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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137286
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】車両用サイドシル補強構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/20 20060101AFI20240927BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20240927BHJP
【FI】
B62D25/20 F
B60K1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048751
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】伊原 涼平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA04
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB04
3D203BB12
3D203BB22
3D203CA04
3D203CA52
3D203CA57
3D203CA59
3D203CA60
3D203CA74
3D203CB09
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB03
3D235CC15
3D235DD35
3D235FF09
3D235FF12
3D235HH26
3D235HH55
(57)【要約】
【課題】 衝撃エネルギーの吸収量が向上した車両用サイドシル補強構造を提供する。
【解決手段】 サイドシル20を補強する補強部材40が、車幅方向に連なる複数の閉断面部51~54を有する。複数の閉断面部51~54は、上下方向に対向配置された一対のウェブ41,42と、車幅方向に間隔をあけて配置されて一対のウェブ41,42同士を接続する複数の側壁47a~47eとによって画定される。中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3が、最外閉断面部58Aのウェブ43Aの厚さtw1よりも厚く、且つ最内閉断面部58Bのウェブ43Bの厚さtw4よりも厚い。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の側部において車長方向に延びるサイドシルと、
前記サイドシルを補強する補強部材と、
を備え、
前記補強部材は、前記車長方向に垂直な断面において、車幅方向に連なる複数の閉断面部を有し、
前記複数の閉断面部が、上下方向に対向配置された一対のウェブと、車幅方向に間隔をあけて配置されて前記一対のウェブ同士を接続する複数の側壁とによって画定され、
前記複数の閉断面部が、前記車幅方向の最も外側に配置された最外閉断面部、前記車幅方向の最も内側に配置された最内閉断面部、及び前記最外閉断面部と前記最内閉断面部との間に位置する1以上の中間閉断面部を含み、
前記中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記最外閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚く、且つ前記最内閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚い、
車両用サイドシル補強構造。
【請求項2】
前記中間閉断面部が複数設けられ、
前記複数の中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記車幅方向の外側から内側に向かって順次厚くなっている、
請求項1に記載の車両用サイドシル補強構造。
【請求項3】
前記中間閉断面部が複数設けられ、
前記複数の中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記車幅方向の外側から内側に向かって順次薄くなっている、
請求項1に記載の車両用サイドシル補強構造。
【請求項4】
前記最内閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記最外閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚い、
請求項1に記載の車両用サイドシル補強構造。
【請求項5】
前記補強部材は、前記サイドシルの内部に配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用サイドシル補強構造。
【請求項6】
前記補強部材は、前記サイドシルに隣接して配置される、
請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用サイドシル補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用サイドシル補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両における乗員の安全性向上が求められており、係る目的のために車体の強度等を向上させることで、衝突安全性能の向上が図られてきた。特に側面衝突(以降、側突ともいう。)は、車室に対して強い衝撃が加わりやすく、側突に対しては高い衝撃吸収性能が必要である。つまり、車体がスピンするなどして車体側部にポール等の物体が衝突した際に、衝撃エネルギーを吸収して車室を保護する必要がある。他方、地球温暖化問題等の深刻化を背景に、自動車の燃費改善の動きが加速している。燃費改善には車体の軽量化が有効であることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、側突に対する安全性能の向上と軽量化との両立を図る車体下部構造が開示されている。当該車体下部構造では、ロッカー又はサイドシルと称される車体側部に配置された骨格部材の下に補強部材を配置し、補強部材によって側突の際の衝撃エネルギーを吸収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-90020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の側突においては、補強部材の車幅方向の変形量(変位)の増加に連れて衝撃荷重も増加する傾向にある。上記の補強部材においては、衝撃エネルギーの吸収量について改善の余地がある。
【0006】
本発明は、車両用サイドシル補強構造において、衝撃エネルギーの吸収量を向上し、かつ車体を軽量化することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、車両の側部において車長方向に延びるサイドシルと、前記サイドシルを補強する補強部材と、を備え、前記補強部材は、前記車長方向に垂直な断面において、車幅方向に連なる複数の閉断面部を有し、前記複数の閉断面部が、上下方向に対向配置された一対のウェブと、車幅方向に間隔をあけて配置されて前記一対のウェブ同士を接続する複数の側壁とによって画定され、前記複数の閉断面部が、前記車幅方向の最も外側に配置された最外閉断面部、前記車幅方向の最も内側に配置された最内閉断面部、及び前記最外閉断面部と前記最内閉断面部との間に位置する1以上の中間閉断面部を含み、前記中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記最外閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚く、且つ前記最内閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚い、車両用サイドシル補強構造を提供する。
【0008】
上記構成によれば、側突が生じて補強部材の車幅方向の変形が大きくなると、変形領域が車長方向に広がっていくため、補強部材が破壊されるために必要な荷重も大きくなっていく。最外閉断面部が十分に変形されると、中間閉断面部の変形が開始される。この中間閉断面部のウェブが相対的に厚い。変形領域が広がっていることも相まって、中間閉断面部が破壊されるために必要な荷重が一層大きくなる。厚さの増加に対し、荷重は効率的に増加する。その結果として、補強部材の全体を変位させるために必要な荷重量、すなわち、補強部材の衝撃エネルギー吸収量が高くなる。最外閉断面部のウェブ及び最内閉断面部のウェブは、相対的に薄い。このため、補強部材の重量増加を抑えることができ、更には、肉厚が均一な補強部材と対比して、エネルギー吸収性能を維持又は向上させながら軽量化を図ることも可能となる。
【0009】
前記中間閉断面部が複数設けられ、前記複数の中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記車幅方向の外側から内側に向かって順次厚くなっていてもよい。
【0010】
上記構成によれば、車幅方向の内側ほど、肉厚も大きくなっていくと、変形領域が広がっていくことも加味されて、補強部材の車幅方向内側の部分で衝撃エネルギー吸収量を効率的に増加させることができる。
【0011】
前記中間閉断面部が複数設けられ、前記複数の中間閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記車幅方向の外側から内側に向かって順次薄くなっていてもよい。
【0012】
上記構成によれば、軽量化を達成しやすい。なお、上記のとおり、補強部材の車幅方向の変形が大きくなると車長方向への変形領域の広がりに基づいて補強部材が破壊されるために必要な荷重は大きくなるので、順次肉厚が薄くなっても、補強部材の車幅方向内側の部分で吸収可能なエネルギー量を確保できる。
【0013】
前記最内閉断面部の前記ウェブの厚さが、前記最外閉断面部の前記ウェブの厚さよりも厚くてもよい。
【0014】
上記構成によれば、補強部材の車幅方向の内側端部の変形を抑制できる。補強部材の更に車幅方向内側に配置された構成要素(一例として、バッテリ)を保護できる。
【0015】
前記補強部材は、前記サイドシルの内部に配置されてもよい。
【0016】
上記構成によれば、補強部材の内部のスペースを有効活用でき、車両用サイドシル補強構造を小型化できる。
【0017】
前記補強部材は、前記サイドシルに隣接して配置されてもよい。
【0018】
上記構成によれば、サイドシルを簡易に補強できる。なお、「サイドシルに隣接」とは、サイドシルの車長方向に垂直な断面において上下左右のいずれの位置であるかを問わず、サイドシルに近接して配置されていることをいう。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両用サイドシル補強構造において、衝撃エネルギーの吸収量を向上でき、かつ車体を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】車両の側面図。
図2】第1実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
図3】第1実施形態における補強部材の断面図。
図4】変位に対する荷重を示すグラフ。
図5】変位に対するエネルギー吸収効率を示すグラフ。
図6】第1変形例に係る補強部材の断面図。
図7】第2変形例に係る補強部材の断面図。
図8】第3変形例に係る補強部材の断面図。
図9】第2実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
図10】第3実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
図11】第4実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
図12】第5実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
図13】第5実施形態における補強部材の断面図。
図14】第6実施形態に係る車両用サイドシル補強構造の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。同一の又は対応する要素には全図を通じて同一の符号を付して詳細な説明の重複を省略する。各図において、車両1の前後方向(車長方向)をX方向、車幅方向をY方向、上下方向をZ方向で示す。
【0022】
(第1実施形態)
図1を参照して、車両1は、走行用のモータ(図示せず)の電源装置として、バッテリユニット10を搭載している。バッテリユニット10は、車体中央部に車室Rの床下に、概ね全面にわたって配置されている。
【0023】
車両1は、例えば、電気自動車又はプラグインハイブリッド車であってもよい。車両1の種類は、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、又はその他のモビリティであってもよい。以下では、車両1として、図1に示すように乗用車タイプの電気自動車の場合を例に挙げて、本実施形態に係る車両用サイドシル補強構造について説明する。
【0024】
図2を参照して、バッテリユニット10は、バッテリ11と、バッテリ11を収容するバッテリケース12とを含む。バッテリケース12は、上ケース13と下ケース14とを有する。上ケース13は、上方に向かって凹形状の収容部13aと、平面視において収容部13aの周囲に設けられたフランジ部13bとを有する。下ケース14は、下方に向かって凹形状の収容部14aと、平面視で収容部14aの周囲に設けられたフランジ部14bとを有する。フランジ部13b,14bが貼り合わされることにより、上ケース13と下ケース14とが接合されている。バッテリ11は、上ケース13の収容部13aと下ケース14の収容部14aとによって画定される収容空間S1に収容されている。
【0025】
バッテリユニット10の車幅方向における外側(図2において左側)には、車両1の側部において車長方向に延びるサイドシル20が配置されている。サイドシル20は、車両1の下部の外側面を構成する強度部材である。
【0026】
サイドシル20は、中空状である。本実施形態では、サイドシル20は、車幅方向の外側に配置されるサイドシルアウタ21と、車幅方向内側に配置されるサイドシルインナ22とで構成される。サイドシルアウタ21及びサイドシルインナ22はともに、板金をハット形に曲げ成形することによって構成されており、これらが内部空間S2を形成するようにして貼り合わされている。サイドシル20は鋼鉄製であってもよい。
【0027】
バッテリユニット10の上方には、フロアパネル30が配置されている。フロアパネル30は、車室Rの下面を構成する板材である。フロアパネル30の上方には、車幅方向に延びるクロスメンバ31が配置されている。詳細を図示しないが、クロスメンバ31は、車長方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0028】
サイドシル20の下方には、サイドシル20を補強する補強部材40が配置されている。補強部材40は、サイドシル20に隣接して配置される。補強部材40は、サイドシル20に沿って車長方向に延び、サイドシル20とバッテリユニット10とを接続している。補強部材40は、例えばアルミニウム合金製の押出材によって構成されている。
【0029】
図3を参照して、補強部材40は、上下方向に対向配置された一対のウェブ41,42と、車幅方向に間隔をあけて配置されて一対のウェブ41,42同士を接続する複数の側壁47a~47eとを有する。
【0030】
側壁47a~47eには、一対のウェブ41,42の車幅方向の外側端部同士を上下方向に接続する最外側壁48Aと、一対のウェブ41,42の車幅方向の内側端部同士を上下方向に接続する最内側壁48Bとが含まれる。ウェブ41,42の車幅方向の寸法は、ウェブ41,42同士の間隔(側壁47a~47eの高さ)よりも長い。一対のウェブ41,42、最外側壁48A、及び最内側壁48Bは、車幅方向に長寸である長方形状の閉断面を形成する。
【0031】
側壁47a~47eには、車幅方向において最外側壁48Aと最内側壁48Bとの間で、一対のウェブ41,42の内面同士を上下方向に接続する1以上の中間側壁49A,49B,49Cが含まれる。これにより、上記の横長長方形状の閉断面が、1以上の中間側壁49A,49B,49Cによって車幅方向に細分される。換言すれば、補強部材40が、車長方向に垂直な断面において、車幅方向に連なった複数の閉断面部51~54を有する。
【0032】
各閉断面部51~54は、車幅方向に隣接する2つの側壁と、一対のウェブ41,42のうち当該2つの側壁を繋ぐ部分とによって画定される。各閉断面部51~54は、正方形状又は長方形状であり、その4辺を成す壁によって囲まれた中空を有する。隣り合う2つの閉断面部の中空は、1つの中間側壁によって仕切られている。すなわち、隣り合う2つの閉断面部が、1つの中間側壁を共有している。
【0033】
複数の閉断面部51~54は、車幅方向の最も外側に配置される最外閉断面部58Aと、車幅方向の最も内側に配置される最内閉断面部58Bと、車幅方向において最外閉断面部58Aと最内閉断面部58Bとの間に配置された1以上の中間閉断面部59(59A,59B)とに分類されることができる。
【0034】
本実施形態では、単なる一例として、中間側壁49A,49B,49Cの個数が3つである。以下では、合計5つの側壁47a~47eの各々に、車幅方向の外側から内側に向かって順に序数を付けて説明することもある。第1側壁47aが最外側壁48Aに相当し、第5側壁47eが最内側壁48Bに相当し、第2~第4側壁47b,47c,47dが中間側壁49A,49B,49Cに相当する。以下では、複数の中間側壁49A,49B,49Cの各々に、車幅方向の外側から内側に向かって順に序数を付けて説明することもある。第2側壁47bが第1中間側壁49Aに相当し、第3側壁47cが第2中間側壁49Bに相当し、第4側壁47dが第3中間側壁49Cに相当する。
【0035】
閉断面部51~54の個数は、中間側壁49A,49B,49Cの個数より1多い(最外側壁48A及び最内側壁48Bを含む側壁47a~47eの総数より1少ない)。本実施形態では、単なる一例として、閉断面部51~54の個数が4つである。以下では、合計4つの閉断面部51~54の各々に、車幅方向の外側から内側に向かって順に序数を付けて説明することもある。第1閉断面部51が最外閉断面部58Aに相当し、第4閉断面部54が最内閉断面部58Bに相当し、第2及び第3閉断面部52,53が中間閉断面部59に相当する。以下では、複数の中間閉断面部59の各々に、車幅方向の外側から内側に向かって順に序数を付けて説明することもある。第2閉断面部52が第1中間閉断面部59Aに相当し、第3閉断面部53が第2中間閉断面部59Bに相当する。
【0036】
上ウェブ41は、第1閉断面部51(最外閉断面部58A)を画定する第1上ウェブ41a、第2閉断面部52(第1中間閉断面部59A)を画定する第2上ウェブ41b、第3閉断面部53(第2中間閉断面部59B)を画定する第3上ウェブ41c、及び第4閉断面部54(最内閉断面部58B)を画定する第4上ウェブ41dを含む。第1~第4上ウェブ41a~41dが車幅方向に順次に連なって、上ウェブ41が構成されている。
【0037】
下ウェブ42は、第1閉断面部51(最外閉断面部58A)を画定する第1下ウェブ42a、第2閉断面部52(第1中間閉断面部59A)を画定する第2下ウェブ42b、第3閉断面部53(第2中間閉断面部59B)を画定する第3下ウェブ42c、及び第4閉断面部54(最内閉断面部58B)を画定する第4下ウェブ42dを含む。第1~第4下ウェブ42a~42dが車幅方向に順次に連なって、下ウェブ42が構成されている。
【0038】
第1側壁47a(最外側壁48A)は、第1閉断面部51(最外閉断面部58A)を画定する。第2側壁47b(第1中間側壁49A)は、第1閉断面部51(最外閉断面部58A)を画定すると共にこれと車幅方向に隣り合う第2閉断面部52(第1中間閉断面部59A)を画定する。第3側壁47c(第2中間側壁49B)は、第2閉断面部52(第1中間閉断面部59A)を画定すると共にこれと車幅方向に隣り合う第3閉断面部53(第2中間閉断面部59B)を画定する。第4側壁47d(第3中間側壁49C)は、第3閉断面部53(第2中間閉断面部59B)を画定すると共にこれと車幅方向に隣り合う第4閉断面部54(最内閉断面部58B)を画定する。第5側壁47e(最内側壁48B)は、第4閉断面部54(最内閉断面部58B)を画定する。
【0039】
本実施形態においては、各閉断面部51~54において、上ウェブの厚さと下ウェブの厚さ(上下方向の寸法)とが互いに等しい。そのため、以下の説明において単に「ウェブの厚さ」という場合、上ウェブの厚さと、下ウェブの厚さとの両方に該当する。各閉断面部51~54において、ウェブの厚さは車幅方向において一様である。各側壁47a~47eの厚さ(車幅方向の寸法)は上下方向において一様である。補強部材40は、車長方向に垂直な断面において、上下方向の中央を車幅方向に延びる対称軸Cを基準として線対称である。
【0040】
以下、第1上ウェブ41a及び第1下ウェブ42aを、最外閉断面部58Aの「ウェブ43A」とまとめて称する場合がある。第4上ウェブ41d及び第4下ウェブ42dを、最内閉断面部58Bの「ウェブ43B」とまとめて称する場合がある。第2上ウェブ41b及び第2下ウェブ42bを、第1中間閉断面部59Aの「ウェブ44A」とまとめて称する場合がある。第3上ウェブ41c及び第3下ウェブ42cを、第2中間閉断面部59Bの「ウェブ44B」とまとめて称する場合がある。
【0041】
図2に戻り、第4閉断面部54(最内閉断面部58B)は、バッテリユニット10とボルト60とによって接合されている。ボルト60は、上下方向に延び、第4上ウェブ41dと、第4下ウェブ42dと、上ケース13のフランジ部13bと、下ケース14のフランジ部14bと、フロアパネル30とを貫通し、これらを接合している。ボルト60は、バッテリ交換の効率の観点から、下から上に向けて挿入されて締結されることが好ましい。また、高い接合強度を確保するために、ボルト60の周囲を被覆する円筒状のカラー61を使用し、ボルト60の締結部の変形を抑制することが好ましい。
【0042】
第1閉断面部51(最外閉断面部58A)は、サイドシル20とボルト70とによって接合されている。ボルト70は、上下方向に延び、第1上ウェブ41a及び第1下ウェブ42aと、サイドシルアウタ21とを貫通し、内部空間S2内で終端し、これらを接合している。前述と同様に、ボルト70は、下から上に向けて挿入されて締結されることが好ましく、ボルト70の周囲を被覆する円筒状のカラー71を使用することが好ましい。
【0043】
図3に戻り、中間閉断面部のウェブの厚さtw2,tw3は、最外閉断面部のウェブの厚さtw1よりも厚く、且つ最内閉断面部のウェブの厚さtw4よりも厚い。
【0044】
本実施形態では、複数の中間閉断面部のウェブの厚さtw2,tw3は、互いに等しい。また、最外閉断面部のウェブの厚さtw1と、最内閉断面部のウェブの厚さtw4とが、互いに等しい。すなわち、ウェブの厚さtw1~tw4は、次式:tw1=tw4<tw2=tw3を満たす。
【0045】
中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3は、最外閉断面部58Aのウェブ43Aの厚さtw1の1.1倍以上、好ましくは1.3倍以上、かつ2.5倍以下、好ましくは1.8倍以下で、最も好ましくは1.5倍である。中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3は、最内閉断面部58Bのウェブ43Bの厚さtw4の1.1倍以上、好ましくは1.3倍以上、かつ2.0倍以下、好ましくは1.8倍以下で、最も好ましくは1.5倍である。
【0046】
最外閉断面部58Aのウェブ43Aの厚さtw1は、2~5mm、最内閉断面部58Bのウェブ43Bの厚さtw4も、これと同様である。中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3は、2.2~6mmである。
【0047】
また、中間側壁49A,49B,49Cの厚さts2~ts4は、最外側壁48Aの厚さts1よりも厚く、且つ最内側壁48Bの厚さts5よりも厚い。
【0048】
本実施形態では、中間側壁49A,49B,49Cの厚さts2~ts4は、互いに等しい。また、最外側壁48Aの厚さts1と、最内側壁48Bの厚さts5とが、互いに等しい。すなわち、側壁47a~47eの厚さts1~ts5は、次式:ts1=ts5<ts2=ts3=ts4を満たす。なお、中間側壁49A,49B,49Cの厚さts2~ts4は、中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3と概略等しくてもよい。最外側壁48A及び最内側壁48Bの厚さts1,ts5は、最外閉断面部58A及び最内閉断面部58Bのウェブ43A,43Bの厚さtw1,tw4と概略等しくてもよい。
【0049】
図4及び図5は、本実施形態に係る補強部材40の性能を評価するグラフである。図4及び図5において、実線が本実施形態を表し、破線が比較例を表す。比較例では、ウェブ及び側壁の肉厚が均一である。本実施形態と比較例との間で、補強部材の車長方向に垂直な断面の断面積は等しく、また、素材も同じとする。すなわち、本実施形態と比較例との間で、重量は同じとする。
【0050】
図4を参照して、エネルギー吸収量は、変位S(mm)と荷重P(kN)で示されるグラフの積分値(J)として表される。変位Sとは、補強部材40の車幅方向の変形量を示す。荷重Pとは、側突の際に補強部材40が受ける衝撃荷重を示す。本実施形態においても比較例においても、4つのピークが認められる。各ピークで1つの閉断面部が破壊又は圧潰されている。
【0051】
比較例では、変位が大きくなるにつれて(すなわち、複数の閉断面部が、車幅方向の外側から内側へと順次圧潰されていくにつれて)、荷重のピーク値が緩やかに線形的に増加している。これは、側突による変形領域は、車幅方向内側ほど車長方向に広がるためである。車長方向に垂直な断面において、肉厚が均一であって複数の閉断面間で強度が同じであったとしても、車幅方向内側であればあるほど閉断面を圧潰させるために必要な荷重は大きくなる。
【0052】
これに対し、本実施形態では、最外閉断面部58Aのウェブ43A及び最外側壁48A(第1側壁47a)が薄い。なお、最外閉断面部58Aのウェブ43Aの厚さtw1は、比較例の肉厚よりも薄い。したがって、最初の荷重のピーク値、すなわち最外閉断面部58Aを圧潰させる荷重が、比較例よりも低くなっている。
【0053】
しかし、本実施形態では、中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さtw2,tw3が、最外閉断面部58Aのウェブ43Aの厚さtw1よりも厚い。なお、中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さは、比較例の肉厚よりも厚い。したがって、2つ目のピーク値、すなわち第1中間閉断面部59Aを圧潰させる荷重は、比較例よりも高くなっている。3つ目のピーク値も同様であり、比較例とのピーク値との差は、2つ目よりも3つ目の方がより大きい。
【0054】
上記のとおり、変位が大きくなると変形領域が広がるため、車幅方向の内側ほど閉断面部51~54の圧潰に必要な荷重は大きくなる。ここで、閉断面部51~54の肉厚が増えると、肉厚が均一である場合と対比して、広い変形領域にわたって閉断面部51~54を圧潰させるために必要な荷重が飛躍的に高くなる。本実施形態は、この点に着眼されている。
【0055】
最外閉断面部58Aを薄くしても、中間閉断面部59A,59Bにおいて厚さが確保されていれば、2つ目以降のピーク値を効率的に高くすることができる。そのため、肉厚が均一である場合と対比して、重量(素材が同じ場合においては、車長方向に垂直な断面積)を小さくしても、積分値を高くすることができる。すなわち、補強部材40を軽量化しながらサイドシル構造のエネルギー吸収性能を向上させることができる。
【0056】
図5は、このことを示している。本実施形態は、変形初期(変位Sが小さいとき)において、最外閉断面部58Aのウェブ43Aが薄いことから、荷重を稼ぐことができず、結果的に単位重量当たりのエネルギー吸収量が比較例よりも低くなっている。しかし、変位が大きくなり変形が中間閉断面部59A,59Bに及びだすと、厚さの増加による荷重の増加の効果が現れる。厚さを増加しているにも関わらず、単位重量当たりのエネルギー吸収量は比較例を大きく上回る。
【0057】
最内閉断面部58Bのウェブ43Bは、中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bよりも薄いため、本実施形態では、最後のピーク値(4つ目のピーク値)が、直近のピーク値(3つ目のピーク値)よりも小さくなっている。ただし、ウェブ43Bが薄くても、変形領域の広がりによって最内閉断面部58Bの圧潰に必要な荷重は大きくなるため、最後のピーク値(4つ目のピーク値)は、最初のピーク値よりも高い。つまり、薄肉化しても荷重を稼ぐことができ、軽量化とエネルギー吸収性能の向上との両立をより一層達成できる。また、最内閉断面部58Bを薄肉化することで、過度に荷重が高くなるのを防ぐことができる。このため、最内閉断面部58Bの更に車幅方向内側にある構成、すなわちバッテリユニット10に、最内閉断面部58Bの圧壊後に高い荷重が入力されることを抑止でき、バッテリユニット10を保護できる。
【0058】
(第1実施形態の変形例)
図6は、第1変形例に係る補強部材40の断面を示す。第1変形例においては、複数の中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さが、車幅方向の外側から内側に向かって順次厚くなっている。本例では、中間閉断面部59A,59Bの個数が2つである。第2中間閉断面部59Bのウェブ44Bの厚さtw3が、第1中間閉断面部59Aのウェブ44Aの厚さtw2よりも厚い。すなわち、ウェブの厚さtw1~tw4は、次式:tw1=tw4<tw2<tw3を満たす。
【0059】
車幅方向の内側ほど、肉厚が大きくなっているため、変形に必要な荷重が大きくなることも加味されて、車幅方向の内側でエネルギー吸収量を効果的に増加させることができる。
【0060】
図7は、第2変形例に係る補強部材40の断面を示す。第2変形例においては、複数の中間閉断面部のウェブの厚さが、車幅方向の外側から内側に向かって順次薄くなっている。本例では、中間閉断面部の個数が2つである。第2中間閉断面部(第3閉断面部)のウェブの厚さtw3が、第1中間閉断面部(第1閉断面部)のウェブの厚さtw2よりも薄い。すなわち、ウェブの厚さtw1~tw4は、次式:tw1=tw4<tw3<tw2を満たす。
【0061】
補強部材40の変位が大きくなると、変形に必要な荷重は大きくなるので、順次肉厚を薄くしても、車幅方向の内側で吸収可能なエネルギー量を確保できる。そのため、本例によれば、補強部材40の軽量化を達成に加え、比較的変形が少ない段階でエネルギー吸収したい場合などに有効である。
【0062】
図8は、第3変形例に係る補強部材40の断面を示す。第3変形例においては、複数の中間閉断面部59A,59Bのウェブ44A,44Bの厚さが、第1実施形態と同様、互いに等しい。最内閉断面部58Bのウェブ43Bの厚さが、中間閉断面部59A,59のウェブ44A,44Bの厚さよりも薄い一方、最外閉断面部58Aのウェブの厚さよりも厚い。すなわち、ウェブの厚さtw1~tw4は、次式:tw1<tw4<tw2=tw3を満たす。
【0063】
補強部材40の車幅方向の内端部で吸収可能なエネルギー量が増加し、この内端部が変形しにくくなる。そのため、補強部材40の車幅方向の内側に配置されている構成要素、例えばバッテリユニット10(図2参照)を保護できる。
変形を抑制できる。
【0064】
(第2実施形態)
図9を参照して、第2実施形態に係るサイドシル補強構造においては、補強部材40が、車長方向から見て逆L字状であり、最内閉断面部58Bの下方に隣接して配置された突出閉断面部58Cを有する。突出閉断面部58Cは、車長方向に垂直な断面において、矩形状である。突出閉断面部58Cは、バッテリケース12の下ケース14よりも下方に位置する。他方、下ケース14の下面に沿って、車幅方向に延びるクロスメンバ32が設けられている。突出閉断面部58Cには、その下壁から車幅方向内側に延長された支持壁40aが設けられている。支持壁40aはクロスメンバ32を下から支持する。
【0065】
この構成によれば、側突が生じると、荷重が突出閉断面部58Cからクロスメンバ32に伝達される。そのため、補強部材40が変形しにくくなり、補強部材40の車幅方向の内側に配置されている構成要素、すなわちバッテリユニット10を保護できる。
【0066】
(第3実施形態)
図10を参照して、第3実施形態に係るサイドシル補強構造においては、バッテリケース12の下方に配置されるクロスメンバ32が、その車幅方向外端部に取付部32aを有する。取付部32aは、板厚方向が上下方向に向けられた平板状であり、最内閉断面部58Bを画定する第4下ウェブ42dの下面に面接触されている。取付部32aは、ボルト60で補強部材40に固定される。
【0067】
この構成においても、側突が生じると、荷重をクロスメンバ32に流すことができる。そのため、バッテリユニット10を保護できる。
【0068】
(第4実施形態)
図11を参照して、第4実施形態に係るサイドシル補強構造においては、第2実施形態と同様にして、補強部材40が、突出閉断面部58Cを有する。本実施形態では、突出閉断面部58Cが、車長方向に垂直な断面において、台形状である。このように、閉断面部の形状は矩形に限定されない。下ケース14の収容部14aが、上記した各実施形態と比べて深くなっており、下ケース14の下面が突出閉断面部58Cの下面と上下方向においてほぼ同じ高さにある。
【0069】
この構成においては、側突が生じると、荷重を最内閉断面部58B及び突出閉断面部58Cからバッテリケース12の下ケース14に流すことができる。下ケース14が大型化しているので、荷重を下ケース14で受け止めることができ、補強部材40が変形しにくくなる。
【0070】
(第5実施形態)
図12を参照して、第5実施形態に係るサイドシル補強構造においては、サイドシルインナ22の下部が、車長方向から見てL字状に切り欠かれている。補強部材40の最外閉断面部58Aは、この切り欠きに配置されている。ボルト70は、第1下ウェブ42a、第1上ウェブ41aを貫通してサイドシルインナ22に螺合される。また、ボルト60は、フロアパネル30に達しておらず、フランジ部13b,14b上のナット62に螺合されている。このように、補強部材40は、必ずしてもサイドシル20の下面側に接続されていなくてもよく、また、必ずしもフロアパネル30のような車体構造に接続されていなくてもよい。
図12及び図13を参照して、閉断面部の個数は、補強部材40の配置スペースによって適宜変更可能であり、3つでもよい。この場合、3つの閉断面部51~53のうち中央の1つの閉断面部52が、中間閉断面部59として機能する。中間閉断面部59(第2閉断面部52)のウェブ44Aの厚さtw2は、最外閉断面部58A(第1閉断面部51)のウェブ43Aの厚さtw1よりも厚く、最内閉断面部58B(第3閉断面部53)のウェブ43Bの厚さtw3よりも厚い。これにより、上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0071】
(第6実施形態)
図14を参照して、第6実施形態に係るサイドシル補強構造においては、補強部材40が、サイドシル20の内部に配置されている。最外側壁48Aはサイドシルアウタ21の内面に近接し、最内側壁48Bはサイドシルインナ22の内面に近接している。
【0072】
この構成によれば、補強部材40をサイドシル20の内部空間S2に配置しているので、内部空間S2が有効活用され、車両用サイドシル構造を小型化できる。
【0073】
(変形例)
これまで実施形態について説明したが、上記構成は、本発明の範囲内で適宜変更、追加、又は削除可能である。
【0074】
例えば、補強部材40に含まれる閉断面部の数は、特に限定されず、3以上であればよい。
【0075】
補強部材40の各閉断面部の形状は、上記各実施形態のような矩形に限定されず、対向する一対のウェブ及びそれらを繋ぐ側壁を有する任意の多角形(例えば、台形)であってもよい。
【0076】
上記各実施形態では、車両1として電気自動車を例示しているが、車両1はガソリン車であってもよい。電気自動車及びガソリン車の両方において、車室保護の観点から上記実施形態の車両用サイドシル補強構造を好適に適用し得る。
【符号の説明】
【0077】
1 車両
10 バッテリユニット
11 バッテリ
12 バッテリケース
20 サイドシル
21 サイドシルアウタ
22 サイドシルインナ
30 フロアパネル
31,32 クロスメンバ
32a 取付部
40 補強部材
40a 支持壁
41 上ウェブ
42 下ウェブ
43A 最外閉断面部を画定するウェブ
43B 最内閉断面部を画定するウェブ
44A,44B 中間閉断面部を画定するウェブ
47a~47e 側壁
48A 最外側壁
48B 最内側壁
49A,49B,49C 中間側壁
51~54 閉断面部
58A 最外閉断面部
58B 最内閉断面部
58C 突出閉断面部
59 中間閉断面部
59A 第1中間閉断面部
59B 第2中間閉断面部
60,70 ボルト
61 カラー
62 ナット
tw1~tw4 ウェブの厚さ
ts1~ts5 側壁の厚さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14