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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137309
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】配電システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 1/00 20060101AFI20240927BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240927BHJP
   H02J 1/10 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H02J1/00 304D
H02J3/38 130
H02J1/10
H02J1/00 309A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048780
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山中 玄太郎
(72)【発明者】
【氏名】菅井 賢
(72)【発明者】
【氏名】森 純一
【テーマコード(参考)】
5G066
5G165
【Fターム(参考)】
5G066AA04
5G066CA07
5G066HB06
5G066JA03
5G165BB09
5G165DA01
5G165DA06
5G165DA07
5G165EA01
5G165EA03
5G165EA06
5G165GA09
5G165HA09
5G165LA01
5G165LA03
(57)【要約】
【課題】配電網における直流電力の需要の急激な増加にも安定して電力を供給できる配電システムを提供する。
【解決手段】配電システムは、交流電力系統2とAC回線4により接続されるAC-DC変換器6と、AC-DC変換器の出力側にDC配線10a,10b,10cにより接続されるDC-DC変換器8a,8b,8cと、DC-DC変換器8a,8b,8cの出力側にそれぞれ接続される配電網16a,16b,16cと、DC-DC変換器8a,8b,8cの入力側を接続するDC接続線12と、を有する送配電系統を備える。配電網16a,16b,16cは、AC系統を介することなくDC接続線12を介して直流電力のまま他の配電網16a,16b,16cとの間で電力融通を行う。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力系統が入力側に接続される少なくとも1つのAC-DC変換器と、
入力側に前記AC-DC変換器を、出力側に配電網を接続する少なくとも2つのDC-DC変換器と、
前記DC-DC変換器の入力側を接続するDC接続線と、
を有する送配電系統を備え、
前記DC接続線を介して前記配電網間で電力融通を行うことを特徴とする配電システム。
【請求項2】
前記DC接続線は、前記交流電力系統に複数の前記AC-DC変換器が接続されることにより複数の前記送配電系統を備える場合、複数の前記送配電系統に共有され、
前記DC接続線を介して異なる前記送配電系統に含まれる前記配電網間での電力融通を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の配電システム。
【請求項3】
前記DC-DC変換器それぞれに入力される電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段における測定値に応じて電力融通する電力量を制御する制御機構と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の配電システム。
【請求項4】
前記AC-DC変換器は、前記交流電力系統から3相6.6kV又は3相2.2kVの交流電圧を入力することを特徴とする請求項1に記載の配電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電システム、特に交流電力系統からの交流電力を直流電力に変換してから配電網に配電する配電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国内において、発電所で発電される電力は交流である。交流電力は、3相3線式の送電線により送電される際の送電ロスを減らすため、基幹的な長距離送電の区間はできるだけ高電圧で送電され、消費地に近い場所で何段かに分けて電圧が降圧される。現在、交流電力は、変圧が容易という点でも利用されている。
【0003】
ところで、 近年、太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部など自然界に常に存在する再生可能エネルギーの利用が推奨されている。太陽光発電等の発電システムで生成した電力は、電力会社に売電されて利用される場合がある。太陽光発電等の発電システムは、一般に直流電力を生成するので、既存の交流給配電システムでは、太陽光発電システムからの直流電力をDC/AC変換器でいったん交流電力に変換した後、既存のAC送電網にて送電する。このため、交流電力は、AC/DC変換器を用いて負荷側で直流電力に再度変換する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6747619号明細書
【特許文献2】特開2009-178025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、配電網において急激な需要の増加が発生したとする。この急激な需要の増加に対して、交流電力系統の単交流電源からの供給電力で対応しようとすると、交流電力系統の電源となる発電機、すなわち回転機械における位相角を増加させて対応することが必要になる。この場合、発電機が脱調し、交流電力系統が破綻することにより電力を安定して供給できなくなるおそれがある。従って、他の電源から電力融通を期待する。この場合、前述した太陽光発電等の発電システムからの余剰電力を利用することが期待できる。
【0006】
しかしながら、前述したように、発電システムからの直流電力を交流電力にいったん変換した後、交流電力系統を介して配電網に送電することになるが、回転機械により発電する場合と異なり、回転体の慣性モーメントが存在しないため、交流電力系統からの送信周波数が不安定化する場合がある。
【0007】
本発明は、配電網における直流電力の需要の急激な増加にも安定して電力を供給できる配電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るは、交流電力系統が入力側に接続される少なくとも1つのAC-DC変換器と、入力側に前記AC-DC変換器を、出力側に配電網を接続する少なくとも2つのDC-DC変換器と、前記DC-DC変換器の入力側を接続するDC接続線と、を有する送配電系統を備え、前記DC接続線を介して前記配電網間で電力融通を行うことを特徴とする。
【0009】
また、前記DC接続線は、前記交流電力系統に複数の前記AC-DC変換器が接続されることにより複数の前記送配電系統を備える場合、複数の前記送配電系統に共有され、前記DC接続線を介して異なる前記送配電系統に含まれる前記配電網間での電力融通を可能とすることを特徴とする。
【0010】
また、前記DC-DC変換器それぞれに入力される電圧を測定する電圧測定手段と、前記電圧測定手段における測定値に応じて電力融通する電力量を制御する制御機構と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、前記AC-DC変換器は、前記交流電力系統から3相6.6kV又は3相2.2kVの交流電圧を入力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,2に記載の発明によれば、配電網における直流電力の需要の急激な増加にも安定して電力を供給できる配電システムを提供することができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、電力融通する電力量を制御することができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、既存の交流電力系統にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1における配電システムの一例を示す概略的な全体構成図である。
図2】東京電力管内での各送電電圧におけるλの値を示す図である。
図3】実施の形態1における配電システムの変形例を示す概略的な全体構成図である。
図4】実施の形態1における配電システムの他の変形例を示す概略的な全体構成図である。
図5】実施の形態1における配電システムの他の変形例を示す概略的な全体構成図である。
図6】実施の形態1における配電システムの他の変形例を示す概略的な全体構成図である。
図7】実施の形態1における配電システムの他の変形例を示す概略的な全体構成図である。
図8】実施の形態2における配電システムの一例を示す概略的な全体構成図である。
図9】実施の形態2における電力融通の制御処理を示すフローチャートである。
図10】実施の形態2における配電システムの変形例を示す概略的な全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0017】
実施の形態1.
図1は、本発明に係る配電システムの一実施の形態を示す概略的な全体構成図である。図1には、交流電力系統2、AC配線4、AC-DC変換器6、DC-DC変換器8a,8b,8c、DC配線10a,10b,10c、DC接続線12、DC配線14a,14b,14c及び配電網16a,16b,16cが示されている。なお、DC-DC変換器8a,8b,8cは、相互に区別する必要はない場合は「DC-DC変換器8」と総称する。DC配線14a,14b,14c等、符号に添え字が付く他の構成要素についても同様に総称を用いる。
【0018】
交流電力系統2は、交流電力を供給する電力系統であり、配電網16への主要な電力供給源となる。AC-DC変換器6は、入力側に交流電力系統2を接続し、AC配線4を介して入力される交流(AC)電圧を直流(DC)電圧に変換して出力する。AC-DC変換器6への入力は、本来3相あるいは単相の交流電力であるが、図ではAC配線4を便宜的に1本の線で表している。AC-DC変換器6からの出力は、プラスとマイナスそれぞれに1本ずつの配線を有するが、図ではDC配線10を便宜的に1本の線で表している。DC接続線12及びDC配線14についても同様である。
【0019】
DC-DC変換器8は、入力側にAC-DC変換器6を、出力側に配電網16を接続し、DC配線10を介して入力される直流電圧を、異なる値の直流電圧に変換してDC配線14に出力する。DC-DC変換器8は、論理的には昇圧することも可能であるが、実用上、降圧するのが一般的である。図1に示すVa,Vb,Vcは、DC-DC変換器8a,8b,8cそれぞれの入力電圧である。
【0020】
配電網16は、DC-DC変換器8から出力される直流電圧を消費する電力需要家や車両への充電器等を含む電力網である。また、配電網16には、太陽光発電システム等の再生可能エネルギーを生成するシステム(以下、「再エネ機器」あるいは「再エネ電源」ともいう)がDC電源として含まれている。図1では、太陽光発電(PV)18を例示的に図示している。太陽光発電(PV)18は、電力需要家等の電力供給源の一部となる。
【0021】
そして、DC接続線12は、DC-DC変換器8の入力側を接続する電力線である。DC接続線12は、DC-DC変換器8の入力側を接続するので、DC-DC変換器8は、少なくとも2台必要となる。
【0022】
本実施の形態における配電システムの基本構成は、上記の通りであり、交流電力系統2から交流電力を入力する少なくとも1つのAC-DC変換器6と、DC接続線12と、少なくとも2つのDC-DC変換器8を有する1組の送配電系統を備えている。交流電力系統2からの電力は、複数の変電所で段階的に電圧が下げられ、配電網16に含まれる一般家庭や事業所に届けられる。配電網16は、一般に変電所から需要地までのことをいう。図1に示すAC-DC変換器6、DC-DC変換器8及びDC接続線12は、発電所から変電所までの送電網に含まれる。
【0023】
図1に示す構成において、AC-DC変換器6は、交流電力系統2から送電されてくる交流電力を直流電力に変換して出力する。DC-DC変換器8は、DC配線10を介して入力される直流電圧を、異なる値の直流電圧に変換して出力する。配電網16では、DC配線10を介してDC-DC変換器8から供給される直流電力が消費される。
【0024】
ここで、例えば、配電網16bにおいて、配電網16b内で賄えないほどの急激な需要の増加が発生したことにより電力不足が発生したとする。各配電網16内で確保可能な分散電源による発電総量を100kW程度と想定すると、ここでいう「急激な需要の増加」というのは、それ以上の習慣的な電力要求を想定している。想定している状況としては、例えば多数の電気自動車への急速充電が電力不足を導くほど集中して行われるような状況である。
【0025】
配電網16bで急激な需要が発生した結果、要求電力に応じて電流が Δi増加する場合、配線抵抗をRとすると、VbがΔi・R分急激に低下するはずである。これに応じて、配電網16a,16cから電力不足が発生している配電網16bに電力供給がなされる。配電網16a又は配電網16cは、電力供給力に余裕がある場合はVa又はVcの値を積極的に調整して、DC接続線12を介して配電網16bに電力供給する。
【0026】
PV18a,18cなどの再エネ電源を追加電源として活用する場合も想定できるが、本実施の形態における配電システムによれば、PV18a,18cが生成した直流電力を交流電力に変換することなくDC接続線12を介して電力融通を行うことができる。つまり、再エネ電源は、一般に直流電力を生成するので、再エネ電源とDC-DC変換器8との間にAC/DC変換器を設ける必要がない。
【0027】
ちなみに、「電力融通」とは、電力が余っているところと電力が不足しているところが、電力を融通し合うことをいう。本実施の形態では、電力が余っている配電網16と電力が不足している配電網16との間で、AC電力系統を介することなくDC接続線12を介して電力融通を行うことを特徴としている。
【0028】
本実施の形態においては、上記のようにAC配線4を介することなくDC接続線12を介して電力供給を行える構成としたので、交流電力系統2における回転機械の相差角を調整する必要がない。これにより、交流電力系統2の周波数安定性及び供給電力の安定性が確保される。この点について詳述する。
【0029】
送電損失(主に銅損)を考慮すると、送電電力に応じた高電圧化が必要である。そのため、最上位階層(超高電圧階層)は、トランスで容易に昇降圧が容易なAC配線を用いているのが現状である。
【0030】
超高電圧の交流電力で送電制御を行うには、周波数、電圧に加えて位相制御が必要となるが、直流電力では、電圧制御のみで送電量を制御できる。但し、DC制御においても、電力送電量に応じて電力変換素子の並列数や電力容量の関係から制御速度が変化するので、上記の通り直流電圧を段階的に持つことで、配電網の制御性、安定性にも寄与することができる。更に、直流電力を活用すると、DC-DC変換器自身が入出力電圧を監視することで、Droop制御等を行うことが可能となる。この点においても、直流電力系統は、電力配電網の安定性、経済性に寄与することができる。
【0031】
電源より交流を介して供給電力を増加させる場合、送電線の抵抗成分を無視できるものと考えると、発電機と電力輸送の関係は、発電機の慣性モーメントJ、送電の定格角周波数ω、送電角周波数ω、電源の位相角δ(相差角)、発電機の機械エネルギーP、送電線の電圧V、送電線のインダクタンスXを用いて、以下の動揺方程式(1),(2)で表すことができる。
【数1】
【0032】
式(1)の右辺の第2項は、電気エネルギーの大きさを表しており、送電エネルギーを増加させる場合は電源の位相角δを変化させる必要がある。式(2)に示すように、位相角の微分が周波数であり、交流で送電する場合には周波数変更が生じる。特に、再エネ電源では、式(1)の左辺に含まれる発電機の慣性モーメントJが小さいというより、むしろないといえるので、周波数変動の影響が顕著である。但し、直流を介して供給電力を増加させる場合は、電源の電圧を上昇させるだけであり、相差角および周波数への影響はない。
【0033】
更に、再エネ電源の活用時には、直交流変換ロスを考慮するとDC配線を用いるのが望ましいが、ここでも相対的に大電力が想定される配電網間の電力融通と、相対的に低電力が想定される配電網送電を考慮して、直流電力系統を階層的に設けることで送電電力確保と送電損失低減の両立が可能となる。
【0034】
なお、図1は、AC-DC変換器6の下位層にDC-DC変換器8を1段(つまり、単階層)で形成している場合のシステム構成図であるが、AC-DC変換器6の出力側と配電網16の入力側との間にDC-DC変換器8を階層的に、すなわち多段階で設けることで、上記のように大電力の配電網にも低電力の配電網にも容易にかつ効率的に対応することが可能となる。つまり、降圧を段階的に行うことができるように構成することで、現状の6.6kV系とAC-DC変換器6の後段のDC配電網との共存を可能にしている。
【0035】
ちなみに、AC-DC変換器6は、既存の交流電力系統2から3相6.6kV又は3相2.2kVの交流電圧を入力し、1000Vから2000Vの間の直流電圧に変換して出力する。また、DC-DC変換器8は、入力した直流電圧を200Vから1000Vの間の直流電圧に変換して出力する。これにより、配電網16に含まれる電力需要家に対して必要かつ安全な送電を効率的に行うことが可能となる。
【0036】
ところで、実際の運用としては配線での損失を考慮し、設定電圧をV、配電線長をLkm、配線抵抗率をρΩ/km、取扱電力Preq=200・Lとしたときに、λ=Preq・ρL/V<0.1以下で運用することが望ましい。ここで、λ=Preq・ρL/V(以下、「式(3)」と記す)について、以下に説明する。
(a)式(3)は、λ=(Preq/V)/(V/ρL)と表すことができる。これは,配電網が取り扱える電流容量V/ρLに対する実際の電流Preq/Vの比となっている。
(b)式(3)は、λ=Preq/(V/ρL)と表すことができる。これは、配電網が取り扱える電力容量V/ρLに対する実際の取り扱い電力Preqの比となっている。
(c)式(3)は、λ=(Preq・ρL/V)/Vと表すことができる。これは,電圧Vに対する配電網で想定される最大電圧降下(Preq・ρL/V)の比となっている。
【0037】
以上説明したように。式(3)は、配電網スケールを評価する指標として考えるべき配電網16で取り扱う電力に対する送電損失の比、配電網16の電流容量に対する実電流の比、更には配電網16で想定される電圧降下のすべてを考慮した指標となっている。
【0038】
ちなみに、実際の東京電力管内での各送電電圧におけるλは、図2に示すとおりである。従って、図2に示すλの値を考慮して、上記の通り、λを0.1以下で運用するのが望ましいとした。
【0039】
以下に、本実施の形態における配電システムの変形例を図3~7に示す。もちろん、本発明は、図1及び以下に示す変形例に限るものではなく、本発明の範囲内において配電システムを種々の構成にて実現することは可能である。特に、以下の変形例でもDC-DC変換器8を1段にて構成しているが、階層的に構成することを考慮すると、数多くのシステム構成が考えられる。
【0040】
図3は、2台のAC-DC変換器6をAC配線4に接続し、AC-DC変換器6aとAC-DC変換器6bにそれぞれ2台ずつDC-DC変換器8a,8bとDC-DC変換器8c,8dを接続した構成を有している。つまり、図3に示す配電システムは、2つの送配電系統を備えており、それぞれの送配電系統にDC接続線12a,12bが個別に設けられている。DC-DC変換器8の数は、3台と2台との違いはあるが、図3に示す配電システムは、図1に示す配電システムの送配電系統を複数(図3では2系統)備えるシステムであるともいえる。
【0041】
図4は、図3と同様に2台のAC-DC変換器6をAC配線4に接続することで、2つの送配電系統を備えている。AC-DC変換器6aの出力側にはDC配線10aによりDC-DC変換器8aが接続される。一方、AC-DC変換器6bの出力側にはDC配線10bによりDC-DC変換器8bが接続される。更に、DC-DC変換器8a,8bの入口側のDC配線10a,10bは、DC接続線12により接続されている。すなわち、DC配線10a,10bがDC接続線12により接続されることから、2台のDC-DC変換器8a,8bは、それぞれの送配電系統に共有可能に構成されているといえる。換言すると、複数の送配電系統はそれぞれ、少なくとも2台のDC-DC変換器8a,8bを備えているといえる。図4に示すシステム構成によると、各DC-DC変換器8a,8bに接続される配電網16a,16bは、DC接続線12を介して電力融通を行うことが可能となる。
【0042】
図5は、図4と同様に2台のAC-DC変換器6をAC配線4に接続することで、2つの送配電系統を備えている。AC-DC変換器6aの出力側にはDC配線10a,10bそれぞれにDC-DC変換器8a,8bが接続される。一方、AC-DC変換器6bの出力側にはDC配線10cによりDC-DC変換器8cが接続される。更に、DC-DC変換器8b,8cの入口側のDC配線10b,10cは、DC接続線12により接続されている。すなわち、DC配線10b,10cがDC接続線12により接続されることから、3台のDC-DC変換器8a,8b.8cは、それぞれの送配電系統に共有可能に構成されているといえる。換言すると、複数の送配電系統はそれぞれ、3台のDC-DC変換器8a,8b,8cを備えているといえる。図5に示すシステム構成によると、DC-DC変換器8a又はDC-DC変換器8bに接続される配電網16a,16bは、DC-DC変換器8cに接続される配電網16cとDC接続線12を介して電力融通を行うことが可能となる。
【0043】
図4では2系統の送配電系統を備えていたが、図6に示すシステム構成では、3系統の送配電系統を備えている。図6に示すシステム構成では、DC接続線12は、DC配線10a、DC配線10b及びDC配線10cを接続する。この構成により、DC-DC変換器8a,8b,8cは、それぞれの送配電系統に共有可能に構成されているといえる。
【0044】
なお、本実施の形態では、AC配線4に接続する複数のAC-DC変換器6の台数として、2台及び3台の例を図示しているが、それ以上の台数をAC配線4に接続して、更に多くの送配電系統を備えるよう構成してもよい。
【0045】
図3では2系統の送配電系統を備え、各送配電系統がDC接続線12を個別に備える構成をしていたが、図7に示すシステム構成では、図6と同様に、全てのDC配線10a,10b,10c,10dにDC接続線12を接続するよう構成している。
【0046】
実施の形態2.
図8は、本発明に係る配電システムの他の実施の形態を示す概略的な全体構成図である。実施の形態1に示す配電システムと同じ構成要素には、同じ符号を付けて説明を適宜省略する。本実施の形態における配電システムは、実施の形態1における配電システムに、高電圧直流電圧センサ(以下、単に「電圧センサ」)20、スイッチ22及びコントローラ24を追加した構成を有している。電圧センサ20は、DC-DC変換器8それぞれに入力される電圧を測定する電圧測定手段として設けられている。スイッチ22及びコントローラ24は、電圧センサ20における測定値に応じて電力融通する電力量を制御する制御機構を形成する。スイッチ22は、DC-DC変換器8を接続するDC接続線12に設けられる。なお、図8では、便宜的にDC-DC変換器8aとDC-DC変換器8bの間、またDC-DC変換器8bとDC-DC変換器8cの間にそれぞれスイッチ22a,22bを図示しているが、DC-DC変換器8aとDC-DC変換器8cの間にも設けてよい。すなわち、1台のDC-DC変換器8に対応する配電網16は、他のDC-DC変換器8に対応する全ての配電網16と電力融通ができるように構成してもよい。
【0047】
コントローラ24は、電圧センサ20による測定値に応じてスイッチ22のオン又はオフの制御、すなわち開閉制御を行う。そのために、コントローラ24は、電圧センサ20a,20b,20cそれぞれと一点鎖線で示す信号線26で接続され、測定値を受信する。また、コントローラ24は、スイッチ22a,22bそれぞれと破線で示す信号線28で接続され、開閉の指令信号を送信する。
【0048】
実施の形態1では、電力融通する電力量の制御に関しては、特に言及していない。すなわち、電力量の制御機構を設けていないので、各配電網16の電力需要量等に応じて電力融通が自動的に行われる。これに対し、本実施の形態においては、電力融通する電力量を制御することが可能となるが、以下、本実施の形態における電力融通処理について、図9に示すフローチャートを用いて説明する。
【0049】
本実施の形態におけるコントローラ24は、起動後、終了が指示されるまで電力融通処理を常時実施する。もちろん、コントローラ24が動作しているときでも、電力の利用状況に応じて電力融通を行わない時節や時間帯等を設けてもよい。
【0050】
まず、コントローラ24は、初期設定としてスイッチ22をオフにする(ステップ101)。スイッチ22がオフの状態のときには、電力融通は行われない。
【0051】
電圧センサ20a,20b,20cは、少なくとも電力融通処理が実行されている間、対応するDC-DC変換器8a,8b,8cに入力される電圧Va,Vb,Vcを測定している。コントローラ24は、配電網16において急激な電力需要が発生したかどうかを監視するために、各電圧センサ20から測定値を取得し、電圧降下(ΔVn)の発生の有無を常時監視する(ステップ102でN)。本実施の形態では、急激な電力需要の発生の判断基準とする閾値(ΔVt1)を予め設定しておく。コントローラ24は、電圧降下(ΔVn)を例えば定周期的に検出し、検出した電圧降下(ΔVn)と閾値(ΔVt1)を比較する。そして、電圧降下(ΔVn)が閾値(ΔVt1)を上回った場合、コントローラ24は、対応する配電網16において急激な電力需要が発生したと判断する。なお、ここでは、配電網16a,16b,16cのうち1箇所の配電網16bにおいて急激な電力需要が発生するものとして説明する。
【0052】
コントローラ24は、各電圧センサ20から取得する測定値の遷移からDC-DC変換器8bの入口側において閾値(ΔVt1)を上回る電圧降下(ΔVn)を検知すると(ステップ102でY)、DC-DC変換器8bに接続される全てのスイッチ22a,22bをオンに切り替えて電力融通が実行可能な状態に変更する(ステップ103)。
【0053】
コントローラ24は、スイッチ22をオンにした後、電圧降下の時間微分(dΔVn/dt)が0以上の場合(ステップ104でN)、電力融通を開始してもなお、配電網16bではまだ電力が不足している状態にあると判断して、他のDC-DC変換器8a,8cに入力される電圧Va,Vcを調整して配電網16bに電圧を供給する。コントローラ24は、このようにして配電網16bに対し、他の配電網16a,16cからの電力融通を継続する(ステップ105)。
【0054】
一方、電圧降下の時間微分が0を下回った場合(ステップ104でY)、配電網16bでの電力不足がある程度回復してきたと判断する。本実施の形態では、電力融通を停止するための閾値(ΔVt2)を予め設定しておく。そして、コントローラ24は、検出した最新の電圧降下(ΔVn)が閾値(ΔVt2)以上の場合(ステップ106でN)、コントローラ24は、電力不足が完全に解消していないと判断してステップ104に移行する。これにより、電力融通を継続可能な状態に持する。一方、電圧降下(ΔVn)が閾値(ΔVt2)を下回る場合(ステップ106でY)、コントローラ24は、配電網16bにおける急激な電力需要にも対応でき、配電網16における電力不足は解消したものと判断して、スイッチ22をオフに切り替えて電力融通を停止する(ステップ101)。
【0055】
本実施の形態によれば、制御機構を設けることによって電力が不足している配電網16に適切な電力量で電力融通を行うことができる。なお、上記説明では、配電網16a,16cから配電網16bに供給する電力量の配分については、特に言及しなかったが、コントローラ24は、例えば一方のみ、均等配分、電圧Va,Vcの大小、電圧Va,Vcの遷移、過去の実績、配電網16の関係等を参照して配電網16bが必要となる電力量を配分すればよい。
【0056】
また、電力を供給する側と供給される側との配電網16は、1対1、1対多、多対1、そして多対多の関係でもよい。電力を供給する側の配電網16は、1又は複数の配電網16に対して同時に電力を供給してもよいし、電力が供給される側の配電網16は、1又は複数の配電網16から同時に電力が供給されてもよい。
【0057】
また、本実施の形態における制御機構は、スイッチ22をDC接続線12に設けてスイッチ22の開閉制御により電力融通する電力量を制御するようにしたが、これに限る必要はない。スイッチ22を利用する開閉制御は、電力融通を可能とする際のオンと、電力融通をしないオフによる電力量の制御、つまりオン状態の時間の調整による電力融通ともいえるが、時間当たりに供給する電力量の調整による電力融通としてもよい。
【0058】
また、配電網16には、太陽光発電(PV)18などによる再エネ電源が含まれている場合があるので、配電網16の中で閉じて電力融通をすることも可能である。本実施の形態における電力融通は、DC-DC変換器8の入力側の高電圧なDC配電網と、DC-DC変換器8の出力側の低電圧なDC配電網と、を適宜組み合わせ、低電圧なDC配電網(つまり、配電網16)からDC接続線12を介して高電圧なDC配電網(他のDC-DC変換器8の出力側に接続されている他の配電網16)に、AC配線4を介することなく直流電力のまま電力融通を行うことができる。
【0059】
図10は、図8に示した本実施の形態の配電システムの変形例を示す図である。本実施の形態における電圧センサ20により実現される電圧測定手段と、スイッチ22及びコントローラ24を有する制御機構とを備える構成は、図8に示すシステム構成に限らず、図10に例示するように、AC-DC変換器6aに対応する高電圧なDC配電網の下層に、複数(図10では2つ)の低電圧なDC配電網を設けてもよい。なお、図10では、配電網16a,16bに共通の電圧センサ20aを設けているので、配電網16cからDC接続線12を介して電力融通されてくる電力の各配電網16a,16bに対する配分は、図示していない別構成にて行うことになる。また、本実施の形態における電圧測定手段及び制御機構は、図10に例示する変形例に限らず、図3図7に示した変形例等のシステム構成にも適用可能である。
【0060】
[本願発明の構成]
構成1:
交流電力系統が入力側に接続される少なくとも1つのAC-DC変換器と、
入力側に前記AC-DC変換器を、出力側に配電網を接続する少なくとも2つのDC-DC変換器と、
前記DC-DC変換器の入力側を接続するDC接続線と、
を有する送配電系統を備え、
前記DC接続線を介して前記配電網間で電力融通を行うことを特徴とする配電システム。
構成2:
前記DC接続線は、前記交流電力系統に複数の前記AC-DC変換器が接続されることにより複数の前記送配電系統を備える場合、複数の前記送配電系統に共有され、
前記DC接続線を介して異なる前記送配電系統に含まれる前記配電網間での電力融通を可能とすることを特徴とする構成1に記載の配電システム。
構成3:
前記DC-DC変換器それぞれに入力される電圧を測定する電圧測定手段と、
前記電圧測定手段における測定値に応じて電力融通する電力量を制御する制御機構と、
を備えることを特徴とする構成1又は構成2に記載の配電システム。
構成4:
前記AC-DC変換器は、前記交流電力系統から3相6.6kV又は3相2.2kVの交流電圧を入力することを特徴とする構成1から構成3のいずれか1つに記載の配電システム。
【符号の説明】
【0061】
2 交流電力系統、4 AC配線、6,6a,6b AC-DC変換器、8,8a,8b,8c,8d DC-DC変換器、10,10a,10b,10c,10d,14a,14b,14c DC配線、12,12a,12b DC接続線、16,16a,16b,16c,16d 配電網、20,20a,20b,20c 電圧センサ、22, スイッチ、24 コントローラ、26,28 信号線。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10