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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024137350
(43)【公開日】2024-10-07
(54)【発明の名称】硬化性組成物および硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 53/00 20060101AFI20240927BHJP
   C08L 71/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20240927BHJP
   C08G 65/336 20060101ALI20240927BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L71/00 Z
C08F293/00
C08G65/336
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023048843
(22)【出願日】2023-03-24
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】玉井 仁
(72)【発明者】
【氏名】吉橋 健一
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J026
【Fターム(参考)】
4J002BP03W
4J002CH05X
4J002GH01
4J002GJ01
4J002GJ02
4J002GL00
4J002GQ00
4J002GQ01
4J005AA04
4J005BB02
4J005BD08
4J026HA11
4J026HA20
4J026HA24
4J026HA32
4J026HA38
4J026HA48
4J026HA49
4J026HB11
4J026HB20
4J026HB24
4J026HB32
4J026HB38
4J026HB45
4J026HB48
4J026HC11
4J026HC20
4J026HC24
4J026HC32
4J026HC38
4J026HC45
4J026HE01
4J026HE02
(57)【要約】
【課題】相溶性に優れた硬化性組成物を提供する。
【解決手段】本開示の硬化性組成物は、(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体と、(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体と、を含み、前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体は、アルコキシシリル基を有する特定の構造の(メタ)アクリル系共重合体(A1)を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体と、
(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体と、を含む硬化性組成物であって、
前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)を含み、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を分子中に含み、
前記Xブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、
前記Yブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、
前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.8以下である、硬化性組成物。
【請求項2】
前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体が、RCH=CHCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数が9個以上の基である)に由来する繰り返し単位を1重量%以上含む、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が、2,000以上50,000以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体が、下記式で表されるシリル基を有するものである、請求項1に記載の硬化性組成物。
-Si(R3-a(X)
〔式中、Rは炭素原子数1~20の置換または非置換の炭化水素基を表し、Rはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。1つのシリル基にRが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を表し、1つのシリル基にXが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは、1、2または3である。〕
【請求項5】
前記(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が、3,000以上50,000以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物および硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体を含む硬化性組成物が、従来知られている(例えば、特許文献1を参照)。このような硬化性組成物は、高耐候性、高耐熱性であるため、高耐久性シーラント、接着剤として屋外用途に使用できることが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-294022号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、相溶性の観点から改善の余地があった。本発明の一態様は、相溶性に優れた硬化性組成物を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る硬化性組成物は、(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体と、(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体と、を含む硬化性組成物であって、前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)を含み、前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を分子中に含み、前記Xブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、前記Yブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.8以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、相溶性に優れた硬化性組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態の一例について詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されない。
【0008】
本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上、B以下」を意味する。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」および/または「メタクリル」を意味する。
【0009】
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、下記の(A)成分、(B)成分を含む。
(A)成分:シリル基含有(メタ)アクリル系重合体
(B)成分:シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体
例えばシーリング材等用途では、硬化物の耐候性を向上させることへの要求が強く、(メタ)アクリル系重合体の高濃度化を図る種々の検討がなされ、高耐候性シーラントが開発されてきた。しかしながら、(メタ)アクリル系共重合体とポリオキシアルキレン系重合体は分子構造が異なる。そのため、高濃度で(メタ)アクリル系重合体成分を存在させる際には、ポリオキシアルキレン系重合体と十分相溶せず、白濁、分離が発生して硬化性組成物の力学物性、耐久性が十分発揮できない問題があった。
【0010】
本発明の一態様では、(メタ)アクリル系重合体として後述の一定の構造を有する(メタ)アクリル系重合体(A1)を用いることで、透明性、すなわち相溶性が良好である硬化性組成物を提供することができる。
【0011】
硬化物の相溶性を改善する方法としては、炭素数の多い(メタ)アクリル酸エステルをモノマーとする(メタ)アクリル系重合体を用いる方法も考えられる。しかし、炭素数の多い(メタ)アクリル酸エステルは高価であり、製造コストがかさんでしまう。また、組成が狭い範囲に限定されてしまうという課題があった。本発明の一実施形態によれば、炭素数の多い(メタ)アクリル酸エステルモノマーの使用量を抑制することもできる。
【0012】
〔1.シリル基含有(メタ)アクリル系重合体〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(A)成分として、シリル基含有(メタ)アクリル系重合体を含む。
【0013】
[1.1.(メタ)アクリル系重合体の主鎖]
(メタ)アクリル系重合体は、主鎖に、(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰り返し単位(構成単位)を含む。1種類のみの(メタ)アクリル系モノマーを用いてもよいし、2種類以上の(メタ)アクリル系モノマーを組合せて用いてもよい。
【0014】
(メタ)アクリル系重合体に含まれている(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位は、重合体の全重量の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上がより好ましく、90重量%以上がさらに好ましい。(メタ)アクリル系モノマー由来の繰り返し単位の含有率が50重量%以上であれば、良好な耐候性および機械物性(伸び)が得られる。
【0015】
本発明者らが検討したところ、(メタ)アクリル系重合体に加水分解性シリル基を導入する際、特開2007-302749号公報の段落[0083]~[0117]に記載されている方法で得られた(メタ)アクリル系重合体では、(B)成分への相溶性、および、これらの成分を含む硬化性組成物から得られる硬化物の物性の観点から改善の余地があった。その対策としては、従来は側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーを使用していた。本明細書において、「側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマー」とは、式「RCH=CHCOOR」で表され、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数が9個以上の基であるモノマーを表す。(メタ)アクリル系重合体の全構成単位のうち、側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰り返し単位が占める割合の上限は、5重量%以下であることが好ましく、3重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体の全構成単位のうち、側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーに由来する繰り返し単位が占める割合の下限は、0重量%以上であってもよく、1重量%以上であってもよい。側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーの使用量を抑制する、あるいは当該モノマーを使用しないことにより(メタ)アクリル系重合体の製造コストを低減できる。
【0016】
側鎖が長鎖である(メタ)アクリル系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸イコシル、(メタ)アクリル酸ドコシル、(メタ)アクリル酸オレイル、(メタ)アクリル酸リノレイル、(メタ)アクリル酸イソボルニルが挙げられる。
【0017】
側鎖が長鎖でない(メタ)アクリル系モノマーとは、上記式において、Rが炭素数8個以下の基であるモノマーを表す。このようなモノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸tert-ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2,2,2-トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸1-エチルシクロペンチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルが挙げられる。
【0018】
上述したモノマーの中では、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-ブチルおよび(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシルから選択される1種類以上が好ましい。これらのモノマーは調達コストが低く、(メタ)アクリル系重合体の製造コストを低減する目的に適している。
【0019】
さらに、ガラス転移点の観点からは、アクリル酸n-ブチルおよびアクリル酸2-エチルヘキシルから選択される1種類以上が好ましい。これらのモノマーから得られる(メタ)アクリル系重合体はガラス転移点が低く、重合体の粘度が低くなる。そのため、低温環境下での使用が容易な硬化性組成物が得られる。
【0020】
[1.2.(メタ)アクリル系重合体のシリル基]
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体のシリル基は、下記一般式(1)により表される。
-[Si(R2-b(Y)O]-Si(R3-a(Y) (1)
式中、RおよびRは、独立に、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、または(R’)SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基である(このとき、R’は炭素数1~20の1価の炭化水素基であり、3個存在するR’は同一であってもよく、異なっていてもよい)。RまたはRが2個以上存在するとき、当該RまたはRは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
Yは、炭素数1~20のアルコキシ基である。Yが2個以上存在するとき、当該Yは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
aは、0、1、2または3である。bは、0、1または2である。mは、0~19の整数である。ただし、a+mb≧1の関係を満たしている。
【0023】
一般に、アルコキシ基は、炭素数が少ない方が反応性は高い。すなわち、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、の順に、反応性が低くなる。したがって、(メタ)アクリル系重合体の製造方法および用途に応じて、適宜アルコキシ基を選択できる。
【0024】
シリル基の具体例としては、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基が挙げられる。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体に導入されているシリル基の数は、分子全体として、平均して1個より多い。一実施形態において、シリル基の数は、好ましくは1.1個以上であり、より好ましくは1.2個以上である。別の実施形態において、シリル基の数は、好ましくは2.2個以上であり、より好ましくは2.4個以上である。(メタ)アクリル系重合体に導入されているシリル基の数の上限は、4.0以下が好ましく、3.5個以下がより好ましい。
【0026】
シリル基の数が上記の範囲であれば、(メタ)アクリル系重合体を用いた硬化性組成物および硬化物の物性が良好となる。(メタ)アクリル系重合体は、少なくとも一方の末端部分にシリル基を有することが好ましく、両方の末端部分にシリル基を有することが好ましい。ただし、(メタ)アクリル系重合体分子の一部または全部の末端は、シリル基を有していなくてもよい。
【0027】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)を含む。(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、アルコキシシリル基の含有量が相対的に多いXブロック、および、アルコキシシリル基の含有量が相対的に少ないYブロック、を有し、分子中にXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を含む。
【0028】
なお、(メタ)アクリル系重合体の分子全体の構造は、XYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を含んでいれば特に限定されず、例えば、XYXYテトラブロック構造であってもよい。ここで、「XYXトリブロック構造」とは、当業者間で一般に言われている「ABAトリブロック構造」を意味する。
【0029】
XYジブロック構造の分子において、Xブロックとは、分子の一方の末端から40%以下、30%以下または25%以下の領域でありうる(分子に含まれる全ユニットを100%とする)。XYXトリブロック構造の分子において、Xブロックとは、分子の末端から40%以下、30%以下または25%以下の領域でありうる(分子に含まれる全ユニットを100%とする)。
【0030】
(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー(以下、シリル基含有モノマーとも称する)由来の繰り返し単位を有している。Xブロックに含まれるシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、2.1個以上が好ましく、2.2個以上がより好ましい。なお、(メタ)アクリル系共重合体(A1)が1分子中に2つ以上のXブロックを有する場合、複数のXブロックに含まれているシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位の個数を合計した値が、平均で2.0個より多いことを意味する。換言すればXブロックに含まれているシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、(メタ)アクリル系共重合体(A1)1分子あたり平均で2.0個より多い。
【0031】
また、Xブロックに含まれるシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、Xブロックに含まれる全ての繰り返し単位の重量を基準として、3重量%超が好ましく、4.5重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましい。Xブロックに含まれているシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位の上限値は、90重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
【0032】
好ましい一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体はXYXトリブロック重合体であり、(メタ)アクリル系重合体の末端部分を構成するブロック(Xブロック)は、それぞれ、シリル基を1個より多く有することが好ましい。
【0033】
一方、Yブロックに含まれているシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満である。Yブロックに含まれるシリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、Yブロックに含まれる全ての繰り返し単位の重量を基準として、好ましくは0~3重量%であり、より好ましくは0~2重量%であり、さらに好ましくは0~1重量%である。
【0034】
分子中にXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を含む(メタ)アクリル系重合体において、シリル基含有モノマー由来の繰り返し単位は、末端(一端または両端)部分の領域に局在している。
【0035】
シリル基含有モノマーの具体例としては、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
[1.3.(メタ)アクリル系重合体のその他の物性]
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量の下限は、1,200以上が好ましく、2,000以上がより好ましく、10,000以上がさらに好ましく、15,000以上が特に好ましい。(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量の上限は、80,000以下が好ましく、50,000以下がより好ましく、40,000以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が上記の範囲であれば、硬化性組成物の粘度が高くなりすぎず、充分な作業性を確保できる。例えば(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が、2,000以上50,000以下であることが好ましい。
【0037】
一実施形態において、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn;分子量分布)は、1.8以下であることが好ましい。また、(メタ)アクリル系重合体の分子量分布は、より好ましくは1.7以下であり、さらに好ましくは1.6以下であり、さらに好ましくは1.5以下であり、特に好ましくは1.4以下であり、最も好ましくは1.3以下である。分子量分布が大きすぎると硬化性組成物の粘度が増大し、作業性が低下する傾向にある。
【0038】
本明細書において、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される数値である。GPC測定には、移動相としてテトラヒドロフラン、固定相としてポリスチレンゲルカラムを用いることができる。また、これらの分子量は、ポリスチレン換算で算出できる。このように分子量分布の小さい(メタ)アクリル系重合体は、例えば、後述のリビングラジカル重合によって好適に製造することができる。
【0039】
[1.4.(メタ)アクリル系重合体の製造方法]
(メタ)アクリル系重合体の重合方法は特に限定されず、公知の重合方法を用いることができる(ラジカル重合法、カチオン重合法、アニオン重合法など)。SGO(Solid Grade Oligomer;高温連続塊状重合)と呼ばれる重合方法は、重合溶剤、重合開始剤、連鎖移動剤などをほとんど使用せずに(メタ)アクリル系重合体が得られる方法であるため、好ましい。重合体分子の末端に官能基を導入でき、分子量分布の小さい(メタ)アクリル系重合体を合成できることから、リビング重合法が好ましい。リビング重合法の例としては、リビングラジカル重合法、リビングカチオン重合法、リビングアニオン重合法が挙げられ、その中でもリビングラジカル重合法が(メタ)アクリル系モノマーの重合に適している。リビングラジカル重合法の例としては、以下が挙げられる。
・原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization;ATRP(J. Am. Chem. Soc. 1995, 117, 5614; Macromolecules. 1995, 28, 1721を参照))
・一電子移動重合(Sigle Electron Transfer Polymerization;SET-LRP(J. Am. Chem. Soc. 2006, 128, 14156; JPSChem 2007, 45, 1607を参照))
・可逆移動触媒重合(Reversible Chain Transfer Catalyzed Polymerization;RTCP(「有機触媒で制御するリビングラジカル重合」『高分子論文集』68, 223-231 (2011); 特開2014-111798を参照))
・可逆的付加-開裂連鎖移動重合法(RAFT重合)
・ニトロキシラジカル法(NMP法)
・有機テルル化合物を用いる重合法(TERP法)
・有機アンチモン化合物を用いる重合法(SBRP法)
・有機ビスマス化合物を用いる重合法(BIRP法)
・ヨウ素移動重合法
(メタ)アクリル系重合体にシリル基を導入する方法としては、特開2007-302749号公報に記載の方法および特開2018-162394号公報に記載の方法が挙げられる。特開2007-302749号公報に記載の方法は、(メタ)アクリル系重合体の末端の官能基を変換することにより、シリル基を導入する。具体的には、(メタ)アクリル系重合体の分子末端を、水酸基、アルケニル基、シリル基の順番に変換することにより、シリル基を導入する。特開2018-162394号公報に記載の方法は、シリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーとの共重合により、シリル基を導入する。具体的には、リビング重合の進行段階に応じてシリル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーの投入量を制御することにより、(メタ)アクリル系重合体分子の末端近傍にシリル基を導入する。これらの方法によって得られるシリル基含有(メタ)アクリル系重合体は、分子の末端または末端近傍に局所的にシリル基を有する。このようなシリル基含有(メタ)アクリル系重合体を使用することは、(B)成分と混合した際の相溶性改善に効果があることに加え、硬化物の伸びが向上するため、好ましい。
【0040】
〔2.シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、(B)成分として、シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体を含む。
【0041】
[2.1.ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖]
ポリオキシアルキレン系重合体の分子構造は、直鎖状であってもよいし、分枝状であってもよい。また、これらの構造を有する分子の混合物であってもよい。これらの中でも、ポリオキシプロピレンジオールおよびポリオキシプロピレントリオールからなる群より選択される1つ以上に由来する主鎖が、特に好ましい。
【0042】
ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖構造の例としては、下記一般式(2)で表される構造が挙げられる。式中、Rは2価のアルキレン基である。
-R-O- (2)
一般式(2)で表される構造は、ポリオキシアルキレン系重合体の全重量の50重量%以上を占めることが好ましく、70重量%以上を占めることがより好ましく、90重量%以上を占めることがさらに好ましい。
【0043】
一般式(2)中にあるRの構造は、2価のアルキレン基ならば特に限定されない。Rは、炭素数1~14のアルキレン基であることが好ましく、炭素数2~4の直鎖状または分岐状のアルキレン基であることがより好ましい。
【0044】
一般式(2)で表される繰り返し単位の具体例としては、-CHO-、-CHCHO-、-CHCH(CH)O-、-CHCH(C)O-、-CHC(CHO-、-CHCHCHCHO-が挙げられる。この中でも、ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖は、-CHCH(CH)O-からなるポリプロピレンオキシドであることが好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体は、主鎖構造中にウレタン結合またはウレア結合を含んでいてもよい。
【0045】
ポリオキシアルキレン系重合体としては、市販品を用いることもできる。市販のポリオキシアルキレン系重合体の例としては、カネカMSポリマー(登録商標)S810、S257、S327(いずれも株式会社カネカ製);サイリル(登録商標)SAX220、SAT400、SAX510,SAX520、SAX580、SAX750、SAT145(いずれも株式会社カネカ製);エクセスター(登録商標)ES-S2410、ES-S2420、ES-S3630(いずれもAGC株式会社製);HMS-1603、HMS-1207(いずれも皇馬科技製)が挙げられる。
【0046】
[2.2.ポリオキシアルキレン系重合体のシリル基]
ポリオキシアルキレン系重合体に含まれているシリル基の構造は、特に限定されない。ポリオキシアルキレン系重合体に含まれているシリル基の構造は、[1.2.]節で説明した(メタ)アクリル系重合体に含まれているシリル基の構造であってもよい。
【0047】
一実施形態において、ポリオキシアルキレン系重合体に含まれているシリル基の構造は、下記式で表される。
-Si(R3-a(X)
式中、1つのシリル基にRが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Rは、炭素原子数1~20の置換または非置換の炭化水素基を表す(置換されている場合には、ヘテロ原子含有基で置換されていてもよい)。シリル基が複数存在する場合は、Rは、シリル基ごとに異なっていてもよい。Rの例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基が挙げられる。1つのシリル基にXが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Xは、水酸基または加水分解性基を表す。シリル基が複数存在する場合は、Xは、シリル基ごとに異なっていてもよい。加水分解性基の例としては、アルコキシ基が挙げられる。aは、1、2または3である。
【0048】
ポリオキシアルキレン系重合体に含まれているシリル基の例としては、ジメトキシシリル基、トリメトキシシリル基、ジエトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジイソプロポキシメチルシリル基が挙げられる。
【0049】
ポリオキシアルキレン系重合体に導入されているシリル基の数は、1分子あたり、1.2個超が好ましく、1.2~4.0個がより好ましく、1.5~2.5個がさらに好ましい。シリル基の数が上記の範囲であれば、硬化性組成物に良好な硬化性を与えることができる。
【0050】
また、上記とは別に末端に1個のみシリル基を有するポリアルキレン系重合体を使用することも可能である。上記ポリマーと併用した場合に、可塑剤成分を代替することが可能となる。さらに、特開2021-75722に記載の合成法によって得られたポリアルキレン系重合体を使用することが可能である。
【0051】
ポリオキシアルキレン系重合体のシリル基は、分子の少なくとも一方の末端部分に位置することが好ましく、分子の両方の末端部分に位置することがより好ましい。シリル基が分子の末端部分に位置していれば、硬化物に良好な伸びを与えることができる。
【0052】
[2.3.ポリオキシアルキレン系重合体のその他の物性]
ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量の下限は特に限定はなく、2,000以上が好ましく、3,000以上がより好ましく、10,000以上がより好ましく、20,000以上がさらに好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量の上限は、70,000以下であることが好ましく、50,000以下であることがより好ましい。例えば、ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量は、3,000以上50,000以下であることが好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体として、数平均分子量が20,000以上の高分子量の重合体を用いることにより、硬化物の伸びを向上させることもできる。
【0053】
ポリオキシアルキレン系重合体の分子量分布は、好ましくは1.6以下であり、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.2以下である。分子量分布が大きすぎると硬化性組成物の粘度が増大し、作業性が低下する傾向にある。
【0054】
このようなポリオキシアルキレン系重合体は、特開2021―55010号公報中の[0011]~[0058]に記載の方法で得ることができる。
【0055】
〔3.その他の添加剤〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、上述の(メタ)アクリル系重合体、ポリオキシアルキレン系重合体以外に可塑剤をはじめとする種々の添加剤を含有させてもよい。これらの添加剤を含有させることによって、硬化性組成物および硬化物の諸物性を調節することができる。添加剤の例としては、以下が挙げられる。これらの添加剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0056】
(フィラー)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、フィラーを含有させてもよい。フィラーの例としては、シリカ(ヒュームドシリカ、沈降性シリカ、結晶性シリカ、溶融シリカ、ドロマイト、無水ケイ酸、含水ケイ酸など)、繊維状充填材(ガラス繊維およびガラスフィラメントなど)が挙げられる。
【0057】
フィラーの配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0~500重量部が好ましく、1~200重量部がより好ましく、2~50重量部が特に好ましい。
【0058】
(硬化触媒)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、公知の硬化触媒を用いてシロキサン結合を形成することにより、架橋、硬化させることができる。本明細書において、硬化触媒とは、シリル基同士を縮合してシロキサン結合の形成を触媒する物質を一般に表す。硬化触媒の例としては、錫系硬化触媒および非錫系硬化触媒が挙げられる。
【0059】
錫系硬化触媒の具体例としては、ジアルキル錫カルボン酸塩類(ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジエチルヘキサノレート、ジブチル錫ジオクテート、ジブチル錫ジメチルマレート、ジブチル錫ジエチルマレート、ジブチル錫ジブチルマレート、ジブチル錫ジイソオクチルマレート、ジブチル錫ジトリデシルマレート、ジブチル錫ジベンジルマレート、ジブチル錫マレエート、ジオクチル錫ジアセテート、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジエチルマレート、ジオクチル錫ジイソオクチルマレートなど)、ジアルキル錫オキサイド類(ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの混合物など)、4価錫化合物(ジアルキル錫オキサイド、ジアルキル錫ジアセテートなど)とアルコキシシリル基含有低分子ケイ素化合物(テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシランなど)との反応物、2価の錫化合物類(オクチル酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫など)、モノアルキル錫類(モノブチル錫化合物(モノブチル錫トリスオクトエート、モノブチル錫トリイソプロポキシドなど)、モノオクチル錫化合物など)、アミン系化合物と有機錫化合物との反応物または混合物(ラウリルアミンとオクチル酸錫の反応物または混合物など)、キレート化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナート、ジオクチル錫ビスアセチルセトナート、ジブチル錫ビスエチルアセトナート、ジオクチル錫ビスエチルアセトナートなど)、錫アルコラート類(ジブチル錫ジメチラート、ジブチル錫ジエチラート、ジオクチル錫ジメチラート、ジオクチル錫ジエチラートなど)が挙げられる。
【0060】
この中でも、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの混合物およびジブチル錫オキサイドとテトラエトキシシランの反応物は、シラノール縮合触媒としての活性が高く、かつ硬化物の着色が少ない点が好ましい。また、ジブチル錫ジラウレートは、硬化性組成物に添加しても着色が少なく、廉価であり、入手が容易である点が好ましい。キレートを有する錫化合物(ジブチル錫ビスアセチルアセトナートなど)は、硬化物を黄色または橙色に着色させる傾向にある。そのため、キレートを有する錫化合物は、使用量を抑制するか、使用しないことが好ましい。
【0061】
錫系硬化触媒の配合量は、(メタ)アクリル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との総量100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0062】
非錫系硬化触媒の例としては、カリウム系硬化触媒(ネオデカン酸カリウム、オクチル酸カリウムなど);チタン化合物(テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネート、チタンテトラキス(アセチルアセトナート)、ビス(アセチルアセトナート)ジイソプロポキシチタン、ジイソプロポキシチタンビス(エチルアセトセテート)など);有機アルミニウム化合物類(アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなど);ジルコニウム化合物類(ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトナート)など);ビスマス化合物類(オクチル酸ビスマス、ネオデカン酸ビスマスなど)が挙げられる。カリウム系硬化触媒は、硬化物の透明性を向上できる点において好ましい。
【0063】
また、非錫系硬化触媒としてアミジン化合物も使用できる(例えば、国際公開第2008/078654号を参照)。アミジン化合物の例としては、1-(o-トリル)ビグアニド、1-フェニルグアニジン、1,2-ジメチル-1,4,5,6-テトラヒドロピリミジン、1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン、7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンが挙げられる。
【0064】
非錫系硬化触媒の配合量は、(メタ)アクリル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体との総量100重量部に対して、0.5~20重量部が好ましく、1~10重量部がより好ましい。
【0065】
(脱水剤)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物を1成分型の硬化性組成物として実施する場合には、(i)水分を含有する配合成分を予め脱水および乾燥してから使用するか、または、(ii)各成分の混練中に、加熱・減圧などにより組成物を脱水することが好ましい。この観点から、硬化性組成物に脱水剤を添加することが好ましい。
【0066】
脱水剤の具体例としては、アルコキシシラン化合物が挙げられる。アルコキシシラン化合物は、水と反応することにより組成物を脱水する。アルコキシシラン化合物の例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルシリケート、エチルシリケート、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランが挙げられる。この中でもビニルトリメトキシシランは、脱水効果が高く好適に使用できる。
【0067】
脱水剤(特に、ビニルトリメトキシシランなどの水と反応しうるアルコキシシラン化合物)の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、2~15重量部が好ましく、3~10重量部がより好ましい。
【0068】
(接着性付与剤)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、接着性付与剤を添加してもよい。接着付与剤を添加することにより、硬化物がコンクリートなどの被着体から剥離する危険性を低減できる。また、接着性を向上させるためのプライマーを使用する必要性がなくなる場合もある。この場合は、施工作業の簡略化が期待される。
【0069】
接着性付与剤の例としては、シランカップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤の具体例としては、イソシアネート基含有シラン類(γ-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなど)、アミノ基含有シラン類(γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-γ-アミノプロピルトリエトキシシランなど)、メルカプト基含有シラン類(γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなど)、エポキシ基含有シラン類(γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランなど)、カルボキシシラン類(β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-(β-カルボキシメチル)アミノエチル-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなど)、ビニル型不飽和基含有シラン類(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アクロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシランなど)、ハロゲン含有シラン類(γ-クロロプロピルトリメトキシシランなど)、イソシアヌレートシラン類(トリス(トリメトキシシリル)イソシアヌレートなど)が挙げられる。また、シランカップリング剤を変性させた誘導体である、アミノ変性シリルポリマー、シリル化アミノポリマー、不飽和アミノシラン錯体、フェニルアミノ長鎖アルキルシラン、アミノシリル化シリコーン、シリル化ポリエステルなども、シランカップリング剤として用いることができる。
【0070】
接着性付与剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0.1~20重量部が好ましく、0.5~10重量部がより好ましい。
【0071】
(物性調整剤)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、硬化物の引張特性を調整する物性調整剤を含有させてもよい。物性調整剤を用いることにより、硬化物の硬度を上げたり、逆に硬化物の硬度を下げて伸びを出したりすることができる。
【0072】
物性調整剤の例としては、アルキルアルコキシシラン類(メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシランなど)、アルキルイソプロペノキシシラン(ジメチルジイソプロペノキシシラン、メチルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなど)、官能基を有するアルコキシシラン類(γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなど)、シリコーンワニス類、ポリシロキサン類が挙げられる。
【0073】
物性調整剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0.1~80重量部が好ましく、0.1~50重量部がより好ましい。
【0074】
(チクソ性付与剤(垂れ防止剤))
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、垂れを防止し、作業性を良くするために、チクソ性付与剤(垂れ防止剤)を含有させてもよい。
【0075】
チクソ性付与剤の例としては、ポリアミドワックス類、水添ヒマシ油誘導体類、シリカ類が挙げられる。
【0076】
チクソ性付与剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0.1~50重量部が好ましく、0.2~25重量部がより好ましい。
【0077】
(光硬化性物質)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、光硬化性物質を含有させてもよい。光硬化性物質とは、光の作用によって短時間で化学変化をおこし、物性的変化(硬化など)を生ずる物質である。光硬化性物質を含有させることにより、硬化物表面の粘着性(残留タック)を低減できる。典型的な光硬化性物質は、例えば室内の日の当たる位置(窓付近など)に、1日間、室温にて静置することにより硬化させることができる。光硬化性物質には、有機単量体、オリゴマー、樹脂およびこれらを含む組成物など、多くのものが知られており、その種類は特に限定されない。光硬化性物質の例としては、不飽和アクリル系化合物、ポリケイ皮酸ビニル類、アジド化樹脂が挙げられる。
【0078】
不飽和アクリル系化合物の具体例としては、低分子量アルコール類(エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ネオペンチルアルコールなど)の(メタ)アクリル酸エステル類;酸(ビスフェノールA、イソシアヌル酸)または低分子量アルコールなどを、エチレンオキシド、プロピレンオキシドなどで変性させた、アルコール類の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸エステル類(主鎖がポリエーテルであり末端に水酸基を有するポリエーテルポリオール、主鎖がポリエーテルであるポリオール中でビニル系モノマーをラジカル重合することにより得られるポリマーポリオール、主鎖がポリエステルで末端に水酸基を有するポリエステルポリオール、主鎖がビニル系あるいは(メタ)アクリル系共重合体であり主鎖中に水酸基を有するポリオールなど);エポキシ樹脂(ビスフェノールA型やノボラック型など)と(メタ)アクリル酸を反応させることにより得られるエポキシアクリレート系オリゴマー類;ポリオール、ポリイソシアネート、水酸基含有(メタ)アクリレートなどを反応させることにより得られる分子鎖中に、ウレタン結合および(メタ)アクリル基を有する、ウレタンアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
【0079】
光硬化性物質の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。
【0080】
(空気酸化硬化性物質)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、空気酸化硬化性物質を含有させてもよい。空気酸化硬化性物質とは、空気中の酸素により架橋硬化しうる不飽和基を有する化合物を指す。空気酸化硬化性物質を含有させることにより、硬化物表面の粘着性(残留タック)を低減できる。典型的な空気酸化硬化性物質は、例えば空気中にて、室内に1日間静置することにより硬化させることができる。
【0081】
空気酸化硬化性物質の例としては、乾性油(桐油、アマニ油など);乾性油を変性して得られる各種アルキッド樹脂;アクリル系重合体、エポキシ系樹脂、シリコーン樹脂などを乾性油により変性させた物質;1,2-ポリブタジエン;1,4-ポリブタジエン;C5~C8ジエンの重合体または共重合体;C5~C8ジエンの重合体または共重合体の各種変性物(マレイン化変性物、ボイル油変性物など)が挙げられる。上述した中では、桐油、液状のジエン系重合体およびその変性物が好ましい。
【0082】
空気酸化硬化性物質の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、0.01~30重量部が好ましい。
【0083】
(酸化防止剤および光安定剤)
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物には、酸化防止剤および/または光安定剤を含有させてもよい。酸化防止剤および光安定剤は、各種のものが知られている。例えば、[猿渡健市 他『酸化防止剤ハンドブック』大成社、1976年][大沢善次郎 監『高分子材料の劣化と安定化』シーエムシー、1990年、235-242ページ]などに記載された物質が挙げられる。
【0084】
酸化防止剤の例としては、アデカスタブ PEP-36、アデカスタブ AO-23などのチオエーテル系酸化防止剤(以上、全て株式会社ADEKA製);Irgafos38、Irgafos168、IrgafosP-EPQ(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)などリン系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤;が挙げられる。上述した中では、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0085】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、モノ(またはジもしくはトリ)(αメチルベンジル)フェノール、2,2’-メチレンビス(4エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,5-ジ-t-ブチルハイドロキノン、2,5-ジ-t-アミルハイドロキノン、トリエチレングリコール-ビス-[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルホスホン酸エチル)カルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]o-クレゾール、N,N’-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、2-(5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2-ヒドロキシ-3,5-ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t-ブチル-5-メチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-ブチル-2-ヒドロキシフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)-ベンゾトリアゾール、メチル-3-[3-t-ブチル-5-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-4-ヒドロキシフェニル]プロピオネート-ポリエチレングリコール(分子量約300)縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、2,4-ジ-t-ブチルフェニル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート挙げられる。
【0086】
市販されている酸化防止剤の例としては、ノクラック200、ノクラックM-17、ノクラックSP、ノクラックSP-N、ノクラックNS-5、ノクラックNS-6、ノクラックNS-30、ノクラック300、ノクラックNS-7、ノクラックDAH(以上、全て大内新興化学工業株式会社製);アデカスタブ AO-30、アデカスタブ AO-40、アデカスタブ AO-50、アデカスタブ AO-60、アデカスタブ AO-616、アデカスタブ AO-635、アデカスタブ AO-658、アデカスタブ AO-80、アデカスタブ AO-15、アデカスタブ AO-18、アデカスタブ 328、アデカスタブ AO-37(以上、全て株式会社ADEKA製);IRGANOX-245、IRGANOX-259、IRGANOX-565、IRGANOX-1010、IRGANOX-1024、IRGANOX-1035、IRGANOX-1076、IRGANOX-1081、IRGANOX-1098、IRGANOX-1222、IRGANOX-1330、IRGANOX-1425WL(以上、全てチバ・スペシャルティ・ケミカルズ製);SumilizerGM、SumilizerGA-80、SumilizerGS(以上、全て住友化学株式会社製)が挙げられる。
【0087】
光安定剤の例としては、紫外線吸収剤(チヌビンP、チヌビン234、チヌビン320、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン329、チヌビン213(以上、全てBASF製)などのベンゾトリアゾール系化合物;チヌビン1577などトリアジン系光安定剤、CHIMASSORB81などのベンゾフェノン系化合物;チヌビン120(BASF製)などのベンゾエート系化合物;ヒンダードアミン系化合物)が挙げられる。上述した中では、ヒンダードアミン系化合物が好ましい。
【0088】
ヒンダードアミン系化合物の具体例としては、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、N,N’-ビス(3アミノプロピル)エチレンジアミン-2,4-ビス[N-ブチル-N-(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)アミノ]-6-クロロ-1,3,5-トリアジン縮合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、コハク酸ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリディニル)エステルが挙げられる。
【0089】
市販されている光安定剤の例としては、チヌビン622LD、チヌビン144、チヌビン770,チヌビン765、CHIMASSORB944LD、CHIMASSORB119FL;(以上、全てBASF製)、アデカスタブ LA-52、アデカスタブ LA-57、アデカスタブ LA-62、アデカスタブ LA-67、アデカスタブ LA-63、アデカスタブ LA-68、アデカスタブ LA-82、アデカスタブ LA-87(以上、全てADEKA製)が挙げられる。
【0090】
酸化防止剤および光安定剤を、併用してもよい。これらを併用することにより、それぞれの効果がさらに向上し、硬化物の耐熱性、耐候性などが向上することがある。例えば、耐候性を向上させるために、紫外線吸収剤とヒンダードアミン系化合物(HALS)とを組合せることできる。この組合せは、それぞれの薬剤の効果をより向上させることができ、好ましい。
【0091】
酸化防止剤および/または光安定剤の配合量は、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体の総量100重量部に対して、それぞれ、0.1~20重量部が好ましい。
【0092】
〔4.硬化性組成物〕
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、上記に説明した(A)成分、(B)成分および任意でその他の添加剤を含む。硬化性組成物は、(A)成分、(B)成分および任意でその他の添加剤を適宜混合することにより調製できる。
【0093】
[4.1.硬化性組成物の組成および物性]
硬化性組成物において、ポリオキシアルキレン系重合体の含有量の下限は、(メタ)アクリル系重合体の含有量を100重量部とすると、5重量部以上が好ましく、30重量部以上がより好ましく、40重量部以上がさらに好ましい。ポリオキシアルキレン系重合体の含有量の上限は、(メタ)アクリル系重合体の含有量を100重量部とすると、300重量部以下が好ましく、280重量部以下がより好ましく、250重量部以下がさらに好ましい。(メタ)アクリル系重合体とポリオキシアルキレン系重合体の含有比が上記の範囲内ならば、耐候性に優れた硬化物が得られる。より長期間の耐候性を担保するためには、ポリオキシアルキレン系重合体よりも(メタ)アクリル系重合体を多く配合する方が好ましい。
【0094】
硬化性組成物は、構成成分が相溶していることが好ましい。本明細書において、「構成成分が相溶している」とは、調製後充分な時間(例えば、3日間)を経た後において、構成成分の分離に起因する白濁が硬化性組成物に見られないことを表す。より詳細な相溶性の評価方法は、後述する実施例を参照。構成成分が相溶している硬化性組成物は、均一な組成物であるため、硬化物の性質が安定しやすい。
【0095】
[4.2.硬化性組成物の形態および用途]
本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、1成分型であってもよいし、2成分型または多成分型であってもよい。1成分型の硬化性組成物とは、全ての配合成分を予め配合した後、密封保存したものである。1成分型の硬化性組成物は、使用後に空気中の湿気により硬化する。一方、2成分型または多成分型の硬化性組成物においては、硬化触媒を含有する硬化剤を別途用意する。2成分型の硬化性組成物は、硬化剤と、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体を含む組成物とを混合して使用する。多成分型の硬化性組成物は、硬化剤と、(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体を含む組成物と、任意構成である他の剤(着色剤など)とを混合して使用する。
【0096】
硬化性組成物を2成分型として調製すると、2成分の混合時に、着色剤をさらに添加することができる。着色剤は、例えば、顔料、可塑剤、必要に応じて充填材を混合し、ペースト化したものが、作業性が高く好ましい。また、2成分型の硬化性組成物は、2成分の混合時に遅延剤を添加することができる。これにより、硬化速度を作業現場にて微調整することができる。
【0097】
硬化性組成物の用途は、特に限定されない。一例として、建築用および工業用のシーリング剤、電気・電子部品材料(太陽電池裏面封止剤など)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材など)、粘着剤、接着剤、弾性接着剤、コンタクト接着剤、タイル用接着剤、塗料、コーティング材、缶蓋などのシール材、電気電子用ポッティング剤、フィルム、ガスケット、注型材料、各種成形材料、人工大理石、網入りガラスまたは合わせガラスの切断部の防錆・防水用封止材、防水剤が挙げられる。
【0098】
硬化性組成物の塗工方法の例としては、手塗り(コテなどを用いる)、ビード塗工、ローラーまたはスプレーによる塗工が挙げられる。強度を高めるためには、2~20mm厚の硬化物が得られるように硬化性組成物を塗工することが好ましい。この場合、硬化性組成物が一定程度以上の粘度を有するように調節することが好ましい。一方、複雑な面に塗工する場合や、作業性を高めたい場合には、低粘度の硬化性組成物をスプレー塗工することが好ましい。この場合、スプレー塗工を数回行えば、所望の厚みに調整できるため好ましい。
【0099】
本発明の一実施形態には、上述の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物も包含される。硬化物の形状は限定されず、例えば膜状(硬化膜)であってもよい。硬化膜の厚みは2~20mmであってもよい。
【0100】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態に開示されている技術的手段を適宜組合せて得られる実施形態も、本発明の技術的範囲に含まれる。
【0101】
本発明の一実施形態は、以下の構成を含んでいてもよい。
<1>(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体と、(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体と、を含む硬化性組成物であって、前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体は、アルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル系共重合体(A1)を含み、前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)は、XブロックおよびYブロックを有するXYジブロック構造またはXYXトリブロック構造を分子中に含み、前記Xブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で2.0個より多く、前記Yブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、0重量%以上5重量%未満であり、前記(メタ)アクリル系共重合体(A1)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.8以下である、硬化性組成物。
<2>前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体が、RCH=CHCOOR(式中、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは炭素数が9個以上の基である)に由来する繰り返し単位を1重量%以上含む、<1>に記載の硬化性組成物。
<3>前記(A)シリル基含有(メタ)アクリル系重合体の数平均分子量が、2,000以上50,000以下である、<1>または<2>に記載の硬化性組成物。
<4>前記(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体が、下記式で表されるシリル基を有するものである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
-Si(R3-a(X)
〔式中、Rは炭素原子数1~20の置換または非置換の炭化水素基を表し、Rはヘテロ原子含有基で置換されていてもよい。1つのシリル基にRが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を表し、1つのシリル基にXが複数含まれる場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。aは、1、2または3である。〕
<5>前記(B)シリル基含有ポリオキシアルキレン系重合体の数平均分子量が、3,000以上50,000以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
<6><1>~<5>のいずれか1つに記載の硬化性組成物を硬化してなる、硬化物。
【実施例0102】
本発明の一実施例について以下に説明する。
【0103】
〔測定方法〕
[数平均分子量]
数平均分子量の測定には以下の装置を用いた。測定値は、ポリスチレン換算分子量である。
・送液システム:HLC-8120GPC(東ソー株式会社製)
・カラム:TSK-GEL Hタイプ(東ソー株式会社製)
・溶媒:THF。
【0104】
[末端シリル基の導入率]
H-NMR測定の結果から、末端シリル基の導入率を計算した。H-NMR測定には以下の装置を用いた。
・測定器:JNM-LA400(日本電子株式会社製)
・溶媒:CDCl
【0105】
[組成物の相溶性]
(メタ)アクリル系重合体およびポリオキシアルキレン系重合体を混練して得られた硬化性組成物を透明な8K瓶に入れて、23℃50%RHにて3日間静置した。その後、目視にて外観を観察し、成分の相溶性を評価した。具体的には、以下のように評価した。
・完全相溶:硬化性組成物の構成成分の一部が分離したことによる澱みおよび白濁が観察されず、透明である。
・僅かに澱み有:透明であるが、硬化性組成物の構成成分の一部が分離したことによる澱みが僅かに観察される。
・白濁:硬化性組成物の構成成分の一部が分離したことによる白濁が観察される。
【0106】
〔製造例1:(メタ)アクリル系重合体(A-1)の合成〕
(準備)
2000mLの3つ口フラスコを用意した。この中に、アクリル酸エチル108g、アクリル酸n-ブチル707g、および、アクリル酸オクタデシル186gを混合した。この混合物を、「(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物」と称する。
【0107】
次に、別の攪拌容器を用意した。この中に、臭化第二銅(CuBr)52.7mg、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(MeTREN)54.4mg、メタノール1.82gを仕込み、窒素気流下にて、均一溶液になるまで攪拌を行った。この均一溶液を「銅溶液」と称する。なお、銅溶液中に含まれている銅は、(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の全量に対して、15ppmに相当する。
【0108】
さらに、別の攪拌容器を用意した。この中に、メタノール30.8mL、アスコルビン酸1.0g、トリエチルアミン1.6mLを仕込み、窒素気流下にて攪拌して均一溶液とした。この均一溶液を、「アスコルビン酸溶液」と称する。
【0109】
(第1工程)
攪拌機に、α-ブロモ酪酸エチル5.60g(開始剤;0.029モル)、(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物全量の20重量%、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン10g(0.045モル;開始剤に対して1.5モル当量)、メタノール107.68g(和光純薬化学工業株式会社製)、銅溶液の全量を投入し、窒素気流下にて30分間攪拌して、均一溶液とした。このとき使用した攪拌機は、ジャケット温調付き攪拌装置であり、ジャケット温度は45℃に設定した。
【0110】
次に、重合系内の温度が40℃以上になった時点で、アスコルビン酸溶液を連続滴下することにより、重合反応を開始させた。このときのアスコルビン酸溶液の滴下速度は、1時間あたり144mgのアスコルビン酸が重合系に投入される速度とした。
【0111】
重合系内の温度をモニターしたところ、アスコルビン酸の滴下開始と同時に温度が上昇し、最大温度に到達した後、徐々に温度が低下していった。重合系内の温度からジャケット温度を減じた温度差が1℃になった時点で、重合系内の反応溶液を少量サンプリングし、ガスクロマトグラフで分析した。その結果、最初に投入した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物のうち、90重量%が消費されていた。
【0112】
(第2工程)
次に、第1工程で投入しなかった(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の残り(全量の80重量%)を、90分間かけて、重合系に連続的に滴下した。このときのアスコルビン酸溶液の滴下速度は、1時間あたり48mgのアスコルビン酸が重合系に投入される速度とした。また、逐次的にサンプリングを行い、ガスクロマトグラフで分析した。そして、重合系に投入した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物全量のうち、88重量%が消費されるまで重合させた。
【0113】
(第3工程)
次に、この重合系に、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン11g(0.049モル;開始剤に対して1.6モル当量)を投入した。アスコルビン酸溶液の連続滴下は、重合系に投入した(メタ)アクリル酸エステルモノマー混合物の全量のうち、98重量%が消費されるまで継続させた。その後、アスコルビン酸溶液の滴下を終了し、重合を終了させた。
【0114】
ジャケット温度を80℃に変更してから、溶媒を脱揮した。脱揮には、最初はダイヤフラムポンプを用い、次いで真空ポンプを用いた。脱揮終了後に、ジャケット温度が60℃以下になるまで冷却した。
【0115】
(精製)
ジャケット温調付き攪拌装置に、酢酸ブチル1000gを投入して、脱揮を終えたポリマーと均一溶液になるまで混合攪拌した。この均一溶液に、吸着剤を加えて、1時間攪拌した。吸着剤としては、10gのキョーワード500SH(協和化学工業株式会社製)、および、10gのキョーワード700SEN-S(協和化学工業株式会社製)を用いた。
【0116】
攪拌終了後、得られた混合物を、バグフィルター濾布を敷いた濾過器によって濾過した。これによって、清澄なポリマー溶液を得た。この溶液に、1.5gの酸化防止剤(SumilizerGS;住友化学製)を加え、均一になるまで混合した。その後、溶液から溶媒を脱揮して、製造例1の(メタ)アクリル系共重合体を得た。脱揮には、最初はダイヤフラムポンプを用い、次いで真空ポンプを用いた。
【0117】
製造例1で製造された(メタ)アクリル系重合体(A-1)は、(メタ)アクリル系共重合体(A1)に該当し、数平均分子量:55,000、分子量分布:1.11、1分子あたりに導入されたシリル基の数:2.1個であった。また、(メタ)アクリル系重合体(A-1)のXブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、平均で304個であった。(メタ)アクリル系重合体(A-1)のYブロックに含まれているアルコキシシリル基を有する(メタ)アクリル酸エステルモノマー由来の繰り返し単位は、上記Yブロックに含まれている全ての繰り返し単位の重量を基準として、1.1重量%であった。
【0118】
〔比較製造例:(メタ)アクリル系重合体(C-1)の合成〕
下記の手順により、分子末端にメチルジメトキシシリル基が導入された(メタ)アクリル系重合体(C-1)を合成した。(メタ)アクリル系重合体(C-1)は、アルコキシシリル基が分子末端のみに位置し、分子全体としてXブロックを含有しないため、本発明の一実施形態における(メタ)アクリル系共重合体(A1)には該当しない。
1.攪拌機付ステンレス製反応容器の内部を脱酸素した。反応容器に、7.7gの臭化第一銅および200gブチルアクリレートを仕込み、加熱しながら攪拌した。
2.反応容器に、90gのアセトニトリルおよび17.6gのジエチル2,5-ジブロモアジペート(開始剤)を加えて混合した。混合液の温度を約80℃に調節した後、ペンタメチルジエチレントリアミンを加えて、重合反応を開始させた。
3.反応容器に、800gのブチルアクリレートを逐次加えて、重合反応を進めた。重合途中、ペンタメチルジエチレントリアミンを適宜追加して、重合速度を調節した。重合時に使用したペンタメチルジエチレントリアミンの総量は、1.4gであった。重合反応の進行中、反応容器の内部温度は、約80~約90℃に調節した。
4.モノマー転化率(重合反応率)が約95%以上となった時点で、揮発分を減圧脱揮して除去し、(メタ)アクリル系重合体の濃縮物を得た。
5.工程4で得られた重合体の濃縮物に、200gの1,7-オクタジエン、260gのアセトニトリル、および3.1gのペンタメチルジエチレントリアミンを加えた。
6.反応容器の内部温度を約80~約90℃に調節しながら、数時間加熱攪拌した。これにより、重合体末端と1,7-オクタジエンとを反応させ、重合体末端にアルケニル基を導入した。
7.アセトニトリルおよび未反応の1,7-オクタジエンを減圧脱揮して除去し、末端にアルケニル基を有する重合体の濃縮物を得た。
8.工程7で得られた濃縮物を酢酸ブチルで稀釈し、濾過助剤、吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH、協和化学製)を加えた。
9.工程8で得られた混合物を80~100℃程度に加熱攪拌した後、固形成分を濾別した。次に、濾液を濃縮して、重合体の粗精製物を得た。
10.重合体の粗精製物に、熱安定剤(SumilizerGS、住友化学株式会社製)および吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)を加えた。
11.減圧脱揮および加熱攪拌しながら系を昇温し、約170~約200℃にて数時間、減圧脱揮および加熱攪拌を続けた。
12.吸着剤(キョーワード700SENおよびキョーワード500SH)と、重合体の粗生成物に対して約10倍重量の酢酸ブチルとを加えた。約170~約200℃にてさらに数時間程度、加熱攪拌した。
13.工程12で得られた処理液を、酢酸ブチルでさらに稀釈した後、吸着剤を濾別した。濾液を濃縮し、両末端にアルケニル基を有する重合体を得た。
14.工程13で得られた重合体500gに、7.7gのメチルジメトキシシラン、2.5gのオルト蟻酸メチル、50mgの白金触媒を混合し、約100℃にて1時間程度、加熱攪拌した。白金触媒としては、ビス(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)白金錯体触媒のイソプロパノール溶液を用いた。
15.揮発成分(未反応のメチルジメトキシシランなど)を減圧留去し、分子末端にメチルジメトキシシリル基が導入された(メタ)アクリル系重合体(C-1)を得た。(メタ)アクリル系重合体(C-1)は、数平均分子量:27,000、分子量分布:1.2、1分子あたりに導入されたシリル基の数:2.0個であった。
【0119】
〔製造例2:ポリオキシアルキレン系重合体(B-1)の合成〕
下記の手順により、分子末端にメチルジメトキシシリル基が導入されたポリオキシアルキレン系重合体(B-1)を合成した。
1.プロピレンオキシドを重合して、数平均分子量:約16,400のポリプロピレンオキシドを得た。開始剤には、ポリオキシプロピレントリオールを用いた(分子量:約3,000)。触媒には、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体を用いた。得られたポリプロピレンオキシドは、分子の3つの末端が水酸基である。
2.ポリプロピレンオキシド分子末端の水酸基に対して1.2当量のNaOMeを、メタノール溶液として加えた。メタノールは留去した。
3.塩化アリルを加えて、ポリプロピレンオキシド分子末端の水酸基をアリル基に変換した。これにより、未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシドを得た。
4.未精製のアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、300重量部のn-ヘキサンおよび300重量部の水を混合して攪拌した。その後、遠心分離により水を除去した。
5.得られた溶液に、300重量部の水を再度混合して攪拌した。その後、遠心分離により水を除去した。
6.減圧脱揮によりn-ヘキサンを除去した。これにより、精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシドを得た。
7.精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、1.80重量部のメチルジメトキシシランを加えて、90℃にて2時間反応させた。触媒には、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液(白金含量:3wt%)を用いた。触媒の系内濃度は、150ppmであった。これにより、ポリオキシアルキレン系重合体(B-1)を得た。
【0120】
ポリオキシアルキレン系重合体(B-1)は、末端にメチルジメトキシシリル基が導入されているポリプロピレンオキシドであり、数平均分子量は約16,400であった。H-NMRで測定したところ、ポリオキシアルキレン系重合体(B-1)の分子末端におけるメチルジメトキシシリル基導入率は、70%であった。
【0121】
〔製造例3:ポリオキシアルキレン系重合体(B-2)の合成〕
下記の手順により、分子末端にメチルジメトキシシリル基が導入されたポリオキシアルキレン系重合体(B-2)を合成した。
1.プロピレンオキシドを重合して、数平均分子量:約28,500のポリプロピレンオキシドを得た。開始剤には、ポリオキシプロピレンジオールを用いた(分子量:約10,000)。触媒には、亜鉛ヘキサシアノコバルテートグライム錯体を用いた。得られたポリプロピレンオキシドは、分子の両末端が水酸基である。
2.製造例2の工程2~6と同様の手順により、精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシドを得た。
3.精製されたアリル基末端ポリプロピレンオキシド100重量部に対し、0.96重量部のメチルジメトキシシランを加えて、90℃にて2時間反応させた。触媒には、白金ビニルシロキサン錯体のイソプロパノール溶液(白金含量:3wt%)を用いた。触媒の系内濃度は、150ppmであった。これにより、ポリオキシアルキレン系重合体(B-2)を得た。
【0122】
ポリオキシアルキレン系重合体(B-2)は、末端にメチルジメトキシシリル基が導入されているポリプロピレンオキシドであり、数平均分子量は約28,500であった。H-NMRで測定したところ、ポリオキシアルキレン系重合体(B-2)の分子末端におけるメチルジメトキシシリル基導入率は、70%であった。
【0123】
〔実施例1~6、比較例1、2〕
実施例および比較例の組成および評価結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
〔結果〕
実施例1~6は、比較例1、2と比較して配合物の相溶性に優れていた。従って、本発明の一実施形態に係る硬化性組成物は、硬化物を作製した際の外観性の確保が期待できると共に、相分離による力学物性の低下の防止にも寄与できる可能性も期待できる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の一態様は、相溶性に優れた、透明性の高い硬化性組成物を提供する。