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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137333
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】美術品鑑賞システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/0487 20130101AFI20240927BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20240927BHJP
   G06F 3/0346 20130101ALI20240927BHJP
   G06F 3/0338 20130101ALI20240927BHJP
【FI】
G06F3/0487
G06F3/01 510
G06F3/0346 425
G06F3/0338 412
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048817
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】中里 香名子
(72)【発明者】
【氏名】宮▲崎▼ 遥
(72)【発明者】
【氏名】石川 克則
【テーマコード(参考)】
5B087
5E555
【Fターム(参考)】
5B087AA07
5B087BC02
5B087BC16
5B087DE05
5E555AA11
5E555AA27
5E555BA02
5E555BA83
5E555BB02
5E555BC08
5E555BE17
5E555CA06
5E555CA17
5E555CA21
5E555CB21
5E555DB53
5E555DC02
5E555DC24
5E555DC43
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】ユーザがジョイスティックで行う操作の種類を低減可能な美術品鑑賞システムを提供すること。
【解決手段】本体装置4は、コントローラから送信された検出データに基づき、仮想空間内において、仮想刀剣モデルを動かす動作制御部27と、コントローラから送信された操作データ及び検出データに基づき、仮想空間内において、仮想カメラを移動させるカメラ位置制御部28と、を備える構成とした。そして、カメラ位置制御部28は、コントローラが有するジョイスティックの傾倒方向と、コントローラの筐体の傾倒量とに基づき、仮想空間内での仮想カメラの移動方向を決定するようにした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラと、
前記コントローラと通信可能な情報処理装置と、を備え、
前記コントローラは、
筐体と、
前記筐体の傾きを検出する傾き検出部と、
傾倒可能な軸部を有するジョイスティックと、
前記ジョイスティックへの操作に応じた操作データ、及び前記傾き検出部から出力される検出データを送信する送信部と、を備え、
前記情報処理装置は、
仮想美術品モデル及び仮想カメラが配置された仮想空間において、前記仮想カメラで前記仮想美術品モデルを撮影した場合に得られる仮想画像を生成する画像生成部と、
前記画像生成部で生成した前記仮想画像をディスプレイに表示させる表示部と、
前記コントローラから送信された前記検出データに基づき、前記仮想空間内において、前記仮想美術品モデルを動かす動作制御部と、
前記コントローラから送信された前記操作データ及び前記検出データに基づき、前記仮想空間内において、前記仮想カメラを移動させるカメラ位置制御部と、を備え、
前記カメラ位置制御部は、前記ジョイスティックの傾倒方向と、前記筐体の傾倒量とに基づき、前記仮想空間内における前記仮想カメラの移動方向を決定する
美術品鑑賞システム。
【請求項2】
前記仮想美術品モデルは、仮想刀剣モデルであり、
前記筐体の外形は、刀剣の柄状であり、
前記筐体の柄頭側の方向を下方向と定義し、前記柄頭と反対側の方向を上方向と定義したとき、前記ジョイスティックは、上方向と下方向との2方向に傾倒可能である
請求項1に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項3】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想刀剣モデル上に一方の端部が位置し且つ前記仮想刀剣モデルから離れた所定位置に他方の端部が位置する第1カメラパスに沿って、前記仮想カメラを移動させるとともに、
前記仮想カメラが前記第1カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が予め定めた第1閾値以上であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が上方向である場合には、前記第1カメラパスの前記一方の端部を、前記仮想刀剣モデルの長手方向に沿って前記仮想刀剣モデルの切先側又は茎側に移動させるとともに、前記仮想カメラを、前記第1カメラパスを通って前記仮想刀剣モデルに近づく方向に移動させる
請求項2に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項4】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第1カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値以上であって、該第1閾値よりも大きい第2閾値未満であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が上方向である場合には、前記第1カメラパスの前記一方の端部を、前記仮想刀剣モデルの切先方向に移動させるとともに、前記仮想カメラを、前記第1カメラパスを通って前記仮想刀剣モデルに近づく方向に移動させる
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項5】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第1カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値よりも大きい第2閾値以上であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が上方向である場合には、前記第1カメラパスの前記一方の端部を、前記仮想刀剣モデルの茎方向に移動させるとともに、前記仮想カメラを、前記第1カメラパスを通って前記仮想刀剣モデルに近づく方向に移動させる
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項6】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第1カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値未満であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が上方向である場合には、前記第1カメラパスの前記一方の端部の位置を維持するとともに、前記仮想カメラを、前記第1カメラパスを通って前記仮想刀剣モデルに近づく方向に移動させる
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項7】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第1カメラパス上に位置している場合、前記ジョイスティックの傾倒方向が下方向である場合には、前記第1カメラパスの前記一方の端部を、前記仮想刀剣モデルの長手方向に沿って前記仮想刀剣モデルの長手方向の中心方向に移動させるとともに、前記仮想カメラを、前記第1カメラパスを通って前記仮想刀剣モデルから遠ざかる方向に移動させる
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項8】
前記第1カメラパスの前記一方の端部の移動は、前記仮想刀剣モデルの長手方向に沿って延びている第2カメラパス上で行われ、
前記カメラ位置制御部は、前記仮想カメラの位置が前記第1カメラパスの前記一方の端部に位置しているときに、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値以上とされ、且つ、前記ジョイスティックが上方向又は下方向に傾倒された場合に、前記第1カメラパスに沿った移動に代えて、前記仮想カメラを前記第2カメラパスに沿って前記仮想刀剣モデルの切先方向又は茎方向へ移動させる
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項9】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第2カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値以上であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が上方向である場合には、前記仮想カメラを前記第2カメラパスに沿って前記仮想刀剣モデルの切先方向に移動させる
請求項8に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項10】
前記カメラ位置制御部は、
前記仮想カメラが前記第2カメラパス上に位置している場合、鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量が前記第1閾値以上であり、且つ、前記ジョイスティックの傾倒方向が下方向である場合には、前記仮想カメラを前記第2カメラパスに沿って前記仮想刀剣モデルの茎方向に移動させる
請求項8に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項11】
前記カメラ位置制御部は、前記ジョイスティックの傾倒量に基づき、前記第1カメラパスの前記一方の端部の移動速度を設定する
請求項3に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項12】
前記カメラ位置制御部は、前記ジョイスティックの傾倒量に基づき、前記仮想カメラの移動速度を設定する
請求項1に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項13】
前記仮想カメラは、前記仮想空間内において一定方向に向けられており、
前記動作制御部は、少なくとも、現実の鉛直方向に対する前記筐体の長手方向の傾倒量と、前記仮想空間内における前記一定方向と直交する方向である仮想空間内鉛直方向に対する前記仮想刀剣モデルの傾倒量とが同一となるように、前記仮想刀剣モデルを動かす
請求項2に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項14】
前記仮想空間内に設定した複数の領域それぞれに対応付けて、前記仮想美術品モデルに設定した説明箇所に関する説明情報を記憶している説明情報記憶部と、
前記仮想カメラが前記領域内に位置する場合に、前記説明情報記憶部が記憶している該領域に対応付けられている前記説明情報を前記ディスプレイに表示させる説明情報表示部と、を備える
請求項1に記載の美術品鑑賞システム。
【請求項15】
前記説明情報表示部は、前記仮想カメラが前記領域内に入った場合に、該領域に対応付けられている前記説明情報を前記説明情報記憶部から読み出し、読み出した前記説明情報の前記ディスプレイへの表示を開始し、前記仮想カメラが該領域内から該領域外へ出た場合に、前記説明情報の前記ディスプレイへの表示を終了する
請求項14に記載の美術品鑑賞システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美術品鑑賞システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、実在の刀剣の3次元CGを大型のタッチパネルディスプレイに表示させ、ユーザに鑑賞させる美術品鑑賞システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。非特許文献1に記載の美術品鑑賞システムでは、鑑賞者がタッチパネルディスプレイにタッチ操作を行うことで、表示されている3次元CGの回転・拡大・縮小等が可能となっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】https://www.city.setouchi.lg.jp/site/token/109319.html
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような美術品鑑賞システムでは、没入感のさらなる向上が求められている。
本発明は、ユーザの美術品鑑賞への没入感をさらに高めることができる美術品鑑賞システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、(a)コントローラと、(b)コントローラと通信可能な情報処理装置と、を備え、(c)コントローラは、筐体と、(d)筐体の傾きを検出する傾き検出部と、(e)傾倒可能な軸部を有するジョイスティックと、(f)ジョイスティックへの操作に応じた操作データ、及び傾き検出部から出力される検出データを送信する送信部と、を備え、(g)情報処理装置は、仮想美術品モデル及び仮想カメラが配置された仮想空間において、仮想カメラで仮想美術品モデルを撮影した場合に得られる仮想画像を生成する画像生成部と、(h)画像生成部で生成した仮想画像をディスプレイに表示させる表示部と、(i)コントローラから送信された検出データに基づき、仮想空間内において、仮想美術品モデルを動かす動作制御部と、(j)コントローラから送信された操作データ及び検出データに基づき、仮想空間内において、仮想カメラを移動させるカメラ位置制御部と、を備え、(k)カメラ位置制御部は、ジョイスティックの傾倒方向と、筐体の傾倒量とに基づき、仮想空間内における仮想カメラの移動方向を決定することを要旨とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、ユーザの美術品鑑賞への没入感をさらに高めることができる美術品鑑賞システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係る美術品鑑賞システムの一構成例を示す図である。
図2】コントローラの外観を示す図である。
図3】コントローラの筐体を示す図である。
図4】本体装置の内部構成を示す図である。
図5】仮想空間、仮想カメラ、及び仮想光源を示す図である。
図6】コントローラが立てられた状態において、筐体の姿勢と仮想刀剣モデルの姿勢との関係を示す図であり、(a)は現実の3次元空間における筐体の姿勢を示す図であり、(b)は仮想空間における刀剣モデルの姿勢を示す図である。
図7】コントローラが傾けられた状態において、筐体の姿勢と仮想刀剣モデルの姿勢との関係を示す図であり、(a)は現実の3次元空間における筐体の姿勢を示す図であり、(b)は仮想空間における刀剣モデルの姿勢を示す図である。
図8】カメラ位置移動処理のフローチャートを示す図である。
図9】説明テロップの表示態様を示す図である。
図10】仮想カメラの移動状態を示す図である。
図11】仮想カメラの移動状態を示す図である。
図12】仮想カメラの移動状態を示す図である。
図13】仮想カメラの移動状態を示す図である。
図14】仮想カメラの移動状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の発明者らは、非特許文献1に記載の美術品鑑賞システムでは、3次元CG(刀剣)の操作にタッチパネルを用いるため、操作が直感的でなく、ユーザの刀剣鑑賞(美術品鑑賞)への没入感が低下する可能性があることを発見した。そのため、発明者らは、没入感を向上させるため、刀剣を模した形状の筐体と、傾き検出部と、ジョイスティックとを有するコントローラを形成し、コントローラの傾き操作で3次元CGの傾きを変えるとともに、ジョイスティックの傾き操作で仮想カメラを移動させることを考えた。しかし、ジョイスティックの入力情報はxyの2軸だが、移動したいカメラの軸はxyzの3軸で1軸足りない。それゆえ、ジョイスティックの入力情報を単にカメラ移動に当てはめるだけでは、ユーザ(鑑賞者)が行いたいカメラ移動が実現できない。足りない1軸のためジョイスティックの他に他の入力装置(例えば、ボタン)等を増やすことも可能だが、それだと覚える機能が多くてユーザ(鑑賞者)が鑑賞より操作面に意識がいってしまい、ユーザ(鑑賞者)の刀剣鑑賞への没入感が低下する可能性があった。
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
本発明の実施形態は、以下の順序で説明する。
1.第1の実施形態
1-1 美術品鑑賞システムの構成
1-2 カメラ位置移動処理
1-3 変形例
【0010】
[1.第1の実施形態]
[1-1 美術品鑑賞システムの構成]
以下、第1の実施形態に係る美術品鑑賞システムの構成を、図面を参照して説明する。図1は、美術品鑑賞システム1の一構成例を示す図である。図1に示した美術品鑑賞システム1は、博物館等において、鑑賞者に、仮想刀剣モデル(広義には「仮想美術品モデル」)、仮想カメラ及び仮想光源が配置された仮想空間の画像をディスプレイを介して視認させ、コントローラの傾き等に連動してディスプレイに表示された仮想刀剣モデルの様子を変化させることで、仮想刀剣モデルの自由な鑑賞を可能とするためのシステムである。
【0011】
美術品鑑賞システム1は、コントローラ2と、ディスプレイ3と、本体装置4(広義には「情報処理装置」)とを備えている。コントローラ2と本体装置4との間、本体装置4とディスプレイ3との間のそれぞれは、互いに通信可能(例えば、データの送受信可能)にケーブル5、6で接続されている。
図2に示すように、コントローラ2は、筐体7と、鑑賞開始ボタン8と、鑑賞終了ボタン9と、第1機能ボタン10と、第2機能ボタン11と、ジョイスティック12と、傾き検出部13と、送信部14と、おもり15とを有している。
【0012】
筐体7の外形は、鑑賞対象となる実際の刀剣の柄の部分を模した柄状となっている。筐体7は、図3に示すように、刀剣の棟(刃の反対側の背の部分)側から見た場合に、右側に位置する第1筐体部品7Rと、左側に位置する第2筐体部品7Lとから構成されている。第1筐体部品7Rには、傾き検出部13、送信部14及びおもり15を収容する凹部16、17が形成されている。凹部16、17のそれぞれは、第1筐体部品7Rの長手方向に沿った方向に延びた形状となっており、第1筐体部品7Rの長手方向に沿って配列されている。また、第2筐体部品7Lには、鑑賞開始ボタン8、鑑賞終了ボタン9、第1機能ボタン10、第2機能ボタン11、ジョイスティック12が配置される貫通孔18、19、20、21、22が形成されている。貫通孔18、19、20、21、22のそれぞれは、上記の第1筐体部品7R側の面に直交する方向に延びた形状となっており、第2筐体部品7Lの長手方向に沿って配列されている。第1筐体部品7Rと第2筐体部品7Lとの固定方法は、特に限定されない。例えば、第1筐体部品7Rに複数の円柱状の穴を形成し、第2筐体部品7Lに同数の円柱状の突起を形成し、それらの穴それぞれに突起をはめ込むような形で、第1筐体部品7Rと第2筐体部品7Lとの固定を行う構成としてもよい。
【0013】
第1筐体部品7R及び第2筐体部品7Lの形成は、例えば、以下の手順で行われる。まず、実際の刀剣の柄の3Dデータ、或いは自作で一から作った3Dデータを用意する。次に、CADソフトを用いて、用意した3Dデータを二分割し、二分割した3Dデータに凹部16、17及び貫通孔18~22を追加する加工を行って、第1筐体部品7Rの3Dデータと第2筐体部品7Lの3Dデータとを作成する。次に、作成した3Dデータを3Dプリンタで出力することで、第1筐体部品7R及び第2筐体部品7Lを形成する。
【0014】
鑑賞開始ボタン8、鑑賞終了ボタン9、第1機能ボタン10及び第2機能ボタン11は、押下可能なボタンであって、第2筐体部品7Lの貫通孔18~21に配置されている。また、ジョイスティック12は、傾倒可能な軸部を有するジョイスティックであって、第2筐体部品7Lの貫通孔22に配置されている。これにより、縁頭側(図2では上側)から柄頭側(図2では下側)に向かって、鑑賞開始ボタン8、鑑賞終了ボタン9、第1機能ボタン10、第2機能ボタン11、ジョイスティック12がこの順に配列されている。鑑賞開始ボタン8、鑑賞終了ボタン9、第1機能ボタン10、第2機能ボタン11及びジョイスティック12は、自身への操作に応じたデータ(以下「操作データ」とも呼ぶ)を送信部14に順次出力する。ここで、ジョイスティック12は、筐体7の柄頭側の方向(図2の下方向)を下方向と定義し、縁頭側の方向(柄頭と反対側の方向。図2の上方向)を上方向と定義したとき、上方向と下方向との2方向に傾倒可能となっている。そして、ジョイスティック12は、鑑賞者の操作によるジョイスティック12の傾倒方向及び傾倒量θ1を検出し、検出した傾倒方向及び傾倒量θ1のデータを操作データとして送信部14に出力する。
【0015】
傾き検出部13は、第1筐体部品7Rの凹部16又は17に配置され、傾きセンサ13aと、演算部13bとを有している。傾きセンサ13aは、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ及び3軸地磁気センサの何れか又はこれらの組み合わせで構成されたセンサであって、筐体7の傾きに応じた検出値を出力する。また、演算部13bは、プロセッサやメモリ等を有するワンボードマイコン等であって、傾きセンサ13aからの出力値を基に筐体7の傾きを算出し、算出結果のデータ(以下、「検出データ」とも呼ぶ)を送信部14に出力する。即ち、傾き検出部13は、傾きセンサ13a及び演算部13bのこのような連携により、筐体7の傾きを検出する。筐体7の傾きの検出では、例えば、筐体7の縁頭側を上方に向け柄頭側を下方に向けて筐体7の長手方向を鉛直方向と一致させるとともに、右筐体7Rをディスプレイ3の表示面に正対させた姿勢(図1に示したコントローラ2の姿勢)を基準姿勢とした場合に、この基準姿勢に対する筐体7の傾倒方向及び傾倒量θ2を検出する。即ち、筐体7の傾倒量θ2としては、鉛直方向に対する筐体7の長手方向(筐体7の柄頭側から縁頭側に向かう方向)の傾倒量θ2を検出する。
【0016】
送信部14は、鑑賞開始ボタン8、鑑賞終了ボタン9、第1機能ボタン10、第2機能ボタン11及びジョイスティック12から操作データを取得し、傾き検出部13から検出データを取得する。送信部14は、取得した操作データ及び検出データを本体装置4へ送信する。操作データの送信は、所定時間(例えば10ms)毎に繰り返し行われる。
おもり15は、コントローラ2の重さを実際の刀剣に近づけるための金属の塊である。
ディスプレイ3は、本体装置4から出力される画像信号に従って、仮想刀剣モデル31等の画像を表示する。ディスプレイ3としては、例えば、液晶モニタが用いられる。
【0017】
本体装置4は、図4に示すように、記憶部23(広義には「説明情報記憶部」)と、制御部24とを有している。
記憶部23は、本体装置4の各構成要素を実現するためのプログラム、プログラムを実行する際に用いられる変数、及び各種の情報を記憶している。例えば、仮想空間30(図5参照)内に設定した複数の領域41それぞれに対応付けて、仮想刀剣モデル31に設定した説明箇所に関する説明情報を記憶している。説明情報としては、例えば、領域41に仮想カメラ33が位置している場合に、仮想カメラ33の撮影範囲内に存在する説明箇所の情報を採用できる。例えば、刀身彫刻、鑢目、疵等の見どころの解説文が挙げられる。記憶部23は、例えば、ハードディスクやフラッシュメモリ等の記憶装置で実現される。
【0018】
制御部24の各機能は、本体装置4が備えるハードウェアとしてのCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッシングユニットが記憶部23に記憶されたプログラム(後述するカメラ位置移動処理のプログラム等)を実行することにより実現される。制御部24の各機能としては、画像生成部25と、表示部26と、動作制御部27と、カメラ位置制御部28と、説明情報表示部29とが挙げられる。
【0019】
画像生成部25は、図5に示すように、仮想空間30内に、仮想刀剣モデル31、仮想光源32及び仮想カメラ33を配置する。仮想刀剣モデル31は、鑑賞対象となる実在の日本刀等の刀剣を模した高精度の3次元モデルである。例えば、実物の刀剣を撮像して生成した高精細な画像データを基に作成される。仮想刀剣モデル31は、図6(a)及び図6(b)に示すように、筐体7の姿勢が基準姿勢(筐体7の長手方向を鉛直方向と一致させ第1筐体部品7Rをディスプレイ3に向けた姿勢)であるときに、仮想空間30の直交座標系(X2、Y2、Z2)のY2軸方向と仮想刀剣モデル31の長手方向とが一致し、且つX22平面と仮想刀剣モデル31の身幅方向とが平行となるように配置される。また、仮想カメラ33は、鑑賞開始ボタン8の操作直後(つまり、何度も繰り返されるカメラ位置移動処理の最初の開始時)に、仮想刀剣モデル31からZ2軸方向に離れた場所(スタート地点35)に配置される。仮想カメラ33の向きは、仮想刀剣モデル31が撮像範囲内に入るように、仮想刀剣モデル31が位置する一定方向(図6(b)ではZ2軸方向)に向けられている。また、画像生成部25は、仮想空間30において、仮想カメラ33で仮想刀剣モデル31を撮像した場合に得られる仮想画像を生成する。表示部26は、画像生成部25で生成された仮想画像(仮想刀剣モデル31の画像)をディスプレイ3に表示させる。
【0020】
動作制御部27は、コントローラ2から送信された検出データに基づき、仮想空間30内において仮想刀剣モデル31を動かす。例えば、図7(a)及び図7(b)に示すように、少なくとも、現実の鉛直方向に対する筐体7の長手方向の傾倒量θ1と、Y2軸方向(広義には「仮想空間内鉛直方向」)に対する仮想刀剣モデル31の傾倒量θ3とが同一となるように、仮想刀剣モデル31を傾ける。その際、仮想空間30内における仮想刀剣モデル31の傾倒方向は、例えば、現実の筐体7の傾倒方向と、ディスプレイ3に表示される仮想刀剣モデル31の画像の傾倒方向とが同一となるように設定する。これにより、鑑賞者は、コントローラ2を傾けることで、ディスプレイ3に表示された仮想刀剣モデル31を傾けることができ、仮想刀剣モデル31をより直感的に動かすことができる。
【0021】
カメラ位置制御部28は、図8に示したカメラ位置移動処理を実行し、コントローラ2から送信された操作データ及び検出データに基づき、仮想空間30内において仮想カメラ33を移動させる。また、カメラ位置移動処理では、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒方向と、筐体7の傾倒量θ2とに基づき、仮想空間30内における仮想カメラ33の移動方向を決定する。例えば、図5に示すように、仮想カメラ33の移動を、仮想刀剣モデル31上に一方の端部(以下、「ゴール地点34」とも呼ぶ)が位置し且つ仮想刀剣モデル31からZ2軸方向に離れた所定位置に他方の端部(以下、「スタート地点35」とも呼ぶ)が位置する第1カメラパスP1、又は仮想刀剣モデル31の長手方向に沿って延びている第2カメラパスP2を通るように行う。そして、第1カメラパスP1上及び第2カメラパスP2上における、仮想カメラ33の移動方向を、ジョイスティック12の傾倒方向と、筐体7の傾倒量θ2とを基に決定する。カメラ位置移動処理の詳細については後述する。図8は、カメラ位置移動処理のフローチャートを示す図である。
【0022】
説明情報表示部29は、仮想空間30内において、仮想カメラ33が領域41(上述した、説明情報が対応付けられている領域。図5参照)内に位置する場合に、記憶部23が記憶している、その領域41に対応付けられている説明情報をディスプレイ3に表示させる。これにより、図9に示すように、仮想刀剣モデル31の特定の箇所に仮想カメラ33が近づいたときに、鑑賞者が意図的な操作をしなくても、その箇所の説明テロップ42等が自動的に表示される。図9では、説明テロップ42として、切先の見どころを説明するテロップを表示する場合を例示している。例えば、説明情報表示部29は、仮想カメラ33が領域41内に入った場合に、その領域41に対応付けられている説明情報を記憶部23から読み出し、読み出した説明情報のディスプレイ3への表示を開始する。また、仮想カメラ33がその領域41内から領域41外へ出た場合に、説明情報のディスプレイ3への表示を終了する。これにより、仮想刀剣モデル31の特定の箇所から仮想カメラ33が離れることで、鑑賞者が意図的な操作をしなくても、説明テロップ42等が自動的に非表示とされる。そのため、非表示操作や説明テロップ42に意識が割かれず、鑑賞者は仮想刀剣モデル31の鑑賞に集中でき、刀剣鑑賞への没入感が阻害されることを抑制できる。
【0023】
[1-2 カメラ位置移動処理]
次に、カメラ位置制御部28は実行するカメラ位置移動処理について説明する。
カメラ位置移動処理は、例えば、鑑賞開始ボタン8が操作されると、鑑賞終了ボタン9が操作されるまで、周期的(例えば、10msec毎)に繰り返し実行される。なお、鑑賞開始ボタン8の操作時には、鑑賞者は、ディスプレイ3の表示面に正対し、筐体7が図1に示した基準姿勢となるようにコントローラ2を両手で持ったスタート姿勢をとる。
カメラ位置移動処理では、図8に示すように、まずそのステップS101で、カメラ位置制御部28は、コントローラ2から送信された操作データ及び検出データを取得する。
【0024】
続いてステップS102に移行して、カメラ位置制御部28は、ステップS101で取得した操作データに基づき、ジョイスティック12の傾倒方向を判定する。そして、ジョイスティック12の傾倒方向が上方向(縁頭の方向)であると判定した場合には、ステップS103に移行する。一方、ジョイスティック12の傾倒方向が下方向(柄頭の方向)であると判定した場合には、ステップS107に移行する。また一方、ジョイスティック12が傾けられていないと判定した場合には、このカメラ位置移動処理を終了する。
【0025】
ステップS103では、カメラ位置制御部28は、コントローラ2が傾けられているかを判定する。例えば、ステップS101で取得した検出データに基づき、鉛直方向に対する筐体7の長手方向の傾倒量θ2が予め定めた第1閾値TH1以上(θ2≧TH1)であるかを判定する。第1閾値TH1としては、例えば20°を採用できる。そして、カメラ位置制御部28は、θ2≧TH1と判定した場合には(Yes)、コントローラ2が傾けられていると判定し、ステップS104に移行する。一方、θ2<TH1と判定した場合には(No)、コントローラ2が立てられていると判定し、第1カメラパスP1の仮想刀剣モデル31に近い側の端部(ゴール地点34)の位置を維持し、ステップS108に移行する。
【0026】
続いてステップS104に移行して、カメラ位置制御部28は、コントローラ2の傾きが大きいかを判定する。例えば、ステップS101で取得した検出データに基づき、鉛直方向に対する筐体7の長手方向の傾倒量θ2が、第1閾値TH1よりも大きい第2閾値TH2以上(θ2≧TH2)であるかを判定する。第2閾値TH2としては、例えば70°を採用できる。そして、カメラ位置制御部28は、θ2≧TH2と判定した場合には(Yes)、コントローラ2の傾きが大きいと判定し、ステップS105に移行する。一方、θ2<TH2と判定した場合には(No)、傾倒量θ2は第1閾値TH1以上で且つ第2閾値TH2未満であり、コントローラ2の傾きが小さいと判定し、ステップS106に移行する。
【0027】
ステップS105では、カメラ位置制御部28は、図10に示すように、第1カメラパスP1の仮想刀剣モデル31に近い側の端部(ゴール地点34)を仮想刀剣モデル31に沿って仮想刀剣モデル31の茎側に移動させた後、ステップS108に移行する。例えば、第1カメラパスP1のゴール地点34が第2カメラパスP2上を通って仮想刀剣モデル31の茎に近づく方向に移動するように、ゴール地点34を移動させる。即ち、仮想刀剣モデル31の長手方向に沿った第1カメラパスP1のゴール地点34の移動は、第2カメラパスP2上で行われる。これにより、鑑賞者が、現実の刀剣を茎側から鑑賞するときのように、刀剣の柄状のコントローラ2を寝かせた場合に、仮想カメラ33を仮想刀剣モデル31の茎側に移動させ、茎側からの仮想刀剣モデル31の画像をディスプレイ3に表示させることができる。ここで、茎側から鑑賞する場合には、鑑賞者はコントローラ2の縁頭側(図2では上側)をディスプレイ3側に傾ける動作を行うため、仮想空間30内において、仮想刀剣モデル31は、Z2軸に沿って切先側が仮想カメラ33から遠ざかる方向に傾くことになる。それゆえ、仮想刀剣モデル31の傾きに伴って第2カメラパスP2も傾き、ゴール地点34は、傾いた第2カメラパスP2上を通って移動されることになる。
【0028】
なお、第1カメラパスP1のゴール地点34の位置が第2カメラパスP2の仮想刀剣モデル31の茎に近い側の端部(茎地点36)に到達している場合には、ゴール地点34の位置を移動させず、茎地点36に維持させる。また、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒量θ1に基づき、第1カメラパスP1のゴール地点34の移動速度を設定する。例えば、第2カメラパスP2上におけるゴール地点34の移動量を、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど大きくする。これにより、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど、ゴール地点34の移動速度を大きくすることができる。
【0029】
一方、ステップS106では、カメラ位置制御部28は、図11に示すように、第1カメラパスP1の仮想刀剣モデル31に近い側の端部(ゴール地点34)を仮想刀剣モデル31に沿って仮想刀剣モデル31の切先側に移動させた後、ステップS108に移行する。例えば、第1カメラパスP1のゴール地点34が第2カメラパスP2上を通って仮想刀剣モデル31の切先に近づく方向に移動するように、ゴール地点34を移動させる。これにより、鑑賞者が、現実の刀剣の切先側を鑑賞するときのように、刀剣の柄状のコントローラ2を少しだけ寝かせた場合に、仮想カメラ33を仮想刀剣モデル31の切先側に移動させ、仮想刀剣モデル31の切先側の画像をディスプレイ3に表示させることができる。ここで、切先側から鑑賞する場合には、茎側から鑑賞する場合と同様に、鑑賞者はコントローラ2の縁頭側をディスプレイ3側に傾ける動作を行うため、仮想空間30内において、仮想刀剣モデル31の切先側は、Z2軸に沿って仮想カメラ33から遠ざかる方向に傾くことになる。それゆえ、仮想刀剣モデル31の傾きに伴って第2カメラパスP2も傾き、ゴール地点34は、傾いた第2カメラパスP2上を通って移動されることになる。
【0030】
なお、第1カメラパスP1のゴール地点34の位置が第2カメラパスP2の仮想刀剣モデル31の切先に近い側の端部(切先地点37)に到達している場合には、ゴール地点34の位置を移動させず、切先地点37に維持させる。また、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒量θ1に基づき、第1カメラパスP1のゴール地点34の移動速度を設定する。例えば、第2カメラパスP2上におけるゴール地点34の移動量を、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど大きくする。
【0031】
また一方、ステップS107では、カメラ位置制御部28は、第1カメラパスP1の仮想刀剣モデル31に近い側の端部(ゴール地点34)を仮想刀剣モデル31の長手方向に沿って仮想刀剣モデル31の中心方向に移動させた後、ステップS108に移行する。例えば、第1カメラパスP1のゴール地点34が第2カメラパスP2上を通って仮想刀剣モデル31の中心領域38に近づく方向に移動するように、ゴール地点34を移動させる。これにより、鑑賞者が、仮想刀剣モデル31の全体を鑑賞するために、仮想カメラ33を仮想刀剣モデル31から遠ざけた場合に、仮想カメラ33を仮想刀剣モデル31の中心側に移動させ、仮想刀剣モデル31の全体をディスプレイ3に表示させることができる。
【0032】
なお、第1カメラパスP1のゴール地点34の位置が第2カメラパスP2の仮想刀剣モデル31の中心領域38に到達している場合には、ゴール地点34の位置を移動させず、ゴール地点34の位置を中心領域38内に維持させる。また、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒量θ1に基づき、第1カメラパスP1のゴール地点34の移動速度を設定する。例えば、第2カメラパスP2上におけるゴール地点34の移動量を、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど大きくする。
【0033】
ステップS108では、カメラ位置制御部28は、ステップS101で取得した操作データに基づき、ステップS105、S106又はS107でゴール地点34を移動させた第1カメラパスP1上における、仮想カメラ33の移動予定位置(以下、「第1予定位置39」とも呼ぶ)を計算する。なお、ステップS103の判定が「No」となり、ステップS105~S107を経ずにステップS108に到達した場合には、図12に示すように、ゴール地点34が移動しないため、第1予定位置39として、前回のカメラ位置移動処理で用いたゴール地点34の位置を用いる。例えば、ジョイスティック12の傾倒方向が上方向である場合には、第1カメラパスP1を通って仮想刀剣モデル31に近づく方向に仮想カメラ33が移動するように、第1予定位置39を計算する。本ステップでは、第1カメラパスP1としては、ステップS105、106又はS107で移動させたゴール地点34と、仮想カメラ33の現在位置と、スタート地点35とを通るパスを用いる。
【0034】
また例えば、ジョイスティック12の傾倒方向が下方向である場合には、第1カメラパスP1を通って仮想刀剣モデル31から遠ざかる方向(第1カメラパスP1のスタート地点35に近づく方向)に仮想カメラ33が移動するように、第1予定位置39を計算する。なお、仮想カメラ33の位置が第1カメラパスP1のスタート地点35に到達している場合には、第1予定位置39の計算結果としてはスタート地点35の位置が採用される。
また、このステップS108では、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒量θ1に基づき、仮想カメラ33の移動速度を設定する。例えば、第1カメラパスP1上における第1予定位置39を、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど、現在の仮想カメラ33の位置から離れた位置に設定する。これにより、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど、仮想カメラ33の移動速度を大きくすることができる。
【0035】
続いてステップS109に移行して、カメラ位置制御部28は、仮想カメラ33が第2カメラパスP2上に位置しているかを判定する。ここで、上述したように、第1カメラパスP1のゴール地点34は、第2カメラパスP2上を移動する。それゆえ、例えば、仮想カメラ33が第1カメラパスP1のゴール地点34に到達している場合には、仮想カメラ33が第2カメラパスP2上に位置していると判定されることになる。そして、カメラ位置制御部28は、仮想カメラ33が第2カメラパスP2上に位置していると判定した場合には(Yes)、ステップS110に移行する。一方、仮想カメラ33が第1カメラパスP1上に位置していると判定した場合には(No)、ステップS112に移行する。
【0036】
ステップS110では、カメラ位置制御部28は、コントローラ2が傾けられているかを判定する。例えば、S103と同様に、筐体7の傾倒量θ2が第1閾値TH1以上(θ2≧TH1)である場合に、コントローラ2が傾けられていると判定する。そして、カメラ位置制御部28は、θ2≧TH1と判定した場合には(Yes)、コントローラ2が傾けられていると判定し、ステップS110に移行する。一方、θ2<TH1と判定した場合には(No)、コントローラ2が立てられていると判定し、ステップS111に移行する。
【0037】
ステップS111では、カメラ位置制御部28は、ステップS101で取得した操作データに基づき、第2カメラパスP2上における仮想カメラ33の移動予定位置(以下「第2予定位置40」とも呼ぶ)を計算した後、ステップS112に移行する。例えば、ジョイスティック12の傾倒方向が上方向である場合には、仮想カメラ33が第2カメラパスP2に沿って仮想刀剣モデル31の切先方向に移動するように、第2予定位置40を計算する。なお、仮想カメラ33の位置が第2カメラパスP2の切先に近い側の端部(切先地点37)に到達している場合には、第2予定位置40の計算結果としては、切先地点37の位置が採用される。また、例えば、ジョイスティック12の傾倒方向が下方向である場合には、仮想カメラ33が第2カメラパスP2に沿って仮想刀剣モデル31の茎方向に移動するように、第2予定位置40を計算する。なお、仮想カメラ33の位置が第2カメラパスP2の茎側の端部(茎地点36)に到達している場合には、第2予定位置40の計算結果としては、茎地点36の位置が採用される。これにより、仮想カメラ33が第2カメラパスP2上に位置している場合には、現実の刀剣の刀身の鑑賞時のように、刀剣の柄状のコントローラ2を寝かせることで、仮想カメラ33を仮想刀剣モデル31に沿って移動させ、仮想刀剣モデル31の刀身の画像をディスプレイ3に表示させることができる。ここで、ステップS105やS106で述べたように、鑑賞者はコントローラ2の縁頭側をディスプレイ3側に傾ける動作を行うため、仮想空間30内において、仮想刀剣モデル31は、Z2軸に沿って切先側が仮想カメラ33から遠ざかる方向に傾くことになる。それゆえ、仮想刀剣モデル31の傾きに伴って第2カメラパスP2も傾き、第2予定位置40は、傾いた第2カメラパスP2上を通って移動されることになる。
【0038】
また、カメラ位置制御部28は、ジョイスティック12の傾倒量θ1に基づき、仮想カメラ33の移動速度を設定する。例えば、第2カメラパスP2上における第2予定位置40を、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど、現在の仮想カメラ33の位置から離れた位置に設定する。これにより、ジョイスティック12の傾倒量θ1が大きいほど、仮想カメラ33の移動速度を大きくすることができる。
【0039】
ステップS112では、カメラ位置制御部28は、図13に示すように、仮想空間30において、ステップS108で計算した第1予定位置39、又はステップS111で計算した第2予定位置40に仮想カメラ33を移動させた後、このカメラ位置移動処理を終了する。例えば、ステップS109又はS110が「No」であり、ステップS111がとばされた場合には、第1予定位置39に仮想カメラ33を移動させる。また、ステップS109及びS110が「Yes」であり、ステップS111で第2予定位置40の計算が行われた場合には、第2予定位置40に仮想カメラ33を移動させる。これにより、画像生成部25及び表示部26は、仮想カメラ33が動かされた仮想空間30において、仮想画像を再度生成してディスプレイ3の表示内容を更新する。画像生成部25及び表示部26による表示内容の更新は、仮想カメラ33の移動が行われるたびに繰り返される。
【0040】
なお、それまでステップS110の判定が「Yes」であったのが、「No」に切り替わり、第2予定位置40の計算が行われなくなった場合には、図14に示すように、仮想カメラ33の現在位置をゴール地点34とし、そのゴール地点34とスタート地点35とを通る第1カメラパスP1に沿って仮想刀剣モデル31から遠ざかるように、仮想カメラ33を移動させる。これにより、仮想カメラ33の第2カメラパスP2に沿った移動を終了して、仮想カメラ33の移動経路を第1カメラパスP1へ切り替え可能となっている。
【0041】
以上説明したように、第1の実施形態に係る美術品鑑賞システム1では、コントローラ2の筐体7の外形を刀剣の柄状とした。また、動作制御部27が、コントローラ2から送信された検出データ(筐体7の傾倒量θ2)に基づき、仮想空間30内において、仮想刀剣モデル31を動かす構成とした。それゆえ、鑑賞者は、柄状のコントローラ2の傾き操作を行うことで、ディスプレイ3に表示された仮想刀剣モデル31を動かすことができる。そのため、鑑賞者にあたかも実物を動かしながら刀剣を鑑賞しているかのような体験をさせることができ、鑑賞者(ユーザ)の刀剣鑑賞への没入感を高めることができる。
【0042】
また、第1の実施形態に係る美術品鑑賞システム1では、カメラ位置制御部28が、ジョイスティック12の傾倒方向と、筐体7の傾倒量θ1とに基づき、仮想空間30内での仮想カメラ33の移動方向を決定する構成とした。これにより、鑑賞者は、ジョイスティック12の傾倒方向と、筐体7の傾倒量θ1との組み合わせで、仮想空間30内での仮想カメラ33の移動方向を指示することができる。それゆえ、ジョイスティック12への少ない種類の傾き操作によって、仮想カメラ33に対して複数の移動方向を指示することができ、鑑賞者(ユーザ)の刀剣鑑賞への没入感をさらに高めることができる。
【0043】
また、第1の実施形態に係る美術品鑑賞システム1では、上記のステップS109「Yes」→S110「Yes」→S111→S112のフローを経ることで、仮想カメラ33の位置が第1カメラパスP1のゴール地点34に位置しているときに、鉛直方向に対する筐体7の長手方向の傾倒量θ2が第1閾値TH1以上とされ、且つ、ジョイスティック12が上方向又は下方向に傾倒された場合に、仮想カメラ33の第1カメラパスP1に沿った移動に代えて、仮想カメラ33を、第2カメラパスP2に沿って仮想刀剣モデル31の切先方向又は茎方向へ移動させる構成とした。これにより、第1カメラパスP1から第2カメラパスP2へ、仮想カメラ33の移動経路を切り替えることができる。
【0044】
また、ステップS109「Yes」→S111「No」→S112のフローを経ることで、仮想カメラ33が第2カメラパスP2上に位置しているときに、鉛直方向に対する筐体7の長手方向の傾倒量θ2が第1閾値TH1以上とされ、且つ、ジョイスティック12が下方向に傾倒された場合に、仮想カメラ33の第2カメラパスP2に沿った移動を終了して、仮想カメラ33の現在位置を第1カメラパスP1のゴール地点34として、第1カメラパスP1を通って仮想刀剣モデル31から遠ざかる方向に仮想カメラ33を移動させる構成とした。これにより、仮想カメラ33の移動経路を、第2カメラパスP2から第1カメラパスP1へ切り替えることもできる。
【0045】
[1-3 変形例]
(1)なお、第1の実施形態では、ジョイスティック12として、傾き方向と傾倒量θ2とを検出する入力機構を用いる例を示したが、他の構成としてもよい。例えば、ジョイスティック12として、傾き方向のみを検出する入力機構を備える構成としてもよい。この場合、第1カメラパスP1のゴール地点34の計算、第1予定位置39の計算、第2予定位置40の計算は、ジョイスティック12の傾倒量θ2として一定値を用いて行う。
また、例えば、ジョイスティック12の左右への傾き及び傾倒量を利用する構成としてもよい。また、例えば、付加したい機能によりボタンを増減させた構成としてもよい。
【0046】
(2)また、第1の実施形態では、仮想刀剣モデル31として、実在の日本刀等の刀剣を模した高精度の3次元モデルを用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、仮想刀剣モデル31として、厚さの情報が省略され、刀剣の平面形状を模した平板状の3次元モデルであって、その3次元モデルの表面及び裏面それぞれに実物の刀剣の表面及び裏面の画像データがテクスチャ画像として貼り付けられた3次元モデルを用いる構成としてもよい。この場合、3次元モデルの陰影の計算は、法線マップを用いて行う。
【0047】
(3)また、第1の実施形態では、鑑賞対象として、仮想刀剣モデル31を用いる例を示したが、他の構成を採用することもできる。例えば、金属器、陶器、漆器等、刀剣以外の実在の美術品を模した3次元モデル(仮想美術品モデル)を用いる構成としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…美術品鑑賞システム、2…コントローラ、3…ディスプレイ、4…本体装置、5…ケーブル、6…ケーブル、7…筐体、7R…第1筐体部品、7L…第2筐体部品、8…鑑賞開始ボタン、9…鑑賞終了ボタン、10…第1機能ボタン、11…第2機能ボタン、12…ジョイスティック、13…傾き検出部、13a…傾きセンサ、13b…演算部、14…送信部、16…凹部、17…凹部、18…貫通孔、19…貫通孔、20…貫通孔、21…貫通孔、22…貫通孔、23…記憶部、24…制御部、25…画像生成部、26…表示部、27…動作制御部、28…カメラ位置制御部、29…説明情報表示部、30…仮想空間、31…仮想刀剣モデル、32…仮想光源、33…仮想カメラ、34…ゴール地点、35…スタート地点、36…茎地点、37…切先地点、38…中心領域、39…第1予定位置、40…第2予定位置、41…領域、42…説明テロップ
図1
図2
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図5
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