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特開2024-137295スリガラス調樹脂組成物および成形品
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  • 特開-スリガラス調樹脂組成物および成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137295
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】スリガラス調樹脂組成物および成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240927BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 33/12 20060101ALI20240927BHJP
   C08K 7/16 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/34
C08K5/00
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
C08L67/03
C08L25/04
C08L33/12
C08K7/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048763
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】591229440
【氏名又は名称】住化カラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100156085
【弁理士】
【氏名又は名称】新免 勝利
(72)【発明者】
【氏名】吉村 大祐
(72)【発明者】
【氏名】一条 昭良
(72)【発明者】
【氏名】谷口 日登美
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA22
4F071AA33
4F071AA46
4F071AD06
4F071AF30
4F071AH19
4F071BB06
4F071BC01
4J002AA002
4J002AA011
4J002AB031
4J002BB031
4J002BB121
4J002BB201
4J002BC031
4J002BC032
4J002BC071
4J002BC072
4J002BD121
4J002BF031
4J002BG061
4J002BG062
4J002BK001
4J002BN151
4J002BN161
4J002CB001
4J002CF061
4J002CF071
4J002CG001
4J002CG011
4J002CH071
4J002CH091
4J002CL001
4J002CN011
4J002CN031
4J002CP032
4J002DJ056
4J002EA047
4J002EA067
4J002EL097
4J002ER007
4J002ET007
4J002EU027
4J002EU067
4J002EU207
4J002EV007
4J002EV257
4J002EV317
4J002EY017
4J002FA082
4J002FD097
4J002FD202
4J002FD206
4J002GB00
4J002GB01
4J002GC00
4J002GN00
4J002GP00
4J002GQ00
(57)【要約】
【課題】透明性が高く、且つ蛍光性を有するスリガラス調で意匠性が高い成形品を製造することができる。
【解決手段】(A)熱可塑性樹脂、(B)球状架橋重合体粒子およびマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子、ならびに(C)蛍光性を有する色素、を含む熱可塑性樹脂組成物。熱可塑性樹脂(A)の量が100重量部であり、粒子(B)の量が0.2~5重量部であり、色素(C)の量が0.0001~1重量部であることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)熱可塑性樹脂、
(B)球状架橋重合体粒子およびマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子、ならびに
(C)蛍光性を有する色素
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
熱可塑性樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂であり、
粒子(B)において、球状架橋重合体粒子の重合体が、架橋ポリスチレン、架橋メチルメタクリレート-スチレン共重合体、架橋ポリメチルメタクリレートおよび架橋シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種であり、マイカ粒子が合成マイカであり、
色素(C)が、メロシアニン、ペリレン、アクリジン、ルシフェリン、ピラニン、スチルベン、ローダミン、クマリン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、ピロメテン、フルオレセイン、ウンベリフェロン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、およびキナクリドンから選択された少なくとも一種である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
架橋重合体粒子の平均粒子径が1μm以上50μm以下であり、架橋重合体粒子の平均球形度が0.8以上であり、マイカ粒子の平均粒子径が1μm以上100μm以下である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
熱可塑性樹脂(A)の量が100重量部であり、粒子(B)の量が0.2~10重量部であり、色素(C)の量が0.0001~1重量部である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物から成形されている熱可塑性樹脂成形品。
【請求項6】
(A)熱可塑性樹脂、
(B)球状架橋重合体粒子およびマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子、ならびに
(C)蛍光性を有する色素
を含む熱可塑性樹脂用マスターバッチであって、
熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粒子(B)の量が6~100重量部である熱可塑性樹脂用マスターバッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観が優れたスリガラス調の樹脂組成物および成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製容器をはじめとした成形品は、軽量性、価格、着色性、生産性の観点からガラス代替として、広く普及している。その中でも、熱可塑性樹脂であるアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、およびポリカーボネート樹脂等は、透明性が高く、表面光沢に優れ、かつ、射出成形、押出成形、ブロー成形など成形性にも優れているといった特徴を持つ。そのため、化粧品をはじめ、食品、医療、ヘルスケア、照明、看板等、多くの分野で使用されており、スリガラスのような高級感を付与した成形品がある。
【0003】
プラスチック製の成形品でスリガラス外観を得る方法として、特許文献1には、耐熱性が高く、高い屈折率を用いた球形ビーズを用いることで、プラスチックの光沢を無くし、マット感を付与する技術が開示されている。特許文献2には、ポリエステル樹脂に対して、ポリメチルメタクリレート球状微粉体および炭酸カルシウム微粉体を配合してなるポリエステル系樹脂組成物において、得られる成形品が光拡散を生じて、スリガラス感覚となる成形品が得られることが開示されている。
【0004】
また、蛍光染料や顔料で着色されたプラスチック成形品は、その意匠性や色彩のアピール性が高い事から、パチンコ部品や自動車等のランプ類のケースやカバー、家電や玩具等の幅広い分野に使用されている。
【0005】
特許文献3には、熱可塑性樹脂および蛍光染料を溶融混練する成形品の製造方法が記載されている。特許文献4には、熱可塑性樹脂および顔料を溶融混練する成形品の製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平01-297465号公報
【特許文献2】特開平11-001606号公報
【特許文献3】特開2002-30220号公報
【特許文献4】特開2015―193828公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
スリガラス外観が付与された成形品、および蛍光性を有する成形品それぞれの成形品はあるが、両方を兼ね備えた成形品はなく、意匠性の面から求められていた。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、プラスチックの透明性を保持した状態で、蛍光性を有するスリガラス調を付与することができる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、鋭意検討して、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、
熱可塑性樹脂(A)、ビーズ状の架橋重合体粒子またはマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子(B)を含む熱可塑性樹脂組成物であって、
蛍光性を有する染料または顔料から選択された少なくとも一種の色素(C)をさらに含む熱可塑性樹脂組成物に関する。
【0011】
本発明は、以下の発明を含む。
[1]
(A)熱可塑性樹脂、
(B)球状架橋重合体粒子およびマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子、ならびに
(C)蛍光性を有する色素
を含む熱可塑性樹脂組成物。
[2]
熱可塑性樹脂(A)が、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂であり、
粒子(B)において、球状架橋重合体粒子の重合体が、架橋ポリスチレン、架橋メチルメタクリレート-スチレン共重合体、架橋ポリメチルメタクリレートおよび架橋シリコーン樹脂から選ばれる少なくとも一種であり、マイカ粒子が合成マイカであり、
色素(C)がメロシアニン、ペリレン、アクリジン、ルシフェリン、ピラニン、スチルベン、ローダミン、クマリン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、ピロメテン、フルオレセイン、ウンベリフェロン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、およびキナクリドンから選択された少なくとも一種である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[3]
架橋重合体粒子の平均粒子径が1μm以上50μm以下であり、架橋重合体粒子の平均球形度が0.8以上であり、マイカ粒子の平均粒子径が1μm以上100μm以下である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[4]
熱可塑性樹脂(A)の量が100重量部であり、粒子(B)の量が0.2~10重量部であり、色素(C)の量が0.0001~1重量部である[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[5]
[1]に記載の熱可塑性樹脂組成物から成形されている熱可塑性樹脂成形品。
[6]
(A)熱可塑性樹脂、
(B)球状架橋重合体粒子およびマイカ粒子から選択された少なくとも一種の粒子、ならびに
(C)蛍光性を有する色素
を含む熱可塑性樹脂用マスターバッチであって、
熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粒子(B)の量が6~100重量部である熱可塑性樹脂用マスターバッチ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、透明性が高く、且つ蛍光性を有するスリガラス調で意匠性が高い成形品を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1において、測定波長(横軸)と励起放出された発光(縦軸)(強度(任意単位))との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[熱可塑性樹脂(以下、「樹脂」という場合がある。)]
本発明の樹脂としては、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリロニトリル-スチレン樹脂、セルロースアセテート樹脂、エチレン-ビニルアセテート樹脂、アクリル-アクリロニトリル-スチレン樹脂、アクリル-塩素化ポリエチレン樹脂、エチレン-ビニルアルコール樹脂、フッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、脂環構造含有エチレン性不飽和単量体単位を含有する樹脂(例えばシクロオレフィンポリマー樹脂)、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂等が挙げられる。
【0015】
樹脂としては、透明性に優れ、且つ所定の加工温度での成形性に優れた樹脂が好ましい。厚さ3.0mmのときの全光線透過率が85以上の熱可塑性樹脂がより好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂およびポリメチルメタクリレート樹脂から選択された少なくとも一種の樹脂が好ましい。透明性が優れた熱可塑性樹脂を用いることにより、スリガラス調がより鮮明となる傾向がある。これらの樹脂は透明性や機械物性を阻害しなければ、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
成形品の厚さ(すなわち、樹脂の厚さ)は、0.1mm~30mmまたは0.3mm~10mmであってよい。成形品の厚さは、0.2mm以上、0.4mm以上、0.6mm以上、0.8mm以上、1mm以上、1.2mm以上、1.4mm以上、1.6mm以上、1.8mm以上、2mm以上、2.2mm以上、2.4mm以上、2.6mm以上、2.8mm以上、または3mm以上であってよい。成形品の厚さは、25mm以下、20mm以下、15mm以下、12mm以下、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、または3.5mm以下であってよい。
【0017】
樹脂は、厚さ2mm~5mm(例えば、2mm、3mm、4mmまたは5mm、特に3.0mm)のときの全光線透過率が55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上または90%以上であることが好ましい。例えば、成形品の厚さ2mm~5mmのときの全光線透過率が60%以上100%以下であってよい。全光線透過率は、56%以上、58%以上、60%以上、62%以上、64%以上、66%以上、68%以上、70%以上、72%以上、74%以上、76%以上、78%以上、80%以上、82%以上、84%以上、86%以上、88%以上、90%以上、92%以上、または94%以上であってよい。全光線透過率は、100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下、90%以下、または88%以下であってよい。
【0018】
全光線透過率は、JIS K 7136:2000に従って測定できる。測定には、例えば、東京電色製ヘーズメーター(モデル TC-H3DPK)を使用できる。
[式] 全光線透過率(Tt)=直線透過率(Tp)+拡散透過率(Td)
【0019】
[ビーズ状の架橋重合体粒子]
ビーズ状の架橋重合体粒子は、球形であって、平均球形度が、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.85以上、更に好ましくは0.9以上である。
球形度は顕微鏡で写真を撮り、その観察される粒子の面積と周囲長から、(球形度)={4π×(面積)÷(周囲長)}で算出される値として算出する。1に近づくほど真球に近い。平均球形度は、任意に選択された100個の凝集体の球形度を平均することが好ましい。
【0020】
ビーズ状の架橋重合体粒子は、特に限定されるものではないが、架橋ポリスチレン樹脂、メチルメタクリレート-スチレン共重合体架橋粒子、架橋ポリメチルメタクリレート樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。
【0021】
ビーズ状の架橋粒子の平均粒子径は、50μm以下が好ましい。平均粒子径が50μm以下であると、光の散乱が十分であり、HAZEが高くなり、良好なスリガラス調が得られる。架橋粒子の平均粒子径は、45μm以下、40μm以下、35μm以下、30μm以下、25μm以下、20μm以下、15μm以下または10μm以下であることが好ましい。架橋粒子の平均粒子径は、1μm以上、3μm以上、5μm以上または10μm以上であってよい。
【0022】
平均粒子径は、光学顕微鏡(200~500倍)によって測定できる。任意の数(例えば、100個または200個)の架橋粒子の粒子径から粒度分布を作成して求められるメジアン径(D50)を平均粒子径にできる。
【0023】
[マイカ粒子]
マイカ粒子としては、セリサイト(絹雲母)、マスコバイト(白雲母)、フロゴパイト(金雲母)、合成マイカ(合成雲母)等が挙げられる。なかでも、合成マイカが好ましい。
マイカ粒子の平均粒子径は、1~100μm、2~80μm、3~70μm、4~60μm、5~55μmまたは7~50μmであってよい。マイカ粒子の平均粒子径は、ビーズ状の架橋粒子の平均粒子径と同様にして測定できる。すなわち、マイカ粒子の平均粒子径は、光学顕微鏡(200~500倍)によって測定できたメジアン径(D50)であってよい。
【0024】
合成マイカは、一般に、無色透明の純粋結晶である。合成マイカは、水酸基(OH)をフッ素原子(F)で置き換えた雲母であってよい。合成マイカにおいて、鉄の含有量は100ppm以下または50ppm以下であってよい。合成マイカにおいて、重金属の量は1ppm以下または0.1ppm以下であってよい。
マイカ粒子(特に、合成マイカ粒子)は薄い板状であり、熱的、化学的に安定で、高いアスペクト比(粒径と厚みの比)(アスペクト比が、例えば、10~100、20~80または30~70)を有する。そのため、マイカ粒子が成形品中で配向することで、低ソリ性、高剛性、低収縮性等の機械物性の向上や、絶縁性、制振性等の付与が可能となる。さらに、基材樹脂との界面反射により、光沢感の付与も可能なため、家電分野、重電機分野、電線分野等、幅広く使用されている。マイカはマイカ原鉱を精製、粉砕、分級することで得られるが、アスペクト比が高い方が、物性面での特異性が発現しやすい。
【0025】
マイカ粒子を用いる場合には、意匠性が良好になるので、押出成形による成形が好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂成形品の厚さ3mmにおいて、HAZEは、40~85、45~80、または50~75であってよい。
HAZEは、JIS K 7136に従って測定でき、例えば、東京電色製ヘーズメーター(モデル TC-H3DPK)によって、測定できる。
[式] HAZE=(拡散透過率(Td)/全光線透過率(Td))*100
【0027】
熱可塑性樹脂組成物において、粒子(ビーズ状の架橋重合体粒子およびマイカ粒子)の量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、0.1~10重量部または0.3~5重量部が好ましい。量が上記の範囲であると、HAZEが高く、良好なスリガラス調が得られる。より好ましくは、0.2~8重量部または0.3~3重量部、例えば1~2.5重量部である。あるいは、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粒子の量は、0.1重量部以上、0.2重量部以上、0.3重量部以上、0.5重量部以上、0.8重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、4重量部以上、5重量部以上、6重量部以上、または7重量部以上であってよく、粒子の量は、10重量部以下、9重量部以下、8重量部以下、7重量部以下、6重量部以下、5重量部以下、4重量部以下、3重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、または0.5重量部以下であってよい。
【0028】
マスターバッチにおいて、粒子(ビーズ状の架橋重合体粒子およびマイカ粒子)の量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、1~100重量部または5~20重量部が好ましい。量が上記の範囲であると、HAZEが高く、良好なスリガラス調が得られる。熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、粒子の量は、1重量部以上、2重量部以上、3重量部以上、5重量部以上、8重量部以上、10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、40重量部以上、50重量部以上、または60重量部以上であってよく、粒子の量は、100重量部以下、90重量部以下、80重量部以下、70重量部以下、60重量部以下、50重量部以下、40重量部以下、30重量部以下、25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、10重量部以下、または5重量部以下であってよい。
【0029】
屈折率は、熱可塑性樹脂と粒子との差が小さい方が透明性を維持させることができるため、スリガラス調を付与しやすく、熱可塑性樹脂と粒子の屈折率差としては、0.005~0.08が好ましく、より好ましくは0.008~0.03である。屈折率差は、0.006以上、0.007以上、0.008以上、0.009以上、0.01以上、0.011以上、0.012以上、0.013以上、0.014以上、0.015以上、0.02以上、0.025以上、0.03以上、0.035以上、0.04以上、0.045以上、または0.05以上であってよく、屈折率差は、0.07以下、0.065以下、0.06以下、0.055以下、0.05以下、0.045以下、0.04以下、0.035以下、0.03以下、0.025以下、0.02以下、0.019以下、0.018以下、0.017以下、0.016以下、0.015以下、0.014以下、0.013以下、または0.012以下であってよい。
【0030】
熱可塑性樹脂の屈折率の測定は多波長アッベ屈折計(ATAGO製DR-M4型)を用いて行った。先ず、射出成形により作製した試験片の表面に微量の接触液(1-ブロモナフタレン)を滴下し、試験片のエッジを光源の方に向けてプリズムの表面に密着させた。その後、全ての色が視野からなくなるまで調節し、明視野と暗視野との間の境界線を接眼レンズの十字線の交点に一致させ、屈折率を測定した。また、光源にはハロゲンランプ波長589nmを用いた。
【0031】
粒子の屈折率測定はベッケ法により行った。まず、スライドガラス上に重合体粒子を載せ、屈折液(CARGILLE社製:カーギル標準屈折液、屈折率nD25が1.480~1.596の屈折液を、屈折率差0.002刻みで複数準備)を滴下する。そして、重合体粒子と屈折液をよく混ぜた後、下から岩崎電気株式会社製高圧ナトリウムランプ「NX35」(中心波長589nm)の光を照射しながら、上部から光学顕微鏡により重合体粒子の輪郭を観察した。そして、輪郭が見えない場合を、屈折液と重合体粒子の屈折率が等しいと判断した。
【0032】
なお、光学顕微鏡による観察は、重合体粒子の輪郭が確認できる倍率での観察であれば特に問題ないが、粒子径5μmの重合体粒子であれば500倍程度の観察倍率が適当である。上記操作により、重合体粒子と屈折液の屈折率が近いほど重合体粒子の輪郭が見えにくくなることから、重合体粒子の輪郭が判りにくい屈折液の屈折率をその重合体粒子の屈折率と等しいと判断した。
【0033】
また、屈折率差が0.002の2種類の屈折液の間で重合体粒子の見え方に違いがない場合は、これら2種類の屈折液の中間の値を当該重合体粒子の屈折率と判断した。例えば、屈折率1.554と1.556の屈折液それぞれで試験をしたときに、両屈折液で重合体粒子の見え方に違いがない場合は、これら屈折液の中間値1.555を重合体粒子の屈折率と判定した。
【0034】
[蛍光性材料]
本明細書において、蛍光性材料は、紫外線、可視光線および赤外線などの光を選択的に吸収し、長波長側へ波長変換して蛍光を放出する材料を意味する。蛍光性材料は、一般的に吸収波長と比較し発光波長がより長波長になることが知られているが、本発明の外観が優れたスリガラス調の樹脂組成物および成形品を得るためには、発光波長が可視光領域(360nm~830nm)にあることが望ましい。
【0035】
本発明は、プラスチックの透明性を保持した状態で、蛍光性を有するスリガラス調を付与することができる熱可塑性樹脂組成物を提供するものであり、より高い意匠性を得るためには、蛍光性材料のうち集光性を有するものを用いることがより好ましい。ここで集光性を有する蛍光材料は、選択的に吸収した光を蛍光色として長波長側へ波長変換する機能を有する材料であって、着色された材料の内部で光を反射しながら成型品のエッジ部分へ誘導することで集光し、成型品のエッジ部分から濃密度化された状態で放出され、強く発光することを特徴とするものである。
【0036】
蛍光性材料としては、メロシアニン、ペリレン、アクリジン、ルシフェリン、ピラニン、スチルベン、ローダミン、クマリン、4-(ジシアノメチレン)-2-メチル-6-(4-ジメチルアミノスチリル)-4H-ピラン(DCM)、ピロメテン、フルオレセイン、ウンベリフェロン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、キナクリドン等が挙げられる。より好ましい集光性を有する蛍光材料としては、ペリレン、ナフタルイミド、ジケトピロロピロール、キナクリドン等が挙げられる。
【0037】
樹脂、粒子および蛍光性材料は、溶融される前に、それぞれ、必要に応じて混合してもよい。また、予め、粒子および蛍光性材料と樹脂の一部とを溶融混練して、粒子および蛍光性材料の濃度が高いマスターパウダーまたはマスターバッチを作製してから、さらに樹脂とマスターパウダーまたはマスターバッチとを溶融混練してもよい。樹脂および粒子を混合する方法としては、ドライブレンド等が挙げられる。
【0038】
<樹脂と粒子とを溶融混練する工程>
樹脂、粒子および蛍光性材料は、通常、混練機を用いて溶融する。樹脂、粒子および蛍光性材料を溶融混練するための混練機としては、単軸押出機、二軸押出機、多軸押出機等の各種押出機の他、バンバリーミキサー、インテンシブミキサー、加圧ニーダー等のバッチ型混練機;ブラベンダーミキサー等の簡易型の混練機;連続式インテンシブミキサー;これらの混練機の下に一軸押出成形機を有する、混練と押出を同時に実施する装置;が挙げられる。
溶融温度(高温)は、樹脂の融点以上であり、樹脂の融点に依存するが、一般に、200~350℃、または230~320℃であってよい。
【0039】
<その他の剤>
樹脂、粒子および蛍光性材料に加えて、その他の剤を加えてもよい(溶融してもよい)。その他の剤としては、染料、顔料、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、難燃化剤、抗菌剤、帯電防止剤、銅害防止剤、金属不活性化剤、粘着付与剤、アンチブロッキング剤、滑剤、スリップ剤、内部離型剤、防曇剤(防滴剤、霧滴防止剤)、付香剤、界面活性剤、湿潤剤、防腐剤、防カビ剤、充填剤、補強剤、安定剤、保温剤、発泡剤、防震剤、耐衝撃性向上剤、表面処理剤、保温剤、表面処理剤、分散剤、禁水性材料等が挙げられる。
滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。
その他の剤の量は、樹脂組成物に対して、0~30重量%、0.1~20重量%、または1~10重量%であってよい。
【0040】
<樹脂と、粒子と、蛍光性材料とを溶融混練して得られた樹脂組成物を成形する工程>
成形は、射出成形、押出成形、ブロー成形等によって行なうことができる。
【0041】
<射出成形品の製造方法>
本発明は、樹脂、粒子、蛍光性材料および必要に応じてその他の剤とを高温で溶融して得られた樹脂組成物を射出成形する工程を含む射出成形品の製造方法にも関する。
【0042】
射出成形には、通常の射出成形機が使用される。溶融混練された樹脂、粒子、蛍光性材料は、射出成形機へ供給される。
射出成形機としては、公知のものを用いることができ、油圧式射出成形機、電動式射出成形機等が挙げられる。射出成形機は、得られる射出成形品の大きさや、用いる金型のサイズによって、適宜選択することができる。
【0043】
型締圧力は、用いる金型のサイズや、樹脂容量によって適宜選択することができる。電熱ヒーターや、熱媒循環式の金型温調機を用いて金型を加熱することができる。特に、金型および成形体の表面温度を正確且つ迅速に制御できることから、金型内部に熱媒循環配管を埋設させて金型を加熱することが好ましい。
【0044】
<押出成形品の製造方法>
本発明は、樹脂、粒子、蛍光性材料および必要に応じてその他の剤とを高温で溶融して得られた樹脂組成物を押出成形する工程を含む押出成形品の製造方法にも関する。
【0045】
押出成形には、通常のT-ダイ押出成形機、インフレーション成形機等が使用される。これらの押出成形機は、混練機に接続される。溶融混練された樹脂、粒子および蛍光性材料は、押出成形機へ供給される。
【0046】
また、混練機および押出成形機が一体化された装置を用いてもよい。混練機および押出成形機が一体化された装置としては、公知のものを用いることができ連続式インテンシブミキサー;ニーディングタイプ二軸押出成形機(同方向または異方向)等の連続型混練機;摩砕機構を有する回転円板を使用した連続混練装置;一軸押出成形機に混練部(ダルメージ、CTM等)を設けたもの;ニーディングディスクまたは混練用ローターを有する二軸混練押出成形機;が挙げられるが特に制限はない。混練機は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
<ブロー成形品の製造方法>
本発明は、樹脂、粒子、蛍光性材料および必要に応じてその他の剤とを高温で溶融して得られた樹脂組成物をブロー成形する工程を含むブロー成形品の製造方法にも関する。
【0048】
ブロー成形には、通常の射出ブロー成形機、ダイレクトブロー成形機が使用される。溶融混練された樹脂、粒子および蛍光性材料は、ブロー成形機へ供給される。
ブロー成形機としては、公知のものを用いることができ、適宜選択することができる。
【0049】
<ペレットの製造方法>
樹脂組成物がペレットである場合について説明する。
溶融混練された樹脂組成物は、ダイ装置に供給されてもよい。
ダイ装置は、供給口を有する。供給口には、上記の押出機が接続される。ダイ装置の供給口へ、押出機から、溶融混練された樹脂、粒子および蛍光性材料が供給される。
【0050】
押出機からダイ装置に供給された樹脂、粒子および蛍光性材料は、ダイ装置の押出成形部へと供給される。押出成形部の押出口からは、樹脂、粒子および蛍光性材料が押し出され、ストランドを形成する。ストランドの直径は、特に限定されず、目的に応じて適宜変更され得るが、例えば0.2~10mmまたは0.5~5mmの範囲である。
【0051】
ストランドを、必要に応じて冷却した後、切断して、ペレットを得ることができる。切断は、ペレタイザーにより行なう。
冷却方法としては、押出したストランドを水槽中に導き、水槽中の冷却水にストランドを浸漬させる方法が最も一般的に広く用いられている。
冷却後のストランドは、好ましくは、水切り装置によって表面に付着した水分を除去した後に、ペレタイザーへ供給される。ペレタイザーは、回転刃等を駆動させることにより、ストランドを切断する。ストランドを切断する長さは特に限定されず、目的に応じて適宜変更され得るが、例えば0.5~10.0mmまたは1.0~5.0mmの範囲である。ペレットの形状としては、円柱、角柱等が挙げられるが、製造が容易であり、取り扱いが容易である点から円柱が好ましい。
【0052】
ペレットを用いて、成形品を得ることができる。成形品の製造方法としては、上記の射出成形品の製造方法、上記の押出成形品の製造方法、吹き込み成形法、真空成形法、インフレーション成形法、カレンダー成形法、スラッシュ成形法、ディップ成形法、発泡成形法等が挙げられる。
得られた成形品は、マッド感およびスリガラス調を有する。
【実施例0053】
以下に、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。ただし、これらの説明が本発明を限定するものでない。
【0054】
[実施例1~7]
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量に、表1に示すビーズ状の架橋重合体粒子(架橋粒子)またはマイカ粒子、および蛍光性を有する染料または顔料とをドライブレンドして組成物を得た。得られた組成物を、3段成形プレートの金型を取り付けた射出成形機(商品名:IS55FP-1.5 A、芝浦機械(株)製、型締め圧:55t)を用いて、温度280℃で射出成形し、1.0mm/2.0mm/3.0mm厚の3段成形プレートとして射出成形品を得た。
【0055】
【表1】
【0056】
ビーズ状架橋粒子またはマイカ粒子
I :架橋ポリスチレン粒子(粒径8μm、屈折率1.592)
II :マイカ粒子(粒径40μm、アスペクト比100、屈折率1.525)
【0057】
蛍光性を有する染料または顔料
A : 菓子の素テクノロジーズ製 ルミカラーオレンジ
B : BASF製 ルモゲンF Yellow083
C : BASF製 イルガジンレッドK3840
D : クラリアント製 PV Fast Red B
E : DayGlo製 ZQ-15
F : DayGlo製 ZQ-16
【0058】
[比較例1および2]
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量に、表2に示すビーズ状の架橋粒子またはマイカ粒子、および蛍光性を持たない染料または顔料とをドライブレンドして組成物を得た。得られた組成物を、3段成形プレートの金型を取り付けた射出成形機(商品名:IS55FP-1.5 A 、芝浦機械(株)製、型締め圧 :55t)を用いて、温度280℃で射出成形し、1.0mm/2.0mm/3.0mm厚の3段成形プレートとして射出成形品を得た。
【0059】
【表2】
【0060】
[実施例8および9]
ポリエチレンテレフタレート樹脂100重量に、表3に示すビーズ状の架橋粒子またはマイカ粒子、および蛍光性を有する染料または顔料とをドライブレンドして組成物を得た。得られた組成物を、T-ダイ成形機((株)阪口製作所製 40mmφTダイ押出機 400mm幅T型ダイス)を用いて、280℃で200μm厚のシートを作成し、押出成形品を得た。
【0061】
【表3】
【0062】
実施例および比較例で得られた成形品を以下について評価し、評価結果を表4に示す。
【0063】
[全光線透過率]
実施例および比較例で得られた成形品を、JIS K7361に準拠して全光線透過率を測定した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を、実施例8および9は成形品厚み200μm部分を測定した。
【0064】
[HAZE]
実施例および比較例で得られた成形品を、JIS K7136に準拠してHAZEを測定した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を、実施例8および9は成形品厚み200μm部分を測定した。
【0065】
[スリガラス性]
目視にて、下記の基準でスリガラス性を評価した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を、実施例8および9は成形品厚み200μm部分を評価した。
◎:スリガラス性が良好である。
〇:スリガラス性がある
×:スリガラス性がない
【0066】
[蛍光性]
実施例および比較例で得られた成形品を、分光蛍光光度計(商品名:F-7000、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて、蛍光強度を測定した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を測定した。また、目視にて、下記の基準で蛍光性を評価した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を、実施例8および9は成形品厚み200μm部分を測定した。
◎:蛍光性が高い
〇:蛍光性がある
×:蛍光性がない
【0067】
[意匠性]
実施例および比較例で得られた成形品を、目視にて、下記の基準で蛍光性およびスリガラス感をあわせ持つ意匠性を評価した。なお、実施例1~7、比較例1および2は成形品厚み3.0mm部分を、実施例8および9は成形品厚み200μm部分を評価した。
◎:蛍光性が高く、良好なスリガラス性がある
〇:蛍光性があり、良好なスリガラス性がある、または蛍光性が高く、スリガラス性がある。
×:蛍光性またはスリガラス性がない
【0068】
[触感]
実施例8および9で得られた成形品を、下記の基準で触感を評価した。
◎:マット感が高い
〇:マット感がある
【0069】
<全光線透過率、HAZE、スリガラス性、蛍光性、意匠性、触感評価>
実施例および比較例で得られた成形品を評価した結果を表4および表5に示した。蛍光性評価における最大発光波長には、それぞれの測定波長において励起放出された発光は図1(実施例1の測定結果)のような単一または複数のピークで検出され、それぞれの検出された単一または複数のピークの蛍光強度が最大の時の波長を記載している。図1において、横軸が波長(nm)であり、横軸が強度(任意単位)を表す。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明によれば、透明性が高く、且つ蛍光性を有するスリガラス調で意匠性が高い成形品が得られる。
図1