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特開2024-13726製造ライン、製造方法、および製造ラインの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013726
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】製造ライン、製造方法、および製造ラインの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B67C 3/00 20060101AFI20240125BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240125BHJP
   B01F 23/236 20220101ALI20240125BHJP
【FI】
B67C3/00 A
A23L2/00 T
B01F23/236
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116043
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【弁理士】
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】岡田 健太
【テーマコード(参考)】
3E079
4B117
4G035
【Fターム(参考)】
3E079AA02
3E079AB01
3E079EE01
3E079EE13
3E079GG10
4B117LC14
4B117LK04
4B117LT01
4G035AA05
4G035AB04
4G035AE08
4G035AE13
4G035AE15
(57)【要約】
【課題】充填機の停止によって廃棄に至る製品液の量を削減すること。
【解決手段】製造ラインは、原料液を冷却する冷却器を含み、冷却器により冷却された原料液に炭酸ガスを溶解させた製品液を供給するカーボネーション装置と、カーボネーション装置から供給される製品液を充填する充填機と、カーボネーション装置から充填機に供給される製品液が流れる送液経路と、送液経路に設けられて製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器と、製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱する加熱器を含み、製品液から洗浄液に置換させて内部洗浄を行う内部洗浄装置と、を備える。熱交換器は、製品液の冷却および洗浄液の加熱に使用可能に構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインであって、
原料液を冷却する冷却器を含み、前記冷却器により冷却された前記原料液に炭酸ガスを溶解させた製品液を供給するカーボネーション装置と、
前記カーボネーション装置から供給される前記製品液を充填する充填機と、
前記カーボネーション装置から前記充填機に供給される前記製品液が流れる送液経路と、
前記送液経路に設けられて前記製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器と、
前記製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱する加熱器を含み、前記製品液から前記洗浄液に置換させて内部洗浄を行う内部洗浄装置と、を備え、
前記熱交換器は、前記製品液の冷却および前記洗浄液の加熱に使用可能に構成される、
製造ライン。
【請求項2】
前記送液経路は、前記熱交換器を通過した液の全量を前記充填機に供給可能に構成され、
前記充填機の停止後の再起動に伴い、前記カーボネーション装置から前記充填機への送液が開始されると、前記充填機が停止している間に滞留していた前記製品液が前記熱交換器により冷却される、
請求項1に記載の製造ライン。
【請求項3】
前記熱交換器は、前記送液経路における下流側に設けられている、
請求項2に記載の製造ライン。
【請求項4】
前記熱交換器を通過した前記製品液を、前記カーボネーション装置に含まれる製品液タンクに戻すことが可能に構成されている戻り経路を備え、
前記充填機の停止後の再起動に先立ち、前記製品液タンク、前記熱交換器、および前記戻り経路に前記製品液が循環する、
請求項1に記載の製造ライン。
【請求項5】
製造ラインによる生産工程および内部洗浄工程を備える製造方法であって、
前記生産工程は、
原料液を冷却器により冷却するステップと、
前記冷却器により冷却された前記原料液に炭酸ガスを溶解させて製品液を得るステップと、
前記炭酸ガスが溶解されて充填機に送られる前記製品液を前記冷却器よりも下流で熱交換器により再冷却するステップと、
前記充填機により前記製品液を充填するステップと、を含み、
前記内部洗浄工程は、
前記製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱器により加熱するステップと、
前記製品液と置換させた前記洗浄液を前記加熱器よりも下流で前記熱交換器により再加熱するステップと、を含む、製造方法。
【請求項6】
前記生産工程における前記充填機の停止に伴い前記充填機への送液を停止した後、前記充填機の再起動に伴い前記充填機への送液を開始すると、前記充填機が停止している間に滞留していた前記製品液を前記熱交換器により冷却する、
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記製造ラインは、前記熱交換器を通過した前記製品液を製品液タンクに戻すことが可能に構成されている戻り経路を備え、
前記充填機の停止後の再起動に先立ち、前記製品液タンク、前記熱交換器、および前記戻り経路に前記製品液を循環させる、
請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項1から4のいずれか一項に記載の製造ラインを製造する方法であって、
既設の製造ラインの前記送液経路には、前記製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器を設けるとともに、
前記熱交換器には、前記製品液の冷却に用いられる前記熱媒体の回路と、前記製品液と置換させた前記洗浄液の加熱に用いられる前記熱媒体の回路とのいずれをも接続可能とする、
製造ラインの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば飲料製品等の製品を製造するラインと方法、および製造ラインの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸飲料の製造ラインは、原料液を冷却して炭酸ガスを液に溶解させるカーボネーション装置と、炭酸ガスを含む製品液を容器に充填する充填機とを備えている。製品液を低温に維持して充填時の泡立ちを防ぎ、ガスボリュームを安定させるため、液温は管理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-066460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
充填機の稼働中は、カーボネーション装置により液を冷却して炭酸ガスを溶解させ、製品液タンクに貯めるとともに、製品液タンクから配管を通じて充填機に製品液を送る。充填機が停止すると、製品液タンクから充填機への送液を止める。このとき、製品液タンクから充填機までの間の配管に留まっている製品液の温度が時間経過に伴い上昇する。製品液の温度が上昇すると、充填時の泡立ち、ガスボリュームの低下が懸念される。
そのため、充填機の長時間の停止が発生すると、充填機の再起動後、充填機に供給される製品液の温度が規定の温度に下がるまでの間は、充填機に供給される製品液を廃棄する。
【0005】
従来、充填機停止中にカーボネーション装置から充填機までの間に留まる製品液の温度上昇を防ぐ手立てがないため、充填機が長時間に亘り停止した場合の製品液の廃棄は避けられない。
そこで、本開示は、充填機の停止によって廃棄に至る製品液の量を削減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る製造ラインは、原料液を冷却する冷却器を含み、冷却器により冷却された原料液に炭酸ガスを溶解させた製品液を供給するカーボネーション装置と、カーボネーション装置から供給される製品液を充填する充填機と、カーボネーション装置から充填機に供給される製品液が流れる送液経路と、送液経路に設けられて製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器と、製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱する加熱器を含み、製品液から洗浄液に置換させて内部洗浄を行う内部洗浄装置と、を備える。熱交換器は、製品液の冷却および洗浄液の加熱に使用可能に構成される。
【0007】
また、本開示は、製造ラインによる生産工程および内部洗浄工程を備える製造方法であって、生産工程は、原料液を冷却器により冷却するステップと、冷却器により冷却された原料液に炭酸ガスを溶解させて製品液を得るステップと、炭酸ガスが溶解されて充填機に送られる製品液を冷却器よりも下流で熱交換器により再冷却するステップと、充填機により製品液を充填するステップと、を含み、内部洗浄工程は、製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱器により加熱するステップと、製品液と置換させた洗浄液を加熱器よりも下流で熱交換器により再加熱するステップと、を含む。
【0008】
さらに、本開示は、上述の製造ラインを製造する方法であって、既設の製造ラインの送液経路には、製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器を設けるとともに、熱交換器には、製品液の冷却に用いられる熱媒体の回路と、製品液と置換させた洗浄液の加熱に用いられる熱媒体の回路とのいずれをも接続可能とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、生産運転の定常時においては、製品液を冷却する冷却器よりも下流の熱交換器によっても製品液が冷却されることにより、製品液の温度を規定の温度に安定させることができる。充填時の液温が安定することで、製品液を安定して充填することが可能となる。
【0010】
充填機の長時間の停止により、送液経路に滞留した製品液の温度が規定温度を逸脱したとしても、充填機の再起動に伴い充填機への送液が開始されると、滞留していた製品液が熱交換器により冷却されるとともに、冷却器の下流の熱交換器による再冷却の作用により、製品液の温度低下が促進される。そのため、製品液を規定温度に早期に至らしめて製品液の廃棄量を削減することが可能となる。
【0011】
加えて、製品液の冷却に必要な熱交換量を冷却器と熱交換器とに按分することができるので、熱交換器が設けられていない場合と比べて冷却器を小型化することが可能となる。
【0012】
さらに、内部洗浄運転時には、加熱器よりも下流の熱交換器により、加熱器を通過した後の放熱によって温度が低下した洗浄液を再加熱することができる。そうすると、洗浄液が規定の温度に早期に到達するので、内部洗浄工程に要する時間を短縮して生産性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る製造ラインの構成を示す模式図である。
図2図1に示す製造ラインの生産運転の状態を示す図である。
図3図1に示す製造ラインの充填機の停止から充填処理の再開までの処理や事象を説明するための図である。
図4図1に示す製造ラインの内部洗浄運転の状態を示す図である。
図5】本開示の第2実施形態に係る製造ラインの生産運転の状態を示す図である。
図6図5に示す製造ラインの内部洗浄運転の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、一実施形態について説明する。
[第1実施形態]
〔全体構成〕
図1に構成の一例を示す製造ライン1は、常温に対して冷却されている製品液が図示しないボトル等の容器に充填されてなるボトル詰め製品を製造可能に構成されている。製造可能な製品の製品液としては、炭酸ガスを含有する炭酸飲料が含まれる。炭酸飲料は、例えば、炭酸水やサイダー、コーラ、チューハイ飲料等に相当する。なお、図1には、製造ライン1の構成の一部のみが示されている。
【0015】
製造ライン1は、カーボネーション装置10と、カーボネーション装置10から供給される製品液をボトルに充填する充填機20を含む充填装置2と、カーボネーション装置10および充填機20の間に設けられる熱交換器4と、製造ライン1の内部洗浄が可能に構成されている内部洗浄装置30と、製造ライン1に備わる各装置を制御可能に構成されている制御装置5とを備えている。
また、製造ライン1は、液が流れる経路として、第1送液経路R1と、第2送液経路R2と、第3送液経路R3とを備えている。
【0016】
充填装置2は、例えば回転式の充填機であって、容器を回転体の円周方向に搬送しつつ製品液を充填する充填機20と、充填済の容器を蓋の装着により密封する密封機(図示しない)とを備えている。充填装置2よりも下流側のラインは、図示されていない。充填装置2から下流へ排出される容器は、図示しない集積コンベヤおよび単列コンベヤ等を経て箱詰め装置へと供給される。
【0017】
製造ライン1による生産工程が行われていない非生産時間において、原料液・製品液の流路等(タンクやバルブを含む)の洗浄や殺菌、および環境の洗浄や殺菌が行われる。流路等の洗浄、殺菌は、制御装置5により洗浄液の濃度および温度を管理しつつ、内部洗浄装置30により洗浄用の液体である洗浄液を流路等に供給することで行うことができる。
【0018】
〔カーボネーション装置〕
カーボネーション装置10は、原料液に炭酸ガス(CO)を溶解させて製品液を得る。液温が低いほど、炭酸ガスが溶解し易い。そのため、カーボネーション装置10は、炭酸ガスを原料液に溶解させる前に原料液を冷却する。また、充填時に製品液の泡立ちを抑えるためにも、原料液が冷却される。
かかるカーボネーション装置10は、図1に構成の一例を示すように、原料液タンク11と、第1ポンプP1と、冷却器12と、カーボネータ13と、製品液タンク14と、炭酸ガス供給源15と、第2ポンプP2とを備えている。
【0019】
カーボネーション装置10には、製品液に含まれる炭酸ガスの濃度を計測する図示しないガスボリューム計が設けられていることが好ましい。ガスボリュームは、一例として、1気圧で15.6℃の条件下、製品液に溶解している炭酸ガスの体積を液の体積で割った値として求められる。
【0020】
製造ライン1により炭酸ガスを含有しない製品を製造する場合は、制御装置5により図示しないバルブが操作されることで、冷却器12を通過した原料液はカーボネータ13にて炭酸ガスを溶解させずに、製品液として製品液タンク14に貯留することも使用可能である。
【0021】
原料液タンク11の出口から製品液タンク14の入口までの第1送液経路R1には、冷却器12と、カーボネータ13とが設けられている。第1ポンプP1は、原料液タンク11から製品液タンク14まで液(原料液、製品液)を所定の流量Fで圧送する。第1ポンプP1は、第1送液経路R1における適宜な位置に設けることができる。
【0022】
バルブV11を通じて原料液タンク11に原料液を供給する供給源の図示は省略されている。かかる供給源は、例えば、原料液から気体を離脱させて除去する脱気装置(Deaerator)、複数の原料液を一定比率で混合する混合装置(Blender)を備えている。カーボネーション装置10は、脱気装置や混合装置等と共に一つの装置として統合されていてもよい。また、原料液の供給源には、原料液を殺菌する殺菌装置が含まれていてもよい。殺菌装置は、例えば、原料液を加熱殺菌する熱交換器と、殺菌後の原料液を冷却する熱交換器とを備えている。
【0023】
冷却器12は、プレート式熱交換器またはチューブ式熱交換器であり、製品液と第1熱媒体H1とを間接的に接触させて熱交換させることで、原料液を冷却する。
第1熱媒体H1は、例えば、冷水、あるいは、プロピレングリコール等を含有する冷媒に相当する。一部のみを図示する第1熱媒体回路C1から、原料液よりも低温の第1熱媒体H1が冷却器12に供給され、冷却器12から第1熱媒体回路C1へと回収される。冷却器12よりも下流の第1送液経路R1と、第2送液経路R2とのそれぞれの配管には、断熱材が設けられることが好ましい。
【0024】
冷却器12の出口側の原料液の温度は、例えば温度センサ102による計測値に基づき第1熱媒体H1の流量を調整することで、所定の温度に制御されることが好ましい。
なお、図1には、温度センサ101,102,201,202,301,302,303が図示されているが、これらは必要に応じて製造ライン1に設けられていればよい。
【0025】
カーボネータ13は、炭酸ガス供給源15から供給される炭酸ガスを例えばノズルの内側に吹き込むことで原料液に圧入して溶解させる。
カーボネータ13からガス付け処理がなされた製品液は、製品液タンク14に貯留される。製品液タンク14の内部は、炭酸ガス供給源15から炭酸ガスが導入されることで所定の圧力に加圧されている。製品液タンク14の内部圧力と、必要に応じて設けられる第2ポンプP2の吐出圧力とにより、製品液タンク14から充填機20の図示しないタンクへと製品液が第2送液経路R2を通じて所定の供給流量Fで供給される。また、製品液タンク14の内部の加圧された雰囲気により、製品液からの炭酸ガス離脱が抑制される。
【0026】
第2ポンプP2及び、第2送液経路R2に設けられる図示しない流量調整弁により、充填機20に供給される製品液の供給流量Fが調整される。充填機20を止めずに安定して稼働させるため、第1送液経路R1の流量Fは、供給流量Fに対して若干大きく設定されている。
【0027】
〔第2送液経路および熱交換器〕
製品液タンク14から充填機20まで製品液が流れる第2経路R2には、熱交換器4と、送液バルブV2とが設けられている。
本実施形態の第2送液経路R2は、熱交換器4を通過した製品液の全量を充填機20に供給する。
【0028】
熱交換器4は、プレート式熱交換器またはチューブ式熱交換器であって、冷却と加熱とに使用可能に構成されている。生産工程において、熱交換器4は、冷却器12と同様、第1熱媒体回路C1から供給される冷水、冷媒等である第1熱媒体H1と製品液とを間接的に接触させて熱交換させることで、製品液を冷却する。熱交換器4の出口側の製品液の温度は、制御装置5により、例えば、温度センサ202による計測値に基づき第1熱媒体H1の流量を調整することで所定の温度に制御されていてもよい。
【0029】
熱交換器4は、内部洗浄装置30により行われる内部洗浄工程においては、第2熱媒体回路C2から供給される蒸気、熱水等に相当する第2熱媒体H2と洗浄液とを熱交換させることで、洗浄液を加熱する。
第1熱媒体回路C1および第2熱媒体回路C2には、熱交換器4に供給される熱媒体を切り替えるためのバルブ411,412,421,422が設けられている。
例えば、熱交換器4に用いられる熱媒体が、冷却用の熱媒体としての冷媒から加熱用の熱媒体としての蒸気に切り替えられる際には、圧縮空気を熱交換器4に導入して熱交換器4の熱媒体流路から冷媒を排出させた後、加熱用熱媒体としての蒸気を熱交換器4の熱媒体流路に導入するとよい。
【0030】
第2ポンプP2の稼働および送液バルブV2の開閉動作により、充填機20への送液開始と送液停止とが切り替えられる。充填機20による製品液の充填が行われる生産運転の定常時は、第2ポンプP2が稼働し、送液バルブV2は開いており、充填機20のタンクには、所定の温度で所定のガスボリュームの製品液が所定流量で送られる。
【0031】
充填機20が停止すると、第2ポンプP2の稼働が停止するとともに送液バルブV2が閉じられるので充填機20への送液は停止される。
充填機20の停止後、製品液タンク14内の保有量が一定以上に到達するまでカーボネーション装置10は継続して稼働する。
【0032】
熱交換器4は、充填機20の再起動後、第2送液経路R2において熱交換器4よりも上流に滞留した製品液を冷却する。第2送液経路R2に滞留した製品液のより多くが熱交換器4により冷却されるように、熱交換器4は、第2送液経路R2における下流側、つまり第2送液経路R2の経路長の半分の位置よりも充填機20に近い側に設けられることが好ましい。より好ましくは、熱交換器4は、充填機20の最寄りの位置に設けられる。
【0033】
〔内部洗浄装置〕
内部洗浄装置30は、図示しない洗浄液供給源から供給される洗浄液を製品液の流路、例えば、送液経路R1,R2や充填機20の流路に供給することで、製品液を洗浄液に置換させて内部洗浄を行う。
内部洗浄装置30は、定置洗浄(CIP; Clean In Place)および定置殺菌(SIP;Sterilization in Place)のうち少なくとも定置洗浄を実施可能に構成されている。
本開示の内部洗浄装置30により行われる「内部洗浄」は、定置洗浄および定置殺菌を包含する。そうした内部洗浄に用いられる液体を「洗浄液」と称する。
【0034】
洗浄液を貯留する洗浄液タンク31からカーボネーション装置10の原料液タンク11まで洗浄液が流れる第3送液経路R3には、洗浄液を貯留する洗浄液タンク31と、洗浄液タンク31から原料液タンク11まで洗浄液を圧送する第3ポンプP3と、加熱器32とが設けられている。第3送液経路R3からバルブV10を通じて送液経路R1,R2に流入し、充填機20の充填ノズルまで供給される洗浄液は、洗浄液戻り経路R4を流れて内部洗浄装置30へと戻される。
【0035】
洗浄液は、例えば、酸洗剤、苛性洗剤を含有する薬液、あるいは水等に相当する。洗浄効果を高めるため、洗浄液は加熱器32により加熱される。
内部洗浄は、制御装置5により洗浄液の濃度、温度、および流量を管理しつつ、所定時間に亘り行われる。
【0036】
加熱器32は、洗浄液と、蒸気や熱水等に相当する第2熱媒体H2との熱交換により洗浄液を加熱する。
一部のみを図示する第2熱媒体回路C2から、洗浄液よりも高温の第2熱媒体H2が加熱器32に供給され、加熱器32から例えば凝縮水として排出される。加熱器32よりも下流の第3送液経路R3の配管には、保温のための断熱材が設けられることが好ましい。
【0037】
〔生産運転〕
図2を参照し、製造ライン1の生産運転例を説明する。内部洗浄装置30は、生産運転により生産工程が行われる間に亘り、稼働していない。
生産運転時における3つの熱交換器の使用状態は次の通りである。
冷却器12:冷却のために使用
熱交換器4:冷却のために使用
加熱器32:不使用
【0038】
図2は、生産運転の定常時における製品液の流れを示している。図2には、製品液の流れる経路が太線で示されている。定常時には、充填機20により製品液を容器に充填する処理が連続的に行われる。
定常時の生産工程は、冷却器12により原料液を冷却するステップS01と、冷却された原料液にカーボネータ13により炭酸ガスを溶解させるステップS02と、炭酸ガスが溶解した製品液を製品液タンク14に貯留するステップS03と、製品液タンク14から充填機20へと送られる製品液を熱交換器4により再冷却するステップS04と、充填機20が製品液を充填するステップS05とを備えている。
冷却ステップS01、炭酸ガス溶解ステップS02、および貯留ステップS03は、充填機20の停止中も所定時間継続して行われる。
【0039】
生産運転の定常時において、製品液は、冷却器12に加え、冷却器12よりも下流で熱交換器4によっても冷却される。そうすると、製品液の温度が、熱交換器4により規定温度Tにまで安定して低下する。製品液の温度が安定していると、充填時の泡立ちを抑えることができるとともに、ガスボリュームを安定させることができる。
【0040】
充填機20は、充填機20よりも下流の装置の停止等に伴い停止したり、あるいは充填機20の部材の故障等により異常停止したりする可能性がある。
図3は、生産工程における充填機20の停止から、充填機20の再起動を経て、容器への充填が再開されるまでの間の非定常処理や事象に相当するS11~S13を時系列で示している。制御装置5は、充填機20の停止(S11)に伴い、第2ポンプP2を停止させ、送液バルブV2を閉じることで、充填機20への送液を停止する。このとき充填機20への容器の供給も停止され、充填機20は既に供給された容器を充填して払い出す。
【0041】
充填機20の停止中(t1-2)も、カーボネーション装置10は所定時間稼働継続しており、冷却および炭酸ガス圧入の処理が行われている一方で、カーボネーション装置10と充填機20との間の第2送液経路R2には製品液が滞留している。そのため、充填機20の停止から時間の経過に従い、第2送液経路R2における製品液は、周囲の大気から吸熱して温度が上昇する。
【0042】
充填機20の停止後、必要に応じて復旧作業が行われ、停止の要因がなくなると、充填機20は再起動される(S12)。それに伴い送液バルブV2が開き、第2ポンプP2が動作することで、充填機20への送液が開始されると、第2送液経路R2に滞留していた製品液が充填機20に向けて流れるとともに、製品液タンク14から第2送液経路R2に製品液が流入する。充填機20の停止中も冷却器12による冷却は行われているから、第2送液経路R2には、滞留していた製品液の温度よりも低い温度の製品液が流入する。第2送液経路R2に流入した製品液は、熱交換器4により冷却されて充填機20へと供給される。
【0043】
充填機20の再起動後、製品液が規定温度Tに到達するまでの間は(t2-3)、充填機20に容器は供給されず、充填機20の図示しない充填ノズルから製品液が排出される。充填ノズルから排出された製品液は、回収されて廃棄される。充填機20の停止時間が短いために、充填機20の再起動時に製品液が規定温度Tに保たれている場合を除いて、製品液の廃棄が発生する。
【0044】
本実施形態のように第2送液経路R2に熱交換器4が設けられていると、第2送液経路R2に熱交換器4が設けられていない場合(以下、比較例)と比べて、充填機20の再起動(S12)の後、製品液の温度を規定温度Tにまで早期に下げることができる。そのため、比較例と比べて、充填機20の再起動後、早期に製品液の廃棄を停止して容器への充填処理を再開することができる。本実施形態における再起動から充填再開までの所要時間t2-3は、比較例における再起動から充填再開までの所要時間tAよりも短いので、製品液の廃棄量は比較例と比べて少ない。
【0045】
ここで、充填機20の停止中に、熱交換器4に第1熱媒体H1が供給されていると、停止中における熱交換器4のチューブ等の部材の温度上昇を避けて、充填機20の再起動後に直ちに製品液の冷却を開始することができる。そのため、充填機20の停止中に熱交換器4に第1熱媒体H1の供給が停止されていた場合と比べて、再起動から充填再開までの所要時間t2-3がより短く、それに伴い製品液の廃棄量がより少ない。
【0046】
制御装置5は、例えば温度センサ102により検知される製品液の温度に基づいて、あるいは、充填機20の停止時間および充填機20の再起動からの経過時間に基づいて、製品液が規定温度T以下に到達しているか否かを判定することができる。停止時間および再起動からの経過時間はそれぞれ、図示しないタイマーにより検知可能である。
制御装置5は、製品液が規定温度T以下に到達したと判定したのならば(S13)、送液バルブV2を開き、第2ポンプP2を稼働させて充填機20への送液を開始するとともに、充填機20の図示しない容器供給機構や充填バルブに指令を送ることで、充填ノズルから容器への製品液の充填を再開させる。
以上より、製造ライン1は、充填機20の停止および再起動を経て、定常の生産運転に復帰する。
【0047】
以下、表1を参照し、本実施形態の生産運転時の作用を比較例と比べて説明する。なお、比較例は、第2送液経路R2に熱交換器4が設けられていないことを除いて、本実施形態と同様である。これは、後述する表2および表3についても同様である。
【0048】
表1に記載の温度の値は、温度センサ101,102,201,202によりそれぞれ検知される温度のあくまで一例である。
温度センサ101は、冷却器12の入口側の液温度を検知し、温度センサ102は、冷却器12の出口側の液温度を検知する。また、温度センサ201は、熱交換器4の入口側の液温度を検知し、温度センサ202は、熱交換器4の出口側の液温度を検知する。
【0049】
【表1】
【0050】
表1の定常時を示す(1)と(3)とを比較する。比較例(1)においては、冷却器12のみによって製品液を規定温度T(温度センサ202が示す温度)にまで冷却する必要がある。これに対し、本実施形態(3)においては、冷却器12による冷却に続いて、熱交換器4による冷却が行われることによって製品液が規定温度Tに到達すれば足りる。そのため、冷却前の原料液の温度から規定温度Tにまで、つまり温度センサ101が示す温度から温度センサ202が示す温度にまで液温を下げるために必要な熱交換量を冷却器12と熱交換器4とに按分することができる。
【0051】
カーボネータ13による炭酸ガスの圧入前には、規定温度Tほど低くなくとも、液温を十分に下げておく必要があるので、熱交換器4と比べて冷却器12により多くの熱交換量を与えることが好ましい。その場合でも、比較例と比べると冷却器12に要求される熱交換量は小さいので、比較例に対して冷却器12の小型化を実現可能である。
熱交換器4には、充填機20の停止中における製品液の温度上昇分の冷却に十分な熱交換量が与えられることが好ましい。一例として、熱交換器4には、冷却器12の熱交換量の1/3の熱交換量を与えることができる。
【0052】
本実施形態においては、例えば(3)に示すように、冷却器12により原料液の温度を例えば30℃から10℃まで低下させ、炭酸ガスの圧入後は、熱交換器4により5℃まで低下させるとよい。このように冷却器12による冷却後に、熱交換器4により再冷却することにより、充填機20に供給される製品液の温度を規定温度T(例えば、5℃)に安定させることができる。この点、比較例(1)では、冷却器12により規定温度Tまで液温を下げたとしても、その後の液温は成り行き(表1に左向きの矢印で示す)であるから、外乱等により、充填機20に供給される製品液の温度が規定温度Tからシフトする可能性がある。
【0053】
次に、上記表1の非定常時を示す(2)と(4)とを比較する。ここで言う非定常時は、充填機20の停止から、充填機20の再起動を経て、容器への充填が再開されるまでを指している。
充填機20が長時間に亘り停止している間に、第2送液経路R2に滞留している製品液の温度が例えば15℃まで上昇したとする。その場合、比較例(2)は、第2送液経路R2に滞留した製品液を冷却する手段を持たないので、充填機20の停止中に第2送液経路R2に滞留していた製品液の全量が充填機20に供給され、充填ノズルから排出されるまでの間は、充填機20に供給される製品液の温度が滞留温度(15℃)に依存する。この場合、少なくとも、第2送液経路R2に滞留していた製品液の全量が廃棄されてしまう。
【0054】
それに対し、本実施形態は、例えば表1の(4)に示すように、第2送液経路R2における熱交換器4よりも上流側に滞留していた製品液の温度を熱交換器4により低下させることができる(温度センサ202が示す温度を参照)。このことと、冷却器12と熱交換器4との冷却作用により製品液の温度低下が進展する結果、充填機20に供給される製品液の温度を早期に規定温度Tに到達させて製品液の廃棄量を削減することが可能となる。
【0055】
〔内部洗浄運転〕
図4を参照し、製造ライン1の内部洗浄の運転例を説明する。内部洗浄運転時における3つの熱交換器の使用状態は次の通りである。
冷却器12:不使用
熱交換器4:加熱のために使用
加熱器32:加熱のために使用
【0056】
図4は、内部洗浄運転時における洗浄液の流れを示している。図4には、洗浄液が網掛けパターンで示されている。
製造ライン1による内部洗浄工程は、洗浄液を加熱器32により加熱する加熱ステップS07と、送液経路R1,R2において製品液と置換させた洗浄液を熱交換器4により再加熱する再加熱ステップS08とを備えている。
内部洗浄工程においては、カーボネーション装置10は稼働していない。冷却器12に第1熱媒体H1を導入する開閉バルブ121は閉じられている。
【0057】
加熱器32により加熱された洗浄液は、原料液タンク11や製品液タンク14を満たしつつ送液経路R1,R2を流れ、充填機20にも供給される。洗浄液は、充填機20のタンクも満たしつつ充填ノズルに供給されると、洗浄液戻り経路R4を通じて内部洗浄装置30へと戻される。戻された洗浄液は、バルブV31を通じて排出されるか、または、バルブV32を通じて洗浄液タンク31へと戻される。
【0058】
制御装置5は、生産工程から内部洗浄工程へと移行させるため、内部洗浄装置30の第3ポンプP3を稼働させ、バルブV10を開き、加熱器32には第2熱媒体H2として例えば蒸気を供給し、熱交換器4にもバルブ411,412,421,422を切り替えることにより第2熱媒体H2として例えば蒸気を供給する。内部洗浄工程の開始後、洗浄液は加熱器32による加熱と、熱交換器4による加熱とによって次第に昇温する。これと並行して、製品液の流路等における製品液から洗浄液への置換が進行する。製品液から洗浄液への置換が終了した状態で洗浄液が所定の洗浄温度Tに達すると、昇温状態から定常状態に移行する。
制御装置5は、例えば温度センサ303による検知温度と、洗浄液の濃度とを監視しながら、洗浄液の温度を所定時間に亘り洗浄温度T以上に管理することで、洗浄液による洗浄効果を担保する。
【0059】
送液経路R1,R2の配管やタンク11,14は、生産工程において低温の原料液・製品液に接触しているため、内部洗浄工程の開始時には、液温と同等の温度に冷却されている。そのため、加熱器32によってのみ洗浄液が加熱され、送液経路R1,R2を流れる洗浄液を加熱する手段を持たない場合(比較例)は、内部洗浄工程に移行してからしばらくの間は、加熱器32により昇温させた洗浄液から配管やタンクへの放熱量が多いために、昇温速度が遅い。
それに対して、本実施形態によれば、加熱器32により昇温させた洗浄液から送液経路R1,R2の配管やタンク11,14への放熱量が多いとしても熱交換器4により洗浄液が再加熱されるため、比較例と比べて、内部洗浄工程の開始後、洗浄液の温度を所定の温度にまで早期に到達させることができる。その分、非生産時間としての内部洗浄工程に費やす時間を短縮することができるので、生産性が向上する。
【0060】
洗浄液が流れる経路長等によっては、冷却器12に蒸気等の第2熱媒体H2を供給することで、冷却器12を加熱器として利用することも可能である。この場合は、洗浄液の経路に分布した3つの熱交換器32,12,4により洗浄液が加熱されることで洗浄液の温度分布が平準化されるので、内部洗浄に要する時間の短縮に寄与できる。
【0061】
次に、表2を参照し、本実施形態の内部洗浄運転時の作用を比較例と比べて説明する。
表2中の温度の値は、温度センサ101,102,201,202,301,302,303によりそれぞれ検知される温度のあくまで一例である。
温度センサ301は、加熱器32の入口側の液温度を検知し、温度センサ302は、加熱器32の出口側の液温度を検知する。また、温度センサ303は、洗浄液戻り経路R4の終端の液温度を検知する。
【0062】
【表2】
【0063】
上記表2の昇温時を示す比較例(1)は、温度センサ303による洗浄液の検知温度が所定の洗浄温度T(例えば80℃)に上昇するまでの途中経過を示している。このとき加熱器32の作用により、例えば、温度センサ301が示す温度から温度センサ302が示す温度まで洗浄液の温度が上昇する。しかし、その後に製品液が流れる送液経路R1,R2,R4には洗浄液を加熱する手段が設けられていない。そのため、表2に示す温度センサ101,201,303のそれぞれの検知温度からわかるように、洗浄液の温度は、洗浄液からタンクや配管への放熱により次第に低下する。
【0064】
それに対し、本実施形態(3)は、加熱器32よりも下流で洗浄液を加熱する手段としての熱交換器4を備えているから、加熱器32により昇温された洗浄液の温度が一旦は低下したとしても、熱交換器4により再び昇温する(温度センサ202が示す温度を参照)。そのため、比較例と比べて、内部洗浄運転の開始後、洗浄液の温度を洗浄温度Tにまで早期に到達させることができるので、内部洗浄工程に要する時間を短縮して早期に生産工程を再開することが可能である。
【0065】
表2に示す運転例では、洗浄液の昇温時にのみ熱交換器4を使用する。洗浄液の温度が洗浄温度Tに達すると、制御装置5は、バルブ412を閉めて熱交換器4への第2熱媒体H2の供給を停止する。その後は、表2の定常時の(2)と(4)における温度センサ301,302の検知温度が示すように、洗浄液は、加熱器32により加熱されることで昇温し、放熱により次第に温度が低下しつつも、洗浄液戻り経路R4の終端において洗浄温度T以上に保たれる。
表2の例に限らず、昇温後の定常時においても、加熱器32と熱交換器4とを併用して洗浄液の加熱を促進させることができる。
【0066】
〔本実施形態による効果〕
以上で説明したように、カーボネーション装置10と充填機20との間の第2送液経路R2に、製品液の冷却と洗浄液の加熱とに兼用される熱交換器4が設けられることによれば、主に、以下に列挙する効果を奏する。
【0067】
生産運転の定常時においては、炭酸ガスを製品液に圧入する前に製品液を冷却する冷却器12よりも下流で、熱交換器4によっても製品液が冷却されることにより、製品液の温度を規定温度Tに安定させることができる。そのため、充填時の泡立ちを抑えつつ、ガスボリュームの安定した製品液を安定して充填することができる。
【0068】
充填機20の長時間の停止により第2送液経路R2に滞留した製品液の温度が規定温度Tを逸脱したとしても、充填機20の再起動に伴い充填機20への送液が開始されると、滞留していた製品液が熱交換器4により冷却されるとともに、冷却器12の下流の熱交換器4による再冷却の作用により、製品液の温度低下が促進される。そのため、製品液を規定温度Tに早期に至らしめて製品液の廃棄量を削減することが可能となる。
【0069】
加えて、製品液の冷却に必要な熱交換量を冷却器12と熱交換器4とに按分することができるので、熱交換器4が設けられていない場合と比べて冷却器12のサイズを抑えることが可能となり、カーボネーション装置10の小型化が実現する。
【0070】
さらに、内部洗浄運転時には、加熱器32から下流に離れている熱交換器4により、加熱器32を通過した後の放熱によって温度が低下した洗浄液を再加熱することができる。そうすると、洗浄液が所定の洗浄温度Tに早期に到達するので、洗浄液が洗浄温度Tに到達した状態で所定時間に亘り行われる内部洗浄工程に要する時間を短縮することができる。
【0071】
[第2実施形態]
次に、図5および図6を参照し、本開示の第2実施形態を説明する。以下、第1実施形態と相違する事項を中心に説明する。第1実施形態と同様の要素には同じ符号を付している。
図5に示す第2実施形態の製造ライン1Aは、第1実施形態の製造ライン1に備わる全構成要素に加えて、熱交換器4を通過した製品液を製品液タンク14に戻すことが可能に構成されている製品液戻り経路R5を備えている。
【0072】
製品液戻り経路R5は、熱交換器4と充填機20との間の位置と、製品液タンク14とを繋いでいる。製品液戻り経路R5の始端の近傍には、開閉バルブV5が設けられている。開閉バルブV5を開き、送液バルブV2を閉じると、戻り経路R5を含んで製品液が循環する経路CPが形成される。つまり、製品液は、製品液タンク14と、熱交換器4と、戻り経路R5とを循環する。製品液は、循環経路CPを流れながら、熱交換器4により冷却される。
【0073】
製品液戻り経路R5は、製造ライン1Aの生産運転の定常時には使用されない。生産運転の定常時には、開閉バルブV5が閉じられ、送液バルブV2が開かれている。制御装置5は、充填機20が停止した後、充填機20の再起動に先行して開閉バルブV5を開き、送液バルブV2を閉じることで、送液バルブV2よりも上流に循環経路CPを与え、製品液を循環させる。
制御装置5は、例えば、充填機20の停止時間が閾値を超える、あるいは、第2送液経路R2に滞留した製品液の温度が閾値を超えると、開閉バルブV5を開き、送液バルブV2を閉じる。
また、制御装置5は、充填機20が停止したならば直ちに開閉バルブV5を開き、送液バルブV2を閉じることで、製品液の循環を開始するようにしてもよい。
【0074】
充填機20の再起動に先行して熱交換器4により製品液を冷却することを目的として、制御装置5には、製品液循環モードが用意されていてもよい。その場合、制御装置5は、充填機20の停止時に製品液循環モードが選択されると開閉バルブV5を開き、送液バルブV2を閉じる。
【0075】
以下に示す表3を参照し、第2実施形態の生産運転の非定常時の作用を比較例と比べて説明する。
【0076】
【表3】
【0077】
比較例は、製品液戻り経路R5を備えていない。そうすると、充填機20の停止に伴い、第2ポンプP2を停止させ、送液バルブV2を閉じて充填機20への送液を停止すると、第1実施形態と同様、第2送液経路R2に製品液が滞留する。そのため、充填機20の停止時からの時間経過に従い、第2送液経路R2において製品液の温度が上昇する(温度センサ201が示す温度を参照)。充填機20の再起動により充填機20への送液が開始されるまでは、第2送液経路R2に製品液が滞留することとなる。
【0078】
一方、第2実施形態においては、充填機20の停止中でも、製品液戻り経路R5を用いて循環させる製品液が熱交換器4により冷却されるので、表3の(2)に示すように、第2送液経路R2における製品液の温度上昇を抑制することができる。表3に示す例では、充填機20の停止時からの時間経過により例えば15℃にまで温度上昇した製品液が、熱交換器4により規定温度T(ここでは5℃)にまで冷却される。
【0079】
この場合は、充填機20が停止する前の第2送液経路R2における製品液の温度と変わらないので、充填機20の再起動に伴い、充填機20への送液が開始されると、開閉バルブV5よりも下流に滞留していた液を充填ノズルから排出させた後、充填ノズルの位置に容器を供給して生産を開始することができる。この場合、製品液の廃棄量を最小限に抑えることができる。
【0080】
第2実施形態によれば、充填機20の停止中に製品液を循環させながら熱交換器4により製品液を冷却することで、充填機20の停止中に上昇した製品液の温度を規定温度Tに近づけることができる。そのため、充填機20の再起動時から短時間のうちに製品液を規定温度Tまで低下させて充填処理を再開することが可能である。第2実施形態によれば、第1実施形態と比べて、充填機20の停止に伴う製品液の廃棄量をより一層削減して生産性を向上させることができる。
【0081】
〔既設の製造ラインの改修〕
第1実施形態の製造ライン1および第2実施形態の製造ライン1Aのいずれも、既設の製造ラインの改修により製造することが可能である。
改修により製造ライン1(図1)を製造するために、既設の製造ラインの第2送液経路R2に熱交換器4を設ける必要がある。熱交換器4には、製品液の冷却に用いられる第1熱媒体H1の回路C1と、洗浄液の加熱に用いられる第2熱媒体H2の回路C2とのいずれをも接続する。
【0082】
改修により製造ライン1A(図5)を製造する場合は、既設の製造ラインの第2送液経路R2への熱交換器4の設置と、熱交換器4への第1熱媒体回路C1および第2熱媒体回路C2の接続に加えて、既設ラインに製品液戻り経路R5および開閉バルブV5を設置すると良い。
【0083】
上記以外にも、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【0084】
[付記]
以上の開示によれば、以下に示す構成が把握される。
〔1〕製造ライン(1,1A)であって、
原料液を冷却する冷却器(12)を含み、冷却器(12)により冷却された原料液に炭酸ガスを溶解させた製品液を供給するカーボネーション装置(10)と、
カーボネーション装置(10)から供給される製品液を充填する充填機(20)と、
カーボネーション装置(10)から充填機(20)に供給される製品液が流れる送液経路(R2)と、
送液経路(R2)に設けられて製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器(4)と、
製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱する加熱器(32)を含み、製品液から洗浄液に置換させて内部洗浄を行う内部洗浄装置(30)と、を備え、
熱交換器(4)は、製品液の冷却および洗浄液の加熱に使用可能に構成される、
製造ライン。
【0085】
〔2〕送液経路(R2)は、熱交換器(4)を通過した液の全量を充填機(20)に供給可能に構成され、充填機(20)の停止後の再起動に伴い、カーボネーション装置(10)から充填機(20)への送液が開始されると、充填機(20)が停止している間に滞留していた製品液が熱交換器(4)により冷却される、
〔1〕項に記載の製造ライン。
【0086】
〔3〕熱交換器(4)は、送液経路(R2)における下流側に設けられている、
〔2〕項に記載の製造ライン。
【0087】
〔4〕熱交換器(4)を通過した製品液を、カーボネーション装置(10)に含まれる製品液タンク(14)に戻すことが可能に構成されている戻り経路(R5)を備え、
充填機(20)の停止後の再起動に先立ち、製品液タンク(14)、熱交換器(4)、および戻り経路(R5)に製品液が循環する、
〔1〕項に記載の製造ライン。
【0088】
〔5〕製造ライン(1,1A)による生産工程および内部洗浄工程を備える製造方法であって、
生産工程は、
原料液を冷却器(12)により冷却するステップ(S01)と、
冷却器(12)により冷却された原料液に炭酸ガスを溶解させて製品液を得るステップ(S02)と、 炭酸ガスが溶解されて充填機(20)に送られる製品液を冷却器(12)よりも下流で熱交換器(4)により再冷却するステップ(S04)と、
充填機(20)により製品液を充填するステップ(S05)と、を含み、
内部洗浄工程は、
製造ラインの内部洗浄に用いられる洗浄液を加熱器(32)により加熱するステップ(S07)と、
製品液と置換させた洗浄液を加熱器(32)よりも下流で熱交換器(4)により再加熱するステップ(S08)と、を含む、製造方法。
【0089】
〔6〕生産工程における充填機(20)の停止に伴い充填機(20)への送液を停止した後、充填機(20)の再起動に伴い充填機(20)への送液を開始すると、充填機(20)が停止している間に滞留していた製品液を熱交換器(4)により冷却する、
〔5〕項に記載の製造方法。
【0090】
〔7〕製造ラインは、熱交換器(4)を通過した製品液を製品液タンク(14)に戻すことが可能に構成されている戻り経路(R5)を備え、
充填機(20)の停止後の再起動に先立ち、製品液タンク(14)、熱交換器(4)、および戻り経路(R5)に製品液を循環させる、
〔5〕項に記載の製造方法。
【0091】
〔8〕上記〔1〕から〔4〕のいずれか一項に記載の製造ラインを製造する方法であって、
既設の製造ラインの送液経路(R2)には、製品液と熱媒体とを熱交換させる熱交換器(4)を設けるとともに、
熱交換器(4)には、製品液の冷却に用いられる熱媒体の回路(C1)と、製品液と置換させた洗浄液の加熱に用いられる熱媒体の回路(C2)とのいずれをも接続可能とする、
製造ラインの製造方法。
【符号の説明】
【0092】
1,1A 製造ライン
2 充填装置
4 熱交換器
5 制御装置
10 カーボネーション装置
11 原料液タンク
12 冷却器
13 カーボネータ
14 製品液タンク
15 炭酸ガス供給源
20 充填機
30 内部洗浄装置
31 洗浄液タンク
32 加熱器
101,102,201,202,301,302,303 温度センサ
121 開閉バルブ
411,412,421,422 バルブ
C1 第1熱媒体回路
C2 第2熱媒体回路
CP 循環経路
流量
供給流量
H1 第1熱媒体
H2 第2熱媒体
P1 第1ポンプ
P2 第2ポンプ
P3 第3ポンプ
R1 第1送液経路
R2 第2送液経路
R3 第3送液経路
R4 洗浄液戻り経路
R5 製品液戻り経路(戻り経路)
S01 冷却ステップ
S02 炭酸ガス溶解ステップ
S03 貯留ステップ
S04 再冷却ステップ
S05 充填ステップ
S07 加熱ステップ
S08 再加熱ステップ
規定温度
tA 所要時間
tB 所要時間
洗浄温度
V10 バルブ
V11 バルブ
V2 送液バルブ
V31,V32 バルブ
V5 開閉バルブ
図1
図2
図3
図4
図5
図6