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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137303
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】水処理方法および液体組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 43/80 20060101AFI20240927BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240927BHJP
   C02F 1/50 20230101ALI20240927BHJP
【FI】
A01N43/80 102
A01P3/00
C02F1/50 510C
C02F1/50 510E
C02F1/50 520A
C02F1/50 520B
C02F1/50 520K
C02F1/50 520Z
C02F1/50 532D
C02F1/50 532H
C02F1/50 532J
C02F1/50 540B
C02F1/50 532C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048772
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004400
【氏名又は名称】オルガノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木田 樹生
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AA02
4H011BB10
4H011BC03
4H011BC17
4H011BC19
4H011DA13
4H011DD07
4H011DF03
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】イソチアゾリン誘導体を用いて20℃以上の温度条件において持続的に生物付着の抑制を行うことができる水処理方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いて水系の処理を行う水処理方法であって、水系の水温が、20℃以上である、水処理方法である。
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いて水系の処理を行う水処理方法であって、
前記水系の水温が、20℃以上であることを特徴とする水処理方法。
【化1】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【請求項2】
請求項1に記載の水処理方法であって、
前記水系に有機化合物が共存することを特徴とする水処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の水処理方法であって、
前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つであることを特徴とする水処理方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法であって、
前記水系のpHが、7以上であることを特徴とする水処理方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の水処理方法であって、
前記水系が、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系であることを特徴とする水処理方法。
【請求項6】
下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を含む液体組成物であって、
前記液体組成物が、水温20℃以上で用いられることを特徴とする液体組成物。
【化2】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【請求項7】
請求項6に記載の液体組成物であって、
さらに有機化合物を含むことを特徴とする液体組成物。
【請求項8】
請求項7に記載の液体組成物であって、
前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つであることを特徴とする液体組成物。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか1項に記載の液体組成物であって、
前記液体組成物のpHが、7以上であることを特徴とする液体組成物。
【請求項10】
請求項6~8のいずれか1項に記載の液体組成物であって、
冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系の処理に用いられることを特徴とする液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水系において生物付着の抑制などを行うことができる水処理方法、およびその水処理方法などに用いられる液体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
冷却水などの工業用水システムや製紙工程などでの生物付着などを制御するための殺菌剤として、有機系スライムコントロール剤が用いられている。有機系スライムコントロール剤として、イソチアゾリン誘導体およびその塩が挙げられ、その中でも5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(以下、「5-CMI」と呼ぶ場合がある。)がよく用いられる。イソチアゾリン誘導体は殺菌性または殺真菌性特性を有していることが知られている(特許文献1,2参照)。
【0003】
イソチアゾリン誘導体は製剤化などのためにスラリー化すると保存安定性が悪く、保存中に凝集や析出を生じる場合があるため、製剤化や製品管理が困難で、製品を安定に供給しにくいという問題がある。さらにそれに伴って抗菌活性が低下することも問題となっていた。
【0004】
特に、イソチアゾリン誘導体の中でも5-CMIは特に熱に対して不安定であることから、40℃程度の温度でも1~2日程度で分解してしまう(特許文献3参照)。
【0005】
特に夏場や低緯度地域になると、屋外や締め切り空間などで製剤を保存すると高温になることがよくある。水処理設備でも30℃以上での運転になることは少なくなく、そのような現場で製剤の有効成分の分解が起きてしまうと、菌発生が抑制できなくなり、スライムや悪臭の発生に繋がるため、有効成分が高温でも長期的に安定することが求められる。
【0006】
特許文献4には、保存安定性を向上するための微生物防除剤として、イソチアゾロン化合物、2-ブロム-2-ニトロプロパン-1,3-ジオールおよびグルコン酸またはその塩を含有する微生物防除剤が提案されている。しかし、この組成物も、その保存安定性はなお十分ではない。
【0007】
その他にも、保存安定性を改善する長期間安定なスライムコントロール剤として、2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンが提案されている(特許文献5参照)が、殺菌力自体が弱いために、効果を発揮させるために多量の薬剤の添加が必要となるという問題が生じる。
【0008】
以上のことから、イソチアゾリン誘導体を用いて20℃以上の温度条件、好ましくは30℃以上の高温条件において持続的に生物付着の抑制を行うことができる水処理方法、およびその水処理方法などに用いられる液体組成物が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第19620135号明細書
【特許文献2】米国特許第4,105,431号明細書
【特許文献3】特許第2985714号公報
【特許文献4】特開平5-201809号公報
【特許文献5】特開2002-193712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、イソチアゾリン誘導体を用いて20℃以上の温度条件において持続的に生物付着の抑制を行うことができる水処理方法、およびその水処理方法などに用いられる液体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いて水系の処理を行う水処理方法であって、前記水系の水温が、20℃以上である、水処理方法である。
【化1】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0012】
前記水処理方法において、前記水系に有機化合物が共存することが好ましい。
【0013】
前記水処理方法において、前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0014】
前記水処理方法において、前記水系のpHが、7以上であることが好ましい。
【0015】
前記水処理方法において、前記水系が、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系であることが好ましい。
【0016】
本発明は、下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を含む液体組成物であって、前記液体組成物が、水温20℃以上で用いられる、液体組成物である。
【化2】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0017】
前記液体組成物において、さらに有機化合物を含むことが好ましい。
【0018】
前記液体組成物において、前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つであることが好ましい。
【0019】
前記液体組成物において、前記液体組成物のpHが、7以上であることが好ましい。
【0020】
前記液体組成物において、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系の処理に用いられることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって、イソチアゾリン誘導体を用いて20℃以上の温度条件において持続的に生物付着の抑制を行うことができる水処理方法、およびその水処理方法などに用いられる液体組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施例1、比較例1における有効成分残存率(%)を示すグラフである。
図2】実施例6における殺菌試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
【0024】
<水処理方法>
本実施形態に係る水処理方法は、下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いて水系の処理を行う水処理方法であって、水系の水温が20℃以上である方法である。例えば、下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を含む液体組成物を水系に添加すればよい。
【化3】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0025】
本発明者は、スライムコントロール剤としてイソチアゾリノン誘導体について検討したところ、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体が5-CMIよりも殺菌力が高く、20℃以上の温度条件において持続的に生物付着抑制効果を発揮することができることを見出した。20℃以上の温度条件において、スライムコントロール剤として4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いることによって、生物付着抑制効果の持続性を維持することできる。
【0026】
上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体(以下、「一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体」を単に「4-ブロモイソチアゾリノン誘導体」と呼ぶ場合がある。)においてRで表される炭素数1~12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、シクロブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-エチルプロピル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、1,1-ジメチルブチル基、2,2-ジメチルブチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、シクロヘプチル基、n-オクチル基、シクロオクチル基、n-ノニル基、シクロノニル基、n-デシル基、シクロデシル基、n-ウンデシル基、シクロウンデシル基、n-ドデシル基、シクロドデシル基などの、直鎖状、分岐鎖状または環状の炭素数1~12のアルキル基が挙げられる。収率が良い点で、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0027】
水系における4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の量は、例えば、処理する水の量に対して1~1000mg/Lの範囲とすればよく、10~100mg/Lの範囲とすることが好ましい。4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の量が処理する水の量に対して1mg/L未満であると、生物付着抑制効果が得られにくい場合があり、1000mg/Lを超えると、薬品使用量が多くなる場合がある。
【0028】
本発明者らは、従来の5-CMIを用いたイソチアゾリノン系製剤は有機化合物と共存すると安定性が5-CMI単体よりも低くなることを見出した。例えば冷却塔向けの場合、5-CMIはスケール分散剤や金属防食剤などと併用されることが多いが、そのような他の剤と一剤化したり希釈することによって高温での5-CMIの安定性が下がることがあった。しかし、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体は、水系に有機化合物が共存する場合に、4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性の優位さが顕著となることを見出した。
【0029】
水系に共存する有機化合物の量は、例えば、アニオン性ポリマーやホスホン酸化合物の場合、処理する水の量に対して1~1000mg/Lの範囲である。共存する有機化合物の量が1mg/L未満であると、スケール分散性能が得られにくい場合があり、1000mg/Lを超えると、薬品使用量が多くなり、スケール分散剤としての費用対効果が薄くなる場合がある。エステル油、パラフィン、エーテル、およびアルコールに関しては、例えば処理する水の量に対して上限は50質量%であり、50質量%を超えると、4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性が悪くなる場合がある。
【0030】
有機化合物としては、特に制限はないが、例えば、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、エステル油、パラフィン、エーテル、およびアルコールなどが挙げられ、安定性などの点から、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうち少なくとも1つであることが好ましい。アニオン性ポリマーの中でも、安定性などの点から、カルボキシル基を有するポリアクリル酸が好ましい。有機化合物としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトニトリル、アセトンなどの有機溶媒であってもよい。
【0031】
アニオン性ポリマーとしては、主にスケール分散剤として機能するアニオン性ポリマーが挙げられ、例えば、下記式(3)の単量体単位を含む重合体、下記式(4)の単量体単位を含む重合体、下記式(3)の単量体単位と式(5)の単量体単位とを含む二元共重合体、下記式(3)の単量体単位と式(5)の単量体単位と式(6)の単量体単位とを含む三元共重合体などのカルボキシル基を有するアニオン性ポリマーが挙げられる。
【化4】
(3)
(式(3)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化5】
(4)
(式(4)中、RとRはそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子、1価もしくは2価の金属原子、アンモニウム基または有機アンモニウム基を表す。)
【化6】
(5)
(式(5)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、Xは炭素数1~10のアルキルスルホン酸基もしくはその塩、または、炭素数6~10のアリールスルホン酸基もしくはその塩を表し、塩の場合は1価もしくは2価の金属塩、アンモニウム塩または有機アンモニウム塩である。)
【化7】
(6)
(式(6)中、Rは水素原子またはメチル基を表し、XとXはそれぞれ独立に水素原子または炭素数1~10のアルキル基を表すが、少なくとも一方が炭素数1~10のアルキル基である。)
【0032】
なお、式(3)~(5)における有機アンモニウム塩としては、例えば、炭素原子数が1~4のアルキル基またはヒドロキシアルキル基を有するアルキルアンモニウム基または(ヒドロキシ)アルキルアンモニウム基などが挙げられる。
【0033】
式(3)~(5)における1価もしくは2価の金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などが挙げられる。
【0034】
式(5)におけるXがアルキルスルホン酸基もしくはその塩である場合のアルキル基としては、炭素原子数が1~8のアルキル基が好ましい。Xがアリールスルホン酸基もしくはその塩である場合のアリール基としては、炭素原子数が6~10のアリール基またはアリールアルキル基が好ましい。
【0035】
式(6)におけるアルキル基としては、炭素原子数が1~8のアルキル基が好ましい。
【0036】
式(3)の単量体単位と式(5)の単量体単位とを含む二元共重合体における単量体単位の重量比率としては、1~99:99~1であることが好ましい。
【0037】
式(3)の単量体単位と式(5)の単量体単位と式(6)の単量体単位とを含む三元共重合体における単量体単位の重量比率としては、1~98:1~98:1~98であることが好ましい。
【0038】
アニオン性ポリマーの重量平均分子量は、例えば、200~100,000の範囲であり、1,000~30,000の範囲であることが好ましく、1,500~20,000の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が200未満であると、スケール抑制効果が低下する場合があり、100,000を超えると、粘性が高く取り扱いづらい場合がある。
【0039】
アニオン性ポリマーとしては、例えば、ポリマレイン酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、アクリル酸と2-ヒドロキシ-3-アリロキシプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸との共重合体、アクリル酸とイソプレンスルホン酸との共重合体、アクリル酸とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとの共重合体、アクリル酸とメタクリル酸2-ヒドロキシエチルとイソプロピレンスルホン酸の共重合体、アクリル酸と2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸と置換アクリルアミドの三元共重合体、およびマレイン酸とペンテンとの共重合体、ならびに前記アニオン性ポリマーのアルカリ金属塩および前記アニオン性ポリマーのアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる重合体の少なくとも1種の重合体などが挙げられる。
【0040】
ホスホン酸化合物としては、主にスケール分散剤として機能するホスホン酸化合物が挙げられ、例えば、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、ヒドロキシホスホノ酢酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミン-N,N,N’,N’-テトラメチレンホスホン酸、またはこれらのホスホン酸のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物などが挙げられる。
【0041】
エステル油としては、特に制限はないが、例えば、モノエステル、ジエスエル、ポリオールエステル、リン酸エステル、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、テトラエチルヘキサン酸ペンタエリスリチルなどが挙げられる。
【0042】
パラフィンとしては、特に制限はないが、例えば、ノルマルパラフィン、イソパラフィン、水素化低粘度パラフィン(CAS番号:64742-55-8)、水素化中粘度パラフィンなどが挙げられる。
【0043】
エーテルとしては、特に制限はないが、例えば、アルキルエーテル、フェニルエーテル、ジメチルエーテル、エチルメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレンオキシド、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
【0044】
アルコールとしては、特に制限はないが、例えば、エタノール、イソプロパノール、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、エチレングリコールモノフェニルエーテルなどのモノアルコールの他に、多価アルコールが挙げられる。安定性などの点から、多価アルコールが好ましい。
【0045】
多価アルコールは、水酸基数が2以上、炭素数が2以上のアルコールである。多価アルコールとしては、例えば、グリセリン、カプリリルグリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、エチルヘキシルグリセリン、プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、およびトリエチレングリコールなどが挙げられ、安定性などの点から、水酸基数が2~3の範囲、炭素数が3~10の範囲である多価アルコールが好ましい。
【0046】
4-ブロモイソチアゾリノン誘導体は高温下でも安定であり、水系の水温が20℃以上、好ましくは20℃以上70℃以下、より好ましくは30℃以上70℃以下、さらに好ましくは40℃以上70℃以下の範囲であるときにより効果的である。水系の水温が30℃未満の場合にはpH10以上でも4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性が認められ、水系の水温が50℃であればpH8以上で特に安定性が認められる。実使用温度も70℃以下であることが考えられ、水系の水温が70℃を超えると、4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性が低下する場合がある。
【0047】
水系のpHは、7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。水系のpHが7未満であると、5-CMIなどに対する4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性の優位性が小さくなる場合がある。アルカリ環境になるほど5-CMIなどに対する4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性の優位性が大きくなることから、水系のpHの上限には特に制限はないが、例えば、pH14以下である。
【0048】
水系のpH調整には、所定のpHとなるように調整できればよく、特に制限はないが、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの酸や、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリなどのpH調整剤を用いればよい。
【0049】
本実施形態に係る水処理方法の対象となる水系としては、特に制限はないが、例えば、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、集じん水系、塗料、スクラバー水系、クーラント水系などが挙げられる。
【0050】
本実施形態に係る水処理方法において、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体、上記有機化合物、pH調整剤の他に、マレイン酸系ポリマーなどのスケール分散剤や、重金属やリン酸塩やアゾール化合物などの防食剤、リチウム塩や蛍光物質などのトレーサーなどの他の剤を用いてもよい。
【0051】
<液体組成物>
本実施形態に係る液体組成物は、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を含む組成物であって、液体組成物が水温20℃以上で用いられる組成物である。
【0052】
本発明者は、スライムコントロール剤としてイソチアゾリノン誘導体について検討したところ、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体が5-CMIよりも殺菌力が高く、20℃以上の温度条件において殺菌効果を発揮することができることを見出した。スライムコントロール剤として4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いることによって、組成物の保存安定性が向上し、20℃以上の温度条件の水系において組成物を用いることができる。
【0053】
液体組成物は、例えば、水等の溶媒を含む。液体組成物の総質量に対して、4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の固形分濃度は、例えば、0.01~20質量%の範囲であり、0.1~5質量%の範囲であることが好ましい。液体組成物中の4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の固形分濃度が0.01質量%未満であると、生物付着の抑制効果が小さくなる場合があり、20質量%を超えると、保存安定性の低下や処理水にTOC成分が含まれるなどの環境負荷を与える場合がある。
【0054】
液体組成物は、さらに上記有機化合物を含んでもよい。有機化合物をさらに含むことによって、組成物の安定性がより向上する。
【0055】
液体組成物の総質量に対して、有機化合物の固形分濃度は、例えば、0.1~50質量%の範囲であり、1~50質量%の範囲であることが好ましい。液体組成物中の有機化合物の含有量が0.1質量%未満であると、有機化合物を含む本来の目的を得るには不十分である場合があり、50質量%を超えると、粘度が高く取り扱いづらい場合がある。
【0056】
液体組成物のpHは7以上であることが好ましく、8以上であることがより好ましい。組成物のpHが7未満であると、5-CMIなどに対する4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性の優位性が小さくなる場合がある。アルカリ環境になるほど5-CMIなどに対する4-ブロモイソチアゾリノン誘導体の安定性の優位性が大きくなることから、組成物のpHの上限には特に制限はないが、例えば、pH14以下である。
【0057】
組成物のpH調整には、所定のpHとなるように調整できればよく、特に制限はないが、例えば塩酸、硫酸、硝酸などの酸や、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリなどのpH調整剤を用いればよい。
【0058】
液体組成物は、上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体、上記有機化合物、pH調整剤の他に、マレイン酸系ポリマーなどのスケール分散剤や、重金属やリン酸塩やアゾール化合物などの防食剤、リチウム塩や蛍光物質などのトレーサー成分などの他の成分を含んでもよい。
【0059】
本実施形態に係る液体組成物は、冷却水などの工業用水システムの水処理や、生物付着汚染の進んだ配管洗浄などの水系における生物付着の抑制などに用いることができる。本実施形態に係る液体組成物は、熱交換器を有する水系や、水温が20℃以上、好ましくは20℃以上70℃以下、より好ましくは30℃以上70℃以下、さらに好ましくは40℃以上70℃以下の範囲の水系で好適に用いることができる。
【0060】
例えば、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系などの水系において、少量の薬剤を用いてスライムに寄与する障害を効果的に抑制することができ、保存安定性や水中での安定性が高い。また、液体組成物の用途としては、例えば抗菌防腐効果を付与する用途として用いることもでき、特に制限はないが、例えば、化粧品、外用剤組成物、例えば、シャンプー、コンディショナ、洗顔料、クレンジング、ローション、クリーム、入浴剤、ハンドソープなどが挙げられる。また、家庭用品、例えば、バス用、トイレ用、キッチン用の洗剤などが挙げられる。さらに、日用消耗品、例えば、洗濯剤、床用、壁用、窓用、家具用などの住宅用洗剤などが挙げられ、洗剤に限らず、洗濯すすぎ水のような水性システム、また、ペット用シャンプーなどが挙げられる。
【0061】
上記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体は、例えば、式(2)
【化8】
(式中、Rは、式(1)と同じである。)で示されるイソチアゾリノン化合物またはその化学的に許容される塩を、水溶媒中または水溶媒と有機溶媒との混合溶媒中で臭素化剤を用いて臭素化することにより得ることができる。
【0062】
イソチアゾリノン化合物(2)の化学的に許容される塩としては、特に制限されないが、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、硫酸塩などが挙げられる。入手が容易である点で、塩酸塩が好ましい。
【0063】
臭素化に用いる有機溶媒としては、例えば、クロロホルム、ジクロロメタン、四塩化炭素などのハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、またはトルエン、キシレン、メシチレン、クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼンなどの芳香族系溶媒などが挙げられる。収率が良い点で、芳香族系溶媒を用いることが好ましく、クロロベンゼンまたはo-ジクロロベンゼンを用いることがより好ましい。
【0064】
水の量は、例えば、原料に対する重量比で、0.1から10の範囲とすればよい。臭素化反応を水と有機溶媒との混合溶媒中で実施する場合、水と有機溶媒との混合比は特に制限はないが、例えば、容量比で、水:有機溶媒=1:10から10:1の範囲から適宜選ばれた混合比で実施すればよい。
【0065】
臭素化反応で使用する臭素化剤としては、臭素、臭素-1,4-ジオキサンコンプレックス、N-ブロモスクシンイミド(以下、NBSと表記することもある。)、1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントイン(以下、DBHと表記することもある。)、トリブロモイソシアヌル酸、ジブロモイソシアヌル酸(以下、DBIということもある)、ブロモイソシアヌル酸一ナトリウム、三臭化テトラブチルアンモニウム、ブロモトリクロロメタン、1,2-ジブロモ-1,1,2,2-テトラクロロエタン、四臭化炭素、トリメチルフェニルアンモニウムトリブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド、テトラプロピルアンモニウムノナブロミド、ピリジニウムブロミドペルブロミド、ブロモクロム酸ピリジニウム、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムトリブロミド、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン三臭化水素塩、N-ブロモフタルイミド、N-ブロモサッカリン、N-ブロモアセトアミド、三臭化ホウ素、三臭化リン、ブロモジメチルスルホニウムブロミド、5,5-ジブロモメルドラム酸、2,4,4,6-テトラブロモ-2,5-シクロヘキサジエノン、ビス(2,4,6-トリメチルピリジン)ブロモニウムヘキサフルオロホスファート、トリメチルシリルブロミド、スルフリルブロミド、臭化水素などが挙げられる。入手が容易であり、収率が良い点で、臭素、N-ブロモスクシンイミドまたは1,3-ジブロモ-5,5-ジメチルヒダントインが好ましく、臭素がより好ましい。
【0066】
臭素化剤の使用量は、原料であるイソチアゾリノン化合物(2)またはその化学的に許容される塩の量に対して例えば0.5から2モル当量とすればよく、選択性および収率が良い点で0.8から1.5モル当量であることが好ましい。
【0067】
イソチアゾリノン化合物(2)またはその化学的に許容される塩に臭素化剤と接触させる方法に特に制限はなく、例えば、水溶媒中または水溶媒と有機溶媒との混合溶媒中でイソチアゾリノン化合物(2)またはその化学的に許容される塩に臭素化剤を添加して、メカニカルスターラーなどの撹拌装置を使用して混合すればよい。
【0068】
臭素化反応は、0℃から溶媒還流温度の範囲から適宜選ばれた反応温度で実施することができるが、選択性や収率が良い点で、0℃から80℃の範囲から選ばれる反応温度で実施することが好ましい。反応時間は、例えば、1から48時間とすればよい。
【0069】
臭素化反応終了後に、抽出、濃縮、再結晶、スラリー洗浄、ろ過などの一般的な後処理操作を行ってもよい。
【0070】
本明細書は、以下の実施形態を含む。
[1]下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を用いて水系の処理を行う水処理方法であって、
前記水系の水温が、20℃以上である、水処理方法。
【化9】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0071】
[2][1]に記載の水処理方法であって、
前記水系に有機化合物が共存する、水処理方法。
【0072】
[3][2]に記載の水処理方法であって、
前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つである、水処理方法。
【0073】
[4][1]~[3]のいずれか1つに記載の水処理方法であって、
前記水系のpHが、7以上である、水処理方法。
【0074】
[5][1]~[4]のいずれか1つに記載の水処理方法であって、
前記水系が、冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系である、水処理方法。
【0075】
[6]下記一般式(1)で表される4-ブロモイソチアゾリノン誘導体を含む液体組成物であって、
前記液体組成物が、水温20℃以上で用いられる、液体組成物。
【化10】
(式中、Rは、水素原子または炭素数1~12のアルキル基を表す。)
【0076】
[7][6]に記載の液体組成物であって、
さらに有機化合物を含む、液体組成物。
【0077】
[8][7]に記載の液体組成物であって、
前記有機化合物は、アニオン性ポリマー、ホスホン酸化合物、およびアルコールのうちの少なくとも1つである、液体組成物。
【0078】
[9][6]~[8]のいずれか1つに記載の液体組成物であって、
前記液体組成物のpHが、7以上である、液体組成物。
【0079】
[10][6]~[9]のいずれか1つに記載の液体組成物であって、
冷却水系、蓄熱水系、紙パルプ工程水系、温泉、集じん水系、塗料、スクラバー水系、またはクーラント水系の処理に用いられる、液体組成物。
【実施例0080】
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0081】
[4-ブロモ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オンの調製]
2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(50重量%水溶液,2.00g,8.68mmol)に水(4.40g)を加えた後、臭素(0.530mL,10.4mmol)を10分間かけて滴下した。この混合溶液を室温(18~28℃)で1.5時間撹拌した。反応溶液に20重量%炭酸ナトリウム水溶液を加えて中和した後、酢酸エチル(10mL×3回)で抽出し、各有機層を飽和食塩水(各1mL)で洗浄した。合一した有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下に濃縮することにより、目的物の粗生成物(1.68g)を得た。
【0082】
得られた粗生成物に酢酸エチル(約2mL)を加え、加温して溶解させた後、室温まで冷却し、析出した固体をろ別することにより、4-ブロモ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(一般式(1)においてR=CH、CAS No.26529-99-7、「4-BMI」と呼ぶ)の白色固体(1.44g,収率:86%,純度:99.9%)を得た。H-NMR(400MHz,CDCl):δ8.07(s,1H),3.42(s,3H)。
【0083】
H-NMRの測定には、Bruker ASCEND HD(400MHz;BRUKER製)を用いた。H-NMRは、重クロロホルム(CDCl)を測定溶媒とし、内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を用いて測定した。化合物の純度は測定したH-NMRの積分比から算出した。また、試薬類は市販品などを用いた。
【0084】
<実施例1、比較例1>
[有効成分の安定性試験]
水系における4-BMI(実施例1)と5-クロロ-2-メチル-4-イソチアゾリン-3-オン(5-CMI)(比較例1)の安定性の比較を行った。純水に下記濃度で4-BMIまたは5-CMIを添加し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5に調整した後、20℃、30℃、40℃または50℃で所定時間後の4-BMI残存率または5-CMI残存率、すなわち有効成分残存率(%)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、東ソー製TSKgelカラム ODS-80Ts)で確認した。結果を表1、図1に示す。
【0085】
(試験条件)
・有効成分濃度:5mg/L
・pH:7
・試験温度:20℃、30℃、40℃、50℃
・試験時間:168時間
・試験水:純水
【0086】
【表1】
【0087】
表1、図1に示す通り、4-BMIは20℃、30℃でも安定性が高いことがわかった。加速条件の40℃、50℃においても、5-CMIの有効成分残存率が低下しているにも拘わらず、4-BMIは高い有効成分残存率であった。
【0088】
<実施例2、比較例2>
有機化合物としてアニオン性ポリマーを混合した系における4-BMI(実施例2)と5-CMI(比較例2)の安定性の比較を行った。純水に下記濃度で4-BMIまたは5-CMIと表2に示すアニオン性ポリマーを添加した後、50℃で所定時間後の有効成分残存率(%)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、東ソー製TSKgelカラム ODS-80Ts)で確認した。また、50℃、3日後、14日間後に、目視にて外観を観察し、下記基準で評価した。結果を表2に示す。
【0089】
(試験条件)
・4-BMIまたは5-CMI:1質量%
・アニオン性ポリマー:「AA/AMPS/t-BAM」(アクリル酸/2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸/t-ブチルアクリルアミドの三元共重合体、重量平均分子量5000)、「PAA」(アクリル酸単独重合体、重量平均分子量2000)
・pH:3.2
・試験温度:50℃
・試験期間:3、14日間
・試験水:純水
【0090】
(評価基準)
〇:溶け残りなし
×:溶け残りあり
【0091】
【表2】
【0092】
表2に示す通り、アニオン性ポリマーを添加した場合、5-CMIは著しく有効成分の量が低下した。一方、4-BMIは外観においても有効成分残存率においても長期的に安定であることがいえる。
【0093】
<実施例3、比較例3>
弱アルカリ条件下の水系における4-BMI(実施例3)と5-CMI(比較例3)の安定性の比較を行った。純水に下記濃度で4-BMIまたは5-CMIを添加した後、50℃で所定時間後の有効成分残存率(%)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、東ソー製TSKgelカラム ODS-80Ts)で確認した。結果を表3に示す。
【0094】
(試験条件)
・4-BMIまたは5-CMI:50mg/L
・pH:8、9、10
・試験温度:50℃
・試験期間:3週間
・試験水:純水
【0095】
【表3】
【0096】
表3に示す通り、5-CMIと比較すると、4-BMIは弱アルカリ条件下でも、高温下において安定であると言える。4-BMIは、pH8、pH9では90%以上の有効成分が残っており、pH10でも5-CMIに比べて減少率が低いことがわかる。
【0097】
<実施例4、比較例4>
有機化合物として多価アルコールを混合した系における4-BMI(実施例4)と5-CMI(比較例4)の安定性の比較を行った。純水に下記濃度で4-BMIまたは5-CMIと多価アルコールとして1,2-オクタンジオールを添加した後、50℃で所定時間後の有効成分残存率(%)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、東ソー製TSKgelカラム ODS-80Ts)で確認した。結果を表4に示す。
【0098】
(試験条件)
・多価アルコール:1,2-オクタンジオール100mg/L
・4-BMIまたは5-CMI:5mg/L
・pH:6.5
・試験温度:50℃
・試験期間:168時間
・試験水:純水
【0099】
【表4】
【0100】
表4に示す通り、有機物を含む系において5-CMIの高温下での安定性が著しく低下しており、4-BMIの優位さが大きくなる。
【0101】
<実施例5、比較例5>
高濃度の水系における4-BMI(実施例5)と5-CMI(比較例5)の安定性の比較を行った。純水に下記濃度で4-BMIまたは5-CMIを添加した後、50℃で所定時間後の有効成分残存率(%)を高速液体クロマトグラフィ(HPLC)(日立ハイテクサイエンス社製、東ソー製TSKgelカラム ODS-80Ts)で確認した。また、50℃、2週間後に、目視にて外観を観察した。結果を表5に示す。
【0102】
(試験条件)
・4-BMIまたは5-CMI:2質量%
・pH:2
・試験温度:50℃
・試験期間:2週間
・試験水:純水
【0103】
【表5】
【0104】
表5に示す通り、4-BMIは高濃度でも、外観においても有効成分残存率においても長期的に安定であることがいえる。
【0105】
<実施例6>
下記試験条件で、4-BMIの殺菌性能を確認した。試験水1Lに、所定濃度の薬品を投入し、所定時間撹拌後の菌数(CFU/mL)を測定した。菌数は、菌数測定キット(三愛石油製、バイオチェッカーTTC)を使用して測定した。総菌数[log(CFU/mL)]の測定結果を図2に示す。
【0106】
・試験水:相模原井水を次亜塩素酸によって殺菌した後、砂ろ過および活性炭処理し、ブイヨンを添加し、30℃で3日間培養した、菌数が10の7乗の菌液
・薬品:4-BMI
・薬品濃度:5、10mg/L as solid
・試験温度:30℃
・サンプリング時間:5時間、24時間、48時間
【0107】
図2に示す通り、4-BMIはわずか5時間で殺菌性能を示す即効性だけでなく、48時間後である長時間後も高い殺菌性能を示すことから、4-BMIは安定かつ高い殺菌性能を示すと言える。
【0108】
このように、実施例によって、イソチアゾリン誘導体を用いて20℃以上の温度条件において持続的に生物付着の抑制を行うことができた。
図1
図2