(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137335
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】アナログ・デジタル変換装置
(51)【国際特許分類】
H03M 1/10 20060101AFI20240927BHJP
H03M 1/08 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
H03M1/10 A
H03M1/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048823
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北 幸宏
【テーマコード(参考)】
5J022
【Fターム(参考)】
5J022AA02
5J022BA02
5J022CG01
(57)【要約】
【課題】アナログ電圧をデジタル値に変換して出力するアナログ・デジタル変換装置において、回路規模を抑制しつつ出力されるデジタル値の精度を確保する。
【解決手段】アナログ・デジタル変換装置は、一定電圧を出力するBGR回路と、負荷に供給される電圧を出力するREG回路と、REG回路の出力電圧が基準電圧として入力されるADCと、BGR回路の出力電圧と、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧と、を選択的にADCに入力する選択部と、補正部を有する。補正部は、REG回路の出力電圧が標準レベルである場合のBGR回路のデジタル値である第1のデジタル値と、アナログ電圧をADCに入力する直前のBGR回路の出力電圧のデジタル値である第2のデジタル値に基づいて、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧のデジタル値である第3のデジタル値を補正する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定電圧を出力するバンドギャップリファレンス回路と、
負荷に供給される電圧を出力するレギュレータ回路と、
前記レギュレータ回路の出力電圧が基準電圧として入力されるアナログ・デジタル変換器と、
前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧と、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧と、を選択的に前記アナログ・デジタル変換器に入力する選択部と、
前記レギュレータ回路の出力電圧が標準レベルである場合に、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第1のデジタル値と、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力する直前に前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第2のデジタル値に基づいて、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第3のデジタル値を補正する補正部と、
を含むアナログ・デジタル変換装置。
【請求項2】
前記補正部は、
前記第1のデジタル値を取得し、
前記第2のデジタル値を取得し、
前記第2のデジタル値を取得した直後に前記第3のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値及び前記第2のデジタル値に基づいて補正係数を導出し、
前記補正係数を用いて前記第3のデジタル値を補正する
請求項1に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【請求項3】
前記補正係数は、前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値の比に相当する
請求項2に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【請求項4】
前記第2のデジタル値が取得された直後に、前記アナログ電圧が前記アナログ・デジタル変換器に入力されるように前記選択部を制御する制御部を更に含む
請求項1に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記レギュレータ回路の出力電圧が所定範囲内にある場合に、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧が前記アナログ・デジタル変換器に入力されるように前記選択部を制御する
請求項4に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、アナログ・デジタル変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ電圧をデジタル値に変換して出力するアナログ・デジタル変換装置に関する技術として、以下の技術が知られている。例えば、特許文献1には、安定基準電流源と、安定基準電流源を電圧信号に変換する内部抵抗器と、電圧信号を受け取り、デジタル出力を提供するアナログ・デジタル変換器とを含む電子同調回路が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アナログ・デジタル変換器は、基準電圧を分圧したものとアナログ電圧とを逐次比較した結果に基づいてデジタル値を出力する。そのため、基準電圧は電圧レベルが安定していることが要求される。アナログ・デジタル変換器を備えた従来の装置においては、安定した基準電圧を得るために専用の基準電圧生成回路が設けられている。基準電圧生成回路の出力には、電圧レベルを安定化させるために、容量が比較的大きいキャパシタが外付けされる。
【0005】
回路規模を小さくするために、IC(Integrated Circuit)内部にアナログ・デジタル変換器と共に設けられるレギュレータ回路の出力電圧をアナログ・デジタル変換器の基準電圧として用いることが考えられる。しかしながら、レギュレータ回路の出力電圧は、一般的には負荷に供給されるため、負荷の動作状態に応じて変動する。したがって、レギュレータ回路の出力電圧をアナログ・デジタル変換器の基準電圧として用いた場合には、アナログ・デジタル変換器から出力されるデジタル値の精度が低下する。
【0006】
開示の技術は、上記の点に鑑みてなされたものであり、アナログ電圧をデジタル値に変換して出力するアナログ・デジタル変換装置において、回路規模を抑制しつつ出力されるデジタル値の精度を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術に係るアナログ・デジタル変換装置は、一定電圧を出力するバンドギャップリファレンス回路と、負荷に供給される電圧を出力するレギュレータ回路と、前記レギュレータ回路の出力電圧が基準電圧として入力されるアナログ・デジタル変換器と、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧と、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧と、を選択的に前記アナログ・デジタル変換器に入力する選択部と、前記レギュレータ回路の出力電圧が標準レベルである場合に、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第1のデジタル値と、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力する直前に前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第2のデジタル値に基づいて、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第3のデジタル値を補正する補正部と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、アナログ電圧をデジタル値に変換して出力するアナログ・デジタル変換装置において、回路規模を抑制しつつ出力されるデジタル値の精度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】開示の技術の実施形態に係る制御部が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図3】開示の技術の実施形態に係る補正部が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図4】比較例に係るアナログ・デジタル変換装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、開示の技術の実施形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。なお、各図面において同一又は等価な構成要素及び部分には同一の参照符号を付与し、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は、開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10の構成の一例を示す図である。アナログ・デジタル変換装置10は、半導体基板に設けられた集積回路によって構成されている。アナログ・デジタル変換装置10は、バンドギャップリファレンス回路11(以下、BGR回路11と表記する)、レギュレータ回路12(以下、REG回路12と表記する)、アナログ・デジタル変換器13(以下、ADC13と表記する)、選択部14、補正部15及び制御部16を有する。
【0012】
BGR回路11は、シリコンのバンドギャップ電圧を利用して、電源電圧、温度、プロセスに依存しない一定電圧VBGRを生成する回路である。BGR回路11は、バンドギャップリファレンス回路の構成として一般的に知られている構成を有する。BGR回路11は、例えば、抵抗素子、2つのダイオード及び演算増幅回路(いずれも図示せず)を含み、ダイオード(PN接合)の負の温度特性を、2つのダイオードに同じ電流を流したときに発生する電圧差ΔVBEの正の温度特性によってキャンセルするように動作することで電圧VBGRを生成する。
【0013】
REG回路12は、負荷20に供給される電圧VREGを出力する。REG回路12は、BGR回路11の出力電圧VBGRを基準電圧として動作するリニアレギュレータであってもよい。REG回路12は、例えば、電圧VREGを出力するドライバ(図示せず)と、電圧VREGの分圧がBGR回路11の出力電圧VBGRに一致するようにドライバを駆動するエラーアンプ(図示せず)とを含み得る。
【0014】
負荷20は、アナログ・デジタル変換装置10の負荷端子17に接続される外付け回路である。負荷端子17には、REG回路12の出力電圧VREGを安定化させるためのキャパシタ21が接続されている。しかしながら、REG回路12の出力電圧VREGは、負荷20の動作状態に応じて変化する。電圧レベルが変動し得るREG回路12の出力電圧VREGは、ADC13の基準電圧として利用される。
【0015】
選択部14は、BGR回路11の出力電圧VBGRと、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAと、を選択的にADC13に入力する。選択部14は、一端がBGR回路11の出力端に接続され、他端がADC13の入力端に接続されたスイッチ50Aと、一端がアナログ電圧VAが入力されるアナログ入力端子19に接続され、他端がADC13の入力端に接続されたスイッチ50Bと、を有する。スイッチ50A及び50Bは、それぞれ制御部16から供給される制御信号に応じてオンオフする。スイッチ50Aがオン状態、スイッチ50Bがオフ状態に制御されることで、BGR回路11の出力電圧VBGRがADC13に入力され、スイッチ50Aがオフ状態、スイッチ50Bがオン状態に制御されることで、アナログ電圧VAがADC13に入力される。
【0016】
ADC13は、例えば、一般的な逐次比較型のアナログ・デジタル変換器である。上記したように、ADC13は、REG回路12の出力電圧VREGを基準電圧として利用する。ADC13は、選択部14を介して入力端に入力される電圧を、REG回路12の出力電圧VREGの分圧と逐次比較し、比較結果に応じたデジタル値を出力する。ADC13の入力端には、選択部14によって、BGR回路11の出力電圧VBGR及びデジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAが選択的に入力される。
【0017】
ADC13は、電圧レベルが変動し得るREG回路12の出力電圧VREGを基準電圧として利用するため、ADC13から出力されるデジタル値は正確性を欠いている場合がある。補正部15は、ADC13から出力されるアナログ電圧VAのデジタル値を、より正確な値に補正する機能を有する。
【0018】
補正部15は、REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合に、BGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値(以下、第1のデジタル値D1と称する)を取得する。すなわち、第1のデジタル値D1は、標準レベルの電圧VREGが基準電圧としてADC13に供給されているときの電圧VBGRのデジタル値である。REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合とは、例えば、負荷20が動作を停止している状態又は負荷20が定常状態にあることにより、REG回路12の出力電圧VREGのレベルが標準的な状態にあることを意味する。補正部15は、取得した第1のデジタル値D1をメモリ(図示せず)に保存する。なお、第1のデジタル値D1は、アナログ・デジタル変換装置10の設計によって定まる値であり、変動することも想定されないので、シミュレーション又は測定等によって予め取得してメモリ(図示せず)に保存しておくことも可能である。
【0019】
補正部15は、アナログ電圧VAをADC13に入力する直前に、BGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値(以下、第2のデジタル値D2と称する)を取得する。すなわち、第2のデジタル値D2は、アナログ電圧VAをADC13に入力する直前のタイミングにおける電圧VREGが基準電圧としてADC13に供給されているときの電圧VBGRのデジタル値である。アナログ電圧VAをADC13に入力する直前のタイミングにおける電圧VREGの電圧レベルは、標準レベルから変動している可能性がある。補正部15は、取得した第2のデジタル値D2をメモリ(図示せず)に保存する。
【0020】
第1のデジタル値D1及び第2のデジタル値D2は、いずれもREG回路12の出力電圧VREGをADC13の基準電圧として利用した場合におけるBGR回路11の出力電圧VBGRのデジタル値であるが、基準電圧として供給される電圧VREGのレベルが互いに異なっている可能性がある。
【0021】
デジタル値D1は下記の(1)式によって表すことができ、デジタル値D2は下記の(2)式によって表すことができる。(1)式においてVREG1は、電圧レベルが標準レベルにあるときのREG回路12の出力電圧VREGである。(2)式においてVREG2は、アナログ電圧VAをADC13に入力する直前のタイミングにおけるREG回路12の出力電圧VREGである。(1)式及び(2)式においてNは、デジタル値D1及びD2のビット数であり、ADC13の分解能に相当する。
D1=VBGR/VREG1×2N ・・・(1)
D2=VBGR/VREG2×2N ・・・(2)
【0022】
補正部15は、第2のデジタル値D2を取得した直後に、アナログ電圧VAをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値(以下第3のデジタル値D3と称する)を取得する。第2のデジタル値D2及び第3のデジタル値D3の取得タイミングの時間差は小さいことから、ADC13が第3のデジタル値D3を出力する際にADC13に基準電圧として供給される電圧VREGのレベルは、ADC13が第2のデジタル値D2を出力する際にADC13に基準電圧として供給される電圧VREGのレベルと略同じとみなせる。したがって、デジタル値D3は、下記の(3)式によって表すことができる。
D3=VA/VREG2×2N ・・・(3)
【0023】
補正部15は、第1のデジタル値D1及び第2のデジタル値D2に基づいて、第3のデジタル値D3を補正する。具体的には、補正部15は、第1のデジタル値D1と第2のデジタル値D2の比(D1/D2)に相当する補正係数Cを導出する。すなわち補正係数Cは、下記の(4)式によって表すことができる。
C=D1/D2=VREG2/VREG1 ・・・(4)
【0024】
補正部15は、補正係数Cを用いた下記の(5)式によって表される演算を行うことにより、補正後のデジタル値D3*を導出する。補正部15によって導出された補正後のデジタル値D3*は、デジタル出力端子18から出力される。補正後のデジタル値D3*は、電圧レベルが標準レベルにあるときのREG回路12の出力電圧VREGが、基準電圧としてADC13に供給されている場合におけるアナログ電圧VAのデジタル値であり、アナログ電圧VAの適正なデジタル値として想定される値である。
D3*=C×D3=VA/VREG1×2N ・・・(5)
【0025】
制御部16は、選択部14を構成するスイッチ50A及び50Bのオンオフを制御する。制御部16は、REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合に、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御する。これにより、REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合に、BGR回路11の出力電圧VBGRがADC13に入力され、補正部15において第1のデジタル値D1が取得される。
【0026】
制御部16は、REG回路12の出力電圧VREGを監視しており、REG回路12の出力電圧VREGが所定範囲内にある場合に、電圧VREGが標準レベルであると判定してスイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御してもよい。また、制御部16は、負荷20の動作状態を監視しており、負荷20の動作状態が特定の状態(例えば、停止状態又は定常状態)にある場合に、電圧VREGが標準レベルであると判定してスイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御してもよい。また、制御部16は、上位システムからの指令又は操作入力に基づいて、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御してもよい。
【0027】
制御部16は、アナログ電圧VAをADC13に入力する直前に、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御する。これにより、アナログ電圧VAをADC13に入力する直前に、BGR回路11の出力電圧VBGRがADC13に入力され、補正部15において第2のデジタル値D2が取得される。制御部16は、アナログ電圧VAがアナログ入力端子19に入力された場合に、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御してもよい。
【0028】
制御部16は、補正部15が第2のデジタル値D2を取得した直後に、スイッチ50Aをオフ状態、スイッチ50Bをオン状態に制御する。これにより、第2のデジタル値D2が取得された直後に、アナログ電圧VAがADC13に入力され、補正部15において第3のデジタル値D3が取得される。
【0029】
制御部16は、補正部15における各デジタル値の取得がスイッチ50A及び50Bの動作と連動するように、補正部15の動作を制御する。なお、補正部15及び制御部16は、共通のCPU(Central Processing Unit)又は互いに異なるCPUを含んで構成されていてもよい。
【0030】
図2は、制御部16が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS1において、制御部16は、REG回路12の出力電圧V
REGが標準レベルであるか否かを判定する。制御部16は、REG回路12の出力電圧V
REGが所定範囲内にある場合に、REG回路12の出力電圧V
REGが標準レベルであると判定してもよい。また、制御部16は、負荷20の動作状態を監視しており、負荷20の動作状態が特定の状態(例えば、停止状態又は定常状態)にある場合に、REG回路12の出力電圧V
REGが標準レベルであると判定してもよい。
【0031】
ステップS2において制御部16は、BGR回路11の出力電圧VBGRがADC13に入力されるように選択部14を制御する。すなわち、制御部16は、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御する。ステップS3において制御部16は、第1のデジタル値D1を取得すべき指示を補正部15に供給する。ステップS4において制御部16は、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAがアナログ入力端子19に入力されたか否かを判定する。
【0032】
ステップS5において制御部16は、BGR回路11の出力電圧VBGRがADC13に入力されるように選択部14を制御する。すなわち、制御部16は、スイッチ50Aをオン状態、スイッチ50Bをオフ状態に制御する。ステップS6において制御部16は、第2のデジタル値D2を取得すべき指示を補正部15に供給する。
【0033】
ステップS7において制御部16は、アナログ電圧VAがADC13に入力されるように選択部14を制御する。すなわち、制御部16は、スイッチ50Bをオン状態、スイッチ50Aをオフ状態に制御する。ステップS7の処理は、ステップS6の処理の完了直後に実行される。ステップS8において制御部16は、第3のデジタル値D3を取得すべき指示を補正部15に供給する。
【0034】
なお、補正部15における補正処理において、第1のデジタル値D1として予め取得された設計値又は測定値等を使用する場合には、ステップS1からステップS3までの処理を省略することが可能である。
【0035】
図3は、補正部15が実行する処理の流れの一例を示すフローチャートである。ステップS11において補正部15は、
図2のステップS3における制御部16の指示に基づいて、ADC13から出力されるデジタル値(すなわち、REG回路12の出力電圧V
REGが標準レベルである場合に、BGR回路11の出力電圧V
BGRをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値)を第1のデジタル値D1として取得し、これをメモリ(図示せず)に保存する。なお、第1のデジタル値D1として予め取得された設計値又は測定値等を使用する場合には、本ステップにおける処理を省略することが可能である。
【0036】
ステップS12において補正部15は、
図2のステップS6における制御部16の指示に基づいて、ADC13から出力されるデジタル値(すなわち、アナログ電圧V
AをADC13に入力する直前に、BGR回路11の出力電圧V
BGRをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値)を第2のデジタル値D2として取得し、これをメモリ(図示せず)に保存する。
【0037】
ステップS13において補正部15は、
図2のステップS8における制御部16の指示に基づいて、ADC13から出力されるデジタル値(すなわち、第2のデジタル値D2が取得された直後に、アナログ電圧V
AをADC13に入力することによりADC13から出力されるデジタル値)を第3のデジタル値D3として取得し、これをメモリ(図示せず)に保存する。
【0038】
ステップS14において補正部15は、ステップS11において取得した第1のデジタル値D1及びステップS12において取得した第2のデジタル値D2を用いた(4)式に示される演算を行うことにより補正係数Cを導出する。
【0039】
ステップS15において補正部15は、ステップS14において導出した補正係数Cを用いて、ステップS13において取得した第3のデジタル値D3を補正する。すなわち、補正部15は、第3のデジタル値D3について(5)式に示される演算を行うことにより、補正後の第3のデジタル値D3*を導出する。
【0040】
図4は比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10Xの構成の一例を示す図である。比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10Xは、基準電圧生成回路30(以下、REF回路30と表記する)を有する。REF回路30の出力電圧V
REFは、ADC13の基準電圧として利用される。REF回路30の出力電圧V
REFを安定化させるために、REF回路30の出力端に接続された接続端子23には、外付けのキャパシタ22が接続される。REF回路30の出力電圧V
REFは、負荷には供給されない。すなわち、REF回路30はADC13専用の回路である。これにより、REF回路30の出力電圧V
REFの変動が抑制されるので、ADC13からは、常に正確なデジタル値が出力される。しかしながら、比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10Xによれば、ADC13専用のREF回路30及び外付けのキャパシタ22を必要とするので回路規模が大きくなる。
【0041】
一方、開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10は、一定電圧VBGRを出力するBGR回路11と、負荷20に供給される電圧VREGを出力するREG回路12と、REG回路12の出力電圧VREGが基準電圧として入力されるADC13と、BGR回路11の出力電圧VBGRと、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAと、を選択的にADC13に入力する選択部14と、補正部15を有する。補正部15は、REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合に、BGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力される第1のデジタル値D1を取得する。補正部15は、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAをADC13に入力する直前にBGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力される第2のデジタル値D2を取得する。補正部15は、第1のデジタル値D1及び第2のデジタル値D2に基づいて、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAをADC13に入力することによりADC13から出力される第3のデジタル値D3を補正する。
【0042】
開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10によれば、ADC13に供給される基準電圧は、REG回路12の出力電圧VREGが利用される。したがって、比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10Xが有するADC13専用のREF回路30及び外付けのキャパシタ22が不要となるので、比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10Xよりも回路規模を小さくすることができる。すなわち、開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10における選択部14及び補正部15を合わせた回路は、比較例に係るアナログ・デジタル変換装置10XにおけるREF回路30及び外付けのキャパシタ22を合わせた回路よりも、回路規模を小さくすることができる。
【0043】
一方、REG回路12の出力電圧VREGは、負荷20にも供給されるので電圧レベルが変動し得る。しかしながら、開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10によれば、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧VAをADC13に入力することによりADC13から出力される第3のデジタル値D3は、REG回路12の出力電圧VREGが標準レベルである場合に、BGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力される第1のデジタル値D1及びアナログ電圧VAをADC13に入力する直前にBGR回路11の出力電圧VBGRをADC13に入力することによりADC13から出力される第2のデジタル値D2に基づいて補正される。この補正は、REG回路12の出力電圧VREGの変動による影響を除去するものである。すなわち、開示の技術の実施形態に係るアナログ・デジタル変換装置10によれば、回路規模を抑制しつつ出力されるデジタル値の精度を確保することが可能となる。
【0044】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
一定電圧を出力するバンドギャップリファレンス回路と、
負荷に供給される電圧を出力するレギュレータ回路と、
前記レギュレータ回路の出力電圧が基準電圧として入力されるアナログ・デジタル変換器と、
前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧と、デジタル値への変換対象であるアナログ電圧と、を選択的に前記アナログ・デジタル変換器に入力する選択部と、
前記レギュレータ回路の出力電圧が標準レベルである場合に、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第1のデジタル値と、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力する直前に前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第2のデジタル値に基づいて、前記アナログ電圧を前記アナログ・デジタル変換器に入力することにより前記アナログ・デジタル変換器から出力される第3のデジタル値を補正する補正部と、
を含むアナログ・デジタル変換装置。
【0045】
(付記2)
前記補正部は、
前記第1のデジタル値を取得し、
前記第2のデジタル値を取得し、
前記第2のデジタル値を取得した直後に前記第3のデジタル値を取得し、
前記第1のデジタル値及び前記第2のデジタル値に基づいて補正係数を導出し、
前記補正係数を用いて前記第3のデジタル値を補正する
付記1に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【0046】
(付記3)
前記補正係数は、前記第1のデジタル値と前記第2のデジタル値の比に相当する
付記2に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【0047】
(付記4)
前記第2のデジタル値が取得された直後に、前記アナログ電圧が前記アナログ・デジタル変換器に入力されるように前記選択部を制御する制御部を更に含む
付記1から付記3のいずれか1つに記載のアナログ・デジタル変換装置。
【0048】
(付記5)
前記制御部は、前記レギュレータ回路の出力電圧が所定範囲内にある場合に、前記バンドギャップリファレンス回路の出力電圧が前記アナログ・デジタル変換器に入力されるように前記選択部を制御する
付記4に記載のアナログ・デジタル変換装置。
【符号の説明】
【0049】
10、10X アナログ・デジタル変換装置
11 バンドギャップリファレンス回路
12 レギュレータ回路
13 アナログ・デジタル変換器
14 選択部
15 補正部
16 制御部
20 負荷