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特開2024-137345水素輸送ホース用樹脂組成物および水素輸送ホース
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  • 特開-水素輸送ホース用樹脂組成物および水素輸送ホース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137345
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】水素輸送ホース用樹脂組成物および水素輸送ホース
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/04 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08L 77/06 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
F16L11/04
C08L21/00
C08L77/00
C08L77/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048837
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 峻
【テーマコード(参考)】
3H111
4J002
【Fターム(参考)】
3H111BA12
3H111BA15
3H111BA25
3H111BA28
3H111BA29
3H111CB04
3H111CC02
3H111DA11
3H111DA12
3H111DA26
3H111DB11
4J002AC082
4J002BB212
4J002BP012
4J002CL001
4J002CL011
4J002CL021
4J002CL033
4J002FD140
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】低温耐久性に優れるとともに、高温耐久性にも優れる水素輸送ホース用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む水素輸送ホース用樹脂組成物。脂肪族ポリアミド(A)はポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010またはポリアミド1012を含み、エラストマー(C)はスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーであることが好ましい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項2】
樹脂組成物がマトリックスおよびマトリックス中に分散したドメインを含み、マトリックスが脂肪族ポリアミド(A)およびポリフタルアミド(B)を含み、ドメインがエラストマー(C)を含むことを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項3】
ドメインの平均粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項2に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項4】
脂肪族ポリアミド(A)がポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項5】
脂肪族ポリアミド(A)とポリフタルアミド(B)の質量比W/Wが95/5~30/70であることを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項6】
エラストマー(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項7】
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含量が5~60質量%であることを特徴とする請求項6に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項8】
樹脂組成物中のエラストマー(C)の含有量が5~55質量%であることを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項9】
エラストマー(C)の少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする請求項1に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の樹脂組成物からなる層を含む水素輸送ホース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水素輸送ホース用樹脂組成物および水素輸送ホースに関する。より詳しくは、本発明は、低温耐久性および高温耐久性に優れる水素輸送ホース用樹脂組成物、およびその樹脂組成物の層を含む水素輸送ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車等の開発が盛んに行なわれている。これに伴って、水素ステーションに設置されたディスペンサから燃料電池自動車等に水素ガスを充填するホースの開発も進められている。この水素充填用ホースには、水素ガスバリア性、低温環境下での柔軟性、耐久性等が求められる。
【0003】
国際公開第2022/107481号(特許文献1)には、高圧水素の繰り返し充填における耐久性に優れた水素輸送ホースとして、ポリアミド樹脂を含むマトリックスと変性スチレン系エラストマーを含むドメインとを含む熱可塑性樹脂組成物で内層を形成した水素輸送ホースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2022/107481号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された水素輸送ホースは、-35℃などの低温環境下での耐久性(以下「低温耐久性」という。)に優れるが、65℃などの高温環境下での高温インパルス等に対する耐久性(以下「高温耐久性」という。)が必ずしも充分ではない。
【0006】
本発明は、低温耐久性を維持したまま、高温耐久性が向上した水素輸送ホース用樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明(I)は、脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む水素輸送ホース用樹脂組成物である。
本発明(II)は、本発明(I)の樹脂組成物からなる層を含む水素輸送ホースである。
【0008】
本発明は以下の実施態様を含む。
[1]脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む水素輸送ホース用樹脂組成物。
[2]樹脂組成物がマトリックスおよびマトリックス中に分散したドメインを含み、マトリックスが脂肪族ポリアミド(A)およびポリフタルアミド(B)を含み、ドメインがエラストマー(C)を含むことを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[3]ドメインの平均粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする[2]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[4]脂肪族ポリアミド(A)がポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[5]脂肪族ポリアミド(A)とポリフタルアミド(B)の質量比W/Wが95/5~30/70であることを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[6]エラストマー(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[7]スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含量が5~60質量%であることを特徴とする[6]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[8]樹脂組成物中のエラストマー(C)の含有量が5~55質量%であることを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[9]エラストマー(C)の少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
[10][1]に記載の樹脂組成物からなる層を含む水素輸送ホース。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水素輸送ホース用樹脂組成物は、低温耐久性に優れるとともに、高温耐久性にも優れる。
本発明の水素輸送ホースは、低温耐久性および高温耐久性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明(II)の水素輸送ホースの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明(I)の水素輸送ホース用樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む。
【0012】
本発明の樹脂組成物は脂肪族ポリアミド(A)を含む。
脂肪族ポリアミドとは、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンの重縮合、脂肪族ω-アミノカルボン酸の重縮合、または脂肪族ラクタムの開環重合によって合成されるポリアミドをいう。
脂肪族ポリアミド(A)としては、ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド1010、ポリアミド1012、ポリアミド6/12共重合体、ポリアミド6/66共重合体などが挙げられるが、これらに限定されない。
脂肪族ポリアミド(A)は、好ましくは、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。脂肪族ポリアミド(A)がこれらのポリアミドから選ばれるとき、低温耐久性に特に優れる。
ポリアミド11はウンデカンラクタムの開環重合または11-アミノウンデカン酸の重縮合によって合成されるポリアミドである。ポリアミド12はラウロラクタムの開環重合または12-アミノドデカン酸の重縮合によって合成されるポリアミドである。ポリアミド1010はデカメチレンジアミンとセバシン酸の重縮合によって合成されるポリアミドである。ポリアミド1012はデカメチレンジアミンと1,12-ドデカン二酸の重縮合によって合成されるポリアミドである。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)を含む。11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミドを、以下、単に「ポリフタルアミド(B)」ともいう。
11-アミノウンデカン酸単位とは、-NH-(CH10-CO-で表される繰り返し単位をいう。
デカメチレンジアミン単位とは、-NH-(CH10-NH-で表される繰り返し単位をいう。
テレフタル酸単位とは、
【0014】
【化1】
【0015】
で表される繰り返し単位をいう。
ポリフタルアミド(B)は、換言すれば、11-アミノウンデカン酸、デカメチレンジアミンおよびテレフタル酸の共重縮合体である。
ポリフタルアミド(B)は、脂肪族ポリアミドと良好に混ざることで高温耐久性を付与することができ、かつエラストマーを微分散させ得るため低温耐久性も維持することができる。
11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミドは、アルケマ社から「RILSAN」(登録商標)HTの商品名で入手することができる。
【0016】
本発明の樹脂組成物はエラストマー(C)を含む。
エラストマーとは、常温でゴム弾性を示す高分子物質をいう。
エラストマー(C)は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは、スチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーである。エラストマー(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーであると、低温耐久性を付与しやすい。
【0017】
スチレン系熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメントとしてポリスチレンを、ソフトセグメントとしてポリジエン等を用いた熱可塑性エラストマーをいう。
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、限定するものではないが、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン-エチレン・プロピレンブロック共重合体(SEP)、スチレン-エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体(SIBS)、およびそれらの酸変性品(たとえば無水マレイン酸変性品)、アミン変性品またはエポキシ変性品などが挙げられる。スチレン系熱可塑性エラストマーは、好ましくは、無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)が好ましい。
【0018】
スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは8~55質量%であり、さらに好ましくは10~50質量%である。スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が上記数値範囲内のとき、特に低温耐久性に優れる。
【0019】
オレフィン系熱可塑性エラストマーとは、ハードセグメントがポリプロピレンやポリエチレンなどのポリ-α-オレフィン、ソフトセグメントがエチレンプロピレンゴム、エチレン-1-ブテン、エチレン-1-オクテンなどのゴムで構成される熱可塑性エラストマーをいう。
オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、限定するものではないが、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-ヘキセン共重合体、エチレン-4-メチル-1-ペンテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、およびそれらの酸変性品(たとえば無水マレイン酸変性品)などが挙げられる。オレフィン系熱可塑性エラストマーは、好ましくは、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-1-ブテン共重合体、エチレン-1-オクテン共重合体、およびそれらの酸変性品である。
【0020】
エラストマー(C)は、少なくとも一部が架橋されていることが好ましい。エラストマー(C)が架橋されていると、さらに高温耐久性が向上する。
エラストマー(C)を架橋するには、樹脂組成物に架橋剤を添加する。
架橋剤としては、限定するものではないが、ジアミンやトリアミンなどが挙げられる。架橋剤は、好ましくは、3,3′-ジアミノジフェニルスルホン、4,4′-ジアミノジフェニルスルホンである。
【0021】
樹脂組成物は、好ましくは、マトリックスおよびマトリックス中に分散したドメインを含み、マトリックスが脂肪族ポリアミド(A)およびポリフタルアミド(B)を含み、ドメインがエラストマー(C)を含む。すなわち、樹脂組成物は、好ましくは、海島構造を有する。樹脂組成物が上記相構造を有するとき、高温耐久性と低温耐久性を両立しやすい。
【0022】
ドメインの平均粒子径は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、好ましくは1.0μm以下であり、より好ましくは0.05~0.9μmであり、さらに好ましくは0.1~0.8μmである。ドメインの平均粒子径が上記数値範囲内のとき、特に低温耐久性と押出加工性に優れる。
【0023】
樹脂組成物中における脂肪族ポリアミド(A)とポリフタルアミド(B)の質量比W/Wは、好ましくは95/5~30/70であり、より好ましくは90/10~35/65であり、さらに好ましくは85/15~40/60である。W/Wが上記数値範囲内のとき、高温耐久性と低温耐久性のバランスに特に優れる。
【0024】
樹脂組成物中のエラストマー(C)の含有量は、好ましくは5~55質量%であり、より好ましくは8~50質量%であり、さらに好ましくは10~45質量%である。エラストマー(C)の含有量が上記数値範囲内のとき、高温耐久性と低温耐久性のバランスに特に優れる。
【0025】
樹脂組成物中の脂肪族ポリアミド(A)の含有量とポリフタルアミド(B)の含有量の合計は、好ましくは45~95質量%であり、より好ましくは50~90質量%であり、さらに好ましくは55~85質量%である。脂肪族ポリアミド(A)の含有量とポリフタルアミド(B)の含有量の合計が上記数値範囲内のとき、高温耐久性と低温耐久性のバランスに特に優れる。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、脂肪族ポリアミド(A)、ポリフタルアミド(B)、エラストマー(C)および架橋剤以外の成分を、本発明の効果を阻害しない範囲で含んでもよい。
【0027】
本発明の樹脂組成物の製造方法は限定されないが、脂肪族ポリアミド(A)、ポリフタルアミド(B)、エラストマー(C)、所望により架橋剤、その他の添加剤を、溶融混錬することにより、本発明の樹脂組成物を製造することができる。溶融混錬は二軸混錬押出機等を用いて行うことができる。
【0028】
本発明(II)は、本発明(I)の樹脂組成物からなる層を含む水素輸送ホースである。
図1は、水素輸送ホースの一実施形態の断面図である。水素輸送ホース1は、内層2、補強層3および外層4を含む。この実施形態においては、内層2が本発明(I)の樹脂組成物からなる層に該当する。本発明(I)の樹脂組成物からなる層は、耐水素透過層として機能することができる。
内層2の厚さは、好ましくは0.2~2.0mmであり、より好ましくは0.3~1.8mmであり、さらに好ましくは0.4~1.6mmである。
【0029】
補強層3は内層と外層の間に設けられる層であり、通常、化学繊維または金属線材を編組して形成されたブレード層またはスパイラル層からなる。化学繊維としては、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール(PBO)繊維、アラミド繊維、炭素繊維などが挙げられるが、好ましくはPBO繊維である。化学繊維の線径は、好ましくは0.25~0.30mmである。金属線材としては、鋼線、銅および銅合金の線、アルミニウムおよびアルミニウム合金の線、マグネシウム合金の線、チタンおよびチタン合金の線などが挙げられるが、好ましくは鋼線である。金属線材の線径は、好ましくは0.25~0.40mmである。
【0030】
外層4を構成する材料としては、限定するものではないが、熱可塑性エラストマー、加硫ゴムなどが挙げられるが、好ましくは熱可塑性エラストマーである。熱可塑性エラストマーとしては、限定するものではないが、好ましくはポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンエラストマーが挙げられる。
【0031】
水素輸送ホースの製造方法は、特に限定されないが、次のようにして製造することができる。まず内層(内管)を押出成形によりチューブ状に押出し、次いでそのチューブ上に補強層となる繊維を編組し、さらにその繊維上に外層(外管)を押出成形により被覆することで製造することができる。
【実施例0032】
[原材料]
以下の実施例および比較例において使用した原材料は次のとおりである。
PA11: アルケマ社製ポリアミド11「RILSAN」(登録商標)BESN OTL
PA12: UBE株式会社製ポリアミド12「UBESTA」(登録商標)3020U
PA1010: ポリプラ・エボニック株式会社製ポリアミド1010「VESTAMID」(登録商標)Terra DS16
PA1012: エボニック社製ポリアミド1012「VESTAMID」(登録商標)Terra DD-G16
PA6: UBE株式会社製ポリアミド6「UBE NYLON」(登録商標)1022B
PA11/10T: アルケマ社製ポリフタルアミド「RILSAN」(登録商標)HT CMNO(11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド)
PA10T: ユニチカ株式会社製ポリフタルアミド「XecoT」(登録商標)XN400(デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド)
MahSEBS: 旭化成株式会社製無水マレイン酸変性スチレン-エチレン・ブチレン-スチレンブロック共重合体「タフテック」(登録商標)M1943
MahEBR: 三井化学株式会社製無水マレイン酸変性エチレン-1-ブテン共重合体「タフマー」(登録商標)MH7010
TPC: 東洋紡株式会社製熱可塑性ポリエステルエラストマー「ペルプレン」(登録商標)P30B
3,3′-DAS: 三井化学ファイン株式会社製3,3′-ジアミノジフェニルスルホン
【0033】
(1)樹脂組成物の調製
シリンダー温度を260℃に設定した二軸混練押出機(株式会社日本製鋼所製)に、表1および表2に記載の処方で原材料を導入し、滞留時間約5分で溶融混練し、溶融混練物を吐出口に取り付けられたダイスからストランド状に押出した。得られたストランド状押出物を樹脂用ペレタイザーでペレット化し、ペレット状の樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物について、ドメインの平均粒子径を測定するとともに、高温耐久性および低温耐久性を評価した。測定・評価結果を表1および表2に示す。
【0034】
(2)ドメインの平均粒子径の測定
(1)で調製したペレット状の樹脂組成物を、200mm幅T型ダイス付40mmφ単軸押出機(株式会社プラ技研製)を用いて、シリンダーおよびダイスの温度を260℃に設定し、冷却ロール温度50℃、引き取り速度2m/minの条件で、平均厚み1.0mmのシートに成形した。
成形したシートを切り出し、剃刀で押出方向に垂直な面を出した後、液体窒素を用いて冷却した状態でダイヤモンドナイフにより平滑な面を作製した。この面をAsylum Research製の原子間力顕微鏡AFM MFP3Dを用いて、タッピングモードにより位相像として、マトリックスとドメインにコントラストの付いた画像を取得した。得られた画像を二値化処理した後、ドメイン約500個に対し、画像解析ソフトを用いて粒子解析を行い、数平均粒子径を求めた。
【0035】
(3)高温耐久性の評価
(2)と同様に成形した平均厚み1.0mmのシートを、JIS3号ダンベル形状に打抜き、65℃、100mm/minの引張速度で引張試験を行い、10%伸張時の応力M10を求め、比較例1のM10を100とした指数で表示した。
65℃でのM10が105以上であれば、高温インパルスの際、内層の変形を抑制できる効果があると考えられ、高いほど高温耐久性に有利である。
【0036】
(4)低温耐久性の評価
(2)と同様に成形した平均厚み1.0mmのシートから、幅5mm、長さ200mmの短冊を20本切り出し、株式会社上島製作所製の定歪定荷重疲労試験機により、温度-35℃、ひずみ13.5%、速度100rpmの条件で繰返し伸張変形を与えた。変形回数50000回、100000回時点で、試験片20本のうち18本(90%)以上破断した場合は「破断」と記載し、破断したものが2本以下(10%以下)の場合は「破断なし」と記載した。変形回数50000回時点で破断がなければ、水素ホースに適用できる低温耐久性であり、100000回で破断がなければ更に耐久性が高く、ホース寿命をより延ばせることが期待される。
【0037】
【表1】
【0038】
【表2】
【0039】
本開示は、以下の発明を包含する。
発明[1] 脂肪族ポリアミド(A)と、11-アミノウンデカン酸単位、デカメチレンジアミン単位およびテレフタル酸単位を含むポリフタルアミド(B)と、エラストマー(C)とを含む水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[2] 樹脂組成物がマトリックスおよびマトリックス中に分散したドメインを含み、マトリックスが脂肪族ポリアミド(A)およびポリフタルアミド(B)を含み、ドメインがエラストマー(C)を含むことを特徴とする発明[1]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[3] ドメインの平均粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする発明[2]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[4] 脂肪族ポリアミド(A)がポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010およびポリアミド1012からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする発明[1]~[3]のいずれか一つに記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[5] 脂肪族ポリアミド(A)とポリフタルアミド(B)の質量比W/Wが95/5~30/70であることを特徴とする発明[1]~[4]のいずれか一つに記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[6] エラストマー(C)がスチレン系熱可塑性エラストマーまたはオレフィン系熱可塑性エラストマーであることを特徴とする発明[1]~[5]のいずれか一つに記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[7] スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含量が5~60質量%であることを特徴とする発明[6]に記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[8] 樹脂組成物中のエラストマー(C)の含有量が5~55質量%であることを特徴とする発明[1]~[7]のいずれか一つに記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[9] エラストマー(C)の少なくとも一部が架橋されていることを特徴とする発明[1]~[8]のいずれか一つに記載の水素輸送ホース用樹脂組成物。
発明[10] 発明[1]~[9]のいずれか一つに記載の樹脂組成物からなる層を含む水素輸送ホース。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の樹脂組成物は、水素輸送ホースの製造に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1 水素輸送ホース
2 内層
3 補強層
4 外層
図1