(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137274
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/583 20060101AFI20240927BHJP
F27D 3/12 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C04B35/583
F27D3/12 S
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048735
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000006183
【氏名又は名称】三井金属鉱業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】出川 亮
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 敦也
(72)【発明者】
【氏名】古賀 竜士
(72)【発明者】
【氏名】有馬 峻
【テーマコード(参考)】
4K055
【Fターム(参考)】
4K055AA05
4K055HA02
4K055HA23
4K055HA27
(57)【要約】
【課題】焼成後に変色が少なく十分な明度を有すると共に、落下等の厳しいハンドリングに耐えうる窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の製造方法は、(1)窒化ホウ素の原料粉、焼結助剤および媒体を含む原料ペーストから複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体を含む成形体を作成する成形工程、ならびに(2)焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる焼成治具を用いて成形体を焼成し、複数条の第1線条部で構成される第1線条部層および複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含む窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得る焼成工程を含む。本発明の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、複数条の第1線条部および複数条の第2線条部を含み、表面の明度L*の値が80以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法であって、
(1)窒化ホウ素の原料粉、焼結助剤および媒体を含む原料ペーストから成形体を作成する成形工程であって、
所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条塗工体、および、
前記第1線条塗工体の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条塗工体を含む成形体を作成する成形工程、ならびに
(2)焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる焼成治具を用いて、前記成形体を焼成し、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得る焼成工程であって、
この窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、
所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および、
前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含む焼成工程
を含む、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法。
【請求項2】
前記焼成工程において、少なくとも1つの窒化ホウ素製セラミックスプレートを前記第2線条塗工体に戴置することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼成治具が、焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる坩堝である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記焼成工程において、前記窒化ホウ素製セラミックスプレートを前記第2線条塗工体に戴置する際の加圧力が0.05N/mm2以上0.5N/mm2以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体であって、
(i)所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および、
(ii)前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含み、
前記第1線条部層と前記第2線条部層とが一体的に形成されており、
前記窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の表面の明度L*の値が80以上である、
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体。
【請求項6】
前記窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の主面の最長部における反り量を前記最長部の長さで除算した単位長あたりの反り率が5×10-3mm/mm以下である、請求項5に記載の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体。
【請求項7】
前記窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を、SUS板の上方、板面から20mmの位置で略面平行の状態に保持してから落下させたとき割れが生じない、請求項5または6に記載の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法に関する。本発明は、より具体的には、焼成後に崩壊せず、変色が少なく十分な明度を有すると共に、落下させるような厳しいハンドリングに耐えうる窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミックス製の基板を焼成するときには、被焼成物を棚板や敷板などとも呼ばれるセッター上に載置して焼成を行うことが一般的である。被焼成物の脱脂・焼成時間を短くして、単位時間当たりの製造個数を増加させるためには、焼成工程を急熱及び急冷することが必要であるところ、従来のセラミックス製セッターはこれを急熱及び/又は急冷すると、割れ等の欠陥が生じやすくなる。また、繰り返しの使用によっても割れ等の欠陥が生じやすくなる。また、金属製セッターを用いた場合には、酸化雰囲気では使用できないという問題や、1200℃以上の高温領域では、繰り返し使用すると、大きく変形するという問題が指摘されている。
【0003】
被焼成物の急速な加熱及び冷却を行うときにセッターに割れ等が発生することを防止するための技術は、例えば、特許文献1(特開2018-193274号公報)に開示されている。具体的には、特許文献1には、セラミックス製の複数の第1の線条部と、これと交差するセラミックス製の複数の第2の線条部とを有するセラミックス格子体であって、交差部の縦断面視において第1の線条部における凸形の曲線部の頂部と第2の線条部における円形又は楕円形における下向きに凸の頂部のみが接触している(いわゆる点接触している)セラミックス格子体が開示されている。
また、セラミックス製の複数の第1の線条部と、これと交差するセラミックス製の複数の第2の線条部とを有するセラミックス格子体であって、第1の線条部と第2の線条部とが各々の接触箇所にて点ではなく面として接触した形態のセラミックス格子体も報告されている。
【0004】
ところで、セラミックスを構成する材料のうち、窒化物は一般に、熱伝導率が高い、誘電率が低い、熱膨張係数が低い等、焼成プロセスに使用する際の望ましい特性を備える。それゆえ、窒化ホウ素等の窒化物は、セラミックス製の基板等を焼成するためのセラミックス製セッターとして好適に用い得るポテンシャルを有する材料として期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術において、窒化ホウ素を用いて形成されたセラミックス格子体の焼成用セッターはこれまで具体的に示されていなかった。本発明者らは、窒化ホウ素粉を用いて焼成用セッターとしてセラミックス格子体を製造しようとしたところ、焼成炉から焼成物を取り出した際に簡単に崩壊してしまうなどの課題を含みうることが分かった。また、窒化ホウ素粉を用いてセラミックス格子体を製造すると、変色が大きくなり、あるいは明度が低下することがあるので、均一な色調の焼結体を製造するためには課題もあることが分かった。
【0007】
一方、セラミックス製の焼成用セッターは、落下を含むような厳しいハンドリングを行う状況に置かれることや、コンベアや台車等の搬送装置に載せられあるいは多段積みされた状態で保管し、運搬することが多い。例えば、焼成用セッターを保管庫から段差を超えて他の場所へ台車を用いて運搬する際には、焼成用セッターの物理的な耐久性が低い場合、落下や台車の振動等によってセッターが破損・崩壊することもあり得る。また、焼成用セッターの反りが大きい場合、被焼成物を焼成する際の安定性が損なわれるだけでなく、台車の振動等によってセッターが破損・崩壊する事象も生じ得る。
【0008】
ここで、セラミックス製の焼成用セッターについて、セッター製造時における焼成後の変色の発生や明度の低下はセッターの物理的な強度・耐久性の低下と相関しているので、焼成後に変色が発生して色調が不均一になり、あるいは明度が低下した焼成用セッターは落下や台車の振動等によって破損・崩壊することが多くなる。従って、焼成後に変色が少なく均一な色調であり、十分な明度を有するセラミックス製の焼成用セッターを得ることが望まれる。
【0009】
また、平板(プレート)形状などの焼成用セッターは、焼成後に大きな反りが発生した場合、研削によって平坦化して反りを低減し、平坦化することが可能である。しかし、セラミックス格子体の焼成用セッターは、焼成後に大きな反りが発生した場合に研削によって平坦化しようとしても、線条部の線幅が狭いと応力が掛かって線条部が欠損するおそれがあるから、そのような事後平坦化が不可能である。従って、セラミックス製の焼成用セッター、特にセラミックス格子体の焼成用セッターを得る場合には、セラミックス格子体の製造(焼成)の直後の段階で、反りが小さい窒化ホウ素格子体が望まれる。
【0010】
これらの従来技術の不都合に鑑みて、本発明が解決しようとする第1の課題は、焼成後に崩壊せず、また焼成後に変色が少なく均一な色調であり、十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体、およびその製造方法を提供することである。
さらに、本発明が解決しようとする第2の課題は、焼成後に崩壊せず、また焼成後に変色が少なく均一な色調であり、十分な明度を有することに加え、好ましくは、焼成後に反りが小さい窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究した結果、意外にも、窒化ホウ素の原料粉を含む原料ペーストに焼結助剤を含ませて焼成用の成形体を作成すると共に、窒化ホウ素製の焼成治具を用いて焼成を行うことによって、焼成後に崩壊せず、また焼成後に変色が少なく均一な色調であり、十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を製造することができるとの知見を得て本発明を完成させた。
また、好ましい一態様として、窒化ホウ素の原料粉を含む原料ペーストから作成された成形体を焼成する際に、少なくとも1つの窒化ホウ素製セラミックスプレートを成形体上に戴置することによって、焼成後に反りが小さい窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を製造することができるとの知見を得て本発明を完成させた。
【0012】
このような本発明に包含される諸態様は、以下のとおりである。
[1].
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法であって、
(1)窒化ホウ素の原料粉、焼結助剤および媒体を含む原料ペーストから成形体を作成する成形工程であって、
所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条塗工体、および、
前記第1線条塗工体の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条塗工体を含む成形体を作成する成形工程、ならびに
(2)焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる焼成治具を用いて、前記成形体を焼成し、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得る焼成工程であって、
この窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、
所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および、
前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含む焼成工程
を含む、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法。
[2].
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体であって、
(i)所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および、
(ii)前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含み、
前記第1線条部層と前記第2線条部層とが一体的に形成されており、
前記窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の表面の明度L*の値が80以上である、
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体。
【発明の効果】
【0013】
本発明の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法によれば、焼成後に崩壊せず、かつ変色が少なく均一な色調であると共に、十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得ることができる。上述のように、焼成物の製造時における焼成後の変色の発生や明度の低下はその焼成物の物理的な強度・耐久性の低下と相関しているところ、本発明によって得られる窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は十分な明度を有するから、落下を含むような厳しいハンドリングを行う状況に置かれた場合や、台上に載せられあるいは多段積みされた状態で保管し運搬するような場合でも非常に高い耐久性を発揮することができる。
また、本発明の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体およびその製造方法の好ましい一態様によれば、焼成後に崩壊せず、かつ変色が少なく均一な色調であり、十分な明度を有することに加えて、さらに焼成後に反りが小さい窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得ることができる。反りが小さいセラミックスシート焼結体の焼成用セッターを用いることによって、被焼成物を焼成する際の安定性を大幅に向上させることが可能になる。
本発明によって得られる、焼成後に崩壊せず、かつ変色が少なく均一な色調であると共に、十分な明度を有し、好ましくはさらに焼成後に反りが小さい窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、セラミックス製の基板を焼成するためのセラミックス製セッターとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、窒化ホウ素を含んでなる焼成治具である坩堝内で、複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体を含む成形体に窒化ホウ素製セラミックスプレートを戴置して焼成する際の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施形態に係る窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体(焼成用セッター)の概略図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明の一実施形態に係るいわゆる点接触の構成を備える窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体(焼成用セッター)を示す斜視図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す焼結体を反対側から見た斜視図である。
【
図8】
図8は、
図3に示す焼結体における第2の線条部側から見た交差部付近の投影図である。
【
図9】
図9は、
図3に示す焼結体における第1の線条部側から見た交差部付近の投影図である。
【
図11】
図11(a)は、本発明の一実施形態に係るいわゆる面接触の構成を備える窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体(焼成用セッター)を示す斜視図であり、
図11(b)は、
図11(a)に示す焼結体を反対側から見た斜視図である。
【
図16】
図16は、
図11に示す焼結体における第2の線条部側から見た交差部付近の投影図である。
【
図17】
図17は、
図11に示す焼結体における第1の線条部側から見た交差部付近の投影図である。
【
図19】
図19は、実施例にて焼成後に得られた焼結体の外観(変色なしの正常な外観)と比較例にて焼成後に得られた焼結体の外観(変色あり)とを並列させ比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法
本発明による窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の製造方法は、(1)窒化ホウ素の原料粉、焼結助剤および媒体を含む原料ペーストから成形体を作成する成形工程、ならびに(2)焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる焼成治具を用いて、前記成形体を焼成し、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得る焼成工程を含む。
これらの工程は、以下の説明では単に成形工程および焼成工程と略することがある。
【0016】
成形工程においては、窒化ホウ素の原料粉、焼結助剤および媒体を含む原料ペーストを用いて、所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条塗工体、および、前記第1線条塗工体の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条塗工体を含む成形体を作成する。
【0017】
媒体および焼結助剤と組み合わせて窒化ホウ素の原料粉を用いた原料ペーストから成形体を作成し、この成形体を適切な条件下で焼成することによって窒化ホウ素焼結体を得ることができる。
【0018】
原料ペーストに用いられる窒化ホウ素の原料粉としては、六方晶窒化ホウ素粉末、立方晶窒化ホウ素粉末、アモルファス窒化ホウ素粉末などが挙げられる。ここでの窒化ホウ素の原料粉の平均粒径は、0.1~50μmの範囲内であることが好ましい。この平均粒径は、レーザー回折/散乱式の粒子径分布測定装置において、体積基準値D50によって定められるものである。窒化ホウ素の原料粉の平均粒径が上記範囲内であることによって、焼成後の構造的な強度・安定性に優れた窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得ることが可能になる。
【0019】
成形体を作成するための原料ペーストの媒体としては、通常、水が用いられる。水以外の媒体としては、アルコール、アセトン及び酢酸エチルなども用いられる。これらの媒体を2種類以上混合してもよい。原料ペーストにおける媒体の質量割合は、ペースト全体の質量に対して、通常10質量%以上60質量%以下であってよく、15質量%以上55質量%以下であることが好ましい。
【0020】
成形体を作成するための原料ペーストは、焼結助剤を含む。窒化ホウ素焼結体の作製に用いられる焼結助剤として周知な例としては、特に限定されないが、窒化ケイ素、炭化ケイ素、ホウ素、酸化ホウ素、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、フッ化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、ケイ素、ホウ化カルシウム、ホウ化マグネシウム、酸化マグネシウム、ホウ酸、炭酸カルシウム等が挙げられる。これらの焼結助剤は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。焼結助剤を用いることにより、焼成後の強度安定性に優れた窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を得ることが可能になる。これらの焼結助剤の中でも、窒化ホウ素の一次粒子を十分に結合させる観点から、ホウ素化合物(ホウ素単体を含む)、およびカルシウム化合物を用いるのが好ましい。
【0021】
原料ペーストにおける窒化ホウ素の原料粉に対する焼結助剤の質量割合は、通常0.1~20%であってよく、好ましくは8~20%であってよい。窒化ホウ素の原料粉に対する焼結助剤の添加質量割合が上記範囲内であることによって、焼成後に崩壊せず、変色が少なく十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体をより容易に得ることが可能になる。
【0022】
原料ペーストは結合剤を含んでよい。結合剤としては、特に限定ないが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリエチレン、オキシド、デキストリン、リグニンスルホン酸ソーダおよびアンモニウム、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウムおよびアンモニウム、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アラビアゴム、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸およびポリアクリルアミドなどのアクリル系ポリマー、キサンタンガムおよびグアガムなどの増粘多糖体類、ゼラチン、寒天およびペクチンなどのゲル化剤、酢酸ビニル樹脂エマルジョン、ワックスエマルジョン、並びにアルミナゾルおよびシリカゾルなどの無機バインダーなどが挙げられる。これらのうちの2種類以上を混合して用いてもよい。原料ペーストにおける結合剤の質量割合は、原料ペーストの全質量に対して、例えば0質量%以上40質量%以下であってよく、1質量%以上40質量%以下であることが好ましく、3質量%以上30質量%以下であることが更に好ましい。
【0023】
原料ペーストの粘度は、線条塗工体の塗布時の温度において高粘度であることが、線条塗工体を首尾よく製造し得る点から好ましい。原料ペーストの粘度は、特に限定されないが、塗布時の温度(典型的には約25℃等の室温)において1.5MPa・s以上5.0MPa・s以下であることが好ましく、1.7MPa・s以上3.0MPa・s以下であることが更に好ましい。ここでの原料ペーストの粘度は、コーンプレート型回転式粘度計又はレオメーターを用いて、回転数0.3rpmにて測定開始後4分時の測定値を指す。
【0024】
原料ペーストには、粘性調整剤として、増粘剤、凝集剤、チクソトロピック剤などを含有させることができる。
増粘剤の例としては、特に限定されないが、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、アルキルアリルスルホン酸、アルキルアンモニウム塩、エチルビニルエーテル・無水マレイン酸コポリマー、フュームドシリカ、アルブミンなどのタンパク質などが挙げられる。多くの場合、結合剤は、増粘効果があるため、増粘剤に分類されることがあるが、更に厳密な粘性調整が必要とされる場合には、別途、結合剤に分類されない増粘剤を用いることができる。
凝集剤の例として、特に限定されないが、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸エステル、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウムなどが挙げられる。チクソトロピック剤の例として、脂肪酸アマイド、酸化ポリオレフィン、ポリエーテルエステル型界面活性剤などが挙げられる。
【0025】
吐出装置からの吐出量を安定させるため、原料ペーストは、例えば可塑剤、潤滑剤、分散剤、沈降抑制剤、pH調整剤などを含んでもよい。
可塑剤の例としては、特に限定されないが、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどのグリコール系、グリセリン、ブタンジオール、フタル酸系、アジピン酸系、リン酸系などが挙げられる。
潤滑剤の例としては、特に限定されないが、流動パラフィン、マイクロワックス、合成パラフィンなどの炭化水素系、高級脂肪酸、脂肪酸アミドなどが挙げられる。
分散剤の例としては、特に限定されないが、ポリカルボン酸ナトリウム若しくはアンモニウム塩、アクリル酸系、ポリイチレンイミン、リン酸系などが挙げられる。
沈降抑制剤の例としては、特に限定されないが、ポリアマイドアミン塩、ベントナイト、ステアリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
pH調整剤の例としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、アンモニア水、シュウ酸、酢酸、塩酸などが挙げられる。
【0026】
このようにして得られた原料ペーストを吐出装置から平坦な基板上に吐出することによって、所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条塗工体を形成する。第1線条塗工体は、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の第1線条部に対応するものである。
吐出装置としては、例えば小型押し出し機や印刷機などの公知の種々の装置を用いることができる。これらの吐出装置は、典型的に、ノズルを有するディスペンサを備えていてよい。第1線条塗工体が吐出された後、第1線条塗工体に含まれている媒体を除去して乾燥させ、粘度を高める操作を行うことができる。第1線条塗工体に熱風を吹き付けたり、赤外線を照射したりすることで媒体を除去することができる。媒体除去操作後の第1線条塗工体における媒体の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下にまで低減されていてよい。このような媒体の除去操作によって、第1線条塗工体の粘度は極めて高いものとなり、その保形性が一層高まる。
【0027】
次いで、原料ペーストを用いて、第1線条塗工体の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条塗工体を形成する。第2線条塗工体は、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の第2線条部に対応するものである。第2線条塗工体を形成するための原料ペーストは、第1線条塗工体を形成するための原料ペーストと同一であっても異なっていてよいが、線条塗工体形成の効率性、ならびに、生産するセラミックスシート焼結体の構造および物性の一体性の観点から、同一であることがより好ましい。
【0028】
成形体として形成される複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体の具体的な形状は、後述する種々の実施形態による複数条の第1線条部で構成される第1線条部層および複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含む窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の所望の形状に適合させるように構築することができる。
【0029】
追加の一実施形態において、原料ペーストを用いて、第2線条塗工体の各条の上に接して第1線条塗工体および第2線条塗工体と平面視にて交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第3線条塗工体を任意選択で形成してもよい。任意選択の第3線条塗工体を形成するための原料ペーストは、第1/第2線条塗工体を形成するための原料ペーストと同一であっても異なっていてよいが、線条塗工体形成の効率性、ならびに、生産するセラミックスシート焼結体の構造および物性の一体性の観点から、同一であることがより好ましい。
【0030】
このようにして得られた複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体を含む成形体は、これを基板から剥離して焼成治具(焼成炉)内に載置して焼成を行うことができる。この焼成によって目的とする窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体が得られる。得られる窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部(上記複数条の第1線条塗工体の焼成物)で構成される第1線条部層、および、前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部(上記複数条の第2線条塗工体の焼成物)で構成される第2線条部層を含む。焼成により、複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含む窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、一体的な構造物として構築される。窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体のこのような一体的な構造物としての構築は、通常、各部材の接着剤による物理的結合を含まない。
【0031】
焼成は、必要に応じて、大気雰囲気中(大気圧下)で行ってもよいし、例えば窒素などの不活性ガスによる加圧下にて行ってもよい。焼成温度は、セラミックス素材の原料粉の種類に応じて適切な温度を選択すればよい。焼成時間に関しても同様である。焼成温度の非限定的な例としては、500℃以上、800℃以上、または1000℃以上であってよく、4000℃以下、3500℃以下、または3000℃以下であってよい。焼成時間の非限定的な例としては、30分以上、1時間以上または2時間以上であってよく、24時間以下、12時間以下、または6時間以下であってよい。
【0032】
焼成プロセスにおいては、焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなる装置であって、通常「焼成炉」あるいは「焼成窯」と称される装置が用いられる。この焼成プロセスにおいて、主に不活性雰囲気中での焼成を行う場合、装置内で発生するコンタミネーション防止のため、より好ましくは「坩堝」と称される治具が用いられる。坩堝は、通常、収納本体(被焼成物の収納空間を形成する)、および炉蓋(蓋体)を含んで構成される。坩堝は、本体部および炉蓋以外にも、封止具等の付属物を有していてよい。坩堝の収納空間の輪郭は、特に限定されず、立方体、直方体、円柱、楕円柱などの各種形態をとり得るが、その内底面は実質的に平坦であることが好ましい。坩堝は、窒素などの不活性ガスの注入口を有していてよい。
【0033】
焼成治具における焼成雰囲気の曝露面を含む部材の構成材料は、窒化ホウ素以外の元素を含んでいてもよく、例えば、上述の原料ペーストに混合されていてよい窒化ホウ素の原料粉以外のセラミックス素材を含んでいてもよい。焼成治具において焼成雰囲気の曝露面を含む部材の構成材料は、通常、窒化ホウ素の含有割合が50質量%以上であってよく、好ましくは70質量以上であってよく、より好ましくは90質量%以上であってよく、一典型例としては実質的に100質量%であってよい。
坩堝などの焼成治具の収納本体および炉蓋(蓋体)または炉頂における焼成雰囲気の曝露面とそれ以外の部分とは、同じ材質であっても異なる材質であってもよい。焼成治具として坩堝を用いる場合、好ましくは、収納本体および炉蓋(蓋体)の実質的に全てが窒化ホウ素から形成されていてよい。
焼成雰囲気の曝露面が窒化ホウ素を含んでなり、かつ曝露面を含む部材における窒化ホウ素の含有割合が通常50質量%以上であり、好ましくは70質量以上である焼成治具を用いることにより、焼成後に崩壊せず、かつ変色が少なく均一な色調である共に、十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を製造することが容易になる。
【0034】
焼成治具(典型的には坩堝)中のカーボン含有量は、通常0~10質量%の範囲であってよく、好ましくは0~3質量%の範囲であってよい。ここでの焼成治具中のカーボン含有量は、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、LECO社製炭素硫黄同時分析装置(CS-844)を用いてJSS-152-19に従って測定された値である。焼成治具中のカーボン含有量が上記範囲内であることによって、焼成後に変色が少なく十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体をより容易に得ることが可能になる。
【0035】
複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体を含む成形体を焼成する工程において、少なくとも1つの窒化ホウ素製セラミックスプレートを第2線条塗工体(または形成される場合は第3線条塗工体)に戴置することも好ましい。成形体の焼成工程において、このように少なくとも1つの窒化ホウ素製セラミックスプレートを第2線条塗工体に戴置することによって、焼成後に生じる反りが効果的に抑制された(反りが十分に低減された)窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を製造することが可能になる。
【0036】
焼成工程にて使用される窒化ホウ素製セラミックスプレートの構成材料は、窒化ホウ素以外の元素、例えば、上述の原料ペーストに混合されていてよい窒化ホウ素の原料粉以外のセラミックス素材を含んでいてもよい。
窒化ホウ素製セラミックスプレートの構成材料は、通常、窒化ホウ素の含有割合が50質量%以上であってよく、好ましくは70質量以上であってよく、より好ましくは90質量%以上であってよく、一典型例としては実質的に100質量%であってよい。好ましくは、このセラミックスプレートの実質的に全てが窒化ホウ素から形成されていてよい。セラミックスプレートが窒化ホウ素を含んでなり、かつ窒化ホウ素の含有割合が通常50質量%以上であり、好ましくは70質量以上であるセラミックスプレートを用いることによって、焼成後に生じる反りが効果的に抑制された(反りが十分に低減された)窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体を製造することがより容易になる。
【0037】
窒化ホウ素製セラミックスプレート中のカーボン含有量は、通常0~10質量%の範囲であってよく、好ましくは0~3質量%の範囲であってよい。ここでのセラミックスプレート中のカーボン含有量は、メノウ乳鉢を用いて粉砕し、LECO社製炭素硫黄同時分析装置(CS-844)を用いてJSS-152-19に従って測定された値である。セラミックスプレート中のカーボン含有量が上記範囲内であることによって、焼成後に変色が少なく十分な明度を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体をより容易に得ることが可能になる。
【0038】
成形体の焼成工程において用いられる窒化ホウ素製セラミックスプレートは、特に限定されないが、成形体の全体に対して均等な負荷を与えて焼結体の反り抑制効果を最大化する観点から、略均一な厚みを有するものであることがより好ましい。1枚の窒化ホウ素製セラミックスプレートの平均厚みは、特に限定されないが、例えば1mm以上20mm以下、または1.5mm以上10mm以下であってよい。
窒化ホウ素製セラミックスプレートは、1枚で使用してもよいし、複数枚、例えば2~5枚を重ねて使用してもよい。このように重ねて使用する場合のセラミックスプレートの平均厚みの範囲は、上で例示されたものと同様であってよい。窒化ホウ素製セラミックスプレートの大きさは、特に限定されないが、成形体の全体に対して均等な負荷を与えるために、それを戴置する第2線条塗工体(または形成される場合は第3線条塗工体)の実質的に全体を覆う程度の大きさを有していることが望ましい。一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスプレートの大きさは、それを戴置する第2線条塗工体(または形成される場合は第3線条塗工体)の約90%以上を覆う大きさであってよく、好ましくは約100%以上を覆う大きさであってよく、最も好ましくは約100%であってよい。好ましい一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスプレートとそれを戴置する第2線条塗工体(または形成される場合は第3線条塗工体)とは、実質的に同じ形状を有し、かつ実質的に同じ大きさであってよい。
【0039】
焼成工程において、窒化ホウ素製セラミックスプレートを第2線条塗工体(または形成される場合は第3線条塗工体)に戴置する際の加圧力は、通常0.02N/mm2以上1.0N/mm以下であってよく、好ましくは0.05N/mm2以上0.5N/mm2以下であってよい。窒化ホウ素製セラミックスプレートの加圧力をこのような範囲内に制御することによって、得られる焼結体の反り抑制効果を更に高めることができる。
【0040】
ここでの窒化ホウ素製セラミックスプレート戴置の加圧力は、以下の手法により近似計算された値を意味する。
・複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体(および任意選択で複数条の第3線条塗工体)を含む成形体の最上部の線条部にインクを塗布してから、窒化ホウ素製セラミックスプレート(1枚または複数枚)を戴置し、プレート上のインク着色箇所の幅を測定することによって、成形体の最上部の線条部とプレートとの接触幅W(mm)を見積もる。
・成形体の最上部の線条部の長さL(mm)、本数N、および上記の接触幅W(mm)を乗じることによって、成形体の最上部の線条部とプレートとの接触面積(mm2)を計算する。
・窒化ホウ素製セラミックスプレート(1枚または複数枚)の全質量から単位換算により荷重F(単位:ニュートン、N)を算出する。
・荷重F(N)を、成形体の最上部の線条部とプレートとの接触面積(mm2)で除することによって、窒化ホウ素製セラミックスプレート戴置の加圧力(単位:N/mm2)を算出することができる。
【0041】
図1に、窒化ホウ素を含んでなる焼成治具である坩堝内で、複数条の第1線条塗工体および複数条の第2線条塗工体を含む成形体に窒化ホウ素製セラミックスプレートを戴置して焼成する際の模式図を例示する。
図1中、1は窒化ホウ素を含んでなる焼成治具である坩堝、1aは坩堝の本体部(被焼成物の収納部)、1bは坩堝の炉蓋(蓋体)、2は複数条の第1線条塗工体、3は2の複数条の第1線条塗工体と垂直に交差するように設けれられた複数条の第2線条塗工体(2の複数条の第1線条塗工体と3の複数条の第1線条塗工体との積層物が2段組み合わせられた構造例を示す)、4は窒化ホウ素製セラミックスプレート(重し)の積層物、4a及び4bは各個の窒化ホウ素製セラミックスプレートを指す。図示していないが、この坩堝は、大気圧下での焼成が可能なように設計されると共に、本体部または蓋体に窒素ガスなどの不活性ガスの注入口を備えていてよい。
【0042】
2.窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体
本発明による窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、
(i)所与の間隔で配置された各条が一方向に延伸された複数条の第1線条部で構成される第1線条部層、および、
(ii)前記第1線条部の各条の上に接してこれと交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第2線条部で構成される第2線条部層を含み、
前記第1線条部層と前記第2線条部層とが一体的に形成されており、
前記窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の表面の明度L*の値が80以上である。
【0043】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、特に限定されないが、上述した製造方法の1つまたは複数の実施形態を組み合わせて製造することができる。
【0044】
複数条の第1線条部の各線条間の所与の間隔は、3つ以上の線条から構成される場合、すなわち間隔が2つ以上ある場合において、少なくとも部分的に異なるように設計されていてもよいし、実質的に等しくなるように設計されていてもよい。
また、複数条の第2線条部の各線条間の所与の間隔は、3つ以上の線条から構成される場合、すなわち間隔が2つ以上ある場合において、少なくとも部分的に異なるように設計されていてもよいし、実質的に等しくなるように設計されていてもよい。複数条の第1線条部の各線条間の所与の間隔と、複数条の第2線条部の各線条間の所与の間隔とは、それぞれ独立に設計され得る。
【0045】
上述された、第1線条部層と第2線条部層とが一体的に形成されていることとは、第1線条部層を構成する線条群と第2線条部層を構成する線条群とが、それらの接触箇所にて一体的な構造を成すように焼成・連結されて、容易に分離できないように形成されていることを意味する。
一態様において、第1線条部層と第2線条部層とは、第1線条部層を構成する線条群と第2線条部層を構成する線条群とが、それらの接触箇所にて一体的な構造を成すように焼成・連結されて、容易に分離できないように形成されており、かつ、第1線条部層と第2線条部層とが、あるいは各線条部層の異なる部分同士が単一の組成から形成されていてよい。
他の一態様において、第1線条部層と第2線条部層とは、第1線条部層を構成する線条群と第2線条部層を構成する線条群とが、それらの接触箇所にて一体的な構造を成すように焼成・連結されて、容易に分離できないように形成されており、かつ、第1線条部層と第2線条部層とが、あるいは各線条部層の異なる部分同士が異なる複数の組成から形成されていてよい。
【0046】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の表面の明度L*の値は、80以上であり、好ましくは85以上であり、より好ましくは90以上、更により好ましくは92以上、最も好ましくは95以上であってよい。このように表面において高い値の明度L*を有する窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、落下を含むような厳しいハンドリングを行う状況に置かれた場合や、多段積みして保管し運搬するような場合でも非常に高い耐久性を発揮することができる。
ここでの焼結体表面の明度は、CIE1976の明度L*であり、JIS Z8722(2009)に準拠して、標準光とされるD65光源を用いて正反射(鏡面反射)光を含むSCI方式で、幾何条件cにてXYZ座標を測定し、これをL*a*b*座標に換算することによって明度L*を得ることができる。明度L*の測定には、市販の分光測色計(典型的な装置例としてはコニカミノルタ社製の分光測色計「CM-600d」)を用いることができる。
【0047】
好ましい一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の主面の最長部における反り量をその最長部の長さで除算した単位長あたりの反り率は、通常、5×10-3mm/mm以下であってよい。その反り率は、好ましくは4.5×10-3mm/mm以下であってよく、より好ましくは4×10-3mm/mm以下であってよく、更により好ましくは3.5×10-3mm/mm以下であってよく、より一層好ましくは3×10-3mm/mm以下であってよく、更により一層好ましくは2.5×10-3mm/mm以下であってよく、最も好ましくは2×10-3mm/mm以下であってよい。このように反りが小さいセラミックスシート焼結体を焼成用セッターとして用いることによって、被焼成物(例えばセラミックス製の基板など)を焼成する際の安定性を大幅に向上させることが可能になる。
【0048】
具体的には、ここでの反り率は、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体が平面視にて略矩形である場合、以下のように算出することができる。
・窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の一方の対角線に金尺を当てた状態で最長部となるもう一方の対角線の反り量を、隙間ゲージを当てて測定する。
・その値の大きい方の対角線部における反り量(mm)に対して、対角線の長さ(最大長)で除算した「最大反り比率=反り量/最大長(mm/mm)」を計算する。
【0049】
好ましい一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、これをSUS板の上方、板面から20mmの位置で略面平行の状態に保持してから落下させたとき割れが生じないものであってよい。窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、これをSUS板の上方、板面から25mmの位置で略面平行の状態に保持してから落下させたとき割れが生じないものであることがより好ましく、板面から30mmの位置で略面平行の状態に保持してから落下させたとき割れが生じないものであることが更に好ましい。このように、SUS板の上方、板面から20mm以上の位置で略面平行の状態に保持してから落下させたとき割れが生じないものであることによって、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、落下等の厳しいハンドリング状況においても十分な強度、耐久性を備えることができる。
【0050】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、複数条の第1線条部で構成される第1線条部層および複数条の第2線条部で構成される第2線条部層に加えて、任意選択で、第2線条部の各条の上に接して第1線条部および第2線条部と交差するように所与の間隔で配置された、各条が一方向に延伸された複数条の第3線条部で構成される第3線条部層を含んでいてよい。
【0051】
以下に本発明の窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の具体的な構造例を挙げるが、これらは単なる例示であり、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体はこれらに限定されるわけではない。
当業者は、必要に応じて、これらの具体的な構造例の一部を修正・変更し、あるいは複数の構造例の一部または全てを可能な範囲で組み合わせることに想到するであろう。
【0052】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の構造例1
一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、所与の間隔で略平行に延伸された2つの線条(支持体)からなる第1線条部層(支持体層)を成し、そして、第1線条部層の2つの線条を両端としてこれと交差するように、第1線条部層の上に所与の間隔で略平行に延伸配置された複数の線条からなる第2線条部層を成す梯子(はしご)状の焼結体(焼成用セッター)として構成される。このような梯子状の焼結体は、第1線条部層と第2線条部層とが一体的に焼成されて形成されている。
【0053】
構造例1の焼結体(焼成用セッター)の一例が、
図2に例示される。
図2において、5はセラミックスシート焼結体、6(6aおよび6b)は第1線条部層を構成する線条、7は第2線条部層を構成する線条を指す。ここで、第2線条部層を構成する各線条は、第1線条部層を構成する各線条(すなわち各支持体)に対して略垂直に配置されている。
第1線条部層および第2線条部層の各線条の断面形状は、円形、楕円形、三角形、矩形等であってよく、特に限定されない。各線条の断面形状が円形、楕円形、三角形または矩形である場合は、それらの線条は、円柱、楕円柱、三角柱、四角柱を形成する。例えば、
図2に示されているように、第2線条部層を構成する各線条および第1線条部層を構成する各線条の底部以外が円柱状に形成され、かつ第1線条部層を構成する各線条の底部が平坦面を成していてよい。第1線条部層および第2線条部層の厚みは、特に限定されないが、例えば0.5mm以上5mm以下であってよい。第1線条部層および第2線条部層の厚みは、実質的に同一であって、異なっていてもよい。構造的な強度や安定性の観点から、構造例1のシート焼結体の底部を構成する第1線条部層の厚みは第2線条部層の厚みより大きくてもよい。
【0054】
一変形形態として、
図2に例示されたように構造例1の焼結体(焼成用セッター)の各線条が四角柱を形成する場合に、1つの焼結体の第1線条部層の2つの線条(支持体)のうちの一方の長手方向側面aおよびその上に略垂直に配置された第2線条部層の各線条の対応する端面b
1~b
xと、他の1つの焼結体の第1線条部層の2つの線条(支持体)のうちの一方の長手方向側面acおよびその上に配置された第2線条部層の各線条の対応する端面b
1c~b
xcとの間で、側面aおよび側面acが互いに接合され、かつ端面b
1~b
xおよび端面b
1c~b
xcが互いに接合された形態で、2つまたは3つ以上の焼結体が一体的に連成された構造にて焼結体が形成されていてよい。
【0055】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の構造例2:格子(メッシュ)状焼結体
好ましい一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、第1線条部と第2線条部とのいずれの交差部にても、第1線条部の断面が直線部と該直線部の両端部を端部とする凸形の曲線部とから構成される形状を有しており、第2線条部の断面が円形又は楕円形の形状を有しており、しかも、交差部の縦断面視で、第1線条部における凸形の曲線部の頂部と第2線条部における円形又は楕円形における下向きに凸の頂部のみが接触している構成(いわゆる点接触の構成)を有することができる。
【0056】
このようないわゆる点接触の構成を備えた窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体(焼成用セッター)の一例が、
図3に例示されている。
図3(a)及び
図3(b)に示す窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体11(以降では、簡略化して「セラミックスシート焼結体11」と称する。)は、一方向Xに向けて延びるセラミックス製の複数の第1の線条部20を有する。それぞれの第1の線条部20は、直線をしており互いに平行に延びている。またセラミックスシート焼結体11は、X方向と異なる方向であるY方向に向けて延びるセラミックス製の複数の第2の線条部30を有する。それぞれの第2の線条部30は、直線をなしており互いに平行に延びている。X方向とY方向とは異なる方向なので、第1の線条部20と第2の線条部30とは交差している。両線条部20、30の交差角度は、セラミックスシート焼結体11の具体的な用途に応じて設定することができる。例えば第1の線条部20に対して、第2の線条部30の交差角度を90度とすることができる。あるいは、第1の線条部20に対する第2の線条部30の交差角度を90度±10度の範囲で変更させることもできる。複数の第1の線条部20と、複数の第2の線条部30とが交差していることによってセラミックスシート焼結体11が形成される。
【0057】
セラミックスシート焼結体11は、第1の線条部20と第2の線条部30とが交差することによって格子をなし、該格子によって画成される複数の貫通孔13を有する板状の形状をしている。セラミックスシート焼結体11は、
図4に示すとおり、第1面11aと、これに対向する第2面11bとを有している。
【0058】
セラミックスシート焼結体11は、それぞれの第1の線条部20と、それぞれの第2の線条部30とが交差する部位に交差部12を有する。交差部12は、セラミックスシート焼結体11の平面視での投影像において、第1の線条部20と第2の線条部30とが重なり合う部位である。
【0059】
第1の線条部20は、両線条部20、30の交差部12以外の位置において、平面視して一定の幅W1(
図4参照)を有している。第1の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図4及び
図5に示すとおり、セラミックスシート焼結体11の第1面11a側に位置する第1面20aと、セラミックスシート焼結体11の第2面11b側に位置する第2面20bとで画成される。詳細には、第1の線条部20は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面が、交差部12以外の部位において、直線部20Aと、該直線部20Aの両端部を端部とする凸形の曲線部20Bとから構成される形状を有している。その結果、第1の線条部20の第1面20aは、該線条部20の厚み方向での断面が平坦面になっている。該平坦面は、セラミックスシート焼結体11の面内方向と略平行になっている。一方、第1の線条部20の第2面20bは、該線条部20の厚み方向での断面が、セラミックスシート焼結体11の第1面11aから第2面11bに向けた凸の曲面形状をしている。
【0060】
第1の線条部20と同様に、第2の線条部30も、両線条部20、30の交差部12以外の位置において、平面視して一定の幅W2(
図7参照)を有している。幅W2は、第1の線条部20の幅W1と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。第2の線条部30は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図6及び
図7に示すとおり、セラミックスシート焼結体11の第1面11a側に位置する第1面30aと、セラミックスシート焼結体11の第2面11b側に位置する第2面30bとで画成される。第2の線条部30の第1面30aは、セラミックスシート焼結体11の第2面11bから第1面11aに向けた凸の曲面形状になっている。一方、第2の線条部30の第2面30bは、該線条部30の厚み方向での断面が、セラミックスシート焼結体11の第1面11aから第2面11bに向けた凸の曲面形状をしている。この曲面形状は、第1の線条部20における曲面形状と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。第2の線条部30の第1面30aと第2面30bとは対称形になっており、その結果、第2の線条部30は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、円形又は楕円形になっていてよい。
【0061】
図5及び
図6に示すとおり、第1の線条部20における直線部20A、すなわち第1面20aを載置面として平面P上に載置したとき、各第1面20aはすべて平面P上に位置する。第1面20aは、セラミックスシート焼結体11における第1面21aをなすものであるから、各第1面20aがすべて平面P上に位置することは、該セラミックスシート焼結体11における第1面11aが平坦面になっていることを意味する。したがってセラミックスシート焼結体11を、その第1面11aが、平坦な載置面と当接するように載置した場合には、該第1面11aの全域が載置面と接することとなる。
【0062】
図5に示すとおり、第1の線条部20における直線部20A、すなわち第1面20aを載置面として平面P上に載置したとき、第2の線条部30は、隣り合う2つの交差部12の間において平面Pから離間する形状をしている。したがって、隣り合う2つの交差部12の間において、第2の線条部30と平面Pとの間には空間Sが形成される。
【0063】
一方、セラミックスシート焼結体11における第2面11bは、
図6に示すとおり、凸の曲面形状になっている第2の線条部30の第2面30bから構成されているので、平坦面ではなく、凹凸面となっている。
【0064】
セラミックスシート焼結体11における第1の線条部20と第2の線条部30との交差部12において、両線条部20、30は一体化している。「一体化している」とは、交差部12の断面を観察において、両線条部20、30間が、セラミックスとして連続した構造体となっていることをいう。両線条部20、30の交差によってセラミックスシート焼結体11に形成されている各貫通孔13は同寸法であり、且つ同形をしている。各貫通孔13は略矩形をしている。貫通孔13は規則的に配置されている。
【0065】
図3、
図5及び
図6に示すとおり、第1の線条部20と第2の線条部30との交差部12は、いずれの交差部12においても、第1の線条部20上に第2の線条部30が配されている。つまり、第1の線条部20と第2の線条部30との交差部12においては、セラミックスシート焼結体11の2つの面11a、11bのうち、相対的に第1面11a側に位置する第1の線条部20上に、相対的に第2面11b側に位置する第2の線条部30が配されている。そして、交差部12における厚みが、該交差部以外の部位における第1の線条部の厚み及び第2の線条部の厚みのいずれよりも大きくなっている。つまり、両線条部20、30の交差部12以外の位置における第1の線条部20の厚みをT1とし(
図4参照)、両線条部20、30の交差部12以外の位置における第2の線条部30の厚みをT2とし(
図7参照)、更に交差部における厚みをTcとしたとき(
図5及び
図6参照)、Tc>T1であり、Tc>T2である。したがって、セラミックスシート焼結体11の第2面11bにおいては、両線条部20、30の交差部の位置が最も高くなっている。なお交差部12の厚みTcは、セラミックスシート焼結体11の厚みでもある。
【0066】
図6に示すとおり、第1の線条部20は、交差部12以外の部位において、該第1の線条部20における第2面20bの最高位置、すなわち頂部の位置が、第1の線条部20の延びる方向に沿って同じになっている。第2の線条部30に関しては、
図5に示すとおり、第2の線条部30における第2面30bの最高位置は、交差部12の位置及び交差部12以外の位置のいずれにおいても、第1の線条部20の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。第2の線条部30における第1面30aの最低位置は、交差部12以外の部位において、第2の線条部30の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。
【0067】
図5及び
図6に示すとおり、セラミックスシート焼結体11の交差部12を縦断面視したときに、第1の線条部20と第2の線条部30とは、第1の線条部20における凸形の曲線部20Bの頂部と、第2の線条部30における円形又は楕円形における下向きに凸の曲線の頂部、すなわち第1面30aの頂部のみが接触している。換言すれば、第1の線条部20と第2の線条部30とは点接触又は点接触に近い面接触をした状態になっている。第1の線条部20と第2の線条部30とが、このような接触状態になっていることで、セラミックスシート焼結体11はその耐スポーリング性が高まる。これは、第1の線条部20と第2の線条部30とが点接触又はそれに近い面接触をして結合していることで、両線条部20、30が過度に強固に結合しにくくなり、そのことに起因して急速な加熱及び/又は冷却時に生じる体積変化を緩和できるからであると考えられる。この観点から、交差部12は、その厚みTcが、交差部12以外の位置における第1の線条部20の厚みT1と、交差部12以外の位置における第2の線条部30の厚みT2との和である(T1+T2)に対して、好ましくは0.5以上1.0以下、更に好ましくは0.8以上1.0以下、一層好ましくは0.9以上1.0以下となるような程度の点接触状態となっている。
【0068】
セラミックスシート焼結体11は、1層の第1の線条部20と、1層の第2の線条部30とから構成されたものであるところ、セラミックスシート焼結体11が、n層の第1の線条部20と、m層の第2の線条部30とから構成される場合(n及びmはそれぞれ独立に1以上の整数である。ただしn及びmは同時に1ではない。)には、交差部12は、セラミックスシート焼結体11の厚みTが、(nT1+mT2)に対して、好ましくは0.5以上1.0以下、更に好ましくは0.8以上1.0以下、一層好ましくは0.9以上1.0以下となるような程度の点接触状態となっている。
【0069】
図3(a)及び
図8に示すとおり、第2の線条部30は、交差部12における平面視での投影像の幅W2aが、交差部12以外の部位における平面視での投影像の幅W2bと概ね同じになっているか、又はW2bよりも若干大きくなっている。詳細には、第2の線条部30は、(i)平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭が、交差部12において、略直線31,31になっているか、又は(ii)幅方向Xの外方に向けて非常に緩やかな凸の曲線(図示せず)を描いている。(ii)の場合、第2の線条部30の平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭は、幅W2aを有する最大幅部を有し、その最大幅部から離れるに連れて幅が漸次緩やかに減少していき、交差部12どうしの間の位置では幅W2bになる。幅W2bは、先に述べた幅W2と同じである。W2aは、W2bの1倍以上1.5倍以下であることが好ましく、1倍以上1.3倍以下であることが更に好ましく、1倍以上1.1倍以下であることが一層好ましい。
【0070】
一方、第1の線条部20は、
図3(b)及び
図9に示すとおり、交差部12における平面視での投影像の幅W1aが、交差部12以外の部位における平面視での投影像の幅W1bと概ね同じになっているか、又はW1bよりも若干大きくなっている。詳細には、第1の線条部20は、(i)平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭が、交差部12において、略直線21,21になっているか、又は(ii)幅方向Yの外方に向けて非常に緩やかな凸の曲線(図示せず)を描いている。(ii)の場合、第1の線条部20の平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭は、幅W1aを有する最大幅部を有し、その最大幅部から離れるに連れて幅が漸次緩やかに減少していき、交差部12どうしの間の位置では幅W1bになる。幅W1bは、先に述べた幅W1と同じである。W1aは、W1bの1倍以上1.5倍以下であることが好ましく、1倍以上1.3倍以下であることが更に好ましく、1倍以上1.1倍以下であることが一層好ましい。
【0071】
図10には、セラミックスシート焼結体11の平面図が示されている。同図に示すとおり、セラミックスシート焼結体11には、複数の第1の線条部20と複数の第2の線条部30とが略直交することで、該格子体の平面視において略矩形状の複数の貫通孔13が形成されている。略矩形状をなす貫通孔13は、対向する一組の辺である第1辺13a,13aを有している。これとともに貫通孔13は、対向する別の一組の辺である第2辺13b,13bを有している。第1辺13a,13aは、第1の線条部20の両側縁に対応する辺である。一方、第2辺13b,13bは、第2の線条部30の両側縁に対応する辺である。貫通孔13は、これらの四辺によって画定されている。対向する第1辺13a,13aどうしは直線になっており互いに平行に延びている。同様に、対向する第2辺13b,13bどうしも直線になっており互いに平行に延びている。そして、第1の線条部20及び第2の線条部30が、それらの交差部12において上述した略直線形状を有することによって、第1の線条部20と第2の線条部30とが略直交することによって形成される貫通孔13は、
図10に示す模式図のように、隅部40が略直角である矩形となる。
【0072】
以上の構成を有するセラミックスシート焼結体11は、これを例えば被焼成体の焼成用セッターとして用いた場合、セラミックスシート焼結体11の第1面11aに被焼成体を載置すれば、該第1面11aは平坦面であることから、平坦性を求められる被焼成体の載置に好適なものとなる。平坦性を求められる被焼成体としては、例えば窒化ホウ素製のセラミックス基板などが挙げられる。また、被焼成体は、第1面11aを構成する部材である第1の線条部20のみ接触するので、セラミックスシート焼結体11と被焼成体との接触面積が大幅に低減し、それによって被焼成体の急激な加熱及び冷却を行いやすくなる。また、セラミックスシート焼結体11は第1及び第2の線条部20、30の交差によって形成されており複数の貫通孔13が形成されているので、熱容量が小さく、その点からも被焼成体の急激な加熱及び冷却を行いやすい。更にセラミックスシート焼結体11は、複数の貫通孔13が存在していることに起因して通気性が良好なので、このことによっても被焼成体の急激な冷却を行いやすい。良好な通気性は、隣り合う交差部12どうしの間において第2の線条部30が浮いていることによって一層顕著なものとなる。しかもセラミックスシート焼結体11においては、第1及び第2の線条部20、30が交差部12において一体化しているので、充分な強度を有するものである。
【0073】
上述した各種の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、T1の値は、50μm以上3mm以下であることが好ましく、100μm以上2mm以下であることが更に好ましい。一方、T2の値は、50μm以上3mm以下であることが好ましく、100μm以上2mm以下であることが更に好ましい。T1とT2の値の大小関係に特に制限はなく、T1>T2であってもよく、逆にT1<T2であってもよく、あるいはT1=T2であってもよい。
【0074】
同様の観点から、交差部12における厚みTcは、(T1+T2)に対して、好ましくは0.5以上1.0以下であることを条件として、20μm以上5mm以下であることが好ましく、50μm以上2mm以下であることが更に好ましい。
【0075】
また、第2の線条部30の厚み方向での断面形状(
図7参照)が楕円形である場合、楕円形の短軸がセラミックスシート焼結体11の厚み方向に一致し、且つ楕円形の長軸がセラミックスシート焼結体11の平面方向に一致することが、被焼成体の載置を首尾よく行える点から好ましい。この場合、長軸/短軸の比率は、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが更に好ましい。また、第2の線条部30の厚み方向での断面形状が楕円形又は円形であることは、セラミックスシート焼結体11の強度向上にも寄与している。
【0076】
セラミックスシート焼結体11に形成された貫通孔13は、その面積が100μm2以上100mm2以下、特に2500μm2以上1mm2以下であることが、セラミックスシート焼結体11の熱容量を低下させる点や、通気性を向上させる点、及びセラミックスシート焼結体11の強度維持の点から好ましい。また、平面視におけるセラミックスシート焼結体11の見かけの面積に対する貫通孔13の面積の総和の割合は、1%以上80%以下であることが好ましく、3%以上70%以下であることが更に好ましく、10%以上70%以下であることが一層好ましい。この割合は、セラミックスシート焼結体11を平面視して、任意の大きさの矩形に切り取り、その矩形内に含まれる貫通孔13の面積の総和を算出し、その総和を矩形の面積で除し100を乗じて算出される。また、各貫通孔13の面積は、セラミックスシート焼結体11の顕微鏡観察像を画像解析することで測定できる。
【0077】
貫通孔13の面積に関連して、第1の線条部20の幅W1は50μm以上4mm以下であることが好ましく、75μm以上2mm以下であることが更に好ましい。一方、第2の線条部30の幅W2は50μm以上4mm以下であることが好ましく、75μm以上2mm以下であることが更に好ましい。W1とW2の値の大小関係に特に制限はなく、W1>W2であってもよく、逆にW1<W2であってもよく、あるいはW1=W2であってもよい。
【0078】
第1及び第2の線条部20、30の幅W1、W2との関連において、隣り合う第1の線条部20間の間隙(スペース)であるピッチP1は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.15mm以上5mm以下であることが更に好ましい。一方、隣り合う第2の線条部30間のピッチP2は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.15mm以上5mm以下であることが更に好ましい。
【0079】
本構造例の一変形形態(図示せず)として、この焼結体は、第1の線条部及び第2の線条部に加えて第3の線条部や、更に第4、第5の線条部といった3種類以上の線条部を用いてもよい。このような3種類以上の線条部を用いる場合において第3の線条部以降の線条部は、それぞれ厚みT1、幅W1及びピッチP1について前述のような第1及び第2の線条部と同様の構成であることが望ましい。また第3の線条部以降の線条部によって形成される交差部の構成についても、前述のような第1及び第2の線条部により形成される交差部と同様の構成を有することが望ましい。
また他の一変形形態(図示せず)として、この焼結体を複数段積層して用いてもよい。この形態では、例えば2段の積層体の場合、一方の焼結体の第1の線条部と他方の焼結体の第1の線条部とが同ピッチになるように配置されていてよく、一方の焼結体の第2の線条部と他方の焼結体の第2の線条部とが同ピッチになるように配置されていてよい。
【0080】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の構造例3a、3b:格子(メッシュ)状焼結体
一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、第1線条部の断面が、第1線条部と第2線条部との交差部以外の部位にて、直線部と、該直線部の両端部を端部とする凸形の曲線部とから構成される形状を有しており、前第2線条部の断面が、交差部以外の部位にて、円形又は楕円形の形状を有しており、かつ第1線条部と第2線条部とが、それぞれ一点のみではなく、面で接触した交差部を成している構成を備えることができる(構造例3a)。この構成は、上記のいわゆる点接触に対して面接触の構造と称され得る。
【0081】
このような面接触による上記構造例3aの下位概念に相当する好ましい一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、第1線条部の断面が、第1線条部と第2線条部との交差部以外の部位にて、直線部と、該直線部の両端部を端部とする凸形の曲線部とから構成される形状を有しており、前第2線条部の断面が、交差部以外の部位にて、円形又は楕円形の形状を有しており、しかも、第2線条部の平面視での投影像が、交差部にて、幅方向外方に向けて湾曲膨出した形状になっており、それによって交差部における投影像の幅が、交差部以外の部位における投影像の幅よりも大きくなっている構成を有することができる(構造例3b)。
すなわち、面接触による上記構造例3aの窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、「第2線条部の平面視での投影像が、交差部にて、幅方向外方に向けて湾曲膨出した形状になっており、それによって交差部における投影像の幅が、交差部以外の部位における投影像の幅よりも大きくなっている」という上記構造例3b(下位概念)の構成を有していないものを包含する。この場合の面接触による上記構造例3aの窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、第2線条部の平面視での投影像が、交差部にて、幅方向外方に向けて湾曲膨出しておらず、交差部における投影像の幅が、交差部以外の部位における投影像の幅と実質的に同一である構成を有することになる。
【0082】
構造例3bの窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の一例を、以降にて図面を参照して説明する。
図11(a)及び
図11(b)に示す窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体41(以降では、簡略化して「セラミックスシート焼結体41」と称する。)は、一方向Xに向けて延びるセラミックス製の複数の第1の線条部50を有する。それぞれの第1の線条部50は、直線をしており互いに平行に延びている。またセラミックスシート焼結体41は、X方向と異なる方向であるY方向に向けて延びるセラミックス製の複数の第2の線条部60を有する。それぞれの第2の線条部60は、直線をしており互いに平行に延びている。X方向とY方向とは異なる方向なので、第1の線条部50と第2の線条部60とは交差している。両線条部50、60の交差角度は、セラミックスシート焼結体41の具体的な用途に応じて設定することができる。
【0083】
セラミックスシート焼結体41は、第1の線条部50と第2の線条部60とが交差することによって格子をなし、該格子によって画成される複数の貫通孔43を有する板状の形状をしている。セラミックスシート焼結体41は、第1面41aと、これに対向する第2面41bとを有している。
【0084】
セラミックスシート焼結体41は、それぞれの第1の線条部50と、それぞれの第2の線条部60とが交差する部位に交差部42を有する。交差部42は、セラミックスシート焼結体41の平面視での投影像において、第1の線条部50と第2の線条部60とが重なり合う部位である。
【0085】
第1の線条部50は、両線条部50、60の交差部42以外の位置において、平面視して一定の幅W1(
図12参照)を有している。第1の線条部50は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図12及び
図13に示すとおり、セラミックスシート焼結体41の第1面41a側に位置する第1面50aと、セラミックスシート焼結体41の第2面41b側に位置する第2面50bとで画成される。詳細には、第1の線条部50は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面が、交差部42以外の部位において、直線部50Aと、該直線部50Aの両端部を端部とする凸形の曲線部50Bとから構成される形状を有している。その結果、第1の線条部50の第1面50aは、該線条部50の厚み方向での断面が平坦面になっている。該平坦面は、セラミックスシート焼結体41の面内方向と略平行になっている。一方、第1の線条部50の第2面50bは、該線条部50の厚み方向での断面が、セラミックスシート焼結体41の第1面41aから第2面41bに向けた凸の曲面形状をしている。
【0086】
第1の線条部50と同様に、第2の線条部60も、両線条部50、60の交差部42以外の位置において、平面視して一定の幅W2(
図15参照)を有している。幅W2は、第1の線条部50の幅W1と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。第2の線条部60は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、
図14及び
図15に示すとおり、セラミックスシート焼結体41の第1面41a側に位置する第1面60aと、セラミックスシート焼結体41の第2面41b側に位置する第2面60bとで画成される。第2の線条部60の第1面60aは、セラミックスシート焼結体41の第2面41bから第1面41aに向けた凸の曲面形状になっている。一方、第2の線条部60の第2面60bは、該線条部60の厚み方向での断面が、セラミックスシート焼結体41の第1面41aから第2面41bに向けた凸の曲面形状をしている。この曲面形状は、第1の線条部50における曲面形状と同じであってもよく、あるいは異なっていてもよい。本実施形態においては、第2の線条部60の第1面60aと第2面60bとは対称形になっており、その結果、第2の線条部60は、その長手方向に直交する方向での厚み方向に沿った断面形状が、円形又は楕円形になっている。
【0087】
図13及び
図14に示すとおり、第1の線条部50における直線部50A、すなわち第1面50aを載置面として平面P上に載置したとき、各第1面50aはすべて平面P上に位置する。第1面50aは、セラミックスシート焼結体41における第1面41aをなすものであるから、各第1面50aがすべて平面P上に位置することは、該セラミックスシート焼結体41における第1面41aが平坦面になっていることを意味する。したがってセラミックスシート焼結体41を、その第1面41aが、平坦な載置面と当接するように載置した場合には、該第1面41aの全域が載置面と接することとなる。
【0088】
図13に示すとおり、第1の線条部50における直線部50A、すなわち第1面50aを載置面として平面P上に載置したとき、第2の線条部60は、隣り合う2つの交差部42の間において平面Pから離間する形状をしている。したがって、隣り合う2つの交差部42の間において、第2の線条部60と平面Pとの間には空間Sが形成される。
【0089】
一方、セラミックスシート焼結体41における第2面41bは、凸の曲面形状になっている第2の線条部60の第2面60bから構成されているので、平坦面ではなく、凹凸面となっている。
【0090】
セラミックスシート焼結体41における第1の線条部50と第2の線条部60との交差部42において、両線条部50、60は一体化している。「一体化している」とは、交差部42の断面を観察において、両線条部50、60間が、セラミックスとして連続した構造体となっていることをいう。両線条部50、60の交差によってセラミックスシート焼結体41に形成されている各貫通孔43は同寸法であり、且つ同形をしている。各貫通孔43は略矩形をしている。貫通孔43は規則的に配置されている。
【0091】
図11、
図13及び
図14に示すとおり、第1の線条部50と第2の線条部60との交差部42は、いずれの交差部42においても、第1の線条部50上に第2の線条部60が配されている。つまり、第1の線条部50と第2の線条部60との交差部42においては、セラミックスシート焼結体41の2つの面41a、41bのうち、相対的に第1面側41aに位置する第1の線条部50上に、相対的に第2面41b側に位置する第2の線条部60が配されている。そして、交差部42における厚みが、該交差部以外の部位における第1の線条部の厚み及び第2の線条部の厚みのいずれよりも大きくなっている。つまり、両線条部50、60の交差部42以外の位置における第1の線条部50の厚みをT1とし(
図12参照)、両線条部50、60の交差部42以外の位置における第2の線条部60の厚みをT2とし(
図15参照)、更に交差部における厚みをTcとしたとき(
図13及び
図14参照)、Tc>T1であり、Tc>T2である。したがって、セラミックスシート焼結体41の第2面41bにおいては、両線条部50、60の交差部の位置が最も高くなっている。
【0092】
図14に示すとおり、第1の線条部50は、交差部42以外の部位において、該第1の線条部50における第2面50bの最高位置、すなわち頂部の位置が、第1の線条部50の延びる方向に沿って同じになっている。第2の線条部60に関しては、
図13に示すとおり、第2の線条部60における第2面60bの最高位置は、交差部42の位置及び交差部42以外の位置のいずれにおいても、第1の線条部50の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。第2の線条部60における第1面60aの最低位置は、交差部42以外の部位において、第2の線条部60の延びる方向に沿って互いに同じ位置になっている。
【0093】
図11(a)及び
図16に示すとおり、第2の線条部60は、その平面視での投影像が、交差部42において、幅方向Xの外方に向けて湾曲膨出した形状になっている。それによって交差部42における投影像の幅W2aが、交差部42以外の部位における投影像の幅W2bよりも大きくなっている(上記構造例3aの実施形態は、このような幅の拡張が生じない場合を含む)。詳細には、第2の線条部60は、平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭が、交差部42において、幅方向Xの外方に向けて緩やかな凸の曲線61,61を描いている。第2の線条部60の平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭は、幅W2aを有する最大幅部を有し、その最大幅部から離れるに連れて幅が漸次緩やかに減少していき、交差部42どうしの間の位置では幅W2bになる。幅W2bは、先に述べた幅W2と同じである。
【0094】
一方、第1の線条部50は、
図11(b)及び
図17に示すとおり、その平面視での投影像が、交差部42において、幅方向Yの外方に向けて湾曲膨出した形状になっている。それによって交差部42における投影像の幅W1aが、交差部42以外の部位における投影像の幅W1bよりも大きくなっている(上記構造例3aの実施形態は、このような幅の拡張が生じない場合を含む)。詳細には、第1の線条部50は、平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭が、交差部42において、幅方向Yの外方に向けて緩やかな凸の曲線51,51を描いている。第1の線条部50の平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭は、幅W1aを有する最大幅部を有し、その最大幅部から離れるに連れて幅が漸次緩やかに減少していき、交差部42どうしの間の位置では幅W1bになる。幅W1bは、先に述べた幅W1と同じである。
【0095】
図18には、セラミックスシート焼結体41の平面図が示されている。同図に示すとおり、セラミックスシート焼結体41には、複数の第1の線条部50と複数の第2の線条部60とが略直交することで、該焼結体の平面視において略矩形状の複数の貫通孔43が形成されている。略矩形状をなす貫通孔43は、対向する一組の辺である第1辺43a,43aを有している。これとともに貫通孔43は、対向する別の一組の辺である第2辺43b,43bを有している。第1辺43a,43aは、第1の線条部50の両側縁に対応する辺である。一方、第2辺43b,43bは、第2の線条部60の両側縁に対応する辺である。貫通孔43は、これらの四辺によって画定されている。対向する第1辺43a,43aどうしは直線になっており互いに平行に延びている。同様に、対向する第2辺43b,43bどうしも直線になっており互いに平行に延びている。そして、第1の線条部50及び第2の線条部60が、それらの交差部42において上述した湾曲膨出形状を有することによって、第1の線条部50と第2の線条部60とが略直交することによって形成される貫通孔43は、隅部70が直角の矩形ではなく、
図18に示す模式図のように、隅部70がやや丸みを帯びた矩形となる(上記構造例3aの実施形態は、貫通孔の隅部が略直角である場合を含む)。
【0096】
以上の構成を有するセラミックスシート焼結体41は、これを例えば被焼成体の焼成用セッターとして用いた場合、矩形をした貫通孔43の隅部70が丸みを帯びていることに起因して、強度及び耐スポーリング性が向上する。この理由は、セラミックスシート焼結体41のうち、クラック等の欠陥が最も発生しやすい部位は貫通孔43の隅部70であるところ、該隅部70が丸みを帯びていることに起因して、該隅部70にクラック等が生じにくいからである。
【0097】
上述した強度及び耐スポーリング性の向上は、第1の線条部50と第2の線条部60との交差部42において、少なくとも第2の線条部60が、平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭に、前記の凸の曲線61を有していれば十分に達成される。特に、第1の線条部50及び第2の線条部60の双方が、平面視での投影像の長手方向に沿う輪郭に、前記の凸の曲線51、61を有していると、強度及び耐スポーリング性が更に一層向上する。
【0098】
このように本実施形態のセラミックスシート焼結体41は、その一方の面が平坦であり、他方の面が凹凸面になっていることから、被焼成体の種類に応じて載置面を使い分けることができるという点で有利である。
【0099】
上述した各種の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、T1の値は、50μm以上3mm以下であることが好ましく、100μm以上2mm以下であることが更に好ましい。一方、T2の値は、50μm以上3mm以下であることが好ましく、100μm以上2mm以下であることが更に好ましい。T1とT2の値の大小関係に特に制限はなく、T1>T2であってもよく、逆にT1<T2であってもよく、あるいはT1=T2であってもよい。
【0100】
同様の観点から、交差部42における厚みTcは0.1mm以上2mm以下であることが好ましく、0.3mm以上1.5mm以下であることが更に好ましい。なお、交差部42における厚みTcは、T1及びT2の総和であるT1+T2よりも小さくなっている。
【0101】
また、第2の線条部60の厚み方向での断面形状(
図15参照)が楕円形である場合、楕円形の短軸がセラミックスシート焼結体41の厚み方向に一致し、且つ楕円形の長軸がセラミックスシート焼結体41の平面方向に一致することが、被焼成体の載置を首尾よく行える点から好ましい。この場合、長軸/短軸の比率は、1以上5以下であることが好ましく、1以上3以下であることが更に好ましい。また、第2の線条部60の厚み方向での断面形状が楕円形又は円形であることは、セラミックスシート焼結体41の強度向上にも寄与している。
【0102】
セラミックスシート焼結体41に形成された貫通孔43は、その面積が100μm2以上100mm2以下、特に2500μm2以上1mm2以下であることが、セラミックスシート焼結体41の熱容量を低下させる点や、通気性を向上させる点、及びセラミックスシート焼結体41の強度維持の点から好ましい。また、平面視におけるセラミックスシート焼結体41の見かけの面積に対する貫通孔43の面積の総和の割合(この値を)は、1%以上80%以下であることが好ましく、3%以上70%以下であることが更に好ましく、10%以上70%以下であることが一層好ましい。この割合の算出・測定方法は上述されたとおりである。
【0103】
貫通孔43の面積に関連して、第1の線条部50の幅W1は50μm以上4mm以下であることが好ましく、75μm以上2mm以下であることが更に好ましい。一方、第2の線条部60の幅W2は50μm以上4mm以下であることが好ましく、75μm以上2mm以下であることが更に好ましい。W1とW2の値の大小関係に特に制限はなく、W1>W2であってもよく、逆にW1<W2であってもよく、あるいはW1=W2であってもよい。
【0104】
第1及び第2の線条部50、60の幅W1,W2との関連において、隣り合う第1の線条部50間の間隙であるピッチP1は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.15mm以上5mm以下であることが更に好ましい。一方、隣り合う第2の線条部60間のピッチP2は、0.1mm以上10mm以下であることが好ましく、0.15mm以上5mm以下であることが更に好ましい。
【0105】
本構造例の一変形形態(図示せず)として、この焼結体は、第1の線条部及び第2の線条部に加えて第3の線条部や、更に第4、第5の線条部といった3種類以上の線条部を用いてもよい。このような3種類以上の線条部を用いる場合において第3の線条部以降の線条部は、それぞれ厚みT1、幅W1及びピッチP1について前述のような第1及び第2の線条部と同様の構成であることが望ましい。また第3の線条部以降の線条部によって形成される交差部の構成についても、前述のような第1及び第2の線条部により形成される交差部と同様の構成を有することが望ましい。
また他の一変形形態(図示せず)として、この焼結体を複数段積層して用いてもよい。この形態では、例えば2段の積層体の場合、一方の焼結体の第1の線条部と他方の焼結体の第1の線条部とが同ピッチになるように配置されていてよく、一方の焼結体の第2の線条部と他方の焼結体の第2の線条部とが同ピッチになるように配置されていてよい。
【0106】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の構造例4:格子(メッシュ)状焼結体
一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、第1の線条部の断面が、第1の線条部と第2の線条部との交点以外の部位において、直線部と該直線部の両端部を端部とする凸形の曲線部とから構成される形状を有しており、 第2の線条部の断面が、第1の線条部と第2の線条部との交点以外の部位において、円形又は楕円形の形状を有しており、この焼結体は平面視での輪郭の少なくとも一部に直線辺部を有しており、第1の線条部および第2の線条部とこの直線辺部(外辺)とがそれぞれ独立に10度以上170以下の角度で(すなわち非直角である角度を含む幅広い角度範囲にて)交わっている構造を備えていてよい。
【0107】
本実施形態に係る焼結体は、対向する第1の辺部及び第2の辺部と、対向する第3の辺部及び第4の辺部とを有する矩形の輪郭を有しており、第1の線条部及び第2の線条部と第1の辺部及び第2の辺部とがそれぞれ独立に10度以上170度以下の角度で交わっていてよい。
この焼結体は、上記構造例3aあるいは3bにおけるように、第1の線条部及び第2の線条部がいわゆる面接触による接触形態を有していてよく、または、さらに第2の線条部の平面視での投影像が、第1の線条部と第2の線条部との交点において、幅方向外方に向けて湾曲膨出した形状になっており、それによってこの交点における投影像の幅が交点以外の部位における投影像の幅よりも大きくなっている構成を備えていてよい。また、この焼結体は、第2の線条部のそのような構成の代わりに、あるいはそれに加えて、第1の線条部の平面視での投影像が、第1の線条部と第2の線条部との交点において、幅方向外方に向けて湾曲膨出した形状になっており、それによってこの交点における投影像の幅が交点以外の部位における投影像の幅よりも大きくなっていてよい。
この焼結体は、第1の線条部における直線部を載置面として平面上に載置したとき、第2の線条部が隣り合う2つの交点の間にてその平面から離間する形状をしていてよい。
【0108】
窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の構造例5:格子(メッシュ)状焼結体
一実施形態において、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体は、複数の第1の線条部および複数の第2の線条部に加えて、第1の線条部と第2の線条部とが交差することで画成される四辺形の対角線上を通るセラミックス製の複数の第3の線条部とを有し、第1の線条部、第2の線条部及び第3の線条部によって画成される複数の三角形の貫通孔が形成されている板状のセラミックス構造体であってよい。
【0109】
本構造例に係る焼結体は、第1の線条部、第2の線条部及び第3の線条部が1つの交差部で交差しているように構成され得る。
この焼結体において、上部2層を構成する線条部層の線条部のそれぞれは、その断面が交差部以外の部位において円形又は楕円形の形状を有していてよい。
この焼結体は、平面視での輪郭の少なくとも一部に直線辺部を有しており、第1の線条部、第2の線条部及び第3の線条部のうちのいずれか一つの線条部がこの直線辺部と平行に配置されていてよい。また、この焼結体は、第1の線条部又は第3の線条部が、前記の直線辺部と平行に配置されていてよい。
この焼結体は、第1の線条部、第2の線条部および第3の線条部とから構成される繰り返し単位が2以上積層された構造体を形成していてよい。
【実施例0110】
実施例1:メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の製造例
窒化ホウ素の原料粉として、平均粒径が8.0μmの立方晶窒化ホウ素粉40.0部および平均粒径が13.0μmの立方晶窒化ホウ素粉60.0部の混合物を用いた。また、焼結助剤として、粉末状のホウ素100部および炭酸カルシウム60部の混合物を用いた。そして窒化ホウ素の原料粉100部に対して焼結助剤14部を配合した。この配合物100部に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース15.0部、グリセリン2.5部、ポリカルボン酸系分散剤5.0部、および水60.0部を混合し、脱泡して原料ペーストを調製した。なお、実施例における物質量および量比は、特に断らない限り、質量による数値を指すものとする。
【0111】
直径1.4mmのノズルを有するディスペンサを用い、上記のように調製した原料ペーストから、上述のいわゆる点接触形態の4層格子体である線条塗工体からなる成形体を形成した。4層格子体の成形体は、垂直に交差した第1線条塗工体と第2線条塗工体との積層物を開口が一致するように2つ重ねられた構造(
図1に例示されたものと同様の構造物)を成していた。第1線条塗工体の形成後には、ドライヤーを用いて熱風を吹き付け、水を除去して乾燥させ第1線条塗工体の水含有量が10%に達した後に第2線条塗工体を形成した。また、第2線条塗工体の形成後には、ドライヤーを用いて熱風を吹き付け、水を除去して乾燥させ第2線条塗工体の水含有量が8%に達するようにした。
このように得られた4層格子体の成形体を、窒化ホウ素で全体が形成されたカーボン含有量が1.0質量%である焼成治具の坩堝中で、窒素雰囲気下、常圧にて、2000℃の温度で4時間脱脂および焼成した。焼成の際に、サイズ縦50mm×横50mm×厚み2.0mm×2枚、総厚4.0mmであり、カーボン含有量が1.0質量%である窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを成形体上に戴置した。このようにして、焼成後のサイズ50mm×50mm、ピッチ0.5mm、線条部の幅1.2mm、総厚:3.0mmを有する、いわゆる点接触形態の4層メッシュ状窒化ホウ素シートを作製した。
【0112】
実施例2:メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の製造例
上記重しの代わりに、サイズ縦50mm×横50mm×厚み2.0mm×1枚、総厚2.0mmの窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを成形体上に戴置したこと以外は、上記実施例1と同様に焼成を行って、焼成後のサイズ50mm×50mm、ピッチ0.5mm、線条部の幅1.2mm、総厚:3.0mmを有する、いわゆる点接触形態の4層メッシュ状窒化ホウ素シートを作製した。
【0113】
実施例1~2における窒化ホウ素プレート(重しプレート)の圧力換算方法
焼成時の窒化ホウ素製セラミックスプレート載置による圧力計算は、以下のように行った。
1枚の窒化ホウ素製セラミックスプレートの質量は8gであったから、1枚プレートの荷重は78.5N、2枚プレートの荷重は156.9Nであった。上記成形体の最上部の線条部にインクを塗布してから窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを戴置し、プレート上のインク着色箇所の幅を測定することによって、上記成形体の最上部の線条部とプレートとの接触幅W(mm)を見積もった。1枚プレートの場合でも2枚プレートの場合でも、接触幅Wは0.545mmであった。上記成形体の最上部の線条部の長さは50mm、本数は30本であったから、上記成形体の最上部の線条部とプレートとの接触面積は、0.545mm×50mm×30(本)=817.5mm2と計算された。
従って、プレート戴置による圧力は、実施例1においてプレート1枚の荷重78.5N/接触面積817.5mm2=0.096×10-2N/mm2、実施例2においてプレート2枚の荷重156.9N/接触面積817.5mm2=0.192×10-2N/mm2と計算された。
【0114】
実施例3:メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の製造例
上記窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを成形体上に戴置しなかったこと以外は上記実施例1と同様に焼成を行って、焼成後のサイズ50mm×50mm、ピッチ0.5mm、線条部の幅1.2mm、総厚:3.0mmを有する、いわゆる点接触形態の4層メッシュ状窒化ホウ素シートを作製した。
【0115】
比較例1:メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の比較製造例
焼結助剤を用いずに窒化ホウ素原料粉100部に対し、ヒドロキシプロピルメチルセルロース15.0部、グリセリン2.5部、ポリカルボン酸系分散剤5.0部、および水60.0部を混合し、脱泡して原料ペーストを調製したこと、ならびに、上記窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを成形体上に戴置しなかったこと以外は上記実施例1と同様に焼成を行い、いわゆる点接触形態の4層メッシュ状窒化ホウ素シートの作製を試みた。しかし、焼成物は崩壊し、所望の4層メッシュ状窒化ホウ素シートを作製することはできなかった。
【0116】
比較例2:メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の比較製造例
上記窒化ホウ素製セラミックスプレートの重しを成形体上に戴置しなかったこと、ならびに、焼成治具として全体が窒化ホウ素で形成された坩堝に代えて全体がカーボンで形成された坩堝を用いたこと以外は上記実施例1と同様に焼成を行って、焼成後のサイズ50mm×50mm、ピッチ0.5mm、線条部の幅1.2mm、総厚:3.0mmを有する、いわゆる点接触形態の4層メッシュ状窒化ホウ素シートを作製した。
【0117】
A.メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の特性評価
上記実施例1~3および比較例1~2の窒化ホウ素シート焼結体の外観、反りおよび明度の諸特性を、下記のとおり評価した。
【0118】
1)外観観察
窒化ホウ素シート焼結体の外観を以下の3段階の基準で評価した。
A(良):焼結体の外観は、変色がなく正常であった。
B(利用不可):焼成炉から取り出しの際、焼結体が崩壊した。
C(利用不可):焼結体は、灰色の変色を呈していた。
【0119】
2)反り評価
窒化ホウ素シート焼結体の一方の対角線(長さ70.7mm)に金尺を当てた状態で最長部となるもう一方の対角線(長さ70.7mm)の反り量を、隙間ゲージを当てて測定した。その値の大きい方の対角線部における反り量(mm)に対して、対角線の長さで除算した「最大反り比率=反り量/最大長(mm/mm)」を計算した。この最大反り比率の評価基準は以下のとおりとした。
ア(最良):最大反り比率が2×10-3以下であった。
イ(良):最大反り比率が2×10-3より大~3×10-3以下であった。
ウ(利用可):最大反り比率が3×10-3より大~5×10-3以下であった。
エ(利用不可):最大反り比率が5×10-3より大であった。
【0120】
3)明度L*の測定
JIS Z8722(2009)に準拠して、コニカミノルタ製の分光測色計「CM-600d」を用い、D65光源(標準光)により正反射光を含むSCI方式で、幾何条件cにてXYZ座標を測定し、これをL*a*b*座標に換算することによって、窒化ホウ素製セラミックスシート焼結体の表面の明度L*(CIE1976の明度L*)を得た。
【0121】
B.メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の耐久性評価
実施例1~3および比較例2にて焼結助剤を用いて得られたメッシュ状窒化ホウ素シート焼結体について、過酷な搬送工程を想定し、下記の落下、多段積みおよび搬送に対する耐久性の評価を行った。
【0122】
4)落下に対する耐久性評価
メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体を、SUS板の上方、板面から20mmの位置で概ね面平行の状態に保持してから落下させた。メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の割れの有無により耐久性の良否を評価した。
【0123】
5)多段積みに対する耐久性評価
50mm□の4ツ角に10×10×10mmの窒化ホウ素製支柱(以下「BN支柱」と称する。)を置く形で、10枚のメッシュ状窒化ホウ素シート焼結体を多段積みした。この多段積みされたメッシュ状窒化ホウ素シート焼結体に対して、60Hzの振動試験機(SINFONIA TECHNOLOGY社製VIBRATORY PACKER,TYPE VP-40)を用いてレベル5の強度で180秒間振動させ、多段積みされた状態が維持され得るか否かを観察し、またムライト支柱からのはみ出し量を計測し、以下の基準にて評価を行った。
◎(最良):多段積み状態が維持されて倒れず、BN支柱はセッターから1mm未満のはみ出しであった。
○(良):多段積み状態が維持されて倒れず、BN支柱はセッターから1mm以上~3mm未満のはみ出しであった。
△(可):多段積み状態が維持されて倒れず、BN支柱はセッターから3mm以上~5mm未満のはみ出しであった。
×(不可):荷崩れが発生し、多段積みが崩壊した。
【0124】
6)搬送に対する耐久性評価
長さ1mのローラーコンベアー上にメッシュ状窒化ホウ素シート焼結体を載せて移動させ、スタート位置および90cm先の位置で横ずれ/蛇行した距離を測定し、以下の基準にて評価を行った。
◎(最良):横ずれ距離が10mm未満であった。
○(良):横ずれ距離が10mm以上~30mm未満であった。
△(可):横ずれ距離が30mm以上~50mm未満であった。
×(不可):横ずれ距離が50m以上であった。
【0125】
上記メッシュ状窒化ホウ素シート焼結体の特性および耐久性評価の結果を、焼結助剤の有無、焼成治具(坩堝)の種類、ならびに焼成の際に使用された窒化ホウ素プレートの重しの積載枚数および加圧力換算値と共に以下の表1に示す。
また、実施例(実施例1~3の各々)にて焼成後に得られた焼結体の外観(変色なしの正常な外観)と、比較例2にて焼成後に得られた焼結体の外観(変色あり)とを並列させ比較した写真を
図19に示す。
【0126】
【0127】
これらの結果から、本発明に係る製造方法によって得られた焼結体は、焼成後に崩壊せず、かつ変色が少なく均一な色調であると共に、十分な明度を有し、また落下、多段積みおよび搬送に対する高い耐久性・安定性を有していることが分かった。
さらに、焼成工程において窒化ホウ素製セラミックスプレートを第2線条塗工体に戴置することにより、上記の利点に加えて、焼成後に反りが小さい焼結体を製造することができることが分かった。