(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137332
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】生体音検出装置
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20240927BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
A61B7/04 H
A61B5/02 350
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048816
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】情家 智也
(72)【発明者】
【氏名】安野 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】種村 友貴
【テーマコード(参考)】
4C017
【Fターム(参考)】
4C017AA04
4C017AC04
4C017FF05
(57)【要約】
【課題】検出精度が低下することを抑制できる生体音検出装置を提供する。
【解決手段】生体音に応じた検出信号を出力するセンサ素子11と、センサ素子11を収容する筐体12と、を有するセンサ部10と、内部にセンサ部10が配置され、人体が接触するシート部20と、を備え、センサ部10およびシート部20は、生体音の周波数を含む所定範囲の検出周波数帯域に対し、共振周波数が検出周波数帯域と異なる周波数とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体の生体音を検出する生体音検出装置であって、
前記生体音に応じた検出信号を出力するセンサ素子(11)と、前記センサ素子を収容する筐体(12)と、を有するセンサ部(10)と、
内部に前記センサ部が配置され、前記人体が接触するシート部(20)と、を備え、
前記センサ部および前記シート部は、前記生体音の周波数を含む所定範囲の検出周波数帯域に対し、共振周波数(f1、f2)が前記検出周波数帯域と異なる周波数とされている生体音検出装置。
【請求項2】
前記センサ部は、前記センサ部の共振周波数(f1)が前記検出周波数帯域の上限値より大きくされ、
前記シート部は、前記シート部の共振周波数(f2)が前記検出周波数帯域の下限値より小さくされている請求項1に記載の生体音検出装置。
【請求項3】
前記シート部は、
前記人体が接触する表皮(21)と、前記表皮を挟んで前記人体側と反対側に配置され、前記センサ部の少なくとも一部を覆う内包部材(23)と、を有し、
前記検出周波数帯域の下限値をfminとし、前記筐体の質量をm2とし、前記内包部材のうちの、前記センサ部を前記表皮側から投影した際に重なる部分、および前記センサ部を前記表皮側と反対側から投影した際に重なる部分の質量をm3、投影方向に沿った前記内包部材の厚さをtとすると、下記数式1を満たす構成とされている請求項2に記載の生体音検出装置。
【数1】
【請求項4】
前記生体音は、心音であり、
前記シート部は、下記数式2を満たす構成とされている請求項3に記載の生体音検出装置。
【数2】
【請求項5】
前記センサ部は、前記筐体に重量体(13)が付加されている請求項3または4に記載の生体音検出装置。
【請求項6】
前記重量体は、ステンレスまたは真鍮で構成されている請求項5に記載の生体音検出装置。
【請求項7】
前記センサ部は、前記センサ部の共振周波数(f1)が前記検出周波数帯域の上限値より大きくされ、
前記シート部は、前記シート部の共振周波数(f2)が前記検出周波数帯域の上限値より大きくされている請求項1に記載の生体音検出装置。
【請求項8】
前記シート部は、
前記人体が接触する表皮(21)と、前記表皮を挟んで前記人体側と反対側に配置され、前記センサ部の少なくとも一部を覆う内包部材(23)と、を有し、
前記検出周波数帯域の上限値をfmaxとし、前記筐体の質量をm2とし、前記内包部材のうちの、前記センサ部を前記表皮側から投影した際に重なる部分、および前記センサ部を前記表皮側と反対側から投影した際に重なる部分の質量をm3、投影方向に沿った前記内包部材の厚さをtとすると、下記数式3を満たす構成とされている請求項7に記載の生体音検出装置。
【数3】
【請求項9】
前記生体音は、心音であり、
前記シート部は、下記数式4を満たす構成とされている請求項8に記載の生体音検出装置。
【数4】
【請求項10】
前記シート部は、前記内包部材のうちの、前記センサ部を前記表皮側から投影した際に重なる部分、および前記センサ部を前記表皮側と反対側から投影した際に重なる部分に、前記センサ部を投影した際に重なる部分と異なる部分よりもヤング率が高くされた部分を有する請求項8または9に記載の生体音検出装置。
【請求項11】
前記センサ部は、前記センサ部の共振周波数が前記検出周波数帯域の下限値より小さくされ、
前記シート部は、前記シート部の共振周波数が前記検出周波数帯域の上限値より大きくされている請求項1に記載の生体音検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体の生体音を検出する生体音検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、圧電素子等を有するセンサ部を用いて人体の生体音を検出する生体音検出装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。具体的には、この生体音検出装置では、センサ部が人体に直接的または着衣等を介して間接的に備えられ、センサ部から生体音に基づいた検出信号が出力される。そして、生体音は、検出信号に基づいて把握される。なお、生体音は、人体の心音等である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、本発明者らは、人体が着座したり横たわったりするシート部の内部にセンサ部を配置し、センサ部が人体に非拘束となる状態で生体音を検出する生体音検出装置を検討している。しかしながら、本発明者らがこのような生体音検出装置について検討したところ、センサ部やシート部の構成によって検出精度が低下する場合があることが確認された。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、検出精度が低下することを抑制できる生体音検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1は、人体の生体音を検出する生体音検出装置であって、生体音に応じた検出信号を出力するセンサ素子(11)と、センサ素子を収容する筐体(12)と、を有するセンサ部(10)と、内部にセンサ部が配置され、人体が接触するシート部(20)と、を備え、センサ部およびシート部は、生体音の周波数を含む所定範囲の検出周波数帯域に対し、共振周波数(f1、f2)が検出周波数帯域と異なる周波数とされている。
【0007】
これによれば、センサ部およびシート部は、共振周波数が検出周波数帯域と異なる周波数とされている。このため、検出精度が低下することを抑制できる。
【0008】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態における心音検出装置の断面図である。
【
図2】検出周波数帯域、心音、生体ノイズの関係を説明するための図である。
【
図4】第1実施形態における検出周波数帯域と、センサ部の共振周波数およびシート部の共振周波数の関係を示す図である。
【
図5】第1実施形態におけるバネマス系を説明するための図である。
【
図6A】第1実施形態におけるセンサ部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図6B】第1実施形態におけるセンサ部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図6C】第1実施形態におけるセンサ部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図7A】第1実施形態におけるシート部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図7B】第1実施形態におけるシート部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図7C】第1実施形態におけるシート部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図7D】第1実施形態におけるシート部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図7E】第1実施形態におけるシート部の質量を大きくする構成を示す断面図である。
【
図8】シート部の共振周波数の回帰式を説明するための図である。
【
図9】シート部の厚さを厚くする構成を示す断面図である。
【
図10】第2実施形態における検出周波数帯域と、センサ部の共振周波数およびシート部の共振周波数の関係を示す図である。
【
図11】シート部の厚さを薄くする構成を示す断面図である。
【
図12】第3実施形態における検出周波数帯域と、センサ部の共振周波数およびシート部の共振周波数の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付して説明を行う。
【0011】
(第1実施形態)
第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、生体音としての心音を検出する心音検出装置について説明する。本実施形態の心音検出装置は、
図1に示されるように、センサ部10およびシート部20等を備えて構成されており、例えば、ベッド、椅子、車両の運転席や助手席等に適用されると好適である。
【0012】
センサ部10は、センサ素子11および筐体12を備えている。
【0013】
センサ素子11は、本実施形態では、薄膜状の圧電素子を含んで構成されており、心音が印加されると、心音に応じた検出信号を出力する。なお、センサ素子11は、後述するように筐体12の収納部12aに収納され、筐体12を介して心音が印加される。
【0014】
筐体12は、アクリル樹脂や金属等で構成された収納部12aを有する箱状とされ、収納部12aにセンサ素子11が収容されている。なお、筐体12は、特に図示しないが、壁面の所定箇所にセンサ素子11と電気的に接続されるコネクタ部が形成されている。そして、センサ素子11は、コネクタ部に外部の配線部が接続されることで外部の配線部と電気的に接続される。
【0015】
シート部20は、人体が接触する表皮21、表皮21と反対側の支持部22、表皮21と支持部22との間に配置される内包部材23等を有する構成とされている。例えば、表皮21は、布、合皮、本革等で構成され、内包部材23は、ウレタン等のクッション材で構成され、支持部22は、内包部材23よりも硬い木製の板、アクリル板、鉄板等で構成される。なお、本実施形態の内包部材23は、表皮21および支持部22よりも十分に厚さが厚くされている。
【0016】
そして、センサ部10は、表皮21と支持部22との間に配置されている。本実施形態では、センサ部10(すなわち、筐体12)は、一面10a、他面10b、側面10cを有する箱状とされ、一面10aが表皮21と当接しつつ、他面10bおよび側面10cが内包部材23で覆われるように配置されている。なお、本実施形態のセンサ素子11は、筐体12における収納部12aのうちの一面10a側に備えられている。
【0017】
以上が本実施形態における心音検出装置の基本的な構成である。
【0018】
ここで、上記のような心音検出装置で心音を検出する場合、
図2に示されるように、検出範囲としている周波数帯域(以下では、検出周波数帯域ともいう)内には、脈動や呼吸音等の生体ノイズが含まれる。また、本発明者らの検討によれば、本実施形態のようにシート部20内にセンサ部10を配置する心音検出装置では、
図3に示されるように、検出周波数帯域内に、センサ部10の共振周波数f1およびシート部20の共振周波数f2が含まれる可能性があることが確認された。そして、本発明者らの検討によれば、検出周波数帯域内にセンサ部10の共振周波数f1またはシート部20の共振周波数f2が含まれる場合には、これらの共振周波数によって生体ノイズが増幅されることが確認された。この場合、検出信号とノイズの比であるSN比が小さくなり、検出精度が低下する。
【0019】
このため、本実施形態では、
図4に示されるように、センサ部10の共振周波数f1およびシート部20の共振周波数f2が検出周波数帯域と異なる周波数となるように、センサ部10およびシート部20が構成されている。
【0020】
なお、人体の心音は、個人差が存在するが、一般的に30~35Hzであると報告されている。このため、検出周波数帯域は、30~35Hzを含む範囲とされている。また、本実施形態では、検出周波数帯域の上限値fmaxおよび下限値fminが次のように設定されている。すなわち、人体は、一般的に15~25Hz程度に大きな振幅を有する心弾道が発生することが報告されている。このため、検出周波数帯域の下限値fminは、心弾道の影響によるノイズを低減できるように、25Hzとされている。また、センサ素子11等には、50Hzまたは60Hzの電源電圧が供給されることが想定される。このため、検出周波数帯域の上限値fmaxは、電源電圧によるノイズの影響を低減できるように、50Hzとされている。すなわち、本実施形態の検出周波数帯域は、25Hz以上であって50Hz以下の範囲とされている。そして、本実施形態では、センサ部10の共振周波数f1が検出周波数帯域における上限値fmaxの50Hzより大きく、シート部20の共振周波数f2が検出周波数帯域における下限値fminの25Hzより小さくされている。
【0021】
次に、センサ部10の共振周波数f1およびシート部20の共振周波数f2について説明する。まず、一般的な共振周波数fは、対象となる質量をm、バネ定数をkとすると、下記数式1で示される。
【0022】
【数1】
そして、本実施形態のような心音検出装置では、検出信号を出力するセンサ部10を基準とすると、バネマス系が
図5のように模式化される。なお、
図5では、センサ素子11の質量をm1、筐体12の質量をm2、シート部20の質量をm3としている。また、センサ素子11のバネ定数をk1、筐体12のバネ定数をk2、シート部20のバネ定数をk3としている。
【0023】
なお、ここでのシート部20とは、センサ部10の上方または下方に位置する部分のことである。言い換えると、ここでのシート部20とは、センサ部10の側面10cを通り、支持部22の面方向に対する法線方向に沿って延びる仮想線Aにて囲まれる部分のことである。さらに言い換えると、ここでのシート部20とは、シート部20のうちの、センサ部10を挟んで表皮21側から支持部22側に向かってセンサ部10を投影した際に重なる部分、およびセンサ部10を挟んで支持部22側から表皮21側に向かってセンサ部10を投影した際に重なる部分のことである。そして、シート部20は、上記のように表皮21や支持部22を有しているが、表皮21や支持部22は内包部材23に対して十分に薄くされている。このため、シート部20の質量m3やバネ定数k3は、内包部材23の影響が支配的となり、表皮21や支持部22の影響は無視することができる。したがって、本実施形態におけるシート部20の質量m3およびバネ定数k3は、内包部材23における質量m3およびバネ定数k3である。
【0024】
まず、本実施形態のセンサ素子11は、薄膜状の圧電素子で構成され、例えば、質量m1が1~100μgとされる。また、筐体12は、アクリル樹脂や金属で構成され、例えば、質量m2が74gとされる。シート部20における内包部材23は、ウレタン等で構成され、例えば、質量m3が100gとされる。つまり、センサ素子11は、筐体12やシート部20と比較して質量が十分に小さくされている。このため、m1<<m2、m1<<m3となる。言い換えると、センサ素子11、筐体12、シート部20(すなわち、内包部材23)は、m1<<m2、m1<<m3を満たすように材料が選択されている。
【0025】
また、センサ素子11は構成する圧電膜は、ヤング率が100GPa程度とされ、筐体12を構成するアクリル樹脂や金属は、ヤング率が1~100Gpa程度とされる。これに対し、内包部材23を構成するウレタンは、一般的にヤング率が10~1Mpa程度とされる。つまり、内包部材23は、センサ素子11および筐体12に対してバネ定数が十分に小さくされている。このため、k1>>k3、k2>>k3となる。言い換えると、センサ素子11、筐体12、シート部20(すなわち、内包部材23)は、k1>>k3、k2>>k3を満たすように材料が選択されている。
【0026】
したがって、
図5のバネマス系に基づくと、センサ部10の共振周波数f1は、下記数式2で示される。また、シート部20の共振周波数f2は、下記数式3で示される。
【0027】
【0028】
【数3】
そして、本実施形態では、上記のように、センサ部10の共振周波数f1が検出周波数帯域における上限値fmaxの50Hzより大きく、シート部20の共振周波数f2が検出周波数帯域における下限値fminの25Hzより小さくされている。
【0029】
まず、センサ部10の共振周波数f1を検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくするための構成について説明する。センサ部10の共振周波数f1は、上記のように数式2で示される。このため、共振周波数f1を大きくするためには、質量m1を小さくするか、またはバネ定数k1を大きくすればよい。
【0030】
例えば、質量m1を小さくする場合には、センサ素子11が圧電素子であるため、圧電素子を薄膜化して質量m1を小さくするか、または圧電素子の材料として軽い材料を選択して質量m1を小さくすればよい。また、バネ定数k1を大きくする場合には、圧電素子の材料として硬い材料を選択してバネ定数k1を大きくすればよい。なお、圧電素子の材料を選択してバネ定数k1を大きくする場合には、例えば、圧電素子より硬い金属板で圧電素子を挟み込むようにすることでバネ定数k1が大きくなるようにしてもよい。
【0031】
そして、本実施形態では、上記のように検出周波数帯域における上限値fmaxが50Hzとされる。このため、センサ部10は、共振周波数f1が下記数式4を満たすように形成される。
【0032】
【数4】
次に、シート部20の共振周波数f2を検出周波数帯域の下限値fminより小さくするための構成について説明する。シート部20の共振周波数f2は、上記のように数式3で示される。このため、共振周波数f2を小さくするためには、質量m2あるいはm3を大きくするか、またはバネ定数k3を小さくすればよい。
【0033】
例えば、質量m2を大きくする場合には、筐体12の材料を変更して質量m2が大きくなるようにすればよい。また、質量m2を大きくする場合には、
図6Aに示されるように、筐体12に別の重量体13を備えるようにしてもよい。この場合、
図6Bに示されるように、重量体13は、複数に分割されていてもよいし、
図6Cに示されるように、重量体13は、筐体12の側面10cに配置されていてもよい。なお、重量体13は、例えば、ステンレスや真鍮等が採用される。また、重量体13を筐体12に配置する場合には、重量体13を含む部分がセンサ部10とされる。
【0034】
質量m3を大きくする場合には、例えば、センサ部10の下方に位置する内包部材23の密度を大きくすることで質量m3が大きくなるようにすればよい。例えば、
図7Aに示されるように、内包部材23において、センサ部10と支持部22との間に位置する部分を第1部材23a、第1部材23aと異なる部分を第2部材23bとすると、第1部材23aの密度が第2部材23bの密度より大きくなるようにすればよい。なお、センサ部10と支持部22との間に位置する内包部材23とは、内包部材23のうちの、センサ部10を表皮21側から投影した際に重なる部分ともいえる。
【0035】
この場合、
図7Bに示されるように、センサ部10の側面10cも第1部材23aで覆われるようにしてもよい。さらに、
図7Cに示されるように、第1部材23aを支持部22側のみに配置し、第1部材23aとセンサ部10との間に第2部材23bが配置されるようにしてもよい。この場合、
図7Dに示されるように、第1部材23aが分割して備えられていてもよい。さらに、
図7Eに示されるように、第1部材23aが層状に積層されるようにしてもよい。
【0036】
バネ定数k3を小さくする場合には、内包部材23の材料として柔らかい材料を選択してバネ定数k1を小さくすればよい。また、バネ定数k3は、内包部材23の厚さをt、ヤング率をEとすると、E/(t)1/2に比例する。このため、シート部20の共振周波数f2は、下記数式5でも示される。なお、内包部材23の厚さとは、本実施形態では、センサ部10と支持部22との間の長さのことであり、表皮21側からセンサ部10を投影する際の投影方向に沿った長さのことである。
【0037】
【数5】
そして、本発明者らが数式5について有限要素法で実際に計算したところ、
図8に示される結果が得られ、
図8より下記数式6が得られた。なお、
図8の回帰分析における寄与率R
2は1.0となった。
【0038】
【数6】
図8に示されるように、シート部20の共振周波数f2は、理論通りに一次式となることが確認される。但し、有限要素法で計算した場合には、係数に2.5が付与されることが確認された。これは、机上計算では集中定数で考えているが、実際には分布定数であるためであると推定される。
【0039】
したがって、さらに詳細には、上記数式6で得られる共振周波数f2が検出周波数帯域の下限値fmin以下となるように、シート部20の構成が調整されることが好ましい。より具体的には、本実施形態では、検出周波数帯域の下限値fminが25Hzとされている。このため、共振周波数f2が下記数式7を満たすように、シート部20の構成が調整されることが好ましい。
【0040】
【数7】
上記数式7より、共振周波数f2を小さくするためには、質量m2あるいはm3を大きくするか、ヤング率Eを小さくするか、またはシート部20(すなわち、内包部材23)の厚さtを大きくすればよいことが確認される。質量m2または質量m3を大きくする構成は、上記の通りである。
【0041】
ヤング率Eを小さくする場合には、例えば、上記の
図7A~
図7Eの構成において、第1部材23aのヤング率が第2部材23bのヤング率より小さくなるようにすればよい。
【0042】
また、厚さtを厚くする場合には、
図9に示されるように、筐体12の収納部12aを小さくすることで厚さtが厚くするようにすればよい。
【0043】
以上説明した本実施形態によれば、センサ部10およびシート部20は、共振周波数f1、f2が検出周波数帯域と異なる周波数となるように、構成が調整されている。このため、検出周波数帯域における生体ノイズが増幅されることを抑制でき、検出精度が低下することを抑制できる。
【0044】
(1)本実施形態では、センサ部10は、共振周波数f1が検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされており、シート部20は、シート部20の共振周波数f2が検出周波数帯域の下限値fminより小さくされている。このため、共振周波数f1、f2が検出周波数帯域と異なる周波数となり、検出精度が低下することを抑制できる。
【0045】
(2)本実施形態では、シート部20は、上記の数式6で示される共振周波数f2が検出周波数帯域の下限値fminより小さくされている。このため、共振周波数f2が検出周波数帯域と異なる周波数となり、検出精度が低下することを抑制できる。
【0046】
(3)本実施形態では、シート部20は、上記の数式7を満たすように構成されている。このため、心弾道の影響によるノイズを低減でき、検出精度が低下することを抑制できる。
【0047】
(4)本実施形態では、シート部20のヤング率を小さくして共振周波数f2を小さくする場合には、センサ部10の構成を変更しなくてもよい。また、シート部20の厚さtを厚くして共振周波数f2を小さくする場合には、センサ素子11の構成を変更しなくてもよい。さらに、内包部材23の構成を変更することで質量m3を大きくする場合には、センサ部10の構成を変更しなくてもよい。このため、センサ部10として従来と同様のものを用いることができる。
【0048】
(5)本実施形態では、センサ部10の質量m2を大きくして共振周波数f2を小さくする場合には、シート部20の構成を変更しなくてもよい。このため、シート部20として従来と同様のものを用いることができる。
【0049】
(6)本実施形態では、センサ部10の質量m2を大きくする場合には、重量体13を付加することにより、容易に質量m2を大きくできる。この場合、重量体13としてステンレスや真鍮等を用いることにより、特別な材料を用いる必要もなく、構造が複雑になることを抑制できる。
【0050】
(第2実施形態)
第2実施形態について説明する。本実施形態は、第1実施形態に対し、シート部20の共振周波数f2を変更したものである。その他に関しては、第1実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0051】
本実施形態では、
図10に示されるように、シート部20の共振周波数f2も検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされている。つまり、シート部20は、上記の数式6で示される共振周波数f2が検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされている。本実施形態では、検出周波数帯域の上限値fmaxが50Hzであるため、シート部20は、下記数式8を満たすように形成されている。
【0052】
【数8】
そして、上記数式8より、共振周波数f2を大きくするためには、質量m2またはm3を小さくするか、ヤング率Eを大きくするか、または厚さtを薄くすればよい。
【0053】
質量m2を小さくする場合には、筐体12の材料を変更して質量m2が小さくなるようにすればよい。また、センサ部10を小型化してセンサ部10を軽量化すればよい。
【0054】
質量m3を小さくする場合には、上記の
図7A~
図7Dの構成において、第1部材23aの密度が第2部材23bの密度より小さくなるようにすればよい。
【0055】
ヤング率Eを大きくする場合には、上記の
図7A~
図7Dの構成において、第1部材23aのヤング率が第2部材23bのヤング率より大きくなるようにすればよい。
【0056】
また、
図11に示されるように、厚さtを薄くする場合には、筐体12の収納部12aを大きくすることで厚さtが薄くなるようにすればよい。
【0057】
以上説明した本実施形態によれば、センサ部10およびシート部20は、共振周波数f1、f2が検出周波数帯域と異なる周波数となるように構成が調整されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0058】
(1)本実施形態では、センサ部10およびシート部20は、共振周波数f1、f2が検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされている。このように、共振周波数f1、f2を共に検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくするようにしてもよい。
【0059】
(2)本実施形態では、シート部20は、上記の数式6で示される共振周波数f2が検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされている。このため、共振周波数f2が検出周波数帯域と異なる周波数となり、検出精度が低下することを抑制できる。
【0060】
(3)本実施形態では、シート部20は、上記の数式8を満たすように構成されている。このため、電源電圧の影響によるノイズを低減でき、検出精度が低下することを抑制できる。
【0061】
(4)本実施形態では、シート部20のヤング率を大きくして共振周波数f2を大きくする場合には、センサ部10の構成を変更しなくてもよい。また、シート部20の厚さtを薄くして共振周波数f2を大きくする場合には、センサ素子11の構成を変更しなくてもよい。さらに、シート部20の構成を変更することで質量m3を小さくする場合には、センサ部10の構成を変更しなくてもよい。このため、センサ部10として従来と同様のものを用いることができる。
【0062】
(5)本実施形態では、センサ部10の質量m2を小さくして共振周波数f2を大きくする場合には、シート部20の構成を変更しなくてもよい。このため、シート部20として従来と同様のものを用いることができる。
【0063】
(第3実施形態)
第3実施形態について説明する。本実施形態は、第2実施形態に対し、センサ部10の共振周波数f1を変更したものである。その他に関しては、第2実施形態と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0064】
本実施形態では、
図12に示されるように、センサ部10の共振周波数f1が検出周波数帯域の下限値fminより小さくされ、シート部20の共振周波数f2が検出周波数帯域の上限値fmaxより大きくされている。
【0065】
センサ部10の共振周波数f1は、上記の数式2で示される。このため、センサ部10の共振周波数f1を小さくするためには、バネ定数k1を小さくするか、または質量m1を大きくすればよい。例えば、質量m1を大きくする場合には、圧電素子を構成する材料を変更して質量m1を大きくすればよい。また、バネ定数k1を小さくする場合には、センサ素子11のヤング率を小さくすればよいため、圧電素子を構成する材料を変更してバネ定数k1を小さくすればよい。
【0066】
以上説明した本実施形態によれば、センサ部10およびシート部20は、共振周波数f1、f2が検出周波数帯域と異なる周波数となるように、構成が調整されている。このため、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
(1)本実施形態のように、センサ部10の共振周波数f1が検出周波数帯域の下限値fminより小さくなるようにしてもよい。
【0068】
(他の実施形態)
本開示は、実施形態に準拠して記述されたが、本開示は当該実施形態や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【0069】
上記各実施形態では、センサ素子11としての圧電素子を例に挙げて説明した。しかしながら、センサ素子11は、加速度センサやMEMSマイク等で構成されていてもよい。なお、MEMSは、Micro Electro Mechanical Systemsの略である。
【0070】
また、上記各実施形態では、センサ部10の一面10aが表皮21と当接するように配置されている例について説明した。しかしながら、センサ部10は、一面10aと表皮21との間に内包部材23が存在するように配置されていてもよい。この場合、シート部20(すなわち、内包部材23)の質量m3等は、センサ部10と表皮21との間に位置する部分、およびセンサ部10と支持部22との間に位置する部分となる。
【0071】
さらに、上記各実施形態では、箱状の筐体12内にセンサ素子11が配置される例について説明した。しかしながら、センサ素子11の構成によっては、筐体12の一部がセンサ素子11で構成されていてもよい。例えば、センサ部10の一面10aは、センサ素子11で構成されるようにしてもよい。
【0072】
また、上記各実施形態では、生体音検出装置としての心音検出装置を例に挙げて説明した。しかしながら、生体音検出装置は、例えば、生体音としての肺音を検出する肺音検出装置であってもよいし、生体音としての心弾道を検出する検出装置であってもよい。この場合、検出周波数帯域は、検出したい生体音の周波数を含むように適宜設定される。
【符号の説明】
【0073】
10 センサ素子
11 センサ部
20 シート部
f1 共振周波数
f2 共振周波数