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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137313
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】軟水化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20240927BHJP
   C02F 1/461 20230101ALI20240927BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20240927BHJP
   B01J 49/57 20170101ALI20240927BHJP
【FI】
C02F1/42 A
C02F1/461 A
B01J49/53
B01J49/57
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048785
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100151378
【弁理士】
【氏名又は名称】宮村 憲浩
(74)【代理人】
【識別番号】100157484
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】石川 大樹
【テーマコード(参考)】
4D025
4D061
【Fターム(参考)】
4D025AA01
4D025AB07
4D025AB14
4D025AB16
4D025AB19
4D025BA10
4D025BA11
4D025BA14
4D025BA15
4D025BB02
4D025BB09
4D025BB18
4D025BB19
4D025CA01
4D025CA10
4D061DA01
4D061DB07
4D061DB08
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB12
4D061EB19
4D061EB39
4D061FA09
4D061FA13
4D061FA20
4D061GC11
(57)【要約】
【課題】軟水をより中性に保ちつつも、陰イオン交換樹脂の再生に必要な時間を抑制可能な軟水化装置を提供する。
【解決手段】軟水化装置1は、原水を軟水化する軟水化工程と当該軟水化処理により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程とを実行する軟水化装置であって、原水を弱酸性陽イオン交換樹脂28により軟水化して軟水を生成する軟水槽3と、軟水槽3を通過した酸性軟水のpHを陰イオン交換樹脂29により中和する中和槽4と、を備える。中和槽4は、陰イオン交換樹脂29として、弱塩基性陰イオン交換樹脂である第一陰イオン交換樹脂29aと、第一陰イオン交換樹脂29aよりも酸解離定数の大きい第二陰イオン交換樹脂29bとの少なくとも2種の陰イオン交換樹脂を互いに区画して有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を軟水化する軟水化工程と当該軟水化処理により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程とを実行する軟水化装置であって、
前記原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化して軟水を生成する軟水槽と、
前記軟水槽を通過した酸性軟水のpHを陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、を備え、
前記中和槽は、
前記陰イオン交換樹脂として、弱塩基性陰イオン交換樹脂である第一陰イオン交換樹脂と、前記第一陰イオン交換樹脂よりも酸解離定数の大きい第二陰イオン交換樹脂との少なくとも2種の陰イオン交換樹脂を互いに区画して有する軟水化装置。
【請求項2】
前記再生工程において前記陰イオン交換樹脂の再生に用いるアルカリ性電解水を生成する電解槽と、
前記軟水槽から独立して前記中和槽と前記電解槽を連通し前記アルカリ性電解水を循環させる中和槽循環流路と、
前記再生工程の実行を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記再生工程中の運転モードとして、
前記中和槽に通水された前記アルカリ性電解水を装置外に排水する再生モードと、
前記中和槽に通水された前記アルカリ性電解水を前記中和槽循環流路内に循環させる循環再生モードと、を備え、
前記再生工程開始時に前記再生モードを実行し、前記再生モードの実行から所定時間経過後に前記循環再生モードを実行する請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項3】
前記中和槽から独立して前記軟水槽と前記電解槽を連通し前記電解槽にて生成する酸性電解水を循環させる軟水槽循環流路を備え、
前記制御部は、
前記再生モードでは前記酸性電解水の前記軟水槽循環流路への送水を停止し、前記循環再生モードでは前記酸性電解水を前記軟水槽循環流路内に循環させる請求項2に記載の軟水化装置。
【請求項4】
前記第一陰イオン交換樹脂が弱塩基性陰イオン交換樹脂であり、前記第二陰イオン交換樹脂が強塩基性陰イオン交換樹脂である請求項1に記載の軟水化装置。
【請求項5】
前記第一陰イオン交換樹脂が弱塩基性陰イオン交換樹脂であり、前記第二陰イオン交換樹脂が前記第一陰イオン交換樹脂として用いられる弱塩基性陰イオン交換樹脂よりも酸解離定数の大きい弱塩基性陰イオン交換樹脂である請求項1に記載の軟水化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟水化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、官能基の末端に水素イオンを有する弱酸性陽イオン交換樹脂の特性を利用して、弱酸性陽イオン交換樹脂に原水中の硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着させて水素イオンを脱離させる、すなわち硬度成分と水素イオンとを交換することで原水を軟水化する方法が知られている。なお、硬度成分の吸着量は有限であるため、陽イオン交換樹脂の交換や再生を行う必要がある。食塩を使用しない陽イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成した酸性電解水により陽イオン交換樹脂を再生する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化された水は、上述の成分の交換により、硬度成分の代わりに水素イオンが放出されるために酸性となる。これを中和するために、弱酸性陽イオン交換樹脂に弱塩基性陰イオン交換樹脂を組み合わせて利用されることがある。弱塩基性陰イオン交換樹脂の再生方法として、電気分解で生成したアルカリ性電解水を用いる方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-30973号公報
【特許文献2】特開2010-142674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化され、酸性になった水を中和するために組み合わせて使用される弱塩基性陰イオン交換樹脂は、水酸化物イオン形(OH形)の強塩基性陰イオン交換樹脂と比べるとイオン交換反応が可能な有効pH範囲が狭い。そのため、pH7程度まで中和することが難しい、中性付近でのイオン交換反応速度が遅い、などの問題があった。しかしながら、強塩基性陰イオン交換樹脂または有効pH範囲の広い弱塩基性陰イオン交換樹脂などを、酸性になった軟水の中和に使用した場合には、中和の際に、イオン交換反応において交換順位の低い重炭酸イオンに対しても反応しやすく、陰イオン交換樹脂の再生中に重炭酸イオンを多く放出する。そのため、アルカリ性電解水を循環させる再生システムである場合に、放出された重炭酸イオンが電気分解の効率を低下させたり、重炭酸イオンと電解水中の硬度成分が反応してできる析出物が増加したりする問題があった。
【0006】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、陰イオン交換樹脂再生時に放出される重炭酸イオンの影響を抑制可能である軟水化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そして、この目的を達成するために、本発明に係る軟水化装置は、原水を軟水化する軟水化工程と当該軟水化処理により劣化したイオン交換樹脂を再生する再生工程とを実行する軟水化装置であって、原水を弱酸性陽イオン交換樹脂により軟水化して軟水を生成する軟水槽と、軟水槽を通過した酸性軟水のpHを陰イオン交換樹脂により中和する中和槽と、を備え、中和槽は、陰イオン交換樹脂として、弱塩基性陰イオン交換樹脂である第一陰イオン交換樹脂と、第一陰イオン交換樹脂よりも酸解離定数の大きい第二陰イオン交換樹脂との少なくとも2種の陰イオン交換樹脂を互いに区画して有する。これにより、所期の
目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、陰イオン交換樹脂再生時に放出される重炭酸イオンの影響を抑制可能である軟水化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施の形態1に係る軟水化装置の構成を示す概念図である。
図2図2は、実施の形態1に係る軟水化装置の軟水化流路を示す構成図である。
図3図3は、実施の形態1に係る軟水化装置の注水流路及び中和槽再生流路を示す構成図である。
図4図4は、実施の形態1に係る軟水化装置の軟水槽循環再生流路及び中和槽循環再生流路を示す構成図である。
図5図5は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0011】
(実施の形態1)
図1を参照して、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る軟水化装置1の構成を示す概念図である。なお、図1では、軟水化装置1の各要素を概念的に示している。
【0012】
<全体構成>
軟水化装置1は、外部から供給される硬度成分を含む原水から、中性の軟水を生成する装置である。ここで、中性とは、pH(水素イオン濃度指数)が7の場合だけでなく、pHが6~8程度である場合も含む。なお、原水とは、流入口2から装置内に導入された水(処理対象水)であり、例えば市水や井戸水である。原水は、硬度成分(例えばカルシウムイオンまたはマグネシウムイオン)を含む。軟水化装置1を用いて軟水化工程を行うことにより、原水と比較し硬度の低減した中性の軟水が得られ、原水の硬度が高い地域であっても、軟水を利用することができる。軟水化装置1における軟水化とは、軟水化後の水中の硬度成分量が原水中の硬度成分量よりも少ない状態になることを指す。
【0013】
具体的には、図1に示すように、軟水化装置1は、流入口2と、軟水槽3と、中和槽4と、取水口5と、再生装置6と、制御部14とを備えている。
【0014】
また、軟水化装置1は、酸性電解水排水口11と、捕捉部排水口12、アルカリ性電解水排水口13、複数の開閉弁(開閉弁15、開閉弁16、開閉弁17、開閉弁18、及び開閉弁19)と、三方弁20と、流路切り替えバルブ21及び22とを含んで構成される。これらについての詳細は後述する。
【0015】
<流入口及び取水口>
流入口2は、原水の供給元に接続されている。流入口2は、原水を軟水化装置1内に導入する開口である。
【0016】
取水口5は、軟水化装置1内を流通し、軟水化工程された水を装置外に供給する開口である。軟水化装置1は、流入口2から流入する原水の圧力により、取水口5から軟水化工
程後の水を取り出すことができる。
【0017】
軟水化装置1では、軟水化工程を行う軟水化工程において、外部から供給される原水が、流入口2、流路23、軟水槽3、流路24、第一中和槽4a、流路25、第二中和槽4b、流路26、流路27、取水口5の順に流通して、中性の軟水として排出される。
【0018】
<軟水槽>
軟水槽3は、弱酸性陽イオン交換樹脂28の作用により、硬度成分を含む原水を軟水化する。具体的には、軟水槽3は、流通する水(原水)に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を水素イオンと交換するため、原水の硬度が下がり、原水を軟水化する。
【0019】
軟水槽3は、流入口2から流入した原水の軟水化を行う。軟水槽3は、流路切り替えバルブ21を備える。流路切り替えバルブについての詳細はまとめて後述する。
【0020】
軟水槽3には弱酸性陽イオン交換樹脂28が充填されている。
【0021】
弱酸性陽イオン交換樹脂28は、官能基の末端に水素イオンを有するイオン交換樹脂である。弱酸性陽イオン交換樹脂28は、通水される原水に含まれる硬度成分である陽イオン(カルシウムイオン、マグネシウムイオン)を吸着し、水素イオンを放出する。弱酸性陽イオン交換樹脂28で処理された軟水は、硬度成分と交換されて出てきた水素イオンを多く含む。つまり、軟水槽3から流出する軟水は、水素イオンを多く含んで酸性化した軟水(酸性軟水)である。
【0022】
弱酸性陽イオン交換樹脂28の官能基の末端が水素イオンであるため、後述する再生工程において、酸性電解水を用いて弱酸性陽イオン交換樹脂28の再生を行うことができる。この際、弱酸性陽イオン交換樹脂28からは、軟水化工程の際に取り込んだ硬度成分である陽イオンが放出される。
【0023】
弱酸性陽イオン交換樹脂28として、特に制限はなく、汎用的なものを使用することができ、例えば、カルボキシル基(-COOH)を交換基とするものが挙げられる。また、カルボキシル基の対イオンである水素イオン(H)が、金属イオン、アンモニウムイオン(NH )等の陽イオンとなっているものでもよい。
【0024】
<中和槽>
中和槽4(第一中和槽4a及び第二中和槽4b)は、弱塩基性陰イオン交換樹脂29の作用により、軟水槽から出てきた水素イオンを含む軟水(酸性化した軟水)のpHを中和し、中性の軟水とする。具体的には、中和槽4は、軟水槽3からの軟水に含まれる水素イオンを陰イオンとともに吸着するため、軟水のpHが上がり、中性の軟水とすることができる。本実施の形態1における軟水化装置1では、中和槽4として第一中和槽4aと第二中和槽4bが備えられ、特に両者を区別しない場合には、両者をまとめて中和槽4として表記する。
【0025】
第一中和槽4aは、軟水槽3の下流側に設けられ、軟水槽3を流通した酸性軟水の中和を行う。
【0026】
第二中和槽4bは、第一中和槽4aの下流側に設けられ、第一中和槽4aを流通した軟水の中和を行う。第二中和槽4bは、流路切り替えバルブ22を備える。
【0027】
第一中和槽4a及び第二中和槽4bには弱塩基性陰イオン交換樹脂29(第一弱塩基性
陰イオン交換樹脂29a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29b)が充填されている。第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bには、それぞれ種類の異なる弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用する。弱塩基性陰イオン交換樹脂29として、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aよりも第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの方が、酸解離定数(pKa)が2程度大きくなるような種類を選択する。第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの充填量は、第二中和槽4bを通水した軟水のpHが中性となる範囲において、後述する弱塩基性陰イオン交換樹脂29bへの重炭酸イオンの吸着を抑制するためにできるだけ少なくすることが望ましい。
【0028】
また、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの代わりに強塩基性陰イオン交換樹脂を第二中和槽4bに充填してもよい。なお、強塩基性陰イオン交換樹脂を使用する場合には、過剰なイオン交換反応により、取り出される軟水のpHがアルカリ性になることを防ぐため、弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用する場合よりもイオン交換樹脂の充填量を少なくすることが望ましい。
【0029】
弱塩基性陰イオン交換樹脂29は、通水される水に含まれる水素イオンを吸着し、中性の水を生成する。弱塩基性陰イオン交換樹脂29は、後述する再生工程において、アルカリ性電解水を用いて再生される。
【0030】
弱塩基性陰イオン交換樹脂29として、汎用的なものを使用することができ、例えば、3級アミンの遊離塩基型となっているものが挙げられる。
【0031】
<再生装置>
再生装置6は、軟水槽に充填されている弱酸性陽イオン交換樹脂28を再生させ、且つ、第一中和槽4a及び第二中和槽4bに充填されている弱塩基性陰イオン交換樹脂29を再生させる機器である。
【0032】
再生装置6は、電解槽7と、捕捉部8と、第一送水ポンプ9と、第二送水ポンプ10とを含んで構成される。そして、再生装置6は、軟水槽3、第二中和槽4b、流路23、流路24に対して、第一供給流路30、第二供給流路31、第一回収流路32、第二回収流路33、がそれぞれ接続されている。各流路の詳細は後述する。なお、第一供給流路30、第二供給流路31、第一回収流路32、第二回収流路33、流路23、流路24、流路25により、後述する軟水槽循環再生流路42と中和槽循環再生流路43が形成される。
【0033】
<<電解槽>>
電解槽7は、内部に設けた一対の電極34(陽極34a及び陰極34b)を用いて、入水した水を電気分解することによって、酸性電解水とアルカリ性電解水とを生成する。より詳細には、再生工程において陽極34aでは、電気分解により水素イオンが生じ、酸性電解水が生成する。また、再生工程において、陰極34bでは、電気分解により水酸化物イオンが生じ、アルカリ性電解水が生成する。そして、電解槽7は、生成した酸性電解水を、第一供給流路30を介して軟水槽3に供給する。また、電解槽7は、生成したアルカリ性電解水を、第二供給流路31及び流路25を介して第一中和槽4a及び第二中和槽4bに供給する。詳細は後述するが、電解槽7によって生成された酸性電解水は、軟水槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂28の再生に使用され、電解槽7によって生成されたアルカリ性電解水は、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの弱塩基性陰イオン交換樹脂29の再生に使用される。なお、電解槽7は、後述する制御部14によって、陽極34a及び陰極34bへの通電状態を制御できるように構成されている。
【0034】
電解槽7は、槽内部に、液体を隔てる多孔質膜である隔膜を備える。隔膜は、対流による酸性電解水とアルカリ性電解水との混合を抑制しながら、泳動によるイオン移動を可能
とするものである。これにより、酸性電解水中の水素イオン及びアルカリ性電解水中の水酸化物イオンが中和反応により消費されることが抑制できるため、弱酸性陽イオン交換樹脂28及び弱塩基性陰イオン交換樹脂29の再生効率低下を抑制できる。
【0035】
<<送水ポンプ>>
第一送水ポンプ9は、再生装置6による再生工程の際に、軟水槽3に酸性電解水を流通させる機器である。第一送水ポンプ9は、軟水槽3と電解槽7との間を連通接続する第一回収流路32に設けられている。このような配置とするのは、第一送水ポンプ9だけで酸性電解水を循環させやすくなるためである。
【0036】
第二送水ポンプ10は、再生装置6による再生工程の際に、第一中和槽4a及び第二中和槽4bにアルカリ性電解水を流通させる機器である。第二送水ポンプ10は、第一中和槽4aと電解槽7との間を連通接続する第二回収流路33に設けられている。このような配置とするのは、第二送水ポンプ10だけでアルカリ性電解水を循環させやすくなるためである。
【0037】
また、第一送水ポンプ9及び第二送水ポンプ10は、後述する制御部14と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0038】
<<捕捉部>>
捕捉部8は、電解槽7と第二中和槽4bとを連通接続する第二供給流路31に設けられている。言い換えると、捕捉部8は、再生工程時における電解槽7の下流側、且つ、中和槽4の上流側に設けられている。
【0039】
捕捉部8は、電解槽7から送出されたアルカリ性電解水に含まれる析出物を捕捉する。析出物とは、電解槽7内において、再生工程の際に軟水槽3から放出された陽イオンである硬度成分がアルカリ性電解水と反応することにより生じる反応生成物である。より詳細には、電解槽7で水の電気分解が行われている間、再生工程時の軟水槽3から放出される硬度成分(例えば、カルシウムイオン、マグネシウムイオン)は、隔膜を介して陽極(陽極34a)側から陰極(陰極34b)側に移動する。陰極側ではアルカリ性電解水が生成しているため、硬度成分とアルカリ性電解水が反応し、析出物となる。例えば、硬度成分がカルシウムイオンの場合、アルカリ性電解水と混合されることにより、炭酸カルシウムが生じる反応が起こったり、水酸化カルシウムが生じる反応が起こったりする。そして、硬度成分に由来する析出物は、電解槽7の陰極側に堆積する、もしくは電解槽7の陰極側から第二供給流路31に流出する。
【0040】
電解槽7の下流側、且つ、中和槽4の上流側の流路である第二供給流路31上に捕捉部8を設けることにより、硬度成分に由来する析出物を捕捉部8で捕捉することができ、析出物が中和槽4に流入し中和槽4内に堆積することを抑制できる。電解槽7の下流側、且つ、中和槽4の上流側に捕捉部8を設けない場合、再生工程の終了後に軟水化工程を再開する際に、中和槽4に堆積した析出物は、軟水槽3から放出された酸性軟水中の水素イオンと反応してイオン化してしまう。これにより、中和槽4から送出される軟水は、硬度成分を再度含むこととなるため、直前に設けられた軟水槽3から放出された時の硬度と比較し、硬度が上昇してしまう。これに対し第二供給流路31上に捕捉部8を設けることにより、このような中和槽4内の析出物の堆積と溶解に伴う硬度上昇を抑制できる。
【0041】
なお、「硬度成分が反応する」とは、硬度成分すべてが反応することのみならず、反応しない成分もしくは溶解度積を超えない成分が含まれている状態も含むものとする。
【0042】
捕捉部8は、硬度成分とアルカリ性電解水との反応により生じる析出物を分離可能であ
ればその形態は問わない。例えば、カートリッジタイプのフィルター、粒状ろ材を用いたろ過層、サイクロン型の固液分離機、中空糸膜等を用いる形態が挙げられる。
【0043】
捕捉部8の形態として一般的に使用される手段としては、カートリッジタイプのフィルターが挙げられる。カートリッジタイプのフィルターとして、糸巻きフィルターのような深層ろ過型、プリーツフィルター及びメンブレンフィルターのような表面ろ過型、またはこれらを組み合わせて使用することができる。
【0044】
捕捉部8は、捕捉部排水流路37と接続され、捕捉部排水流路37には開閉弁19及び捕捉部排水口12を備える。
【0045】
開閉弁19は、捕捉部8の下部に設けられる弁であり、捕捉部8内の排水を制御する弁である。開閉弁19を開放することにより、捕捉部排水流路37を通じて、捕捉部8内の水を捕捉部排水口12から装置外に排出できる。また、後述する再生工程終了後に、中和槽循環再生流路43(図4にて示す)内の水を装置外に排出することができる。
【0046】
捕捉部排水口12は、捕捉部8内の水を装置外に排出する開口である。捕捉部排水口12の上流に設けられる開閉弁19を開放することにより、捕捉部排水口12から捕捉部8内の水を装置外に排出できる。
【0047】
<開閉弁、三方弁、及び流路切り替えバルブ>
複数の開閉弁(開閉弁15~開閉弁19)は、各流路にそれぞれ設けられ、各流路において「開放」した状態と、「閉止」した状態とを切り替える。
【0048】
複数の開閉弁(開閉弁15、開閉弁16、及び開閉弁18)の開閉により、各流路への水の流通が開始または停止される。
【0049】
開閉弁17及び開閉弁19は、後述の再生工程終了後に軟水化工程へ切り替える際に、開放した状態となる。これにより、再生循環水が装置外に排出される。
【0050】
三方弁20は、流路25に設けられ、アルカリ性電解水排水流路38と接続されている。三方弁20の回転により、各流路の流通方向を切り替える。
【0051】
流路切り替えバルブ21及び22は、軟水槽3及び第二中和槽4bにそれぞれ設けられる。流路切り替えバルブはいずれも、3つの開口を備える。1つ目の開口は水の流入及び流出が可能な流入流出口であり、2つ目の開口は水を流出させる流出口としては機能せず水を流入させる流入口として機能する流入口であり、3つ目の開口は水を流入させる流入口としては機能せず水を流出させる流出口として機能する流出口である。複数の流路切り替えバルブはいずれも、流入流出口は常に「開放」しており、通水方向により、流入口か流出口のうちどちらか一方が「開放」している時には、他方は「閉止」している。流路切り替えバルブ21及び22を備えることにより、軟水化装置1内の各流路に必要な開閉弁の数を減少でき、軟水化装置1のコストの低減ができる。
【0052】
また、複数の開閉弁(開閉弁15~開閉弁19)、三方弁20及び流路切り替えバルブ21、22はそれぞれ、後述する制御部14と無線または有線により通信可能に接続されている。
【0053】
<排水口>
酸性電解水排水口11は、酸性電解水排水流路37の端部に設けられる開口であり、軟水槽循環再生流路42内の水を装置外に排出する開口である。酸性電解水排水口11の上
流には開閉弁17が設けられており、開閉弁17を開放することにより、酸性電解水排水口11から排水を行うことができる。酸性電解水排水口11は、例えば、後述する再生工程終了後に、軟水槽循環再生流路42内の水を装置外に排出する。
【0054】
捕捉部排水口12は、捕捉部8の下部に設けられる開口であり、中和槽循環再生流路43内の水を装置外に排出する開口である。捕捉部排水口12の上流には開閉弁19が設けられており、開閉弁19を開放することにより、捕捉部排水口12から排水を行うことができる。捕捉部排水口12は、例えば、後述する再生工程終了後に、中和槽循環再生流路43内の水を装置外に排出する。
【0055】
アルカリ性電解水排水口13は、アルカリ性電解水排水流路38の端部に設けられる開口であり、後述する注水・再生工程において、第二中和槽4bから流出したアルカリ性電解水を装置外に排出する開口である。アルカリ性電解水排水口13の上流には三方弁20が設けられており、三方弁20を回転させることにより、アルカリ性電解水排水口13から排水を行うことができる。詳細は後述するが、アルカリ性電解水排水口13は、注水・再生工程において形成される中和槽再生流路41の末端部であり、電解槽7によって生成されたアルカリ性電解水が、第二中和槽4bに通水され弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生に使用されたのち、アルカリ性電解水排水流路38を通じてアルカリ性電解水排水口13から排出される。
【0056】
<流路>
バイパス流路35は、流入口2と流路27とを連通接続する流路であり、流路上には開閉弁15が設けられている。バイパス流路35により、原水を軟水槽3及び中和槽4に通水することなく、軟水槽3及び中和槽4を迂回して、中和槽4の下流側に未処理水として送水することが可能である。また、バイパス流路35により、再生工程を実施している場合でも、軟水化装置1の利用者は、取水口5から原水を得ることが可能である。
【0057】
<<軟水化流路>>
図2を参照して、軟水化装置1の軟水化工程の際に形成される軟水化流路39について説明する。図2は軟水化装置1の軟水化流路39を示す構成図である。
【0058】
軟水化流路39(図2の斜線矢印)は、原水の軟水化を行う流路であり、軟水化流路39を流通した原水は中性の軟水となり、取水口5から装置外に排出される。
【0059】
軟水化流路39は、軟水槽3及び中和槽4を通水するルートである流入口2、流路23、軟水槽3、流路24、第一中和槽4a、流路25、第二中和槽4b、流路26、流路27をそれぞれ通水し、取水口5から軟水を送水する流路である。
【0060】
流路23は、流入口2から軟水槽3までを接続する流路である。つまり、流路23は、硬度成分を含む原水を流入口2から軟水槽3へ導く流路である。
【0061】
流路24は、軟水槽3から第一中和槽4aまでを接続する流路である。つまり、流路24は、軟水槽3で軟水化された水を第一中和槽4aに導く流路である。
【0062】
流路25は、第一中和槽4aから第二中和槽4bまでを接続する流路である。つまり、流路25は、第一中和槽4aで中和された水を第二中和槽4bへ導く流路である。
【0063】
流路26は、第二中和槽4bから流路27までを接続する流路である。つまり、流路26は、軟水化された原水を第二中和槽4bから流路27に導く流路である。
【0064】
流路27は、流路26から取水口5まで、及びバイパス流路35から取水口5までを接続する流路である。つまり、流路27は、軟水化された原水を流路26から取水口5に導く流路、及び原水をバイパス流路35から取水口5に導く流路である。
【0065】
図2に示すように、流入口2の下流側、且つ、第一軟水槽3aの上流側の流路23上に開閉弁16が設置されている。そして、開閉弁15を閉止して、開閉弁16を開放することにより、軟水槽3と流入口2が連通接続される。また、流路切り替えバルブ21を軟水槽3と第一中和槽4aとが連通接続するように切り替え、流路切り替えバルブ22を第二中和槽4bと取水口5が連通接続するように切り替える。これにより、流入口2から流路23、軟水槽3、流路24、第一中和槽4a、流路25、第二中和槽4b、流路26、流路27、取水口5までを連通接続する軟水化流路39が形成される。
【0066】
<<注水流路>>
図3を参照して、軟水化装置1の注水・再生工程の際に形成される注水流路40について説明する。図3は軟水化装置1の注水流路40を示す構成図である。
【0067】
注水流路40(図3の灰色矢印)は、原水を電解槽7へ供給する流路である。注水流路40により、電解槽へ供給された原水は電解槽7で電気分解され、酸性電解水とアルカリ性電解水が生成される。
【0068】
注水流路40は、電解槽7のうち、陽極34aが存在する陽極室へ原水を供給するルートである陽極室供給流路及び陰極34bが存在する陰極室へ原水を供給するルートである陰極室供給流路を備える。
【0069】
陽極室供給流路は、流入口2、流路23,第一回収流路32、電解槽7をそれぞれ通水し、流入口2から電解槽7まで送水する流路である。
【0070】
陰極室供給流路は、陰極34bが存在する陰極室へ原水を供給するルートである流入口2、流路23、軟水槽3、流路24、第二回収流路33、電解槽7まで送水する流路である。
【0071】
開閉弁15を閉止して、開閉弁16を開放することにより、軟水槽3と流入口2が連通接続される。また、流路切り替えバルブ21を軟水槽3と第一中和槽4aとが連通接続するように切替え、流路切り替えバルブ22を第一中和槽4aと第二中和槽4bが連通接続するように切り替え、三方弁20を第二中和槽4bとアルカリ性電解水排水流路38が連通接続されるように切り替える。これにより、注水流路40及び、後述する中和槽再生流路41が形成される。なお、開閉弁15を開放することにより、注水・再生工程中も、軟水化装置1の利用者が取水口5から原水を得られる。
【0072】
<<中和槽再生流路>>
図3を参照して軟水化装置の軟水化装置1の注水・再生工程の際に形成される中和槽再生流路41について説明する。図3は軟水化装置1の中和槽再生流路41を示す構成図である。
【0073】
中和槽再生流路41(図3の黒矢印)は、電解槽7で電気分解によって生成されたアルカリ性電解水を第二中和槽4bへ供給し、排水する流路である。中和槽再生流路41は、第二中和槽4bへ供給されたアルカリ性電解水は第二中和槽4b内の弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生に使用され、排水される。
【0074】
中和槽再生流路41は、電解槽7の陰極室から第二中和槽4b及びアルカリ性電解水排
水口13へアルカリ性電解水を供給するルートである。具体的には、中和槽再生流路41は、電解槽7、第二供給流路31、捕捉部8、第二中和槽4b、流路25、アルカリ性電解水排水流路38、アルカリ性電解水排水口13をそれぞれ通水し、電解槽7からアルカリ性電解水排水口13まで送水する流路である。
【0075】
開閉弁18を開放し、三方弁20を第二中和槽4bとアルカリ性電解水排水流路38が連通接続されるように切り替えることにより、中和槽再生流路41が形成される。
【0076】
<<循環再生流路>>
次に、図4を参照して、軟水化装置1の循環再生モードの際に形成される軟水槽循環再生流路42と中和槽循環再生流路43について説明する。図4は、軟水化装置1の軟水槽循環再生流路42と中和槽循環再生流路43を示す構成図である。なお、本実施の形態において、軟水槽循環再生流路42と中和槽循環再生流路43とを総称して、循環再生流路と称する。
【0077】
まず、軟水槽循環再生流路42について説明する。
【0078】
軟水槽循環再生流路42は、循環再生モード時に酸性電解水が流通することにより、軟水槽3の再生を行う流路であり、図4(白矢印)に示すように、第一送水ポンプ9によって送出された水が、電解槽7及び軟水槽3を流通し、電解槽7に戻って循環する流路である。
【0079】
具体的には、軟水槽循環再生流路42は、第一供給流路30及び第一回収流路32によって構成され、軟水槽循環再生流路42上には、電解槽7、軟水槽3、第一送水ポンプ9が設けられる。
【0080】
第一供給流路30は、循環再生モード時における電解槽7の下流側から軟水化工程時における軟水槽3の下流側までを連通接続する流路であり、電解槽7から軟水槽3へ酸性電解水を供給する流路である。
【0081】
第一回収流路32は、軟水化工程時における軟水槽3の上流側から電解槽7までを連通接続する流路であり、軟水槽3を通過した硬度成分を含む酸性電解水を電解槽7へ回収する流路である。第一回収流路32には、第一送水ポンプ9が設けられる。
【0082】
また、軟水槽循環再生流路42は、電解槽7から送出された酸性電解水を、軟水化工程時における下流側から軟水槽3に導入し、軟水槽3の下流側に比べて硬度成分の吸着量が多い上流側から流出させる流路である。
【0083】
次に、中和槽循環再生流路43について説明する。
【0084】
中和槽循環再生流路43は、循環再生モード時にアルカリ性電解水が流通することにより、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの再生を行う流路であり、図4(黒矢印)に示すように、第二送水ポンプ10によって送出された水が、電解槽7、第二中和槽4b、及び第一中和槽4aを流通し、電解槽7に戻って循環する流路である。
【0085】
具体的には、中和槽循環再生流路43は、第二供給流路31、流路25、第二回収流路33の各流路によって構成され、中和槽循環再生流路43上には、電解槽7、第二中和槽4b、第一中和槽4a、第二送水ポンプ10が設けられる。
【0086】
第二供給流路31は、再生工程時における電解槽7の下流側から軟水化工程時における
第二中和槽4bの下流側までを連通接続する流路であり、電解槽7から第二中和槽4bへアルカリ性電解水を供給する流路である。第二供給流路31には、開閉弁18及び捕捉部8が設置されている。
【0087】
流路25は、再生工程において、第二中和槽4bから第一中和槽4aへアルカリ性電解水を供給する流路である。
【0088】
第二回収流路33は、軟水化工程時における第一中和槽4aの上流側から電解槽7までを連通接続する流路であり、第一中和槽4aと第二中和槽4bを通過したアルカリ性電解水を電解槽7へ回収する流路である。第二回収流路33には、第二送水ポンプ10が設けられる。
【0089】
<制御部>
図5を参照して、本実施の形態に係る制御部14の各機能について説明する。図5は、実施の形態1に係る軟水化装置の機能ブロック図である。
【0090】
制御部14は、軟水化工程の実行、注水・再生工程の実行及び工程間の切替えを制御する。切替えのタイミングは、例えば、時刻が、所定の基準時間となった場合に切り替えるようにしてもよい。所定の時間帯である基準時間を特定する方法として、例えば、予め所定の基準時間を設定してもよいし、使用実態に基づき軟水化工程を実施する可能性が低い時間帯を判別して所定の基準時間を決定してもよい。なお、所定の基準時間とは、軟水化工程の実施頻度が少ない時間のうち、連続した時間帯である。
【0091】
例えば、軟水化工程を実行しない時間を予め設定し、この時間を注水・再生工程における所定の基準時間として指定する。具体的には、軟水化工程を実行しない時間帯を23時から6時と設定した場合、この時間帯(7時間)において注水・再生工程を実施することを決定する。別の決定方法として、例えば、軟水化装置1の使用状況をモニタリングし、軟水化工程を行っている時間帯を記録する。この時間帯情報をもとに、軟水化工程が実施される頻度が少ない時間帯を特定し、この時間帯において注水・再生工程を実施することを決定する。具体的には、過去1か月間の使用状況をモニタリングし、軟水化工程を実施している時間帯と比較して、軟水の使用水量が少ない時間帯を平均的に算出し、所定の基準時間とする。
【0092】
また、制御部14は、開閉弁17及び開閉弁19を制御し、排水工程の際の排水を制御する。
【0093】
また、制御部14は、流路切り替えバルブ21及び22、開閉弁15、開閉弁16、開閉弁18、及び三方弁20を制御し、流路の切替えを実行する。
【0094】
制御部14の各構成は、ハードウェアとしては、コンピューターのCPU(Central Processing Unit)をはじめとする素子や機械装置で実現でき、ソフトウェアとしてはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される。したがって、これらの機能ブロックはハードウェア、ソフトウェアの組み合わせによって様々な形で実現することができる。
【0095】
以上が軟水化装置1の構成である。
【0096】
次に、軟水化装置1の動作について説明する。
【0097】
<軟水化工程、注水・再生工程、及び排水工程>
次に、図5を参照して、軟水化装置1の軟水化工程、注水・再生工程、及び排水工程について説明する。図5は、軟水化装置1の動作時の状態を示す図である。
【0098】
軟水化工程、注水・再生工程、及び排水工程では、制御部14は、図5に示すように、開閉弁15~開閉弁19、三方弁20、流路切り替えバルブ21及び22、電解槽7の陽極34a及び陰極34b、第一送水ポンプ9及び第二送水ポンプ10を切り替えてそれぞれの流通状態となるように制御する。
【0099】
ここで、図5中の「ON」は、該当の開閉弁が「開放」した状態、電極34が通電している状態、該当の送水ポンプが動作している状態をそれぞれ示す。空欄は、該当の開閉弁が「閉止」した状態、電極34が通電していない状態、該当の送水ポンプが停止している状態をそれぞれ示す。
【0100】
また、図5中の「(構成要素の番号)から(構成要素の番号)へ」は、該当の三方弁及び流路切り替えバルブが該当の構成要素から該当の構成要素へと送水される方向へと流路を接続している状態を示す。例えば、軟水化工程の流路切り替えバルブ21は、流路23から流路24へと送水可能となるように各流路を接続している。
【0101】
<軟水化工程>
まず、軟水化装置1による軟水化工程時の動作について、図2及び図5の「軟水化時」の欄を参照して説明する。
【0102】
軟水化装置1では、図5に示すように、軟水化工程において、開閉弁15を閉止した状態で流路23に設けた開閉弁16を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する。流入した原水は、軟水槽3、第一中和槽4a、及び第二中和槽4bの順で流通するので、軟水化装置1は、取水口5から軟水化した水(中性の軟水)を取り出すことができる。このとき、流路切り替えバルブ21は流路23から流路24へ送水可能な接続状態、流路切り替えバルブ22は流路25から流路26へ送水可能な接続状態になっている。開閉弁17~開閉弁19は、いずれも閉止した状態になっている。三方弁20は流路25から流路切り替えバルブ22へ送水可能な状態になっている。また、電解槽7の電極34、第一送水ポンプ9、及び第二送水ポンプ10の動作も停止した状態である。
【0103】
具体的には、図2に示すように、軟水化工程では、外部から流入する原水の圧力によって、原水は、流入口2から流路23を通って、軟水槽3に供給される。そして、軟水槽3に供給された原水は、軟水槽3内に備えられた弱酸性陽イオン交換樹脂28を流通する。このとき、原水中の硬度成分である陽イオンは弱酸性陽イオン交換樹脂28の作用により吸着され、水素イオンが放出される(イオン交換が行われる)。そして、原水から陽イオンが除去されることで原水が軟水化される。軟水化された水は、硬度成分と交換されて流出した水素イオンを多く含むため、酸性化してpH(水素イオン濃度指数)が低い酸性水(酸性軟水)となっている。ここで、硬度成分として永久硬度成分(例えば、硫酸カルシウム等の硫酸塩もしくは塩化マグネシウム等の塩化物)を多く含有する水は、軟水化を行う際、一時硬度成分(例えば、炭酸カルシウム等の炭酸塩)を多く含有する水よりpHが低下しやすい。
【0104】
酸性軟水は、軟水槽3に設けられた流路切り替えバルブ21を介して流路24を流通し、第一中和槽4aへ流入する。第一中和槽4aでは、弱塩基性陰イオン交換樹脂29aの作用によって、軟水化された水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、軟水槽3により軟水化された水から水素イオンが除去されるので、低下したpHが上昇して中和される。
【0105】
第一中和槽4aにより中和された水(中和第一軟水)は、流路25を流通し、第二中和槽4bに流入する。第二中和槽4bでは、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの作用により、流入した中和第一軟水に含まれる水素イオンが吸着される。つまり、中和第一軟水からさらに水素イオンが除去されるので、pHが上昇し、生活用水として使用可能な中性の軟水(中和第二軟水)となる。中和第二軟水は、第二中和槽4bに設けられた流路切り替えバルブ22を介して流路26及び流路27を流通し、取水口5から取り出すことができる。
【0106】
つまり、軟水化工程では、原水は、軟水槽3、第一中和槽4a及び第二中和槽4bの順に流通する。これにより、硬度成分を含む原水は、軟水槽3での軟水化工程によって軟水化され、第一中和槽4a及び第二中和槽4bにおいて中和されるようになる。
【0107】
上記において、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aよりも酸解離定数(pKa)が大きい、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bが充填された第二中和槽4bを設けない場合、第一中和槽4aへの通水のみでは、酸性軟水中の水素イオンの除去が不足し、取り出される軟水が完全に中和されず、pH5~5.9程度の弱酸性となる場合がある。これは第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aの酸解離定数が低いために、酸性軟水がある程度中和される(pH5~5.9)と、イオン交換反応速度が低下する、すなわち中和反応速度が低下したり、中和反応が起きなくなったりするためである。そのため、第一中和槽4aへの通水のみで、取り出される軟水を中性とするには、第一中和槽4a内の第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aの充填量増加や、軟水化工程における軟水化装置1への原水の流通速度の低下が必要となる。
【0108】
また、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bのみを使用した場合、酸性軟水を同程度まで中和する条件において、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aを使用した場合よりも、酸性軟水中の重炭酸イオン(HCO- )がより多く弱塩基性陰イオン交換樹脂29に吸着される。そのため、詳細は後述するが、循環再生モードにおいてより多くの重炭酸イオンがアルカリ性電解水に放出されるため、電解槽7による酸性電解水およびアルカリ性電解水の生成効率が低下したり、重炭酸イオンとアルカリ性電解水中の硬度成分との反応による析出物の量が増加したりする。
【0109】
そのため、複数種類の陰イオン交換樹脂を用いることにより、陰イオン交換樹脂を単一の種類で構成する場合と比較して、中性の軟水を取り出しながらも、弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される炭酸イオン量を抑え、循環再生モードにおいて放出される炭酸イオンの影響を抑制できる。
【0110】
軟水化装置1では、制御部14で特定された時間帯になった場合、もしくは軟水化処理が一定時間を超えた場合に軟水化工程を終了し、注水・再生工程を実行する。
【0111】
<注水・再生工程>
軟水化装置1による注水工程時の動作、及び再生装置6による再生工程の動作について、図3及び図5の「注水・再生時」の欄を参照して説明する。
【0112】
<<注水工程>>
軟水化装置1では、図5に示すように、注水工程において開閉弁15を閉止した状態で流路23に設けた開閉弁16を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する。流入した原水は、第一回収流路32を流通し電解槽7の陽極室へ送水され、また、軟水槽3及び第二回収流路33を流通し電解槽7の陰極室へ送水される。このとき、流路切り替えバルブ21は流路23から流路24へ送水可能な接続状態、開閉弁17は閉止した状態になっている。三方弁20は流路切り替えバルブ22からアルカリ性電解水排水
流路38へ送水可能な状態になっている。
【0113】
具体的には、図3に示すように、注水工程では、外部から流入する原水の圧力によって、原水は、流入口2から流路23及び第一回収流路32を通って、電解槽7の陽極室に供給される。このとき、流路切り替えバルブ21は流路23から流路24へ送水可能な接続状態であり、第一供給流路30とは送水可能な接続状態ではないため、電解槽7の陽極室に供給された水が第一供給流路30を流通し、第一供給流路30から軟水槽3へ流入することはない。また第一供給流路30内に空気抜き弁を設けることにより、電解槽7の陽極室や第一供給流路30を原水で満たすことができる。
【0114】
また同時に、原水は流入口2から流路23、軟水槽3、流路24及び第二回収流路33を通って、電解槽7の陰極室に供給される。このとき、三方弁20が流路25から第二中和槽4bへ送水可能な接続状態ではないため、流路24を流通した水が中和槽4側へ流入することを抑制できる。
【0115】
<<再生工程>>
再生工程として、中和槽4に通水されたアルカリ性電解水を排水する再生モード及び中和槽4に通水されたアルカリ性電解水を中和槽循環流路内に循環させる循環再生モードと、を備える。
【0116】
<<<再生モード>>>
再生モードにおいては、軟水化装置1では図5に示すように、開閉弁16~19、三方弁20、流路切り替えバルブ21及び22、電極34、第一送水ポンプ9及び第二送水ポンプ10は、注水工程と同様の状態である。開閉弁15を閉止した状態で流路23に設けた開閉弁16を開放する。これにより、外部から硬度成分を含む原水が流入する。流入した原水は、軟水槽3及び第二回収流路33を流通し電解槽7の陰極室へ送水される。電解槽7の陰極室に原水が流入し、電気分解を行うことによってアルカリ性電解水が生成される。生成されたアルカリ性電解水は第二供給流路31、第二中和槽4b及びアルカリ性電解水排水流路38を流通し、アルカリ性電解水排水口13から排水される。このとき、開閉弁18は開放した状態、流路切り替えバルブ22は第二供給流路31から流路25へ送水可能な接続状態、三方弁20は流路切り替えバルブ22からアルカリ性電解水排水流路38へ送水可能な状態になっている。
【0117】
このように、再生モードにおいて、電解槽7で生成されたアルカリ性電解水は第二中和槽4bを流通し、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生に使用されたのち、アルカリ性電解水排水口13から排水される。これにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bに吸着していたイオン成分が、アルカリ性電解水中に放出され、その後、排水として排出することができる。また、この再生モードを長時間ではなく短時間(再生工程に要する時間の1割程度)実施することで、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bに吸着していたイオン成分のうち、交換順位の低いイオン成分、特に重炭酸イオンを優先的に排出させることができる。
【0118】
硬水に含まれる陰イオンのうち、主成分として、硫酸イオン、硝酸イオン、塩化物イオン、及び重炭酸イオンが挙げられる。硬水である原水を弱酸性陽イオン交換樹脂28及び弱塩基性陰イオン交換樹脂29に通水し軟水化工程を行う際に、弱塩基性陰イオン交換樹脂29には塩化物イオンや硫酸イオンなどの他に重炭酸イオン(HCO )が吸着される。重炭酸イオンは、弱塩基性陰イオン交換樹脂29に対する交換順位が塩化物イオン及び硫酸イオンに比べて低いため、軟水化工程時には弱塩基性陰イオン交換樹脂29に吸着しにくく、再生モード時には弱塩基性陰イオン交換樹脂29から放出されやすい。そのため第一中和槽4a及び第二中和槽4bを流通する際には、先に流通する第一中和槽4aにお
いて、交換順位の高い硫酸イオンや硝酸イオンが多く吸着し、硫酸イオンや硝酸イオンが減少した後に流通する第二中和槽4bにおいては、塩化物イオンや重炭酸イオンが多く吸着する。また、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生モードにおいて、吸着した重炭酸イオンは、その大部分が再生モード初期に放出され、長時間再生した場合には再生初期と比較して再生中期~後期では放出量が減少する。そのため、再生モードを短時間実施することによって、第二中和槽4bに吸着された重炭酸イオンを大きく減少させることができる。なお、再生モードを長時間実施しても良いが、アルカリ性電解水の排水量が多くなるため、弱塩基性陰イオン交換樹脂29bから十分に重炭酸イオンを放出させたのちには、後述する循環再生モードに移行することが望ましい。
【0119】
次に、再生モードを実施することによる効果について説明する。
【0120】
硬水である原水を弱酸性陽イオン交換樹脂28および弱塩基性陰イオン交換樹脂29に通水し軟水化工程を行う際に、弱塩基性陰イオン交換樹脂29には塩化物イオンや硫酸イオンなどの他に重炭酸イオン(HCO )が吸着される。吸着された重炭酸イオンは、弱塩基性陰イオン交換樹脂29の再生を行う際にアルカリ性電解水に放出される。重炭酸イオンは、電解槽7中の隔膜を通して酸性電解水中にも拡散される。つまり、再生モードにおいて、重炭酸イオンは、アルカリ性電解水及び酸性電解水に含有される。
【0121】
重炭酸イオンは、緩衝作用を有し、水素イオン(H)と反応して炭酸(H-CO)になったり、水酸化物イオン(OH)と反応して炭酸イオン(CO 2-)になったりする。そのため、重炭酸イオンが電解水中に存在すると、電解再生水中の水素イオンや水酸化物イオンを消費してしまい、電解水の酸性またはアルカリ性が弱まるため、再生モードの効率が低下する。また、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンと反応して生じる炭酸イオンは、弱酸性陽イオン交換樹脂28から放出され酸性電解水中に拡散されるカルシウムイオンと結合して炭酸カルシウムを析出させる。つまり、再生モードにおける重炭酸イオンの吸着量または放出量が多いほど、炭酸カルシウムの析出が多くなり、捕捉部8における詰まりを促進させるという問題が生じる。
【0122】
したがって、後述する循環再生モードにおける重炭酸イオンの放出量を抑制することが求められるが、再生モードを実施することで重炭酸イオンの放出量を抑制させることができる。
【0123】
なお、再生モードにおいて電解槽7で生成された酸性電解水は、流通もしくは循環させる流路がないため、軟水槽3に流通させず、電解槽7の陽極室及び第一供給流路31に滞留させる。しかしながら、電気分解によって生成された水素イオン(H)を酸性電解水中に蓄積させることができる、すなわち流通させる場合よりも酸性が強い酸性電解水を生成することができ、後述する循環再生モードが開始されたときに酸性電解水を軟水槽3に流通させることで弱酸性陽イオン交換樹脂28の再生に使用できる。そのため、再生モード中に電解槽7の陽極室にて生成される水素イオンを無駄に排水することなく、弱酸性陽イオン交換樹脂28の再生に使用できる。
【0124】
軟水化装置1では、制御部14で特定された時間帯になった場合、もしくは注水・再生モードが一定時間を超えた場合に注水・再生モードを終了し、循環再生モードを実行する。
【0125】
<<<循環再生モード>>>
次に、軟水化装置1の再生装置6による循環再生モード時の動作について、図4及び図5の「循環再生時」の欄を参照して順に説明する。
【0126】
軟水化装置1において、弱酸性陽イオン交換樹脂28を充填した軟水槽3は、使用を続けると陽イオン交換能力が低下または消失する。すなわち、陽イオン交換樹脂の官能基である水素イオンすべてが、硬度成分であるカルシウムイオンあるいはマグネシウムイオンと交換された後は、イオン交換ができなくなる。このような状態になると、硬度成分が処理水中に含まれるようになる。また同様に、弱塩基性陰イオン交換樹脂29を充填した第一中和槽4a及び第二中和槽4bは使用を続けると陰イオン交換能力および中和性能が低下または消失する。このような状態になると、軟水槽から流入した酸性の軟水を中和できなくなる。このため、軟水化装置1では、再生装置6による軟水槽3、第一中和槽4a、及び第二中和槽4bの循環再生モードを行う必要が生じる。本実施の形態1では、制御部14により、循環再生モードの実施タイミングを判断し、制御部14で特定された時間帯になった場合、もしくは注水・再生モードが一定時間を超えた場合に循環再生モードを実行する。
【0127】
循環再生モード時において、開閉弁16、開閉弁17、開閉弁19を閉止して、開閉弁15、開閉弁18を開放し、三方弁20は流路25から流路切り替えバルブ22へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ21は第一供給流路30から第一回収流路32へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ22は第二供給流路31から流路25へ送水可能な接続状態とする。つまり、第一中和槽4aと第二中和槽4bとが連通接続する状態、酸性電解水排水口11及び捕捉部排水口12の排水を停止した状態とする。これにより、図4に示すように、軟水槽循環再生流路42及び中和槽循環再生流路43がそれぞれ形成される。
【0128】
そして、第一送水ポンプ9及び第二送水ポンプ10を動作させると、電解槽7内の酸性電解水及びアルカリ性電解水が軟水槽循環再生流路42及び中和槽循環再生流路43のそれぞれを循環する。
【0129】
また、電解槽7は、陰極34bに対して陽極34aが高電位となるように通電する(正電解)。これにより、電気分解の際に、陽極34aでは水素イオンが生じ、陽極34a付近では酸性電解水が生成する。一方、陰極34bでは水酸化物イオンが生じ、陰極34b付近ではアルカリ性電解水が生成する。
【0130】
電解槽7で生成した酸性電解水は、第一供給流路30を流通し流路切り替えバルブ21を介して軟水槽3内に送水され、内部の弱酸性陽イオン交換樹脂28を流通する。すなわち、酸性電解水を弱酸性陽イオン交換樹脂28に通水することで、弱酸性陽イオン交換樹脂28に吸着されている陽イオン(硬度成分)が、酸性電解水に含まれる水素イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱酸性陽イオン交換樹脂28が再生される。
【0131】
その後、軟水槽3を流通した酸性電解水は、陽イオンを含み、第一回収流路32へ流入する。すなわち、弱酸性陽イオン交換樹脂28を流通した陽イオンを含む酸性電解水は、第一回収流路32を介して電解槽7に回収される。
【0132】
このように軟水槽循環再生流路42は、酸性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置する軟水槽3の下流側から流通させる。すなわち、循環再生モードの際には、軟水槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂28において、硬度成分の吸着量が少ない下流側から、硬度成分の吸着量が多い上流側へ酸性電解水を流通させる。これにより、水素イオンを多く含有する酸性電解水が軟水槽3に流入し、弱酸性陽イオン交換樹脂28を再生する中で、硬度成分が弱酸性陽イオン交換樹脂28に再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生モード効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。なお、下流側とは、軟水化工程時の流路における下流側を指す。
【0133】
一方、電解槽7の陰極34b付近で生成したアルカリ性電解水は、第二供給流路31、捕捉部8を流通し流路切り替えバルブ22を介して第二中和槽4b内に送水され、内部の弱塩基性陰イオン交換樹脂29bを流通する。そして、第二中和槽4bを流通したアルカリ性電解水は、流路25を流通し、第一中和槽4a内に送水され、内部の弱塩基性陰イオン交換樹脂29aを流通する。すなわち、アルカリ性電解水を弱塩基性陰イオン交換樹脂29に通水させることで、弱塩基性陰イオン交換樹脂29に吸着されている陰イオンが、アルカリ性電解水に含まれる水酸化物イオンとイオン交換反応を起こす。これにより、弱塩基性陰イオン交換樹脂29が再生される。
【0134】
その後、第一中和槽4aを流通したアルカリ性電解水は、陰イオンを含み、第二回収流路33へ流入する。すなわち、弱塩基性陰イオン交換樹脂29を流通した陰イオンを含むアルカリ性電解水は、第二回収流路33を介して電解槽7に回収される。
【0135】
このように、中和槽循環再生流路43は、アルカリ性電解水を、原水の流入口から最も下流に位置する中和槽であり、上流側の中和槽と比較して陰イオンの吸着量が少ない弱塩基性陰イオン交換樹脂29bを有する第二中和槽4bの下流側から流通させ、上流に位置しており第二中和槽4bに比べて陰イオンがより多く吸着している弱塩基性陰イオン交換樹脂29aを有する第一中和槽4aの下流側へと流入させるように構成した。つまり、中和槽循環再生流路43は、電解槽7から送出されたアルカリ性電解水を、第二中和槽4bに流通させた後、流路25によって第一中和槽4aへと送出し、第一中和槽4aを流通させ、第二回収流路33を介して電解槽7へ流入させる流路である。
【0136】
これにより、循環再生モード時には、第一中和槽4aと比べて陰イオンの吸着量が少ない第二中和槽4bに、アルカリ性電解水が流入し、陰イオンを含んだアルカリ性電解水が第二中和槽4bから第一中和槽4aへと吐出される。第二中和槽4bの弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生では、第一中和槽4aと比較し、アルカリ性電解水中の水酸化物イオンの消費が少ないため、第一中和槽4aの再生と比べ、水酸化物イオン濃度の低減を抑制できる。そのため、水酸化物イオンを多く含有するアルカリ性電解水が第一中和槽4aに流入し、陰イオンが第一中和槽4aにおいて再吸着するのを抑制することができる。したがって、再生モード効率の低下を抑制でき、再生時間が短縮できる。
【0137】
そして、電解槽7内では、循環再生モードの際に軟水槽3から放出された陽イオンである硬度成分がアルカリ性電解水と反応することにより析出物が生じる。この電解槽7から送出されたアルカリ性電解水に含まれる析出物は捕捉部8によって捕捉される。これにより、析出物が第二中和槽4bに流入し、堆積することを抑制できる。このように析出物の堆積を抑制することにより、循環再生モードの終了後に軟水化工程を再開するときに、第二中和槽4bに堆積した析出物が第一中和槽4aから放出された水の中に含まれる水素イオンと反応してイオン化することに起因する、第二中和槽4bから送出される軟水の硬度上昇を抑制できる。
【0138】
循環再生モード終了時の再生循環流路中の再生水の硬度成分濃度は、再生水のpH(より根本的には電解槽に流れる電流値)、及び電解槽中の電極34を隔てる隔膜の種類によって大きく変動する。このような挙動は電解槽中の電極34を隔てる隔膜の種類によって大きく変わり、例えば、陰イオン交換膜を電解槽7の隔膜として使用した場合、電解槽7の陽極側から陰極側に硬度成分が移動できなくなる。そのため、陰極側すなわち中和槽循環再生流路43への硬度成分の流入が0となり、析出物の発生も生じない。しかし、この場合、循環再生モード中に弱酸性陽イオン交換樹脂28から脱着した硬度成分は、中和槽循環再生流路43へ流入せず、軟水槽循環再生流路42にすべて濃縮される。そのため、弱酸性陽イオン交換樹脂28が持つ水素イオンと硬度成分とのイオン交換反応の平衡が、弱酸性陽イオン交換樹脂28へ硬度成分が吸着する方向に傾く。これにより、弱酸性陽イ
オン交換樹脂28の再生が困難となる。したがって、軟水化装置1では、電解槽7の隔膜として、多孔質膜を用いる。
【0139】
軟水化装置1では、制御部14で特定された時間帯になった場合、もしくは、循環再生モードが一定時間(例えば6時間)または装置使用者からの指示情報等に基づく循環再生時間を超えた場合に循環再生モードを終了し、排水工程を実行する。
【0140】
なお、循環再生モード中に利用者が水を得たい場合には、軟水化装置1と接続された蛇口等を開放することにより、原水が流入口2からバイパス流路35を通り、取水口5から流出するため、循環再生モードの終了を待たずとも、原水を利用することができる。
【0141】
<排水工程>
軟水化装置1では、循環再生モードが終了すると排水工程へ移行する。ここで、排水工程とは、軟水槽循環再生流路42内と中和槽循環再生流路43内に残存している酸性電解水及びアルカリ性電解水の排水を行う工程である。
【0142】
次に、軟水化装置1による排水工程時の動作について、図5の「排水時」の欄を参照して説明する。
【0143】
軟水化装置1では、図5に示すように、排水工程(排水時)において、開閉弁16を閉止して、開閉弁15及び開閉弁17~19を開放し、三方弁20は流路25から流路切り替えバルブ22へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ21は第一供給流路30から第一回収流路32へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ22は第二供給流路31から流路25へ送水可能な接続状態とする。つまり、軟水槽循環再生流路42及び中和槽循環再生流路43がそれぞれ形成され、さらに開閉弁17及び開閉弁19を開放することで、酸性電解水排水口11と捕捉部排水口12から酸性電解水及びアルカリ性電解水の排水が可能な状態である。
【0144】
排水工程を行うことにより、軟水化工程を再開した際に、軟水槽循環再生流路42内と中和槽循環再生流路43内に残存する酸性電解水及びアルカリ性電解水が、流入口2から流入する原水と混在し、取水口5から排出されることを防ぐことができる。
【0145】
そして、軟水化装置1では、排水工程が終了すると、開閉弁15及び開閉弁17~19を閉止させ、開閉弁16を開放し、三方弁は流路25から流路切り替えバルブ22へ送水可能な接続状態とし、流路切り替えバルブ21は流路23から流路24へ送水可能な接続状態、流路切り替えバルブ22は流路25から流路26へ送水可能な接続状態とし、軟水化工程へ移行する。なお、排水工程の終了は、排水処理開始から一定時間経過時とすればよい。
【0146】
以上のようにして、軟水化装置1では、軟水化工程、注水・再生工程、及び排水工程が繰り返し実行される。
【0147】
軟水化装置1では、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aよりも酸解離定数(pKa)が大きい、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bが充填された第二中和槽4bを設けることにより、中和槽および弱塩基性陰イオン交換樹脂をそれぞれ単一の種類で構成する場合と比較して、中性の軟水を取り出しながらも、弱塩基性陰イオン交換樹脂に吸着される重炭酸イオン量を抑え、循環再生モードにおいて放出される重炭酸イオンの影響を抑制できる。また、再生モードにおいて第二中和槽4bのみアルカリ性電解水を流通させ、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの再生を一部行う。これにより、できるだけ再生モードに要する時間及び排水量を少なくしながらも、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bにより
多く吸着した重炭酸イオンを再生モード中のアルカリ性電解水中に放出させ、続く循環再生モード中のアルカリ性電解水には放出されないようにすることで、循環再生モードにおける炭酸カルシウムの多量の析出による捕捉部8の詰まりや、重炭酸イオンの緩衝作用による再生効率低下の影響を低減することが可能となる。
以上、本実施の形態1に係る軟水化装置1によれば、以下の効果を享受することができる。
【0148】
(1)軟水化装置1は、軟水槽3と、第一中和槽4aと、第二中和槽4bと、電解槽7と、制御部14と、を備える。軟水槽3は、硬度成分を含む原水を弱酸性陽イオン交換樹脂28により軟水化する。第一中和槽4aは、軟水槽3を通過した軟水のpHを第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aにより中和する。第二中和槽4bは、第一中和槽4aを通過した軟水のpHを第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bによりさらに中和する。第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29a及び第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bには、それぞれ種類の異なる弱塩基性陰イオン交換樹脂を使用し、第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29aよりも第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bの方が、酸解離定数(pKa)が大きくなるような種類を選択する。電解槽7は軟水槽3の弱酸性陽イオン交換樹脂28を再生するための酸性電解水と、第一中和槽4aの第一弱塩基性陰イオン交換樹脂29a及び第二中和槽4bの第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bを再生するためのアルカリ性電解水とを生成する。
【0149】
こうした構成によれば、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bが充填された第二中和槽4bを設けることにより、第一中和槽4aを流通した軟水を中性まで中和しきれなかった場合でも、第二中和槽4bを流通させることで、中性に中和することができる。また、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂の充填量を、第二中和槽4bを通水した軟水のpHが中性となる範囲において、できるだけ少なくすることで、第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bのみを使用した場合と比べて、重炭酸イオン(HCO )が第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bに吸着される量を抑えることができる。
【0150】
(2)軟水化装置1は、再生モードにおいて電解槽7から流出したアルカリ性電解水を第二中和槽4bに流通し、アルカリ性電解水排水流路38およびアルカリ性電解水排水口13を通じて排水可能な構成とした。
【0151】
こうした構成によれば、第二中和槽4b内の第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bに吸着された重炭酸イオンは、その大部分が再生モード中に放出され、吸着された重炭酸イオンを大きく減少させることができる。そのため、再生モードに続く、循環再生モードにおける炭酸カルシウムの多量の析出による捕捉部8の詰まりや、重炭酸イオンの緩衝作用による再生効率低下の影響を低減することができる。また重炭酸イオンの吸着量が多い第二弱塩基性陰イオン交換樹脂29bのみにアルカリ性電解水を流通させ、排水することにより、再生モードにおいて要する時間及び排水量をできるだけ少なくすることができる。
【0152】
以上、本発明に関して実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素あるいは各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されているところである。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明に係る軟水化装置は、使用場所設置型浄水装置(POU:Point of Use)あるいは建物入口設置型浄水装置(POE: Point of Entry)等に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0154】
1 軟水化装置
2 流入口
3 軟水槽
4 中和槽
4a 第一中和槽
4b 第二中和槽
5 取水口
6 再生装置
7 電解槽
8 捕捉部
9 第一送水ポンプ
10 第二送水ポンプ
11 酸性電解水排水口
12 捕捉部排水口
13 アルカリ性電解水排水口
14 制御部
15、16、17、18、19 開閉弁
20 三方弁
21、22 流路切り替えバルブ
23、24、25、26、27 流路
28 弱酸性陽イオン交換樹脂
29 弱塩基性陰イオン交換樹脂
29a 第一弱塩基性陰イオン交換樹脂
29b 第二弱塩基性陰イオン交換樹脂
30 第一供給流路
31 第二供給流路
32 第一回収流路
33 第二回収流路
34 電極
34a 陽極
34b 陰極
35 バイパス流路
36 酸性電解水排水流路
37 捕捉部排水流路
38 アルカリ性電解水排水流路
39 軟水化流路
40 注水流路
41 中和槽再生流路
42 軟水槽循環再生流路
43 中和槽循環再生流路
図1
図2
図3
図4
図5