(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137296
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C  11/13        20060101AFI20240927BHJP        
   B60C  11/03        20060101ALI20240927BHJP        
【FI】
B60C11/13 B 
B60C11/03 300A 
B60C11/03 C 
B60C11/03 100B 
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048764
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO  TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003395
【氏名又は名称】弁理士法人蔦田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤  翔太
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BC44
3D131CB05
3D131EB03U
3D131EB18V
3D131EB18X
3D131EC12V
3D131EC12X
3D131LA28
(57)【要約】
【課題】溝から発生するノイズがさらに小さい空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】トレッドに溝10が形成され、溝10の側壁13に複数の突起20が形成された空気入りタイヤにおいて、それぞれの突起20の形は多角錐であり、それぞれの突起20に穴24が形成されたことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【選択図】
図5
 
【特許請求の範囲】
【請求項1】
  トレッドに溝が形成され、前記溝の側壁に複数の突起が形成された空気入りタイヤにおいて、
  それぞれの前記突起の形は多角錐であり、それぞれの前記突起に穴が形成されたことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【請求項2】
  前記多角錐のそれぞれの側面に前記穴として小溝が形成され、それぞれの前記側面の前記小溝が連結されて前記突起の頂点を中心に1周する囲い溝となった、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
  前記側壁の所定範囲において前記突起が隙間なく敷き詰められた、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
  前記側壁の所定範囲において、前記突起と、前記突起のない平面とが、少なくとも一方向へ交互に配置された、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
  前記側壁の所定範囲において、前記突起と、前記突起と同じ形状及び大きさの多角錐の凹みとが、少なくとも一方向へ交互に配置された、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
  前記凹みに、前記突起に形成された前記穴と同じ形状及び大きさの凸が形成された、請求項5に記載の空気入りタイヤ。
            
         
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
  空気入りタイヤの溝の中で気柱管共鳴が生じ、それが車内や車の周囲で聞こえるノイズの原因になることが知られている。そこで、例えば特許文献1に記載のように、溝の側壁に凹凸を設けることにより、ノイズを小さくする試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
  しかし、溝の側壁に凹凸を設けても、依然として溝からノイズが発生していた。
【0005】
  そこで本発明は、溝から発生するノイズがさらに小さい空気入りタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
  本発明は以下に示される実施形態を含む。
【0007】
  [1]トレッドに溝が形成され、前記溝の側壁に複数の突起が形成された空気入りタイヤにおいて、それぞれの前記突起の形は多角錐であり、それぞれの前記突起に穴が形成されたことを特徴とする、空気入りタイヤ。
【0008】
  [2]前記多角錐のそれぞれの側面に前記穴として小溝が形成され、それぞれの前記側面の前記小溝が連結されて前記突起の頂点を中心に1周する囲い溝となった、[1]に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
  [3]前記側壁の所定範囲において前記突起が隙間なく敷き詰められた、[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤ。
【0010】
  [4]前記側壁の所定範囲において、前記突起と、前記突起のない平面とが、少なくとも一方向へ交互に配置された、[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤ。
【0011】
  [5]前記側壁の所定範囲において、前記突起と、前記突起と同じ形状及び大きさの多角錐の凹みとが、少なくとも一方向へ交互に配置された、[1]又は[2]に記載の空気入りタイヤ。
【0012】
  [6]前記凹みに、前記突起に形成された前記穴と同じ形状及び大きさの凸が形成された、[5]に記載の空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0013】
  実施形態の空気入りタイヤにおいては、溝から発生するノイズが小さい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
            
            
            
            【
図4】主溝の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図5】突起の断面図。
図4におけるA-A線での断面図。
 
            
            
            【
図8】(a)は変更例の突起を側壁に対して垂直方向から見た図。(b)は(a)におけるB-B線での断面図。
 
            【
図9】突起を横から見た図。(a)は稜線が直線のときの図。(b)は稜線が曲線のときの図。
 
            【
図10】変更例の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図11】変更例の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図12】変更例の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図13】変更例の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図14】変更例の側壁の一部を、側壁基準面に対して垂直方向から見た図。
 
            【
図15】変更例の突起の断面図。
図14におけるC-C線での断面図。
 
            【
図16】変更例の突起の断面図。
図14におけるC-C線に相当する位置での断面図。
 
            【
図17】変更例の突起を
図5と同じ方向から見た断面図。(a)は角が丸くなった突起の図。(b)は角が取れて平面になった突起の図。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0015】
  実施形態について図面に基づき説明する。なお、以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更されたものについては、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0016】
  実施形態の空気入りタイヤは、トレッドを除き、空気入りタイヤとしての一般的な断面構造を有している。具体的には、タイヤ軸方向両側にビード(ビードとは、ビードコア及びビードフィラーからなる部分のことである)が設けられ、タイヤ軸方向一方のビードから他方のビードにかけてカーカスプライが設けられている。カーカスプライの外径側にはベルトが設けられ、ベルトの外径側にはトレッドが設けられている。また、カーカスプライの内側にはインナーライナーが設けられ、カーカスプライのタイヤ軸方向両側にはサイドウォールゴムが設けられている。以上の他にも複数のゴム部材が設けられて、空気入りタイヤが構成されている。
【0017】
  ゴム製のトレッドには
図1に示すようなトレッドパターンが形成されている。本実施形態のトレッドには、3本の主溝10と、複数本の横溝11とが設けられている。トレッドの陸は、これらの溝により、多数のブロック12に分割されている。ここで、主溝10とは、タイヤ周方向に延びる幅の広い溝のことである。また、横溝11とは、タイヤ軸方向に延びる溝のことである。
 
【0018】
  図2及び
図3に示すように、主溝10の側壁13、換言すればブロック12の側壁のうち主溝10側の側壁13には、複数の突起20が形成されている。突起20は、トレッドにおける全ての主溝10の側壁13に形成されている。また、突起20は、主溝10のタイヤ軸方向両側の側壁13に形成されている。また、突起20は、側壁13の全体に隙間なく敷き詰められている。ただし、側壁13と溝底14とを連結するR面15には突起20が形成されていなくても良い。
 
【0019】
  突起20の形は四角錐である。四角錐の底面は正方形で、その一辺の長さL1(
図2、
図4参照)は1mm以上3mm以下である。また、突起20の高さL2(
図3、
図5参照)、すなわち突起20の底面(四角錐の底面)に対して垂直な方向の長さは、0.3mm以上である。また、突起20の高さL2は、主溝10の幅(接地面の位置での幅)の20%以下である。また、突起20の稜線27(隣接する2つの側面23が交わる線)は直線である。
 
【0020】
  なお、突起20の底面は、突起20がないと仮定したときの主溝10の側壁面上にある。突起20がないと仮定したときの主溝10の側壁面のことを側壁基準面28とする。隣接する2つの突起20の境界線は、側壁基準面28上にある。また、以下の説明において、側壁基準面28からの高さとは、側壁基準面28からの、側壁基準面28に対して垂直な方向への長さのことである。側壁基準面28は、溝底14や接地面に垂直な方向に対して-5°~35°(溝底14から接地面へ向かうにつれ溝幅が広がる方向の傾きが+の傾きである)程度傾いている。
【0021】
  突起20は、主溝10の深さ方向及び主溝10の延長方向に、それぞれ隙間なく列をなして並んでいる。突起20の底面である四角形の辺29は、主溝10の高さ方向及び主溝10の延長方向に延びている。
【0022】
  図4及び
図5に示すように、突起20には穴の一種である溝が形成されている。詳細には、突起20の頂点(四角錐の頂点)22を共有する4つの側面23のそれぞれに小溝21が形成されている。これらの小溝21は、突起20の底面(四角錐の底面)である四角形の辺29に対して平行に延びている。また、これらの小溝21は、4つの側面23のそれぞれにおいて、側壁基準面28からの高さが同じ位置に形成されている。そして、4つの側面23の小溝21が連結されることにより、突起20の頂点22を中心に1周する1つの囲い溝24が形成されている。この囲い溝24は、側壁基準面28に垂直な方向から見て、四角形を形成している。
 
【0023】
  囲い溝24は、突起20の側面23から、側壁基準面28に対して垂直な方向に掘られている。囲い溝24の深さL3(
図5参照)は、いずれの場所でも一定である。囲い溝24の深さL3は0.1mm以上である。ここで、囲い溝24の深さとは、傾斜した側面23に形成された囲い溝24の縁のうち突起20の頂点22から遠い方の縁25の位置における、溝底26までの深さのことである。
 
【0024】
  また、囲い溝24は、深い場合は、側壁基準面28よりも下まで延びていても良い。ただし、囲い溝24が側壁基準面28よりも下まで延びている場合において、側壁基準面28から溝底26までの側壁基準面28に対して垂直な方向への長さは、2mm以下である。
【0025】
  また、側壁基準面28に対して垂直な方向から見たときの囲い溝24の幅L4(
図4、
図5参照)は、突起20の底面である四角形の辺29の長さの1/6以下である。
 
【0026】
  主溝10の両側の側壁13にある全ての突起20に、このような囲い溝24が形成されている。
【0027】
  このような突起20は、金型に突起20を反転させた形状の凹凸を形成し、その金型を使用してトレッドを成型することにより実現できる。突起20を反転させた形状の凹凸は、細かな凹凸であるが、3Dプリンタにより形成することができる。
【0028】
  このように、本実施形態では、主溝10の側壁13に複数の四角錐の突起20が形成され、それぞれの突起20に穴として囲い溝24が形成されている。そのため、主溝10内で空気の振動が発生しても、振動が側壁13において分散されたり、側壁13で反射された振動同士が相殺されたりして、主溝10から発生するノイズが小さくなる。
【0029】
  ここで、四角錐の突起20それぞれの側面23に小溝21が形成され、それらの小溝21が連結されて突起20の頂点22を中心に1周する囲い溝24が形成されている。穴がこのような形状の囲い溝24であることにより、ノイズが分散されやすくなっている。
【0030】
  また、トレッドに形成される各種の溝の中でも特に主溝10においてノイズが発生しやすいが、その主溝10にこのような突起20が形成されているため、車内等で聞こえるノイズを低減する効果が大きい。
【0031】
  また、このような突起20が主溝10の側壁13の全体に隙間なく敷き詰められているため、主溝10から発生するノイズがより小さくなる。
【0032】
  また、突起20の底面の一辺の長さL1が1mm以上3mm以下であることや、突起20の高さL2が0.3mm以上であることにより、ノイズを小さくする効果が十分に生じる。また、突起20の高さL2が主溝10の幅の20%以下であることにより、主溝10の排水性が阻害されることを防ぐことができる。
【0033】
  また、囲い溝24の深さL3が0.1mm以上であることにより、ノイズを小さくする効果が十分に生じる。また、囲い溝24が側壁基準面28より深い位置まで掘られている場合でも、側壁基準面28から囲い溝24の溝底26までの深さが2mm以下であることにより、突起20の中心部分が千切れることを防ぐことができる。
【0034】
  以上の実施形態に対して様々な変更を行うことができる。以下で説明する変更例のいずれか1つを上記実施形態に適用しても良いし、いずれか2つ以上を組み合わせて上記実施形態に適用しても良い。
【0035】
  <変更例1>
  突起20が形成される場所は、主溝10の両側壁13の全体に限定されない。トレッドに形成されたいずれかの溝における所定範囲に突起20が形成されれば良い。
【0036】
  例えば、主溝10の両側壁13ではなく、片方の側壁13にのみ突起20が形成されても良い。また、側壁13に加えて、溝底14にも突起20が形成されても良い。
【0037】
  また、主溝10の側壁13の全体ではなく一部のみに突起20が形成されても良い。例えば、主溝10に隣接する複数のブロック12のうち一部のみに突起20が形成されても良い。
【0038】
  また、トレッドに形成された複数の主溝10のうち、一部の主溝10のみに、突起20が形成されても良い。また、主溝10ではなく横溝11等の他の溝に突起20が形成されても良い。また、主溝10に加えて横溝11等の他の溝にも突起20が形成されても良い。
【0039】
  <変更例2>
  トレッドパターンとして、様々なものが挙げられる。例えば、
図6に示すように複数のリブ112が形成されたトレッドパターンや、
図7に示すように横溝111がV字又は逆V字に配置されたトレッドパターンが挙げられる。なお、リブとは、横溝で分割されることなくタイヤ周方向へ延びる陸のことである。
 
【0040】
  これらのトレッドパターンのいずれかの溝、例えば主溝10に、上記実施形態のような突起20が形成される。
【0041】
  また、主溝は、ジグザグ状のものや、タイヤ周方向に対して傾斜する方向へ延びるものであっても良い。
【0042】
  <変更例3>
  突起に設ける穴の場所及び形状は限定されない。
図8に示す変更例では、突起120の頂点となる場所に、突起120の底面と同じ形状である四角形の穴124が形成されている。このような穴124も、主溝10から発生するノイズを小さくする効果を奏する。
 
【0043】
  <変更例4>
  突起の形状は、上記実施形態のような方錐(底面が正方形である四角錐)に限定されず、長方錐(底面が長方形である四角錐)や斜錐でも良い。
【0044】
  また、突起の形状は四角錐以外の多角錐でも良い。好ましい多角錐は、三角錐~六角錐である。なお、三角錐及び六角錐は、四角錐と同様に、所定範囲に隙間なく敷き詰めることができる。しかし、複数の五角錐が所定範囲に配置されると、隣接する五角錐の間に隙間ができる。
【0045】
  また、多角錐の稜線(隣接する2つの側壁が交わる線)は、通常は
図9(a)の稜線27のように直線だが、
図9(b)の稜線127のように若干曲がった曲線でも良い。曲線の稜線127の曲率半径は、突起の高さの3倍以下が好ましい。
 
【0046】
  <変更例5>
  四角錐の突起20が隙間なく敷き詰められるときの敷き詰め方は、
図4の形態に限定されない。
 
【0047】
  例えば、
図10に示すように、突起20の稜線27が主溝10の深さ方向及び主溝10の延長方向に延びるように、複数の突起20が隙間なく敷き詰められても良い。
 
【0048】
  また、
図11に示すように、ある列の突起20が、隣接する突起20に対して、半ピッチ(突起20の長さの半分)ずれていても良い。
 
【0049】
  <変更例6>
  図12、
図13に示すように、突起20と、突起20のない平面(すなわち側壁基準面28)とが、少なくとも一方向へ交互に配置されていても良い。具体例としては、
図12に示すように、突起20と側壁基準面28とが、主溝10の深さ方向及び主溝10の延長方向へ交互に配置されていても良い。また、
図13に示すように、突起20と側壁基準面28とが、主溝10の深さ方向と主溝10の延長方向とのいずれか一方向(
図13の場合は主溝10の延長方向)のみへ交互に配置されていても良い。
 
【0050】
  <変更例7>
  図14及び
図15に示すように、突起20と、突起20と同じ形状及び同じ大きさの四角錐の凹み130とが、少なくとも一方向へ交互に配置されても良い。突起が他の多角錐からなる場合も、突起と、突起と同じ形状及び同じ大きさの多角錐の凹みとが、少なくとも一方向へ交互に配置されていれば良い。
 
【0051】
  また、
図16に示すように、四角錐の凹み130に、囲い溝24と同じ形状及び同じ大きさの凸131が形成されていても良い。凹みが四角錐以外の多角錐の場合も、その凹みに、突起における穴と同じ形状及び同じ大きさの凸が形成されていれば良い。
 
【0052】
  <変更例8>
  上記実施形態の突起20の断面上で鋭角の角となっていた部分の一部又は全部が丸まっていても良い。具体的には、
図17(a)に示すように、突起の頂点222、小溝221と側面223との境界部分229、といった部分の一部又は全部が、丸まっていても良い。
 
【0053】
  また、上記実施形態の突起20の断面上で鋭角の角となっていた部分の一部又は全部が、平面(例えば突起の底面に平行な平面)となっていても良い。例えば、
図17(b)に示すように、小溝221と側面223との境界部分が、角の取れた平面228となっていても良い。平面228は突起の底面に平行な平面である。
 
【符号の説明】
【0054】
  10…主溝、11…横溝、12…ブロック、13…側壁、14…溝底、15…R面、20…突起、21…小溝、22…頂点、23…側面、24…囲い溝、25…縁、26…溝底、27…稜線、28…側壁基準面、111…横溝、112…リブ、124…穴、127…稜線、130…凹み、131…凸、221…小溝、222…頂点、223…側面、228…平面、229…境界部分