(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137306
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】表皮一体成形用の表皮材
(51)【国際特許分類】
D06N 7/00 20060101AFI20240927BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20240927BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
D06N7/00
B32B5/24 101
B32B27/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048777
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅村 愛
(72)【発明者】
【氏名】田中 良治
【テーマコード(参考)】
4F055
4F100
【Fターム(参考)】
4F055AA21
4F055BA10
4F055BA12
4F055CA05
4F055EA04
4F055EA23
4F055FA15
4F055GA31
4F100AJ10A
4F100AK51B
4F100AT00
4F100BA03
4F100DG06A
4F100DG11A
4F100DG11C
4F100DJ02B
4F100GB33
4F100JA13B
4F100JK05B
4F100JK07B
(57)【要約】
【課題】注入原料の浸透を抑制可能であり、風合いを損なわず、外観が良好な表皮一体成形用の表皮材を提供することを課題とする。
【解決手段】表面側から、表面材、軟質ポリウレタンフォームシートが積層されてなるものであって、軟質ポリウレタンフォームシートの反発弾性が40%以上であり、圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下である表皮材。軟質ポリウレタンフォームシートの密度は、40kg/m
3以上であることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表皮一体成形用の表皮材であって、
表面側から、表面材、軟質ポリウレタンフォームシートが積層されてなり、
軟質ポリウレタンフォームシートの反発弾性が40%以上であり、圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下であることを特徴とする表皮一体成形用の表皮材。
【請求項2】
前記軟質ポリウレタンフォームシートの密度が40kg/m3以上であることを特徴とする請求項1に記載の表皮一体成形用の表皮材。
【請求項3】
前記軟質ポリウレタンフォームシートの裏面に裏布が備えられることを特徴とする請求項1または2に記載の表皮一体成形用の表皮材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮一体成形用の表皮材に関するものである。表皮一体成形は、表皮材を予め金型にセットしておき、その中に原料を注入して表皮材と注入原料を一体化するもので、曲面に合わせた形状に成形可能であり、上質なデザインを表現することができる。
【0002】
インストルメントパネル、ドアトリム、ヘッドレスト、アームレスト、コンソールボックス等に代表される車両の内装材は、車室側の見映えを向上させるために、表皮材が用いられている。
表皮材は触感や風合いの観点から、表面材の裏面に軟質ポリウレタンフォームシートを積層してなるものが一般的であるが、表皮一体成形においては、注入原料の熱や含浸によって軟質ポリウレタンフォームシートにへたりや硬くなってしまう不具合が発生し、表皮材の風合いが損なわれたり、あばた状の外観になったりする問題があった。
特に、注入原料が高温である場合、上記の問題が顕著であった。
【0003】
表皮材の裏面側の溶融樹脂の射出位置に対応した部位に、保護シートをインサートして表皮一体成形体を得る方法が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の方法によれば、保護シートによって、射出される溶融樹脂から表皮材を保護することが可能であるが、一体成形の際に保護シートをセットする必要があるため工程が増えてコストアップになる。また、保護シートの位置ずれによる不良の発生や、保護シートがセットされた部位のみ表皮材の質感が異なったり、表皮材の伸びが悪くなったりする不具合があった。
そのため、表皮材自体の改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、注入原料が高温・高圧であっても風合いを損なわず、外観が良好な表皮一体成形用の表皮材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討し、注入原料の熱や含浸によって、軟質ポリウレタンフォームシートにへたりや硬くなってしまう不具合を抑制し、風合いを損なわず、外観が良好な表皮一体成形用の表皮材を発明した。
【0007】
本発明は以下を要旨とする。
表皮一体成形用の表皮材であって、表面側から、表面材、軟質ポリウレタンフォームシートが積層されてなり、軟質ポリウレタンフォームシートの反発弾性が40%以上であり、圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下である表皮一体成形用の表皮材。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表皮一体成形用の表皮材は、注入原料の熱や含浸によって、軟質ポリウレタンフォームシートのへたりや硬くなってしまう不具合を抑制することが可能であるため、風合いを損なわず、外観が良好な表皮一体成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の表皮一体成形用の表皮材の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図2】本発明の表皮一体成形用の表皮材の一実施形態を示す断面模式図である。
【
図3】表皮一体成形体の一例である車両用ドアトリムの概略斜視図である。
【
図4】車両用ドアトリムの成形工程の概略斜視図である。
【
図5】表皮一体成形体の一例である車両用ヘッドレストの概略斜視図である。
【
図6】車両用ヘッドレストの成形工程の概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の表皮一体成形用の表皮材10について、詳細に説明する。
【0011】
ドアトリム20を成形するには、
図4に示すようなドアトリム成形装置30を用いる。ドアトリム成形装置30は、ドアトリム20の表側の上型31と、裏側の下型32とから構成される。上型31はドアトリム20の表面形状と、下型32はドアトリム20の裏面形状とそれぞれ対応するように形成されている。そして、上型31および下型32を閉じたときにドアトリム20の外形と同形状の空間が形成されるようになっている。下型32には成形時に表皮材10を係止するためのクランプ33が備えられている。
さらに、下型32には、固化(硬化)後にドアトリム本体となる溶融樹脂を射出するためのゲート34を有しており、溶融樹脂はゲート34から射出される。
【0012】
ドアトリム20の本体となる溶融樹脂が射出されると、ゲート34の近傍の表皮材10には、高圧で高温の溶融樹脂が接触する。そのため、表皮材10を形成する軟質ポリウレタンフォームシート12内に溶融樹脂が浸透し冷却されると、硬くなって風合いを損ねる懸念がある。また、溶融樹脂が浸透しなくとも、軟質ポリウレタンフォームシート12が溶融樹脂の熱と射出圧とでへたってしまい、表面があばた状となり見映えが悪くなる懸念があった。
【0013】
ヘッドレスト40を成形するためには、ヘッドレスト40の外形に対応するように縫製され、その内部に補強材や支柱などのインサート部品41が装着され、表皮材10の内部空間に液状の発泡樹脂が注入されて、表皮材10と発泡硬化した発泡樹脂とが一体になったヘッドレスト40が完成する。
ヘッドレスト40もドアトリム20と同様に、表皮材10を形成する軟質ポリウレタンフォームシート12内に液状の発泡樹脂が浸透し冷却されると、硬くなって風合いを損ねる懸念がある。また、液状の発泡樹脂が浸透しなくとも、軟質ポリウレタンフォームシート12が液状の発泡樹脂の熱および注入圧でへたってしまい、表面があばた状となり見映えが悪くなる懸念があった。
【0014】
本発明の表皮一体成形用の表皮材10は、
図1に示すように、表面材11、軟質ポリウレタンフォームシート12が積層されてなる。
【0015】
〔表面材〕
表面材11しては、表皮一体成形体の風合いや触感などを考慮して選定されるが、例えば、繊維布帛や合成皮革、天然皮革などが挙げられる。
繊維布帛としては、編布、織布、不織布など、繊維を利用した布材であればいずれのものであってもよい。繊維布帛を形成する繊維は、特に限定されず、合成繊維、天然繊維などをあげることができる。合成繊維の材質としては、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ナイロンなどを例示することができるがこれに限定されない。天然繊維の材質としては、綿、麻、レーヨンなどを例示することができる。
合成皮革としては、湿式法や乾式法等公知の方法で製造された合成皮革を用いることができる。また、合成皮革は、三次元極細不織布に樹脂を絡ませてなるいわゆる人工皮革であってもよい。
天然皮革としては、牛革、豚革、馬革、羊革、山羊革等が挙げられる。
【0016】
表面材11の厚みは特に限定されないが、0.5mm以上3.0mm以下であることが好ましい。表皮材11の厚みが0.5mm未満の場合、表皮材10の機械的強度が不十分となるおそれがある。一方で、表面材11の厚みが3.0mmを超えると、嵩高くなって表皮材10を立体形状に縫製しにくくなる傾向にある。
【0017】
〔軟質ポリウレタンフォームシート〕
軟質ポリウレタンフォームシート12は、表面材11の裏面側に積層され、表皮材10および表皮材10を用いて成形される表皮一体成形体にクッション性を付与するものである。
【0018】
軟質ポリウレタンフォームシート12は反発弾性が40%以上であり、圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下である。反発弾性が40%以上であって圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下であることで、射出される溶融樹脂が高温・高圧で当接しても、溶融樹脂の軟質ポリウレタンフォームシート12内への含浸を抑制することができるとともに、軟質ポリウレタンフォームシート12がへたらないため、風合いを損ねることなく、表皮一体成形体の外観が良好となる。
ここで、反発弾性は、JIS K 6400-3に準拠して測定されるものである。反発弾性は、好ましくは50%以上である。
圧縮残留歪(75%、70%)はJIS K 6400-4に準拠して測定されるものであり、具体的には、70℃、50%RHの雰囲気で75%圧縮して24時間放置した後の、厚さの減少割合である。圧縮残留歪(75%、70℃)は5以下であることが好ましく、さらに好ましくは3以下である。
【0019】
軟質ポリウレタンフォームシート12は、ポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、発泡・硬化させてなるものである。
【0020】
ポリオールは、ポリオキシアルキレンポリオール、ビニル重合体含有ポリオキシアルキレンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリオキシアルキレンポリエステルブロック共重合体ポリオール等を挙げることができるが、ポリオキシアルキレンポリオールが主成分であることが好ましい。
【0021】
ポリオキシアルキレンポリオールとしては、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ソルビトール、ショ糖等の多価アルコールを開始剤としてプロピレンオキシドやエチレンオキシドを単独付加、あるいはプロピレンオキシドを主体としてアルキレンオキシドを付加させるアルキレンオキシド付加物;ビスフェノールAのような多価フェノール類のアルキレンオキシド付加物;リン酸、ポリリン酸(例えば、トリポリリン酸及びテトラポリリン酸)などの多価ヒドロキシ化合物、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、メチレンビスオルソクロロアニリン、4,4’-及び2,4’-ジフェニルメタンジアミン、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミンなどのポリアミン類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンなどのアルカノールアミン類にエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン、スチレンオキシドなどの1種又は2種以上を付加させて得られるポリエーテルポリオール類;またはポリテトラメチレンエーテルグリコール等を例示することができる。
【0022】
特に、官能基数が4以上であって、分子量が5000以上である高官能基高分子量ポリエーテルポリオールを用いると、反発弾性が40%以上であって、圧縮残留歪(75%、70℃)が10以下の軟質ポリウレタンフォームシート12が得られやすい。当該高官能基高分子量ポリエーテルポリオールは全ポリオールにおいて、5~50質量%含有されてなることが好ましい。5質量%未満であると、高官能基高分子量ポリエーテルポリオールを用いた効果が得られにくい。一方で、50質量%を超えると、フォームの性状が独立気泡にシフトするため、柔軟性が損なわれる傾向にある。
【0023】
ポリイソシアネートは、軟質ポリウレタンフォームの製造に通常使用される公知のポリイソシアネート化合物を用いることができる。具体的には、芳香族系、脂環族系、脂肪族系のポリイソシアネート、およびそれらを変性して得られる変性ポリイソシアネートの1種又は2種以上が、適宜選択されて使用される。
これらのポリイソシアネート化合物のなかでも、本発明にあっては、特に芳香族系のポリイソシアネートである2,4-トリレンジイソシアネート、或いは2,6-トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0024】
軟質ポリウレタンフォームシート12の密度は、40kg/m3以上であることが好ましい。密度が40kg/m3以上であると、より注入原料の含浸を抑制する効果が期待できる。なお、密度はJIS K 7222に準拠して測定される。
また、表皮一体成形体に柔らかな触感を付与するためには、軟質ポリウレタンフォームシート12の硬さは200N以下であることが好ましい。なお、硬さは、JIS K 6400に準じて測定される。
【0025】
軟質ポリウレタンフォームシート12の厚みは特に限定されないが、1.0mm以上5.0mm以下であることが好ましい。軟質ポリウレタンフォームシート12の厚みが1.0mm未満の場合、風合いが損なわれるおそれがある。一方で、軟質ポリウレタンフォームシート12の厚みが5.0mmを超えると、嵩高くなって表皮材10の曲面への追従性が損なわれる傾向にある。
【0026】
軟質ポリウレタンフォームシート12の裏面には、裏布13を設けてもよい(
図2参照)。特に、インストルメントパネルやドアトリム20の成形等、溶融温度が高い注入樹脂が用いられてなる成形体においては、裏布13を設けることで、成形時に軟質ポリウレタンフォームシート12への負荷が軽減するため好ましいものである。
また、軟質ポリウレタンフォームシート12は、滑性が乏しいため、表皮材10の外形状を構成する際のミシン送りしにくいものであるが、裏布13を設けることで縫製性が良好になる効果も奏する。
裏布は、織物、編物、不織布等の繊維布帛を挙げることができるが、不織布が好適である。
不織布を構成する繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリアミド繊維等が挙げられるが、ポリエステル系繊維が好ましい。
【0027】
不織布の目付としては、40~180g/m2であることが好ましい。40g/m2未満であると、裏布を設けた効果が得られにくい。180g/m2を超えると、表皮材にシワが発生しやすくなる傾向にある。
不織布の製造方法としては、スパンレース法、スパンボンド法、メルトブロー法等、公知の方法を採用することができる。
【0028】
表面材11と軟質ポリウレタンフォームシート12を積層、または表面材11と軟質ポリウレタンフォームシート12と裏布13を積層して、表皮材10を形成する方法としては、接着剤やホットメルトフィルムによって貼り合わせる方法、高周波ウェルダー法、フレームラミネート法などが挙げられるが、表面材11や軟質ポリウレタンフォームシート12の風合いを損ねることなく、乾燥工程が不要であり、接着速度が速く生産性に優れるため、フレームラミネート法が好適である。
【0029】
本発明の表皮材10を用いた表皮一体成形体について、ドアトリム20を例に挙げて説明する(
図3、
図4参照)。
表皮材10はドアトリム20の外形に対応する形状に裁断され、ドアトリム成形装置30の上型31と下型32が開いた状態で表皮材10を下型32のクランプ33にセットする。その後、上型31と下型32を閉じて、下型32のゲート34から溶融樹脂を射出し、反応・固化(硬化)させてドアトリム20を得る。樹脂としては、ポリエチレンやポリプロピレン等のオレフィン系樹脂が使用される。
このとき、特にゲート34付近の表皮材10においては、高温・高圧で溶融された樹脂が当接する。本発明の表皮材10は軟質ポリウレタンフォームシート12の反発弾性が高く、圧縮残留歪が小さいため、表皮材10に高温・高圧で溶融樹脂が当接しても、軟質ポリウレタンフォームシート12への樹脂の含浸および軟質ポリウレタンフォームシート12のへたりを抑制できる。そのため、風合いを損なわず、外観が良好な表皮一体成形体が得られるのである。
【0030】
次に、表皮材10を用いた表皮一体成形体についてヘッドレスト40を例に挙げて説明する(
図5、
図6参照)。
図6に示すように、表皮材10はヘッドレスト40の外形に対応する形状に立体的に縫製され、その内部に補強材や支柱などのインサート部品41が装着されてヘッドレスト成形装置50の発泡型51に取り付けられ、これら装着されたインサート部品41と表皮材10の内部空間に液状の発泡樹脂が注入ノズル52から注入され、表皮材10と発泡した発泡樹脂とが一体となったヘッドレスト40となる。
このとき注入される液状の発泡樹脂は、表皮材10の裏面に当接するが、液状の発泡樹脂の表皮材10への浸透を抑制することができるため、表皮材10が硬くなって風合いを損ねることがない。
【0031】
以上、本発明の表皮一体成形体用の表皮材10について説明した。本発明は、インストルメントパネル、ドアトリム、ヘッドレスト、アームレスト、コンソールボックス等の車両の内装材用として好適に使用される。
【実施例0032】
以下に本発明を実施例に基づいて、詳細に説明する。本発明は、これら実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を逸脱しない範囲内で種々の応用が可能である。
【0033】
<材料>
・表面材 ポリエステル糸起毛トリコット編地 目付:275g/m2、厚み:0.8mm
・軟質ポリウレタンフォームシート1 厚み:3.5mm、反発弾性:54%、圧縮残留歪(75%、70%):2.3、硬さ:172N、密度:58kg/m3
・軟質ポリウレタンフォームシート2 厚み:3.5mm、反発弾性:54%、圧縮残留歪(75%、70%):7.2、硬さ:198N、密度:56kg/m3
・軟質ポリウレタンフォームシート3 厚み:3.5mm、反発弾性:31%、圧縮残留歪(75%、70%):7.1、硬さ:246N、密度:40kg/m3
・軟質ポリウレタンフォームシート4 厚み:3.5mm、反発弾性:25%、圧縮残留歪(75%、70%):12.0、硬さ:400N、密度:50kg/m3
・軟質ポリウレタンフォームシート5 厚み:3.5mm、反発弾性:52%、圧縮残留歪(75%、70%):12.0、硬さ:336N、密度:55kg/m3
・裏布 目付120g/m2のポリエステル不織布
軟質ポリウレタンフォームシート1~5の反発弾性は、JIS K 6400-3に準拠して測定し、圧縮残留歪(75%、70%)はJIS K 6400-4に準拠して測定し、密度はJIS K 7222に準拠して測定し、硬さは、JIS K 6400に準拠して測定した。
なお、軟質ポリウレタンフォームシート1は、官能基数5であって、分子量6700の高官能基高分子量ポリエーテルポリオールを全ポリオールに対して20質量%含有したフォーム原料から形成され、軟質ポリウレタンフォームシート2は、官能基数5であって、分子量6700の高官能基高分子量ポリエーテルポリオールを全ポリオールに対して5質量%含有したフォーム原料から形成されている。
【0034】
実施例1
表面材、軟質ポリウレタンフォームシート1をフレームラミネート法により積層して表皮材を得た。なお、軟質ポリウレタンフォームシートのフレームラミネート後の残厚は2.5mmであった。
【0035】
実施例2
表面材、軟質ポリウレタンフォームシート1(ただし厚みは3.0mm)、裏布をフレームラミネート法により積層して表皮材を得た。なお、軟質ポリウレタンフォームシートのフレームラミネート後の残厚は2.5mmであった。
【0036】
実施例3
軟質ポリウレタンフォームシート1を軟質ポリウレタンフォームシート2に変更した以外は、実施例2と同様にして表皮材を得た。
【0037】
比較例1
軟質ポリウレタンフォームシート1を軟質ポリウレタンフォームシート3に変更した以外は、実施例2と同様にして表皮材を得た。
【0038】
比較例2
軟質ポリウレタンフォームシート1を軟質ポリウレタンフォームシート4に変更した以外は、実施例2と同様にして表皮材を得た。
【0039】
比較例3
軟質ポリウレタンフォームシート1を軟質ポリウレタンフォームシート5に変更した以外は、実施例2と同様にして表皮材を得た。
【0040】
各実施例、比較例で得られた表皮材を用いて、以下の要領でドアトリムおよびヘッドレストを成形した。
<ドアトリム>
表皮材をドアトリムの外形に対応する形状に裁断し、射出成形機の上型と下型が開いた状態で表皮材を下型のクランプにセットする。その後、上型と下型を閉じて、下型のゲートから溶融樹脂(樹脂温度220℃のポリプロピレン樹脂)を射出し、反応・固化(硬化)させることで、表皮材と一体化したドアトリムを得た。
<ヘッドレスト>
表皮材をヘッドレストの外形に対応する形状になるように裁断・縫製し、内部にインサート部品が装着されて成形装置の発泡型に取り付け、インサート部品と表皮材の内部空間に液状の発泡樹脂(ポリエーテルポリオール100質量部、トリレンジイソシアネート70質量部、水3.5質量部、シリコーンオイル1.0質量部、ジメチルメタノールアミン2.5質量部、トリエチレンジアミン1.0質量部からなる混合物)を注入し(注入時の樹脂温度90℃)、発泡硬化させることで、表皮材と一体化したヘッドレストを得た。
【0041】
得られたドアトリムおよびヘッドレストについて表面の外観および風合いを確認し、以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
【0042】
〔外観〕
以下の基準で評価した。
○・・・表皮材全体において、へたりがなく外観が良好である
△・・・射出口または注入口付近で表皮材のへたりが観察される
×・・・表皮材全体においてへたりが発生し、外観がよくない
【0043】
〔風合い〕
以下の基準で評価した。
○・・・表皮材全体において、硬さが均一で風合いが良好である
×・・・射出口または注入口付近の表皮材が硬く、風合いがよくない
【0044】
【0045】
上記の結果から、実施例1~3の表皮材は、注入原料によって軟質ポリウレタンフォームシートがへたったり硬くなったりする不具合を抑制できるため、風合いを損なうことなく、外観が良好である。そのため、表皮一体成形用の表皮材として好適であることがわかる。