IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立建機株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-作業機械 図1
  • 特開-作業機械 図2
  • 特開-作業機械 図3
  • 特開-作業機械 図4
  • 特開-作業機械 図5
  • 特開-作業機械 図6
  • 特開-作業機械 図7
  • 特開-作業機械 図8
  • 特開-作業機械 図9
  • 特開-作業機械 図10
  • 特開-作業機械 図11
  • 特開-作業機械 図12
  • 特開-作業機械 図13
  • 特開-作業機械 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137334
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240927BHJP
【FI】
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048821
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲田 諒
(72)【発明者】
【氏名】森木 秀一
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 晃司
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
2D015HB02
2D015HB04
2D015HB05
(57)【要約】
【課題】動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【解決手段】作業機械1は、掘削動作を行うフロント作業装置1cを有する作業機械である。作業機械1は、フロント作業装置1cの姿勢及び作業機械1の車体1a,1bの姿勢を計測する姿勢計測装置18と、作業機械1の周辺の地形を計測する地形計測装置19と、姿勢計測装置18及び地形計測装置19の計測結果に基づいて、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する制御装置100と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削動作を行う作業装置を有する作業機械であって、
前記作業装置の姿勢及び前記作業機械の車体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、
前記作業機械の周辺の地形を計測する地形計測装置と、
前記姿勢計測装置及び前記地形計測装置の計測結果に基づいて、前記作業機械の動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する制御装置と、を備える
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
前記作業装置は、掘削用のアタッチメントであるバケットを有し、
前記制御装置は、
前記姿勢計測装置の計測結果に基づいて、前記バケットの位置を演算するバケット位置演算部と、
前記バケット位置演算部の演算結果と前記地形計測装置の計測結果とに基づいて、前記地形に含まれる複数の地点のうち前記バケットの位置に近接する近接地点を演算する近接地点演算部と、
前記バケットの位置と前記近接地点との距離を演算する距離演算部と、
前記距離演算部の演算結果に基づいて、前記動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する動作状態判定部と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記作業装置は、前記バケットに連結されたアームと、前記アームを回動させるアームシリンダと、を有し、
前記作業機械は、前記アームシリンダの圧力を計測するアームシリンダ圧力計測装置を備え、
前記姿勢計測装置は、前記アームの角度を計測するアーム角度計測装置を有し、
前記動作状態判定部は、前記アームシリンダ圧力計測装置の計測結果と前記アーム角度計測装置の計測結果と前記距離演算部の演算結果とに基づいて、前記動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記作業装置は、前記車体に連結されたブームを有し、
前記姿勢計測装置は、前記車体の傾斜角を計測する車体傾斜角計測装置と、前記ブームの角度を計測するブーム角度計測装置と、を有し、
前記制御装置は、前記車体傾斜角計測装置の計測結果と前記ブーム角度計測装置の計測結果とに基づいて、前記傾斜角の変化量を演算する傾斜角変化量演算部を有し、
前記動作状態判定部は、前記傾斜角変化量演算部の演算結果と前記距離演算部の演算結果とに基づいて、前記動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記作業機械は、前記作業機械の下部走行体に取り付けられた上部旋回体を備え、
前記姿勢計測装置は、前記上部旋回体の旋回角度を計測する旋回角度計測装置を有し、
前記動作状態判定部は、前記旋回角度計測装置の計測結果から演算される前記上部旋回体の旋回速度と前記距離演算部の演算結果とに基づいて、前記動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項6】
前記作業装置は、前記バケットを回動させるバケットシリンダと、前記バケットに連結されたアームと、前記アームを回動させるアームシリンダと、前記アームに連結されたブームと、前記ブームを回動させるブームシリンダと、前記バケットシリンダ、前記アームシリンダ及び前記ブームシリンダの各アクチュエータを操作する操作装置と、を備え、
前記制御装置は、前記操作装置の操作量を示す操作信号に応じて、前記各アクチュエータの動作を制御する車体制御部を有し、
前記車体制御部は、前記動作状態判定部の判定結果に基づいて、前記操作信号を修正して前記各アクチュエータの動作を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記制御装置は、前記作業機械の生産性を分析する生産性分析部を備え、
前記生産性分析部は、前記動作状態判定部の判定結果に基づいて、前記生産性を分析する
ことを特徴とする請求項2に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベル等の作業機械において、作業機械の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定するシステムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、作業機械のアームシリンダの圧力が予め定められた値以上であり、且つ、作業機械のアームに対する操作内容が掘削操作であると判定した場合に、作業機械の動作状態を掘削動作の状態であると判定するシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6691482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、アームシリンダの圧力が予め定めた値以上となり、且つ、アームが掘削方向に動作することは、掘削動作だけで起こるとは限らない。例えば、土砂等の積荷を積載状態のバケットを空中で移動させる積込動作時に、積荷の荷重によってはアームシリンダの圧力が掘削動作時と同等になり、且つ、アームが掘削方向に動作する場合がある。したがって、特許文献1に開示されたシステムでは、作業機械が掘削動作以外の動作を行っていても、作業機械の動作状態を掘削動作の状態であると誤判定する可能性がある。
【0006】
上記事情に鑑みて、本発明は、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定することが可能な作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の作業機械は、掘削動作を行う作業装置を有する作業機械であって、前記作業装置の姿勢及び前記作業機械の車体の姿勢を計測する姿勢計測装置と、前記作業機械の周辺の地形を計測する地形計測装置と、前記姿勢計測装置及び前記地形計測装置の計測結果に基づいて、前記作業機械の動作状態が前記掘削動作の状態であるか否かを判定する制御装置と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定することが可能な作業機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の作業機械の構成を示す図。
図2図1に示す制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図3】姿勢情報を説明する図。
図4】地形情報を説明する図。
図5】実施形態2の作業機械の構成を示す図。
図6図5に示す制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図7図6に示す制御装置によって行われる処理のフローチャート。
図8】実施形態3の作業機械が備える制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図9図8に示す制御装置によって行われる処理のフローチャート。
図10】実施形態4の作業機械が備える制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図11図10に示す制御装置によって行われる処理のフローチャート。
図12】実施形態5の作業機械の構成を示す図。
図13図12に示す制御装置の機能的構成を示すブロック図。
図14図13に示す制御装置によって行われる処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0011】
[実施形態1]
図1図4を用いて、実施形態1の作業機械1について説明する。図1は、実施形態1の作業機械1の構成を示す図である。
【0012】
作業機械1は、油圧ショベル等の掘削動作を行う作業機械である。作業機械1は、掘削用のアタッチメントであるバケット9を備える作業機械である。本実施形態の作業機械1は、下部走行体1aと、下部走行体1aに旋回装置3を介して取り付けられた上部旋回体1bと、上部旋回体1bに取り付けられたフロント作業装置1cと、を備える。下部走行体1a及び上部旋回体1bは、作業機械1の車体1a,1bを構成する。
【0013】
下部走行体1aには、作業機械1を任意の場所への走行を可能とする走行モータ2が設けられている。上部旋回体1bには、上部旋回体1bを任意の旋回角度に制御できる旋回モータ4が設けられている。
【0014】
フロント作業装置1cは、上部旋回体1bに対して回動可能に連結されたブーム6と、ブーム6に対して回動可能に連結されたアーム7と、バケットリンク8を介してアーム7に対して回動可能に連結されたバケット9と、を備える。更に、フロント作業装置1cは、ブーム6を回動させるブームシリンダ10と、アーム7を回動させるアームシリンダ11と、バケット9を回動させるバケットシリンダ12と、を備える。ブームシリンダ10は、上部旋回体1bとブーム6とに接続され、ブーム6の角度を任意に変更することができる。アームシリンダ11は、ブーム6とアーム7とに接続され、アーム7の角度を任意に変更することができる。バケットシリンダ12は、アーム7とバケットリンク8とに接続され、バケット9の角度を任意に変更することができる。
【0015】
また、作業機械1は、走行モータ2、旋回モータ4、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12のそれぞれ(以下、作業機械1の「各アクチュエータ」とも称する」)を、互いに独立して操作可能な操作装置5と、各アクチュエータの動作を制御する制御装置100と、を備える。操作装置5及び制御装置100は、上部旋回体1bに設けられている。操作装置5は、各アクチュエータに対する操作装置5の操作量を示す操作信号を、制御装置100に送信する。
【0016】
制御装置100は、操作装置5から送信された操作信号に応じて、各アクチュエータの変位を制御して、各アクチュエータの動作を任意の動作速度及び動作方向で制御する。制御装置100は、CPU等のプロセッサと、ROM及びRAM等のメモリとを含み、CPUがROMに記憶されたプログラムを実行することによって制御装置100の機能を実現する。なお、操作装置5と制御装置100との関係は、操作装置5から制御装置100に操作信号を送信できれば本実施形態の構成に限られない。
【0017】
また、作業機械1は、作業機械1の姿勢を計測する姿勢計測装置18を備える(図2参照)。姿勢計測装置18は、フロント作業装置1cの姿勢及び車体1a,1bの姿勢を計測する。姿勢計測装置18は、車体1a,1bの傾斜角を計測する車体傾斜角計測装置13と、ブーム6の角度を計測するブーム角度計測装置14と、アーム7の角度を計測するアーム角度計測装置15と、バケット9の角度を計測するバケット角度計測装置16と、上部旋回体1bの旋回角度を計測する旋回角度計測装置17と、を有する。車体傾斜角計測装置13、ブーム角度計測装置14、アーム角度計測装置15及びバケット角度計測装置16は、例えば、IMU(Inertial Measurement Unit)によって構成される。車体傾斜角計測装置13は、車体1a,1bの傾斜角として車体1a,1bの対地角を計測し、制御装置100に送信する。ブーム角度計測装置14は、ブーム6の角度としてブーム6の対地角を計測し、制御装置100に送信する。アーム角度計測装置15は、アーム7の角度としてアーム7の対地角を計測し、制御装置100に送信する。バケット角度計測装置16は、バケット9の角度としてバケット9の対地角を計測し、制御装置100に送信する。旋回角度計測装置17は、上部旋回体1bの旋回角度を計測し、制御装置100に送信する。
【0018】
なお、本実施形態の姿勢計測装置18は、ブーム6、アーム7及びバケット9の各対地角を計測するために、上記のIMUによって構成されたフロント作業装置1cの各関節の角度計測装置14~16を有するが、姿勢計測装置18の構成はこれに限定されない。例えば、姿勢計測装置18は、ブーム6、アーム7及びバケット9の各回動軸にポテンショメータを取り付けて各回動角度を計測し、IMUによって構成された車体傾斜角計測装置13と組み合わせて、ブーム6、アーム7及びバケット9の各対地角を演算してもよい。本実施形態では、車体1a,1bの傾斜角(対地角)の情報、ブーム6、アーム7及びバケット9の各角度(各対地角)の情報、並びに、上部旋回体1bの旋回角度の情報を総称して、作業機械1の「姿勢情報」とも称する。本実施形態では、ブーム6、アーム7及びバケット9を総称して、フロント作業装置1cの「関節」とも称する。
【0019】
また、作業機械1は、作業機械1の周辺の地形を計測する地形計測装置19を備える。地形計測装置19は、例えば、LiDAR、ミリ波レーダ又はカメラ等によって構成される。地形計測装置19は、作業機械1の周辺の地形を計測し、計測結果を示す地形情報を制御装置100に送信する。本実施形態の地形計測装置19は、上部旋回体1bの上部に取り付けられているが、その取り付け場所は特に限定されない。例えば、地形計測装置19は、下部走行体1a又はフロント作業装置1cに取り付けられていてもよい。或いは、地形計測装置19は、作業機械1の外部に取り付けられ、作業機械1との無線通信によって地形情報を制御装置100に送信してもよい。
【0020】
図2は、図1に示す制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。図3は、姿勢情報を説明する図である。図4は、地形情報を説明する図である。
【0021】
制御装置100は、姿勢計測装置18から送信された作業機械1の姿勢情報(姿勢計測装置18の計測結果)、及び、地形計測装置19から送信された地形情報(地形計測装置19の計測結果)に基づいて、作業機械1の動作状態を判定する。制御装置100は、動作状態の判定結果に基づいて、作業機械1の動作を制御する。
【0022】
制御装置100は、図2に示すように、バケット位置演算部101と、近接地点演算部102と、距離演算部103と、動作状態判定部104と、車体制御部105と、生産性分析部106と、を有する。
【0023】
バケット位置演算部101は、姿勢計測装置18の計測結果(作業機械1の姿勢情報)に基づいてバケット9の位置を演算する。バケット9の位置の演算方法について、図3を用いて説明する。
【0024】
図3に示す座標系は、作業機械1の基準位置P0を原点とし、水平面に沿った作業機械1の進行方向をX軸方向とし、鉛直上向きの方向をZ軸方向とし、X軸方向及びZ軸方向に直交する方向をY軸方向としている。図3では、下部走行体1aの下面を含む平面と上部旋回体1bの旋回中心軸との交点である上部旋回体1bの旋回中心位置を、作業機械1の基準位置P0とする。ブーム6の回動支点であるブームピンの位置をP1とし、アーム7の回動支点であるアームピンの位置をP2とし、バケット9の回動支点であるバケットピンの位置をP3とし、バケット9の爪先位置をP4とする。作業機械1の基準位置P0からブームピン位置P1までの距離をL0とする。ブームピン位置P1からアームピン位置P2までの距離をブーム長さL1とし、アームピン位置P2からバケットピン位置P3までの距離をアーム長さL2とし、バケットピン位置P3から爪先位置P4までの距離をバケット長さL3とする。車体1a,1bの傾斜角を車体傾斜角θ0とする。傾斜角θ0だけ傾斜した作業機械1の進行方向をX’軸方向とし、傾斜角θ0だけ傾斜した作業機械1の旋回中心軸に沿った上向きの方向をZ’軸方向とする。ブームピン位置P1からアームピン位置P2までを結ぶ線分とX’軸とが成す角度をブーム角度θ1とする。ブームピン位置P1からアームピン位置P2までを結ぶ線分とアームピン位置P2からバケットピン位置P3までを結ぶ線分とがなす角度をアーム角度θ2とする。アームピン位置P2からバケットピン位置P3までを結ぶ線分とバケットピン位置P3から爪先位置P4までを結ぶ線分とがなす角度をバケット角度θ3とする。上部旋回体1bの旋回角度をθ4とする。旋回角度θ4は、X’軸を基準として、反時計回りを正とする。
【0025】
バケット位置演算部101は、作業機械1の基準原点P0からブームピン位置P1までの距離L0、ブーム長さL1、アーム長さL2、バケット長さL3、車体傾斜角θ0、ブーム角度θ1、アーム角度θ2、バケット角度θ3、旋回角度θ4から、並進行列及び回転行列を利用して、爪先位置P4を演算する。本実施形態のバケット位置演算部101は、演算された爪先位置P4をバケット9の位置とする。なお、バケット位置演算部101は、バケット9の位置として、爪先位置P4ではなく、バケット9の重心位置やバケット9の底面位置を採用してもよい。
【0026】
なお、本実施形態では、ローカル座標系を用いてバケット9の位置を表現しているが、バケット9の位置を表現する座標系と、バケット9の近接地点を表現する座標系とが一致していれば、ローカル座標系に限られない。例えば、作業機械1にGNSSアンテナを取り付けて、作業機械1のグローバル座標系における基準位置P0を求めてもよい。また、本実施形態では、各角度計測装置13~17によって計測された角度情報からバケット9の位置を演算したが、バケット位置演算部101は、バケット9の位置を特定できれば、その形態は限らない。例えば、バケット位置演算部101は、各アクチェータの変位を計測する変位計の計測結果や、LiDAR、ミリ波レーダ又はカメラ等によるバケット9の計測結果から、バケット9の位置を演算してもよい。
【0027】
近接地点演算部102は、バケット位置演算部101の演算結果(バケット9の位置)と、地形計測装置19の計測結果(地形情報)とに基づいて、地形情報に含まれる複数の地点のうちバケット9の位置に近接する近接地点を演算する。図4に示す地形情報Gは、点群データであってもよく、図4の小黒丸として示すように複数の地点の位置座標を含む。近接地点演算部102は、バケット9の位置である爪先位置P4の近傍に存在する3点以上の地点P5を特定し、特定された地点P5によって形成される平面Sを演算する。近接地点演算部102は、バケット9の位置である爪先位置P4から平面Sに下ろした垂線(図4の点線)と平面Sとの交点を、バケット9の近接地点P6とする。なお、本実施形態では、地形計測装置19が上部旋回体1bに取り付けられているので、地形情報を上部旋回体1bの座標系を用いて表現してもよい。この場合、バケット位置演算部101には、旋回角度の情報が送信されなくてもよい。
【0028】
距離演算部103は、バケット位置演算部101により演算されたバケット9の位置と、近接地点演算部102により演算された近接地点との距離Dを演算する。図4の例では、距離演算部103は、バケット9の位置である爪先位置P4と近接地点P6との距離Dを演算する。この際、距離演算部103は、爪先位置P4と近接地点P6との距離Dの正負を、爪先位置P4が地面より上であれば正とし、爪先位置P4が地面より下であれば負として演算する。
【0029】
動作状態判定部104は、距離演算部103の演算結果(距離D)に基づいて、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。具体的には、動作状態判定部104は、距離演算部103により演算された距離Dが、予め定められた値以下であれば、現在の作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。一方、動作状態判定部104は、距離演算部103により演算された距離Dが、予め定められた値より大きいのであれば、現在の作業機械1の動作状態が掘削動作の状態でないと判定する。なお、動作状態判定部104は、距離演算部103により演算された距離Dの所定時間における平均値が、予め定められた値以下であるか否かによって、現在の作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定してもよい。
【0030】
車体制御部105は、動作状態判定部104の判定結果に基づいて、各アクチュエータの動作を制御する。例えば、動作状態判定部104によって掘削動作の状態でないと判定された場合、車体制御部105は、操作装置5から送信された操作信号に応じて、各アクチュエータの動作を制御する制御信号を生成し、各アクチュエータに送信する。一方、車体制御部105は、動作状態判定部104によって掘削動作の状態であると判定された場合、操作装置5から送信された操作信号を修正して制御信号を生成し、各アクチュエータに送信する。例えば、車体制御部105は、操作装置5から送信された操作信号に介入し、予め定められた掘削軌跡に沿うように、ブームシリンダ10、アームシリンダ11及びバケットシリンダ12の少なくとも1つの操作信号が示す操作量を補正して制御信号を生成する。或いは、作業機械1が各アクチュエータの負荷を計測する負荷計測装置を備え、車体制御部105は、当該操作信号が示す操作量を、各アクチュエータの負荷が減少する方向に補正して制御信号を生成する。このように、車体制御部105は、動作状態判定部104の判定結果に基づいて、操作装置5から送信された操作信号を修正して各アクチュエータの動作を制御することができる。
【0031】
生産性分析部106は、動作状態判定部104の判定結果に基づいて、作業機械1の生産性を分析する。例えば、動作状態判定部104によって掘削動作の状態であると判定された場合、生産性分析部106は、当該判定に係る掘削動作が行われた時間と掘削量とを基に、作業機械1の生産性を分析する。例えば、生産性分析部106は、単位時間当たりの掘削量が多い場合を生産性が高いと評価し、少ない場合を生産性が低いと評価することができる。なお、制御装置100は、車体制御部105及び生産性分析部106の何れかを備えていればよい。
【0032】
以上のように、実施形態1の作業機械1は、掘削動作を行うフロント作業装置1cを有する作業機械であって、フロント作業装置1cの姿勢及び作業機械1の車体1a,1bの姿勢を計測する姿勢計測装置18と、作業機械1の周辺の地形を計測する地形計測装置19と、姿勢計測装置18及び地形計測装置19の計測結果に基づいて、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する制御装置100と、を備える。
【0033】
これにより、実施形態1の作業機械1は、例えば、作業機械1に備えられた掘削用のアタッチメントであるバケット9と作業機械1の周辺の地点との位置関係から、バケット9が地面に接触(以下「接地」とも称する)していることを特定することができる。したがって、実施形態1の作業機械1は、バケット9が地面に接触する掘削動作と、積込動作又は空掘削動作とを明確に区別することができる。この結果、実施形態1の作業機械1は、積込動作時又は空掘削動作時に掘削動作が行われていると判定するような誤判定を防止することができる。よって、実施形態1の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定することができる。
【0034】
なお、積込動作は、上部旋回体1bを旋回させて、積荷を積載状態のバケット9をダンプトラック等に向かって空中で移動させる動作である。空掘削動作は、空荷状態のバケット9を掘削方向(クラウド方向)に空中で移動させる動作である。
【0035】
更に、実施形態1の作業機械1において、フロント作業装置1cは、掘削用のアタッチメントであるバケット9を有する。制御装置100は、姿勢計測装置18の計測結果に基づいて、バケット9の位置を演算するバケット位置演算部101と、バケット位置演算部101の演算結果と地形計測装置19の計測結果とに基づいて、当該地形に含まれる複数の地点のうちバケット9の位置に近接する近接地点を演算する近接地点演算部102と、バケット9の位置と近接地点との距離Dを演算する距離演算部103と、距離演算部103の演算結果に基づいて、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する動作状態判定部104と、を有する。
【0036】
これにより、実施形態1の作業機械1は、バケット9の位置と近接地点との距離Dから、バケット9が接地しているか否かを正確に判定することができる。したがって、実施形態1の作業機械1は、積込動作又は空掘削動作と掘削動作とを確実に区別することができ、積込動作時又は空掘削動作時の誤判定を確実に防止することができる。よって、実施形態1の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを更に正確に判定することができる。
【0037】
更に、実施形態1の作業機械1において、フロント作業装置1cは、掘削用のアタッチメントであるバケット9を回動させるバケットシリンダ12と、バケット9に連結されたアーム7と、アーム7を回動させるアームシリンダ11と、アーム7に連結されたブーム6と、ブーム6を回動させるブームシリンダ10と、バケットシリンダ12、アームシリンダ11及びブームシリンダ10の各アクチュエータを操作する操作装置5と、を備える。制御装置100は、操作装置5の操作量を示す操作信号に応じて、各アクチュエータの動作を制御する車体制御部105を有する。車体制御部105は、動作状態判定部104の判定結果に基づいて、操作信号を修正して各アクチュエータの動作を制御する。
【0038】
これにより、実施形態1の作業機械1は、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定した上で、各アクチュエータの動作を制御することができる。したがって、実施形態1の作業機械1は、各アクチュエータの動作が作業機械1の動作状態に適合した動作となるよう、各アクチュエータの動作を適切に制御することができる。
【0039】
更に、実施形態1の作業機械1において、制御装置100は、作業機械1の生産性を分析する生産性分析部106を備える。生産性分析部106は、動作状態判定部104の判定結果に基づいて、作業機械1の生産性を分析する。
【0040】
これにより、実施形態1の作業機械1は、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定した上で、作業機械1の生産性を分析することができる。したがって、実施形態1の作業機械1は、作業機械1の生産性を正確に分析することができる。
【0041】
なお、上記の実施形態では、近接地点演算部102が、バケット9の爪先位置P4の近傍に存在する3点以上の地点P5によって形成される平面Sと、爪先位置P4から当該平面Sに下ろした垂線との交点を、近接地点P6とした。しかしながら、近接地点演算部102は、地形計測装置19によって計測された地形情報のうち、バケット9の爪先位置P4の最も近傍に存在する地点P5を近接地点P6としてもよい。この場合、動作状態判定部104は、演算された爪先位置P4と近接地点P6との距離Dが、予め定められた値η以下であれば、現在の作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。
【0042】
[実施形態2]
図5図7を用いて、実施形態2の作業機械1について説明する。実施形態2の作業機械1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0043】
図5は、実施形態2の作業機械1の構成を示す図である。図6は、図5に示す制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0044】
実施形態2の作業機械1は、アームシリンダ11の圧力を計測するアームシリンダ圧力計測装置21を備える。アームシリンダ圧力計測装置21は、図5及び図6に示すように、アームシリンダ11のボトム側の圧力を計測するアームボトム圧計測装置21aと、アームシリンダ11のロッド側の圧力を計測するアームロッド圧計測装置21bと、を有する。アームボトム圧計測装置21a及びアームロッド圧計測装置21bは、計測されたアームシリンダ11のボトム側の圧力及びロッド側の圧力を、それぞれ、制御装置100に送信する。
【0045】
実施形態2の動作状態判定部104は、アームシリンダ圧力計測装置21により計測されたアームシリンダ11のボトム側の圧力及びロッド側の圧力から、アームシリンダ11の推力を演算する。また、実施形態2の動作状態判定部104は、アーム角度計測装置15により計測されたアーム7の角度(対地角)から、アーム7の動作方向を判定する。そして、実施形態2の動作状態判定部104は、アームシリンダ11の推力と、アーム7の動作方向と、バケット9の位置と近接地点との距離Dとに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0046】
図7は、図6に示す制御装置100によって行われる処理のフローチャートである。
【0047】
ステップS101において、制御装置100は、バケット9の位置と近接地点との距離Dに基づいて、バケット9が接地しているか否かを判定する。例えば、バケット9の位置と近接地点との距離Dがゼロ以下である場合、制御装置100は、バケット9が接地していると判定し、ステップS102に移行する。バケット9の位置と近接地点との距離Dがゼロを上回る場合、制御装置100は、バケット9が接地していないと判定し、ステップS105に移行する。
【0048】
ステップS102において、制御装置100は、アームシリンダ11の推力が、予め定められた値以上であり、且つ、アーム7が掘削方向に動作中であるか否かを判定する。アームシリンダ11の推力が予め定められた値以上であり、且つ、アーム7の動作方向が掘削方向である場合、制御装置100は、ステップS103に移行する。アームシリンダ11の推力が予め定められた値以上でなく、又は、アーム7の動作方向が掘削方向でない場合、制御装置100は、ステップS104に移行する。
【0049】
ステップS103において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図7に示す処理を終了する。
【0050】
ステップS104において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が整地動作等の状態であると判定する。整地動作は、地面に堆積した土砂等をバケット9によって崩落させて地面を整える動作である。整地動作では、バケット9が地面に接触すると共に、アームシリンダ11の推力が掘削動作時よりも小さかったり、アーム7の動作方向が掘削方向の逆方向(ダンプ方向)だったりする。したがって、制御装置100は、ステップS102の判定を行うことによって、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか、整地動作の状態であるかを区別することができる。その後、制御装置100は、図7に示す処理を終了する。
【0051】
ステップS105において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が積込動作又は空掘削動作等の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図7に示す処理を終了する。
【0052】
以上のように、実施形態2の作業機械1において、フロント作業装置1cは、バケット9に連結されたアーム7と、アーム7を回動させるアームシリンダ11と、を有する。実施形態2の作業機械1は、アームシリンダ11の圧力を計測するアームシリンダ圧力計測装置21を備える。実施形態2の姿勢計測装置18は、アーム7の角度を計測するアーム角度計測装置15を有する。実施形態2の動作状態判定部104は、アームシリンダ圧力計測装置21の計測結果とアーム角度計測装置15の計測結果と距離演算部103の演算結果とに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0053】
これにより、実施形態2の作業機械1は、バケット9の位置と近接地点との距離Dだけでは区別が難しい整地動作と掘削動作とを明確に区別することができる。この結果、実施形態2の作業機械1は、整地動作時に掘削動作が行われていると判定するような誤判定を防止することができる。よって、実施形態2の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを、実施形態1よりも正確に判定することができる。また、ベンチ上からの掘削作業又は溝堀作業のように、下部走行体1aの接地面よりも低い高さの地面を掘削する場合には、地形情報から近接地点を演算することが難しい。実施形態2の作業機械1は、アームシリンダ11の圧力を用いて動作状態を判定することができるので、下部走行体1aの接地面よりも低い高さの地面を掘削する場合であっても、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを正確に判定することができる。
【0054】
[実施形態3]
図8図9を用いて、実施形態3の作業機械1について説明する。実施形態3の作業機械1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0055】
図8は、実施形態3の作業機械1が備える制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0056】
実施形態3の制御装置100は、車体傾斜角計測装置13により計測された車体1a,1bの傾斜角の変化量を演算する傾斜角変化量演算部107を更に備える。傾斜角変化量演算部107は、車体傾斜角計測装置13により計測された車体1a,1bの傾斜角と、ブーム角度計測装置14により計測されたブーム6の角度(対地角)とに基づいて、当該傾斜角の変化量を演算する。実施形態3の動作状態判定部104は、当該傾斜角の変化量と、バケット9の位置と近接地点との距離Dとに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0057】
図9は、図8に示す制御装置100によって行われる処理のフローチャートである。
【0058】
ステップS201において、制御装置100は、図7のステップS101と同様に、バケット9が接地しているか否かを判定する。バケット9が接地している場合、制御装置100は、ステップS202に移行する。バケット9が接地していない場合、制御装置100は、ステップS207に移行する。
【0059】
ステップS202において、制御装置100は、ブーム角度計測装置14により計測されたブーム6の角度(対地角)、及び、車体傾斜角計測装置13により計測された車体1a,1bの傾斜角に基づいて、ブーム6が動作しており、且つ、車体1a,1bの傾斜角が変化しているか否かを判定する。ブーム6が動作しており、且つ、車体1a,1bの傾斜角が変化している場合、制御装置100は、ステップS203に移行する。ブーム6が動作していない、又は、車体1a,1bの傾斜角が変化していない場合、制御装置100は、ステップS204に移行する。
【0060】
ステップS203において、制御装置100は、車体1a,1bの傾斜角の変化量(以下「傾斜角変化量」とも称する)の積分値を演算する。
【0061】
ステップS204において、制御装置100は、傾斜角変化量の積分値の絶対値が、予め定められた値以上であるか否かを判定する。傾斜角変化量の積分値の絶対値が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS205に移行する。傾斜角変化量の積分値の絶対値が予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS206に移行する。
【0062】
ステップS205において、制御装置100は、作業機械1の動作状態がジャッキアップ動作の状態であると判定する。ジャッキアップ動作は、バケット9を地面に押し付けた状態でブーム6を回動させて下部走行体1aの前部を地面から持ち上げる動作である。ジャッキアップ動作では、バケット9が地面に接触しブーム6が回動すると共に、車体1a,1bの傾斜角変化量が掘削動作時よりも大きくなる。したがって、制御装置100は、ステップS202の判定を行うことによって、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか、ジャッキアップ動作の状態であるかを区別することができる。その後、制御装置100は、図9に示す処理を終了する。
【0063】
ステップS206において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図9に示す処理を終了する。
【0064】
ステップS207において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が積込動作又は空掘削動作等の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図9に示す処理を終了する。
【0065】
以上のように、実施形態3の作業機械1において、フロント作業装置1cは、車体1a,1bに連結されたブーム6を有する。実施形態3の姿勢計測装置18は、車体1a,1bの傾斜角を計測する車体傾斜角計測装置13と、ブーム6の角度を計測するブーム角度計測装置14と、を有する。実施形態3の制御装置100は、車体傾斜角計測装置13の計測結果とブーム角度計測装置14の計測結果とに基づいて、当該傾斜角の変化量を演算する傾斜角変化量演算部107を有する。実施形態3の動作状態判定部104は、傾斜角変化量演算部107の演算結果と距離演算部103の演算結果とに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0066】
これにより、実施形態3の作業機械1は、バケット9の位置と近接地点との距離Dだけでは区別が難しいジャッキアップ動作と掘削動作とを明確に区別することができる。この結果、実施形態3の作業機械1は、ジャッキアップ動作時に掘削動作が行われていると判定するような誤判定を防止することができる。よって、実施形態3の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを、実施形態1よりも正確に判定することができる。
【0067】
[実施形態4]
図10図11を用いて、実施形態4の作業機械1について説明する。実施形態4の作業機械1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0068】
図10は、実施形態4の作業機械1が備える制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0069】
実施形態4の動作状態判定部104は、旋回角度計測装置17により計測された上部旋回体1bの旋回角度から演算される上部旋回体1bの旋回速度と、バケット9の位置と近接地点との距離Dとに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0070】
図11は、図10に示す制御装置100によって行われる処理のフローチャートである。
【0071】
ステップS301において、制御装置100は、図7のステップS101と同様に、バケット9が接地しているか否かを判定する。バケット9が接地している場合、制御装置100は、ステップS302に移行する。バケット9が接地していない場合、制御装置100は、ステップS305に移行する。
【0072】
ステップS302において、制御装置100は、旋回角度計測装置17により計測された上部旋回体1bの旋回角度から、上部旋回体1bの旋回速度を演算する。そして、制御装置100は、上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上であるか否かを判定する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS304に移行する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS303に移行する。
【0073】
ステップS303において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図11に示す処理を終了する。
【0074】
ステップS304において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が均し動作等の状態であると判定する。均し動作は、地面の凸部分にバケット9を押し付けて地面を平坦化する動作である。均し動作では、バケット9が地面に接触すると共に、上部旋回体1bの旋回速度が掘削動作時よりも速くなる。したがって、制御装置100は、ステップS302の判定を行うことによって、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか、均し動作の状態であるかを区別することができる。その後、制御装置100は、図11に示す処理を終了する。
【0075】
ステップS305において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が積込動作又は空掘削動作等の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図11に示す処理を終了する。
【0076】
以上のように、実施形態4の作業機械1は、作業機械1の下部走行体1aに取り付けられた上部旋回体1bを備える。実施形態4の姿勢計測装置18は、上部旋回体1bの旋回角度を計測する旋回角度計測装置17を有する。実施形態4の動作状態判定部104は、旋回角度計測装置17の計測結果から演算される上部旋回体1bの旋回速度と、距離演算部103の演算結果とに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0077】
これにより、実施形態4の作業機械1は、バケット9の位置と近接地点との距離Dだけでは区別が難しい均し動作と掘削動作とを明確に区別することができる。この結果、実施形態4の作業機械1は、均し動作時に掘削動作が行われていると判定するような誤判定を防止することができる。よって、実施形態4の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを、実施形態1よりも正確に判定することができる。
【0078】
[実施形態5]
図12図14を用いて、実施形態5の作業機械1について説明する。実施形態5の作業機械1において、実施形態1~4と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0079】
図12は、実施形態5の作業機械1の構成を示す図である。図13は、図12に示す制御装置100の機能的構成を示すブロック図である。
【0080】
実施形態5の作業機械1は、実施形態1~4の作業機械1を組み合わせて構成される。更に、実施形態5の作業機械1は、ブームシリンダ10の圧力を計測するブームシリンダ圧力計測装置22を備える。ブームシリンダ圧力計測装置22は、図12及び図13に示すように、ブームシリンダ10のボトム側の圧力を計測するブームボトム圧計測装置22aと、ブームシリンダ10のロッド側の圧力を計測するブームロッド圧計測装置22bと、を有する。ブームボトム圧計測装置22a及びブームロッド圧計測装置22bは、計測されたブームシリンダ10のボトム側の圧力及びロッド側の圧力を、それぞれ、制御装置100に送信する。
【0081】
実施形態5の動作状態判定部104は、ブームシリンダ10の圧力と、アームシリンダ11の推力と、アーム7の動作方向と、車体1a,1bの傾斜角の変化量と、上部旋回体1bの旋回速度と、フロント作業装置1cの各関節の角速度と、バケット9の位置と近接地点との距離Dとに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0082】
図14は、図13に示す制御装置100によって行われる処理のフローチャートである。
【0083】
ステップS401において、制御装置100は、図7のステップS101と同様に、バケット9が接地しているか否かを判定する。バケット9が接地している場合、制御装置100は、ステップS402に移行する。バケット9が接地していない場合、制御装置100は、ステップS412に移行する。
【0084】
ステップS402において、制御装置100は、図9のステップS202と同様に、ブーム6が動作しており、且つ、車体1a,1bの傾斜角が変化しているか否かを判定する。ブーム6が動作しており、且つ、車体1a,1bの傾斜角が変化している場合、制御装置100は、ステップS403に移行する。ブーム6が動作していない、又は、車体1a,1bの傾斜角が変化していない場合、制御装置100は、ステップS404に移行する。
【0085】
ステップS403において、制御装置100は、図9のステップS203と同様に、車体1a,1bの傾斜角変化量の積分値を演算する。
【0086】
ステップS404において、制御装置100は、図9のステップS204と同様に、傾斜角変化量の積分値の絶対値が、予め定められた値以上であるか否かを判定する。傾斜角変化量の積分値の絶対値が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS405に移行する。傾斜角変化量の積分値の絶対値が予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS406に移行する。
【0087】
ステップS405において、制御装置100は、図9のステップS205と同様に、作業機械1の動作状態がジャッキアップ動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0088】
ステップS406において、制御装置100は、図11のステップS302と同様に、上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上であるか否かを判定する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS407に移行する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS408に移行する。
【0089】
ステップS407において、制御装置100は、図11のステップS304と同様に、作業機械1の動作状態が均し動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0090】
ステップS408において、制御装置100は、図7のステップS102と同様に、アームシリンダ11の推力が、予め定められた値以上であり、且つ、アーム7が掘削方向に動作中であるか否かを判定する。アームシリンダ11の推力が予め定められた値以上であり、且つ、アーム7の動作方向が掘削方向である場合、制御装置100は、ステップS409に移行する。アームシリンダ11の推力が予め定められた値以上でなく、又は、アーム7の動作方向が掘削方向でない場合、制御装置100は、ステップS410に移行する。
【0091】
ステップS409において、制御装置100は、図7のステップS103と同様に、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0092】
ステップS410において、制御装置100は、角度計測装置14~16により計測されたフロント作業装置1cの各関節の角度から、当該各関節の角度の時間微分値であるフロント作業装置1cの各関節の角速度を演算する。そして、制御装置100は、フロント作業装置1cの各関節の角速度の絶対値の少なくとも1つが予め定められた値以上であるか否かを判定する。各関節の角速度の絶対値の少なくとも1つが予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS411に移行する。各関節の角速度の絶対値の少なくとも1つが予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS413に移行する。
【0093】
ステップS411において、制御装置100は、図7のステップS104と同様に、作業機械1の動作状態が整地動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0094】
ステップS412において、制御装置100は、角度計測装置14~16により計測されたフロント作業装置1cの各関節の角度から、当該各関節の角度の時間微分値であるフロント作業装置1cの各関節の角速度を演算する。そして、制御装置100は、フロント作業装置1cの全ての関節の角速度の絶対値が予め定められた値以下であるか否かを判定する。全ての関節の角速度の絶対値が予め定められた値以下である場合、制御装置100は、ステップS413に移行する。全ての関節の角速度の絶対値が予め定められた値以下でない場合、制御装置100は、ステップS414に移行する。
【0095】
ステップS413において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が待機状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0096】
ステップS414において、制御装置100は、図11のステップS302と同様に、上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上であるか否かを判定する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS415に移行する。上部旋回体1bの旋回速度の絶対値が予め定められた値以上でない場合、制御装置100は、ステップS418に移行する。
【0097】
ステップS415において、制御装置100は、ブームシリンダ圧力計測装置22により計測されたブームシリンダ10のボトム側の圧力又はロッド側の圧力が、予め定められた値以上であるか否かを判定する。ブームシリンダ10のボトム側の圧力又はロッド側の圧力が予め定められた値以上である場合、制御装置100は、ステップS416に移行する。ブームシリンダ10のボトム側の圧力又はロッド側の圧力が予め定められた値以上でない場合、ステップS417に移行する。なお、制御装置100は、ステップS415の判断基準となる予め定めた値を、フロント作業装置1cの各関節の角度の関数としてもよい。
【0098】
ステップS416において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が積込動作の状態であると判定する。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0099】
ステップS417において、制御装置100は、作業機械1の動作状態がリーチング動作の状態であると判定する。リーチング動作は、積込動作を行った作業機械1がバケット9からダンプトラック等に積荷を放出する放土動作を終え、上部旋回体1bを旋回させて、次の掘削開始位置までバケット9を空中で移動させる動作である。リーチング動作では、空荷状態のバケット9を移動させるので、ブームシリンダ10のボトム側の圧力又はロッド側の圧力が積込動作よりも小さくなる。したがって、制御装置100は、ステップS415の判定を行うことによって、作業機械1の動作状態が積込動作の状態であるか、リーチング動作の状態であるかを区別することができる。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0100】
ステップS418において、制御装置100は、作業機械1の動作状態が空掘削動作の状態であると判定する。空掘削動作では、積込動作時又はリーチング動作時のように上部旋回体1bの素早い旋回を伴わないので、上部旋回体1bの旋回速度が積込動作時又はリーチング動作時よりも遅くなる。したがって、制御装置100は、ステップS414の判定を行うことによって、作業機械1の動作状態が空掘削動作の状態であるか、積込動作又はリーチング動作の状態であるかを区別することができる。その後、制御装置100は、図14に示す処理を終了する。
【0101】
以上のように、実施形態5の作業機械1は、ブームシリンダ10の圧力と、アームシリンダ11の推力と、アーム7の動作方向と、車体1a,1bの傾斜角の変化量と、上部旋回体1bの旋回速度と、フロント作業装置1cの各関節の角速度と、バケット9の位置と近接地点との距離Dとに基づいて、動作状態が掘削動作の状態であるか否かを判定する。
【0102】
これにより、実施形態5の作業機械1は、ジャッキアップ動作、均し動作、整地動作、掘削動作、積込動作、リーチング動作及び空掘削動作のそれぞれを明確に区別することができる。これにより、実施形態5の作業機械1は、掘削動作以外の動作時に掘削動作が行われていると判定するような誤判定を防止することができる。よって、実施形態5の作業機械1は、作業機械1の動作状態が掘削動作の状態であるか否かを、実施形態1~4よりも正確に判定することができる。加えて、実施形態5の作業機械1は、掘削動作以外の動作についても明確に区別することができるので、各アクチュエータの動作が作業機械1の動作状態に更に適合した動作となるよう、各アクチュエータの動作を更に適切に制御することができる。加えて、実施形態5の作業機械1は、作業機械1の生産性を更に正確に分析することができる。
【0103】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更を行うことができる。本発明は、或る実施形態の構成を他の実施形態の構成に追加したり、或る実施形態の構成を他の実施形態と置換したり、或る実施形態の構成の一部を削除したりすることができる。
【符号の説明】
【0104】
1…作業機械、1a,1b…車体、1a…下部走行体、1b…上部旋回体、5…操作装置、6…ブーム、7…アーム、9…バケット、10…ブームシリンダ、11…アームシリンダ、12…バケットシリンダ、13…車体傾斜角計測装置、14…ブーム角度計測装置、17…旋回角度計測装置、18…姿勢計測装置、19…地形計測装置、21…アームシリンダ圧力計測装置、100…制御装置、101…バケット位置演算部、102…近接地点演算部、103…距離演算部、104…動作状態判定部、105…車体制御部、106…生産性分析部、107…傾斜角変化量演算部、G…地形情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14