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特開2024-137342錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137342
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/06 20060101AFI20240927BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240927BHJP
   A23L 33/14 20160101ALI20240927BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240927BHJP
   A61P 3/02 20060101ALN20240927BHJP
【FI】
A61K36/06
A61K9/20
A23L33/14
A23L5/00 A
A61P3/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048833
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】715011078
【氏名又は名称】アサヒグループ食品株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000055
【氏名又は名称】アサヒグループホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】安井 和歌奈
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 良貴
【テーマコード(参考)】
4B018
4B035
4C076
4C087
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE01
4B018MD20
4B018MD81
4B018ME14
4B018MF08
4B035LC04
4B035LC06
4B035LE05
4B035LG15
4B035LG50
4B035LK19
4B035LP34
4B035LT11
4C076AA38
4C076BB01
4C076CC21
4C076FF33
4C076GG14
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC11
4C087MA35
4C087MA52
4C087NA05
4C087NA11
4C087ZC21
(57)【要約】
【課題】乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法を提供する。
【解決手段】乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む錠剤であって、前記錠剤におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上である錠剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む錠剤であって、
前記錠剤におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする錠剤。
【請求項2】
前記酵母細胞壁含有組成物の前記錠剤における含有量が、10質量%~80質量%である請求項1に記載の錠剤。
【請求項3】
前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記乾燥酵母(A)の割合(A/B×100)が、12質量%~800質量%である請求項1から2のいずれかに記載の錠剤。
【請求項4】
乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠することを含む錠剤の製造方法であって、
前記混合物におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする方法。
【請求項5】
乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠することを含む錠剤の崩壊遅延の抑制方法であって、
前記混合物におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、不規則な食生活や美容への意識の高まりなどに伴い、必要な栄養素を効率的に補給するため、たんぱく質、アミノ酸、ビタミン、ミネラル等の栄養素や、様々な栄養素を含む植物や動物原料由来の抽出物などの機能性成分を含有する栄養補助食品やサプリメントといった錠剤への需要が高まっている。
【0003】
乾燥酵母は、栄養補給の目的や、さらには健康を維持増進させる様々な作用が期待され、栄養補助食品やサプリメントといった錠剤などとしてよく利用されている。乾燥酵母は結合力に劣り、適当な錠剤硬度を得るためには高い圧力で圧縮する必要があることが知られている。
これまでに、適当な硬度を有しながら改良された嚥下性を示す、乾燥酵母を含有する錠剤を提供するための技術として、所定の形状の錠剤が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、湿製打錠法で乾燥酵母を錠剤化する場合、酵母単独、あるいはこれに一般的な結合剤を添加しても、使用に耐えうる硬度が得られず成形性が悪いものであったが、湿製打錠において、乾燥酵母末に生薬エキスを配合することで、高硬度の錠剤が得られ、成形性が向上することが報告されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
酵母からエキスを抽出した後に残る酵母細胞壁含有組成物は、たんぱく質が多く含まれている有用な素材である。
これまでに、例えば、たんぱく質などの栄養素を含み、さらに血糖値上昇抑制効果または中性脂肪上昇抑制効果等の健康機能性を有する組成物として、酵母菌体または酵母残渣の細胞壁分解酵素処理物である酵母たんぱく質含有組成物が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-087104号公報
【特許文献2】特開2002-255833号公報
【特許文献3】特開2020-183364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
乾燥酵母はたんぱく質等の栄養素を簡易に摂取することができることから、錠剤における配合量を高めることが求められている。一方、乾燥酵母の配合量を高めた錠剤とすると、錠剤硬度を担保するために高い打錠圧で打錠する必要があること、打錠圧を高くし錠剤硬度を上げると崩壊時間も相関して遅延してしまうという課題があることを見出した。
【0008】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、乾燥酵母の一部を酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物に置き換えることにより、乾燥酵母を高配合した錠剤とたんぱく質含量及び錠剤硬度は同程度であるにもかかわらず、崩壊時間の遅延を抑制することができることを知見した。また、前記酵母細胞壁含有組成物は、流動性が悪く、錠剤化する際に結合剤、賦形剤、流動化剤などを多く配合する必要があり、また、これらを配合してもなお、流動性に難があり、臼に粉末が適切に充填されない、重量のバラツキが大きい等の製造適性(以下、「打錠適性」と称することがある。)に課題が生じていたものであるにもかかわらず、乾燥酵母の一部を酵母細胞壁含有組成物に置き換えた場合に製造適性が低下することなく、錠剤を製造することができることを知見した。
【0010】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む錠剤であって、
前記錠剤におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする錠剤である。
<2> 前記酵母細胞壁含有組成物の前記錠剤における含有量が、10質量%~80質量%である前記<1>に記載の錠剤である。
<3> 前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記乾燥酵母(A)の割合(A/B×100)が、12質量%~800質量%である前記<1>から<2>のいずれかに記載の錠剤である。
<4> 乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠することを含む錠剤の製造方法であって、
前記混合物におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする方法である。
<5> 乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠することを含む錠剤の崩壊遅延の抑制方法であって、
前記混合物におけるたんぱく質の含有量が、8質量%以上であることを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤及びその製造方法、並びに錠剤の崩壊遅延の抑制方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(錠剤)
本発明の錠剤は、乾燥酵母と、酵母細胞壁含有組成物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
【0013】
<乾燥酵母>
前記乾燥酵母は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0014】
前記乾燥酵母の調製方法としては、特に制限はなく、公知の方法を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、不純物を取り除いた生酵母を水とカセイソーダで洗浄し、ドラムドライにより乾燥する方法などが挙げられる。
【0015】
前記乾燥酵母の酵母の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビール酵母、発泡酒酵母、雑酒等のビール様飲料用酵母、清酒酵母、ワイン酵母、ウイスキー酵母、その他の醸造用酵母、パン酵母などが挙げられる。
前記乾燥酵母の酵母の属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属などが挙げられる。
前記サッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母の具体例としては、Saccharomyces pastorianusなどが挙げられる。
前記乾燥酵母の酵母は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
前記乾燥酵母の前記錠剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%~70質量%が好ましく、15質量%~45質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が特に好ましい。
【0017】
<酵母細胞壁含有組成物>
前記酵母細胞壁含有組成物とは、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む組成物である。
【0018】
前記酵母細胞壁含有組成物は、市販品を使用してもよいし、適宜調製したものを使用してもよい。
【0019】
前記酵母細胞壁含有組成物の調製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、培養乃至醸造した酵母菌を洗浄し、不純物を除去した後、エキス分を抽出することで、残った残渣(酵母細胞壁含有組成物)を得る方法などが挙げられる。
【0020】
前記酵母細胞壁含有組成物の酵母の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母などが挙げられる。
前記酵母の属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、キャンディダ(Candida)属などが挙げられる。これらの中でも、サッカロマイセス(Saccharomyces)属が好ましい。
前記サッカロマイセス(Saccharomyces)属の酵母の具体例としては、Saccharomyces cerevisiaeなどが挙げられる。
前記キャンディダ(Candida)属の酵母の具体例としては、Candida utilisなどが挙げられる。
前記酵母細胞壁含有組成物の酵母は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0021】
前記エキス分の抽出方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、熱水抽出、自己消化、酵素分解などが挙げられる。これらの中でも、熱水抽出が好ましい。
【0022】
前記酵母細胞壁含有組成物の態様としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、泥状のもの、圧搾して水分を減らしたもの、乾燥して更に水分を減らしたもの、粉状のもの、液中に懸濁させたものなどが挙げられる。これらの中でも、粉状のものを好適に用いることができる。
前記乾燥の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ドラムドライ、スプレードライにより乾燥する方法などが挙げられる。
【0023】
前記酵母細胞壁含有組成物の前記錠剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10質量%~80質量%が好ましく、15質量%~60質量%がより好ましく、20質量%超50質量%以下が特に好ましい。
【0024】
前記錠剤における前記乾燥酵母と、前記酵母細胞壁含有組成物との合計含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%以上が好ましく、30質量%~85質量%がより好ましく、40質量%~75質量%が特に好ましい。
【0025】
前記酵母細胞壁含有組成物(B)に対する前記乾燥酵母(A)の割合(A/B×100)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、12質量%~800質量%であることが好ましく、13質量%~700質量%であることがより好ましく、15質量%~600質量%であることが特に好ましい。
【0026】
前記錠剤におけるたんぱく質の含有量としては、8質量%以上であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、8質量%~55質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、15質量%~45質量%が特に好ましい。なお、前記錠剤におけるたんぱく質は、前記酵母及び前記酵母細胞壁含有組成物以外の成分に由来するものも含まれる。
前記錠剤におけるたんぱく質の含有量の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、燃焼法により測定することができる。
【0027】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した乾燥酵母及び酵母細胞壁含有組成物以外の機能性成分;ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、フマル酸ステアリルナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル、タルク、植物油脂、硬化油等の滑沢剤;部分α化デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム等の崩壊剤;デンプン、乳糖、デキストリン、コーンスターチ等の賦形剤;粉末セルロース;結晶セルロース;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール等の水溶性ポリマー;還元麦芽糖水あめ、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコール;トレハロース、パラチノース、イソマルト等の二糖類;大豆多糖類;とうもろこしタンパク等の結合剤;無水ケイ酸、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、二酸化ケイ素等のケイ素、又はその塩、又は酸化物;固着剤;酸化チタン、酸化鉄等の着色剤;フィチン酸、クエン酸、コハク酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-リンゴ酸、リン酸、リン酸二ナトリウム等のpH調整剤又は緩衝剤;酸化防止剤などが挙げられる。
【0028】
前記乾燥酵母及び酵母細胞壁含有組成物以外の機能性成分としては、特に制限はなく、栄養補助食品やサプリメントなどに用いられている成分を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ヘスペリジン、イノシトール等のビタミン類;アミノ酸又はその塩;カゼイン分解物等の乳由来ペプチドを含有するペプチド含有物、鶏軟骨由来エキス等の動物由来ペプチドを含有するペプチド含有物、マカエキス、ゴマエキス等の植物由来ペプチドを含有するペプチド含有物、わかめエキス、こんぶエキス等の海藻由来ペプチドを含有するペプチド含有物、サメ軟骨抽出エキス、サケ鼻軟骨抽出エキス、マグロ抽出エキス等の魚類由来ペプチドを含有するペプチド含有物等のペプチド含有物;プラセンタ抽出物、コラーゲン含有抽出物等の動物抽出物;カルシウム、マグネシウム、亜鉛、鉄、マンガン、銅、セレン、クロム、モリブデン等のミネラル;コエンザイムQ10、α-リポ酸、L-カルニチン、コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン、ウコン、グルコサミン塩酸塩、コンドロイチン硫酸、シリマリン、ルテイン、発酵大豆胚芽エキス末、ザクロエキス末等;イチョウ葉由来、リンゴ由来、グァバ由来、茶由来、松由来、ブドウ由来、サラシア由来等の各種ポリフェノールを含有する成分;植物性発酵パウダー;乳酸菌粉末などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分は、市販品を適宜使用することができる。
【0030】
前記その他の成分の前記錠剤における含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0031】
前記錠剤の形状、構造、大きさとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0032】
前記錠剤は、栄養補助食品やサプリメントとして好適に用いることができる。
【0033】
本発明によれば、製造適性が低下することなく、乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤とすることができる。
【0034】
前記錠剤の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の錠剤の製造方法により、好適に製造することができる。
【0035】
(錠剤の製造方法)
本発明の錠剤の製造方法は、打錠工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0036】
<打錠工程>
前記打錠工程は、乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠する工程であり、これにより、錠剤を得ることができる。
【0037】
前記打錠工程における混合物(以下、「打錠末」と称することがある。)は、乾燥酵母と、酵母細胞壁含有組成物とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の成分を含む。
前記乾燥酵母、前記酵母細胞壁含有組成物、及び前記その他の成分は、上記した本発明の(錠剤)の項目に記載したものと同様であり、好ましい態様も同様である。
また、前記混合物における各成分の含有量は、本発明の(錠剤)の項目に記載した錠剤における各成分の含有量と同様である。
【0038】
前記打錠末の累積粒度分布における累積百分率10%に相当する粒子の粒子径(以下、「D10」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、打錠適性がより優れる点で、10μm~50μmの範囲内であることが好ましく、10μm~40μmの範囲内であることがより好ましく、10μm~30μmの範囲内であることが特に好ましい。
なお、D10は、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の10%に達したときの粒子径のことをいう。
【0039】
前記打錠末の累積粒度分布における累積百分率50%に相当する粒子の粒子径(以下、「D50」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、40μm~140μmの範囲内であることが好ましく、50μm~130μmの範囲内であることがより好ましく、60μm~120μmの範囲内であることが特に好ましい。
なお、D50は、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の50%に達したときの粒子径のことをいう。
【0040】
前記打錠末の累積粒度分布における累積百分率90%に相当する粒子の粒子径(以下、「D90」と称することがある。)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、190μm~350μmの範囲内であることが好ましく、200μm~340μmの範囲内であることがより好ましく、210μm~330μmの範囲内であることが特に好ましい。
なお、D90は、体積基準の粒子径の累積分布において小粒径からの積算値が全体の90%に達したときの粒子径のことをいう。
【0041】
前記打錠末は、D10、D50、及びD90が、上記した好ましい範囲内であることが好ましい。
【0042】
前記D10、D50、及びD90を測定する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができ、例えば、レーザー回折散乱法を用いた測定機(例えば、MT3300EXII、マイクロトラック・ベル株式会社)を使用することにより測定することができる。
【0043】
前記打錠は公知の装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、打錠機(例えば、HT-APSS型、HT-AP-MS型、HT-X-SS型、HT-X-MS型(以上、株式会社畑鉄工所製);VEL5、VIRGO、AQUARIUS、LIBRA(以上、株式会社菊水製作所製);AUTOTAB-200(市橋精機株式会社製))などが挙げられる。
【0044】
前記打錠における打錠圧等の条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0045】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記混合物を調製する混合工程などが挙げられる。
【0046】
<<混合工程>>
前記混合工程は、上記した乾燥酵母と、上記した酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを混合し、混合物とする工程である。前記混合工程では、必要に応じて更に上記したその他の成分を混合してもよい。
【0047】
前記混合工程は、前記乾燥酵母と、前記酵母細胞壁含有組成物と、必要に応じて前記その他の成分とを1回でまとめて混合してもよいし、任意の成分ごとに複数回に分けて混合してもよい。
【0048】
前記混合は公知の装置を用いて行うことができ、該装置としては、例えば、コンテナタンブラー、V型混合機、ボーレーコンテナミキサー、ロッキングミキサーなどが挙げられる。
前記混合の温度、時間等の条件としては、特に制限はなく、適宜選択することができる。
【0049】
本発明の錠剤の製造方法によれば、製造適性が低下することなく、乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤を簡易な方法で効率良く製造することができる。
【0050】
(錠剤の崩壊遅延の抑制方法)
本発明の錠剤の崩壊遅延の抑制方法は、打錠工程を少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
【0051】
<打錠工程>
前記打錠工程は、乾燥酵母と、酵母菌体から分離された酵母細胞壁を含む酵母細胞壁含有組成物とを含む混合物を打錠する工程であり、上記した本発明の(錠剤の製造方法)の項目に記載した打錠工程と同様にして行うことができる。
【0052】
<その他の工程>
前記その他の工程としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した本発明の(錠剤の製造方法)の項目に記載した混合工程などが挙げられる。
【0053】
本発明の錠剤の崩壊遅延の抑制方法によれば、乾燥酵母を高配合した錠剤と同等のたんぱく質含有量及び錠剤硬度でありながら、崩壊遅延が抑制された錠剤とすることができる。
【実施例0054】
以下に試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの試験例に何ら限定されるものではない。
【0055】
(試験例1)
-打錠末の調製-
下記表1~2に記載の各原料を混合し、各打錠末とした。
使用した「乾燥酵母」、「酵母細胞壁含有組成物」、「大豆タンパク」、「植物性発酵パウダー」、「乳酸菌粉末」の詳細は下記のとおりである。なお、これらは一例として用いたものである。
[乾燥酵母]
・ 乾燥酵母(製品名「乾燥ビール酵母YT」、アサヒグループ食品株式会社製)
[酵母細胞壁含有組成物]
・ 乾燥酵母(ハイパーイーストHG-DY、アサヒグループ食品株式会社製)を熱水抽出した後、遠心分離して得た水不溶画分を乾燥し、酵母細胞壁含有組成物とした。
[大豆タンパク]
・ 大豆タンパク(製品名「プロリーナHD101R」、不二製油株式会社製)
[植物性発酵パウダー]
・ 植物性発酵パウダー(製品名「MKミクスチャー(パウダータイプ)」、万田発酵株式会社製)
[乳酸菌粉末]
・ 乳酸菌粉末(製品名「植物性ナノ型乳酸菌SNK」、コスモ食品株式会社製)
【0056】
-打錠-
単発打錠機(AUTOTAB-200、市橋精機株式会社製)を用い、前記打錠末を9、12、15、又は18kNの圧力(打錠圧)で充填加圧して打錠加工し、直径9mm、曲率半径(R)7.5mm、330mg/錠の錠剤を製造した。
【0057】
-評価-
[錠剤におけるたんぱく質の含有量]
錠剤におけるたんぱく質の含有量は燃焼法にて測定した。結果を表1~2に示す。
【0058】
[錠剤硬度]
製造した錠剤の硬度(N)を、ロードセル式卓上硬度計 ポータブルチェッカーPC-30型(岡田精工株式会社製)を用いて測定した。結果を表3に示す。
【0059】
[崩壊時間]
製造した錠剤の崩壊時間を、全自動式崩壊試験器ZT322(ERWEKA社製)を用い、溶媒を水、水温37℃にて測定した(補助盤なし)。結果を表4に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
【表4】
【0064】
以上のように、試験例1-5では、試験例1-1~1-4と比較して、打錠圧を上げた際により大きな崩壊遅延が生じた。また、試験例1-6及び1-7では、低い打錠圧でも崩壊性が劣り、打錠圧を上げた際にも崩壊遅延が生じていた。なお、乾燥酵母を用いていない試験例1-2では、打錠圧を上げた際の崩壊遅延が生じにくかったものの、打錠末の流動性が悪く、打錠適性が劣るものであった。
一方、試験例1-1、1-3、1-4では、たんぱく質を高含有する錠剤でありながら、良好な打錠適性を有しつつ、かつ打錠圧を上げた際の崩壊遅延を抑制することができることが示された。
なお、試験例1-1、1-2、及び1-5の打錠末の粒度を測定したところ、D10、D50、及びD90は下記のとおりであった。
・ 試験例1-1
D10 : 18.12μm、D50 : 101μm、D90 : 276.9μm
・ 試験例1-2
D10 : 17.63μm、D50 : 53.1μm、D90 : 279.4μm
・ 試験例1-5
D10 : 17.14μm、D50 : 106.4μm、D90 : 233.9μm
【0065】
(試験例2)
-打錠末の調製及び打錠-
下記表5~6に記載の原料を用いた以外は、試験例1と同様にして、打錠末を調製し、錠剤を製造した。
【0066】
-評価-
[錠剤におけるたんぱく質の含有量]
試験例1と同様にして、錠剤におけるたんぱく質の含有量を測定した。結果を表5~6に示す。
【0067】
[錠剤硬度]
試験例1と同様にして、製造した錠剤の硬度(N)を測定した。結果を表7に示す。
【0068】
[崩壊時間]
補助盤ありとした以外は試験例1と同様にして、製造した錠剤の崩壊時間測定した。結果を表8に示す。
【0069】
【表5】
【0070】
【表6】
【0071】
【表7】
【0072】
【表8】
【0073】
試験例2の結果からも、本発明によれば、良好な打錠適性を有しつつ、かつ打錠圧を上げた際の崩壊遅延を抑制することができることが確認された。