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特開2024-137279MEMS装置およびMEMS装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137279
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】MEMS装置およびMEMS装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B81B 7/02 20060101AFI20240927BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20240927BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20240927BHJP
   G01P 15/08 20060101ALI20240927BHJP
   G01P 15/125 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
B81B7/02
B81C1/00
B81B3/00
G01P15/08 102B
G01P15/125 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048742
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100224627
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 稔
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】宮渕 弘樹
【テーマコード(参考)】
3C081
【Fターム(参考)】
3C081AA11
3C081BA21
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA41
3C081BA48
3C081BA53
3C081CA02
3C081CA13
3C081CA40
3C081DA03
3C081DA26
3C081DA30
3C081DA43
3C081EA02
(57)【要約】
【課題】MEMS装置において大型化の抑制を図る。
【解決手段】MEMS装置1は、シリコン層13を有する基板10と、基板10を、平面視において、シリコン層13上に絶縁層11が積層された第1部分51と、シリコン層13を有する第2部分52とに分断するとともに、第1部分51と第2部分52とを機械的に連結しつつ電気的に絶縁するアイソレーションジョイント60と、基板10上に配置された配線層40とを備える。配線層40は、第1部分51において絶縁層11によってシリコン層13と電気的に絶縁されるとともに、第2部分52においてシリコン層13に接して積層されることでシリコン層13と電気的に接続されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン層を有する基板と、
前記基板を、平面視において、前記シリコン層上に絶縁層が積層された第1部分と、前記シリコン層を有する第2部分とに分断するとともに、前記第1部分と前記第2部分とを機械的に連結しつつ電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、
前記基板上に配置された配線層と
を備え、
前記配線層は、前記第1部分において前記絶縁層によって前記シリコン層と電気的に絶縁されるとともに、前記第2部分において前記シリコン層に接して積層されることで前記シリコン層と電気的に接続されている、MEMS装置。
【請求項2】
前記配線層は、導電性を有するシリコン含有材料で構成されている、請求項1に記載のMEMS装置。
【請求項3】
前記配線層は、前記第2部分の側面と位置合わせされた側面を有する、請求項1または2に記載のMEMS装置。
【請求項4】
前記基板に対して相対的に移動可能な可動部を備え、
前記第2部分は、前記可動部が所定の移動量移動したときに前記可動部と接触することで前記可動部の動きを制限する、請求項1または2に記載のMEMS装置。
【請求項5】
前記第2部分と、前記可動部のうち前記第2部分と対向する部分とは、同電位に接続されている、請求項4に記載のMEMS装置。
【請求項6】
シリコン層を有するとともに、前記シリコン層の外表面である第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを有する基板を用意し、
前記基板の前記第1主面から前記第2主面に向かって延びたトレンチを形成し、
前記トレンチの壁面を熱酸化することによってアイソレーションジョイントを形成し、
前記第1主面上に絶縁層を形成し、
平面視において前記アイソレーションジョイントと隣接する領域において前記絶縁層を除去して前記第1主面を露出させ、
前記基板の第1主面側に導電性を有するシリコン含有材料で構成された配線層を形成し、前記配線層は、前記領域において、前記シリコン層に接して積層され、
前記領域において、前記配線層と前記シリコン層とを同一のマスクを用いてエッチングする
ことを含む、MEMS装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMS装置およびMEMS装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と、絶縁領域を介して基板に接続された可動部と、上部絶縁膜を介して基板および可動部上に配置された配線電極とを備える加速度センサが開示されている。配線電極は、アルミニウムからなり、上部絶縁膜により基板と絶縁されるとともに、上部絶縁膜に設けられたビアを介して可動部と電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-022137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、可動部と、上部絶縁膜と、配線電極とは別個の工程で形成される。このとき、可動部と上部絶縁膜と配線電極とをそれぞれ形成するときのマスクの位置のずれを許容するために、平面視において、上部絶縁膜は配線電極よりも大きく形成され、可動部は上部絶縁膜よりも大きく形成されることがある。この場合、平面視において、可動部の面積が配線電極を配置するために必要な面積よりも大きくなり、加速度センサが大型化することがある。
【0005】
本開示は、MEMS装置において大型化の抑制を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
シリコン層を有する基板と、
前記基板を、平面視において、前記シリコン層および前記シリコン層上に積層された絶縁層を有する第1部分と、前記シリコン層を有する第2部分とに分断するとともに、前記第1部分と前記第2部分とを機械的に連結しつつ電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、
前記基板上に配置された配線層と
を備え、
前記配線層は、前記第1部分において前記絶縁層によって前記シリコン層と電気的に絶縁されるとともに、前記第2部分において前記シリコン層に接して積層されることで前記シリコン層と電気的に接続されている、MEMS装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、MEMS装置において大型化の抑制を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの平面図である。
図2図2は、図1の加速度センサの領域A周辺を拡大して示した斜視図である。
図3図3は、図1の加速度センサの領域Aの拡大図である。
図4図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
図5図5は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するためのフローチャートである。
図6図6は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図7図7は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図8図8は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図9図9は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図10図10は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図11図11は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図12図12は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図13図13は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図14図14は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
図15図15は、本開示の一実施形態に係る加速度センサの製造工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態に係るMEMS装置およびMEMS装置の製造方法を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0010】
[加速度センサ]
図1は、本開示の一実施形態に係る加速度センサ1を概略的に示す平面図である。本実施形態に係る加速度センサ1は、半導体微細加工技術を用いて製造される静電容量型加速度センサである。本実施形態の加速度センサ1は、本開示に係るMEMS(Micro Electro Mechanical System)装置の一例である。
【0011】
以下の説明では、便宜上、図1に示す平面視において加速度センサ1の各辺に沿った方向のうち図1の左右方向をX方向、図1の上下方向をY方向と称し、図4に示す断面視において加速度センサ1の厚み方向(図4における上下方向)をZ方向と称する。特に、図1における、右側を+X方向、左側を-X方向、上側を+Y方向、下側を-Y方向とそれぞれ称する場合がある。図4における、上側を+Z方向、下側を-Z方向と称する場合がある。本実施形態では、X方向と、Y方向と、Z方向は互いに直交している。
【0012】
図1に示すように、加速度センサ1は、基板10と、基板10内に設けられた可動電極20および固定電極30とを備える。加速度センサ1は、可動電極20および固定電極30との間で電気信号(電圧)が入出力される複数の電極パッド(図示せず)を有する。
【0013】
基板10は、平面視矩形状である。基板10は、+Z側に位置する第1主面10aと-Z側に位置しており第1主面10aに対向する第2主面10b(図4参照)とを有している。第1主面10aおよび第2主面10bは、X方向およびY方向に平行に延びている。基板10には、第1主面10aから-Z側に窪んだ平面視矩形状のキャビティ10cが形成されている。
【0014】
可動電極20と固定電極30とは、MEMS電極を構成する。可動電極20と固定電極30とは、キャビティ10c内に配置されている。
【0015】
可動電極20は、キャビティ10cの底面から+Z側に離間している。可動電極20は、基板10に対して相対的に移動可能なように、基板10に接続されている。可動電極20は、加速度センサ1のプルーフマスとして機能する可動電極基部21と、Y方向に延びた第1可動電極指22と、第1可動電極指22の+X側に位置しており、Y方向に延びた第2可動電極指23とを備える。第1可動電極指22の+Y側端部は、可動電極基部21に接続されている。第2可動電極指23の+Y側端部は、可動電極基部21に接続されている。
【0016】
可動電極20は、第1可動電極指22と第2可動電極指23とをX方向に機械的に接続しつつ電気的に絶縁するための可動電極アイソレーションジョイント24を備える。本実施形態の可動電極アイソレーションジョイント24は、基板10を熱酸化することによって形成された酸化シリコン(SiO2)である。
【0017】
本実施形態では、第1可動電極指22と、第1可動電極指22の+X側に隣り合って配置された第2可動電極指23とにより一対の可動電極指対が構成されている。本実施形態の可動電極20では、可動電極指対が複数設けられている。複数の可動電極指対は、X方向に並んで配置されている。
【0018】
固定電極30は、キャビティ10cの底面から+Z側に離間している。固定電極30は、基板10に固定されている。言い換えれば、固定電極30は、基板10に対して相対的に移動しないように、基板10に接続されている。固定電極30は、固定電極基部31と、Y方向に延び、-Y側端部が固定電極基部31に接続された複数の固定電極指32を備える。複数の固定電極指32は、X方向に並んで配置されている。X方向に隣り合って配置された2つの固定電極指32の間には、一対の可動電極指対が配置されている。言い換えれば、固定電極指32と可動電極指対とは、X方向に沿って互い違いに配置されている。固定電極指32と可動電極指対とは、X方向に向き合って配置されている。
【0019】
本実施形態の加速度センサ1では、第1可動電極指22と、第1可動電極指22の-X側に隣り合って配置された固定電極指32とによって第1コンデンサC1が構成されている。また、第2可動電極指23と、第2可動電極指23の+X側に隣り合って配置された固定電極指32とによって第2コンデンサC2が構成されている。
【0020】
加速度センサ1にX軸方向の加速度が作用した場合、可動電極基部21に接続された第1可動電極指22および第2可動電極指23が、基板10に固定された固定電極30に対して相対的に移動する。加速度センサ1は、加速度が作用したときの可動電極20のX方向への変位に伴う、第1コンデンサC1および第2コンデンサC2それぞれにおける静電容量の変化を電気信号として電極パッド(図示せず)から取り出すことによって加速度を検出可能に構成されている。
【0021】
加速度センサ1は、可動電極20の第1可動電極指22に電気的に接続された第1配線層40と、可動電極20の第2可動電極指23に電気的に接続された第2配線層41と、固定電極30に電気的に接続された第3配線層42とを備える。第1配線層40、第2配線層41、および第3配線層42は、導電性を有するシリコン含有材料で構成されている。本実施形態の第1配線層40、第2配線層41、および第3配線層42は、導電性ポリシリコンで構成されている。本実施形態の第1配線層40は、本開示に係る配線層の一例である。
【0022】
図2は、図1の領域A周辺の斜視図である。図3は、図1の領域Aの拡大平面図である。図4は、図3のIV-IV線に沿った断面図である。
【0023】
基板10は、シリコン(Si)層を有する。本実施形態の基板10は、単一のシリコン層のみからなる。
【0024】
基板10の+Z側には、絶縁層11が積層されている。絶縁層11は、酸化シリコン(SiO2)層である。
【0025】
本実施形態の基板10は、可動電極基部21のX軸方向の移動を制限するためのバンプストップ50を備える。バンプストップ50は、基板10のY方向およびZ方向に延びた側面からX軸方向に片持ち梁状に突出している。
【0026】
加速度センサ1は、平面視においてバンプストップ50を基端部51と先端部52とに分断するアイソレーションジョイント60を備える。アイソレーションジョイント60は、基端部51と先端部52とを機械的に連結するとともに電気的に絶縁している。アイソレーションジョイント60は、酸化シリコン(SiO2)で構成されている。
【0027】
基端部51は、アイソレーションジョイント60の-X側に配置されている。基端部51は、シリコン層を有する。基端部51では、シリコン層の+Z側に絶縁層11が積層されている。本実施形態の基端部51は、本開示に係る第1部分の一例である。
【0028】
先端部52は、アイソレーションジョイント60の+X側に配置されている。先端部52は、シリコン層を有する。先端部52では、シリコン層の+Z側には絶縁層11が積層されていない。本実施形態の先端部52は、本開示に係る第2部分の一例である。
【0029】
第1配線層40は、バンプストップ50上に積層されている。第1配線層40は、基端部51において、絶縁層11によってシリコン層と電気的に絶縁されるとともに、先端部52においてシリコン層に接して積層されることでシリコン層と電気的に接続されている。先端部52は、第1配線層40により第1可動電極指22(図1に示す)と電気的に接続されている。先端部52と、可動電極基部21のうち先端部52とX方向において対向する部分とは、第1配線層40により、同電位に接続されている。
【0030】
図3に示すように、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分は、平面視において先端部52と同一または略同一の形状および大きさを有している。言い換えれば、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分と、先端部52とは、平面視において外形が一致するように重複して配置されている。
【0031】
図2に示すように、第1配線層40は、先端部52の側面52aと位置合わせされた側面40aを有する。詳細には、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分の側面40aは、先端部52を構成するシリコン層の側面と位置合わせされている。本実施形態では、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分の全周における側面40aが、先端部52の側面52aと位置合わせされている。本実施形態では、第1配線層40の側面40aと、先端部52の側面52aとはZ方向に連続的に延びている。さらに言い換えれば、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分と、先端部52とは自己整合的に形成されている。
【0032】
第1配線層40のうち基端部51上に配置された部分は、平面視において基端部51よりも小さい。言い換えれば、基端部51は、第1配線層40のうち基端部51上に配置された部分よりも大きく形成されている。
【0033】
[加速度センサの製造方法]
図5から図15を参照して、加速度センサ1の製造方法、特にバンプストップ50周辺の構造の製造方法について説明する。図5は、本実施形態に係る加速度センサ1の製造方法を説明するためのフローチャートである。図6から図15は、本実施形態の加速度センサ1の製造方法を説明するための図である。図6から図9図11、および図12は、図4と同様の断面図を示しており、図10、および図13から図15は、図3と同様の平面図を示している。
【0034】
ステップS1では、図6に示すように、シリコン(Si)層を含む基板10が用意される。本実施形態の基板10は、単一のシリコン層のみからなる。基板10は、+Z側に位置する第1主面10aと、Z側に位置しており第1主面10aに対向する第2主面10bとを有している。
【0035】
次に、ステップS2では、図7に示すように、基板10の第1主面10aから第2主面10b側に延びた第1トレンチT1が形成される。具体的には、基板10の第1主面10a上に、アイソレーションジョイント60(図3に示す)に対応する位置が表出する第1酸化シリコン(SiO2)層L1を形成する。図7では、可動電極アイソレーションジョイント24(図3に示す)に対応する位置においても第1主面10aが表出している。次に、第1酸化シリコン層L1をハードマスクとして、基板10を異方性エッチングにより第1主面10aから-Z側に掘り下げることによって、第1トレンチT1が形成される。
【0036】
次に、ステップS3では、図8に示すように、第1トレンチT1の壁面を熱酸化することによって、アイソレーションジョイント60が形成される。また、ステップS4では、基板10の第1主面10a上に絶縁層11が形成される。本実施形態では、ステップS3のアイソレーションジョイント60の形成とステップS4の絶縁層11の形成とは、同一の工程で行われる。具体的には、第1酸化シリコン層L1(図7に示す)を基板10から除去した後、基板10を+Z側から熱酸化することによって、第1トレンチT1の内壁面上および第1主面10a上に熱酸化シリコンである熱酸化皮膜を形成する。第1トレンチT1の内壁面に形成された熱酸化皮膜が、第1トレンチT1の内側を埋める一方で、-Z方向に成長して、アイソレーションジョイント60が形成される。また、第1主面10a上に形成された熱酸化皮膜により絶縁層11が構成される。
【0037】
次に、ステップS5では、図9および図10に示すように、基板10の第1主面10a上に形成された絶縁層11のうち、平面視においてアイソレーションジョイント60と隣接する領域Rに位置する部分が除去されて、第1主面10aが露出される。領域Rは、アイソレーションジョイント60よりも+X側に位置している。領域Rは、平面視においてバンプストップ50の先端部52(図3に示す)よりも大きい。
【0038】
次に、ステップS6では、図11に示すように、基板10の第1主面10aの+Z側に導電性ポリシリコン層L2が形成される。導電性ポリシリコン層L2は、領域Rにおいて、基板10のシリコン層に接して積層される。
【0039】
次に、ステップS7では、図12および図13に示すように、導電性ポリシリコン層L2(図11に示す)が所定のパターンでエッチングされることで部分的に除去される。これにより、基板10の第1主面10a側に第1配線層40が形成される。ステップS7において、残存した導電性ポリシリコン層L2が第1配線層40を構成する。ここで、第1配線層40は、領域Rにおいて、基板10のシリコン層に接して積層される。
【0040】
次に、ステップS8では、図14に示すように、基板10の第1主面10a上に形成された絶縁層11が所定のパターンでエッチングされることで部分的に除去される。図13では、絶縁層11のうち残存する領域を二点鎖線で示している。
【0041】
次に、ステップS9では、バンプストップ50(図3に示す)が形成される。具体的には、基板10の第1主面10a上に、加速度センサ1の形状に対応するように第2酸化シリコン層L3を形成する。図15では、第2酸化シリコン層L3が形成される部分が二点鎖線で示されている。次に、第2酸化シリコン層L3をハードマスクとして、基板10を異方性エッチングにより+Z側から-Z側に掘り下げることによって、第2トレンチ(図示せず)が形成される。なお、第2トレンチは、第2酸化シリコン層L3が形成されていない部分に形成される。このとき、領域Rでは、第1配線層40と基板10のシリコン層とが同一のマスク(第2酸化シリコン層L3)を用いてエッチングされる。
【0042】
その後、図示しないが、第2トレンチの底部を等方性エッチングにより除去することによって、バンプストップ50の-Z側に位置する基板10のシリコン層が除去される。これにより、隣り合う第2トレンチの底部同士が接続されることによって、キャビティ10cが形成されると共に、バンプストップ50がキャビティ10cの底面から+Z側に離間するように形成される。
【0043】
本実施形態に係る加速度センサ1によれば、以下の効果を奏する。
【0044】
(1)加速度センサ1は、シリコン層を有する基板10と、基板10を、平面視において、シリコン層上に絶縁層11が積層された基端部51と、シリコン層を有する先端部52とに分断するとともに、基端部51と先端部52とを機械的に連結しつつ電気的に絶縁するアイソレーションジョイント60と、基板10上に配置された第1配線層40とを備える。第1配線層40は、基端部51において絶縁層11によってシリコン層と電気的に絶縁されるとともに、先端部52においてシリコン層に接して積層されることでシリコン層と電気的に接続されている。
【0045】
この構成によれば、第1配線層40は、先端部52において、シリコン層に接して積層され、シリコン層と電気的に接続されている。このため、先端部52において第1配線層40とシリコン層との間に絶縁層が配置され、絶縁層に設けられたビアを介してシリコン層と電気的に接続されている場合と異なり、先端部52を形成するときのパターニングにおいて、絶縁層との位置のずれを考慮する必要がない。これにより、先端部52において第1配線層40とシリコン層との間に絶縁層が配置されている場合と異なり、先端部52を必要以上に大きく形成する必要がない。その結果、先端部52の大型化を抑制することができるため、加速度センサ1の大型化の抑制を図ることができる。
【0046】
(2)第1配線層40は、導電性を有するシリコン含有材料で構成されている
【0047】
この構成によれば、先端部52において、シリコン層と、シリコン含有材料で構成されている第1配線層40とを、同一のエッチング工程で形成することができる。例えば、先端部52に含まれるシリコン層と第1配線層40とを同一のマスクによりエッチングした場合、先端部52と第1配線層40とを平面視において同じ大きさで形成することができる。その結果、先端部52を必要以上に大きく形成する必要がなく、先端部52の大型化を抑制することができるため、加速度センサ1全体の大型化の抑制を図ることができる。
【0048】
(3)第1配線層40は、先端部52の側面52aと位置合わせされた側面40aを有する。
【0049】
この構成によれば、第1配線層40のうち先端部52上に配置された部分が、先端部52の側面52aと位置合わせされた側面40aを有する。すなわち、先端部52は、平面視において第1配線層40と同じ大きさで形成されており、必要以上に大きく形成されていない。その結果、先端部52の大型化を抑制することができるため、加速度センサ1全体の大型化の抑制を図ることができる。
【0050】
(4)基板10に対して相対的に移動可能な可動電極基部21を備え、先端部52は、可動電極基部21が所定の移動量移動したときに可動電極基部21と接触することで可動電極基部21の動きを制限する。
【0051】
可動電極基部21に加速度が作用し、可動電極20と固定電極30とが接近し過ぎた場合、可動電極20が静電気力により固定電極30に張り付くことがある。この構成によれば、先端部52により可動電極基部21の動きが制限されるため、可動電極基部21に加速度が作用した場合に、可動電極20と固定電極30が接近しすぎることを抑制することができる。これにより、可動電極20が静電気力により固定電極30に張り付くことを抑制することができる。
【0052】
(5)先端部52と、可動電極基部21のうち先端部52と対向する部分とは、同電位に接続されている。
【0053】
この構成によれば、先端部52と、可動電極基部21のうち先端部52と対向する部分とが同電位に接続されているので、先端部52と、可動電極基部21のうち先端部52と対向する部分とには互いに離れようとする反発力が作用する。その結果、先端部52が可動電極基部21に張り付くことを抑制することができ、可動電極20が静電気力により固定電極30に張り付くことを抑制することができる。
【0054】
本実施形態に係る加速度センサ1の製造方法によれば、以下の効果を奏する。
【0055】
(6)本実施形態に係る加速度センサ1の製造方法は、シリコン層を有するとともに、シリコン層の外表面である第1主面10aと、第1主面10aと対向する第2主面10bとを有する基板10を用意し、基板10の第1主面10aから第2主面10bに向かって延びた第1トレンチT1を形成し、第1トレンチT1の壁面を熱酸化することによってアイソレーションジョイント60を形成し、第1主面10a上に絶縁層11を形成し、平面視においてアイソレーションジョイント60と隣接する領域Rにおいて絶縁層11を除去して第1主面10aを露出させ、基板10の第1主面10a側に導電性を有するシリコン含有材料で構成された第1配線層40を形成し、第1配線層40は、領域Rにおいて、シリコン層に接して積層され、領域Rにおいて、第1配線層40とシリコン層とを同一のマスクを用いてエッチングすることを含む。
【0056】
この製造方法によれば、領域Rにおいて第1配線層40とシリコン層とが同一のマスクを用いてエッチングされるため、領域Rにおいて第1配線層40とシリコン層とを平面視において同じ形状および大きさで形成することができる。その結果、アイソレーションジョイント60に隣接する領域Rにおいて、第1配線層40を支持するためのシリコン層を必要以上に大きく形成する必要がない。その結果、加速度センサ1の大型化の抑制を図ることができる。
【0057】
(その他の実施形態)
本開示に係るMEMS装置は、以下のように構成することができる。
【0058】
上記実施形態では、基板がシリコン層のみからなる場合について説明したが、本開示に係る基板は、シリコン層に加えて酸化シリコン(SiO2)層または炭化シリコン(SiC)などの他の層を有してもよい。例えば、本開示に係る基板は、SOI(Silicone On Insulator)基板であってもよい。
【0059】
上記実施形態では、第1配線層40、第2配線層41、および第3配線層42は、導電性ポリシリコンで構成されていたが、金属で構成されていてもよい。
【0060】
上記実施形態では、本開示がバンプストップに適用される場合について説明したが、本開示は、配線層と可動電極との接続部分または配線層と固定電極との接続部分に適用されてもよい。
【0061】
[付記]
本開示に係るMEMS装置およびMEMS装置の製造方法は、以下の態様を提供する。
【0062】
[態様1]
シリコン層を有する基板と、
前記基板を、平面視において、前記シリコン層上に絶縁層が積層された第1部分と、前記シリコン層を有する第2部分とに分断するとともに、前記第1部分と前記第2部分とを機械的に連結しつつ電気的に絶縁するアイソレーションジョイントと、
前記基板上に配置された配線層と
を備え、
前記配線層は、前記第1部分において前記絶縁層によって前記シリコン層と電気的に絶縁されるとともに、前記第2部分において前記シリコン層に接して積層されることで前記シリコン層と電気的に接続されている、MEMS装置を提供する。
【0063】
[態様2]
前記配線層は、導電性を有するシリコン含有材料で構成されている、態様1に記載のMEMS装置を提供する。
【0064】
[態様3]
前記配線層は、前記第2部分の側面と位置合わせされた側面を有する、態様1または2に記載のMEMS装置を提供する。
【0065】
[態様4]
前記基板に対して相対的に移動可能な可動部を備え、
前記第2部分は、前記可動部が所定の移動量移動したときに前記可動部と接触することで前記可動部の動きを制限する、態様1から3に記載のMEMS装置を提供する。
【0066】
[態様5]
前記第2部分と、前記可動部のうち前記第2部分に対向する部分とは、同電位に接続されている、態様4に記載のMEMS装置を提供する。
【0067】
[態様6]
シリコン層を有するとともに、前記シリコン層の外表面である第1主面と、前記第1主面と対向する第2主面とを有する基板を用意し、
前記基板の前記第1主面から前記第2主面に向かって延びたトレンチを形成し、
前記トレンチの壁面を熱酸化することによってアイソレーションジョイントを形成し、
前記第1主面上に絶縁層を形成し、
平面視において前記アイソレーションジョイントと隣接する領域において前記絶縁層を除去して前記第1主面を露出させ、
前記基板の第1主面側に導電性を有するシリコン含有材料で構成された配線層を形成し、前記配線層は、前記領域において、前記シリコン層に接して積層され、
前記領域において、前記配線層と前記シリコン層とを同一のマスクを用いてエッチングする
ことを含む、MEMS装置の製造方法を提供する。
【符号の説明】
【0068】
1 加速度センサ(MEMS装置)
10 基板
10a 第1主面
10b 第2主面
10c キャビティ
11 絶縁層
20 可動電極
21 可動電極基部
22 第1可動電極指
23 第2可動電極指
24 可動電極アイソレーションジョイント
30 固定電極
31 固定電極基部
32 固定電極指
40 第1配線層
41 第2配線層
42 第3配線層
50 バンプストップ
51 基端部(第1部分)
52 先端部(第2部分)
60 アイソレーションジョイント
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