(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013730
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】靴紐
(51)【国際特許分類】
A43C 9/00 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
A43C9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116054
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】399010545
【氏名又は名称】山三商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】巻渕 文彰
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050MA02
(57)【要約】
【課題】足甲部に対して優れた緊締作用を発揮する靴紐を提供する。
【解決手段】紐長両端部に、靴20の紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ球状の複数のこぶ部3aが連設されてなるこぶ状紐部3が設けられ、このこぶ状紐部3にそれぞれ、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定された大径紐部4が連設され、この大径紐部4間にして紐長手方向中央部、紐通し孔22の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形するほぼ一定の太さに設定された小径紐部5が設けられた靴紐。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮性部材からなる芯材と該芯材を被覆する伸縮性部材からなる筒状の外層材とを含んで構成され、靴の足甲部に配される伸縮性を具備した靴紐であって、紐長手方向両端部に設けられ、前記靴の紐通し孔の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔の孔径よりも小径に変形するほぼ球状に形成された複数のこぶ部が連設されてなる所定長の一対のこぶ状紐部と、前記各こぶ状紐部にそれぞれ連設され、前記紐通し孔の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定された所定長の一対の大径紐部と、前記一対の大径紐部間に配され、前記紐通し孔の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形するほぼ一定の太さに設定された小径紐部とを有することを特徴とする靴紐。
【請求項2】
請求項1記載の靴紐において、前記小径紐部は、前記靴の前記足甲部の靴先側から履き口側に向かって該足甲部全体の半分以上の範囲にわたって配される長さを有し、また、前記大径紐部は、前記足甲部の前記小径紐部が配される範囲以外の全範囲にわたって配される長さを有し、さらに、前記大径紐部が前記足甲部の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔に係止して前記足甲部の緊締状態を保持するように構成されていることを特徴とする靴紐。
【請求項3】
請求項1記載の靴紐において、前記こぶ状紐部は、前記足甲部の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔を通過し外方に引き出され、前記靴の側面に設けられた靴紐先端係止部に係止して、前記足甲部の緊締状態を前記大径紐部と共に保持するように構成されていることを特徴とする靴紐。
【請求項4】
請求項2記載の靴紐において、前記こぶ状紐部は、前記足甲部の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔を通過し外方に引き出され、前記靴の側面に設けられた靴紐先端係止部に係止して、前記足甲部の緊締状態を前記大径紐部と共に保持するように構成されていることを特徴とする靴紐。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の靴紐において、前記こぶ状紐部と前記大径紐部との間及び前記大径紐部と前記小径紐部との間にそれぞれ設けられ、前記小径紐部より小径の連結部を有し、前記連結部で前記芯材と前記外層材とが密着していることを特徴とする靴紐。
【請求項6】
請求項5記載の靴紐において、前記こぶ部同士は前記連結部を介して連設されていることを特徴とする靴紐。
【請求項7】
請求項1~4いずれか1項に記載の靴紐において、前記大径紐部は、前記こぶ状紐部の前記こぶ部よりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐。
【請求項8】
請求項5記載の靴紐において、前記大径紐部は、前記こぶ状紐部の前記こぶ部よりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐。
【請求項9】
請求項6記載の靴紐において、前記大径紐部は、前記こぶ状紐部の前記こぶ部よりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴紐に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、結ばなくても靴の足甲部の緊締状態を保持することができる靴紐として、特許文献1に示す靴紐(以下、「従来例」という。)を提案している。
【0003】
この従来例は、靴紐の両端部に設けられ、靴の紐通し孔より大径で引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔よりも小径に変形する複数のこぶ部からなるこぶ領域部と、このこぶ領域部間に設けられ、前記紐通し孔の孔径よりも小径で且つ一定太さの紐状に形成された太さ一定領域部とからなり、太さ一定領域部は、紐長手方向に引っ張られることで伸長弾性変形し、この伸長弾性変形に伴って生じる弾性復帰力により足甲部を緊締する足甲部緊締作用が生じるように構成されているものであり、前記構成により、滑らかで引っ掛かりがなくスムーズに紐通し作業を行うことができ、また、締め付け具合(緊締具合)が使用者の足甲の状態(むくみ状態)に応じて自然に緊締具合が調整され適宜な緊締作用を発揮するものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来例を改良したものであり、足甲部の緊締状態を無段階で調整することが可能となり、足甲部に対してより優れた緊締作用を発揮する靴紐を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
伸縮性部材からなる芯材1と該芯材1を被覆する伸縮性部材からなる筒状の外層材2とを含んで構成され、靴20の足甲部21に配される伸縮性を具備した靴紐であって、紐長手方向両端部に設けられ、前記靴20の紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ球状に形成された複数のこぶ部3aが連設されてなる所定長の一対のこぶ状紐部3と、前記各こぶ状紐部3にそれぞれ連設され、前記紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して前記紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定された所定長の一対の大径紐部4と、前記一対の大径紐部4間に配され、前記紐通し孔22の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形するほぼ一定の太さに設定された小径紐部5とを有することを特徴とする靴紐に係るものである。
【0008】
また、請求項1記載の靴紐において、前記小径紐部5は、前記靴20の前記足甲部21の靴先側から履き口側に向かって該足甲部21全体の半分以上の範囲にわたって配される長さを有し、また、前記大径紐部4は、前記足甲部21の前記小径紐部5が配される範囲以外の全範囲にわたって配される長さを有し、さらに、前記大径紐部4が前記足甲部21の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aに係止して前記足甲部21の緊締状態を保持するように構成されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載の靴紐において、前記こぶ状紐部3は、前記足甲部21の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aを通過し外方に引き出され、前記靴20の側面に設けられた靴紐先端係止部23に係止して、前記足甲部21の緊締状態を前記大径紐部4と共に保持するように構成されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0010】
また、請求項2記載の靴紐において、前記こぶ状紐部3は、前記足甲部21の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aを通過し外方に引き出され、前記靴20の側面に設けられた靴紐先端係止部23に係止して、前記足甲部21の緊締状態を前記大径紐部4と共に保持するように構成されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0011】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の靴紐において、前記こぶ状紐部3と前記大径紐部4との間及び前記大径紐部4と前記小径紐部5との間にそれぞれ設けられ、前記小径紐部5より小径の連結部6を有し、前記連結部6で前記芯材1と前記外層材2とが密着していることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0012】
また、請求項5記載の靴紐において、前記こぶ部3a同士は前記連結部6を介して連設されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0013】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の靴紐において、前記大径紐部4は、前記こぶ状紐部3の前記こぶ部3aよりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0014】
また、請求項5記載の靴紐において、前記大径紐部4は、前記こぶ状紐部3の前記こぶ部3aよりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【0015】
また、請求項6記載の靴紐において、前記大径紐部4は、前記こぶ状紐部3の前記こぶ部3aよりも小径な太さに設定されていることを特徴とする靴紐に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、足甲部の緊締状態を無段階で調整することが可能となり、足甲部に対してより優れた緊締作用を発揮する画期的な靴紐となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】本実施例の靴紐の拡大概略説明断面図である。
【
図4】(a),(b)は本実施例における靴紐のこぶ状紐部と靴の紐通し孔との関係を説明する概略説明図であり、(c),(d)は本実施例における靴紐の大径紐部と靴の紐通し孔との関係を説明する概略説明図である。
【
図5】本実施例における靴紐の小径紐部と靴の紐通し孔との関係を説明する概略説明図である。
【
図6】本実施例の別例(オブリークシューレースシステムタイプ)を示す斜視図である。
【
図7】本実施例の別例(靴紐先端係止部なしタイプ)を示す斜視図である。
【
図8】
図7における靴紐のこぶ状紐部と靴の最後の紐通し孔との関係を説明する概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0019】
靴20の足甲部21の靴先側から履き口側に向かう所定範囲に設けられた紐通し孔22に小径紐部5が配され、前記履き口側に位置する残りの紐通し孔22に大径紐部4が配され、この大径紐部4が足甲部21の履き口側に位置する紐通し孔22に係止されることで、大径紐部4及び小径紐部5により足甲部21の緊締状態が保持される。
【0020】
ここで、小径紐部5は紐通し孔22より小径であるため、紐通し孔22に引っ掛かることなく滑らかに伸縮することができ、これにより、使用者の足の状態に応じて緊締具合がスムーズに自然調整され、このような自然調整作用により、例えば、長時間の歩行や立ち作業でむくみが生じても、このむくみに応じて緊締具合がスムーズに自然に調整されるので、足甲における血流が阻まれることがなく、この血流悪化による健康被害の発生を防止することができるものとなる。
【0021】
しかも、本発明は、大径紐部4が、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定されているから、大径紐部4の任意の位置で紐通し孔22に係止させることができ、これにより、足甲部21の緊締状態を無段階で調整して保持することができる。
【0022】
すなわち、従来例においては、緊締状態の調整は、こぶ部の紐通し孔への係止による段階的な調整(こぶ領域部におけるこぶ部とこぶ部との間隔ごとでの調整)しかできなかったが、本発明によれば、緊締状態をより細かい調整により最適状態にすることが可能となることは勿論のこと、紐通し孔22の孔径より細く、紐通し孔22に引っ掛かりにくい小径紐部5が足甲部21の下部側(靴先側)に配されることと相俟って、紐両端部を引っ張るだけで靴紐10(具体的には、靴紐10の大径紐部4及び小径紐部5)をスムーズに(素足の場合でも)足甲形状に良好にフィットさせることが可能となる。
【0023】
さらに、本発明は、紐長手方向両端部にこぶ状紐部3を有しているから、このこぶ状紐部3を紐通し孔22の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aに挿通し、任意のこぶ部3aを最後の紐通し孔22aに係止させる、若しくは、こぶ状紐部3を最後の紐通し孔22aを通過させ靴20に設けられた靴紐先端係止部23に係止させることで、従来例と同様、靴紐10の戻り移動を良好に阻止することができる。
【実施例0024】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0025】
本実施例は、
図1に示すような、結ばなくても足甲部21の緊締状態を保持することができる靴紐10を具備する靴20である。
【0026】
本実施例の靴紐10は、
図2,3に示すように、伸縮性部材からなる芯材1と該芯材1を被覆する伸縮性部材からなる筒状の外層材2とを含んで構成され、紐長手方向両端部に設けられ、靴20の紐通し孔22(本実施例中では、以下、単に「紐通し孔22」という。)の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ球状に形成された複数のこぶ部3aが連設されてなる所定長の一対のこぶ状紐部3と、各こぶ状紐部3にそれぞれ連設され、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定された所定長の一対の大径紐部4と、この一対の大径紐部4間にして紐長手方向中央部に配され、紐通し孔22の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形するほぼ一定の太さに設定された小径紐部5とを有するものである。
【0027】
具体的には、本実施例の靴紐10は、
図2に示すように、こぶ状紐部3と大径紐部4との間及び大径紐部4と小径紐部5との間にそれぞれ設けられ、小径紐部5より小径の連結部6を有しており、この連結部6で芯材1と外層材2とが密着している構成である。
【0028】
芯材1は、紐長手方向に沿って収束されたゴム糸を含むものからなり、
図3に示すように、こぶ状紐部3の各こぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5のそれぞれの位置において紐径方向に膨らんだ形状に構成されている。なお、本実施例では芯材1として、多数の細いゴム繊維を収束して形成されるゴム紐(組紐。コールゴム)が採用されているが、芯材1はこれに限定されるものではない。
【0029】
また、外層材2は、主としてポリエステル繊維を含む伸縮性を有する繊維体(織物、編物若しくは組物)からなり、適宜な編み方で繊維の密度をこぶ状紐部3(こぶ部3a)、大径紐部4では疎(こぶ状紐部3の方がより疎)、連結部6では密、小径紐部5ではその中間(やや疎)とされ、芯材1に対する密着性(締め付け性)を異ならせ、こぶ状紐部3のこぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5では芯材1が所定の径で膨出し、連結部6では芯材1が膨出せずに細く固く締め付け状態となるように構成されている。
【0030】
すなわち、本実施例の靴紐10は、こぶ状紐部3のこぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5では、外層材2に対して芯材1がフリーな状態であり、また、こぶ状紐部3の各こぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5では、それぞれ適正な長さが余るように連結部6で外層材2が密着固定されている構成となっている。
【0031】
したがって、引っ張り操作時に、こぶ状紐部3のこぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5では引っ張り時の芯材1及び外層材2の伸長に伴い芯材1が収縮して(膨出度合いが小さくなり)小径に変形し、また、引っ張り操作をやめると、芯材1と外層材2との両者の伸縮性(弾性復帰力)により速やかに元の状態に戻り、芯材1と外層材2の両者が伸縮性(弾性復帰力)を有するため靴20の足甲部21の緊締状態も良好に維持されることとなる(運動時に大径紐部4が紐通し孔22に対してずれにくい。)。
【0032】
また、本実施例の靴紐10では、芯材1と外層材2の弾性力(伸縮性)が異なる構成としている。具体的には、芯材1の弾性力が外層材2より高くなるようにしている。これは、芯材1は通常時はこぶ状紐部3のこぶ部3a内、大径紐部4内及び小径紐部5内において、それぞれ適正な長さが余った状態で膨らむことによりこぶ状紐部3(こぶ部3a)、大径紐部4及び小径紐部5を形成しており、その伸縮性が外層材2より低い(硬い)ことにより紐の伸び過ぎを防止すると共に、引っ張り操作によりこぶ状紐部3のこぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5のそれぞれの太さが紐通し孔22の径よりも小径な細さになった状況から引っ張り操作をやめ、引っ張り作用が無くなった瞬間にゴムが戻る作用を利用して素早く縮んで元のこぶ部3a、大径紐部4及び小径紐部5の太さ(径)に戻る効果を得るためである。
【0033】
以下、本実施例の靴紐10について、さらに具体的に説明する。
【0034】
本実施例の靴紐10は、紐長手方向両端部に設けられ、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸縮自在に弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ球状に形成された複数のこぶ部3aが連設されてなる所定長の一対のこぶ状紐部3と、前記各こぶ状紐部3にそれぞれ連設され、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸縮自在に弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形する一定の太さに設定された所定長の一対の大径紐部4と、前記一対の大径紐部4間にして紐長手方向中央部に配され、紐通し孔22の孔径よりも小径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸縮自在に弾性変形する一定の太さに設定された小径紐部5とからなる構成である。
【0035】
本実施例において、各こぶ状紐部3は、
図3に示すように、3つのこぶ部3aが連設されてなり、各こぶ部3aは、靴20の足甲部21に設けられた紐通し孔22の孔径(約4mm)よりも大径(約7mm)のほぼ球状に形成され、小径紐部5より小径に形成される連結部6を介して連設され、
図4(a),(b)に示すように、各こぶ部3aがそのままの状態(形状)では紐通し孔22を通過することができず、紐長手方向(紐軸方向)への引っ張り操作により生じる引張り作用により、こぶ部3aが紐引っ張り操作方向に伸張弾性変形して紐通し孔22よりも小径形状(ラグビーボールを細長くしたような形状)に変形することで各紐通し孔22を通過することができ、また、この引っ張り操作を解除すると、紐通し孔22よりも大径な元のほぼ球状の状態に復元するように構成されている。なお、こぶ部3aの大きさは、紐通し孔22の孔径により適宜変更可能なものである。
【0036】
また、こぶ部3a同士を連設している連結部6は、靴紐10において、こぶ状紐部3と大径紐部4及び大径紐部4と小径紐部5とを連設している連結部6と同じ構成である。
【0037】
また、このこぶ状紐部3のこぶ部3a同士、こぶ状紐部3と大径紐部4及び大径紐部4と小径紐部5を連設する連結部6は、芯材1と外層材2とが密着固定された硬紐に構成され、本実施例においては、長さ約5mm、直径約2mm~2.5mmに設定されている。
【0038】
また、各大径紐部4は、紐通し孔22の孔径(約4mm)よりも大径で、且つ、こぶ状紐部3のこぶ部3aよりも小径な一定径(約5.5mm)の棒状紐に形成され、連結部6を介してこぶ状紐部3と連設され、
図4(c),(d)に示すように、こぶ状紐部3と同様に、そのままの状態(形状)では紐通し孔22を通過することができず、紐長手方向(紐軸方向)への引っ張り操作により生じる引張り作用により、紐引っ張り操作方向に伸張弾性変形して紐通し孔22よりも小径形状(細長形状)に変形することで各紐通し孔22を通過することができ、また、この引っ張り操作を解除すると、紐通し孔22よりも大径な元の大径形状の状態に復元するように構成されている。なお、大径紐部4の径は、紐通し孔22の孔径により適宜変更可能なものである。
【0039】
また、小径紐部5は、
図5に示すように、紐通し孔22の孔径(約4mm)よりも小径な一定径(約3mm)の棒状紐に形成され、
図2に示すように、両端部が連結部6を介して大径紐部4と連設されている。すなわち、小径紐部5は、大径紐部4の間の全域にわたって設けられている。
【0040】
また、前記したこぶ状紐部3、大径紐部4、小径紐部5及びこれらを連設する連結部6により構成される本実施例の靴紐10は、靴20の足甲部21に装着した際(足甲部21の左右に設けられた紐通し孔22に左右交互に通し配設した際)、小径紐部5が足甲部21の全体の1/2以上を占める長さ(靴先側から履き口側に向かって1/2以上の範囲にわたって通し配設される長さ)に設定され、大径紐部4が残りの足甲部21を占める長さ(例えば、最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aとその一つ前の紐通し孔22にわたって通し配設される長さ)に設定され、これら大径紐部4と小径紐部5とで足甲部21を緊締し、こぶ状紐部3は最後の紐通し孔22aから引き出され後述する靴20の側面に設けられた靴紐先端係止部23に止位置調整自在に係止し得る長さに設定されている。
【0041】
具体的には、本実施例の靴紐10は、全長約65cmに設定され、また、各構成部については、こぶ状紐部3(一ヶ所あたり):約3cm~4cm、大径紐部4(一ヶ所あたり):約6cm~8cm、小径紐部5:約40cm、両端のセルチップ7:約1~1.5cm)に設定されている。なお、靴紐10の全長に関しては、靴20の種類や紐通し孔22の数などの仕様により適正長さが異なるため、靴20の仕様に合わせて装着できるよう適宜な長さ(50cm~120cm程度)に設定可能であり、また、靴紐10の全長が長くなる場合は、こぶ状紐部3及び大径紐部4の長さはほぼ変わらず、小径紐部5の長さが延長される構成となっている。なお、本実施例では、図示するように、セルチップ7とこぶ状紐部3との間にも連結部6が設けられているが、セルチップ7は連結部6を介せずこぶ状紐部3に直接設けても良い。
【0042】
また、前記した靴紐10を具備する本実施例の靴20は、
図1に示すように、一般的なスニーカー形状に構成されているものであり、足甲部21の左右に夫々複数の紐通し孔22が靴先側から履き口側に向かう方向に沿って並設されている。
【0043】
また、本実施例の靴20は、左右の側面の夫々に、紐通し孔22に挿通配設した靴紐10の先端部分、すなわち、紐通し孔22に挿通配設し最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aを通過させて外方に引き出され自由端部となっている靴紐10のこぶ状紐部3を、この靴20に係止させるための靴紐先端係止部23が設けられている。
【0044】
具体的には、本実施例の靴紐先端係止部23は、こぶ状紐部3のこぶ部3aがそのままの状態(形状)では通過することができず、引っ張り操作によりこぶ部3aを伸長小径化変形させた状態(ラグビーボールを細長くしたような形状)とすることで通過することができる紐通し孔22とほぼ同等の径寸法に設定された通孔を有する構成とされている。
【0045】
すなわち、本実施例の靴紐先端係止部23は、最後の紐通し孔22aから引き出された自由端部となったこぶ状紐部3を手で引っ張り操作してこのこぶ状紐部3のこぶ部3aを伸長小径化変形させて靴紐先端係止部23の通孔を通過させた後、引っ張り操作をやめて伸長小径化変形したこぶ部3aを元の状態に復元させることで、靴紐10に戻り移動作用が生じてもこぶ部3aが靴紐先端係止部23(具体的には、通孔の周縁部)に戻り係止して、靴紐10の戻り移動が阻止されるように構成されている。
【0046】
より具体的には、本実施例の靴紐先端係止部23は、靴20の足甲部21の最も履き口側に位置する最後の紐通し孔22aと、この最後の紐通し孔22aを挿通する前に靴紐10が挿通される反対側の最後の紐通し孔22aの一つ手前の紐通し孔22とを結ぶ紐通し方向延長線上よりも靴20の先端側に設けられており、本実施例においては、最後の紐通し孔22aのほぼ真下の位置に設けられている。
【0047】
すなわち、本実施例は、最後の紐通し孔22aを通過し外方に引き出されたこぶ状紐部3を、最後の紐通し孔22aの真下に位置する靴紐先端係止部23の通孔に挿通係止することで、最後の紐通し孔22aで靴紐10を大きく屈曲させて引き回し方向を変え、靴紐10に戻り移動作用が生じた場合、この屈曲部が戻り移動作用に対する抵抗部となって、より戻り移動しにくくなるように構成されている。
【0048】
また、靴紐先端係止部23に設けられた通孔は、靴20の側面に沿う方向(上下方向)に穿孔され、この通孔の上方から挿通し下方側に引き出されたこぶ状紐部3が、靴20の側面に沿設状態に位置決めされるように構成されている。
【0049】
すなわち、本実施例の靴紐先端係止部23は、靴紐10の締め上げ状態を保持する最後の保持部となると共に、自由端部となったこぶ状紐部3が歩行中や走行中にバタつかないように所定位置に固定する位置決め部となるように構成とされている。
【0050】
なお、靴20に関しては、
図6に示すような、足甲部21の外側に二列の紐通し孔22を設けルと共に、靴20の外側のみに通孔を二孔有する靴紐先端係止部23を設け、図示するように、両列の最後の紐通し孔22aから引き出されたこぶ状紐部3をそれぞれ通孔に挿入係止するように構成しても良い(オブリークシューレースシステム)。
【0051】
また、靴20は、
図7に示すように、靴紐先端係止部23を有しない構成としても良い。その場合、靴紐10の長さを適宜変更して、
図8に示すように、こぶ状紐部3のこぶ部3aが最後の紐通し孔22aに係止する(こぶ部3aとこぶ部3aとを連設する連結部6が最後の紐通し孔22aに位置する)ように構成するのが好適である。
【0052】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0053】
本実施例は、
図1に示すように、靴紐10を装着した状態において、靴20の足甲部21の靴先側から履き口側に向かう所定範囲(足甲部21全体の約3/5)に設けられた紐通し孔22に小径紐部5が配され、前記履き口側に位置する残りの紐通し孔22に大径紐部4が配されると共に、この大径紐部4が足甲部21の履き口側に位置する最後の紐通し孔22aに係止されることで(最後の紐通し孔22aの一つ前の紐通し孔22にも係止しても良い)、大径紐部4及び小径紐部5により足甲部21の緊締状態が保持される。
【0054】
ここで、本実施例は、大径紐部4が、紐通し孔22の孔径よりも大径で、且つ、引っ張り操作により該引っ張り操作方向に伸長弾性変形して紐通し孔22の孔径よりも小径に変形するほぼ一定の太さに設定されているから、大径紐部4の任意の位置で紐通し孔22に係止させることができ、これにより、足甲部21の緊締状態を無段階で調整して保持することができる。
【0055】
また、小径紐部5は紐通し孔22より小径であるため、紐通し孔22に引っかかることなく滑らかに伸縮することができ、これにより、使用者の足の状態に応じて緊締具合がスムーズに自然調整され、このような自然調整作用により、例えば、長時間の歩行や立ち作業でむくみが生じても、このむくみに応じて緊締具合がスムーズに自然に調整されるので、足甲における血流が阻まれることがなく、この血流悪化による健康被害の発生を防止することができるものとなる。
【0056】
すなわち、従来例においては、緊締状態の調整は、こぶ部の紐通し孔への係止による段階的な調整(こぶ領域部におけるこぶ部とこぶ部との間隔ごとでの調整)しかできなかったが、本実施例では、緊締状態をより細かい調整により最適状態にすることが可能となることは勿論のこと、紐通し孔22の孔径より細く、紐通し孔22に引っ掛かりにくい小径紐部5が足甲部21の下部側(靴先側)に配されることと相俟って、紐両端部を引っ張るだけで靴紐10(具体的には、靴紐10の大径紐部4及び小径紐部5)をスムーズに(素足の場合でも)足甲形状に良好にフィットさせることが可能となる。
【0057】
さらに、本実施例は、靴紐10の両端部にこぶ状紐部3を有し、このこぶ状紐部3は、靴紐10を装着した状態において、最後の紐通し孔22aから引き出され靴20の側面に設けられた靴紐先端係止部23の通孔に挿通係止されるから、靴紐10の戻り移動が良好に阻止され、前記した大径紐部4及び小径紐部5による足甲部21に緊締状態が良好に保持されると共に、こぶ状紐部3(紐端部)がバタつかず、さらに、体裁も良くなる。
【0058】
すなわち、本実施例において、大径紐部4はこぶ状紐部3のこぶ部3aに比べて径が細いため、こぶ状紐部3よりも紐通し孔22に対する挿通作業がし易い反面、紐通し孔22に対する係止力が弱く、大きな力(引っ張り力)が作用した場合、伸長小径変形して位置ずれし緊締状態が緩んでしまうおそれがあるが、本実施例は、前記のようにこぶ状紐部3が靴紐先端係止部23に確実に係止し靴紐10の戻り移動を阻止するから、前記のとおり、大径紐部4と小径紐部5とによる足甲部21の緊締状態が良好に保持されることとなる。
【0059】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。