(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137255
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/494 20060101AFI20240927BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20240927BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61F13/494 200
A61F13/49 311Z
A61F13/51
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048702
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】葭葉 恵
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA05
3B200BB03
3B200BB09
3B200BB11
3B200CA05
3B200CA06
3B200DA01
(57)【要約】
【課題】吸収性物品において、背側漏れ防止シートが、着用者の肌に貼りつくのを防止又は抑制し、かつ吸収体に貼りつくのを防止又は抑制する。
【解決手段】使い捨ておむつ100(吸収性物品)は、股部120と背側部130とが長さ方向Lに連なって形成され、厚さ方向Dに、肌に近い側から順に吸収体30とバックシート20とが積層され、背側部130から股部120に架けて、吸収体30の背側部130の側の端部の内面側から覆うようにポケットSを形成する背側漏れ防止シート70を備え、背側漏れ防止シート70は、着用者の肌に近い側に配置された、開孔不織布の第1シート70A(肌側シート)と着用者の肌から遠い側に配置された、防漏性の高い特性を有する第2シート70B(吸収体側シート)と、が積層して形成され、背側漏れ防止シート70は、厚さ方向Dの凹凸形状(凹部70Dと凸部70C)が形成されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腹側部と股部と背側部とが長さ方向に連なって形成され、厚さ方向に、着用者の肌に近い側から順に吸収体とバックシートとが積層され、前記背側部から前記股部に架けて、又は背側部において、前記吸収体の前記背側部の側の端部を前記厚さ方向の内面側から覆うようにポケットを形成する背側漏れ防止シートを備え、
前記背側漏れ防止シートは、前記厚さ方向において前記着用者の肌に近い側に配置された、開孔不織布の肌側シートと、前記着用者の肌から遠い側に配置された、防漏性の高い特性を有する吸収体側シートとが積層して形成され、
前記背側漏れ防止シートは、前記厚さ方向の凹凸形状が形成されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記背側部に、前記長さ方向に直交する幅方向に沿って延びた伸縮部材が配置され、
前記厚さ方向の凹凸形状は、前記背側漏れ防止シートの、前記伸縮部材が配置されていない範囲の部分に形成されている、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記肌側シートは、エアスルー不織布である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体側シートは、撥水性の高いスパンボンド不織布又は撥水性の高いSMS不織布である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記肌側シートと前記吸収体側シートとは、構造的に結合している、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記腹側部から前記股部に架けて、又は腹側部において、前記吸収体の前記腹側部の側の端部を前記厚さ方向の内面側から覆うようにポケットを形成する腹側漏れ防止シートを備え、
前記腹側漏れ防止シートは、前記厚さ方向において前記着用者の肌に近い側に配置された、開孔不織布の肌側シートと、前記着用者の肌から遠い側に配置された、防漏性の高い特性を有する吸収体側シートとが積層して形成され、
前記腹側漏れ防止シートは、前記厚さ方向の凹凸形状が形成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記腹側部に、前記長さ方向に直交する幅方向に沿って延びた伸縮部材が配置され、
前記腹側漏れ防止シートの前記厚さ方向の凹凸形状は、前記腹側漏れ防止シートの、前記伸縮部材が配置されていない範囲の部分に形成されている、請求項6に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるパンツ型の使い捨ておむつには、背側漏れ防止シートを備えているものがある。背側漏れ防止シートは、おむつに排泄された排泄物が、背側の胴回り開口から漏れるのを防止する目的で設けられている。
【0003】
背側漏れ防止シートは、おむつの内面側すなわち着用者の肌に接する面側(肌面側)のうち、背側における胴回り開口からおむつの長さ方向の股部側に向けた所定の範囲において、吸収体の端部を厚さ方向の内面側から覆うように配置されている。
【0004】
そして、背側漏れ防止シートは、股部側の領域は吸収体や外装シートに接合されず、胴回り開口側の部分が外装シートに接合されることで、背側漏れ防止シートと外装シートとでポケット状の空間を形成し、背側の胴回り開口に向かって流れる排泄物を、このポケットに導き、背側の胴回り開口から外部に漏れるのを防止する。(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第7175358号公報
【特許文献2】特開2013-75106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、おむつは、胴回りのうち胴回り開口に近い範囲に、着用者の胴回りにフィットさせるための伸縮部材が配置されており、この伸縮部材の伸縮力によって、背側漏れ防止シートの、胴回り開口に近い範囲には、しわが形成される。しかし、背側漏れ防止シートの、胴回りのうち胴回り開口よりも下方の範囲にはしわが形成されない。
【0007】
このため、背側漏れ防止シートの、しわが形成されない範囲は、平坦になって、着用者の身体に貼りつき易い。そして、このような背側漏れ防止シートの貼りつきは、着用者の、肌触りの悪化、着用感の低下を招く。
【0008】
また、背側漏れ防止シートの平坦になった部分は、吸収体にも貼りつき易く、吸収体に貼りついたままでは、上述したポケットが形成されず、漏れを防止する機能(防漏効果)を発揮することができない。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みなされ、背側漏れ防止シートが、着用者の肌に貼りつくのを防止又は抑制し、かつ吸収体に若しくはトップシートを備えたものではトップシートに貼りつくのを防止又は抑制することができる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、腹側部と股部と背側部とが長さ方向に連なって形成され、厚さ方向に、着用者の肌に近い側から順に吸収体とバックシートとが積層され、前記背側部から前記股部に架けて、又は背側部において、前記吸収体の前記背側部の側の端部を前記厚さ方向の内面側から覆うようにポケットを形成する背側漏れ防止シートを備え、前記背側漏れ防止シートは、前記厚さ方向において前記着用者の肌に近い側に配置された、開孔不織布の肌側シートと、前記着用者の肌から遠い側に配置された、防漏性の高い特性を有する吸収体側シートとが積層して形成され、前記背側漏れ防止シートは、前記厚さ方向の凹凸形状が形成されている、吸収性物品である。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る吸収性物品は、背側漏れ防止シートが、着用者の肌に貼りつくのを防止又は抑制し、かつ吸収体に貼りつくのを防止又は抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】パンツ型使い捨ておむつの腹側部と背側部とを切り離して長さ方向に展開した状態を示す平面図である。
【
図2】
図1における股部の背側部に近い部分から背側部に架けて、長さ方向に沿って延びたA-A線に沿った面による厚さ方向の断面を示す断面図である。
【
図3】
図1,2に示した背側漏れ防止シートの幅方向に沿って延びた面による厚さ方向の断面を示す断面図である。
【
図4】第1シートと第2シートとの構造的な結合を形成する工程の一例を示す図である。
【
図5】背側漏れ防止シートに形成された凹凸形状の分布として、複数の凹部と複数の凸部とが分散して形成されたものを示す模式図である。
【
図6】背側漏れ防止シートに形成された凹凸形状の分布として、凸部又は凹部が、幅方向及び長さ方向に繋がって連続した形状で形成されたものを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る吸収性物品の実施形態は、以下の通り、図面を参照して説明される。
【0014】
<全体構成>
図1はパンツ型使い捨ておむつ100の腹側部110と背側部130とを切り離して長さ方向Lに展開した状態を示す平面図、
図2は
図1における股部120の背側部130に近い部分から背側部130に架けて、長さ方向Lに沿って延びたA-A線に沿った面による厚さ方向Dの断面を示す断面図、
図3は1,2に示した背側漏れ防止シート70の幅方向Wに沿って延びた面による厚さ方向Dの断面を示す断面図である。
【0015】
図1に示したパンツ型使い捨ておむつ100(以下、おむつ100という。)は、本発明に係る吸収性物品の一例である。本実施形態は、本発明に係る吸収性物品としてパンツ型使い捨ておむつ100を適用した例であるが、本発明に係る吸収性物品は、パンツ型使い捨ておむつ100に限定されず、いわゆるテープ式の使い捨ておむつに適用することもでき、また、尿漏れパッド、インナーパッド、生理用ナプキン等に適用してもよい。
【0016】
図示のおむつ100は、
図1に示すように、腹側部110と股部120と背側部130とが長さ方向(前後方向)Lに連なって形成されている。腹側部110は、おむつ100の着用者の前面である腹側の主に下腹部を覆う部分に相当し、股部120は着用者の、主に股間部を覆う部分に相当し、背側部130は着用者の主に臀部を覆う部分に相当する。
【0017】
長さ方向Lに直交する幅方向Wは、おむつ100が着用者に着用された状態において、着用者の胴回りの周方向に対応する。股部120は、腹側部110及び背側部130に比べて、幅方向Wの寸法が短くなるように中央にくびれた曲線の縁部122,123で形成されている。
【0018】
おむつ100は、腹側部110の、幅方向Wにおける一方の側部112と、背側部130の、幅方向Wにおける一方の側部132とが接合され、かつ、腹側部110の、幅方向Wにおける他方の側部113と、背側部130の、幅方向Wにおける他方の側部133とが接合されている。これにより、おむつ100は、腹側部110と背側部130とが着用者の胴回りの周方向に繋がる。
【0019】
そして、おむつ100は、長さ方向Lの端部である腹側部110の端縁111と背側部130の端縁131とが環状に繋がった胴回り開口P1を形成する。また、おむつ100は、中央にくびれた股部120における幅方向Wの両側において、縁部122が環状に繋がって脚回り開口P2を形成し、縁部123が環状に繋がって脚回り開口P3を形成して、パンツ型となる。
【0020】
胴回り開口P1は、おむつ100を着用した着用者の胴回りに対応した開口であり、脚回り開口P2は、着用者の右脚の付け根に対応した開口であり、脚回り開口P3は、着用者の左脚の付け根に対応した開口である。
【0021】
おむつ100は、
図2に示した厚さ方向Dの、股部120において、着用者の肌に近い側から順に、トップシート10、吸収体30、外装シート20(バックシート)が積層されて構成されている。
【0022】
トップシート10は、おむつ100が着用者に着用されたとき、着用者の肌に接するシートである。トップシート10は液透過性のシート部材であり、例えば液透過性の不織布を適用することができる。なお、おむつ100は、トップシート10を備えなくてもよい。この場合、吸収体30が、着用者の肌に最も近い配置となる。
【0023】
吸収体30は、股部120を中心として長さ方向Lに沿って延びている。吸収体30の腹側の端部は腹側部110に配置され、吸収体30の背側の端部は背側部130に配置されている。
【0024】
吸収体30は、吸収体コア30aと、コアラップシート30bとを備えている。吸収体コア30aは、パルプ繊維と、このパルプ繊維に分散して配置された吸収性ポリマーとを有している。吸収性ポリマーは、着用者の排泄物のうちトップシート10を透過した液状成分を吸着することで膨張し、液状成分を保持する。
【0025】
コアラップシート30bは、液透過性を有する不織布などのシート部材である。コアラップシート30bは、吸収体コア30aの全体を外側から覆い、吸収性ポリマーが吸収体30から脱落するのを防いでいる。コアラップシート30bは、吸収体コア30aの全体を覆わなくてもよく、少なくとも、吸収体コア30aの、着用者の肌に対向する面(肌対向面)の側に配置されていればよい。
【0026】
外装シート20は、液不透過性のシート部材であり、液状成分が、吸収体30から浸潤して外部に漏れるのを防止する。
【0027】
また、おむつ100は、長さ方向Lの両端部、すなわち胴回り開口P1に対応する部分に、幅方向Wに沿って延びた、糸ゴム等の伸縮部材51が配置されている。具体的には、
図2に示すように、この伸縮部材51は、弾性範囲で伸ばされた状態で、腹側部110と背側部130における外装シート20と外装シート20よりも厚さ方向Dの内面側に配置されたギャザー押さえシート40とによって、厚さ方向Dに挟まれた状態で固定されている。
【0028】
着用者に着用される前のおむつ100は、伸縮部材51が縮むことで、胴回りの部分が、
図1に示した平坦な状態の外装シート20の幅方向Wの寸法よりも縮んだ状態となる。つまり、おむつ100は、伸ばされた状態で胴回りに固定された伸縮部材51が幅方向Wに縮むことで、胴回りの部分は、長さ方向Lに延びた縦皴状のギャザーとなる。
【0029】
そして、おむつ100は、着用者が着用する際に、手で、伸縮部材51の伸縮力に打ち勝つ力で幅方向Wに広げられることで、伸縮部材51が伸びてギャザーが広げられ、胴回り開口P1の寸法を伸ばした状態とし、着用する。着用後のおむつ100は、伸縮部材51の伸縮力によって、胴回りの腹側部110及び背側部130が着用者の胴回りに密着する。
【0030】
<背側漏れ防止シート>
また、おむつ100は、腹側部110と背側部130とにそれぞれ、漏れ防止シート60,70を備えている。以下、腹側部110の漏れ防止シート60を腹側漏れ防止シート60、背側部130の漏れ防止シート70を背側漏れ防止シート70という。
【0031】
なお、本実施形態のおむつ100において、背側漏れ防止シート70を説明するが、腹側漏れ防止シート60も背側漏れ防止シート70と同様に構成してもよい。また、本実施形態のおむつ100において、腹側漏れ防止シート60は背側漏れ防止シート70と同様に構成しなくてよく、おむつ100は、腹側漏れ防止シート60を備えなくてもよい。
【0032】
背側漏れ防止シート70は、
図1に示すように、背側部130の端縁131と同じ位置に配置された端縁71から、長さ方向Lの所定長さ範囲に、幅方向Wに延びた帯状に形成されている。背側漏れ防止シート70の、端縁71とは反対側の端縁72(股部120に近い側の端縁72)は、吸収体30の、長さ方向Lにおける背側の端縁32よりも、股部120側まで延びている。
【0033】
背側漏れ防止シート70は、背側部130から股部120に架けて、厚さ方向Dにおいてトップシート10よりも内面側に配置されている。したがって、背側漏れ防止シート70は、
図2に示すように、背側部130まで延びた吸収体30の、背側の端部を、厚さ方向Dの内面側から覆う配置となっている。なお、背側漏れ防止シート70は、吸収体30の、背側の端部を覆う長さであればよく、股部120まで延びずに背側部130にのみ配置されていてもよい。
【0034】
腹側漏れ防止シート60は、
図1に示すように、腹側部110の端縁111に近い側の端縁61から、長さ方向Lの所定長さ範囲において、幅方向Wに延びた帯状に形成されている。腹側漏れ防止シート60の、端縁61とは反対側の端縁62(股部120に近い側の端縁62)は、吸収体30の、長さ方向Lにおける腹側の端縁31よりも、股部120側まで延びている。
【0035】
したがって、腹側漏れ防止シート60は、腹側部110まで延びた吸収体30の、腹側の端部を、厚さ方向Dの内面側から覆う配置となっている。腹側漏れ防止シート60は、背側漏れ防止シート70に比べて、長さ方向Lの寸法が短い。
【0036】
背側漏れ防止シート70は、長さ方向Lにおける端縁32の側の部分(例えば、伸縮部材51が配置された範囲の部分73)は、ギャザー押さえシート40に、ホットメルト等の接合材によって接合されている。一方、背側漏れ防止シート70は、長さ方向Lにおける端縁72の側の部分(例えば、伸縮部材51が配置されていない範囲の部分74)は、内面側に配置されたトップシート10に接合されていない。
【0037】
この結果、背側漏れ防止シート70は、
図2に示すように、股部120における端縁72の側の部分74と、トップシート10とによって、長さ方向Lの中心側に向かって開口するポケットSを形成する。ポケットSは、背側の端縁71の側の部分74がギャザー押さえシート40に接合されて形成されているため、長さ方向Lの背側は突き当たりとなる。
【0038】
なお、トップシート10を備えないおむつの場合は、背側漏れ防止シート70の端縁72の側の部分74と、吸収体30とによって、長さ方向Lの中心側に向かって開口するポケットSを形成する。
【0039】
ここで、例えば、おむつ100の着用者が仰向けの姿勢で寝ている場合、着用者が股部120に排泄した排泄物は、重力にしたがって、トップシート10(トップシート10を備えない場合は、吸収体30。以下、同様に読み替えるものとする。)上を股部120から背側部130に向けて移動する。
【0040】
そして、排泄物がトップシート10上を、背側漏れ防止シート70の配置されている領域まで移動すると、トップシート10と背側漏れ防止シート70とによって形成されたポケットSに収容され、おむつ100の背側における胴回り開口P1から排泄物が漏れるのを防止する。
【0041】
ポケットSは、背側の端縁71の側の部分74がギャザー押さえシート40に接合されて形成されているため、長さ方向Lの背側は突き当たりとなり、おむつ100の背側における胴回り開口P1から排泄物が漏れるのを防止する。
【0042】
ここで、本実施形態のおむつ100における背側漏れ防止シート70は、
図3に示すように、厚さ方向Dにおいて、互いに異なる特性を有する2層の部材で形成されている。具体的には、背側漏れ防止シート70は、着用者の肌に近い肌面側(内面側)に配置された第1シート70A(肌側シート)と、着用者の肌から遠い非肌面側(外面側)に配置された第2シート70B(吸収体側シート)とが、積層されている。そして、背側漏れ防止シート70は、厚さ方向Dに凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)が形成されている。
【0043】
第1シート70Aは、開孔不織布である。開孔不織布は、開孔が分布して形成された不織布である。開孔不織布は、不織布に対する後加工で開孔を形成したものであってもよいし、不織布を生成する過程(例えばスパンレース工法)で開孔を形成したものであってもよい。なお、第1シート70Aとしての開孔不織布は、撥水性であることが好ましい。ただし、開孔不織布は、撥水性に限定されず液透過性であってもよい。
【0044】
開孔を後加工で形成した開孔不織布は、開孔が規則的に分布して形成されることが多く、一方、不織布の生成過程で開口を形成した開孔不織布は、開孔が不規則に分布して形成されることが一般的である。開孔不織布の開孔は、肉眼で目視可能な大きさ(例えば、直径0.1[mm]以上)の孔が、厚さ方向Dに貫通して形成されている。
【0045】
開孔不織布は、開孔の部分が肌に接しないため、第1シート70Aの全体の面積に比べて肌との接触面積が小さく、かつ、接触しない部分(開孔)が分布していることで、第1シート70Aは肌に密着し難い特性を有している。したがって、開孔不織布で形成された第1シート70Aは、肌触りも良いという特性も有している。
【0046】
また、第1シート70Aは、開孔不織布であることに加えてエアスルー不織布(サーマルボンド不織布)であることが好ましい。エアスルー不織布は融点が低いという特性を有するため、エンボス加工で、エアスルー不織布に凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)を形成し易い。第1シート70Aに凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)が形成されていることで、肌との接触面積をさらに小さくすることができ、肌に密着し難い特性及び肌触りが一層良いという特性を有する。
【0047】
また、エアスルー不織布は摩擦係数が低いため、この観点からも肌に密着し難い特性を発揮し、さらに、エアスルー不織布はクッション性も良好であるため、この観点からも肌触りが一層良いという特性を発揮する。
【0048】
一方、第2シート70Bは、液状体に対する防漏性の高い特性を有するシートである。液状体に対する防漏性の高い第2シート70Bとしては、例えば、撥水性の高いスパンボンド不織布や、撥水性の高いSMS不織布(スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布という3層が一体化して1部材を構成した不織布)を適用することができる。
【0049】
また、液状体に対する防漏性の高い第2シート70Bとしては、例えば、樹脂のフィルムを適用することもできる。樹脂のフィルムは、撥水性が非常に高く、かつ、一旦形成した凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)を維持し易いため好ましい。
【0050】
なお、背側漏れ防止シート70は、第1シート70Aが開孔不織布で、かつエアスルー不織布、第2シート70Bが撥水性の高いスパンボンド不織布、の組み合わせ、又は第1シート70Aが開孔不織布で、かつエアスルー不織布、第2シート70Bが撥水性の高いSMS不織布、の組み合わせであることが好ましい。
【0051】
そして、背側漏れ防止シート70を構成する第1シート70Aと第2シート70Bとの2部材は、結合して一体化されている。第1シート70Aと第2シート70Bとの結合は、例えば、ホットメルト等の接着部材を用いた接合でもよいし、接着部材を用いない超音波接合でもよいし、又は構造的な結合であってもよい。
【0052】
図4は、第1シート70Aと第2シート70Bとの構造的な結合を形成する工程の一例を示す図である。第1シート70Aと第2シート70Bとの構造的な結合としては、例えば、
図4に示すように、第1シート70Aと第2シート70Bとを厚さ方向Dに重ねた状態(結合されていない状態)で、第1シート70Aと第2シート70Bの厚さ方向Dの両外側から、凹凸の形状が互い違いに配置された2つの加熱したエンボス圧搾部210,220を、第1シート70Aと第2シート70Bとに、厚さ方向Dの中心に向けて加圧する工程を適用することができる。
【0053】
この工程は、第1シート70Aと第2シート70Bとに、エンボス圧搾部210,220の凹凸に対応した凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)を形成する。
【0054】
この状態は、第1シート70Aの凹部70Dと第2シート70Bの凸部70Cとが嵌め合わされた状態となり、また、第1シート70Aの凸部70Cと第2シート70Bの凹部70Dとが嵌め合わされた状態となる。したがって、第1シート70Aと第2シート70Bとは、これら凹部70Dと凸部70Cとの嵌め合わせによって構造的に結合し、一体の背側漏れ防止シート70を形成することができる。
【0055】
このように、第1シート70Aと第2シート70Bとを構造的に結合した背側漏れ防止シート70は、接合材を用いていないため柔軟性が高く、しかも、凹凸形状をすると同時に結合させることができるため、製造工程の簡素化を図ることができ得る。
【0056】
なお、背側漏れ防止シート70の上述した凹凸形状(凹部70Dと凸部70Cとが分布した形状)は、
図1に示した、伸縮部材51が配置された範囲の部分73には形成されず、伸縮部材51が配置されていない範囲の部分74のみに形成されている。
【0057】
そして、背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状は、
図5に示すように、伸縮部材51が配置されていない範囲の部分74において幅方向Wの略全域に亘って分布して形成されている。なお、背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状は、
図5に示すように、伸縮部材51が配置されていない範囲の部分74において長さ方向Lにも分布して形成されていることが好ましい。
【0058】
図5は、背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状の分布として、複数の凹部70Dと複数の凸部70Cとが分散して形成されたものを示す模式図、
図6は、背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状の分布として、凸部70C又は凹部70Dが、幅方向W及び長さ方向Lに繋がって連続した形状で形成されたものを示す模式図である。
【0059】
背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状の分布は、
図5に示したように複数の凹部70Dと複数の凸部70Cとが分散して形成されたものに限らず、
図6に示すように、凸部70C又は凹部70Dが、幅方向W及び長さ方向Lに繋がって連続した形状で形成されてもよい。なお、背側漏れ防止シート70に形成された凹凸形状は、凸部70C又は凹部70Dが、少なくとも幅方向Wに繋がって連続した形状に形成されていればよく、長さ方向Lにも繋がって連続した形状で形成されていることは必須ではなく、好ましい一例である。
【0060】
以上のように構成された実施形態のおむつ100は、背側漏れ防止シート70が、肌面側の第1シート70Aと吸収体側の第2シート70Bという、相異なる特性を有する2種類の部材で形成されている。したがって、背側漏れ防止シート70は、第1シート70Aを肌面側に適した特性を有する部材で形成し、第2シート70Bを漏れ防止する、という背側漏れ防止シート70の本来の機能に適した部材で形成することができ、肌面に適した特性と防漏性とを両立することができる。
【0061】
具体的には、おむつ100は、第1シート70Aが、肌に密着し難く、かつ肌触りが良い、肌面に適した特性を発揮し、着用者に快適性を与えることができ、また、第2シート70Bが防漏性を有することで、第2シート70Bとトップシート10との間の空間であるポケットSに収容した排泄物が、背側の胴回り開口P1から漏れるのを防止又は抑制することができる。
【0062】
ここで、背側漏れ防止シート70は、伸縮部材51が配置されていない範囲の部分74(
図1参照)に、凹凸形状が形成されている。伸縮部材51が配置されている範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分73は、伸縮部材51の伸縮力によって、ギャザー押さえシート40や外装シート20と同様に、縦皴の凹凸が形成される。
【0063】
これに対して、伸縮部材51が配置されていない範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分74は、伸縮部材51の伸縮力が作用しないため、縦皴の凹凸が形成されない。そして、このため、伸縮部材51が配置されていない範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分74に、仮に、上述した凹凸形状が形成されていない場合は、その部分74が平坦な面となり、伸縮部材51が配置されている範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分73に比べて、着用者の肌に密着し易くなる。
【0064】
そして、着用者の肌に背側漏れ防止シート70が密着した場合、着用者は、肌触りの悪さ等の違和感を覚える。また、着用者の肌に背側漏れ防止シート70が密着した場合、おむつ100の内部で湿気がこもり、通異性が損なわれる。
【0065】
これに対して、本実施形態のおむつ100は、伸縮部材51が配置されていない範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分74に、上述した凹凸形状が形成されているため、背側漏れ防止シート70の当該部分74が、着用者の肌に密着し難くなる。この結果、本実施形態のおむつ100は、おむつ10の着用者に肌触りの悪さ等の違和感を与えることを防止又は抑制することができる。また、本実施形態のおむつ100は、おむつ10の着用者の肌と背側漏れ防止シート70との間に、凹凸形状による隙間が形成されておむつ100の内部の通気性を確保することができる。
【0066】
また、上述した理由と同様の理由により、伸縮部材51が配置されていない範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分74は、凹凸形状が形成されていることで、凹凸形状が形成されていない平坦な場合よりも、トップシート10(トップシート10が無い背側漏れ防止シートの場合は吸収体30)にも貼り付き難くすることができる。
【0067】
仮に、背側漏れ防止シート70の部分74がトップシート10に貼り付くと、排泄物の漏れを防止するという防漏性という背側漏れ防止シート70の本来の機能が発揮されないが、本実施形態のおむつ100は、背側漏れ防止シート70がトップシート10にも貼り付き難いため、背側漏れ防止シート70の本来の機能を適切に発揮させることができる。
【0068】
なお、本実施形態のおむつ100における背側漏れ防止シート70は、伸縮部材51が配置されていない範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分74にのみ、凹凸形状が形成されているが、伸縮部材51が配置されている範囲に接合された背側漏れ防止シート70の部分73にも、同様の凹凸形状を形成してもよい。
【0069】
この場合、背側漏れ防止シート70の、凹凸形状の形成された部分を伸縮部材51が配置されていない範囲に位置合わせして配置し、凹凸形状の形成されていない部分を伸縮部材51が配置されている範囲に位置合わせして配置する、という位置決めの手間を減らすことができる。
【0070】
また、本実施形態のおむつ100における背側漏れ防止シート70は、
図5,6に示すように、おむつ100の幅方向Wだけでなく、長さ方向Lにも沿って、凹凸形状が形成されている。このため、本実施形態のおむつ100は、仮に、背側漏れ防止シート70の端縁72(
図1,2参照)側の部分が、着用者の肌に密着しても、その密着した部分よりも着用者の上側の部分(おむつ100における長さ方向Lの背側の端縁71方向の部分に対応)は、背側漏れ防止シート70の同様の凹凸形状によって密着し難い。
【0071】
したがって、本実施形態のおむつ100は、背側漏れ防止シート70の端縁72に近い部分にのみ凹凸形状が形成されているよりも、背側漏れ防止シート70が着用者の肌に密着してめくれるのを防止することができる。
【0072】
なお、本実施形態のおむつ100は、背側漏れ防止シート70を構成する第1シート70Aと第2シート70Bとの2部材が結合して一体化されているが、第1シート70Aと第2シート70Bとは、結合しないで、単に重ねられている積層状態に形成されてもよい。
【0073】
また、本実施形態のおむつ100は、前述したように腹側漏れ防止シート60も、背側漏れ防止シート70と同様に構成してもよい。この場合、おむつ100は、例えば、腹側漏れ防止シート60を、吸収体30の、腹側部110の側の端部を厚さ方向Dの内面側から覆うようにポケットを形成するものとする。そして、腹側漏れ防止シート60は、厚さ方向Dにおいて着用者の肌に近い側に配置された、開孔不織布の第1シート70A(肌側シート)と、着用者の肌から遠い側に配置された、防漏性の高い特性を有する第2シート70B(吸収体側シート)とを積層して形成することができ、第2シート70Bを、厚さ方向Dの凹凸形状に形成することができる。
【0074】
この場合、おむつ100は、腹側部110に、長さ方向Lに直交する幅方向Wに沿って延びた伸縮部材51が配置され、腹側漏れ防止シート60における厚さ方向Dの凹凸形状を、腹側漏れ防止シート60の、少なくとも伸縮部材51が配置されていない範囲の部分に形成するのが好ましい。
【符号の説明】
【0075】
20 外装シート(バックシート)
30 吸収体
70 背側漏れ防止シート
70A 第1シート(肌側シート)
70B 第2シート(吸収体側シート)
70C 凸部
70D 凹部
100 使い捨ておむつ(吸収性物品の一例)
110 腹側部
120 股部
130 背側部
D 厚さ方向
S ポケット