(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137340
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】細胞作製管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/10 20120101AFI20240927BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048830
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】517123221
【氏名又は名称】アイ ピース,インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515238909
【氏名又は名称】田邊 剛士
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】田邊 剛士
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L050CC11
(57)【要約】
【課題】利用者が、多能性幹細胞の製造・保存の依頼をしやすい仕組みを提供する。
【解決手段】プロセッサが、ユーザ端末から受信したユーザの個人情報に基づいて、ユーザのアカウントを作成し、アカウントに紐づけて前記個人情報を保存するアカウント作成工程と、プロセッサが、ユーザ端末に、契約書データと、契約書への電子署名を求める通知を送信する契約書送信工程と、プロセッサが、ユーザの検体採取の予約に必要な情報を取得し、検体採取の日時と場所を決定する検体採取予約工程と、プロセッサが、検体採取の後に、第1の外部サーバから検体検査の結果を受信し、検体検査の結果に基づいて、細胞作製の開始日を決定する細胞作製スケジュール決定工程と、プロセッサが、細胞作製の開始日を、第2の外部サーバに送信する細胞作製スケジュール送信工程と、プロセッサが、細胞作製の開始日の後、第2の外部サーバから受信した細胞の作製状況に関する情報をユーザ端末に送信する細胞作製状況提供工程と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサが、ユーザ端末から受信したユーザの個人情報に基づいて、ユーザのアカウントを作成し、前記アカウントに紐づけて前記個人情報を保存するアカウント作成工程と、
プロセッサが、前記ユーザ端末に、契約書データと、契約書への電子署名を求める通知を送信する契約書送信工程と、
プロセッサが、ユーザの検体採取の予約に必要な情報を取得し、検体採取の日時と場所を決定する検体採取予約工程と、
プロセッサが、前記検体採取の後に、第1の外部サーバから検体検査の結果を受信し、前記検体検査の結果に基づいて、細胞作製の開始日を決定する細胞作製スケジュール決定工程と、
プロセッサが、前記細胞作製の開始日を、第2の外部サーバに送信する細胞作製スケジュール送信工程と、
プロセッサが、前記細胞作製の開始日の後、前記第2の外部サーバから受信した細胞の作製状況に関する情報を前記ユーザ端末に送信する細胞作製状況提供工程と、を備えた、細胞作製管理方法。
【請求項2】
プロセッサが、前記ユーザの端末を介して、インフォームドコンセントに関する説明の予約を受け付ける同意書説明予約工程を備え、
前記インフォームドコンセントに関する説明の完了後に同意書への電子署名が確認されたら、前記検体採取予約工程が実行される、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項3】
プロセッサが、前記インフォームドコンセントに関する説明の完了後、所定の検討期間経過後に、前記同意書への電子署名を促す通知を行う、請求項2に記載の細胞作製管理方法。
【請求項4】
前記検体採取予約工程では、
前記ユーザのアカウントに紐づけて管理されている居住地または所在置からもっとも近い検体採取の場所および最も早い日程で予約が取れる場所の少なくとも一方を提示する、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項5】
プロセッサが、ユーザのアカウントの作成または前記契約書への電子署名が確認されたら、第1の請求書を作成して前記ユーザの端末に送信する請求書送信工程を備え、
前記第1の請求書に対する支払いが確認されたら、前記検体採取予約工程を実行される、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項6】
前記第2の外部サーバから受信した細胞の作製状況に関する情報は、作製中の細胞の画像、保管の状況、および作業風景の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項7】
プロセッサが、前記第2の外部サーバから受信した細胞の作製状況に関する情報に基づいて、細胞の作製完了時期を予測し、当該時期を前記ユーザ端末に通知する細胞作製完了時期提供工程を備えた、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項8】
前記細胞作製スケジュール決定工程では、
細胞の作製完了時期を設定し、当該作成完了時期に合わせて、前記細胞作製の開始日を決定する請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項9】
プロセッサが、前記ユーザの健康診断の結果に関する情報を取得する工程を備え、
前記細胞作製スケジュール決定工程は、
前記健康診断の結果に関する情報に基づいて、前記細胞の作製完了時期を設定する、請求項8に記載の細胞作製管理方法。
【請求項10】
前記細胞作製スケジュール決定工程は、
作製する細胞の量、種類、および作成した細胞の保存期間のうちの少なくとも1つを決定する請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項11】
プロセッサが、前記ユーザ端末を介して、付帯サービスの予約を受け付け、
前記検体採取予約工程は、
当該付帯サービスの予約日と提供場所に基づいて、検体採取の日時と場所を決定する請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項12】
プロセッサが、前記契約書への電子署名が確認されたら、病理学的検査の日時と場所を通知し、
前記病理学的検査の結果に基づいて、前記検体採取予約工程を実行するか否かを判断する、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【請求項13】
プロセッサが、前記ユーザ端末を介して、細胞の作製に用いた培養液を用いた美容液の要否を受け付け、
前記ユーザの要求に応じて、前記美容液の提供量および提供時期の少なくとも一方を決定する、請求項1に記載の細胞作製管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞作製管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、将来の健康リスクに備え、自己の血液から多能性幹細胞を製造するシステムが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、多能性幹細胞の製造や保存は専門性が高く費用も高額であるため、一般の人にとっては、自身の多能性幹細胞を製造し、保存しておくために具体的な行動を取ることは敷居が高かった。
【0005】
本発明の目的は、利用者が、多能性幹細胞の製造・保存の依頼をしやすい仕組みを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る細胞作製管理方法は、プロセッサが、ユーザ端末から受信したユーザの個人情報に基づいて、ユーザのアカウントを作成し、前記アカウントに紐づけて前記個人情報を保存するアカウント作成工程と、プロセッサが、前記ユーザ端末に、契約書データと、契約書への電子署名を求める通知を送信する契約書送信工程と、プロセッサが、ユーザの検体採取の予約に必要な情報を取得し、検体採取の日時と場所を決定する検体採取予約工程と、プロセッサが、前記検体採取の後に、第1の外部サーバから検体検査の結果を受信し、前記検体検査の結果に基づいて、細胞作製の開始日を決定する細胞作製スケジュール決定工程と、プロセッサが、前記細胞作製の開始日を、第2の外部サーバに送信する細胞作製スケジュール送信工程と、プロセッサが、前記細胞作製の開始日の後、前記第2の外部サーバから受信した細胞の作製状況に関する情報を前記ユーザ端末に送信する細胞作製状況提供工程と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、利用者が、多能性幹細胞の製造・保存の依頼をしやすい仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態による、細胞作製管理システム1の構成を示すブロック図。
【
図2】本発明の実施の形態による、細胞作製管理方法の流れを説明するシーケンス図。
【
図3】本発明の実施の形態による、細胞作製管理方法の流れを説明するシーケンス図。
【
図4】本発明の実施の形態による、細胞作製管理方法の流れを説明するシーケンス図。
【
図5】本発明の実施の形態による、細胞作製管理方法の流れを説明するシーケンス図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る細胞作製管理システム1の構成を示す図である。細胞作製管理システム1は、ウェブサイト(ECサイト)を介して顧客(ユーザ)にiPS細胞(多能性幹細胞)のバンキングサービスを提供する。
図1に示すように、細胞作製管理システム1は、管理サーバ10と、ユーザ端末20と、管理者端末30、検査機関のサーバ(第1の外部サーバ)40、細胞製造機関のサーバ(第2の外部サーバ)50を含んでいる。管理サーバ10は、ユーザ端末20、管理者端末30、検査機関のサーバ40、細胞製造機関のサーバ50と、通信ネットワークNを介して接続されている。通信ネットワークNは、例えば、インターネット、LAN、専用線、電話回線、企業内ネットワーク、移動体通信網、ブルートゥース(登録商標)、WiFi(Wireless Fidelity)、その他の通信回線、それらの組み合わせ等のいずれであってもよく、有線であるか無線であるかを問わない。
【0010】
管理サーバ10は、iPS細胞のバンキングサービスを提供するECサイトを運営する企業等のサーバである。具体的には、ECサイトを介して顧客からiPS細胞(多能性幹細胞)の作製依頼を受け付け、製造とバンキング(保存、管理)、製造した細胞の提供等を行うサービスを管理する。情報処理サーバ10は、汎用的なコンピュータであり、1台のコンピュータで構成されていてもよいし、通信ネットワークN上に分散する複数のコンピュータから構成されてもよい。情報処理サーバ10は、制御装置(プロセッサ)11と、記憶装置12を備えている。制御装置11は、ハードウェアとして、CPU、ROMやRAM等のメモリ、入力インタフェース、出力インタフェース、通信インタフェース及びこれらを結ぶバス等を備えている。制御装置11は、CPUがROM等に格納されたプログラムを実行することにより各種機能を実現する。記憶装置12は、ハードディスクドライブ等である。
【0011】
記憶装置12には、ユーザ情報データベースDB1が記憶されている。ユーザ情報データベースDB1には、細胞バンキングサービスの利用を契約している顧客ユーザの個人情報(氏名、住所、生年月日等)、メールアドレス等の他、契約に関する情報が記憶されている。
【0012】
ユーザ端末20は、iPS細胞のバンキングサービスを利用するユーザが使用する端末であり、スマートフォン、タブレット端末、ノートPC(Personal Computer)など、通信ネットワークNを介して管理サーバ10とデータの授受が可能なあらゆる端末装置を利用することができる。
図1に示すように、ユーザ端末20は、プロセッサ21、各種操作ボタンやタッチパネルなどの入力装置22、液晶ディスプレイなどの表示装置23、通信ネットワークNに接続するための通信インタフェース24、ディスクドライブまたは半導体メモリ(ROM、RAMなど)などの記憶資源25を備えている。
【0013】
管理者端末30は、iPS細胞のバンキングサービスのサイトの管理者が使用する端末である。管理者端末30は、タブレット端末、ノートPC(Personal Computer)など、通信ネットワークNを介して情報処理サーバ10とデータの授受が可能なあらゆる端末装置を利用することができる。
図1に示すように、管理者端末30は、プロセッサ31、各種操作ボタンやタッチパネルなどの入力装置32、液晶ディスプレイなどの表示装置33、通信ネットワークNに接続するための通信インタフェース34、ディスクドライブまたは半導体メモリ(ROM、RAMなど)などの記憶資源35を備えている。
【0014】
図2~5は、細胞作製管理システム1によるウェブサイトを介した細胞バンキングサービスの流れを説明するシーケンス図である。
図2は、ユーザの問い合わせからバンキングサービスの契約までの流れを示すシーケンス図である。まず、ユーザがユーザ端末20から、細胞バンキングサービスのサイトにアクセスし、問い合わせフォーム等を利用して、サービスの利用について問い合わせる(S101)。管理サーバ10は、ユーザ端末20から問い合わせ(メール等)を受信する(S102)。問い合わせ通知は管理者端末30に転送される。または、管理者が管理者端末30を介して問い合わせ内容を閲覧する(S103)。
【0015】
管理者は、ユーザへの返信内容(質問内容等を含む)を作成し、ユーザ端末20に返信する。また、必要に応じてユーザとのミーティング(オンラインミーティングを含む)の予約を取る。なお、ユーザへの返信内容の作成や予約処理は、管理サーバ10によって自動的に行われるようにしてもよい(S104)。
【0016】
ユーザは、返信内容を確認し、質問等に対する回答を返信する。また、必要に応じて設定された管理者とのミーティングに参加する(S105)。ユーザは、管理者とのやり取りに基づいて、契約を進めるどうかを判断し、契約を進める場合には、次の段階に進むことを連絡する(S106)。管理者は、ユーザが契約を進めることを決めた場合には、ユーザアカウントを作成し、ユーザ情報データベースDB1に登録する(S107)。アカウント作成と登録は管理サーバ10によって自動的に行われるようにしてもよい。
【0017】
アカウントが登録されると、管理サーバ10からユーザ端末20に、アカウントを登録したことを説明するメール(自動配信メール)が送信される(S108)。メールには、今後アカウントに紐づけて登録される情報(契約内容、インフォームドコンセントに関する内容、細胞の作製状況に関する情報等)の説明等が含まれてもよい。ユーザは、ユーザ端末20上で、ログインに使用するパスワードを設定してサイトにログインし、個人情報等必要な項目を登録する(S109)。管理サーバ10は、ユーザが登録した個人情報(氏名、住所、生年月日等)をサイトの管理者へ通知する(S110)。
【0018】
次に、管理サーバ10からユーザ端末20に、契約書のひな型が送信される(S111)。ユーザは、ユーザ端末20上で契約書に電子署名する(S112)。署名した契約書は管理サーバ10に送信され(S113)、管理サーバ10は、署名済みの契約書を、ユーザのアカウントに紐づけて保存する(S114)。保存は文書データ自体をユーザ情報データベースDB1に保存してもよいし、文書データは他の場所へ保存し、リンク情報をユーザ情報データベースDB1に保存してもよい。管理サーバ10は、契約書が署名されたことを管理者端末30に通知する(S115)。
【0019】
図3は、ユーザによる初回の支払いから血液検査(検体検査)の予約までの流れを示すシーケンス図である。契約が完了すると、管理サーバ10において、請求書(第1の請求書)が作成される(S201)。さらに、管理サーバ10からユーザ端末20へ支払い処理を行うためのリンクがメールで送信される(S202)。ユーザは、ユーザ端末20上で、受信したリンクにアクセスし、初回の支払いを行う(S203)。なお、支払は一括で全額を支払う方法と、分割して複数回で支払う方法を選択できるようにしてもよい。管理サーバ10は、支払いが完了したことを確認すると、管理者端末30に支払い完了通知を送信する(S204)。管理者は、支払い完了通知を受信すると、インフォームドコンセントに関するミーティングを予約するためのひな型メールをユーザ端末20に送信する(S205)。なお、初回の請求書は、アカウントの作成後、契約書の署名前に作成して送るようにしてもよい。
【0020】
ユーザは、受信したメールの案内にしたがって、ユーザ端末20上で予約システムにアクセスし、インフォームドコンセントに関するミーティングの予約を行う(S206)。ユーザの予約に基づいて、インフォームドコンセントに関するオンラインミーティングが実施される(S207)。ミーティングの後、インフォームドコンセントの同意文書に署名するまでに一定の熟慮期間(例えば、1か月)が設けられる。
【0021】
熟慮期間の終了前に、管理サーバ10からユーザ端末20へ、リマインダーが送信される(S208)。ユーザは、熟慮期間が終了したら、インフォームドコンセントに電子署名する(S209)。なお、熟慮期間中は電子署名ができないように制御してもよい。署名済みの文書データは管理サーバ10に送信される(S210)。管理サーバ10は、署名済みの文書データ自体または、文書データへのリンクをユーザ情報データベースDB1に保存する(S211)。管理サーバ10は、インフォームドコンセントに署名されたことを管理者端末30に通知する(S212)。また、管理サーバ10は、ユーザ端末20に採血予約の案内メールを自動送信する(S213)。なお、初回の支払い確認後、インフォームドコンセントを行わずに、ユーザ端末20に採血予約の案内メールを自動送信するようにしてもよい。
【0022】
図4は、血液検査から細胞製造開始までの流れを示すシーケンス図である。ユーザは、受信した採血(検体採取)予約の案内メールにしたがって、サイト上で採血予約を行う(S301)。案内メールには、ユーザの居住地(または所在地)から最も近いクリニックや、最短で予約が取れるクリニックなどを提示するようにしてもよい。また、各クリニックで採血等に要する費用も提示し、予算に応じてクリニックを選択できるようにしてもよい。また、採血を予約した日に基づいて細胞の製造終了時期を予測し、ユーザ端末20上で確認できるようにしてもよい。管理サーバ10は、予約情報(日時、場所)をユーザ情報データベースDB1に記録すると共に、管理者と採血を行うクリニック等へ採血予約情報を通知する(S302)。管理者は、ユーザ端末20に問診票のひな型をメールで送信する(S303)。ユーザは、受信した問診票に記入し、電子署名する(S304)。問診票には、医師による電子署名も行われ、署名済みの問診票は管理サーバ10に送信される(S305)。管理サーバ10は、署名済みの問診票データまたは、データの保存場所へのリンクをユーザ情報データベースDB1に保存する(S306)。
【0023】
ユーザは採血の予約日にクリニックにて採血を行う。採血後ウイルス検査(病理学的検査)が実施される(S307)。ウイルス検査には、HIV、B型、C型肝炎、HTLV等のウイルスの検査が含まれる。ウイルス検査の結果は、検査機関のサーバ40から管理サーバ10または管理者端末30に通知され、管理者によって登録される(S308)。ウイルス検査の結果に問題があった場合(陽性等)には(S309:NO)、管理サーバ10からユーザ端末20に、担当者から連絡する旨のメールを送信する(S310)。検査の結果に問題があった場合、他の利用者の細胞への交差感染や、作業者の安全性等の懸念もあるため、扱い方についての注意が必要となる。このため、検査の結果に基づいて、この後の工程を進めるか否かを判断する。また、ユーザのどの細胞(血液、皮膚、尿等)からiPS細胞を作るのが望ましいかを判断して知らせるようにしてもよい。
【0024】
一方、検査結果に問題がなかった場合には(S309:YES)、管理者端末30からユーザ端末20へ、2回目の支払いを促すメールが送信される(S311)。同時に、請求書が自動作成され、管理者端末30から管理サーバ10へ送信される(S312)。
【0025】
管理サーバ10は、支払いを行うためのリンクをメールでユーザ端末20へ送信する(S313)。ユーザは、ユーザ端末20から支払いを行うリンクへアクセスし、支払いを行う(S314)。管理サーバ10は、支払いが完了すると、管理者端末30へ通知する(S315)。この後、細胞作製のスケジュール(開始日、作製する細胞の量(バイアル数等)、種類、作製した細胞の保存期間等を含む。)が決定され、細胞製造機関のサーバ50に通知される。スケジュールや管理サーバ10において自動的に作成されてもよいし、管理者が登録してもよい。通知を受けた細胞製造機関は、スケジュールにしたがって細胞製造を開始する。なお、細胞作製の開始日は、先に細胞の作製完了時期を設定し、その完了時期に合わせて、開始日を決定するようにしてもよい。また、採血日から細胞の製造にかかる期間を予測して、製造終了予定時期をユーザ端末20へ送信するようにしてもよい。さらに、細胞にリプログラミング因子(OCT、SOX、KLF4、c-MYC等)を導入する時期や、iPS細胞誘導を開始する時期を予測してユーザ端末20へ送信するようにしてもよい。
【0026】
図5は、細胞製造開始からバンキングまでの流れを示すシーケンス図である。細胞製造開始後、適切な時期に、細胞製造機関のサーバ50から送信された末梢血単核球の画像が管理サーバ10にアップロードされ、管理者端末30からユーザ端末20へ通知される(S401)。管理サーバ10は、アップロードされた画像をユーザ情報データベースDB1に保存する(S402)。
【0027】
さらに、適切な時期に、細胞製造機関のサーバ50から送信された培養細胞のコロニーの画像が管理サーバ10にアップロードされ、管理者端末30からユーザ端末20へ通知される(S403)。管理サーバ10は、アップロードされた画像をユーザ情報データベースDB1に保存する(S404)。さらに、適切な時期に、細胞製造機関のサーバ50から送信された細胞培養チューブの画像が管理サーバ10にアップロードされ、管理者端末30からユーザ端末20へ通知される(S405)。管理サーバ10は、アップロードされた画像をユーザ情報データベースDB1に保存する(S406)。また、この他にも、定期的に製造中の作業風景や、細胞の状態(処理前の細胞、リプログラミング前の細胞、処理後の細胞、リプログラミング中の細胞、リプログラミング後の細胞等)などの写真や動画をアップロードするようにしてもよい。アップロードされた写真や動画は、ユーザ端末20からダウンロードすることができる。また、保存温度、凍結の状況などの情報が確認できるようにしてもよい。また、製造中の細胞の映像をカメラで撮影し、ユーザがその画像をいつでもサイト上で見られるようにしてもよい。
【0028】
その後、管理者端末30からユーザ端末20へ、3回目の支払いを促すメールが送信される(S407)。同時に、請求書が自動作成され、管理者端末30から管理サーバ10へ送信される(S408)。管理サーバ10は、支払いを行うためのリンクをメールでユーザ端末20へ送信する(S409)。ユーザは、ユーザ端末20から支払いを行うリンクへアクセスし、支払いを行う(S410)。管理サーバ10は、支払いが完了すると、管理者端末30へ通知する(S411)。
【0029】
細胞作製が終了すると、細胞の保管証明書と細胞リリースの請求書が管理サーバ10にアップロードされ、管理者端末30からユーザ端末20へ通知される(S412)。保管証明書には、細胞の保管日時、及び保管期間等が記載され、保管される細胞の写真も添付されるようにしてもよい。管理サーバ10は、アップロードされた保管証明書と細胞リリースの請求書をユーザ情報データベースDB1に保存する(S413)。この後、製造した細胞のバンキング期間に入る。なお、製造された細胞について、遺伝子発現、形態検査、核型解析、ゲノム検査等を行い、合否判定を行って結果をユーザ端末20へ通知するようにしてもよい。また、不合格だった場合に、細胞の作り直しを行うための期間が設けられるようにしてもよい。
【0030】
バンキング期間では、1年ごとに保管費用の年次支払いの処理が行われる。所定の時期が来ると、年次支払いの請求書が自動作成され、管理者端末30から管理サーバ10へ送信される(S414)。例えば、当初の保管期限が3年の場合、2年経過した時点で3年目の支払いを請求するようにしてもよい。また、契約中の保管期限の直前にユーザに保管の継続意思を確認し、延長費用を請求するような仕組みにしてもよい。なお、保管費用の支払いは、1年ごとに限らず、5年、10年、20年等、期間を選択できるようにしてもよい。また、保管期限が近づくとユーザ端末20へ通知を行い、細胞の状態やユーザの遺伝情報、ゲノム情報、健康状態等に基づいて、保管期間を何年延長するのがよいかなどの提案をするようにしてもよい。
【0031】
管理サーバ10は、支払いを行うためのリンクや二次元コード等をメールでユーザ端末20へ送信する(S415)。ユーザは、ユーザ端末20から支払いを行うリンクへアクセスし、支払いを行う(S416)。管理サーバ10は、支払いが完了すると、管理者端末30へ通知する(S417)。保管費用は、製造した細胞の量や種類、保存期間等によって変動する。また、ユーザがサイト上で保管状態を確認し、承認した上で保管費用を請求するようにしてもよい。
【0032】
なお、管理サーバ10は、細胞製造機関のサーバ50から細胞の作製状況に関する情報を定期的に取得し、細胞の作製完了時期を予測するようにしてもよい。また、予測した作製完了時期は、ユーザ端末20に通知するようにしてもよい。また、作製した細胞のバイアル数を管理し、残りのバイアル数を定期的に知らせるようにしてもよい。また、細胞の作製状況がどの段階まで到達しているかについて、定期的にユーザ端末20に通知するようにしてもよい。さらに、現在の作製状況に基づいて予測した作製完了時期も通知するようにしてもよい。
【0033】
以上のように、本実施形態によれば、ウェブサイトを介して、ユーザが自身の多能性幹細胞の製造や保管を契約したり、必要な検査等を予約したり、必要に応じて相談のためのミーティングを設定したりできるようにしたので、一般のユーザが多能性幹細胞の製造・保管の依頼をしやすい仕組みを提供することができる。
【0034】
なお、ユーザへの支払いの請求のタイミングについては、上記の実施形態に限られない。例えば、それぞれの手続きの進捗状況や細胞の作製状況に応じて請求を行うようにしてもよい。具体的には、ウイルス検査が完了したタイミングでその時点までかかった費用を請求し、iPS細胞誘導が完了したタイミングでそれまでにかかった費用を請求するようにしてもよい。このような請求方法とすることで、ユーザにとっては、一度に高額な費用を支払わなくてすみ、何にどれぐらいの費用がかかったかを把握することができる。また、支払期限を設け、支払いを完了しないと、次の工程へ進めないようにしてもよい。
【0035】
(付帯サービスとの連携)
細胞の作製及びバンキングの付帯サービスとして、人間ドックや美容関連のサービスを受けられるようにしてもよい。付帯サービスの予約は、ウェブサイトを介して受け付けるようにしてもよい。付帯サービスの予約を受け付けた場合、付帯サービスの予約日と提供場所に基づいて、検体採取の日時と場所も決定するようにしてもよい。例えば、人間ドックを申し込んでいる場合には、検体採取の予約日とクリニックを、人間ドックと合わせるようにしてもよい。
【0036】
また、細胞作製のスケジュールに関して、管理サーバ10が人間ドックの結果に基づいて細胞の作製完了時期を設定するようにしてもよい。すなわち、人間ドックの結果に基づいて将来の健康リスクを予測し、予測に応じてiPS細胞を使った治療が必要になる時期を予想して、細胞作製完了時期を設定してもよい。また、人間ドックの結果に基づいて、管理サーバ10が作製する細胞の量や種類、保存期間等を、ウェブサイトを介して提案するようにしてもよい。
【0037】
また、美容関連サービスとしては、iPS細胞を用いた美容医療の他、細胞の作製に用いた培養液を用いた美容液の提供などが含まれる。美容液は、あらかじめユーザの希望に応じて提供量と提供時期を決定しておくようにしてもよい。
【0038】
本実施形態では、iPS細胞の作製を例に挙げているが、細胞にはこの他にも、幹細胞、分化細胞、前駆細胞、多能性幹細胞、リプログラミングされた細胞、iPS細胞に由来する細胞等が含まれていてよい。また、本実施形態において、iPS細胞は、例えば血液細胞、尿に由来する細胞及び皮膚細胞の線維芽細胞等の分化細胞等の体細胞に、OCT3/4、KLF4、c-MYC、及びSOX2等の初期化因子を導入することにより誘導される。iPS細胞は、RNAウイルス、例えば、マイナス一本鎖RNAウイルスのセンダイウイルスを用いる方法や、RNAリポフェクション法などの、遺伝子挿入が生じない方法により誘導されることが好ましい。iPS細胞に誘導することを、リプログラミング、初期化、形質転換、分化転換(Transdifferentiation or Lineage reprogramming)、及び細胞の運命変更(Cell fate reprogramming)という場合がある。多能性幹細胞は、浮遊培養等の三次元培養されながら誘導されてもよい。また、本実施形態において、細胞作製とは、例えばリプログラミングのように、遺伝子の導入により、細胞を第1の状態から第2の状態に移行することも含む。例えば、リプログラミング因子の導入により、体細胞からiPS細胞への転換、iPS細胞から体細胞への転換、体細胞から異なる種類の体細胞に転換する、ダイレクトリプログラミングや、他家細胞又は自家細胞の初期化も含まれる。なお、どのような種類の細胞に転換するかについては、ユーザの希望や健康状態や遺伝子の状態から決定できるようにしてもよい。
【0039】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、他の様々な形で実施することができる。このため、上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈されるものではない。例えば、上述した各処理ステップは処理内容に矛盾を生じない範囲で任意に順番を変更し、または並列に実行することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…細胞作製管理システム
10…管理サーバ
11…制御装置
12…記憶装置
20…ユーザ端末
21…プロセッサ
22…入力装置
23…表示装置
24…通信インタフェース
25…記憶資源
30…管理者端末
31…プロセッサ
32…入力装置
33…表示装置
34…通信インタフェース
35…記憶資源
40…検査機関のサーバ
50…細胞製造機関のサーバ