(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137275
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】燃料電池制御システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20240927BHJP
H01M 8/04858 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240927BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240927BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240927BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04858
H01M8/04313
H01M8/00 Z
B60L50/70
B60L58/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048737
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 隆男
(72)【発明者】
【氏名】深谷 徳宏
(72)【発明者】
【氏名】山田 直幸
(72)【発明者】
【氏名】若山 直矢
(72)【発明者】
【氏名】川端 康平
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AC07
5H125BD02
5H125EE32
5H125EE33
5H125EE36
5H125EE51
5H127AB04
5H127AC06
5H127BA02
5H127BB02
5H127DB53
5H127DB66
5H127DB92
5H127DC43
5H127DC45
5H127DC46
5H127FF14
(57)【要約】
【課題】燃料電池の実際の使われ方に対応させることで燃料電池の耐久性を向上させる。
【解決手段】燃料電池制御システムは、走行予定情報を参照して目標耐久距離の走行に必要な電力を燃料電池4に出力させるためのFC発電指令値を生成するPM制御モデル10と、燃料電池4の電圧実測値と、IV性能モデルを用いて得られる電圧推定値と、に所定以上の乖離がある場合、IV性能モデルを形成するパラメータを補正する補正部22と、パラメータ補正後のIV性能モデルを用いて車両の予測耐久距離を算出する耐久距離予測モデル23と、予測耐久距離が目標耐久距離に達しない場合、PM制御モデル10のパラメータを補正するPM制御パラメータ補正部30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池を動力として駆動する駆動手段の使われ方を示す予定情報に応じて前記燃料電池の発電を制御する制御モデルを実行する制御モデル実行手段と、
前記燃料電池の発電状況から前記燃料電池が発電可能な電力を予測発電能力として予測する予測モデルを実行する予測モデル実行手段と、
前記燃料電池の実際の発電状況と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況とに所定以上の乖離がある場合、前記予測モデルにより予測される予測発電能力に誤差が生じると判断し、予測発電能力の誤差を解消するよう前記予測モデルが用いるパラメータを補正する予測モデル補正手段と、
パラメータ補正後の前記予測モデルにより予測された予測発電能力が前記予定情報から得られる前記燃料電池の目標とする発電能力に満たない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮できるよう前記制御モデルのパラメータを補正する制御モデル補正手段と、
を有することを特徴とする燃料電池制御システム。
【請求項2】
前記駆動手段が移動可能な移動手段の場合、
前記制御モデルは、前記予定情報から得られる目標とする距離が走行できるよう前記燃料電池の発電を制御し、
前記予測モデルは、前記予測発電能力として前記移動手段の走行可能な距離を予測し、
前記制御モデル補正手段は、前記予測モデルが予測した前記移動手段の走行可能な距離が前記目標とする距離に達しない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮して前記移動手段が前記目標とする距離を走行できるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正する、
ことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項3】
前記制御モデル補正手段は、前記燃料電池における発電の最大値を規定するパラメータ値を下げる補正、あるいは前記燃料電池における発電の最小値を規定するパラメータ値を上げる補正の少なくとも一方を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項4】
前記制御モデル補正手段は、前記駆動手段の駆動に要するトータルコストが最小となるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項5】
前記予測モデル補正手段は、前記燃料電池の実際の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の計測値と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の推定値とに所定以上の乖離がある場合に前記予測モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池制御システム。
【請求項6】
前記予測モデルが用いるパラメータは、速度定数であることを特徴とする請求項5に記載の燃料電池制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池制御システム、特に燃料電池の耐久性に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、車両、船舶、建機、農機などの種々の輸送手段や機械(以下、「アプリケーション」と総称する)に搭載され、動力源として用いられている。また、燃料電池は、同じアプリケーションでも使用目的によって要求される耐久性が異なってくる。例えば、アプリケーションが車両の場合、燃料電池は、車両が一般道路を相対的に多く走行するのか、それとも高速道路を相対的に多く走行するのかなどによって、要求される耐久性が異なってくる。そのために、燃料電池を制御するシステムは、例えば燃料電池が車両をどれくらいの距離を走行させることができるかを示す耐久走行可能距離を予め求めておき、その耐久走行可能距離が耐久目標の要件、すなわち目標とする走行距離以上となるように燃料電池の出力を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
同じ燃料電池でも、使われ方に応じて耐久性が異なってくるが、少なくとも目標とする耐久性が発揮できるように燃料電池の発電を制御できるようにすることが望まれる。
【0005】
本発明は、燃料電池の実際の使われ方に対応させることで燃料電池の耐久性を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る燃料電池制御システムは、燃料電池を動力として駆動する駆動手段の使われ方を示す予定情報に応じて前記燃料電池の発電を制御する制御モデルを実行する制御モデル実行手段と、前記燃料電池の発電状況から前記燃料電池が発電可能な電力を予測発電能力として予測する予測モデルを実行する予測モデル実行手段と、前記燃料電池の実際の発電状況と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況とに所定以上の乖離がある場合、前記予測モデルにより予測される予測発電能力に誤差が生じると判断し、予測発電能力の誤差を解消するよう前記予測モデルが用いるパラメータを補正する予測モデル補正手段と、パラメータ補正後の前記予測モデルにより予測された予測発電能力が前記予定情報から得られる前記燃料電池の目標とする発電能力に満たない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮できるよう前記制御モデルのパラメータを補正する制御モデル補正手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、前記駆動手段が移動可能な移動手段の場合、前記制御モデルは、前記予定情報から得られる目標とする距離が走行できるよう前記燃料電池の発電を制御し、前記予測モデルは、前記予測発電能力として前記移動手段の走行可能な距離を予測し、前記制御モデル補正手段は、前記予測モデルが予測した前記移動手段の走行可能な距離が前記目標とする距離に達しない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮して前記移動手段が前記目標とする距離を走行できるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正する、ことを特徴とする。
【0008】
また、前記制御モデル補正手段は、前記燃料電池における発電の最大値を規定するパラメータ値を下げる補正、あるいは前記燃料電池における発電の最小値を規定するパラメータ値を上げる補正の少なくとも一方を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記制御モデル補正手段は、前記駆動手段の駆動に要するトータルコストが最小となるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする。
【0010】
また、前記予測モデル補正手段は、前記燃料電池の実際の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の計測値と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の推定値とに所定以上の乖離がある場合に前記予測モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする。
また、前記予測モデルが用いるパラメータは、速度定数であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、燃料電池の実際の使われ方に対応させることで燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0012】
請求項2,3に記載の発明によれば、目標とする走行距離を、より確実に達成できるように制御することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明によれば、駆動手段の駆動に要するトータルコストが最小となるように燃料電池の出力を制御することができる。
【0014】
請求項5,6に記載の発明によれば、予測モデルにおける予測精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る燃料電池制御システムの一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】本実施の形態における燃料電池制御処理を示すフローチャートである。
【
図3】本実施の形態におけるPM制御モデルを示すブロック構成図である。
【
図4】本実施の形態における燃料電池から出力される電流と電圧との関係を模式的に示すグラフ図である。
【
図5】本実施の形態において電圧推定値を算出する計算式で用いる記号を説明する図である。
【
図6】(a)は電流と電圧との関係、(b)は電流と電力との関係、をそれぞれ模式的に示す図であり、FC電力指令最大値を減らしたときの燃料電池からの出力電圧を説明するための図である。
【
図7】(a)は電流と電圧との関係、(b)は電流と電力との関係、をそれぞれ模式的に示す図であり、FC電力指令最小値を増やしたときの燃料電池からの出力電圧を説明するための図である。
【
図8】本実施の形態において燃料電池における電圧変動の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明に係る燃料電池制御システムの一実施の形態を示す全体構成図である。本実施の形態においては、燃料電池(FC:Fuel Cell)を動力して駆動する駆動手段として、アプリケーションに含まれる車両を例にして説明する。なお、本実施の形態の説明に用いない構成要素は、図から省略している。
【0018】
図1には、燃料電池4と各種センサ6と、燃料電池制御システム2に含まれる動力指令部10、FC制御部20、PM(Power Management)制御パラメータ補正部30及び記憶部40が示されている。燃料電池4は、水素と酸素を化学反応させて電力を発生する装置である。各種センサ6は、燃料電池4の発電状況を特定しうるデータとして、電圧、電流及び燃料電池4の内部の温度を実際に測定するセンサ手段である。従って、「各種」は、電圧センサ、電流センサ及び温度センサを総称している。
【0019】
本実施の形態における燃料電池制御システム2は、コンピュータにより実現でき、プロセッサ、ROM、RAM、記憶手段、通信手段等を備えている。そして、後述する各種機能は、コンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、記憶部40は、記憶手段にて実現される。あるいは、RAM又は外部にある記憶手段をネットワーク経由で利用してもよい。本実施の形態のように、燃料電池4が車載されている場合、コンピュータは、ECU(Electronic Control Unit)で実現してもよい。プログラムは、通信手段により提供することはもちろん、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0020】
ところで、「耐久」とは、長く持ちこたえることなどのように定義されている。本実施の形態では、駆動手段として移動可能な移動手段である車両を例示しているので、燃料電池4の耐久性を示す指標として移動した距離、すなわち走行距離を用いる。従って、本実施の形態では、車両を極力長い距離を走行させることができるようにすることを、燃料電池4の耐久性を向上させることと同義としている。なお、車両を極力長い距離を走行させるということは、目標とする走行距離や走行時間を走破できるようにすることは当然のこと、走行距離や走行時間の走破後も所定値以上走行できるということも含む。また、車両の耐久性を示す指標として、走行距離や走行時間以外にも、坂路走破性,加速性能,最高車速等の車両の走行能力、燃費等を用いてもよい。
【0021】
本実施の形態における車両は、動力源として、燃料電池4の他にバッテリ、二次電池等が搭載されている場合がある。また、車両に対して、どういう用途で使用し、そのためにどういう走行パターンで使用するか、また1年間の走行距離は何kmで、車両を何年くらい使用する予定かなどを予め決めておく場合がある。走行パターンというのは、例えば、車両を一般道路のみの利用、長距離輸送のときは高速道路を基本的に利用する、休日は基本使用しないなどの当該車両にとって模範的な使用方法である。本実施の形態では、予定や計画等、車両の使われ方を示す予定情報を「走行予定情報」として予め設定されているものとする。走行予定情報は、当然ながら車両が実際に走行可能な能力を想定して設定される。
【0022】
本実施の形態における車両は、上記の通り複数種類の動力源を備えているかもしれないが、説明の便宜上、燃料電池4のみに着目し、走行予定情報により要求される耐久性を示す走行距離を燃料電池4のみを用いて走行するものとして説明する。この走行距離(以下、「目標耐久距離」という)は、走行予定情報の内容を分析することで得られる走行距離であるが、燃料電池4の発電能力に基づくことから、燃料電池4の目標とする発電能力を示す指標であるといえる。燃料電池4の目標とする発電能力は、当然ながら燃料電池4が物理的に備える発電能力内で設定される。
【0023】
図1に戻り、燃料電池制御システム2に含まれる各構成要素について説明する。
【0024】
動力指令部10は、走行予定情報から、いつどれだけの動力が車両に必要になるかを計算し、その計算結果、すなわち予測した車両の走行予定に必要な動力を、車載されている各動力源に分配する。本実施の形態では、動力指令部10が各動力源に分配する動力のうち、燃料電池4に分配する動力、すなわち燃料電池4にどれだけ発電させるかを示す動力を「FC発電指令値」と称している。FC発電指令値は、電力(W)により示される。動力指令部10は、走行予定情報に応じて燃料電池4の発電を制御するPM制御モデルを実行することによって燃料電池4に出力させる電力を決定する。
【0025】
なお、動力指令部10は、燃料電池4以外の動力源も合わせて走行予定情報により要求される走行距離を達成するよう指令を出すが、本実施の形態においては、上記の通り燃料電池4のみに着目して説明する。従って、動力指令部10は、走行予定情報から得られる目標耐久距離が走行できるよう燃料電池4の発電を制御する。
【0026】
FC制御部20は、FC発電指令値に応じて燃料電池4における出力を制御する。例えば、FC制御部20は、車両が目標とする走行距離以上の距離を走行できるように燃料電池4を制御する。また、FC制御部20は、FC発電指令値、すなわち要求された電力を燃料電池4が出力した場合において、燃料電池4を耐久させて走行できる最大走行距離(以下、「予測耐久距離」という)を予測する。車両の走行当初における予測耐久距離は、目標耐久距離と同等の距離である。従って、車両が走行予定情報の設定内容通りに走行できた場合、論理的には予測耐久距離と目標耐久距離は、同値である。
【0027】
FC制御部20は、FC状態出力部21、補正部22及び耐久距離予測部23を有している。
【0028】
FC状態出力部21は、IV性能モデルに従って燃料電池4の発電状況を示すデータとして電圧及び電流を出力するFCモデルを実行する。つまり、FC状態出力部21は、FC発電指令値(要求された電力)を出力する際の電圧及び電流を決める。また、FC状態出力部21は、燃料電池4の温度を推定して出力する場合もある。
【0029】
補正部22は、燃料電池4の実際の発電状況、すなわち各種センサ6により実測された燃料電池4から出力される電圧及び電流と、燃料電池4の温度と、を取得する。また、補正部22は、FC状態出力部21により推定された燃料電池4の発電状況、すなわち燃料電池4から出力される電圧及び電流と、燃料電池4の温度と、を取得する。FC状態出力部21により推定された燃料電池4の電圧及び電流と、各種センサ6により実測された電圧及び電流と、にずれが生じていると、後述の耐久距離予測部23による走行距離の予測にずれが生じうる。従って、補正部22は、燃料電池4の実際の発電状況と、FC状態出力部21により推定された燃料電池4の発電状況と、に所定以上の乖離がある場合、予測モデルにより予測される予測耐久距離に誤差が生じると判断し、予測耐久距離の誤差を解消するよう予測モデルが用いるパラメータ、具体的にはIV性能モデルの生成に参照されるパラメータを補正する。
【0030】
補正部22における触媒表面積推定・予測部221は、FC劣化推定・予測モデルを実行することによって燃料電池4に含まれる触媒の表面積を予測する。速度定数補正部222は、補正モデルを実行することによって触媒表面積の計算に用いる速度定数を補正する。速度定数は、触媒が溶出又は析出する速度を示す定数である。本実施の形態では、予測耐久距離の算出精度を改善するために速度定数を見直し、補正するが、速度定数に限らず他のパラメータ、あるいは複数のパラメータを補正対象としてよい。
【0031】
耐久距離予測部23は、補正部22によりパラメータが変更された後のIV性能モデルから得られる燃料電池4の発電状況(すなわち、電圧及び電流)の予測値から車両の走行距離(すなわち、予測耐久距離)を予測する耐久距離予測モデルを実行することによって予測耐久距離を算出する。車両は、燃料電池4が出力する電力によって走行するので、予測耐久距離は、燃料電池4が発電可能な電力(予測発電能力)として算出される。
【0032】
PM制御パラメータ補正部30は、耐久距離予測部23による予測耐久距離が、走行予定情報から得られる目標耐久距離に達しない場合、燃料電池4が目標とする発電能力を発揮して車両が目標耐久距離を走行できるよう、動力指令部10が用いるPM制御モデルのパラメータを補正する。
【0033】
記憶部40には、FC制御部20がFC発電指令値を入力して予測耐久距離を求める過程において参照した電圧等の実測値、推定値、また予測耐久距離等が記録される。これらのデータは、現在の電圧等を推定する際に必要により参照される。
【0034】
本実施の形態における燃料電池制御システム2は、上記のように構成される。なお、
図1において、動力指令部10には「PM制御モデル」、FC状態出力部21には「FCモデル」や「IV性能モデル」、補正部22には「FC劣化推定・予測モデル」や「補正モデル」(以下、「FC劣化推定モデル」と総称)、耐久距離予測部23には「耐久距離予測モデル」と、モデル名を対応付けして示している。以降の説明においては、各構成要素を示す機能ブロック名ではなくモデル名で説明する場合がある。
【0035】
ところで、走行当初に走行パターンなどを想定して決めていても、車両の実際の走行パターンは、想定した通りになるとは限らない。事故の発生等や天気の影響などを考慮すると、車両は、むしろ想定とは異なる走行を行うのが通常であると考えられる。このように想定とは異なる走行パターンが行われると、燃料電池4の使われ方も異なってくる。更に、耐久距離を予測するために用いるFC劣化推定モデルや耐久距離予測モデルにも不確かさがある。燃料電池4に使用される材料違いや動作環境などによって推定値に差が生じるが、これらは燃料電池4の使用前には定まらない不確かさである。このように、車両の実際の使われ方とモデルの不確かさによる二つの要因により、予め計算で想定される耐久距離と実際の耐久距離に乖離が生じてくる。
【0036】
そこで、本実施の形態においては、耐久目標距離を実現するために、実際の耐久距離と計算で予測される耐久距離の乖離が小さくなるように、換言すると予測耐久距離の算出精度を向上させるためにFC制御部20におけるモデルのパラメータを補正する。また、パラメータの補正後、予測耐久距離が目標耐久距離を下回る場合には目標耐久距離以上となるよう、可能であれば目標耐久距離を上回ることができるようPM制御パラメータを補正する。
【0037】
次に、本実施の形態における動作について、
図2に示すフローチャートを用いて説明する。
【0038】
走行予定情報は、前述したように想定される走行パターン等が予め設定されて生成されているものとする。PM制御モデル10は、走行予定情報を取得すると(ステップ101)、FC発電指令値を設定する(ステップ102)。このPM制御モデル10におけるFC発電指令値の設定処理について、
図3を用いて説明する。
【0039】
図3は、本実施の形態におけるPM制御モデル10を示すブロック構成図である。PM制御モデル10は、動力分配制御部11、上下限設定部12及び間欠制御部13を有している。走行予定情報がPM制御モデル10に入力されると、動力分配制御部11は、走行予定情報からどれだけの動力(パワー)が車両に必要になるか、つまりパワーの総和を計算し、そのパワーの総和を、燃料電池4及び車載されているバッテリ等の他の動力源に分配する。
図3には、分配するパワーのうち、燃料電池4に分配する電力をFC発電仮指令値として図示している。当然ながら、走行パターンから相対的に多くのパワーが必要なときには各動力源に要求するパワーの総和は相対的に大きくなり、相対的に少なく済むときには各動力源に要求するパワーの総和は相対的に小さくなる。ただ、各動力源に分配されるパワーは、パワーの総和に必ずしも比例しないかもしれない。PM制御モデル10は、このパワーの分配を行うモデルである。
【0040】
ところで、燃料電池4に分配する電力には、上限値と下限値とが予め決められている。上下限設定部12は、FC発電仮指令値が上限値と下限値との間の値を取るよう必要により補正する。間欠制御部13は、必要により補正されたFC発電仮指令値と、走行予定情報を参照して燃料電池4の間欠制御を設定する。「間欠制御」というのは、燃料電池4を動作させて電圧を出力させる場合(フラグ=1)と動作させない場合(フラグ=0)とを設定する制御である。
【0041】
PM制御モデル10は、上記のようにして燃料電池4に出力させる電力をFC発電指令値として算出する。燃料電池4は、PM制御モデル10から送られてくるFC発電指令値に従って電力を出力する。なお、PM制御モデル10が行う動力の分配自体は、従前と同じ手法で行ってよい。
【0042】
続いて、FCモデル21は、FC発電指令値に基づきIV性能モデルを用いて燃料電池4が出力する電圧と電流、そして燃料電池4の内部の温度を推定する(ステップ103)。なお、FCモデル21は、電圧、電流及び温度として各種センサ6による実測値を用いてもよいが、本実施の形態では、所定の計算方法に従って推定することにする。
【0043】
ところで、本実施の形態では、電圧を、上記のように所定の計算方法に従って推定し、また以下に説明するように予測する。本実施の形態では、実測値などの過去の履歴データを参照に計算により求める現在の電圧を電圧の「推定値」という。また、実測値などの過去の履歴データや推定値から計算により求める未来の電圧を電圧の「予測値」という。なお、「実測値」とは、車両を実際に走行させたときのセンサ6により実際に測定されて得られる値である。
【0044】
従って、「電圧推定」というのは、現時刻の電圧を計算で求めることを意味する。一方、「電圧予測」とは、未来の電圧を計算で求めることを意味する。燃料電池4の使われ方を表すFC発電指令値が現時刻までわかれば、電圧推定は可能である。また、現在から未来までのFC発電指令値が想定されていれば、電圧予測が可能となる。よって、電圧予測には、FC発電指令値の想定が必要となる。そのため、車両の走行パターンを想定してFC発電指令値を想定する必要がある。 後述する耐久距離予測モデル23における耐久距離の予測は、電圧予測ができてはじめて可能となる。
【0045】
電圧の推定値及び予測値の算出は共に、以下に示す計算式(1)~(4)を用いる。ここで、i
0は、交換電流密度である。電圧を推定及び予測するためには、交換電流密度i
0を推定し、また予測する必要がある。
図1に示すように、走行予定情報からFC発電指令値を求め、FC発電指令値から燃料電池4の電圧、触媒電位を求めることで、式(4)のポテンシャルを求めることが可能となる。そして、式(4)から式(2)によりi
0を算出することができる。従って、車両における現在から未来までの走行パターンを想定することによって電圧を予測でき、これにより、耐久距離を予測することができる。
【0046】
図4は、燃料電池4から出力される電流(I)と電圧(V)との関係を模式的に示すグラフ図であり、電圧推定値Veを算出する式(1)から得られる。
【数1】
【0047】
ここで、Iは電流密度であり、電流依存のIV特性を表している。また、i
0は交換電流密度であり、次の式(2)で表される。
【数2】
【0048】
式(2)で示すように、交換電流密度i
0は、燃料電池4の触媒劣化によって変化する。触媒劣化は、触媒粒子の半径が触媒溶出・析出によって増加し、触媒粒子の総表面積が減少することで進展する。これを数式モデル化したのが次の式(3)であり、触媒溶出・析出反応の反応速度と触媒粒子の半径の時間変化の関係を表している。
【数3】
【0049】
ここで、i番目の触媒の溶出・析出速度は、次の式(4)のように触媒電位に依存するポテンシャルの関数となっており、その係数が触媒の溶出・析出反応速度定数(上記「速度定数」)k
1である。なお、上記式(1)~(4)で用いる記号の説明を
図5に示す。
【数4】
【0050】
続いて、FC劣化推定モデル22は、電圧、電流及び温度の各推定値を用いて触媒の表面積を予測する(ステップ104)。燃料電池4の劣化というのは、ほとんどは触媒の表面積が少なくなっていくことに等しい。触媒の表面は発電反応を司るので、表面積が小さくなるに連れ発電反応が悪くなる。従って、触媒の表面積の減少は、IV性能のうち電圧の低下に直接的に結びつく。このため、FC劣化推定モデル22は、電圧の計算に用いる触媒の表面積を予測し、この予測した触媒の表面積を反映させたIV性能モデルを生成する。
【0051】
続いて、FC劣化推定モデル22は、実際の走行に伴い取得される現在時刻までの電圧実測値と、計算によって推定される現在時刻までの電圧推定値との乖離が、今後繰り返し実施する処理において小さくなるように、IV性能モデルを生成するパラメータを補正する。パラメータの補正は、要するに電圧の誤差、ひいては走行距離の誤差を小さくするためである。本実施の形態では、速度定数k1を補正対象とするパラメータの一例として示している。
【0052】
FC劣化推定モデル22は、速度定数k1の補正の要否を判断し、必要と判断した場合には補正する(ステップ106~109)。すなわち、ある電流密度における電圧の実測値の現時刻から所定期間過去の電圧として、例えば直近数日間内で計測された電圧の平均値Vを算出する。また、FC劣化推定モデル22において算出した現時刻の同一電流密度における予測値Veを算出する。
【0053】
FC劣化推定モデル22は、算出した電圧平均値Vと電圧予測値Veを比較し、電圧平均値Vが電圧予測値Veよりも、予め設定している閾値εより大きい場合(ステップ106でY)、速度定数k1を減らすよう補正する(ステップ107)。一方、電圧予測値Veが電圧平均値Vよりも、閾値εより大きい場合(ステップ106でN,ステップ108でY)、速度定数k1を増やすよう補正する(ステップ109)。
【0054】
電圧予測値Veが電圧平均値Vと一致するのが理想的であるが、平均値の算出に参照する期間の取り方などによって平均値の算出結果にばらつきが出てくることが想定できる。従って、本実施の形態では、許容誤差を考慮して閾値εを設定している。また、速度定数k1の増減の幅は、適宜設定すればよい。また、例えば増加分と減少分を同値としてもよいし異なる値としてもよい。また、増加若しくは減少させるとしても、増減幅を常に同じとする必要はなく、時節等に応じて適宜設定してもよい。なお、速度定数k1の増減幅を大きくしすぎると電圧計測値と電圧予測値との大小が逆転してしまうことになりかねないので、この点を考慮して逆転しないように増減幅を設定する。
【0055】
以上のようにして、IV性能モデルにおけるパラメータが補正されると、続いて、耐久距離予測モデル23は、予測耐久距離を算出することによって耐久距離を予測する(ステップ110)。すなわち、耐久距離予測モデル23は、電圧推定値と同様の計算式にて予測耐久距離を算出するが、上記の通り、パラメータの補正によりIV性能モデルが更新されるので、電圧予測値が電圧推定値と同値になるとは限らない。
【0056】
続いて、PM制御パラメータ補正部30は、耐久距離予測モデル23が求めた予測耐久距離と、走行予定情報から求めることができる目標耐久距離とを比較する。そして、予測耐久距離が目標耐久距離以上であれば(ステップ111でN)、燃料電池4が予測発電能力に従った電力をこのまま継続して出力すれば、目標とする走行距離を達成できるので処理を終了する。
図2に示すフローチャートでは、処理を終了させているが、予測耐久距離をより一層延ばすために、更なるパラメータ補正等を試行してもよい。
【0057】
一方、予測耐久距離が目標耐久距離に達していない場合(ステップ111でY)、PM制御パラメータ補正部30は、燃料電池4が予測発電能力に従った電力をこのまま継続して出力しても、つまり、予測耐久距離を走行するための発電を継続して行っても目標とする走行距離を走行できないと判断し、予測耐久距離が目標耐久距離以上となるようPM制御モデル10が用いるパラメータを補正する。本実施の形態では、PM制御モデル10が用いるパラメータのうち、燃料電池4における発電の最大値を規定するFC電力指令最大値Pfcmax又は燃料電池4における発電の最小値を規定するFC電力指令最小値Pfcminを補正対象とする場合を例にして説明する。
【0058】
FC電力指令最大値Pfc
maxの調整可能な範囲の下限をPfc
max_lbとする。ここで、Pfc
max-Pfc
max_lb>0場合、FC電力指令最大値Pfc
maxを減らすよう、換言すると下限値Pfc
max_lbに近づくよう補正する。この処理の概念図を
図6に示す。
【0059】
図6(a)は、電流と電圧との関係、すなわちIV性能モデルに相当し、
図6(b)は、電流と電力との関係を模式的に示す図である。
図6(b)に示すように、FC電力指令最大値Pfc
maxを下げる方向に補正すると(矢印A)、
図6(a)に示すようにIV性能モデルの動作域が低電流側にシフトされ(矢印B)、結果として電圧の最小値が増加することになる(矢印C)。つまり、燃料電池4から出力される電圧の下限値が上方に補正されることで、パラメータ(FC電力指令最大値Pfc
max)の補正前と比較して小電圧での出力が制限され、大電圧で出力されやすくなる。
【0060】
また、FC電力指令最小値Pfc
minの調整可能な範囲の上限をPfc
min_ubとすると、Pfc
min_ub-Pfc
min>0場合、FC電力指令最小値Pfc
minを増やすよう、換言すると、上限値Pfc
min_ubに近づくよう補正する。この処理の概念図を
図7に示す。
【0061】
図7(a)は、電流と電圧との関係、すなわちIV性能モデルに相当し、
図7(b)は、電流と電力との関係を模式的に示す図である。
図7(b)に示すように、FC電力指令最小値Pfc
minを上げる方向に補正すると(矢印D)、
図7(a)に示すようにIV性能モデルの動作域が高電流側にシフトされ(矢印E)、結果として電圧の最大値が低下することになる(矢印F)。つまり、燃料電池4から出力される電圧の上限値が下方に補正されることで、パラメータ(FC電力指令最小値Pfc
min)の補正前と比較して大電圧での出力が制限され、小電圧で出力されやすくなる。
【0062】
上記パラメータの補正の結果、つまり
図6と
図7を合わせた図を
図8に示す。
図8には、電圧のパラメータ補正前の動作域Vbとパラメータ補正後の動作域Va、また電流のパラメータ補正前の動作域Abとパラメータ補正後の動作域Aaが示されている。
図8に示すように、IV性能モデルにおけるIV線図上の動作域は、電流、電圧ともに狭くなる。これにより、触媒の溶出・析出劣化の加速要因となる電圧変動の範囲が制限される。電圧変動の範囲が小さくなることで触媒の劣化が抑制される。また、最大電流が低下することで燃料電池4の最大温度が低下し、結果として触媒の劣化が抑制される。このように、PM制御モデル10における上記パラメータを補正することで、IV性能の低下が抑制されるため耐久距離が増加しうる。
【0063】
なお、前述したように、本実施の形態では、IV性能モデルにおけるIV線図上の動作域を狭くすることで電圧、電流の変動幅を制限している。そのために、FC電力指令最大値PfcmaxとPfcminの双方を補正の対象としたが、少なくとも一方を補正の対象としてもよい。また、電圧、電流の変動幅を制限できる他のパラメータ、例えばFC電圧最大値VfcmaxやFC電圧最小値Vfcminを補正対象としてもよい。
【0064】
本実施の形態における燃料電池4の制御処理は、以上のようにして実施される。前述した制御処理を要約すると、次のようになる。まず、走行開始時に、想定される走行パターンを含む走行予定情報を参照に設定された目標とする走行距離(目標耐久距離)を初期設定する。その後、車両が目標耐久距離を走行できるように、IV性能モデルのパラメータが初期設定される。そして、燃料電池4は、計画されたFC発電指令値に従って電力を出力する。車両の走行距離は、燃料電池4からの出力電圧に依存するので、車両走行の過程において、燃料電池4における電圧の実測値と走行予定情報から推定される電圧の推定値との乖離の程度によって予測される走行距離(予測耐久距離)の精度の程度が判断できる。従って、実測値と推定値に所定以上の乖離がある場合には、IV性能モデルのパラメータを補正して予測耐久距離の予測精度を向上させる。但し、補正後のIV性能モデルを用いて求めた予測耐久距離が目標耐久距離に達しない場合、予測耐久距離が目標耐久距離以上となるようにPM制御モデル30におけるパラメータを更に補正する。
【0065】
本実施の形態における燃料電池4の制御処理では、燃料電池4の実際の使われ方に応じてパラメータを適宜補正するが、制御処理は、燃料電池4を使い始めてから所定のタイミングで繰り返し実施すればよい。例えば、燃料電池4の内部温度に変化が現れる季節の変わり目、つまり3ヶ月に1回程度行うようにしてもよいし、予測耐久距離を日々見直すようにしてもよい。もちろん、この例に限らず、燃料電池4の使われ方に応じて所望のタイミングで定周期的に自動的に実施するようにしてもよいし、手動による指示に応じて実施するようにしてもよい。
【0066】
なお、本実施の形態においては、燃料電池4の耐久性に着目して燃料電池4の出力を制御している。つまり、予測耐久距離が少なくとも目標耐久距離以上、できればそれ以上となるように燃料電池4の出力制御をしている。ただ、耐久性に加えて、例えば目標耐久距離を走破するまでに要する燃料の費用、また総燃料費と部品の交換等のメンテナンス費用を考慮してもよい。つまり、PM制御パラメータ補正部30は、目標耐久距離の走行ができることを前提としつつ、その際に車両の走行に要するトータルコストが最小となるようにPM制御モデル10が用いるパラメータを補正するようにしてもよい。そのためには、目標耐久距離の走破に必要な燃料の総量及び燃料の単価等総燃料費の算出に用いる情報が必要となる。また、交換を要する部品の交換時期、部品代や作業代等メンテナンス費用の算出に用いる情報が必要となる。そのために、燃料電池制御システムは、それらの情報を保持する手段若しくは外部からネットワーク経由で取得する通信手段を有する必要がある。
【0067】
本実施の形態では、駆動手段として移動可能な移動手段である車両を例にして説明したので、燃料電池4の耐久性を示す指標として、つまり燃料電池4の発電能力に応じて数値化できる客観的な指標として走行距離を用いて説明した。ただ、燃料電池4の発電能力は、駆動手段の種類や用途に応じて走行距離以外の指標を用いればよい。例えば、燃料電池4の発電能力を示す指標は、駆動手段の駆動時間や駆動手段が扱う物体の重量負荷等、駆動手段に特性に応じて決めればよい。
【0068】
[本願発明の構成]
構成1:
燃料電池を動力として駆動する駆動手段の使われ方を示す予定情報に応じて前記燃料電池の発電を制御する制御モデルを実行する制御モデル実行手段と、
前記燃料電池の発電状況から前記燃料電池が発電可能な電力を予測発電能力として予測する予測モデルを実行する予測モデル実行手段と、
前記燃料電池の実際の発電状況と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況とに所定以上の乖離がある場合、前記予測モデルにより予測される予測発電能力に誤差が生じると判断し、予測発電能力の誤差を解消するよう前記予測モデルが用いるパラメータを補正する予測モデル補正手段と、
パラメータ補正後の前記予測モデルにより予測された予測発電能力が前記予定情報から得られる前記燃料電池の目標とする発電能力に満たない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮できるよう前記制御モデルのパラメータを補正する制御モデル補正手段と、
を有することを特徴とする燃料電池制御システム。
構成2:
前記駆動手段が移動可能な移動手段の場合、
前記制御モデルは、前記予定情報から得られる目標とする距離が走行できるよう前記燃料電池の発電を制御し、
前記予測モデルは、前記予測発電能力として前記移動手段の走行可能な距離を予測し、
前記制御モデル補正手段は、前記予測モデルが予測した前記移動手段の走行可能な距離が前記目標とする距離に達しない場合、前記燃料電池が前記目標とする発電能力を発揮して前記移動手段が前記目標とする距離を走行できるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正する、
ことを特徴とする構成1に記載の燃料電池制御システム。
構成3:
前記制御モデル補正手段は、前記燃料電池における発電の最大値を規定するパラメータ値を下げる補正、あるいは前記燃料電池における発電の最小値を規定するパラメータ値を上げる補正の少なくとも一方を行うことを特徴とする構成1または2に記載の燃料電池制御システム。
構成4:
前記制御モデル補正手段は、前記駆動手段の駆動に要するトータルコストが最小となるよう前記制御モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする構成1から3のいずれか1つに記載の燃料電池制御システム。
構成5:
前記予測モデル補正手段は、前記燃料電池の実際の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の計測値と、前記予定情報を参照に推定した前記燃料電池の発電状況を示す前記燃料電池の電圧の推定値とに所定以上の乖離がある場合に前記予測モデルが用いるパラメータを補正することを特徴とする構成1から4のいずれか1つに記載の燃料電池制御システム。
構成6:
前記予測モデルが用いるパラメータは、速度定数であることを特徴とする構成5に記載の料電池制御システム。
【符号の説明】
【0069】
2 燃料電池制御システム、4 燃料電池、6 各種センサ、10 動力指令部(PM制御モデル)、11 動力分配制御部、12 上下限設定部、13 間欠制御部、20 FC制御部、21 FC状態出力部(FCモデル)、22 補正部(FC劣化推定モデル)、23 耐久距離予測部(耐久距離予測モデル)、30 PM制御パラメータ補正部(PM制御モデル)、40 記憶部、221 触媒表面積推定・予測部、222 速度定数補正部。