(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137324
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】電動弁制御装置および電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法
(51)【国際特許分類】
F16K 31/04 20060101AFI20240927BHJP
H02P 8/14 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16K31/04 A
H02P8/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048802
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】110002608
【氏名又は名称】弁理士法人オーパス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 健登
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 貴之
【テーマコード(参考)】
3H062
5H580
【Fターム(参考)】
3H062AA02
3H062AA14
3H062BB04
3H062BB24
3H062CC02
3H062DD01
3H062EE06
3H062EE08
3H062FF10
3H062FF30
3H062FF34
3H062HH04
3H062HH08
3H062HH09
5H580CA02
5H580EE03
5H580HH22
5H580HH23
5H580HH33
(57)【要約】
【課題】電動弁の消費電力を低減できる電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法を提供する。
【解決手段】電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧を取得し、当該電圧に基づいて、回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する。電動弁制御装置70は、回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、駆動電流の大きさを維持し、回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、駆動電流の大きさを小さくし、回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、駆動電流の大きさを大きくする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給する回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電圧に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定する判定部と、を有し、
前記回転制御部が、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項2】
前記判定部が、前記取得部が取得した前記電圧の波形と前記電圧の基準波形との相違の度合いに基づいて、前記関係を判定する、請求項1に記載の電動弁制御装置。
【請求項3】
前記判定部が、前記電圧の波形と前記電圧の基準波形との相違の度合いを示す相違度指標値を算出し、前記相違度指標値と判定値との比較結果に基づいて、前記関係を判定する、請求項2に記載の電動弁制御装置。
【請求項4】
前記電圧の基準波形が、時刻と当該時刻における基準電圧とが関連付けられたデータテーブルであり、
前記取得部が、前記電圧を時系列的に取得し、
前記判定部が、
前記取得部が取得時刻において取得した前記電圧と前記データテーブルにおける前記取得時刻に対応する前記時刻と関連付けられた前記基準電圧との差分値を2乗した値である中間値を算出し、
前記電圧を用いて算出された複数の前記中間値を足し合わせて前記相違度指標値を算出する、請求項3に記載の電動弁制御装置。
【請求項5】
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給する回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定する判定部と、を有し、
前記回転制御部が、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする電動弁制御装置。
【請求項6】
請求項1または請求項5に記載の電動弁制御装置と、前記電動弁と、を有する電動弁装置。
【請求項7】
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給し、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得し、
前記電圧に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする電動弁の制御方法。
【請求項8】
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給し、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得し、
前記電流に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする電動弁の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、従来の電動弁の一例を開示している。このような電動弁は、エアコンの冷凍サイクルに組み込まれる。電動弁は、弁体と、弁体を移動させるためのステッピングモーターと、を有している。ステッピングモーターは、ローターとステーターとを有している。ステッピングモーターにパルスが入力されるとローターが回転する。具体的には、ステーターのコイルにパルスに応じた駆動電流を供給するとローターが回転する。ローターが回転すると弁体が移動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ローターの回転負荷は、弁体に加わる力に応じて変動する。ローターを確実に回転させるため、ステーターのコイルに供給される駆動電流の大きさは、比較的大きな回転負荷に合わせてある。そのため、回転負荷が小さい場合には、回転負荷に対して駆動電流が大きく、ステッピングモーターが電力を余分に消費する。
【0005】
そこで、本発明は、電動弁の消費電力を低減できる電動弁制御装置および電動弁制御装置を有する電動弁装置、ならびに、電動弁の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、複数の電動弁を用いて、ローターの回転によってステーターに生じる電圧(ステーターに電磁誘導される電圧)を測定して、測定結果について鋭意検討した。その結果、本発明者らは、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であるときの前記電圧と、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正でないときの前記電圧と、に違いがあることを見出し、本発明に至った。
【0007】
上記目的を達成するために本発明の一態様にかかる電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給する回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電圧に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定する判定部と、を有し、
前記回転制御部が、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする。
【0008】
本発明において、
前記判定部が、前記取得部が取得した前記電圧の波形と前記電圧の基準波形との相違の度合いに基づいて、前記関係を判定する、ことが好ましい。
【0009】
本発明において、
前記判定部が、前記電圧の波形と前記電圧の基準波形との相違の度合いを示す相違度指標値を算出し、前記相違度指標値と判定値との比較結果に基づいて、前記関係を判定する、ことが好ましい。
【0010】
本発明において、
前記電圧の基準波形が、時刻と当該時刻における基準電圧とが関連付けられたデータテーブルであり、
前記取得部が、前記電圧を時系列的に取得し、
前記判定部が、
前記取得部が取得時刻において取得した前記電圧と前記データテーブルにおける前記取得時刻に対応する前記時刻と関連付けられた前記基準電圧との差分値を2乗した値である中間値を算出し、
前記電圧を用いて算出された複数の前記中間値を足し合わせて前記相違度指標値を算出する、ことが好ましい。
【0011】
上記目的を達成するために本発明の他の一態様にかかる電動弁制御装置は、
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁を制御する電動弁制御装置であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給する回転制御部と、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記電流に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定する判定部と、を有し、
前記回転制御部が、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記判定部が前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする。
【0012】
上記目的を達成するために本発明の他の一態様にかかる電動弁装置は、前記電動弁制御装置と、前記電動弁と、を有する。
【0013】
上記目的を達成するために本発明の他の一態様にかかる電動弁の制御方法は、
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給し、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電圧を取得し、
前記電圧に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする。
【0014】
上記目的を達成するために本発明の他の一態様にかかる電動弁の制御方法は、
弁口を有する弁本体と、ローターおよびステーターを有するステッピングモーターと、前記ローターが回転すると前記弁口に対して移動する弁体と、を有する電動弁の制御方法であって、
前記ステーターに前記ローターを回転させるための駆動電流を供給し、
前記ローターの回転によって前記ステーターに生じる電流を取得し、
前記電流に基づいて、前記ローターの回転負荷と前記駆動電流の大きさとの関係を判定し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、前記駆動電流の大きさを維持し、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを小さくし、
前記ローターの回転負荷に対して前記駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、前記駆動電流の大きさを大きくする、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、電動弁制御装置が、ステーターにローターを回転させるための駆動電流を供給する。電動弁制御装置が、ローターの回転によってステーターに生じる電圧を取得する。電動弁制御装置が、取得した電圧に基づいて、ローターの回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する。電動弁制御装置が、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、駆動電流の大きさを維持し、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、駆動電流の大きさを小さくし、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、駆動電流の大きさを大きくする。
【0016】
本発明の他の一態様によれば、電動弁制御装置が、ステーターにローターを回転させるための駆動電流を供給する。電動弁制御装置が、ローターの回転によってステーターに生じる電流を取得する。電動弁制御装置が、取得した電流に基づいて、ローターの回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する。電動弁制御装置が、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、駆動電流の大きさを維持し、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、駆動電流の大きさを小さくし、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、駆動電流の大きさを大きくする。
【0017】
このようにしたことから、電動弁制御装置が、ローターの回転負荷に対して適正な大きさの駆動電流をステーターに供給することができ、電動弁の消費電力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
【
図3】
図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダーを示す図である。
【
図4】
図2の電動弁装置が有するガイドブッシュの側面図である。
【
図5】
図2の電動弁装置が有するストッパ部材を示す図である。
【
図6】
図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。
【
図7】
図2の電動弁装置が有するコンピュータ、スイッチ素子を有する電流回路を含むモータードライバおよびステッピングモーターを示す図である。
【
図8】ステッピングモーターに入力されるパルスとA相電流目標値およびB相電流目標値との対応関係の一例を示す図である。
【
図9】A相電流の波形およびB相電流の波形の一例を示す図である。
【
図10】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[1]入力時)。
【
図11】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[2]入力時)。
【
図12】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[3]入力時)。
【
図13】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[4]入力時)。
【
図14】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[5]入力時)。
【
図15】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[6]入力時)。
【
図16】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[7]入力時)。
【
図17】ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である(パルスP[8]入力時)。
【
図18】ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形の一例を示す図である。
【
図20】ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形に係るデータテーブルの一例を示す図である。
【
図21】駆動電流毎にローターの回転角度の変化を示す図である。
【
図22】駆動電流毎にローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形を示す図である。
【
図23】駆動電流の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。(電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.30[A]のとき)
【
図24】駆動電流の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。(電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.06[A]のとき)
【
図25】駆動電流の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。(電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.60[A]のとき)
【
図26】駆動電流の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。(電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.30[A]および0.06[A]のとき)
【
図27】駆動電流の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。(電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.06[A]および0.60[A]のとき)
【
図28】ローターの回転負荷の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフ(その1)である。
【
図29】ローターの回転負荷の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフ(その2)である。
【
図30】ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形および当該電圧の基準波形の一例を示す図である。
【
図31】電動弁制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、電動弁装置について、
図1~
図31を参照して説明する。
【0020】
図1は、電動弁装置を有するエアコンシステムのブロック図である。
図2は、
図1の電動弁装置の断面図である。
図3は、
図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダーを示す図である。
図3Aは、弁軸ホルダーの斜視図であり、
図3Bは、弁軸ホルダーの平面図である。
図4は、
図2の電動弁装置が有するガイドブッシュの側面図である。
図5は、
図2の電動弁装置が有するストッパ部材を示す図である。
図5Aは、ストッパ部材の斜視図であり、
図5Bは、ストッパ部材の平面図である。
図6は、
図2の電動弁装置が有する弁軸ホルダー、ストッパ部材、ローターおよびステーターの平面図である。
図6において、ローターの磁極およびステーターを模式的に示している。
図7は、
図2の電動弁装置が有するコンピュータ、スイッチ素子を有する電流回路を含むモータードライバおよびステッピングモーターを説明する図である。
図8は、ステッピングモーターに入力されるパルスとA相電流目標値およびB相電流目標値との対応関係の一例を示す図である。
図9は、ステーターに供給されるA相電流の波形およびB相電流の波形の一例を示す図である。
【0021】
図10~
図17は、ローターの磁極とステーターの極歯との位置関係を模式的に示す図である。
図10~
図17は、ステッピングモーターにパルスP[1]~P[8]を入力したときを示している。
図10~
図17において、ローターの磁極およびステーターを模式的に示している。
【0022】
図18は、ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形の一例を示す図である。
図19は、
図18の一部(パルスP[1]に対応する区間)を拡大した図である。
図18、
図19において、横軸が時間であり、縦軸が電圧である。
図20は、ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形に係るデータテーブルの一例を示す図である。
図21は、駆動電流毎にローターの回転角度の変化を示す図である。
図21において、横軸が時間であり、縦軸が回転角度である。
図22は、駆動電流毎にローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形を示す図である。
図22において、横軸が時間であり、縦軸が電圧である。
【0023】
図23~
図27は、ステーターに供給される駆動電流の大きさと、相違度指標値との関係を示すグラフである。
図23~
図27において、横軸が駆動電流の大きさであり、縦軸が相違度指標値(Score)である。
図23~
図25は、電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.30[A]、0.06[A]および0.60[A]のときのグラフを示す。
図26は、電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.30[A]および0.06[A]のときのグラフを示す。
図27は、電圧の基準波形に対応する駆動電流の大きさが0.06[A]および0.60[A]のときのグラフを示す。
【0024】
図28、
図29は、ローターの回転負荷の大きさと相違度指標値との関係を示すグラフである。
図30は、ローターの回転によってステーターに生じる電圧の波形および当該電圧の基準波形の一例を示す図である。
図30において、横軸が時間であり、縦軸が電圧である。
図31は、電動弁制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【0025】
本実施例に係る電動弁装置1は、例えば、エアコンシステムの冷凍サイクルにおいて流体である冷媒の流量を制御する流量制御弁として使用される。
【0026】
図1に、車両に搭載されるエアコンシステム100の一例を示す。エアコンシステム100は、配管105を介して順に接続された圧縮機101、凝縮器102、電動弁装置1(電動弁5)および蒸発器103を有している。電動弁装置1は、膨張弁である。エアコンシステム100は、エアコン制御装置110を有している。エアコン制御装置110は、電動弁装置1(電動弁制御装置70)と通信可能に接続されている。エアコン制御装置110は、電動弁装置1を用いて配管105を流れる冷媒の流量を制御する。
【0027】
図2に示すように、電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置70と、を有している。
【0028】
電動弁5は、弁本体10と、キャン20と、弁体30と、駆動機構40と、ステーター60と、を有している。
【0029】
弁本体10は、本体部材11と、接続部材13と、を有している。本体部材11は、円柱形状を有している。本体部材11は、弁室14と、弁口17と、弁座18と、を有している。本体部材11には、第1導管15および第2導管16が接合されている。第1導管15は、軸線Lと直交する方向(
図2の左右方向)に沿って配置され、弁室14に接続されている。第2導管16は、軸線L方向(
図2の上下方向)に沿って配置され、弁口17を介して弁室14に接続されている。弁口17は、弁室14において円環形状の弁座18に囲まれている。本体部材11は、円形の嵌合穴11aを有している。嵌合穴11aは、本体部材11の上端面に配置されている。嵌合穴11aの内周面は、
図2において左方を向く平面11dを有している。嵌合穴11aの底面には、弁室14に通じる貫通孔11bが設けられている。接続部材13は、円環板形状を有している。接続部材13の内周縁は、本体部材11の上端部に接合されている。本体部材11および接続部材13は、アルミニウム合金、ステンレス、真ちゅうなどの金属製である。
【0030】
キャン20は、ステンレスなどの金属製である。キャン20は、円筒形状を有している。キャン20は、下端部が開口しかつ上端部が塞がれている。キャン20の下端部は、接続部材13の外周縁に接合されている。
【0031】
弁体30は、第1軸部31と、第2軸部32と、弁部33と、を有している。第1軸部31は、円柱形状を有している。第2軸部32は、円柱形状を有している。第2軸部32の径は、第1軸部31の径より小さい。第2軸部32は、第1軸部31の上端部に同軸に接続されている。弁体30は、上方を向く円環状の平面である段部34を有している。段部34は、第1軸部31と第2軸部32との接続部分に配置されている。弁部33は、上方から下方に向かうにしたがって径が小さくなる略円錐形状を有している。弁部33は、第1軸部31の下端部に同軸に接続されている。弁部33は、弁口17に配置される。弁部33と弁口17との間に可変絞り部が形成される。弁部33は、弁口17および弁座18と向かい合っている。弁部33が弁座18に接すると、弁口17が閉じる。弁部33が弁座18から離れると、弁口17が開く。
【0032】
駆動機構40は、弁体30を上下方向(軸線L方向)に移動させる。弁体30の移動によって弁口17が開閉する。駆動機構40は、ローター41と、弁軸ホルダー42と、ガイドブッシュ43と、ストッパ部材44と、固定具45と、を有している。
【0033】
ローター41は、円筒形状を有している。ローター41の外径は、キャン20の内径より若干小さい。ローター41は、キャン20の内側に配置される。ローター41は、弁本体10に対して回転可能である。ローター41は、複数のN極および複数のS極を有している。複数のN極および複数のS極は、ローター41の外周面に配置されている。複数のN極および複数のS極は、上下方向に延在している。複数のN極および複数のS極は、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。ローター41は、例えば、N極を12個有し、S極を12個有している。互いに隣り合うN極とS極との間の角度は、15度である。
【0034】
図3は弁軸ホルダー42を示す。弁軸ホルダー42は、円筒形状を有している。弁軸ホルダー42の下端部は、開口している。弁軸ホルダー42の上端部には、上壁部42aが設けられている。上壁部42aは、軸孔42bを有している。弁軸ホルダー42は、ローター41の嵌合孔41aに嵌合されている。弁軸ホルダー42は、ローター41と共に回転する。弁軸ホルダー42の外周面の下端部には、可動ストッパ42sが配置されている。可動ストッパ42sは、径方向外方に突出する突部である。軸孔42bには、弁体30の第2軸部32が軸線L方向に移動可能に配置される。弁軸ホルダー42の上壁部42aの下面にはワッシャー46が配置される。ワッシャー46と弁体30の段部34との間には閉弁ばね47が配置される。閉弁ばね47は、コイルばねであり、弁体30を弁座18に向けて押す。弁軸ホルダー42の内周面には、雌ねじ42cが設けられている。可動ストッパ42sは、ローター41に対して固定されている。
【0035】
図4はガイドブッシュ43を示す。ガイドブッシュ43は、基部43aと、支持部43bと、を有している。基部43aは、円筒形状を有している。基部43aの外周面は、平面43dを有している。基部43aは本体部材11の嵌合穴11aに圧入され、平面43dが嵌合穴11aの平面11dと接する。これにより、本体部材11の中心軸とガイドブッシュ43の中心軸とが軸線L上で一致し、ガイドブッシュ43が本体部材11に対して軸線L周りに正しく位置付けられる。支持部43bは、円筒形状を有している。支持部43bの外径は、基部43aの外径より小さい。支持部43bの内径は、基部43aの内径と同じである。支持部43bは、基部43aの上端部に同軸に接続されている。支持部43bの外周面には、雄ねじ43cが設けられている。雄ねじ43cは、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cと螺合される。ガイドブッシュ43の内側には、弁体30の第1軸部31が配置される。ガイドブッシュ43は、弁体30を軸線L方向に移動可能に支持する。
【0036】
図5はストッパ部材44を示す。ストッパ部材44は、ストッパ本体44aを有している。ストッパ本体44aは、円筒形状を有している。ストッパ本体44aの内周面には、雌ねじ44cが設けられている。ストッパ本体44aの外周面には、固定ストッパ44sが配置されている。固定ストッパ44sは、径方向外方に突出する突部である。雌ねじ44cは、ストッパ本体44aがガイドブッシュ43の基部43aに当接するまで雄ねじ43cに螺合されている。これにより、ストッパ部材44は、ガイドブッシュ43に固定される。固定ストッパ44sは、弁本体10に対して固定されている。
【0037】
固定具45は、固定部45aと、フランジ部45bと、を有している。固定部45aは、段付きの円筒形状を有している。固定部45aの内側には、弁体30の第2軸部32が配置される。固定部45aは、第2軸部32に接合される。フランジ部45bは、固定部45aの下端部に接続されている。固定具45の外側には、復帰ばね48が配置される。復帰ばね48は、コイルばねである。
【0038】
電動弁5は、ローター41の回転を減速することなく用いる駆動機構40を有している。電動弁5は、駆動機構40に代えて、ローター41の回転を減速する減速機構を有する駆動機構を有していてもよい。
【0039】
ステーター60は、円筒形状を有している。ステーター60は、A相ステーター61と、B相ステーター62と、を有している。
【0040】
A相ステーター61は、複数のクローポール型の極歯61a、61bを内周に有している。極歯61aの先端は下方に向いており、極歯61bの先端は上方に向いている。極歯61aと極歯61bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。A相ステーター61は、例えば、極歯61aを12個有し、極歯61bを12個有している。互いに隣り合う極歯61aと極歯61bとの間の角度は、15度である。A相ステーター61は、A相コイル61cを有している。A相コイル61cが通電されると、極歯61aと極歯61bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0041】
B相ステーター62は、複数のクローポール型の極歯62a、62bを内周に有している。極歯62aの先端は下方に向いており、極歯62bの先端は上方に向いている。極歯62aと極歯62bとは、周方向に等角度間隔で交互に配置されている。B相ステーター62は、例えば、極歯62aを12個有し、極歯62bを12個有している。互いに隣り合う極歯62aと極歯62bとの間の角度は、15度である。B相ステーター62は、B相コイル62cを有している。B相コイル62cが通電されると、極歯62aと極歯62bとは互いに異なる極性の磁極となる。
【0042】
A相ステーター61とB相ステーター62とは、同軸に配置されている。A相ステーター61は、B相ステーター62と接している。軸線L方向から見たときに互いに隣り合うA相ステーター61の極歯61aとB相ステーター62の極歯62aとの間の角度は、7.5度である。つまり、B相ステーター62は、極歯61aと極歯62aとが軸線L方向に並ぶ位置からA相ステーター61に対して軸線L周りに7.5度回転した位置にある。
【0043】
ステーター60の内側には、キャン20が配置される。キャン20の内側には、ローター41が配置される。ステーター60とローター41とは、ステッピングモーター66である。
【0044】
ステッピングモーター66は、電動弁制御装置70に接続されている。具体的には、
図7に示すように、A相コイル61cの端子A1、A2およびB相コイル62cの端子B1、B2が、電動弁制御装置70のモータードライバ77に接続されている。
【0045】
ステッピングモーター66にパルスP(P[1]~P[8])が入力されることによりローター41が回転する。具体的には、ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されることによりローター41が回転する。本明細書において、「ステッピングモーター66にパルスPが入力されること」は、「ステッピングモーター66のステーター60にパルスPに応じた駆動電流が供給されること」と同義である。
【0046】
ステッピングモーター66には、パルスP[1]~P[8]が順番に入力される。パルスPに応じた駆動電流であるA相電流IaがA相ステーター61に供給される。パルスPに応じた駆動電流であるB相電流IbがB相ステーター62に供給される。A相電流IaとB相電流Ibとの組み合わせは、パルスP毎に異なる。組み合わせの数は、8であり、パルスPのパターンの数という。「パターン」は「スイッチングモード」ともいわれる。パルスP[1]~P[8]の数字(1~8)は、パルスP[1]~P[8]を特定するためのパターン番号である。例えば、パルスPの周期は8msであり、パルスP[1]~P[8]を含む1つの期間Tは64msである。ステッピングモーター66の励磁モードは1-2相励磁である。ステッピングモーター66のステップ角は3.75度である。
【0047】
A相電流Iaには、パルスP[1]~P[8]に対応するA相電流目標値Itaが設定される。B相電流Ibには、パルスP[1]~P[8]に対応するB相電流目標値Itbが設定される。
図8は、パルスPとA相電流目標値ItaおよびB相電流目標値Itbとの対応関係の一例を示す。
【0048】
パルスP[1]に対して、A相電流目標値Itaとして「+I2」が設定され、B相電流目標値Itbとして「0」が設定される。
パルスP[2]に対して、A相電流目標値Itaとして「+I1」が設定され、B相電流目標値Itbとして「+I1」が設定される。
パルスP[3]に対して、A相電流目標値Itaとして「0」が設定され、B相電流目標値Itbとして「+I2」が設定される。
パルスP[4]に対して、A相電流目標値Itaとして「-I1」が設定され、B相電流目標値Itbとして「+I1」が設定される。
パルスP[5]に対して、A相電流目標値Itaとして「-I2」が設定され、B相電流目標値Itbとして「0」が設定される。
パルスP[6]に対して、A相電流目標値Itaとして「-I1」が設定され、B相電流目標値Itbとして「-I1」が設定される。
パルスP[7]に対して、A相電流目標値Itaとして「0」が設定され、B相電流目標値Itbとして「-I2」が設定される。
パルスP[8]に対して、A相電流目標値Itaとして「+I1」が設定され、B相電流目標値Itbとして「-I1」が設定される。
「+I2」と「-I2」とは、電流の大きさが同じで、電流の向きが異なる。
「+I1」と「-I1」とは、電流の大きさが同じで、電流の向きが異なる。
「+I2」と「+I1」とは、電流の大きさが異なり、電流の向きが同じである。
【0049】
図9は、ステッピングモーター66にパルスPが昇順で入力されるときのA相電流Iaの波形およびB相電流Ibの波形を模式的に示す。
図9において、A相電流IaはA相電流目標値Itaと大きさおよび電流の向きが同じ電流であり、B相電流IbはB相電流目標値Itbと大きさおよび電流の向きが同じ電流である。
図8、
図9において、符号(+/-)は電流が流れる向きを示す。「+」は、端子A1から端子A2への向き、または、端子B1から端子B2への向きを示す。「-」は、端子A2から端子A1への向き、または、端子B2から端子B1への向きを示す。「0」は、電流が流れないことを示す。
【0050】
ステッピングモーター66にパルスP[1]またはP[5]が入力されると、A相電流IaがA相ステーター61に供給され、B相電流IbがB相ステーター62に供給されない。
ステッピングモーター66にパルスP[3]またはP[7]が入力されると、A相電流IaがA相ステーター61に供給されず、B相電流IbがB相ステーター62に供給される。
ステッピングモーター66にパルスP[2]、P[4]、P[6]またはP[8]が入力されると、A相電流IaがA相ステーター61に供給され、B相電流IbがB相ステーター62に供給される。
【0051】
図10~
図17に、パルスP[1]~P[8]が入力されたときのローター41とステーター60との位置関係の例を示す。
図10~
図17において、ローター41とステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)との位置関係を把握しやすくするため、基準となる極歯61aおよび基準となるローター41の磁極(S極)に黒丸を付している。
【0052】
ローター41を第一方向(
図10~
図17において時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを昇順(パルスP[1]~P[8]の順番)で循環的に入力する。ローター41が第一方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとの送りねじ作用によってローター41および弁軸ホルダー42が下方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)が、閉弁ばね47を介して弁体30を下方に押す。弁体30が下方に移動して弁部33が弁座18に接する。このときのローター41の位置は、閉弁位置Rcである。この状態からローター41を第一方向にさらに回転させると、閉弁ばね47が圧縮されてローター41が下方にさらに移動する。弁体30は下方に移動しない。そして、弁軸ホルダー42の可動ストッパ42sがストッパ部材44の固定ストッパ44sに接すると、ローター41の第一方向への回転が規制される。このときのローター41の位置は、基準位置Rxである。可動ストッパ42sおよび固定ストッパ44sは、ローター41の第一方向への回転を規制するストッパ機構49である。
【0053】
ローター41を第一方向と反対の第二方向(
図10~
図17において反時計方向)に回転させる場合、ステッピングモーター66にパルスPを降順(パルスP[8]~P[1]の順番)で循環的に入力する。ローター41が第二方向に回転すると、弁軸ホルダー42の雌ねじ42cとガイドブッシュ43の雄ねじ43cとの送りねじ作用によってローター41および弁軸ホルダー42が上方に移動する。ローター41(弁軸ホルダー42)が固定具45を上方に押す。固定具45とともに弁体30が上方に移動して、弁体30が弁座18から離れる。所定の流量測定環境において弁口17における流体の流量(弁口17の開度)が所定の設定値であるときのローター41の位置を開弁位置Roとする。設定値は、電動弁装置1の構成や用途などに応じて適宜設定される。ローター41が第二方向に回転して全開位置Rzに至ると、弁体30が弁口17から最も離れ、弁口17が最大開度になる。
【0054】
全開位置Rzから基準位置Rxまでローター41を回転させるためのパルスPの数を、ストローク数Nsという。すなわち、ローター41が全開位置Rzにある電動弁5のステッピングモーター66にストローク数NsのパルスPを入力すると、ローター41が基準位置Rxに位置づけられる。例えば、ストローク数Nsは、500である。基準位置Rxから全開位置Rzまでローター41を回転させるためのパルスPの数も、ストローク数Nsである。
【0055】
ストローク数Nsに基づいて、初期化数Niが設定される。初期化数Niは、全開位置Rzから基準位置Rxまでローター41を回転させるために十分なパルスPの数である。すなわち、ローター41がいずれの位置にあってもステッピングモーター66に初期化数NiのパルスPを入力すると、ローター41が基準位置Rxに位置づけられる。初期化数Niは、例えば、ストローク数Nsの1.05~1.3倍の数である。初期化数Niは、ローター41を基準位置Rxに位置づける初期化動作において用いられる。
【0056】
電動弁5において、弁口17、弁座18、キャン20、弁体30、ローター41、弁軸ホルダー42、ガイドブッシュ43、ステーター60(A相ステーター61、B相ステーター62)は、それぞれの中心軸が軸線Lに一致する。
【0057】
電動弁制御装置70は、複数の電子部品(図示なし)が実装された基板71を有している。電動弁制御装置70は、
図1に示すように、不揮発性メモリ75と、通信装置76と、モータードライバ77と、コンピュータ80と、を有している。電動弁制御装置70は、エアコン制御装置110からの命令に基づいて、電動弁5を制御する。
【0058】
不揮発性メモリ75は、電源が切断された場合でも保持する必要があるデータを記憶する。不揮発性メモリ75は、例えば、EEPROMやフラッシュメモリである。
【0059】
通信装置76は、有線通信バス120を介してエアコン制御装置110と通信可能に接続されている。エアコンシステム100は、例えば、Local Interconnect Network(LIN)やController Area Network(CAN)などの通信方式を採用している。なお、通信装置76は、エアコン制御装置110と無線通信可能に接続されていてもよい。
【0060】
モータードライバ77は、コンピュータ80によって制御され、ステッピングモーター66のステーター60に駆動電流(A相電流Ia、B相電流Ib)を供給する。
【0061】
モータードライバ77は、ステーター60と接続されている(
図7)。モータードライバ77は、A相コイル61cにA相電流Iaを供給し、B相コイル62cにB相電流Ibを供給する。
【0062】
モータードライバ77は、コンピュータ80からパルス状のステップ信号(STEP)および方向信号(DIR)が入力される。モータードライバ77に第一方向に対応する方向信号が入力されているときにステップ信号が入力されることは、ステッピングモーター66にパルスPが昇順で入力されることに相当する。モータードライバ77に第二方向に対応する方向信号が入力されているときにステップ信号が入力されることは、ステッピングモーター66にパルスPが降順で入力されることに相当する。
【0063】
また、モータードライバ77は、コンピュータ80から電流制御信号(CONTROL)が入力される。電流制御信号は、モータードライバ77にA相電流目標値ItaおよびB相電流目標値Itbを設定するための信号である。
【0064】
図7に示すように、モータードライバ77はHブリッジ回路77A、77Bと、電流制御部77Cと、を有している。Hブリッジ回路77A、77Bは電流回路である。モータードライバ77は、ステッピングモーター66をバイポーラ方式で駆動する。
【0065】
Hブリッジ回路77Aは、A相コイル61cに接続されている。Hブリッジ回路77Aは、スイッチ素子であるスイッチSW11、SW12、SW13、SW14を有している。Hブリッジ回路77Bは、B相コイル62cに接続されている。Hブリッジ回路77Bは、スイッチ素子であるスイッチSW21、SW22、SW23、SW24を有している。スイッチSW11、SW12、SW13、SW14およびスイッチSW21、SW22、SW23、SW24は、例えば、Nチャネル型MOSFETまたはPチャネル型MOSFETであり、両方が混在していてもよい。
【0066】
スイッチSW11、SW12、SW13、SW14およびスイッチSW21、SW22、SW23、SW24は、オン(導通状態)/オフ(非導通状態)となるように制御される。
【0067】
電流制御部77Cは、コンピュータ80からのステップ信号および方向信号に応じてHブリッジ回路77A、77Bをパルス幅変調(PWM)制御方式で制御する。
【0068】
A相コイル61cに端子A1から端子A2に流れるA相電流Iaを供給するとき:
(1)電流制御部77Cは、スイッチSW12、SW13をオフにする。
(2)電流制御部77Cは、A相電流Iaの大きさがA相電流目標値Itaの大きさと同じになるようにスイッチSW11、SW14のオン時間(すなわち、デューティーサイクル)を制御する。
【0069】
A相コイル61cに端子A2から端子A1に流れるA相電流Iaを供給するとき:
(1)電流制御部77Cは、スイッチSW11、SW14をオフにする。
(2)電流制御部77Cは、A相電流Iaの大きさがA相電流目標値Itaの大きさと同じになるようにスイッチSW12、SW13のオン時間を制御する。
【0070】
B相コイル62cに端子B1から端子B2に流れるB相電流Ibを供給するとき:
(1)電流制御部77Cは、スイッチSW22、SW23をオフにする。
(2)電流制御部77Cは、B相電流Ibの大きさがB相電流目標値Itbの大きさと同じになるようにスイッチSW21、SW24のオン時間を制御する。
【0071】
B相コイル62cに端子B2から端子B1に流れるB相電流Ibを供給するとき:
(1)電流制御部77Cは、スイッチSW21、SW24をオフにする。
(2)電流制御部77Cは、B相電流Ibの大きさがB相電流目標値Itbの大きさと同じになるようにスイッチSW22、SW23のオン時間を制御する。
【0072】
なお、電流制御部77Cは、Hブリッジ回路77A、77Bをパルス幅変調制御方式以外の制御方式で制御してもよい。
【0073】
コンピュータ80は、CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースおよびA/D変換器などが1つのパッケージに組み込まれた組込機器用のマイクロコンピュータである。コンピュータ80は、不揮発性メモリ75、通信装置76およびモータードライバ77を含んでいてもよい。コンピュータ80は、CPUがROMに格納されたプログラムを実行することにより、回転制御部81、取得部82および判定部83として機能する。
【0074】
回転制御部81は、ステッピングモーター66にパルスPを入力してローター41を第一方向または第二方向に回転させる。具体的には、回転制御部81は、エアコン制御装置110からの命令に基づいてモータードライバ77を制御し、ステーター60(A相コイル61c、B相コイル62c)にA相電流IaおよびB相電流Ibを供給する。回転制御部81は、モータードライバ77に、ステップ信号、方向信号および電流制御信号を入力する。
【0075】
取得部82は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧、すなわち、ステーター60に電磁誘導される電圧を取得する。
【0076】
具体的には、取得部82は、回転制御部81がパルスP[1]およびP[5]に応じてA相コイル61cのみに駆動電流を供給したときに、B相コイル62cの端子B1、B2間に生じる電圧VBを時系列的に取得する。取得部82は、回転制御部81がパルスP[3]およびP[7]に応じてB相コイル62cのみに駆動電流を供給したときに、A相コイル61cの端子A1、A2間に生じる電圧VAを時系列的に取得する。取得部82は、回転制御部81がパルスP[2]、P[4]、P[6]およびP[8]に応じてA相コイル61cおよびB相コイル62cに駆動電流を供給したとき、電圧VAおよび電圧VBを取得しない。以下の説明において、取得部82が取得した電圧VAおよび電圧VBを単に「電圧V」と示す。
【0077】
なお、取得部82は、回転制御部81がパルスP[1]~P[8]に応じてA相コイル61cおよびB相コイル62cに駆動電流を供給したときに、電圧Vを時系列的に取得してもよい。この構成では、取得部82は、端子A1、A2間に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離して、当該電圧成分を電圧VAとする。取得部82は、端子B1、B2間に生じる電圧から電磁誘導に係る電圧成分を分離して、当該電圧成分を電圧VBとする。
【0078】
時系列的に取得した電圧Vは、電圧Vの波形である。本明細書において、「波形」とは、1定点における物理量(電圧)の時間的変化である。「波形」を可視化する場合は、物理量を縦軸とし、時間を横軸とした座標面に表現される。また、コンピュータ80のRAMや不揮発性メモリ75において物理量データと時間データとが関連付けられて記憶されたデータテーブルなどの不可視のものも「波形」に含まれる。また、「波形の面積」とは、当該波形を、物理量を縦軸とし時間を物理量0に対応する横軸とする座標面に表現したときに、当該波形と横軸とによって囲まれる領域の面積である。
【0079】
図18に、ローター41を第一方向に回転させたときの電圧VBの波形の一例を示す。
図18に示す波形は、パルスP[1]およびP[5]に対応する電圧VBの波形を含んでいる。
図19に、パルスP[1]に対応する電圧VBの波形の一例を示す。
【0080】
取得部82は、パルスPの始期から終期までの期間に所定のサンプリング周期で電圧Vを時系列的に取得する。例えば、パルスPの始期から終期までの長さは8msであり、サンプリング周期は200μsである。取得部82は、例えば、1つのパルスPの入力に対応して電圧Vを40回取得する。
【0081】
取得部82が取得した電圧Vは、データテーブルとしてRAMに格納されてもよい。
図20にデータテーブルの一例を示す。データテーブルでは、パルスPの始期(時刻0)から所定の時間おきの時刻tと、当該時刻tにおける電圧Vである電圧vと、が関連付けられている。時刻tの間隔は、サンプリング周期(200μs)と同じである。
図20において、時刻tの単位はμsである。電圧vの単位はmvである。時刻tの単位および電圧vの単位は、例えば、電動弁制御装置70が有するA/D変換器のサンプリング周期および分解能に応じたものなど、独自の単位であってもよい。
【0082】
判定部83は、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する。具体的には、判定部83は、回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であるか否かを判定する。
【0083】
判定部83の動作に関連して、本発明者らは、以下の実験1~3をおこなった。
【0084】
(実験1)
本発明者らは、ローター41に一定の大きさの回転負荷を加えた電動弁5を用いて、ローター41を回転させるためにステーター60に大きさの異なる複数の駆動電流を供給したときのローター41の回転角度とローター41の回転によってステーター60に生じる電圧とを取得した。本実験において、ローター41の回転負荷は粘性減衰係数であり、その大きさは、10×10
-5[Nm/(rad/s)]である。複数の駆動電流の大きさは、0.04[A]、0.06[A]、0.10[A]、0.15[A]、0.30[A]および0.60[A]である。結果を、
図21、
図22に示す。
【0085】
図21に示すように、(1)駆動電流が0.30[A]のとき、ローター41の回転角度が階段状に増加しており、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正である。(2)駆動電流が0.04[A]のとき、ローター41の回転角度が増加せず、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが不足している。(3)駆動電流が0.06~0.15[A]のとき、上記(1)に比べて、ローター41の回転角度が遅れて増加しており、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さい。(4)駆動電流が0.60[A]のとき、ローター41の回転角度が振動しながら増加しており、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きい。
【0086】
そして、
図22に示すように、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧の波形は、駆動電流の大きさに応じて異なる。
【0087】
(実験2)
本発明者らは、ローター41に一定の大きさの回転負荷を加えた電動弁5を用いて、ステーター60に大きさの異なる複数の駆動電流を供給したときのローター41の回転によってステーター60に生じる電圧を取得した。具体的には、電動弁5において、ステッピングモーター66にパルスPを順番に入力した。そして、パルスP[1]に応じてA相ステーター61のみに駆動電流を供給したときにB相ステーター62に生じる電圧VBの波形を取得した。本実験において、ローター41の回転負荷は粘性減衰係数であり、その大きさは、10×10-5[Nm/(rad/s)]である。複数の駆動電流の大きさは、0.04[A]から0.60[A]まで0.01[A]刻みである。
【0088】
電圧VBの波形は、上記データテーブルとしてデータ記憶装置に格納される。データテーブルは、大きさが0.04[A]~0.60[A]の複数の駆動電流に対応している。
【0089】
そして、本発明者らは、複数の駆動電流に対応する複数の電圧VBの波形のうちの1つを電圧VBの基準波形として用い、複数の電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との相違の度合いを取得した。
【0090】
具体的には、本発明者らは、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との相違の度合いを示す値(相違度指標値sv)を算出した。相違度指標値svが大きいほど、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との相違の度合いが大きい。
【0091】
相違度指標値svは、電圧VBの波形のデータテーブルと、電圧VBの基準波形のデータテーブルと、を用いて算出する。
【0092】
相違度指標値svの算出方法は、(1)電圧VBの波形のデータテーブルにおいて時刻tに関連付けられた電圧vから電圧VBの基準波形のデータテーブルにおいて当該時刻tに関連付けられた電圧vを減算した値(差分値dv)を算出し、(2)差分値dvを2乗した値(中間値dv2)を算出し、(3)各時刻tについて算出した複数の中間値dv2を足し合わせて相違度指標値svを算出する。
【0093】
そして、本発明者らは、駆動電流の大きさと相違度指標値svとの関係を示すグラフを得た。
図23~
図25にグラフを示す。
【0094】
図23は、電圧VBの基準波形として、0.30[A]の駆動電流に対応する電圧VBの波形を用いたときのグラフを示す。
図23において、駆動電流の大きさが0.30[A]のとき、相違度指標値svが0であり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形とが一致している。
図23において、駆動電流の大きさが0.30[A]から大きくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に大きくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に大きくなる。
図23において、駆動電流の大きさが0.30[A]から小さくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に大きくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に大きくなる。
図23において、駆動電流の大きさが0.10[A]から小さくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に小さくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に小さくなる。
【0095】
図24は、電圧VBの基準波形として、0.06[A]の駆動電流に対応する電圧VBの波形を用いたときのグラフを示す。
図24において、駆動電流の大きさが0.06[A]のとき、相違度指標値svが0であり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形とが一致している。
図24において、駆動電流の大きさが0.06[A]から大きくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に大きくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に大きくなる。
図24に示すグラフは、単調増加している。
【0096】
図25は、電圧VBの基準波形として、0.60[A]の駆動電流に対応する電圧VBの波形を用いたときのグラフを示す。
図25において、駆動電流の大きさが0.60[A]のとき、相違度指標値svが0であり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形とが一致している。
図25において、駆動電流の大きさが0.60[A]から小さくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に大きくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に大きくなる。
図25において、駆動電流の大きさが0.10[A]から小さくなるにしたがって相違度指標値svが徐々に小さくなり、電圧VBの波形と電圧VBの基準波形との違いが徐々に小さくなる。
【0097】
本実験結果は、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係が変わると、電圧VBの波形が変わることを示している。電圧VAは、電圧VBと対称的であるため、当該関係が変わると、電圧VAの波形も同様に変わると推定される。すなわち、当該関係がローター41の回転によってステーター60に生じる電圧V(電圧VA、電圧VB)に反映される。そのため、当該電圧と関連する相違度指標値svに基づいて、当該関係を判定することができる。判定方法の例を示す。
【0098】
判定方法1:
図23のグラフに基づいて判定値H11を設定する。電圧Vの基準波形として、0.30[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの波形を取得する。電圧Vの波形と電圧Vの基準波形とを用いて相違度指標値svを算出する。相違度指標値svが判定値H11以下のとき(区間B)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定し、相違度指標値svが判定値H11より大きいとき(区間A、C)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正でないと判定する。
【0099】
判定方法2:
図24のグラフに基づいて判定値H21、H22を設定する。電圧Vの基準波形として、0.06[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの波形を取得する。電圧Vの波形と電圧Vの基準波形とを用いて相違度指標値svを算出する。相違度指標値svが判定値H21以下でかつ判定値H22以上のとき(区間B)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定し、相違度指標値svが判定値H21より大きいとき(区間C)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定し、相違度指標値svが判定値H22より小さいとき(区間A)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定する。
【0100】
判定方法3:
図25のグラフに基づいて判定値H31、H32を設定する。電圧Vの基準波形として、0.60[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの波形を取得する。電圧Vの波形と電圧Vの基準波形とを用いて相違度指標値svを算出する。相違度指標値svが判定値H31以下でかつ判定値H32以上のとき(区間B)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定し、相違度指標値svが判定値H31より大きいとき(区間A)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定し、相違度指標値svが判定値H32より小さいとき(区間C)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定する。
【0101】
判定方法4:
図26に示すように、
図23のグラフと
図24のグラフとを組み合わせ、判定値H11、H21を設定する。電圧Vの基準波形(基準波形1)として、0.30[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの基準波形(基準波形2)として、0.06[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの波形を取得する。電圧Vの波形と基準波形1とを用いて相違度指標値sv1を算出する。電圧Vの波形と基準波形2とを用いて相違度指標値sv2を算出する。相違度指標値sv1が判定値H11以下のとき(区間B)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定し、相違度指標値sv1が判定値H11より大きくかつ相違度指標値sv2が判定値H21より大きいとき(区間C)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定し、相違度指標値sv1が判定値H11より大きくかつ相違度指標値sv2が判定値H21以下のとき(区間A)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定する。
【0102】
判定方法5:
図27に示すように、
図24のグラフと
図25のグラフとを組み合わせ、判定値H21、H31を設定する。電圧Vの基準波形(基準波形2)として、0.06[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの基準波形(基準波形3)として、0.60[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いる。電圧Vの波形を取得する。電圧Vの波形と基準波形2とを用いて相違度指標値sv2を算出する。電圧Vの波形と電圧Vの基準波形3と、を用いて相違度指標値sv3を算出する。相違度指標値sv2が判定値H21以下でかつ相違度指標値sv3が判定値H31以下のとき(区間B)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定し、相違度指標値sv2が判定値H21より大きいとき(区間C)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定し、相違度指標値sv3が判定値H31より大きいとき(区間A)、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さい、と判定する。
【0103】
判定方法1~5では、電圧Vの基準波形として、0.30[A]、0.06[A]および0.60[A]の駆動電流に対応する電圧Vの波形を用いている。電圧Vの基準波形としてどの駆動電流の大きさに対応する電圧Vの波形を用いるかは、電動弁装置1の構成や用途などに応じて適宜選択できる。
【0104】
(実験3)
本発明者らは、ローター41に大きさの異なる複数の回転負荷を加えた電動弁5を用いて、ステーター60に一定の大きさの駆動電流を供給したときのローター41の回転によってステーター60に生じる電圧を取得した。具体的には、電動弁5において、ステッピングモーター66にパルスPを順番に入力した。そして、パルスP[1]に応じてA相ステーター61のみに駆動電流を供給したときにB相ステーター62に生じる電圧VBの波形を取得した。
【0105】
本実験において、ローター41の回転負荷は粘性減衰係数であり、その大きさは、
100×10-5[Nm/(rad/s)]から
10×10-5[Nm/(rad/s)]まで
10×10-5[Nm/(rad/s)]刻みであり、
10×10-5[Nm/(rad/s)]から
1×10-5[Nm/(rad/s)]まで
1×10-5[Nm/(rad/s)]刻みである。
駆動電流の大きさは、0.30[A]である。
【0106】
電圧VBの波形は、上記データテーブルとしてデータ記憶装置に格納される。データテーブルは、大きさが100×10-5[Nm/(rad/s)]~1×10-5[Nm/(rad/s)]の複数の回転負荷に対応している。
【0107】
本発明者らは、0.30[A]の駆動電流に対応する電圧VBの波形を電圧VBの基準波形(基準波形1)として用い、実験2と同様に、複数の電圧VBの波形と基準波形1との相違の度合い(相違度指標値sv1)を取得した。また、本発明者らは、0.06[A]の駆動電流に対応する電圧VBの波形を電圧VBの基準波形(基準波形2)として用い、実験2と同様に、複数の電圧VBの波形と基準波形2との相違の度合い(相違度指標値sv2)を取得した。
【0108】
そして、本発明者らは、ローターの回転負荷の大きさと相違度指標値sv1、sv2との関係を示すグラフを得た。
図28、29にグラフを示す。
図28、
図29において、破線のグラフが相違度指標値sv1を示し、一点鎖線のグラフが相違度指標値sv2を示す。
図28、
図29において、横軸を左方に向かうと回転負荷が大きくなり、横軸を右方に向かうと回転負荷が小さくなる。回転負荷が大きくなると、回転負荷に対して相対的に駆動電流が小さくなる。回転負荷が小さくなると、回転負荷に対して相対的に駆動電流が大きくなる。
【0109】
図28に示すように、ローター41の回転負荷が大きくなる(回転負荷に対して相対的に駆動電流が小さくなる)にしたがって、相違度指標値sv1が徐々に大きくなり、相違度指標値sv2が徐々に小さくなる。
【0110】
図29に示すように、ローター41の回転負荷が小さくなる(回転負荷に対して相対的に駆動電流が大きくなる)にしたがって、相違度指標値sv1が徐々に大きくなり、相違度指標値sv2が徐々に大きくなる。
【0111】
なお、
図28、
図29には記載がないが、回転負荷が10×10
-5[Nm/(rad/s)]であるとき、相違度指標値sv1が0である。
【0112】
本実験結果も、実験2と同様に、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係が変わると、電圧VBの波形(および電圧VAの波形)が変わることを示している。
図28、
図29において判定値H11、H21を設定すると、
図26と同様に、回転負荷を区間A~Cに分けることができる。このことから、回転負荷に対して相対的に駆動電流の大きさを変えた場合でも、実験2と同様の判定方法が有効であることがわかる。
【0113】
判定部83は、上記判定方法を採用し、取得部82が取得した電圧Vの波形と電圧Vの基準波形との相違の度合い(相違度指標値sv)に基づいて、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する。
【0114】
1つのパルスP[k](k=1、3、5、7)に対して、第一の電圧Vの基準波形および第二の電圧Vの基準波形が設定される。第一の電圧Vの基準波形は、ローター41が第一方向に回転しているときの判定に用いられる。第二の電圧Vの基準波形は、ローター41が第二方向に回転しているときの判定に用いられる。
【0115】
パルスP[ka](ka=3、7)に対して設定される第一の電圧VAの基準波形は、ローター41を第一方向に回転させるときにステッピングモーター66に入力されるパルスP[ka]に応じてB相ステーター62のみに駆動電流を供給したときに取得された電圧VAの波形に基づいて設定される。
パルスP[ka]に対して設定される第二の電圧VAの基準波形は、ローター41を第二方向に回転させるときにステッピングモーター66に入力されるパルスP[ka]に応じてB相ステーター62のみに駆動電流を供給したときに取得された電圧VAの波形に基づいて設定される。
【0116】
パルスP[kb](kb=1、5)に対して設定される第一の電圧VBの基準波形は、ローター41を第一方向に回転させるときにステッピングモーター66に入力されるパルスP[kb]に応じてA相ステーター61のみに駆動電流を供給したときに取得された電圧VBの波形に基づいて設定される。
パルスP[kb]に対して設定される第二の電圧VBの基準波形は、ローター41を第二方向に回転させるときにステッピングモーター66に入力されるパルスP[kb]に応じてA相ステーター61のみに駆動電流を供給したときに取得された電圧VBの波形に基づいて設定される。
【0117】
電圧Vの基準波形は、データテーブルとして不揮発性メモリ75にあらかじめ格納される。
【0118】
不揮発性メモリ75には、第一基準波形テーブルC1[k]および第二基準波形テーブルC2[k]が格納される。第一基準波形テーブルC1[k]は、パルスP[k]に対して設定される第一の電圧Vの基準波形である。第二基準波形テーブルC2[k]は、パルスP[k]に対して設定される第二の電圧Vの基準波形である。
【0119】
第一基準波形テーブルC1[k]および第二基準波形テーブルC2[k]は、
図20のデータテーブルと同じ形式を有しており、パルスPの始期(時刻0)から所定の時間おきの時刻tと、当該時刻tにおける電圧v(基準電圧rv)と、が関連付けられている。時刻tの間隔は、サンプリング周期(200μs)と同じである。1つのデータテーブルは、時刻tと基準電圧rvとの組を40個有している。
【0120】
判定部83は、取得部82によって取得された電圧Vの波形と電圧Vの基準波形との相違の度合いを示す値(相違度指標値sv)を算出する。
【0121】
判定部83は、パルスP[k]の入力に対応して取得部82が取得時刻tvにおいて電圧v(電圧V)を取得すると、パルスP[k]に対して設定された電圧Vの基準波形のデータテーブル(第一基準波形テーブルC1[k]または第二基準波形テーブルC2[k])から取得時刻tvに対応する時刻tと関連付けられた基準電圧rvを読み出す。判定部83は、電圧vから基準電圧rvを減算した値(差分値dv)を算出する。判定部83は、差分値dvを2乗した値(中間値dv2)を算出する。判定部83は、パルスP[k]の入力に対応して算出された複数の中間値dv2を足し合わせて相違度指標値sv[k]を算出する。
【0122】
判定部83は、パルスP[k]の始期から終期までの期間の一部において取得部82が取得した電圧vを用いて、相違度指標値sv[k]を算出する。具体的には、パルスP[k]の始期から時刻t1までを第一期間p1とし、時刻t1から時刻t2までを第二期間p2としたとき、判定部83は、第二期間p2の電圧vを用いて相違度指標値sv[k]を算出する。時刻t1はパルスP[k]の始期より後の時刻である。時刻t2は、時刻t1より後でかつパルスP[k]の終期より前の時刻である。時刻t2は、パルスP[k]の終期であってもよい。
図30は、パルスP[1]の入力に対応して取得した電圧VBの波形(実線:「取得波形」)および電圧VBの基準波形(破線)の例を示す。
図30において、第二期間p2で電圧VBの波形と電圧VBの基準波形とを接続する縦線の長さは、相違度指標値sv[1]の算出に用いる差分値dvを示す。判定部83は、相違度指標値sv[k]の算出に、第一期間p1の電圧vを用いない。
【0123】
電圧vは、ステーター60のコイルのインダクタンスによる逆起電力に係る電圧成分(前者の電圧成分)と、ローター41の回転による電磁誘導に係る電圧成分(後者の電圧成分)とを含むことがある。パルスP[k]の始期から少し後の時刻において、前者の電圧成分が後者の電圧成分より大きく、前者の電圧成分は時間経過とともに小さくなる。そのため、判定部83は、パルスP[k]の始期からある程度時間が経過した後に取得部82が取得した電圧vを用いて相違度指標値sv[k]を算出する。具体的には、判定部83は、前者の電圧成分が後者の電圧成分より小さくなった後に取得部82が取得した電圧vを用いて相違度指標値sv[k]を算出する。このようにすることで、電圧vにおいて後者の電圧成分の割合が相対的に大きくなり、判定部83は、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係をより高い精度で判定できる。
【0124】
第一期間p1の長さは、パルスP[k]の始期から終期までの期間の5~50%であり、20~30%が好ましい。第二期間p2の長さは、パルスP[k]の始期から終期までの期間の50~95%であり、70~80%が好ましい。第二期間p2において取得部82が取得した電圧vでは、ステーター60のコイルのインダクタンスによる逆起電力に係る電圧成分が、ローター41の回転による電磁誘導に係る電圧成分より小さい。なお、判定部83は、パルスP[k]の始期から終期までの期間(全期間)において取得部82が取得した電圧vを用いて、相違度指標値sv[k]を算出してもよい。この構成では、パルスP[k]の始期が時刻t1であり、パルスP[k]の終期が時刻t2である。
【0125】
時刻t1から時刻t2までの間の取得時刻tvにおいて取得した電圧vをv[tv]とし、基準波形のデータテーブルにおいて取得時刻tvに対応する時刻tに関連付けられた基準電圧rvをrv[tv]としたとき、相違度指標値svは以下の式(1)で示される。
【0126】
【0127】
判定部83は、相違度指標値sv[k]に基づいてローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する。具体的には、判定部83は、相違度指標値sv[k]を所定の判定値Hと比較する。判定値Hは、例えば、上述した判定値H11、H21、H22、H31およびH32である。判定部83は、相違度指標値sv[k]と判定値Hとの比較結果に基づいて、前記関係を判定する。電動弁制御装置70は、相違度指標値sv[k]に対応する判定値H[k]を有していてもよい。各判定値H[k]は、同じ値でもよく、互いに異なる値でもよい。判定部83は、パルスP[k]のうちの1つのみについて相違度指標値svを算出し、上記関係を判定するようにしてもよい。
【0128】
次に、電動弁制御装置70の動作の一例を、
図31を参照して説明する。
【0129】
この動作において、電動弁制御装置70は、上記判定方法2~4のいずれかを用いて、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する。不揮発性メモリ75には、電動弁制御装置70が用いる判定方法に応じた電圧Vの基準波形(第一基準波形テーブルC1、第二基準波形テーブルC2)および判定値Hが格納されている。電圧Vの基準波形は、電動弁5においてあらかじめ取得された電圧Vの波形に基づいて設定される。
【0130】
電動弁制御装置70(具体的には、コンピュータ80)は、エアコン制御装置110から弁開度(弁口17の開度)を変更する命令を受信する(S110)。電動弁制御装置70は、現在の弁開度から当該命令に含まれる目標弁開度にするためにステッピングモーター66に入力するパルスPの数(目標数Nt)およびローター41の回転方向(第一方向または第二方向)を取得する。
【0131】
電動弁制御装置70は、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を開始して、算出した回転方向にローター41を回転させる(S120)。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[1]~P[8]に対応する駆動電流の目標値(A相電流目標値Ita、B相電流目標値Itb)に初期値を設定するための電流制御信号および回転方向を示す方向信号をモータードライバ77に入力する。そして、電動弁制御装置70は、モータードライバ77へのステップ信号の入力を開始する。初期値は、ローター41において想定される最大の回転負荷に合わせて設定されている。
【0132】
電動弁制御装置70は、電圧Vを取得する(S130)。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[ka]に応じてB相ステーター62のみに駆動電流を供給したときの電圧VAを時系列的に取得する。また、電動弁制御装置70は、パルスP[kb]に応じてA相ステーター61のみに駆動電流を供給したときの電圧VBを時系列的に取得する。すなわち、電動弁制御装置70は、電圧VAの波形および電圧VBの波形を取得する。電動弁制御装置70は、電圧VAの波形および電圧VBの波形をRAMに格納してもよい。
【0133】
電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定する(S140)。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[k]の終期において、電圧Vの波形と電圧Vの基準波形とを用いて相違度指標値svを算出し、相違度指標値svと判定値Hとに基づいて当該関係を判定する。
【0134】
ここでは、電動弁制御装置70が、上記判定方法4を用いる場合について説明する。電動弁制御装置70は、電圧Vの波形と基準波形1とを用いて相違度指標値sv1を算出する。電圧Vの波形と基準波形2とを用いて相違度指標値sv2を算出する。電動弁制御装置70は、相違度指標値sv1が判定値H11以下のとき、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定する。電動弁制御装置70は、相違度指標値sv1が判定値H11より大きくかつ相違度指標値sv2が判定値H21より大きいとき、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定する。電動弁制御装置70は、相違度指標値sv1が判定値H11より大きくかつ相違度指標値sv2が判定値H21以下のとき、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定する。
【0135】
電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定したとき(S150でY)、駆動電流の目標値を変えない。すなわち、電動弁制御装置70は、駆動電流の大きさを維持する。
【0136】
電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定したとき(S150でN、S160でY)、駆動電流の大きさを小さくする(S170)。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[1]~P[8]に対応する駆動電流の目標値に、現在の値より所定の大きさ(例えば1[mA])だけ小さい新たな値を設定するための電流制御信号をモータードライバ77に入力する。なお、電動弁制御装置70は、駆動電流の目標値が、ステッピングモーター66について定められた下限値より小さくならないようにする。
【0137】
電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定したとき(S150でN、S160でN)、駆動電流の大きさを大きくする(S180)。具体的には、電動弁制御装置70は、パルスP[1]~P[8]に対応する駆動電流の目標値に、現在の値より所定の大きさ((例えば1[mA]))だけ大きい新たな値を設定するための電流制御信号をモータードライバ77に入力する。なお、電動弁制御装置70は、駆動電流の目標値が、ステッピングモーター66について定められた上限値より大きくならないようにする。
【0138】
所定の大きさは、あらかじめ定められた固定値でもよく、相違度指標値svと判定値Hとの差に応じた値でもよい。また、所定の大きさに代えて、所定の割合(例えば3%)を用いてもよい。電動弁制御装置70は、PID制御を用いて駆動電流の目標値を設定してもよい。
【0139】
なお、電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと複数回連続して判定したとき、駆動電流の大きさを小さくするようにしてもよい。電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと複数回連続して判定したとき、駆動電流の大きさを大きくするようにしてもよい。
【0140】
電動弁制御装置70は、ステッピングモーター66に入力したパルスPの数(ステップ信号のパルスの数)が目標数NtになるまでステップS130~S190の動作を繰り返す(S190でN)。電動弁制御装置70は、ステッピングモーター66に入力したパルスPの数が目標数Ntになると(S190でY)、ステッピングモーター66へのパルスPの入力を停止して(S200)、本動作を終了する。
【0141】
以上説明したように、電動弁装置1は、電動弁5と、電動弁制御装置70と、を有する。電動弁5は、弁口17を有する弁本体10と、ローター41およびステーター60を有するステッピングモーター66と、ローター41が回転すると弁口17に対して移動する弁体30と、を有する。
【0142】
電動弁制御装置70は、ステーター60にローター41を回転させるための駆動電流を供給する(回転制御部81)。電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧Vを取得する(取得部82)。電動弁制御装置70は、取得した電圧Vに基づいて、ローター41の回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する(判定部83)。
【0143】
電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが適正であると判定したとき、駆動電流の大きさを維持する。電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して駆動電流の大きさが大きいと判定したとき、駆動電流の大きさを小さくする。電動弁制御装置70は、ローターの回転負荷に対して駆動電流の大きさが小さいと判定したとき、駆動電流の大きさを大きくする。
【0144】
このようにしたことから、電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷に対して適正な大きさの駆動電流をステーター60に供給することができ、電動弁5の消費電力を低減できる。
【0145】
また、電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧Vに基づいて、ローター41の回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する。これにより、電動弁制御装置70において、ローター41の回転負荷を検出するため部品が不要であり、電動弁制御装置70または電動弁5を簡易な構成にできる。
【0146】
また、電動弁制御装置70は、電圧Vの波形と電圧Vの基準波形との相違の度合いに基づいて、ローター41の回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する。このようにすることで、電動弁制御装置70は、波形の面積または波形の最大振幅に基づいて前記関係を判定する構成に比べて、前記関係をより高い精度で判定できる。
【0147】
また、電動弁制御装置70は、電圧Vの波形と電圧Vの基準波形との相違の度合いを示す相違度指標値svを算出し、相違度指標値svと判定値Hとの比較結果に基づいてローター41の回転負荷と駆動電流の大きさとの関係を判定する。このようにすることで、電動弁制御装置70は、前記関係をより高い精度で判定できる。
【0148】
また、電圧Vの基準波形が、時刻tと当該時刻tにおける基準電圧rvとが関連付けられたデータテーブルである。電動弁制御装置70は、電圧V(電圧v)を時系列的に取得する。電動弁制御装置70は、取得時刻tvにおいて取得した電圧vとデータテーブルにおける取得時刻tvに対応する時刻tと関連付けられた基準電圧rvとの差分値dvを2乗した値である中間値dv2を算出する。電動弁制御装置70は、電圧vを用いて算出された複数の中間値dv2を足し合わせて相違度指標値svを算出する。このようにすることで、相違度指標値svは、波形の面積および波形の最大振幅とは異なり、波形の形状の相違の度合いが適切に反映されている。そのため、電動弁制御装置70は、ローター41の回転負荷と駆動電流の大きさとの関係をより高い精度で判定できる。
【0149】
電圧と電流とは密接な関係を有する。そのため、電動弁制御装置70は、ローター41の回転によってステーター60に生じる電圧に代えて、ローター41の回転によってステーター60に生じる電流を用いて、ローター41の回転負荷とステーター60に供給される駆動電流の大きさとの関係を判定してもよい。電流の波形を用いた構成においても、電圧の波形を用いた構成と同じ作用効果を奏する。
【0150】
本明細書において、「円筒」や「円柱」等の形状を示す各用語は、実質的にその用語の形状を有する部材や部材の部分にも用いられている。例えば、「円筒形状の部材」は、円筒形状の部材と実質的に円筒形状の部材とを含む。また、本明細書において、「同じ」との用語は、厳密に同じ場合と、実質的に同じ場合を含むことがある。
【0151】
上記に本発明の実施例を説明したが、本発明は実施例に限定されるものではない。前述の実施例に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、設計変更を行ったものや、実施例の特徴を適宜組み合わせたものも、本発明の趣旨に反しない限り、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0152】
1…電動弁装置、5…電動弁、10…弁本体、11…本体部材、11a…嵌合穴、11b…貫通孔、11d…平面、13…接続部材、14…弁室、15…第1導管、16…第2導管、17…弁口、18…弁座、20…キャン、30…弁体、31…第1軸部、32…第2軸部、33…弁部、34…段部、40…駆動機構、41…ローター、41a…嵌合孔、42…弁軸ホルダー、42a…上壁部、42b…軸孔、42c…雌ねじ、42s…可動ストッパ、43…ガイドブッシュ、43a…基部、43b…支持部、43c…雄ねじ、43d…平面、44…ストッパ部材、44a…ストッパ本体、44c…雌ねじ、44s…固定ストッパ、45…固定具、45a…固定部、45b…フランジ部、46…ワッシャー、47…閉弁ばね、48…復帰ばね、49…ストッパ機構、60…ステーター、61…A相ステーター、61a…極歯、61b…極歯、61c…A相コイル、62…B相ステーター、62a…極歯、62b…極歯、62c…B相コイル、66…ステッピングモーター、70…電動弁制御装置、71…基板、75…不揮発性メモリ、76…通信装置、77…モータードライバ、77A…Hブリッジ回路、77B…Hブリッジ回路、77C…電流制御部、80…コンピュータ、81…回転制御部、82…取得部、83…判定部、100…エアコンシステム、101…圧縮機、102…凝縮器、103…蒸発器、105…配管、110…エアコン制御装置、120…有線通信バス、A1…端子、A2…端子、B1…端子、B2…端子、L…軸線