(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024013731
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】エアリークテスト装置の大漏れ検出感度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01M 3/20 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
G01M3/20 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116055
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】390019035
【氏名又は名称】株式会社フクダ
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 真央
(72)【発明者】
【氏名】増田 裕樹
【テーマコード(参考)】
2G067
【Fターム(参考)】
2G067AA44
2G067DD02
(57)【要約】
【課題】エアリークテスト装置の大漏れ検出の感度を簡便かつ低コストで測定する。
【解決手段】
エアリークテスト装置において、ワークカプセル20に漏れが無い検査対象100Aと装填部材25を収容したときの大漏れ検出工程での圧力センサ10の第1検出圧力P1と、ワークカプセル20に漏れが無い検査対象100Aだけを収容したときの大漏れ検出工程での圧力センサ10の第2検出圧力と、装填部材25の外容積Vに基づき、エアリークテスト装置の大漏れ検出感度Sを次式から求める。
S=V/(P2―P1)
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テスト圧源と、中空の検査対象を密閉するワークカプセルと、前記テスト圧源と前記ワークカプセルを連ねる通路と、前記通路に設けられ前記通路を開閉する第1弁と、前記ワークカプセル内の圧力を検出する圧力センサと、前記通路において前記第1弁と前記ワークカプセルとの間に接続された補助通路部と、前記補助通路部に接続された所定容積のタンクと、前記補助通路部に設けられ前記タンクと前記通路との間を開閉する第2弁と、制御演算手段と、を備え、
前記制御演算手段が、大漏れ検出工程を含むエアリークテスト工程を実行し、この大漏れ検出工程では、前記第1弁を閉じた状態で前記第2弁を開くことにより、前記ワークカプセル内のテスト圧を前記タンクに分圧するか又は前記タンク内のテスト圧を前記ワークカプセルに分圧し、この時に前記圧力センサで検出される圧力から、前記検査対象に大漏れを生じさせるような欠陥が有るか否かを判断するエアリークテスト装置において、
1つ又は複数の装填部材を用いて大漏れ検出感度測定工程を実行し、この大漏れ検出感度測定工程では、前記ワークカプセルに漏れが無い検査対象と前記1つ又は複数の装填部材の全てを収容したときの前記大漏れ検出工程での前記圧力センサの第1検出圧力と、前記ワークカプセルに漏れが無い検査対象を収容するとともに前記ワークカプセルから前記1つ又は複数の装填部材のうちの少なくとも1つの装填部材を除外したときの前記大漏れ検出工程での前記圧力センサの第2検出圧力と、前記除外された少なくとも1つの装填部材の外容積に基づき、前記エアリークテスト装置の大漏れ検出感度を測定する方法。
【請求項2】
前記制御演算手段は、前記エアリークテスト工程において、前記大漏れ検出工程の前又は後に微小漏れ検出工程を実行し、この微小漏れ検出工程では、前記第1弁と前記第2弁を閉じた状態で前記ワークカプセル内のテスト圧の時間変化を前記圧力センサ又は他の圧力センサで検出し、検出された圧力変化に基づき前記検査対象に微小欠陥があるか否かを判断し、
前記大漏れ検出工程と前記微小漏れ検出工程を含む前記エアリークテスト工程では、前記ワークカプセルに前記1つ又は複数の装填部材の全てが収容されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記装填部材は1つであり、前記大漏れ検出感度測定工程において、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象と前記装填部材を収容した状態で前記第1検出圧力を得、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象だけを収容した状態で前記第2検出圧力を得ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記装着部材が複数あり、前記大漏れ検出感度測定工程において、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象と前記複数の装填部材を収容した状態で前記第1検出圧力を得、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象だけを収容した状態で前記第2検出圧力を得ることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記ワークカプセルの内面には1つ又は複数の収容凹部が形成され、これら1つ又は複数の収容凹部に、前記1つ又は複数の装填部材が着脱可能に収容されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記ワークカプセルには、検査対象の外形状に対応した形状の収容空間が形成され、この収容空間には、収容空間の内面と検査対象の外面との間の実容積を減じるための1つ又は複数のスペーサが着脱可能に収容されており、前記1つ又は複数のスペーサが前記1つまたは複数の装填部材として提供されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアリークテスト装置において検査対象の大漏れを検出するときの感度を測定する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
中空の製品(検査対象)の密封性を評価する装置として、検査対象にテスト圧を付与するエアリークテスト装置が知られている。テスト圧が正圧の場合を例にとって説明すると、検査対象に微小なピンホール等の欠陥がある場合、圧縮空気が時間をかけて少量ずつ検査対象内に入り込む。以下、これを微小漏れと言う。検査対象に比較的大きな欠陥がある場合、瞬時に又は短時間のうちに圧縮空気が検査対象に入り込む。以下、これを大漏れと言う。一般的なエアリークテスト装置では、検査対象の微小漏れと大漏れを検出できるようになっている。
【0003】
特許文献1に開示されているエアリークテスト装置を例にとって説明する。このエアリークテスト装置は、テスト圧源と、このテスト圧源に接続された共通通路部と、この共通通路部の下流端に接続された2つの分岐通路部と、これら2つの分岐通路部の下流端にそれぞれ接続されたワークカプセルおよびマスタカプセルと、2つの分岐通路部にそれぞれ設けられた第1弁と、2つの分岐路において第1弁の下流側に補助通路部を介して接続された所定容積のタンクと、これら補助通路部に設けられた第2弁と、ワークカプセル内の圧力とマスタカプセル内の圧力の差を検出する差圧センサ(圧力センサ)とを備えている。
【0004】
上述のエアリークテスト装置において、ワークカプセルに検査対象を密封し、マスタカプセルにマスタ部材(漏れが無いことを確認した検査対象)を密封した状態で、両カプセルにテスト圧を供給し、第1弁により分岐通路部を遮断することにより、両カプセルをテスト圧で閉鎖する。検査対象に微小の欠陥がある場合には、ワークカプセル内のテスト圧の空気が検査対象の内部空間に微小量ずつ漏れるため、ワークカプセル内の圧力が時間の経過とともに減じられる。差圧センサで検出される差圧(ワークカプセルの圧力変化)が閾値を超えた場合には、微小漏れありと判断する。この微小漏れ検出工程の後に大漏れ検出工程を実行する。すなわち、第2弁を開くことにより、両カプセルをそれぞれのタンクと連通させる。これにより両カプセルのテスト圧がそれぞれのタンクに分圧される。検査対象に大きな欠陥がある場合には、テスト圧供給時に検査対象の内部空間がテスト圧となっているため、上記タンクへの分圧により両カプセルに圧力差が生じる。差圧センサで検出される差圧が閾値を超えた場合には、大漏れありと判断する。
【0005】
上述のエアリークテスト装置では種々のサイズ、形状の検査対象の漏れ検査が実行される。検査対象に応じてワークカプセル、マスタカプセルのサイズ、形状も変わるが、そのたびに大漏れの検出感度を測定することが求められる。従来では次のようにして大漏れの検出感度を測定している。すなわち、ワークカプセル側の分岐通路部に、容積変更器が接続されている。ワークカプセルとマスタカプセル内にそれぞれ漏れの無い検査対象を密封する。容積変更器の容積を例えばゼロにした状態で、上述の大漏れ検出工程を実行し、差圧センサにより第1検出圧力を得る。次に、容積変更器を所定容積まで増大させた状態で、上述の大漏れ検出工程を実行し、差圧センサにより第2検出圧力を得る。そして、これら第1、第2検出圧力の差と容積変更器の容積増加分に基づき、大漏れの検出感度を測定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
容積変更器の容積増加分は、検査対象の内容積と等しくさせる必要はないが、ある程度対応させる必要がある。そのため、検査対象の内容積が大きく異なる場合、1種類の容積変更器では対応できず、異なるサイズの複数の容積変更器を準備する必要があり、コスト高となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、本発明は、テスト圧源と、中空の検査対象を密閉するワークカプセルと、前記テスト圧源と前記ワークカプセルを連ねる通路と、前記通路に設けられ前記通路を開閉する第1弁と、前記ワークカプセル内の圧力を検出する圧力センサと、前記通路において前記第1弁と前記ワークカプセルとの間に接続された補助通路部と、前記補助通路部に接続された所定容積のタンクと、前記補助通路部に設けられ前記タンクと前記通路との間を開閉する第2弁と、制御演算手段と、を備え、前記制御演算手段が、大漏れ検出工程を含むエアリークテスト工程を実行し、この大漏れ検出工程では、前記第1弁を閉じた状態で前記第2弁を開くことにより、前記ワークカプセル内のテスト圧を前記タンクに分圧するか又は前記タンク内のテスト圧を前記ワークカプセルに分圧し、この時に前記圧力センサで検出される圧力から、前記検査対象に大漏れを生じさせるような欠陥が有るか否かを判断するエアリークテスト装置において、
1つ又は複数の装填部材を用いて大漏れ検出感度測定工程を実行し、この大漏れ検出感度測定工程では、前記ワークカプセルに漏れが無い検査対象と前記1つ又は複数の装填部材の全てを収容したときの前記大漏れ検出工程での前記圧力センサの第1検出圧力と、前記ワークカプセルに漏れが無い検査対象を収容するとともに前記ワークカプセルから前記1つ又は複数の装填部材のうちの少なくとも1つの装填部材を除外したときの前記大漏れ検出工程での前記圧力センサの第2検出圧力と、前記除外された少なくとも1つの装填部材の外容積に基づき、前記エアリークテスト装置の大漏れ検出感度を測定することを特徴とする。
【0009】
上記方法によれば、ワークカプセルに装填部材を用いて簡便に大漏れ検出感度を測定できる。また、低コストで異なるサイズの検査対象に対応することができる。
【0010】
好ましくは、前記制御演算手段は、前記エアリークテスト工程において、前記大漏れ検出工程の前又は後に微小漏れ検出工程を実行し、この微小漏れ検出工程では、前記第1弁と前記第2弁を閉じた状態で前記ワークカプセル内のテスト圧の時間変化を前記圧力センサ又は他の圧力センサで検出し、検出された圧力変化に基づき前記検査対象に微小欠陥があるか否かを判断し、前記大漏れ検出工程と前記微小漏れ検出工程を含む前記エアリークテスト工程では、前記ワークカプセルに前記1つ又は複数の装填部材の全てが収容されている。
この方法によれば、ワークカプセルの実容積(テスト圧で満たされる容積)を、装填部材を収容しない場合に比べて小さくすることができ、特に微小漏れ検出の精度を維持することができる。
【0011】
一態様では、前記装填部材は1つであり、前記大漏れ検出感度測定工程において、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象と前記装填部材を収容した状態で前記第1検出圧力を得、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象だけを収容した状態で前記第2検出圧力を得る。
この方法によれば、より一層簡便に大漏れ検出感度を測定できる。
【0012】
他の態様では、前記装着部材が複数あり、前記大漏れ検出感度測定工程において、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象と前記複数の装填部材を収容した状態で前記第1検出圧力を得、前記ワークカプセルに前記漏れが無い検査対象だけを収容した状態で前記第2検出圧力を得る。
この方法によれば、スペーサが複数の場合に、大漏れ検出感度を測定するためのスペーサの合計外容積を大きくできるので、大漏れ検出感度の測定精度を上げることができる。
【0013】
好ましくは、前記ワークカプセルの内面には1つ又は複数の収容凹部が形成され、これら1つ又は複数の収容凹部に、前記1つ又は複数の装填部材が着脱可能に収容される。
この方法によれば、装填部材を安定してワークカプセルに収容することができる。
【0014】
好ましくは、前記ワークカプセルには、検査対象の外形状に対応した形状の収容空間が形成され、この収容空間には、収容空間の内面と検査対象の外面との間の実容積を減じるための1つ又は複数のスペーサが着脱可能に収容されており、前記1つ又は複数のスペーサが前記1つまたは複数の装填部材として提供される。
この方法によれば、微小漏れ検出工程の精度を上げるためのスペーサを用いて大漏れ検出感度を測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、検査対象のサイズに対応して低コストで簡便に大漏れ検出の感度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明方法が適用されるエアリークテスト装置の概略構成図である。
【
図2】上記エアリークテスト装置で用いられる一実施形態に係るワークカプセルの断面図であり、通常のエアリークテスト工程を実行する時の状態を示す。
【
図3】上記エアリークテスト装置で用いられるマスタカプセルの断面図である。
【
図4】大漏れ検出感度を測定する工程を実行する時の上記ワークカプセルの断面図であり、(A)は第1検出圧力を得るために大漏れ検出工程を実行する時の状態、(b)は第2検出圧力を得るために大漏れ検出工程を実行する時の状態をそれぞれ示す。
【
図5】別の実施形態に係るワークカプセルのカプセル本体を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明方法の第1実施形態を図面を参照しながら説明する。
<エアリークテスト装置の構成>
最初に、本発明方法が適用されるエアリークテスト装置を、
図1を参照しながら説明する。このエアリークテスト装置の基本構成は公知である。エアリークテスト装置は、圧力源1と通路2を備えている。本実施形態の圧力源1は加圧(正圧)の空気源であるが負圧でもよい。なお、正圧、負圧に拘わらず通路2の圧力源1側を上流と言う。
【0018】
通路2は、上流端が圧力源1に接続された共通通路部2xと、この共通通路部2xの下流端にそれぞれ接続された2つの分岐通路部2a,2bとを備えている。共通通路部2xには、レギュレータ3およびその下流側の三方弁4が設けられている。レギュレータ3は圧力源1からの圧力を設定されたテスト圧に維持する。したがって、この圧力源1とレギュレータ3により、テスト圧源5が構成される。三方弁4は、リークテスト開始時にはテスト圧源5からのテスト圧を分岐通路部2a,2bに供給し、リークテスト終了時には分岐通路部2a,2bを大気に開放する。
【0019】
分岐通路部2a,2bには、第1弁6a,6bがそれぞれ設けられている。上記分岐通路部2a,2bにおいて第1弁6a,6bの下流側には補助通路部7a,7bがそれぞれ接続されており、この補助通路部7a,7bには、それぞれ第2弁8a,8bが設けられ、さらにその先端には所定容積のタンク9a,9bが接続されている。
【0020】
分岐通路部2aの下流端にはワークカプセル20が接続され、分岐通路部2bの下流端にはマスタカプセル30が接続されている。分岐通路部2a,2bにおいて第1弁6a,6bの下流側には差圧センサ10(圧力センサ)の2つのポートがそれぞれ接続されており、これにより分岐通路部2a,2b間の差圧、ひいてはワークカプセル20とマスタカプセル30との間の差圧を検出することができる。
【0021】
ワークカプセル20は、開閉可能な2つのカプセル構成部材からなり、例えば
図2に示すように、上端が開口し検査対象100を収容する容器形状のカプセル本体21と、蓋22とを備えている。カプセル本体21は、
図2に破線で示す搬入・搬出位置から実線で示す蓋22の下側の検査位置との間で移動可能である。カプセル本体21が検査位置にある時にカプセル本体21と蓋22はクランプ機構によりクランプされ、その収容空間23に検査対象100を密封するようになっている。
【0022】
図2ではワークカプセル20を概略的に示しているが、ワークカプセル20の収容空間23は、検査対象100に対応した形状、サイズを有しており、これにより収容空間23の内容積から検査対象100の外容積を減じた収容空間23の実容積をできるだけ小さくするように設計されている。
【0023】
ワークカプセル20のカプセル本体21の内面、例えば検査対象100を載せる底面には、収容凹部24が形成されている。この収容凹部24には、収容凹部24と略同形状、同サイズの装填部材25が着脱可能に装填されるようになっている。この装填部材25の外容積は、検査対象100の内容積と等しくする必要はないが、この内容積に見合った大きさ、例えば内容積の50~200%とするのが好ましい。
【0024】
図3に示すように、マスタカプセル30もワークカプセル20と同一形状、サイズのカプセル本体31、蓋32および収容空間33を有しており、マスタ部材Mとして漏れが無いことが確認されている検査対象を密封している。本実施形態では、マスタカプセル30にもワークカプセル20と同一形状、サイズの収容凹部34が形成され、この収容凹部34に装填部材35が装填されている。この装填部材35は、通常のエアリークテスト工程および後述の大漏れ検出感度の測定工程において、収容凹部34に装填されたまま維持される。なお、マスタカプセル30には収容凹部34および装填部材35を省略してもよい。
【0025】
上記弁4,6a,6b,8a,8bはコントローラ50(
図1参照;制御演算手段)によりシーケンス制御される。コントローラ50は、ワークカプセル20の開閉、差圧センサ10での検出差圧に基づく検出対象100の良否判定(漏れの有無の判定)も行う。
【0026】
<通常のエアリークテスト工程>
以下、通常のエアリークテスト工程について説明する。この工程を実行する時には、ワークカプセル20の収容凹部24に装填部材25が装填されている。エアリークテスト工程は、微小漏れ検出工程と大漏れ検出工程を含んでいる。
【0027】
最初に検査対象100を収容したワークカプセル20を上述したようにして閉じ、検査対象100を密封する。次に、三方弁4をオンすることにより、テスト圧源5からのテスト圧を、分岐通路部2a,2bを介してワークカプセル20とマスタカプセル30に供給する。次に、第1弁6a,6bが閉じ、その下流側の分岐通路部2a,2bを互いに隔離して閉鎖する。
【0028】
次に、微小漏れ検出工程を実行する。すなわち、弁6a,6bを閉じてから所定時間経過後の差圧センサ10の検出差圧を第1閾値と比較する。検査対象100に微小のピンホール等の欠陥があると、ワークカプセル20内の加圧空気が検査対象100の内部空間に微小量ずつ入り込み、ワークカプセル20内の圧力がテスト圧から徐々に低下する。他方、マスタカプセル30ではテスト圧が維持される。その結果、ワークカプセル20内の圧力とマスタカプセル30内の圧力との間には差が生じる。この差圧(ワークカプセル20の圧力変化)が差圧センサ10で検出される。検出差圧が第1閾値を超えている場合には、微小漏れ有りと判断し、検出差圧が第1閾値を超えない場合には、検査対象100の微小漏れ無しと判断する。ワークカプセル20の収容凹部24に装填部材25が収容されているので、ワークカプセル20の実容積(テスト圧で満たされる容積)を、装填部材25が収容凹部24に収容されない場合に比べて小さくすることができ、微小漏れ検出の精度を維持することができる。
【0029】
次に、大漏れ検出工程を実行する。検査対象100に大きな欠陥がある場合には、テスト圧供給とほぼ同時に、テスト圧の加圧空気がピンホールから検査対象100の内部空間に入る(大漏れする)ため、上記微小漏れ検出工程では漏れを検出できない。
【0030】
大漏れ検出工程では、第1弁6a,6bが閉じた状態で第2弁8a,8bを開き、タンク9a,9bをそれぞれ分岐通路部2a,分岐通路部2bと連通させる。タンク9a,9bは例えば大気圧であるため、ワークカプセル20、マスタカプセル30内のテスト圧がタンク9a,9bへと逃げて、分圧される。大漏れがある場合には検査対象100の内部空間内のテスト圧の加圧空気分だけ、分岐通路部2aおよびワークカプセル20の圧力が、分岐通路部2bおよびマスタカプセル30の圧力より高い。この差圧を差圧センサ10で第2閾値と比較し、第2閾値を超えている場合には検査対象100に大漏れ有りと判断し、超えない場合には大漏れ無しと判断する。
【0031】
<大漏れ検出感度測定工程>
次に、本発明の要部である大漏れの検出感度測定工程について説明する。この工程では、通常のエアリークテスト工程での大漏れ検出工程を異なる2つの状況で実施する。なお、通常のエアリークテスト方法と同様に、微小漏れ検出工程の後に大漏れ検出工程を実行してもよいし、微小漏れ検出工程を省いて大漏れ検出工程だけを実行してもよい。
【0032】
<第1の状況での大漏れ検出工程>
図4(A)に示すように、第1の状況では、ワークカプセル20の収容凹部24に装填部材25を装填した状態で、漏れが無いことが確認された検出対象100A(マスタ部材Mと実質的に同じ)を密封し、大漏れ検出工程を実行して、差圧センサ10の検出差圧(第1検出圧力P1)を得る。ちなみに本実施形態では第1検出圧力はゼロ又はゼロに近い値となることが想定される。
【0033】
<第2の状況での大漏れ検出工程>
図4(B)に示すように、第2の状況では、ワークカプセル20の収容凹部24から装填部材25を外した状態で、漏れが無いことが確認された検出対象100Aだけを収容空間23に密封し、大漏れ検出工程を実行して、差圧センサ10の検出差圧(第2検出圧力P2)を得る。
【0034】
上述のようにして得られた第1検出圧力P1(kPa)と第2検出圧力P2(kPa)と装填部材25の外容積V(mL)から、次式により大漏れ検出の感度S(mL/kPa)を求めることができる。
S=V/(P2―P1)・・・(1)
【0035】
上述したように、装填部材25をワークカプセル20に装填したり外したりすることにより、第1、第2の検出圧力を得ることができ、大漏れ検出感度の測定を簡便に行うことができる。
【0036】
異なる形状、サイズの検査対象100のリークテストを実行する場合には、その検査対象100に対応した形状、サイズのワークカプセル20、マスタカプセル30が用いられる。検査対象100の内容積の変化が大きい場合には、ワークカプセル20の収容凹部24および装填部材25のサイズも検査対象100の内容積に応じて変える。このように検出対象100の内容積が大きく変わっても装填部材25を変えるだけで大漏れの検出感度の測定を実行することができ、従来のように容積変更器を変える場合に比べて低コストで対応することができる。
【0037】
図5は別の実施形態を示す。
図5において前述した実施形態に対応する構成部には同番号を付す。ワークカプセル20のカプセル本体21の収容空間23は、検査対象100の形状に対応した内面形状を有している。この収容空間23の内面と検査対象100の外面との間には、これら間の容積を減じるためのスペーサ26が収容されている。このスペーサ26は高精度に作成されており収容空間23の内面に接し、スペーサ26と検査対象100の外面との間の隙間27を可能な限り減じている。なお、カプセル本体21の上面には蓋22(
図5には示されていない)との間をシールするための環状のシール材29が、上記収容空間23を囲うようにして設けられている。
【0038】
スペーサ26を収容空間23に装着した状態で、微小漏れ検出工程と大漏れ検出工程を含むエアリークテスト工程を実行する。ワークカプセル20の実容積が小さいので、微小漏れを高精度に検出することができる。
【0039】
大漏れ検出感度測定工程では、漏れが無い検査対象100A(
図5には示されていない)とスペーサ26をワークカプセル21の収容空間23に収容した状態で大漏れ検出工程を実行することにより、上述の実施形態と同様に第1検出圧力を得、スペーサ26を外して漏れが無い検査対象100Aだけをワークカプセル21の収容空間23に収容した状態で大漏れ検出工程を実行することにより、第2検出圧力を得る。そして、スペーサ26の外容積と第1、第2検出圧力に基づいて、大漏れ検出感度を測定する。この説明から明らかなように、本実施形態のスペーサ26は大漏れ検出感度測定のための装填部材としての役割を担う。
【0040】
本発明は、上記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改変をなすことができる。
容易に理解できるので図示しないが、装填部材は複数あってもよい。ワークカプセルの内面に収容凹部を形成する場合には、装填部材の数に応じて収容凹部も複数形成する。スペーサは、検査対象の部位毎に複数に分割されていてもよい。
装填部材が複数ある場合、第1検出圧力を得る時に漏れの無い検査対象とともに全ての装填部材をワークカプセルに収容し、第2検出圧力を得る時に複数の装填部材の全てを除外して漏れの無い検査対象だけをワークカプセルに収容するのが好ましい。これによれば、大漏れ検出感度を測定するためのスペーサの合計外容積(上述した式(1)の外容積V参照)を大きくできるので、大漏れ検出感度の測定精度を上げることができる。ただし、第2検出圧力を検出する際、ワークカプセルから複数の装填部材の一部を除外し、残りをワークカプセルに収容してもよい。
スペーサが複数ある場合も、同様である。
【0041】
通常のエアリークテスト工程において、大漏れ検出工程を微小漏れ検出工程より先に実行してもよい。大漏れ検出工程において、予めタンクにテスト圧を供給して第2弁を閉じ、タンクより上流側の第1弁を閉じた状態で第2弁を開くことにより、タンクのテスト圧を例えば大気圧のワークカプセルに逃がして分圧してもよい。この場合、微小漏れ検出工程で用いられる差圧センサとは異なる絶対圧センサを第1弁の下流側の通路に設け、この絶対圧センサの検出圧力を用いて大漏れ検出工程での大漏れ検出を行ってもよい。
マスタカプセルの容積は、ワークカプセルの容積と異なっていてもよいし、マスタカプセルにマスタ部材を収容しなくてもよい。マスタカプセルおよびマスタカプセルへの分岐通路を省いてもよい。
差圧センサの代わりに絶対圧センサの検出圧力に基づいて大漏れの有無を判断してもよい。
テスト圧は、正圧ではなく真空に近い負圧であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、エアリークテスト装置における大漏れの検出感度を測定する方法に適用できる。
【符号の説明】
【0043】
2 通路
5 テスト圧源
6a 第1弁
7a 補助通路部
8a 第2弁
9a タンク
10 差圧センサ(圧力センサ)
20 ワークカプセル
23 収容空間
24 収容凹部
25 装填部材
26 スペーサ(装着部材)
50 コントローラ(制御演算手段)
100 検査対象
100A 漏れの無い検査対象