマイクが搭載されており、
環境音指数記憶手段の環境音指数は、経路区間における設備のマイクによって収音された環境音の指数である
ことも好ましい。
【0018】
本発明の管理装置における他の実施形態によれば、
走行音指数は、移動ロボット自体の駆動音と、当該移動ロボットが路面を走行する際に生じる衝撃音とを含む走行音の指数であり、
走行音指数及び環境音指数は、デシベル単位で表現された平均値である
ことも好ましい。
【0019】
本発明によれば、移動ロボットであって、
走行音指数を取得するマイクと、
環境音指数を取得する環境音指数取得手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段と
を有することを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、移動ロボットが走行する移動経路を探索するようにコンピュータを機能させるプログラムであって、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶手段と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する経路区間選択手段と、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する移動経路探索手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、移動ロボットに搭載されたコンピュータを機能させるプログラムであって、
走行音指数を取得するマイクと、
環境音指数を取得する環境音指数取得手段と、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する移動速度制御手段と
してコンピュータを機能させることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、移動ロボットが走行する移動経路を探索する装置の移動経路探索方法であって、
装置は、
経路区間毎に、当該移動ロボットの走行音指数を記憶する走行音指数記憶部と、
経路区間毎に、当該経路区間の環境音指数を記憶する環境音指数記憶部と
を有し、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する第1のステップと、
選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【0023】
本発明によれば、移動ロボットの移動速度制御方法であって、
移動ロボットが、
マイクを用いて走行音指数を取得すると共に、走行中の経路区間における環境音指数を取得する第1のステップと、
走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する第2のステップと
を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0024】
本発明の管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法によれば、走行音ができる限り人の不快とならないように移動ロボットを移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明におけるシステム構成図である。
図2】本発明における管理装置の機能構成図である。
図3】本発明における管理装置の各記憶部の説明図である。
図4】本発明における差分指数の例である。
図5】本発明における管理装置の移動経路探索部のフローチャートである。
図6】本発明によって探索した移動経路の例である。
図7】本発明における移動ロボットの機能構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0027】
図1は、本発明におけるシステム構成図である。
【0028】
図1のシステムによれば、管理装置1と、移動ロボット2と、スマートポール(SmartPole)3と、携帯端末4と、ユーザ端末5とが、ネットワークを介して通信する。
【0029】
<管理装置1>
管理装置1は、ユーザ端末5から移動ロボット2の移動要求を受信し、移動ロボット2が走行する移動経路を探索する。このとき、移動経路は、できる限り走行音が人の不快音とならないような経路区間を経由するように探索される。探索された移動経路は、移動ロボット2へ指示される。
また、管理装置1は、移動ロボット2から「走行音(又は走行音指数)」を受信すると共に、スマートポール3から「環境音(又は環境音指数)」を受信する。
更に、管理装置1は、ネットワークを介して携帯端末4から位置情報を受信し、各経路区間おける携帯端末4の滞在数も収集することができる。
【0030】
<移動ロボット2>
移動ロボット2は、自律走行可能な移動体である(スマートモビリティ)。移動ロボット2は、管理装置1から指示された移動経路を走行する。配送サービスの場合、移動ロボット2は、ユーザへ商品役務を提供するべく、目的地まで移動する。
移動経路は、屋外の一般道路や歩行者道路であってもよいし、屋内の通路であってもよい。本発明の移動ロボット2は、住居やマンションのような地域の周辺など、人の居住地域を走行する場合に適する。移動ロボット2は、走行音ができる限り人の不快とならないように移動することができる。
【0031】
<スマートポール3>
スマートポール3は、一般道路や歩行道路及び通路のような経路区間に配置された設備である。
「スマートポール」とは、例えば街灯のような電柱であって、公衆無線設備や各種センサ、防犯カメラ、サイネージなどが設置された多機能ポールである。
スマートポール3には、更にマイクが搭載されており、環境音(又は環境音指数)を収音することができる。その環境音(又は環境音指数)は、管理装置1へ送信される。
【0032】
<携帯端末4>
携帯端末4は、経路周辺に位置する不特定多数の人によって所持されたものである。例えば人が外出時に持ち歩くスマートフォンであり、移動ロボット2のサービスとは何ら関係ないものである。携帯端末4は、特定の通信キャリアと契約されており、位置情報の取得の合意が取れている全ての加入者を対象としていることが好ましい。
【0033】
<ユーザ端末5>
ユーザ端末5は、移動ロボット2の利用者によって操作される端末である。例えばスマートフォンやタブレット端末であってもよい。
ユーザ端末5は、利用者に、配送サービスにおける商品役務を発注するべく操作させる。このとき、利用者に、商品や役務設備を積載した移動ロボット2の目的地も入力させる。これら情報は、移動ロボット2の移動要求として、管理装置1へ送信される。
【0034】
図2は、本発明における管理装置の機能構成図である。
【0035】
管理装置1は、移動ロボット2の移動経路を探索するサーバであって、例えばクラウド上に存在するものであってもよい。管理装置1は、様々な情報によって移動ロボット2の運用を監視し、その移動経路を制御する(ナビゲーション)。
勿論、管理装置1は、単体の汎用コンピュータ装置として、専用のハードウェア装置として、分散コンピュータとして、又は、Webサイトとして、構成されたものであってもよい。
【0036】
図2によれば、管理装置1は、地図情報記憶部100と、走行音指数記憶部101と、環境音指数記憶部102と、在圏密度記憶部103とを有する。
【0037】
[地図情報記憶部100]
地図情報記憶部100は、移動ロボットが走行可能な地域の地図情報を記憶する。地図情報は、地図上の経路を、例えば交差点等をノードとして「経路区間」に分割して記憶する。
【0038】
図3は、本発明における管理装置の各記憶部の説明図である。
【0039】
[走行音指数記憶部101]
走行音指数記憶部101は、経路区間毎に、移動ロボット2の「走行音指数」を記憶する。
走行音指数は、移動ロボット2が路面の段差等を乗り越える際に生じる衝撃音と、移動ロボット2自体の駆動音とを含む走行音の指数である。走行音指数は、例えばデシベル(dB又はdBA)単位で表現される。
【0040】
走行音指数は、その経路区間を、過去に走行した移動ロボット2のマイクによって収音された走行音に基づくものである。例えば、過去に収音された複数の走行音指数における統計値であってもよい。統計値としては、最大値、平均値、中央値などを用いることができる。
【0041】
図3によれば、走行音指数記憶部101は、移動ロボット2の重量区分毎に、各経路区間における走行音指数を記憶したものであってもよい。積載荷物も合わせた移動ロボット2の重量が重くなるほど、走行時の衝撃音も大きくなり、走行音指数も高くなる。
【0042】
また、走行音指数記憶部101は、移動ロボット2の種別毎に、各経路区間における走行音指数を記憶することも好ましい。移動ロボット2の種別によって、自らの駆動部の駆動音も異なるためである。
【0043】
[環境音指数記憶部102]
環境音指数記憶部102は、経路区間毎に、その経路区間の「環境音指数」を記憶する。
環境音指数も、例えばデシベル(dB又はdBA)単位で表現される。
【0044】
環境音指数は、例えばその経路区間に設置されたスマートポール3のマイクによって収音された環境音に基づくものであってもよい。例えば、過去に収音された複数の環境音指数における統計値であってもよい。統計値としては、最大値、平均値、中央値などを用いることができる。
また、環境音指数は、マイクを搭載した移動ロボット2がその経路区間へ移動し、停車した上で、環境音のみを収音するものであってもよい。
【0045】
環境音指数記憶部102は、各時間帯における当該経路区間の環境音指数を記憶したものであってもよい。住居やマンションのような居住地域では、時間帯に応じて、特に昼と夜とで、環境音もかなり異なるためである。
【0046】
[在圏密度記憶部103]
在圏密度記憶部103は、経路区間毎に、各時間帯における周囲の人の在圏密度(人口密度)を記憶する。
在圏密度記憶部103は、多数の携帯端末4の位置情報の履歴から、時間帯毎に、その経路区間周辺の在圏密度を推計する。
【0047】
在圏密度記憶部103は、多数の携帯端末4の位置情報と、地図情報記憶部100に記憶された地図情報とを比較して、マップマッチングを実行するものであってもよい。これによって、経路区間毎に、その周辺に位置する携帯端末4の数から、人口密度を推計することができる。マップマッチングは、カーナビゲーションシステムでも利用されており、位置情報と地図情報を用いて、例えば経路区間上になるように補正する処理である。
【0048】
また、在圏密度記憶部103は、人口密度を、月や曜日、時間帯などで別々に推計することも好ましい。同じエリアであっても、時間帯等によって大きく人口密度が異なるためである。
在圏密度記憶部103は、例えば通信キャリアが提供する人口統計情報のサイトであってもよい。携帯電話ネットワークを用いて、例えば1時間毎に、人口統計が開示されている。
【0049】
更に、在圏密度記憶部103は、携帯端末4以外の他の実施形態によって、人口密度を推計するものであってもよい。例えば移動ロボット2によって撮影された画像から、人の画像を認識することによって、人口密度を推計するものであってもよい。
【0050】
図2によれば、管理装置1は、経路区間選択部11と、移動経路探索部12と、移動速度制御部13と、移動経路配信部14とを有する。これら機能構成部は、管理装置に搭載されたコンピュータを機能させるプログラムを実行することによって実現される。また、これら機能構成部の処理の流れは、移動ロボットの移動経路探索方法としても理解できる。
【0051】
[経路区間選択部11]
経路区間選択部11は、走行音指数と環境音指数との「差分指数」が、第1の所定閾値以下となる経路区間を選択する。この差分指数は、その経路区間の周囲の人における「不快指数」を意味する。
差分指数(不快指数)=走行音指数-環境音指数
差分指数>第1の所定閾値以下となる経路区間のみが選択される。
これによって、移動ロボット2の移動経路の探索の際に、第1の所定閾値以上の不快指数となる経路区間を選択しないようにすることができる。
走行音に対して人が不快と思うか否かは、環境音との相対的なものであると考える。即ち、環境音が大きい経路区間では、走行音が大きくても、人が不快と思う場合は少ない、と考える。一方で、環境音が小さい経路区間では、走行音が同じであっても、人が不快と思う場合が多いと、考える。
【0052】
ここで、環境音指数記憶部102が、各時間帯における各経路区間の環境音指数を記憶している場合、経路区間選択部11は、その「時間帯」について、走行音指数と環境音指数との差分指数が、第1の所定閾値以下となる経路区間を選択するようにすることもできる。
【0053】
また、走行音指数記憶部101が、移動ロボットの重量区分に応じた走行音指数を記憶している場合、経路区間選択部11は、その「重力」応じた走行音指数と環境音指数との差分指数が、第1の所定閾値以下となる経路区間を選択するようにする。
【0054】
他の実施形態として、経路区間選択部11は、在圏密度が高いほど小さい指数を、在圏密度が低いほど大きい指数を、当該不快指数から差し引いた値が第2の所定閾値以下となる経路区間を選択するものであってもよい。
差分指数(不快指数)=走行音指数-環境音指数-(α/在圏密度)
α:係数
これは、経路区間周辺の在圏密度が低い(人が少ない)ほど、走行音が多少大きくても許容されると想定している。一方で、経路区間周辺の在圏密度が高い(人が多い)ほど、走行音が許容されにくいと想定する。
【0055】
図4は、本発明における差分指数の例である。
【0056】
前述の実施形態は、走行音指数及び環境音指数との差分指数を、人の不快指数として、経路区間を選択するものである。
これに対し、音のいずれの周波数成分について人が不快と思うか否かについて、年齢や性別など属性による個人差がある。例えば若年齢層ほど、高周波音に敏感になりやすく、高年齢者ほど、低周波音を不快に感じやすくなる場合がある。そのために、走行音及び環境音における高周波数帯と低周波数帯とそれぞれの音指数の組み合わせから、指数の差分値を導出する。そして、最も大きい差分値を、人の不快指数である差分指数とする。これによって、人の属性を問わない不快指数を導出する。
【0057】
走行音指数記憶部101は、高周波走行音指数及び低周波走行音指数を記憶する。
環境音指数記憶部102も、高周波環境音指数及び低周波環境音指数を記憶する。
高周波数帯及び低周波数帯は、例えば人が不快に思うこと想定される任意の周波数帯に設定する(例えば非特許文献1参照)。日常生活で人が騒音と感じる周波数としては、300Hz~3KHzが重要となる。
その上で、経路区間選択部11は、以下の4つの差分値を算出する。
第1の差分値=高周波走行音指数-高周波環境音指数
第2の差分値=高周波走行音指数-低周波環境音指数
第3の差分値=低周波走行音指数-高周波環境音指数
第4の差分値=低周波走行音指数-低周波環境音指数
これらの中で、最も大きい差分値を、当該差分指数とする。尚、第2の差分値及び第3の差分値については、高周波数帯又は低周波数帯の一方に重みを付加して差分を算出する、ものであってもよい。
【0058】
[移動経路探索部12]
移動経路探索部12は、選択された経路区間を結ぶ移動経路を探索する。これによって、移動ロボットを、走行音ができる限り人の不快とならないような移動経路で移動させることができる。
移動経路探索部12は、移動ロボット2における出発地から目的地までの移動経路を、例えばダイクストラ法を用いて探索するものであってもよい。勿論、例えばA*アルゴリズムのような他のアルゴリズムを用いて、移動経路を探索するものであってもよい。
具体的には、移動経路探索部12は、出発地から目的地へ向けて、不快指数が第1の所定閾値以下となる1つ以上の経路区間を順次つないでいく。
【0059】
移動経路探索部12は、移動ロボット2の走行速度に応じて、経路区間毎に走行可能時間を設定しておくことも好ましい。走行速度は、移動ロボット2の種別によって異なるために、経路区間の走行可能時間も異なる。このとき、移動ロボット2の走行速度は同じであっても、経路区間における路面の走り易さによっては、走行可能時間が異なる場合もある。
また、移動ロボット2の積載荷物の重量に応じて、経路区間毎に走行可能時間も異なる。
そして、移動経路毎に、複数の経路区間の走行可能時間を積算していく。複数の経路区間を結ぶ複数の移動経路の中で、走行可能時間の合計が最小となる移動経路に決定する。
【0060】
また、移動経路探索部12は、移動ロボット2の出発地点から目的地点までの到着所望時間を登録したものであってもよい。移動経路探索部12は、探索された複数の移動経路の中で、到着所望時間内に到着できる移動経路に絞り込む。
【0061】
更に、移動経路探索部12は、経路区間選択部11によって当該差分指数が第1の所定閾値以下となる経路区間を選択できないことによって、経路区間を結べず、移動経路を探索できない場合がある。
その場合、移動経路探索部12は、移動速度制御部13へ、移動ロボット2の移動速度を制御するべく指示する。
【0062】
[移動速度制御部13]
移動速度制御部13は、移動経路探索部12からの指示によって、移動ロボット2の移動速度を所定条件で低下させるべく制御する。
【0063】
図5は、本発明における管理装置の移動経路探索部のフローチャートである。
【0064】
経路区間選択部11は、経路区間毎に、不快指数(差分指数)を算出する。
その上で、管理装置1の移動経路探索部12は、以下のように処理を実行する。
(S121)不快指数が第1の所定閾値以下となる経路区間から、その移動ロボット2の目的地まで、移動経路を結ぶことができるか否かを判定する。
(S122)S121によって偽(NO)と判定された場合、不快指数が第1の所定閾値よりも高い経路区間で、移動ロボット2の移動速度を低下させる。そのために、移動経路探索部12は、移動速度制御部13へ指示する。これによって、移動ロボット2が路面の段差や凸凹を乗り越える際に生じる衝撃音を、低下させることができる。
(S123)次に、移動ロボット2が到着所望時間内に到着可能か否かを判定する。真(YES)と判定された場合、その移動経路に決定し、移動経路配信部14へ指示する。一方で、偽(NO)と判定された場合、「経路無し」と判定する。移動ロボット2が、任意の経路区間で不快音が生じさせながら走行することは、居住地域の人にとっては迷惑となるためである。
【0065】
図6は、本発明によって探索した移動経路の例である。
【0066】
図6(a)によれば、最短距離となる移動経路が表されている。
第1の所定閾値:12dB
経路区間A-C:走行音指数52dB
環境音指数30dB
不快指数=52dB-30dB=22dB
経路区間C-F:走行音指数42dB
環境音指数31dB
不快指数=42dB-31dB=11dB
ここで、経路区間選択部11は、経路区間A-Cについて、不快指数が22dBであり、第1の所定閾値12dBよりも大きいので、経路区間として選択しない。
【0067】
図6(b)によれば、最短距離となる移動経路が表されている。
経路区間A-B:走行音指数43dB
環境音指数35dB
不快指数=43dB-35dB=8dB
経路区間B-C:走行音指数38dB
環境音指数30dB
不快指数=38dB-30dB=8dB
ここで、経路区間選択部11は、経路区間A-B及びB-Cについて、不快指数が第1の所定閾値よりも小さいので、経路区間として選択することができる。
【0068】
これによって、以下のように移動経路が選択される。
移動経路A-F:経路区間A-B、B-C、C-F
【0069】
[移動経路配信部14]
移動経路配信部14は、移動経路探索部12によって探索された移動経路を、移動ロボット2へ送信する。
【0070】
図7は、本発明における移動ロボットの機能構成図である。
【0071】
図7によれば、移動ロボット2は、無線通信部20と、マイク21と、環境音指数取得部22と、移動速度制御部23とを有する。
【0072】
無線通信部20は、基地局やアクセスポイントと無線で通信するための無線通信モジュールである。これは、RAN(Radio Access Network)やインターネットを介して、管理装置1と通信する。
マイク21は、移動ロボット2自らの走行時に、走行音を収音する。その走行音から走行音指数を取得する。走行音指数は、移動速度制御部23へ出力される。また、走行音指数は、管理装置1へ送信し、走行音指数記憶部101に記憶される走行音指数の要素となり得る。
環境音指数取得部22は、無線通信部20を介して、走行中の経路区間における環境音指数を取得する。環境音は、その経路区間に設置された設備(例えばスマートポール)によって収音されたものであってもよい。
移動速度制御部23は、走行音指数と環境音指数との差分指数が第1の所定閾値よりも大きい場合、移動速度を所定条件で低下させるべく制御する。
【0073】
移動ロボット2は、屋外であれば、例えばGPS(Global Positioning System)によって測位するものであってもよい。また、屋内であれば、例えばIMES(Indoor MEssaging System)によって絶対位置を測位するものであってもよい。現在位置を測位することによって、マップマッチングによって、現在走行中の経路区間を特定することができる。
【0074】
以上、詳細に説明したように、本発明の管理装置、移動ロボット、プログラム及び方法によれば、走行音ができる限り人の不快とならないように移動ロボットを移動させることができる。
【0075】
尚、これにより、例えば「走行音ができる限り人の不快とならないように移動ロボットを移動させることができる」ことから、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【0076】
前述した本発明の種々の実施形態について、本発明の技術思想及び見地の範囲の種々の変更、修正及び省略は、当業者によれば容易に行うことができる。前述の説明はあくまで例であって、何ら制約しようとするものではない。本発明は、特許請求の範囲及びその均等物として限定するものにのみ制約される。
【符号の説明】
【0077】
1 管理装置
100 地図情報記憶部
101 走行音指数記憶部
102 環境音指数記憶部
103 在圏密度記憶部
11 経路区間選択部
12 移動経路探索部
13 移動速度制御部
14 移動経路配信部
2 移動ロボット
20 無線通信部
21 マイク
22 環境音指数取得部
23 移動速度制御部
3 スマートポール
4 携帯端末
5 ユーザ端末
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7