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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137312
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20240927BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240927BHJP
   B01J 49/08 20170101ALI20240927BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20240927BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20240927BHJP
   B01J 49/60 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/461 A
B01J49/08
B01J49/53
B01J49/57
B01J49/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048784
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】土田 直輝
【テーマコード(参考)】
4D025
4D061
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025AB05
4D025AB19
4D025BA10
4D025BA11
4D025BA15
4D025BB02
4D025BB09
4D025BB18
4D025BB19
4D025CA05
4D025CA10
4D061DA01
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB19
4D061EB37
4D061EB39
4D061FA09
4D061FA13
4D061FA20
4D061GA21
4D061GC02
4D061GC11
4D061GC19
4D061GC20
(57)【要約】
【課題】電解槽内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下を同時に抑制することが可能な軟水化装置を提供する。
【解決手段】軟水化装置1は、軟水化工程と再生工程を実行する軟水化装置1であって、軟水化工程にて原水中のイオンを吸着するイオン交換樹脂を備える樹脂槽と、再生工程に用いる電解水を生成する電解槽9と、電解水を貯水する貯水槽と、再生工程にて利用され、樹脂槽から独立して電解槽9と貯水槽を連通し、電解槽9で生成された電解水を循環させる電解水循環流路と、再生工程にて利用され、電解槽9から独立して樹脂槽と貯水槽を連通し、イオン交換樹脂の再生に供された再生水と貯水槽に貯水された電解水とを混合して混合水として循環させる混合水循環流路と、電解水循環流路での電解水の流量と混合水循環流路での混合水の流量とを独立して調節する流量制御部201と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を軟水化する軟水化工程と当該軟水化工程により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程とを実行する軟水化装置であって、
前記軟水化工程にて前記原水中のイオンを吸着するイオン交換樹脂を備える樹脂槽と、
前記再生工程に用いる電解水を生成する電解槽と、
前記電解水を貯水する貯水槽と、
前記再生工程にて利用され、前記樹脂槽から独立して前記電解槽と前記貯水槽を連通し、前記電解槽で生成された前記電解水を循環させる電解水循環流路と、
前記再生工程にて利用され、前記電解槽から独立して前記樹脂槽と前記貯水槽を連通し、前記イオン交換樹脂の再生に供された再生水と前記貯水槽に貯水された電解水とを混合して混合水として循環させる混合水循環流路と、
前記電解水循環流路での前記電解水の流量と前記混合水循環流路での前記混合水の流量とを独立して調節する流量制御部と、を備える軟水化装置。
【請求項2】
前記流量制御部は、
前記電解水循環流路での前記電解水の流量が前記混合水循環流路での前記混合水の流量より大きくなるよう制御する請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記樹脂槽の上流側に設けられ前記樹脂槽に流入する前記混合水のイオン濃度を測定する上流検知部と、
前記樹脂槽の下流側に設けられ前記樹脂槽から流出した前記混合水のイオン濃度を測定する下流検知部と、
前記上流検知部の検知した上流イオン濃度と前記下流検知部の検知した下流イオン濃度の濃度差を算出する差算出部と、
を備え、
前記流量制御部は、
前記差算出部が算出した濃度差が第一基準値未満の場合には、前記濃度差が前記第一基準値以上の場合に比して前記混合水循環流路の流量を低減させる請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記樹脂槽として備えられ、前記原水を前記イオン交換樹脂としての弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化して軟水を生成する軟水槽と、
前記貯水槽として備えられ、前記電解槽により生成され前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に用いられる酸性電解水を貯水する酸性貯水槽と、
前記電解水循環流路として備えられ、前記軟水槽から独立して前記電解槽と前記酸性貯水槽を連通し、前記電解槽で生成された前記酸性電解水を循環させる酸性電解水循環流路と、
前記混合水循環流路として備えられ、前記電解槽から独立して前記軟水槽と前記酸性貯水槽を連通し、前記弱酸性陽イオン交換樹脂の再生に用いられた酸性再生水と前記貯水槽に貯水された前記酸性電解水とを混合して酸性混合水として循環させる酸性混合水循環流路と、を備え、
前記流量制御部は、
前記酸性電解水循環流路での前記酸性電解水の流量と前記酸性混合水循環流路での前記酸性混合水の流量とを独立して調節する請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項5】
前記樹脂槽として前記軟水槽とは別個に備えられ、前記軟水槽を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、
前記貯水槽として酸性貯水槽とは別個に備えられ、前記電解槽で生成され前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生に用いられるアルカリ性電解水を貯水するアルカリ性貯水槽と、
前記電解水循環流路として備えられ、前記中和槽から独立して前記電解槽と前記アルカリ性貯水槽を連通し、前記電解槽で生成された前記アルカリ性電解水を循環させるアルカリ性電解水循環流路と、
前記混合水循環流路として備えられ、前記電解槽から独立して前記中和槽と前記アルカリ性貯水槽を連通し、前記弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生に用いられたアルカリ性再生水と前記貯水槽に貯水された前記アルカリ性電解水とを混合してアルカリ性混合水として循環させるアルカリ性混合水循環流路と、を備え、
前記流量制御部は、
前記アルカリ性電解水循環流路での前記アルカリ性電解水の流量と前記アルカリ性混合水循環流路での前記アルカリ性混合水の流量とを独立して調節する請求項4に記載の軟水化装置。
【請求項6】
前記流量制御部は、
前記再生工程時に前記アルカリ性電解水循環流路の流量が前記酸性電解水循環流路の流量よりも大きくなるよう前記酸性電解水または前記アルカリ性電解水の少なくとも一方の流量を制御する請求項5に記載の軟水化装置。
【請求項7】
前記軟水槽の上流側に設けられ前記酸性貯水槽に流入する前記酸性混合水のイオン濃度を測定する酸性上流検知部と、
前記軟水槽の下流側に設けられ前記軟水槽から流出した前記酸性混合水のイオン濃度を測定する酸性下流検知部と、
前記酸性上流検知部の検知した酸性上流イオン濃度と前記酸性下流検知部の検知した酸性下流イオン濃度の濃度差を算出する酸性差算出部と、
前記中和槽の上流側に設けられ前記アルカリ性貯水槽に流入する前記アルカリ性混合水のイオン濃度を測定するアルカリ性上流検知部と、
前記中和槽の下流側に設けられ前記中和槽から流出した前記アルカリ性混合水のイオン濃度を測定するアルカリ性下流検知部と、
前記アルカリ性上流検知部の検知したアルカリ性上流イオン濃度と前記アルカリ性下流検知部の検知したアルカリ性下流イオン濃度の濃度差を算出するアルカリ性差算出部と、を備え、
前記流量制御部は、
前記再生工程において、前記酸性差算出部が算出した前記濃度差が前記酸側第二基準値未満、且つ、前記アルカリ性差算出部が算出した前記濃度差が前記アルカリ側第二基準値未満の場合に、前記電解槽の運転及び前記電解水循環流路における前記電解水の循環を停止する請求項5に記載の軟水化装置。
【請求項8】
前記酸性差算出部が算出した前記濃度差が前記酸側第二基準値以上となった場合または前記アルカリ性差算出部が算出した前記濃度差が前記アルカリ側第二基準値以上となった場合に、
前記電解槽は、前記電解水の生成を開始し、
前記流量制御部は、前記電解水循環流路における前記電解水の循環を実行する請求項7に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の軟水化装置では、弱酸性陽イオン交換樹脂は、官能基の末端に水素イオンを有しており、原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンに交換して原水を軟水化している。食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化された水は、硬度成分の代わりに水素イオンが放出されるために酸性となる。これを中和するために、弱酸性陽イオン交換樹脂に弱塩基性陰イオン交換樹脂を組み合わせて利用されることがある。弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成したアルカリ性電解水を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-30973号公報
【特許文献2】特開2010-142674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来の軟水化装置では、酸性電解水とアルカリ性電解水を電気分解により生成する電解槽が設けられる。この電解槽では、電気分解時に、陽極で酸素、陰極で水素が気体として生成される。
【0006】
これらの気体が電解槽に蓄積すると、電極と気体の接触面積が増加する、すなわち電極と液体の接触面積が低下する。電極と液体の接触面積が低下すると、 電解槽運転時に電気分解に寄与する電極面積が低下し、電解槽の運転電圧が上昇する、すなわち電解槽の運転による消費電力が上昇してしまうという問題が生じる。また、電気分解に寄与する電極面積が低下すると、電極の劣化が加速されてしまうという問題も生じる。
【0007】
またこれらの気体は、電解槽に流入する水の流量が大きい場合には、電解槽内への蓄積量が少ない。そのため、電解槽に流入する水の流量が大きい場合には、当該気体が電解槽内に蓄積されることによる電極と気体の接触面積増加を抑制可能である。言い換えると、電極と水との接触面積減少を抑制可能である。
【0008】
一方、イオン交換樹脂の再生効率という観点では、電解槽へ流入する水の流量が小さい場合に、流量が大きい場合と比較し電解槽内での滞留時間が長くなるため、電解水中のイオン濃度が高まる。そのため、高イオン濃度の水をイオン交換樹脂の再生に供することができ、再生効率が大きくなる。
【0009】
以上2つの事象をまとめると、電解槽の気体蓄積を軽減させるためには、電解槽に流入する水の流量が大きい必要があり、またイオン交換樹脂の再生効率を向上させるためには、イオン交換樹脂に流入する水の流量が小さい必要がある。つまり、気体蓄積の軽減と再生効率はトレードオフの関係にある。
【0010】
しかし、従来の軟水化装置では、電解槽に流入する水とイオン交換樹脂に流入する水の流量を独立して制御できないため、電解槽内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下を同時に抑制することができないという課題がある。
【0011】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、電解槽内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下を同時に抑制することが可能な軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、原水を軟水化する軟水化工程と軟水化処理により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程とを実行する軟水化装置であって、軟水化工程にて原水中のイオンを吸着するイオン交換樹脂を備える樹脂槽と、再生工程に用いる電解水を生成する電解槽と、電解水を貯水する貯水槽と、再生工程にて利用され、樹脂槽から独立して電解槽と貯水槽を連通し、電解槽で生成された電解水を循環させる電解水循環流路と、再生工程にて利用され、電解槽から独立して樹脂槽と貯水槽を連通し、イオン交換樹脂の再生に供された再生水と貯水槽に貯水された電解水とを混合して混合水として循環させる混合水循環流路と、電解水循環流路での電解水の流量と混合水循環流路での混合水の流量とを独立して調節する流量制御部と、を備える。これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電解槽内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下を同時に抑制することが可能な軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図2図2は、実施の形態1に係る軟水化装置の軟水化流路を示す構成図である。
図3図3は、実施の形態1に係る軟水化装置の酸性混合水循環流路及び酸性電解水循環流路を示す構成図である。
図4図4は、実施の形態1に係る軟水化装置のアルカリ性混合水循環流路及びアルカリ性電解水循環流路を示す構成図である。
図5図5は、実施の形態1に係る軟水化装置の再生流路洗浄流路を示す構成図である。
図6図6は、実施の形態1に係る軟水化装置の電解槽循環流路を示す構成図である。
図7図7は、実施の形態1に係る軟水化装置の捕捉部洗浄流路を示す構成図である。
図8図8は、実施の形態1に係る軟水化装置の制御方法を示す図である。
図9図9は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例で合って、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、図1では
、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0017】
(全体構成)
軟水化装置1は、外部から供給される硬度成分を含む原水から、中性の軟水を生成する装置である。なお、原水とは、流入口2から装置内に導入された水(処理対象水)であり、例えば市水や井戸水である。原水は、硬度成分(例えば、カルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含む。軟水化装置1を用いて軟水化処理を行うことにより、硬度の低減した中性の軟水が得られ、原水の硬度が高い地域であっても、軟水を利用することができる。
【0018】
具体的には、図1に示すように、軟水化装置1は、流入口2と、軟水槽3(第一軟水槽3a及び第二軟水槽3b)と、中和槽4(第一中和槽4a及び第二中和槽4b)と、取水口7と、再生装置8と、制御部15とを備えている。
【0019】
また、軟水化装置1は、排水口13と、複数の開閉弁(開閉弁18~開閉弁23、開閉弁301~開閉弁309)と、複数の流路切替えバルブ(流路切替えバルブ24~流路切替えバルブ27)と、複数の流路(流路28~流路32、流路53、酸性混合水供給流路35、アルカリ性混合水供給流路36、酸性混合水回収流路37、アルカリ性混合水回収流路38、中和槽バイパス流路42、軟水槽バイパス流路44、流路53、酸性電解水供給流路111、酸性電解水回収流路112、アルカリ性電解水供給流路113、アルカリ性電解水回収流路114)を備えており、これらの詳細は後述する。なお、複数の流路(流路28~流路32、流路53、酸性混合水供給流路35、アルカリ性混合水供給流路36、酸性混合水回収流路37、アルカリ性混合水回収流路38、中和槽バイパス流路42、軟水槽バイパス流路44、流路53、酸性電解水供給流路111、酸性電解水回収流路112、アルカリ性電解水供給流路113、アルカリ性電解水回収流路114)には、例えばパイプ等の管が用いられる。
【0020】
((流入口及び取水口))
流入口2は、原水の供給元に接続されている。流入口2は、原水を軟水化装置1内に導入する開口である。
【0021】
取水口7は、軟水化装置1内を流通し、軟水化処理された水を装置外に供給する開口である。軟水化装置1は、流入口2から流入する原水の圧力により、取水口7から軟水化処理後の水を取り出すことができる。
【0022】
軟水化装置1では、軟水化処理を行う軟水化工程において、外部から供給される原水が、流入口2、流路28、第一軟水槽3a、流路29、第一中和槽4a、流路30、第二軟水槽3b、流路31、第二中和槽4b、流路32、取水口7の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0023】
((軟水槽))
軟水槽3は、軟水化を行う樹脂槽として備えられる。軟水槽3は、内部に充填された弱酸性陽イオン交換樹脂33の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。具体的には、軟水槽3は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化する。軟水槽3は、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂33を備えている。
【0024】
軟水槽3は、例えば円筒状の容器に弱酸性陽イオン交換樹脂33が充填されて構成されている。軟水槽3は、第一軟水槽3aと第二軟水槽3bとを含んで構成される。
【0025】
第一軟水槽3aは、第一弱酸性陽イオン交換樹脂33aが充填されて構成されている。第一軟水槽3aは、流入口2から流入した原水の軟水化を行う。第一軟水槽3aは、流路切替えバルブ24を備える。流路切替えバルブについての詳細はまとめて後述する。
【0026】
第二軟水槽3bは、第二弱酸性陽イオン交換樹脂33bが充填されて構成されている。第二軟水槽3bは、後述する第一中和槽4aを流通した水の軟水化を行う。第二軟水槽3bは、流路切替えバルブ26を備える。
【0027】
なお、以下では、第一弱酸性陽イオン交換樹脂33a及び第二弱酸性陽イオン交換樹脂33bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱酸性陽イオン交換樹脂33として説明する。
【0028】
弱酸性陽イオン交換樹脂33は、官能基の末端に水素イオンを有するイオン交換樹脂である。弱酸性陽イオン交換樹脂33は、通水される原水に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着し、水素イオンを放出する。弱酸性陽イオン交換樹脂33で処理された軟水は、硬度成分と交換されて出てきた水素イオンを多く含む。つまり、第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから流出する軟水は、水素イオンを多く含んで酸性化した軟水(酸性軟水)である。
【0029】
弱酸性陽イオン交換樹脂33の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生処理において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂33からは、軟水化処理の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0030】
弱酸性陽イオン交換樹脂33として、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、弱酸性陽イオン交換樹脂33として、カルボキシル基の対イオンである水素イオン(H+)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH4+)等の陽イオンとなっている樹脂を用いてもよい。
【0031】
((中和槽))
中和槽4は、軟水槽3通過後の水を中性にする樹脂槽として備えられる。中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂34の作用により、軟水槽3から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性の軟水とする。具体的には、中和槽4は、軟水槽3から流入する軟水に含まれる水素イオンを陰イオンとともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。
【0032】
中和槽4は、弱塩基性陰イオン交換樹脂34を備えている。
【0033】
中和槽は、例えば円筒状の容器に弱塩基性陰イオン交換樹脂34が充填されて構成されている。また、中和槽4は、第一中和槽4aと第二中和槽4bとを含んで構成される。
【0034】
第一中和槽4aは、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂34aが充填されて構成されている。第一中和槽4aは、第一軟水槽3aを流通した酸性軟水の中和を行う。第一中和槽4aは、流路切替えバルブ25を備える。
【0035】
第二中和槽4bは、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂34bが充填されて構成されている。第二中和槽4bは、第二軟水槽3bを流通した酸性軟水の中和を行う。第二中和槽4bは、流路切替えバルブ27を備える。
【0036】
なお、以下では、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂34a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂34bに関しては、特に両者を区別する必要がない場合には、弱塩基性陰イオン交換樹脂34として説明する。
【0037】
弱塩基性陰イオン交換樹脂34は、通水される水に含まれる水素イオンを中和し、中性の水を生成する。弱塩基性陰イオン交換樹脂34は、後述する再生処理において、アルカリ性電解水を用いて再生される。
【0038】
弱塩基性陰イオン交換樹脂34としては、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、遊離塩基型の陰イオン交換樹脂が挙げられる。
【0039】
((再生装置))
再生装置8は、軟水槽3(第一軟水槽3a及び第二軟水槽3b)の弱酸性陽イオン交換樹脂33を再生させ、且つ、中和槽4(第一中和槽4a及び第二中和槽4b)の弱塩基性陰イオン交換樹脂34を再生させる機器である。
【0040】
具体的には、再生装置8は、電解槽9と、捕捉部10と、酸性貯水槽101と、アルカリ性貯水槽102と、酸性電解水送液ポンプ103と、酸性混合水送液ポンプ104と、アルカリ性電解水送液ポンプ105と、アルカリ性混合水送液ポンプ106と、酸性上流検知部107と、酸性下流検知部108と、アルカリ性上流検知部109と、アルカリ性下流検知部110とを含んで構成される。そして、再生装置8では、第二軟水槽3bに対して酸性混合水供給流路35が接続されている。また、再生装置8では、第二中和槽4bに対してアルカリ性混合水供給流路36が接続されている。また、再生装置8では、流路28に対して酸性混合水回収流路37が接続されている。また、再生装置8では、流路29に対してアルカリ性混合水回収流路38が接続されている。各流路の詳細は後述する。
【0041】
((電解槽))
電解槽9は、内部に設けた一対の電極41(電極41a及び電極41b)を用いて、入水した水(流入口2から供給される水)を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成して排出する。より詳細には、再生工程での電気分解の際に陽極となる電極41aでは、電気分解により水素イオンと酸素が生じ、酸性電解水が生成する。また、再生工程での電気分解の際に陰極となる電極41bでは、電気分解により水酸化物イオンと水素が生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽9は、酸性電解水を、酸性電解水回収流路112を介して酸性貯水槽101に供給する。また、電解槽9は、アルカリ性電解水を、アルカリ性電解水回収流路114を介してアルカリ性貯水槽102に供給する。詳細は後述するが、電解槽9によって生成された酸性電解水は、酸性貯水槽101にて第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bの弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に供された再生水と混合される。電解槽9によって生成されたアルカリ性電解水は、アルカリ性貯水槽102にて第一中和槽4a及び第二中和槽4bの弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に供された再生水と混合される。
【0042】
電解槽9は、再生運転時に電気分解を行う。この電気分解により、陽極となる電極41aで酸素が生成し、陰極となる電極41bで水素が生成する。この酸素及び水素は気体であり、電解槽9に流入する水である電解槽流入水の流量が小さい場合には、生成した気体が電解槽9内に蓄積する。この電解槽9内に蓄積した気体は、電極41と流入水との接触面積を減少させる。つまり、蓄積した気体により、電気分解時における電極41の使用可能面積が減少するため、電解槽9の電圧上昇及び電極41の劣化が促進される。
【0043】
そこで、電解槽9の電圧上昇及び電極41の劣化を抑制するために、後述する電解水送
液ポンプによる電解槽9への電解槽流入水の流量は、混合水送液ポンプによる樹脂槽への流入水流量よりも大きくする必要がある。例えば、電解水送液ポンプによる電解槽流入水の流量が2L/min、混合水送液ポンプによる樹脂槽流入水の流量が1L/minとすることが好ましい。この電解槽流入水の流量は、電解槽9の流路幅または通電電流値に基づいて決定される。
【0044】
また、電気分解の際に生成する酸素及び水素の体積比は2:1であるため、酸素が発生する電極41a側への流入水流量及び水素が発生する電極41b側への流入水流量の比は、1:2とすることが好ましい。例えば、酸性電解水送液ポンプ103による酸素が発生する電極41a側への流入水流量が2L/min、アルカリ性電解水送液ポンプ105による水素が発生する電極41b側への流入水量が4L/minとすることが好ましい。この電解槽流入水の流量は、電解槽9の流路幅または通電電流値に基づいて決定される。
【0045】
なお、電解槽9は、後述する制御部15によって、一対の電極41への通電状態を制御できるように構成されている。
【0046】
((送液ポンプ))
酸性電解水送液ポンプ103は、再生装置8による再生処理の際に、酸性電解水循環流路402(図3参照)に酸性電解水を流通させる機器である。酸性電解水送液ポンプ103は、酸性貯水槽101と電解槽9との間を連通接続する酸性電解水供給流路111に設けられている。酸性電解水送液ポンプ103をこのように配置するのは、酸性電解水送液ポンプ103単独で、酸性電解水循環流路402に酸性電解水を循環させやすくするためである。
【0047】
酸性混合水送液ポンプ104は、再生装置8による再生処理の際に、酸性混合水循環流路401(図3参照)に酸性混合水を流通させる機器である。酸性混合水送液ポンプ104は、酸性貯水槽101と第二軟水槽3bとの間を連通接続する酸性混合水供給流路35に設けられている。酸性混合水送液ポンプ104をこのように配置するのは、酸性混合水送液ポンプ104単独で、酸性混合水循環流路401に酸性混合水を循環させやすくするためである。
【0048】
アルカリ性電解水送液ポンプ105は、再生装置8による再生処理の際に、アルカリ性電解水循環流路404(図4参照)にアルカリ性電解水を流通させる機器である。アルカリ性電解水送液ポンプ105は、アルカリ性貯水槽102と電解槽9との間を連通接続するアルカリ性電解水供給流路113に設けられている。アルカリ性電解水送液ポンプ105をこのように配置するのは、アルカリ性電解水送液ポンプ105単独で、アルカリ性電解水循環流路404にアルカリ性電解水を循環させやすくするためである。
【0049】
アルカリ性混合水送液ポンプ106は、再生装置8による再生処理の際に、アルカリ性混合水循環流路403(図4参照)にアルカリ性混合水を流通させる機器である。アルカリ性混合水送液ポンプ106は、アルカリ性貯水槽102と第二中和槽4bとの間を連通接続するアルカリ性混合水供給流路36に設けられている。アルカリ性混合水送液ポンプ106をこのように配置するのは、アルカリ性混合水送液ポンプ106単独で、アルカリ性混合水循環流路403にアルカリ性混合水を循環させやすくするためである。
【0050】
また、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105、及びアルカリ性混合水送液ポンプ106は、後述する制御部15及び流量制御部201と無線または有線により通信可能に接続されている。各送液ポンプは、流量制御部201により独立して流量を制御される。
【0051】
((捕捉部))
捕捉部10は、電解槽9とアルカリ性貯水槽102とを連通接続するアルカリ性電解水回収流路114に設けられている。
【0052】
捕捉部10は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水に含まれる析出物を捕捉する。析出物とは、電解槽9内において、再生処理の際に第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから放出された陽イオンである硬度成分がアルカリ性電解水と反応することにより生じる反応生成物である。より詳細には、電解槽9で水の電気分解が行われている間、再生処理時の第一軟水槽3aと第二軟水槽3bから放出される硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、陰極(電極41b)側に移動する。陰極側ではアルカリ性電解水が生成しているため、硬度成分とアルカリ性電解水が反応し、析出物となる。例えば、硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じる反応が起こったり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、硬度成分に由来する析出物は、アルカリ性電解水回収流路114に設けられた捕捉部10で析出物として捕捉される。そして、硬度成分に由来する析出物を捕捉部10で捕捉することにより、析出物が第二中和槽4bに流入し、堆積することを抑制できる。したがって、再生処理の終了後に軟水化処理を再開する場合には、第二中和槽4bに堆積した析出物が第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから放出された水素イオンと反応してイオン化することを原因とした、第二中和槽4bから送出される軟水の硬度上昇を抑制できる。
【0053】
また、捕捉部10を備えない場合と比較し、酸性電解水は含有する硬度成分が減少している。つまり、捕捉部10で析出物を捕捉することにより、酸性電解水の硬度が低下するため、第一軟水槽3aと第二軟水槽3bに流入する硬度成分を減少させることができ、弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生効率の低下を抑制できる。
【0054】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、反応しない成分もしくは溶解度積を超えない成分が含まれている状態も含むものとする。
【0055】
捕捉部10は、硬度成分とアルカリ性電解水との反応により生じる析出物を分離可能であればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0056】
捕捉部10の形態として一般的に使用される手段としては、カートリッジタイプのフィルターが挙げられる。カートリッジタイプのフィルターとして、糸巻きフィルターのような深層ろ過型、プリーツフィルター及びメンブレンフィルターのような表面ろ過型、またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0057】
捕捉部10は、開閉弁22及び捕捉部排水口14を備える。
【0058】
開閉弁22は、捕捉部10の下部に設けられる弁であり、捕捉部10内の排水を制御する弁である。開閉弁22を開放することにより、捕捉部10内の水を捕捉部排水口14から装置外に排出できる。
【0059】
捕捉部排水口14は、捕捉部10内の水を装置外に排出する開口である。捕捉部排水口14の上流に設けられる開閉弁22を開放することにより、捕捉部排水口14から捕捉部10内の水を装置外に排出できる。
【0060】
((開閉弁及び流路切替えバルブ))
複数の開閉弁(開閉弁18~開閉弁23、開閉弁301~開閉弁309)は、各流路に
それぞれ設けられ、各流路において「開放」した状態と、「閉止」した状態とを切り替える。
【0061】
複数の開閉弁(開閉弁18、開閉弁19、開閉弁21、開閉弁23及び開閉弁301~308)は、弁の開閉により、各流路への水の流通を開始あるいは停止する。
【0062】
開閉弁20、開閉弁22、及び開閉弁309は、後述する再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程の際に、開放した状態となり、再生循環水を装置外に排出する。
【0063】
複数の流路切替えバルブ(流路切替えバルブ24~流路切替えバルブ27)は、第一軟水槽3a、第二軟水槽3b、第一中和槽4a、及び第二中和槽4bにそれぞれ設けられる。複数の流路切替えバルブはいずれも、3つの開口を備え、1つ目の開口は水の流入及び流出が可能な流入流出口、2つ目の開口は流出口としては機能せず流入口として機能する流入口、3つ目の開口は流入口としては機能せず流出口として機能する流出口である。複数の流路切替えバルブはいずれも、流入流出口は常に「開放」しており、通水方向により、流入口か流出口のうちどちらか一方が「開放」している時には、他方の流入口か流出口は「閉止」している。流路切替えバルブ24~27を備えることにより、軟水化装置1内の各流路に必要な開閉弁の数を減少でき、軟水化装置1のコストの低減ができる。
【0064】
また、複数の開閉弁(開閉弁18~開閉弁23、開閉弁301~開閉弁309)と複数の流路切替えバルブ(流路切替えバルブ24~流路切替えバルブ27)はそれぞれ、後述する制御部15と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0065】
((排水口))
第一排水口11は、後述する酸性混合水供給流路35に備えられ、再生流路洗浄工程において装置内の水を装置外に排出する開口である。第一排水口11の上流には開閉弁20が設けられており、開閉弁20を開放することにより、第一排水口11から排水を行うことができる。
【0066】
第二排水口12は、後述する酸性電解水回収流路112において電解槽9と開閉弁304の間に備えられ、電解槽洗浄工程において装置内の水を装置外に排出する開口である。第二排水口12の上流には開閉弁309が設けられており、開閉弁309を開放することにより、第二排水口12から排水を行うことができる。
【0067】
捕捉部排水口14は、捕捉部10に備えられ、捕捉部10内の水を装置外に排出する開口である。捕捉部排水口14の上流に設けられる開閉弁22を開放することにより、捕捉部排水口14から捕捉部10内の水を装置外に排出できる。
【0068】
((貯水槽))
酸性貯水槽101は、酸性混合水供給流路35により第二軟水槽3bと接続され、酸性混合水回収流路37により第一軟水槽3aと接続され、酸性電解水供給流路111及び酸性電解水回収流路112により電解槽9と接続される。
【0069】
酸性貯水槽101には、電解槽9にて生成された酸性電解水が酸性電解水回収流路112を介して流入する。また、酸性貯水槽101には、軟水槽3に備えられた弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に供された酸性再生水が酸性混合水回収流路37を介して流入する。酸性貯水槽101に流入した酸性電解水と酸性再生水は、酸性貯水槽101内で混合され、酸性混合水となる。そして、酸性貯水槽101内の酸性混合水は、その一部が酸性電解水送液ポンプ103により酸性電解水供給流路111を介して電解槽9へ供給され、一部が酸性混合水送液ポンプ104により酸性混合水供給流路35を介して第二軟水槽3b
へ供給される。なお、酸性再生水とは、軟水槽3を流通した水である。
【0070】
アルカリ性貯水槽102は、アルカリ性混合水供給流路36により第二中和槽4bと接続され、アルカリ性混合水回収流路38により第一中和槽4aと接続され、アルカリ性電解水供給流路113及びアルカリ性電解水回収流路114により電解槽9と接続される。
【0071】
アルカリ性貯水槽102には、電解槽9にて生成されたアルカリ性電解水がアルカリ性電解水回収流路114を介して流入する。また、アルカリ性貯水槽102には、中和槽4に備えられた弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に供されたアルカリ性再生水がアルカリ性混合水回収流路38を介して流入する。アルカリ性貯水槽102に流入したアルカリ性電解水とアルカリ性再生水は、アルカリ性貯水槽102内で混合され、アルカリ性混合水となる。そして、アルカリ性貯水槽102内のアルカリ性混合水は、その一部がアルカリ性電解水送液ポンプ105によりアルカリ性電解水供給流路113を介して電解槽9へ供給され、一部がアルカリ性混合水送液ポンプ106によりアルカリ性混合水供給流路36を介して第二中和槽4bへ供給される。なお、アルカリ性再生水とは、中和槽4を流通した水である。
【0072】
((検知部))
酸性上流検知部107は、酸性混合水供給流路35に備えられ、再生工程時に酸性混合水送液ポンプ104により酸性貯水槽101から第二軟水槽3bへ送水される酸性水のイオン濃度を上流酸性水イオン濃度として検知する。
【0073】
酸性下流検知部108は、酸性混合水回収流路37に備えられ、再生工程時に酸性混合水送液ポンプ104により第一軟水槽3aから酸性貯水槽101へ送水される酸性水のイオン濃度を下流酸性水イオン濃度として検知する。
【0074】
アルカリ性上流検知部109は、アルカリ性混合水供給流路36に備えられ、再生工程時にアルカリ性混合水送液ポンプ106によりアルカリ性貯水槽102から第二中和槽4bへ送水されるアルカリ性水のイオン濃度を上流アルカリ性水イオン濃度として検知する。
【0075】
アルカリ性下流検知部110は、アルカリ性混合水回収流路38に備えられ、再生工程時にアルカリ性混合水送液ポンプ106により第一中和槽4aからアルカリ性貯水槽102へ送水されるアルカリ性水のイオン濃度を下流アルカリ性水イオン濃度として検知する。
【0076】
酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、及びアルカリ性下流検知部110が検知するイオン種として、例えば水素イオン、水酸化物イオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオンがある。
【0077】
酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、及びアルカリ性下流検知部110にて、検知するイオン種が水素イオンまたは水酸化物イオンである場合は、例えばpHメータを検知部として用いることができる。この場合、酸性上流検知部107及び酸性下流検知部108では酸性水の水素イオン濃度を検知する。また、アルカリ性上流検知部109及びアルカリ性下流検知部110ではアルカリ性水の水酸化物イオン濃度を検知する。こうした構成によれば、再生行程において電解槽9で生成された水素イオン、水酸化物イオンが再生水中に存在する量を定量することができる。
【0078】
また、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、及びアルカリ性下流検知部110にて、検知するイオン種がカルシウムイオンまたはマグ
ネシウムイオンである場合は、例えばイオンメータを検知部として用いることができる。この場合、酸性上流検知部107及び酸性下流検知部108では酸性水のカルシウムイオン濃度またはマグネシウムイオン濃度を検知する。また、アルカリ性上流検知部109及びアルカリ性下流検知部110ではアルカリ性水のカルシウムイオン濃度またはマグネシウムイオン濃度を検知する。こうした構成によれば、再生行程が進行する中で、軟水槽3より再生水に放出されるカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン量を定量することができる。
【0079】
また、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、及びアルカリ性下流検知部110はそれぞれ、後述する制御部15と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0080】
((制御部))
図9を参照して、制御部15について説明する。図9は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【0081】
制御部15は、軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程の各工程の実行及び各工程間の切替えを制御する。
【0082】
具体的には、制御部15は、軟水化工程から再生工程への切替え、再生工程から再生流路洗浄工程への切替え、再生流路洗浄工程から電解槽洗浄工程への切替え、電解槽洗浄工程から捕捉部洗浄工程への切替え、及び捕捉部洗浄工程から軟水化工程への切替えを制御する。
【0083】
また、制御部15は、開閉弁20、開閉弁22及び開閉弁309を制御し、再生流路洗浄工程と、電解槽洗浄工程と、捕捉部洗浄工程の際の排水を制御する。
【0084】
また、制御部15は、流路切替えバルブ24~流路切替えバルブ27、開閉弁18、開閉弁19、開閉弁21、開閉弁23及び開閉弁301~308を制御し、流路の切替えを実行する。
【0085】
制御部15は、流量制御部201、酸性差算出部202、及びアルカリ性差算出部203を備える。
【0086】
流量制御部201は、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105、及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の流量をそれぞれ個別に独立して制御する。
【0087】
酸性差算出部202は、酸性上流検知部107により検知された上流酸性水イオン濃度と酸性下流検知部108により検知された下流酸性水イオン濃度との差である酸性水イオン濃度差を算出する。
【0088】
アルカリ性差算出部203は、アルカリ性上流検知部109により検知された上流アルカリ性水イオン濃度とアルカリ性下流検知部110により検知された下流アルカリ性水イオン濃度の差であるアルカリ性水イオン濃度差を算出する。
【0089】
流量制御部201は、酸性差算出部202により算出された酸性水イオン濃度差の値と酸側第一基準値及び酸側第二基準値とを比較し、比較結果に基づいて、酸性電解水送液ポンプ103または酸性混合水送液ポンプ104の少なくとも一方の流量を制御する。同様に、流量制御部201は、アルカリ性差算出部203により算出されたアルカリ性水イオ
ン濃度差の値とアルカリ側第一基準値及びアルカリ側第二基準値とを比較し、比較結果に基づいてアルカリ性電解水送液ポンプ105またはアルカリ性混合水送液ポンプ106の少なくとも一方の流量を制御する。
【0090】
なお、酸側第一基準値及びアルカリ側第一基準値は、例えば水素イオン濃度0.5mmol/Lであり、再生運転開始初期(すなわち、再生効率が高い時期)の樹脂槽上流側と下流側との濃度差に対して、50%の値とすることが好ましい。この場合では、再生運転開始初期より再生効率が50%低下した場合に、差算出部により算出された濃度差が第一基準値未満となる。
【0091】
一般的に、樹脂槽に備えられるイオン交換樹脂の再生反応では、イオン交換樹脂に流入する水の流量が低い場合に再生効率が高くなる。そのため、差算出部により算出された濃度差が第一基準値未満となった場合、すなわち樹脂槽での再生効率が50%以下となった場合には、流量制御部201により混合水送液ポンプの流量を下げる。これにより、樹脂槽での再生効率を上昇させることができる。このとき、流量制御部201により上昇させる混合水送液ポンプの流量は、例えば0.5 L/minであり、混合水送液ポンプの吐出制御可能流量下限値を下回らない範囲で設定される。
【0092】
また、酸側第二基準値及びアルカリ側第二基準値は、例えば水素イオン濃度0.1 mmol/Lであり、再生運転開始初期(すなわち再生効率が高い時期)の樹脂槽上流側と下流側との濃度差に対して、10%の値とすることが好ましい。この場合では、再生運転開始初期より再生効率が90%低下した場合に、差算出部により算出された濃度差が第二基準値未満となる。
【0093】
算出された濃度差が第二基準値未満となった場合、樹脂槽に備えられたイオン交換樹脂の再生はほとんど完了している。そのため、電解槽9の通電、酸性電解水送液ポンプ103及びアルカリ性電解水送液ポンプ105の運転を停止し、酸性混合水送液ポンプ104及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の運転を継続する。これにより、電解槽9の過剰運転を抑制し、電極41の劣化を抑制することができる。
【0094】
また、電解槽9の通電を停止、酸性電解水送液ポンプ103及びアルカリ性電解水送液ポンプ105の運転を停止し、酸性混合水送液ポンプ104及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の運転を継続している場合に、差算出部により算出された濃度差が第二基準値以上となった場合は、再び電解槽9へ通電し、酸性電解水送液ポンプ103及びアルカリ性電解水送液ポンプ105の運転を再開し、イオン交換樹脂の再生を行う。
【0095】
なお、制御部15は、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているとしたが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0096】
(各流路)
((流路))
流路53は、流入口2と取水口7とを連通接続する流路であり、流路上には開閉弁18が設けられている。流路53により、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程のいずれかを実施している場合でも、軟水化装置1の利用者は、取水口7から原水を得ることができる。
【0097】
((軟水化流路))
図2を参照して、軟水化装置1の軟水化工程の際に形成される軟水化流路43について説明する。図2は軟水化装置1の軟水化流路43を示す構成図である。
【0098】
軟水化流路43(図2の斜線矢印)は、原水の軟水化を行う流路であり、軟水化流路43を流通した原水は中性の軟水となり、取水口7から装置外に排出される。
【0099】
軟水化流路43は、流入口2、流路28、第一軟水槽3a、流路29、第一中和槽4a、流路30、第二軟水槽3b、流路31、第二中和槽4b、流路32、取水口7により形成される。
【0100】
流路28は、流入口2から第一軟水槽3aまでを接続する流路である。つまり、流路28は、硬度成分を含む原水を流入口から第一軟水槽3aへ導く流路である。
【0101】
流路29は、第一軟水槽3aから第一中和槽4aまでを接続する流路である。つまり、流路29は、第一軟水槽3aで軟水化された水を第一中和槽4aに導く流路である。
【0102】
流路30は、第一中和槽4aから第二軟水槽3bまでを接続する流路である。つまり、流路30は、第一中和槽4aで中和された水を第二軟水槽3bへ導く流路である。
【0103】
流路31は、第二軟水槽3bから第二中和槽4bまでを接続する流路である。つまり、流路31は、第二軟水槽3bで軟水化された水を第二中和槽4bに導く流路である。
【0104】
流路32は、第二中和槽4bから取水口7までを接続する流路である。つまり、流路32は、軟水化された原水を第二中和槽4bから取水口7に導く流路である。
【0105】
図2に示すように、流入口2の下流側且つ第一軟水槽3aの上流側の流路28上に開閉弁19が設置されている。また、流路53には、開閉弁18が設置されている。そして、開閉弁18を閉止して、開閉弁19を開放することにより、第一軟水槽3aと流入口2が連通接続される。また、流路切替えバルブ24を第一軟水槽3aと第一中和槽4aとが連通接続するように切替え、流路切替えバルブ25を第二軟水槽3bと第二中和槽4bが連通接続するように切り替え、流路切替えバルブ26を第一中和槽4aと第二軟水槽3bが連通接続するように切り替え、流路切替えバルブ27を第二軟水槽3bと第二中和槽4bが連通接続するように切り替える。これにより、流入口2から、流路28、第一軟水槽3a、流路29、第一中和槽4a、流路30、第二軟水槽3b、流路31、第二中和槽4b、流路32、取水口7までを連通接続する軟水化流路43が形成される。
【0106】
((酸性混合水循環流路及び酸性電解水循環流路))
次に、図3を参照して、軟水化装置1の再生工程の際に形成される酸性混合水循環流路401及び酸性電解水循環流路402について説明する。図3は、軟水化装置1の酸性混合水循環流路401及び酸性電解水循環流路402を示す構成図である。
【0107】
まず、酸性混合水循環流路401について説明する。
【0108】
酸性混合水循環流路401は、再生工程時に酸性混合水が流通することにより、第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bの再生を行う流路である。酸性混合水循環流路401は、図3(白矢印)に示すように、酸性貯水槽101に貯水された酸性混合水が酸性混合水送液ポンプ104によって酸性上流検知部107、第二軟水槽3b、第一軟水槽3a、及び酸性下流検知部108を流通し、酸性貯水槽101に戻って循環する流路である。
【0109】
具体的には、酸性混合水循環流路401は、酸性混合水供給流路35、中和槽バイパス流路42、及び酸性混合水回収流路37の各流路によって構成される。
【0110】
酸性混合水供給流路35は、酸性貯水槽101から酸性上流検知部107、酸性混合水送液ポンプ104を介して第二軟水槽3b下流側までを連通接続する流路であり、酸性貯水槽101から第二軟水槽3bへ酸性混合水を供給する流路である。
【0111】
中和槽バイパス流路42は、第一中和槽4aを迂回して第二軟水槽3bの上流側から第一軟水槽3aの下流側までを連通接続する流路であり、第二軟水槽3bから第一軟水槽3aへ酸性電解水を供給する流路である。
【0112】
酸性混合水回収流路37は、第一軟水槽3aの上流側から酸性下流検知部108を介して酸性貯水槽101までを連通接続する流路であり、第一軟水槽3aから酸性貯水槽101へ酸性混合水を供給する流路である。
【0113】
次に、酸性電解水循環流路402は、再生工程時に酸性混合水が流通することにより、電解槽9による酸性電解水の生成を行う流路である。酸性電解水循環流路402は、図3(黒矢印)に示すように、酸性貯水槽101に貯水された酸性混合水が酸性電解水送液ポンプ103によって電解槽9を流通し、酸性貯水槽101に戻って循環する流路である。
【0114】
具体的には、酸性電解水循環流路402は、酸性電解水供給流路111及び酸性電解水回収流路112の各流路によって構成される。
【0115】
酸性電解水供給流路111は、酸性貯水槽101から酸性電解水送液ポンプ103を介して電解槽9の電極41a側流入口までを連通接続する流路であり、酸性貯水槽101から電解槽9へ酸性混合水を供給する流路である。
【0116】
酸性電解水回収流路112は、電解槽9の電極41a側吐出口から酸性貯水槽101までを連通接続する流路であり、電解槽9で生成された酸性電解水を酸性貯水槽101へ供給する流路である。
【0117】
((アルカリ性混合水循環流路及びアルカリ性電解水循環流路))
次に、図4を参照して、軟水化装置1の再生工程の際に形成されるアルカリ性混合水循環流路403及びアルカリ性電解水循環流路404について説明する。図4は、軟水化装置1のアルカリ性混合水循環流路403及びアルカリ性電解水循環流路404を示す構成図である。
【0118】
まず、アルカリ性混合水循環流路403について説明する。
【0119】
アルカリ性混合水循環流路403は、再生工程時にアルカリ性混合水が流通することにより、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの再生を行う流路である。アルカリ性混合水循環流路403は、図4(白矢印)に示すように、アルカリ性貯水槽102に貯水されたアルカリ性混合水がアルカリ性混合水送液ポンプ106によってアルカリ性上流検知部109、第二中和槽4b、第一軟水槽3a、及びアルカリ性下流検知部110を流通し、アルカリ性貯水槽102に戻って循環する流路である。
【0120】
具体的には、アルカリ性混合水循環流路403は、アルカリ性混合水供給流路36、軟水槽バイパス流路44、及びアルカリ性混合水回収流路38の各流路によって構成される。
【0121】
アルカリ性混合水供給流路36は、アルカリ性貯水槽102からアルカリ性上流検知部109及びアルカリ性混合水送液ポンプ106を介して第二中和槽4b下流側までを連通接続する流路であり、アルカリ性貯水槽102から第二中和槽4bへアルカリ性混合水を供給する流路である。 軟水槽バイパス流路44は、第二軟水槽3bを迂回して第二中和槽4bの上流側から第一中和槽4aの下流側までを連通接続する流路であり、第二中和槽4bから第一中和槽4aへアルカリ性電解水を供給する流路である。
【0122】
アルカリ性混合水回収流路38は、第一中和槽4aの上流側からアルカリ性下流検知部110を介してアルカリ性貯水槽102までを連通接続する流路であり、第一中和槽4aからアルカリ性貯水槽102へアルカリ性混合水を供給する流路である。
【0123】
次に、アルカリ性電解水循環流路404は、再生工程時にアルカリ性混合水が流通することにより、電解槽9によるアルカリ性電解水の生成を行う流路である。アルカリ性電解水循環流路404は、図4(黒矢印)に示すように、アルカリ性貯水槽102に貯水されたアルカリ性混合水がアルカリ性電解水送液ポンプ105によって電解槽9及び捕捉部10を流通し、アルカリ性貯水槽102に戻って循環する流路である。
【0124】
具体的には、アルカリ性電解水循環流路404は、アルカリ性電解水供給流路113及びアルカリ性電解水回収流路114の各流路によって構成される。
【0125】
アルカリ性電解水供給流路113は、アルカリ性貯水槽102からアルカリ性電解水送液ポンプ105を介して電解槽9の電極41b側流入口までを連通接続する流路であり、アルカリ性貯水槽102から電解槽9へアルカリ性混合水を供給する流路である。
【0126】
アルカリ性電解水回収流路114は、電解槽9の電極41b側吐出口から捕捉部10を介してアルカリ性貯水槽102までを連通接続する流路であり、電解槽9で生成されたアルカリ性電解水をアルカリ性貯水槽102へ供給する流路である。
【0127】
((再生流路洗浄流路))
次に、図5を参照して、軟水化装置1の再生流路洗浄工程の際に形成される再生流路洗浄流路45について説明する。図5は、軟水化装置1の再生流路洗浄流路45を示す構成図である。
【0128】
再生流路洗浄流路45は、後述する再生流路洗浄工程の際に、流路内に残存する高硬度水を第一中和槽4a及び第二中和槽4bに流入させずに装置外に排出する流路である。再生流路洗浄流路45は、第一排水流路46及び第二排水流路47を含んで構成される。
【0129】
第一排水流路46は、図5(白矢印)に示すように、流入口2から、酸性下流検知部108、酸性貯水槽101、酸性上流検知部107、酸性混合水送液ポンプ104、第一排水口11を接続する各流路によって構成される。具体的には、第一排水流路46は、流入口2から流入した原水を、流路28、酸性混合水回収流路37、酸性貯水槽101、酸性混合水供給流路35、開閉弁20、第一排水口11の順に流通させる流路である。
【0130】
開閉弁20を開放することで流路内の水を第一排水口11から装置外に排水し、開閉弁20を閉止することで第一排水口11からの排水を停止可能である。
【0131】
第二排水流路47は、図4(黒矢印)に示すように、流入口2から、第一軟水槽3a、第二軟水槽3b、開閉弁20、第一排水口11までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、第二排水流路47は、流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3a、中和槽バイパス流路42、第二軟水槽3b、酸性混合水供給流路35、開閉
弁20、第一排水口11の順に流通させる流路である。
【0132】
なお、第二排水流路47を流通する水の流量は、第一排水流路を流通する水の流量よりも大きくなるよう制御されることが好ましい。これにより、軟水化工程時に使用される軟水槽を含む流路である第二排水流路内の高硬度水を優先的に原水に置換することができる。したがって、軟水化工程を開始した際の高硬度水の影響を抑制できる。
【0133】
((電解槽洗浄流路))
次に、図6を参照して、軟水化装置1の電解槽洗浄工程の際に形成される電解槽洗浄流路48について説明する。図6は、軟水化装置1の電解槽洗浄流路48を示す構成図である。
【0134】
電解槽洗浄流路48は、後述する電解槽洗浄工程の際に、電解槽9内の硬度成分に起因する析出物を除去する流路である。電解槽洗浄流路48は、第三排水流路49及び第四排水流路50を含んで構成される。
【0135】
まず、第三排水流路49は、図6(白矢印)に示すように、流入口2から、酸性下流検知部108、酸性貯水槽101、酸性電解水送液ポンプ103、電解槽9、開閉弁309、第二排水口12までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、第三排水流路49は、流入口2から流入した原水を、流路28、酸性貯水槽101、酸性電解水供給流路111、電解槽9、酸性電解水回収流路112、開閉弁309の順に流通させ、第二排水口12から装置外に排出する流路である。
【0136】
次に、第四排水流路50は、図6(黒矢印)に示すように、流入口2から、第一軟水槽3a、アルカリ性下流検知部110、アルカリ性貯水槽102、アルカリ性電解水送液ポンプ105、電解槽9、開閉弁21、捕捉部10、開閉弁22、捕捉部排水口14までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、第四排水流路50は、流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3a、流路29、アルカリ性混合水回収流路38、アルカリ性貯水槽102、アルカリ性電解水供給流路113、電解槽9、アルカリ性電解水回収流路114、捕捉部10、開閉弁22の順に流通させ、捕捉部排水口14から装置外に排出する流路である。
【0137】
((捕捉部洗浄流路))
次に、図7を参照して、軟水化装置1の捕捉部洗浄工程の際に形成される捕捉部洗浄流路51について説明する。図7は、軟水化装置1の捕捉部洗浄流路51を示す構成図である。
【0138】
捕捉部洗浄流路51は、後述する捕捉部洗浄工程の際に、捕捉部10に析出した硬度成分由来の析出物を除去する流路である。捕捉部洗浄流路51は、第五排水流路52を含んで構成される。
【0139】
図7に示すように、捕捉部洗浄流路51は、流入口2から、開閉弁19、第一軟水槽3a、第一中和槽4a、第二軟水槽3b、第二中和槽4b、アルカリ性混合水送液ポンプ106、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性貯水槽102、捕捉部10、捕捉部排水口14までを連通接続する各流路によって構成される。具体的には、捕捉部洗浄流路51は流入口2から流入した原水を、流路28、第一軟水槽3a、流路29、第一中和槽4a、流路30、第二軟水槽3b、流路31、第二中和槽4b、アルカリ性混合水供給流路36、開閉弁23、アルカリ性混合水送液ポンプ106、アルカリ性上流検知部109、開閉弁307、アルカリ性貯水槽102、開閉弁306、捕捉部10、開閉弁22の順に流通させ、捕捉部排水口から装置外に排出する流路である。
【0140】
以上が軟水化装置1の構成である。
【0141】
次に、軟水化装置1の動作について説明する。
【0142】
(軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程)
次に、図8を参照して、軟水化装置1の軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程について説明する。図8は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。なお、以下では、軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程の一連の流れを軟化再生処理と称することがある。
【0143】
軟水化工程、再生工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、及び捕捉部洗浄工程では、制御部15は、図8に示すように、開閉弁18~開閉弁23、開閉弁301~309、流路切替えバルブ24~流路切替えバルブ27、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105及びアルカリ性混合水送液ポンプ106を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。
【0144】
ここで、図8中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態及び該当の送液ポンプが動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、該当の送液ポンプが停止している状態をそれぞれ示す。
【0145】
また、図8中の「(構成要素の番号)から(構成要素の番号)へ」は、該当の流路切替えバルブが該当の構成要素から該当の構成要素へと送水される方向へと流路を接続している状態を示す。例えば、軟水化工程の流路切替えバルブ24は、流路28から流路29へと送水可能となるように各流路を接続している。
【0146】
また、図8中の「(構成要素の番号)へ」は、該当の流路切替えバルブが、該当の構成要素へ送水される可能性のある方向へと流路を接続している状態を示す。この際には、流路は接続されているものの、該当の流路切替えバルブが設けられた軟水槽あるいは中和槽への水の流出入が発生しづらい環境下にあるため、該当の流路切替えバルブからの送水は極めて起こりづらい。
【0147】
また、電極41の通電状態については各工程にて図8を参照して後述する。
【0148】
また、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、アルカリ性差算出部203の動作状態については各工程にて図8を参照して後述する。
【0149】
((軟水化工程))
まず、軟水化装置1による軟水化工程時の動作について、図2及び図8の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0150】
軟水化装置1では、図8に示すように、軟水化工程において、開閉弁18を閉止した状態で流路28に設けた開閉弁19を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する。流入した原水は、第一軟水槽3a、第一中和槽4a、第二軟水槽3b、及び第二中和槽4bの順で流通するので、軟水化装置1は、取水口7から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、流路切替えバルブ24は流路28から流路29へ送水可能な接続状態、流路切替えバルブ25は流路29から流路30へ送水可能な接続状態、流路切替えバルブ26は流路30から流路31へ送水可能な接続状態、流路切替えバルブ27は流路31から流路32へ送水可能な接続状態になっている。開閉弁20
~開閉弁23、開閉弁301~開閉弁309は、いずれも閉止した状態になっている。また、電解槽9の電極41a、電極41b、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の動作も停止した状態である。
【0151】
また、軟水化工程において、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、アルカリ性差算出部203は動作状態でない。
【0152】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合または軟水化工程での処理水量が一定水量を超えた場合に軟水化工程を終了し、再生工程を実行する。
【0153】
((再生工程))
次に、軟水化装置1の再生装置8による再生工程時の動作について、図3図4、及び図8の「再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0154】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂33を充填した第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bは、使用を続けると陽イオン交換能力が消失または低下する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。水素イオンすべてが硬度成分と交換される前であっても、水素イオンが減少するにしたがってイオン交換反応が起こりにくくなるため、軟水化性能が低下する。このような状態になると、弱酸性陽イオン交換樹脂33から放出された硬度成分が処理水中に含まれるようになる。このため、軟水化装置1では、再生装置8による第一軟水槽3a、第二軟水槽3b、第一中和槽4a、及び第二中和槽4bの再生処理を行う必要が生じる。
【0155】
再生工程時には、図3に示す酸性混合水循環流路401及び酸性電解水循環流路402、及び、図4に示すアルカリ性混合水循環流路403及びアルカリ性電解水循環流路404が形成されるように、制御部15による各開閉弁の開閉等が行われる。
【0156】
図3に示す酸性混合水循環流路401及び酸性電解水循環流路402、及び、図4に示すアルカリ性混合水循環流路403及びアルカリ性電解水循環流路404の形成について説明する。
【0157】
酸性混合水循環流路401、酸性電解水循環流路402、アルカリ性混合水循環流路403、及びアルカリ性電解水循環流路404では、開閉弁19、開閉弁20、開閉弁22を閉止して、開閉弁18、開閉弁21、開閉弁23、開閉弁301~開閉弁309を開放し、流路切替えバルブ24を中和槽バイパス流路42から酸性混合水回収流路37へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ25を軟水槽バイパス流路44からアルカリ性混合水回収流路38へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ26を酸性混合水供給流路35から中和槽バイパス流路42へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ27をアルカリ性混合水供給流路36から軟水槽バイパス流路44へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3aと第二軟水槽3bとが連通接続する状態、第一中和槽4aと第二中和槽4bとが連通接続する状態、及び第一排水口11、第二排水口12、及び捕捉部排水口14からの排水を停止した状態とする。これにより、図3に示す酸性混合水循環流路401及び酸性電解水循環流路402、図4に示すアルカリ性混合水循環流路403及びアルカリ性電解水循環流路404がそれぞれ形成される。
【0158】
そして、酸性混合水送液ポンプ104を動作させると酸性混合水循環流路401を酸性再生水及び酸性混合水が循環する。酸性電解水送液ポンプ103を動作させると酸性電解
水循環流路402を酸性電解水及び酸性混合水が循環する。アルカリ性電解水送液ポンプ105を動作させると、アルカリ性電解水循環流路404をアルカリ性電解水及びアルカリ性混合水が循環する。アルカリ性混合水送液ポンプ106を動作させると、アルカリ性混合水循環流路403をアルカリ性再生水及びアルカリ性混合水が循環する。
【0159】
また、再生工程においては、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、アルカリ性差算出部203は動作状態である。
【0160】
また、図3及び図4に示すように、酸性混合水循環流路401、酸性電解水循環流路402、アルカリ性混合水循環流路403、及びアルカリ性電解水循環流路404がそれぞれ形成されている状態では、電極41aが電極41bに対して高電位となるように通電する(正運転)。すなわち、電極41aが陽極、電極41bが陰極として機能する。これにより、電気分解の際に、電極41a(陽極)では水素イオンが生じ、電極41a(陽極)付近では、酸性電解水が生成する。一方、電極41b(陰極)では水酸化物イオンが生じ、電極41b(陰極)ではアルカリ性電解水が生成する。
【0161】
電解槽9で生成した酸性電解水は、酸性電解水回収流路112を流通し酸性貯水槽101内に送水され、酸性再生水と混合されることで酸性混合水となる。酸性混合水の一部は、酸性電解水送液ポンプ103により酸性電解水供給流路111を流通して再び電解槽9へ流入する。また、酸性貯水槽101内の酸性混合水の一部は、酸性混合水送液ポンプ104により、酸性混合水供給流路35、酸性上流検知部107、流路切替えバルブ26を介して、第二軟水槽3bへ送水され、内部の第二弱酸性陽イオン交換樹脂33bを流通する。そして、第二軟水槽3bを流通した酸性水は、中和槽バイパス流路42を流通し流路切替えバルブ24を介して、第一軟水槽3a内に送水され、内部の第一弱酸性陽イオン交換樹脂33aを流通する。すなわち、酸性混合水を弱酸性陽イオン交換樹脂33に通水することで、弱酸性陽イオン交換樹脂33に吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性混合水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂33が再生される。その後、第一軟水槽3aを流通した酸性混合水は、陽イオンを含み、酸性混合水回収流路37へ流入する。すなわち、弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通した陽イオンを含む酸性混合水は、酸性混合水回収流路37、酸性下流検知部108を介して酸性貯水槽101に回収される。
【0162】
このように、酸性混合水循環流路401は、酸性水を、原水の流入口から最も下流に位置する軟水槽であり、上流側の軟水槽より硬度成分の吸着量が少ない第二弱酸性陽イオン交換樹脂33bを有する軟水槽である第二軟水槽3bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二軟水槽3bに比べて硬度成分がより多く吸着している第一弱酸性陽イオン交換樹脂33aを有する第一軟水槽3aの下流側へと流入させるように構成される。つまり、酸性混合水循環流路401は、酸性貯水槽101に貯水された酸性混合水を、第二軟水槽3bに流通させた後、中和槽バイパス流路42によって第一軟水槽3aへと送出し、第一軟水槽3aを流通させ、酸性混合水回収流路37を介して酸性貯水槽101へ流入させる流路である。これにより、再生工程の際には、第一軟水槽3aと比べて硬度成分の吸着量が少ない第二軟水槽3bに、酸性貯水槽101から送水された酸性混合水が流入し、硬度成分を含んだ酸性混合水が第二軟水槽3bから第一軟水槽3aへと吐出される。第二軟水槽3bの弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生では、第一軟水槽3aと比較し、酸性電解水中の水素イオンの消費が少ないため、第一軟水槽3aの再生と比べ、水素イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水素イオンを多く含有する酸性混合水が第一軟水槽3aに流入し、硬度成分が第一軟水槽3aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0163】
また、酸性電解水循環流路402では、酸性電解水送液ポンプ103により電解槽9で生成された酸性電解水が、酸性電解水回収流路112を介して、酸性貯水槽101に送水され、酸性混合水となる。酸性貯水槽101に貯水された酸性電解水が、酸性電解水供給流路111を介して電解槽9に送水される。
【0164】
一方、電解槽9の陰極付近で生成したアルカリ性電解水は、アルカリ性電解水回収流路114及び捕捉部10を流通しアルカリ性貯水槽102内に送水され、アルカリ性再生水と混合されることでアルカリ性混合水となる。アルカリ性混合水の一部は、アルカリ性電解水送液ポンプ105によりアルカリ性電解水供給流路113を流通して再び電解槽9へ流通する。また、アルカリ性貯水槽102内のアルカリ性混合水の一部は、アルカリ性混合水送液ポンプ106により、アルカリ性混合水供給流路36、アルカリ性上流検知部109、流路切替えバルブ27を介して第二中和槽4b内に送水され、内部の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂34bを流通する。そして、第二中和槽4bを流通したアルカリ性混合水は、軟水槽バイパス流路44を流通し、流路切替えバルブ25を介して第一中和槽4a内に送水され、内部の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂34aを流通する。すなわち、アルカリ性混合水を弱塩基性陰イオン交換樹脂34に通水させることで、弱塩基性陰イオン交換樹脂34に吸着されている陰イオンが、アルカリ性混合水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂34が再生される。
【0165】
その後、第一中和槽4aを流通したアルカリ性混合水は、陰イオンを含み、アルカリ性混合水回収流路38へ流入する。すなわち、弱塩基性陰イオン交換樹脂34を流通した陰イオンを含むアルカリ性混合水は、アルカリ性混合水回収流路38、アルカリ性下流検知部110を介してアルカリ性貯水槽102に回収される。
【0166】
このように、アルカリ性混合水循環流路403は、アルカリ性混合水を、原水の流入口から最も下流に位置する中和槽であり、上流側の中和槽と比較して陰イオンの吸着量が少ない第二弱塩基性陰イオン交換樹脂34bを有する第二中和槽4bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二中和槽4bに比べて陰イオンがより多く吸着している第一弱塩基性陰イオン交換樹脂34aを有する第一中和槽4aの下流側へと流入させるように構成した。つまり、中和槽再生循環流路40は、電解槽9から送出されたアルカリ性電解水を、第二中和槽4bに流通させた後、軟水槽バイパス流路44によって第一中和槽4aへと送出し、第一中和槽4aを流通させ、アルカリ性混合水回収流路38を介してアルカリ性貯水槽102へ流入させる流路である。これにより、再生工程時には、第一中和槽4aと比べて陰イオンの吸着量が少ない第二中和槽4bに、アルカリ性混合水が流入し、陰イオンを含んだアルカリ性混合水が第二中和槽4bから第一中和槽4aへと吐出される。第二中和槽4bの弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生では、第一中和槽4aと比較し、アルカリ性こ混合水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、第一中和槽4aの再生と比べ、水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水酸化物イオンを多く含有するアルカリ性混合水が第一中和槽4aに流入し、陰イオンが第一中和槽4aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生処理効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。なお、下流側とは、軟水化工程時の流路における下流側を指す。
【0167】
また、アルカリ性電解水循環流路404では、アルカリ性電解水送液ポンプ105により電解槽9で生成されたアルカリ性電解水が、アルカリ性電解水回収流路114及び捕捉部10を介して、アルカリ性貯水槽102に送水され、アルカリ性混合水となる。アルカリ性貯水槽102に貯水されたアルカリ性混合水が、アルカリ性電解水供給流路113を介して電解槽9に送水される。
【0168】
次に、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、及びアルカリ性
差算出部203による、再生時の動作状態の制御について、図8の「再生時」の欄を参照して説明する。
【0169】
再生時には、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105、及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の各流量は、流量制御部201により独立して制御される。
【0170】
酸性電解水送液ポンプ103の流量は、酸性混合水送液ポンプ104の流量よりも大きな値に設定される。また、アルカリ性電解水送液ポンプ105の流量は、アルカリ性混合水送液ポンプ106の流量よりも大きな値に設定される。これにより、電解槽9内における電気分解による気体の蓄積を抑制でき、かつ樹脂槽における再生反応の高効率化が可能となる。
【0171】
また、アルカリ性電解水送液ポンプ105の流量は、酸性電解水送液ポンプ103の流量よりも大きな値に設定される。これにより、電極41b側で発生し、電極41a側で発生する酸素よりも多く発生する水素による電解槽9への気体蓄積を抑制することができる。
【0172】
また、流量制御部201による各酸性送液ポンプの制御は、酸性差算出部202により算出された酸性水イオン濃度差と、酸側第一基準値または酸側第二基準値と、の比較により制御される。なお、酸性差算出部202により算出される酸性水イオン濃度差は、酸性上流検知部107により検知された上流酸性水イオン濃度及び酸性下流検知部108により検知された下流酸性水イオン濃度の差より算出される。
【0173】
また、流量制御部201による各アルカリ性送液ポンプの制御は、アルカリ性差算出部203により算出されたアルカリ性イオン濃度差と、アルカリ側第一基準値またはアルカリ側第二基準値と、の比較により制御される。なお、アルカリ性差算出部203により算出されるアルカリ性イオン濃度差は、アルカリ性上流検知部109により検知された上流アルカリ性水イオン濃度及びアルカリ性下流検知部110により検知された下流アルカリ性水イオン濃度の差より算出される。
【0174】
酸性差算出部202により算出された酸性水イオン濃度が酸側第一基準値以上であるとき、酸性混合水送液ポンプ104の流量は、流量制御部201により初期設定流量に設定される。初期設定流量とは、例えば1L/minであり、再生開始直後の酸性貯水槽101に貯水される酸性水のpH、初期設定流量、及び弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生効率に基づいて決定される。例えば、再生開始直後に酸性貯水槽101に貯水される酸性水のpHが3であり、この酸性水を酸性貯水槽101から軟水槽3に備えられる弱酸性陽イオン交換樹脂33に酸性混合水送液ポンプ104を用いて送水するときの流量と再生効率の関係が、流量1L/minの場合に再生効率90%であり、流量2L/minの場合に再生効率70%であれば、初期設定流量としてより再生効率の高い1L/minが設定される。
【0175】
次に、酸性水イオン濃度が酸側第一基準値未満且つ酸側第二基準値以上のとき、酸性混合水送液ポンプ104の流量は、流量制御部201により、初期設定流量よりも低い酸側高効率流量に設定される。酸側高効率流量とは、例えば0.5L/minであり、酸性水イオン濃度が酸側第一基準値に達した時点における再生初期からの再生効率の低下割合によって決定される。例えば、酸側第一基準値に達した時点での再生効率が、再生開始直後の再生効率より40%低下している場合、酸側高効率流量として初期設定流量の60%の値が設定される。このようにすることで、再生効率が低下する状態(例えば再生工程の終盤)において、流量を抑制した酸側高効率流量での再生を行うことができるため、再生効
率の低下を抑制することができる。なお、再生開始直後とは、例えば、再生工程の開始から、1秒経過後、1分経過後、10分経過後、1時間経過後等を指す。
【0176】
また、アルカリ性差算出部203により算出されたアルカリ性水イオン濃度がアルカリ側第一基準値以上であるとき、アルカリ性混合水送液ポンプ106の流量は、流量制御部201により初期設定流量に設定される。初期設定流量とは、例えば1L/minであり、再生開始直後のアルカリ性貯水槽102に貯水されるアルカリ性水のpH、初期設定流量、及び弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生効率に基づいて決定される。例えば、再生開始直後にアルカリ性貯水槽102に貯水されるアルカリ性水のpHが11であり、このアルカリ性水をアルカリ性貯水槽102から中和槽4に備えられる弱塩基性陰イオン交換樹脂34にアルカリ性混合水送液ポンプ106を用いて送水するときの流量と再生効率の関係が、流量1L/minの場合に再生効率90%であり、流量2L/minの場合に再生効率70%であれば、初期設定流量としてより再生効率の高い1L/minが設定される。
【0177】
次に、アルカリ性水イオン濃度がアルカリ側第一基準値未満且つアルカリ側第二基準値以上のとき、アルカリ性混合水送液ポンプ106の流量は、流量制御部201により、初期設定流量よりも低いアルカリ側高効率流量に設定される。アルカリ側高効率流量とは、例えば0.5L/minであり、アルカリ性水イオン濃度がアルカリ側第一基準値に達した時点における再生初期からの再生効率の低下割合によって決定される。例えば、アルカリ側第一基準値に達した時点での再生効率が、再生開始直後の再生効率より50%低下している場合、アルカリ側高効率流量として初期設定流量の50%の値が設定される。このようにすることで、再生効率が低下する状態(例えば再生工程の終盤)において、流量を抑制したアルカリ側高効率流量での再生を行うことができるため、再生効率の低下を抑制することができる。
【0178】
また、酸性差算出部202により算出された酸性水イオン濃度が酸側第二基準値未満、且つ、アルカリ性差算出部203により算出されたアルカリ性水イオン濃度がアルカリ側第二基準値未満の場合(つまり、弱酸性陽イオン交換樹脂の再生及び弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生が進行し、これ以上再生を実施しなくても良い場合)に、制御部15は、電極41への通電を停止する。また、この場合に、制御部15は、酸性電解水送液ポンプ103及びアルカリ性電解水送液ポンプ105の運転を停止させ、酸性電解水循環流路402における酸性水の循環及びアルカリ性電解水循環流路404におけるアルカリ性水の循環を停止する。この時、酸性混合水循環流路401における酸性水及びアルカリ性混合水循環流路403におけるアルカリ性水の循環は継続している。これにより、樹脂槽に備えられたイオン交換樹脂の再生がほとんど完了している状態において、電解槽9への通電を停止することができる。そのため、電解槽9の過剰運転による電極41の劣化を抑制することができる。
【0179】
また、酸性差算出部202により算出された酸性水イオン濃度が酸側第二基準値未満、且つ、アルカリ性差算出部203により算出されたアルカリ性水イオン濃度がアルカリ側第二基準値未満である状態から、酸性水イオン濃度またはアルカリ性水イオン濃度のどちらか一方が第二基準値以上となった場合には、制御部15は、再び電極41への通電を行い、酸性電解水送液ポンプ103及びアルカリ性電解水送液ポンプ105の運転を再開する。
【0180】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは再生工程が一定時間(例えば4時間)を超えた場合に再生工程を終了し、再生流路洗浄工程を実行する。
【0181】
なお、再生工程中に利用者が水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口等を開放することにより、原水が流入口2から流路53を通り、取水口7から流出するため、再生工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0182】
(再生流路洗浄工程)
次に、軟水化装置1の再生流路洗浄工程時の動作について、図5及び図8の「再生流路洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0183】
軟水化装置1において、再生工程中には、第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから硬度成分が酸性電解水中に放出され、酸性電解水は酸性混合水循環流路401から排出されることなく流路内を循環する。したがって、再生工程終了後の酸性混合水循環流路401内には、第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから放出された硬度成分を含む高硬度水で満たされている。この高硬度水の硬度は、原水の硬度(例えば450ppm)よりも著しく高くなっており、例えば2000ppm程度まで上昇する場合がある。この高硬度水が軟水化装置1内に残存した状態で軟水化工程に移行すると、取水口7からは高硬度水もしくは原水と高硬度水の混合水が排出される。したがって、軟水化装置1の利用者は、再生工程終了後に軟水化工程を実行した場合には、軟水化工程開始直後には軟水を得られないどころか原水よりも硬度の高い水を得ることになるという問題が生じる。また、高硬度水が第一軟水槽3a及び第二軟水槽3b内の弱酸性陽イオン交換樹脂33を流通することになり、再生工程で子吸着した硬度成分を水素イオンと置換して再生を行ったにもかかわらず、再度硬度成分を含む水が流通するため、せっかく行った再生処理により充填された水素イオンと硬度成分とが交換反応を起こし、弱酸性陽イオン交換樹脂33に再度硬度成分が吸着する。したがって、原水の軟水化に利用可能な水素イオンが減少し、軟水化性能が低下してしまう。これらの問題を解決するために、酸性混合水循環流路401内の高硬度水を排水する再生流路洗浄工程を行う。
【0184】
再生流路洗浄工程時において、開閉弁21~開閉弁23、開閉弁303~309を閉止して、開閉弁18~開閉弁20、開閉弁301、開閉弁302を開放し、流路切替えバルブ24は流路28から中和槽バイパス流路42へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ25は軟水槽バイパス流路44へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ26は中和槽バイパス流路42から酸性混合水供給流路35へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ27はアルカリ性混合水供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3aと第二軟水槽3bとが連通接続する状態、第二軟水槽3bと第一排水口11とが連通接続する状態、酸性下流検知部108と酸性貯水槽101が連通接続する状態、酸性貯水槽101と第一排水口11が酸性上流検知部107と酸性混合水送液ポンプ104を介して連通接続する状態、第二排水口12及び捕捉部排水口14の排水を停止した状態とする。これにより、図5に示すように、第一排水流路46及び第二排水流路47がそれぞれ形成される。なお、この時、電極41、酸性電解水送液ポンプ103、酸性混合水送液ポンプ104、アルカリ性電解水送液ポンプ105、及びアルカリ性混合水送液ポンプ106の動作は停止している。なお、再生流路洗浄工程においては、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、及びアルカリ性差算出部203は動作状態ではない。
【0185】
再生流路洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が第一排水流路46及び第二排水流路47に流入する。
【0186】
第一排水流路46では、流入した原水の圧力により、流路28、酸性混合水回収流路37、酸性下流検知部108、酸性貯水槽101、酸性上流検知部107、酸性混合水送液ポンプ104、及び酸性混合水供給流路35内の高硬度水が押し流され第一排水口11か
ら装置外に排出される。
【0187】
第二排水流路47では、流入した原水の圧力により、流路28、第一軟水槽3a、中和槽バイパス流路42、第二軟水槽3b、及び酸性混合水供給流路35内の高硬度水が押し流され第一排水口11から装置外に排出される。
【0188】
このようにして、再生流路洗浄工程により、再生工程後の主な高硬度水の残留箇所である第一排水流路46及び第二排水流路47内の高硬度水を、中和槽への流通を抑制しつつ原水に置換可能である。したがって、再生流路洗浄工程において、中和槽内の弱塩基性陰イオン交換樹脂34への水素イオンの吸着を抑制可能なため、充填された水酸化物イオンの消費を抑制でき、中和性能を保つことができる。したがって、高硬度水を原因とする軟水化性能の低下を抑制できる。
【0189】
なお、制御部15は、第二排水流路47を流通する原水の流量が第一排水流路46を流通する原水の流量よりも大きくなるように、各流路に原水を供給する。
【0190】
これにより、軟水化工程時に使用される軟水槽を含む流路であり、流路内の高硬度水の排水が必須な流路である第二排水流路47内の高硬度水を優先的に原水に置換することができる。したがって、軟水化工程を開始した際の高硬度水を原因とする軟水化性能の低下を抑制できる。また、軟水化工程時には利用しない流路であり、高硬度水が残存していても軟水化工程への影響が少ない流路である第一排水流路46からの排水量を低減できるため、無駄な排水を防ぐことができ、再生流路洗浄工程に要する水量を抑制できる。
【0191】
また、これにより、高硬度水は中和槽を含まない流路によって装置外へ排水される。つまり、酸性混合水循環流路401に貯留した高硬度水中の硬度成分を中和槽内の弱塩基性陰イオン交換樹脂34への吸着を抑制して排水することができるため、再生工程の際に発生する高硬度水に起因して生じる軟水化性能の低下を防ぎ、軟水化性能を維持できる。
【0192】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合、もしくは再生流路洗浄工程が一定時間(例えば1分)を超えた場合、あるいは再生流路洗浄工程での通水量が一定値を超えた場合に再生流路洗浄工程を終了し、電解槽洗浄工程を実行する。
【0193】
なお、再生流路洗浄工程中に利用者が軟水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口(不図示)等を開放することにより、原水が流入口2から流路53を通り、取水口7から流出するため、再生流路洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0194】
((電解槽洗浄工程))
次に、軟水化装置1の電解槽洗浄工程時の動作について、図6及び図8の「電解槽洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0195】
再生工程において、電解槽9が動作していると、陰極には水中の硬度成分(カルシウムイオンあるいはマグネシウムイオン)が固体(スケール)として析出する。陰極へ析出した析出物は不導体であるため、電解槽9の運転電圧を上昇させ、再生工程時の消費電力を上昇させてしまう。そこで、陰極に析出した析出物を除去する電解槽洗浄工程を行う必要がある。
【0196】
電解槽洗浄工程において、開閉弁18~開閉弁22、開閉弁302、開閉弁303、開閉弁305、開閉弁308、及び開閉弁309を開放し、開閉弁23、開閉弁301、開閉弁304、開閉弁306、開閉弁307を閉止する。また、流路切替えバルブ24は流
路28から流路29へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ25は軟水槽バイパス流路44へと送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ26は酸性混合水供給流路35へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ27はアルカリ性混合水供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3aとアルカリ性貯水槽102とがアルカリ性下流検知部110を介して連通接続する状態、アルカリ性貯水槽102と電解槽9とがアルカリ性電解水送液ポンプ105を介して連通接続する状態、電解槽9と捕捉部排水口14とが捕捉部10を介して連通接続する状態、酸性下流検知部108と電解槽9とが酸性貯水槽101、酸性電解水送液ポンプ103を介して連通接続する状態、電解槽9と第二排水口12とが連通接続する状態とする。なお、電解槽洗浄工程においては、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、及びアルカリ性差算出部203は動作状態ではない。
【0197】
電解槽洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が第三排水流路49及び第四排水流路50に流入する。
【0198】
第三排水流路49では、流入した原水は、流路28、酸性混合水回収流路37、酸性下流検知部108、酸性貯水槽101、酸性電解水供給流路111、酸性電解水送液ポンプ103を流通し、電解槽9に流入する。
【0199】
一方、第四排水流路50では、流入した原水は、流路28、第一軟水槽3a、アルカリ性混合水回収流路38、アルカリ性下流検知部110、アルカリ性貯水槽102、アルカリ性電解水供給流路113、アルカリ性電解水送液ポンプ105を流通し、電解槽9に流入する。
【0200】
電解槽洗浄工程では、制御部15により電極41aに対して電極41bが高電位となるように通電する。
【0201】
このとき、電解槽9は、電解槽9内に流入した原水を電気分解し、電極41a(陰極)ではアルカリ性電解水を生成し、電極41b(陽極)では酸性電解水を生成する。
【0202】
この際、電極41bで生成された酸性電解水により、電極上に析出した析出物を溶解させることができる。したがって、電極41bの表面への析出物の付着を原因とした電解性能の低下を抑制できる。
【0203】
電極41aで生成されたアルカリ性電解水は、酸性電解水回収流路112を流通して第二排水口12から装置外に排出される。
【0204】
一方、電極41bで生成された酸性電解水は、陰極に析出した析出物を溶解しアルカリ性電解水回収流路114を流通して捕捉部10に流入する。捕捉部10に流入した酸性電解水は、捕捉部10に固着した析出物を溶解させることができ、捕捉部10を予備的に洗浄できる。したがって、次の工程である捕捉部洗浄工程に要する時間を短縮することができる。そして酸性電解水は、捕捉部10の下部に設けられた捕捉部排水口14から装置外に排出される。
【0205】
つまり、電解槽洗浄工程では、電解槽9内の析出物の除去と捕捉部10内の析出物の除去を同時に行うことができ、再生工程終了から軟水化工程開始までに要する時間を短縮することができる。
【0206】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは電解
槽洗浄工程が一定時間(例えば5分)を超えた場合に電解槽洗浄工程を終了し、捕捉部洗浄工程を実行する。
【0207】
なお、第四排水流路50において、原水が第一軟水槽3aを通過するため、酸性になった水が捕捉部10を通過する。そのため、捕捉部10が酸性下になり、捕捉部10に固着した析出物が酸性水により溶解する。したがって、捕捉部10を予備的に洗浄できるため、次の工程である捕捉部洗浄工程に要する時間を短縮することができる。つまり、電解槽9内の析出物の除去と捕捉部10内の析出物の除去を同時に行うことができ、再生工程終了から軟水化工程開始までに要する時間を短縮することができる。
【0208】
なお、電解槽洗浄工程中に利用者が水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口等を開放することにより、原水が流入口2から流路53を通り、取水口7から流出するため、電解槽洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0209】
((捕捉部洗浄工程))
次に、軟水化装置1の捕捉部洗浄工程時の動作について、図7及び図8の「捕捉部洗浄時」の欄を参照して順に説明する。
【0210】
再生工程において、電解槽9には第一軟水槽3a及び第二軟水槽3bから放出された硬度成分を含む高硬度水が流入する。硬度成分は、電気分解の際に陰極側へと移動し、陰極で生成される水酸化物イオンと反応し、析出物となる。析出した析出物の一部は、電解槽9から放出されるアルカリ性電解水に含まれ、アルカリ性電解水回収流路114を流通し、捕捉部10によって捕捉される。したがって、再生工程中の捕捉部10には、析出物が徐々に堆積するため、捕捉部10を原因とした圧力損失が徐々に増大し、アルカリ性電解水循環流路404を流通するアルカリ性電解水の流量が徐々に低下する。そのため、捕捉部10に固着あるいは析出した析出物を除去する捕捉部洗浄工程を行う必要がある。
【0211】
捕捉部洗浄工程において、開閉弁18、開閉弁19、開閉弁22、開閉弁23、開閉弁306及び開閉弁307を開放し、開閉弁20、開閉弁21、開閉弁301~開閉弁305、開閉弁308、及び開閉弁309を閉止する。また、流路切替えバルブ24は流路28から流路29へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ25は流路29から流路30へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ26は流路30から流路31へ送水可能な接続状態とし、流路切替えバルブ27は流路31からアルカリ性混合水供給流路36へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一軟水槽3aと第一中和槽4aとが連通接続する状態、第一中和槽4aと第二軟水槽3bとが連通接続する状態、第二軟水槽3bと第二中和槽4bとが連通接続する状態、第二中和槽4bとアルカリ性貯水槽102がアルカリ性混合水送液ポンプ106及びアルカリ性上流検知部109を介して連通接続する状態、アルカリ性貯水槽102と捕捉部排水口14が捕捉部10を介して連通接続する状態とする。これにより、図7に示すように、第五排水流路52が形成される。なお、捕捉部洗浄工程においては、酸性上流検知部107、酸性下流検知部108、アルカリ性上流検知部109、アルカリ性下流検知部110、流量制御部201、酸性差算出部202、及びアルカリ性差算出部203は動作状態ではない。
【0212】
捕捉部洗浄工程において、具体的には、開閉弁19を開放することにより、外部から原水が流路28に流入する。流入した原水は、流路28、第一軟水槽3a、流路29、第一中和槽4a、流路30、第二軟水槽3b、流路31、第二中和槽4b、アルカリ性混合水供給流路36、アルカリ性混合水送液ポンプ106、アルカリ性貯水槽102、アルカリ性電解水回収流路114を流通し、捕捉部10に流入する。
【0213】
捕捉部10では、再生工程の通水方向とは反対側から中性軟水が流入する。つまり、流
入した中性軟水により、捕捉部10の逆洗浄が行われる。この時、電解槽洗浄工程によって捕捉部10に固着あるいは析出した析出物の一部が予め溶解しているため、中性軟水による捕捉部10の洗浄を容易に行うことができる。析出物を含む中性軟水は、捕捉部10の下部に設けられた捕捉部排水口14から装置外に排出される。
【0214】
このようにして、捕捉部10を逆洗浄することができるため、捕捉部10に残留する析出物を除去できる。したがって、捕捉部10の閉塞を抑制でき、再び再生工程を行う際に、捕捉部10に起因する圧力損失を低減できる。その結果、捕捉部10を含む再生流路であるアルカリ性電解水循環流路404の流量低減を抑制でき、アルカリ性電解水の流量を担保できるため、再生性能を確保できる。
【0215】
そして、軟水化装置1では、制御部15で特定された時間帯になった場合もしくは捕捉部洗浄工程が一定時間(例えば5分)を超えた場合に捕捉部洗浄工程を終了し、軟水化工程を実行する。
【0216】
なお、流入口2から第二中和槽4bまでの流路は、軟水化工程時の流路と同様の流路である。つまり、第五排水流路52を使用することにより、軟水化工程における最後段の中和槽である第二中和槽4bは軟水化された水で充填された状態となる。したがって、第五排水流路52を用いて捕捉部洗浄工程を行った後に軟水化工程を行うことにより、軟水化装置1の利用者は、軟水化工程開始直後から軟水化処理され硬度の低減した軟水を取水口7から得ることができる。
【0217】
なお、捕捉部洗浄工程中に利用者が水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口等を開放することにより、原水が流入口2から流路53を通り、取水口7から流出するため、捕捉部洗浄工程の終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0218】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化工程、混合工程、再生工程、貯水工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程がこの順で繰り返し実行される。軟水化工程の直前に捕捉部洗浄工程を実施することで、軟水化工程における最後段の中和槽は、軟水化された水で充填された状態になる。したがって、軟水化装置1の利用者が蛇口を開けた際に、取水口7からの高硬度水の排出を抑制でき、軟水化工程開始直後から硬度の安定した軟水を提供することができる。
【0219】
また、再生流路洗浄工程を行ってから電解槽洗浄工程を行うことにより、電解槽洗浄工程での転極時には、高硬度水が既に装置外に排水されており、高硬度水を電解する可能性を抑制できる。したがって、硬度の高い水の電解を抑制でき、転極時にアルカリ性電解水が送水される流路における多量のスケール発生を抑制できる。
【0220】
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0221】
(1)軟水化装置1は、原水を軟水化する軟水化工程と当該軟水化処理により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程を実行する軟水化装置であって、軟水化工程にて原水中のイオンを吸着するイオン交換樹脂を備える樹脂槽と、再生工程に用いる電解水を生成する電解槽9と、電解水を貯水する貯水槽と、再生工程にて利用され、樹脂槽から独立して電解槽9と貯水槽を連通し、電解槽9で生成された電解水を循環させる電解水循環流路と、
再生工程にて利用され、電解槽9から独立して樹脂槽と貯水槽を連通し、イオン交換樹脂の再生に供された再生水と貯水槽に貯水された電解水とを混合して混合水として循環させる混合水循環流路と、電解水循環流路での電解水の流量と混合水循環流路での混合水の流
量とを独立して調節する流量制御部201と、を備える軟水化装置1である。
【0222】
こうした構成によれば、電解槽9内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下を同時に抑制することができる。
【0223】
(2)軟水化装置1に備えられる流量制御部201は、電解水循環流路での電解水の流量が混合水循環流路での混合水の流量より大きくなるように制御する。
【0224】
電解槽9内への気体蓄積を抑制するためには電解槽9への流入水流量を高流量にする必要があり、イオン交換樹脂の再生効率を高くするためには樹脂槽への流入水流量を低流量で運転する必要があるという相反する流量制御を行う必要がある。こうした構成によれば、電解槽9への流入水流量と樹脂槽への流入水流量を個別に制御することができるため、上記の相反する流量制御を行うことができ、電解槽9内への気体蓄積とイオン交換樹脂の再生効率低下の両方を抑制することができる。
【0225】
(3)軟水化装置1は、樹脂槽の上流側に設けられ樹脂槽に流入する混合水のイオン濃度を測定する上流検知部と、樹脂槽の下流側に設けられ樹脂槽から流出した混合水のイオン濃度を測定する下流検知部と、上流検知部の検知した上流イオン濃度と下流検知部の検知した下流イオン濃度の濃度差を算出する差算出部とを備え、流量制御部は、差算出部が算出した濃度差が第一基準値未満の場合には、濃度差が第一基準値以上の場合に比して混合水循環流路の流量を低減させる。
【0226】
こうした構成によれば、樹脂槽の再生効率が低下する再生工程終盤において、樹脂槽での再生反応効率を高くすることができる低流量で樹脂槽へ混合水を送水することができる。したがって、再生工程において再生効率が高い状態を維持可能なな軟水化装置となる。
【0227】
(4)軟水化装置1は、樹脂槽として備えられ、原水をイオン交換樹脂としての弱酸性陽イオン交換樹脂33により軟水化して軟水を生成する軟水槽3と、貯水槽として備えられ、電解槽9により生成された弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に用いられる酸性電解水を貯水する酸性貯水槽101と、電解水循環流路として備えられ、軟水槽3から独立して電解槽9と酸性貯水槽101を連通し、電解槽9で生成された酸性電解水を循環させる酸性電解水循環流路402と、混合水循環流路として備えられ、電解槽9から独立して軟水槽3と酸性貯水槽101を連通し、弱酸性陽イオン交換樹脂33の再生に用いられた酸性再生水と酸性貯水槽101に貯水された酸性電解水とを混合して酸性混合水として循環させる酸性混合水循環流路401と、を備え、流量制御部201は酸性電解水循環流路402での酸性電解水の流量と酸性混合水循環流路401での酸性混合水の流量とを独立して調節する。
【0228】
こうした構成によれば、原水をイオン交換樹脂としての弱酸性陽イオン交換樹脂33により軟水化して軟水を生成する軟水槽3を、電解槽9により生成された酸性電解水により再生することが可能な軟水化装置となる。
【0229】
(5)軟水化装置1は、樹脂槽として軟水槽3とは別個に備えられ、軟水槽3を通過した酸性軟水のpHを弱塩基性陰イオン交換樹脂34により中和する中和槽4と、貯水槽として酸性貯水槽101とは別個に備えられ、電解槽9により生成された弱塩基性陰イオン交換樹脂34の再生に用いられるアルカリ性電解水を貯水するアルカリ性貯水槽102と、電解水循環流路として備えられ、中和槽4から独立して電解槽9とアルカリ性貯水槽102を連通し、電解槽9で生成されたアルカリ性電解水を循環させるアルカリ性電解水循環流路404と、混合水循環流路として備えられ、電解槽9から独立して中和槽4とアルカリ性貯水槽102を連通し、弱塩基性陰イオン交換樹脂34再生に用いられたアルカリ
性再生水とアルカリ性貯水槽102に貯水されたアルカリ性電解水とを混合してアルカリ性混合水として循環させるアルカリ性混合水循環流路403と、を備え、流量制御部201はアルカリ性電解水循環流路404でのアルカリ性電解水の流量とアルカリ性混合水循環流路403での酸性混合水の流量とを独立して調節する。
【0230】
こうした構成によれば、弱塩基性陰イオン交換樹脂34により中和する中和槽4を、電解槽9により生成されたアルカリ性電解水により再生することが可能な軟水化装置となる。
【0231】
(6)軟水化装置1に備えられる流量制御部201は、再生工程時にアルカリ性電解水循環流路404の流量が酸性電解水循環流路402の流量よりも大きくなるように酸性電解水またはアルカリ性電解水の少なくとも一方の流量を制御する。
【0232】
こうした構成によれば、再生工程時に電極41aで生成される酸素よりも多く生成する気体(電極41bで生成される水素)による電解槽9内への気体の蓄積を抑制することができる。したがって、電解槽9内への気体の蓄積による電圧上昇及び電極劣化を抑制することができる。
【0233】
(7)軟水化装置1は、軟水槽3の上流側に設けられた酸性貯水槽101に流入する酸性混合水のイオン濃度を測定する酸性上流検知部107と、軟水槽3の下流側に設けられた軟水槽3から流出した酸性混合水のイオン濃度を測定する酸性下流検知部108と、酸性上流検知部107の検知した酸性上流イオン濃度と酸性下流検知部108の検知した酸性下流イオン濃度の濃度差を算出する酸性差算出部202と、中和槽4の上流側に設けられアルカリ性貯水槽102に流入するアルカリ性混合水のイオン濃度を測定するアルカリ性上流検知部109と、中和槽の下流側に設けられ中和槽4から流出したアルカリ性混合水のイオン濃度を測定するアルカリ性下流検知部110と、アルカリ性上流検知部109の検知したアルカリ性上流イオン濃度とアルカリ性下流検知部110の検知したアルカリ性下流イオン濃度の濃度差を算出するアルカリ性差算出部203とを備え、流量制御部201は、再生工程において、酸性差算出部202が算出した濃度差が酸側第二基準値未満、且つ、アルカリ性差算出部203が算出した濃度差がアルカリ側第二基準値未満の場合に、電解槽9の運転及び電解水循環流路における電解水の循環を停止する。
【0234】
こうした構成によれば、再生工程終了が近いときに電解槽9の過剰な運転を抑制することができ、電極41の劣化抑制による高寿命な軟水化装置が可能となる。
【0235】
(8)軟水化装置1は、酸性差算出部202が算出した濃度差が酸側第二基準値以上となった場合またはアルカリ性差算出部203が算出した濃度差がアルカリ側第二基準値以上となった場合に、電解槽9は、電解水の生成を開始し、流量制御部201は、電解水循環流路における電解水の循環を実行する。
【0236】
こうした構成によれば、再生工程終了が近いときに電解槽9の過剰な運転を抑制し、且つ、樹脂槽の再生を十分に完了することができる軟水化装置が可能となる。
【0237】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせに様々な変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【0238】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、再生工程終了後に、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程の順に実行するようにしたが、これに限らない。例えば、電
解槽洗浄工程を行ってから再生流路洗浄工程を行ってもよく、軟水化工程の前工程に捕捉部洗浄工程が実行されればよい。このような順番で装置内の洗浄を行っても、電解槽9及び捕捉部10の析出物を除去でき、軟水化工程直前の第二中和槽4b内に軟水を充填することができる。
【0239】
本実施の形態1に係る軟水化装置1では、軟水化工程、混合工程、再生工程、貯水工程、再生流路洗浄工程、電解槽洗浄工程、捕捉部洗浄工程がこの順で繰り返し実行されるとしたが、これに限らない。必ずしも全ての工程を行う必要はなく、例えば、基本的には軟水化工程と再生工程を交互に実行し、必要に応じて他の工程を行うようにしても良い。このようにしても、繰り返し原水の軟水化を行うことができる軟水化装置とすることができる、
【産業上の利用可能性】
【0240】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0241】
1 軟水化装置
2 流入口
3 軟水槽
3a 第一軟水槽
3b 第二軟水槽
4 中和槽
4a 第一中和槽
4b 第二中和槽
7 取水口
8 再生装置
9 電解槽
10 捕捉部
11 第一排水口
12 第二排水口
14 捕捉部排水口
15 制御部
18、19、20、21、22、23 開閉弁
24、25、26、27 流路切替えバルブ
28、29、30、31、32 流路
33 弱酸性陽イオン交換樹脂
33a 第一弱酸性陽イオン交換樹脂
33b 第二弱酸性陽イオン交換樹脂
34 弱塩基性陰イオン交換樹脂
34a 第一弱塩基性陰イオン交換樹脂
34b 第二弱塩基性陰イオン交換樹脂
35 酸性混合水供給流路
36 アルカリ性混合水供給流路
37 酸性混合水回収流路
38 アルカリ性混合水回収流路
41 電極
41a 電極
41b 電極
42 中和槽バイパス流路
43 軟水化流路
44 軟水槽バイパス流路
45 再生流路洗浄流路
46 第一排水流路
47 第二排水流路
48 電解槽洗浄流路
49 第三排水流路
50 第四排水流路
51 捕捉部洗浄流路
52 第五排水流路
53 流路
101 酸性貯水槽
102 アルカリ性貯水槽
103 酸性電解水送液ポンプ
104 酸性混合水送液ポンプ
105 アルカリ性電解水送液ポンプ
106 アルカリ性混合水送液ポンプ
107 酸性上流検知部
108 酸性下流検知部
109 アルカリ性上流検知部
110 アルカリ性下流検知部
111 酸性電解水供給流路
112 酸性電解水回収流路
113 アルカリ性電解水供給流路
114 アルカリ性電解水回収流路
201 流量制御部
202 酸性差算出部
203 アルカリ性差算出部
301、302、303、304、305、306、307、308、309 開閉弁
401 酸性混合水循環流路
402 酸性電解水循環流路
403 アルカリ性混合水循環流路
404 アルカリ性電解水循環流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9